説明

ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物

【課題】優れた耐熱性を有し、かつ低吸水性で寸法安定性を保持しながら、流動性(特に、薄肉流動性)、衝撃特性のバランスを高次にバランスさせたポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】テレフタル酸単位を60〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなる半芳香族ポリアミド(A)を90〜30質量部、ポリフェニレンエ−テル(B)を10〜70質量部および平均粒子径9μm以上20μm以下でかつ、粒子径の小さい方から25%の粒径(d25%)と75%の粒径(d75%)の比(d75%/d25%)が1.0以上2.5以下である板状無機フィラー(C)を10〜30質量部含有することを特徴とするポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエ−テル系樹脂および特定の板状無機フィラーを含有する熱可塑性樹脂組成物に関する。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、優れた耐熱性を有しており、しかも低吸水性で寸法安定性を保持しながら、流動性(特に、薄肉流動性)、衝撃特性のバランスが著しく改良されていることから、自動車部品、工業部品、産業資材、電気/電子部品、家庭用品その他の広範な用途に有効に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来からナイロン6、ナイロン66などに代表される結晶性ポリアミドは、その優れた特性と溶融成形の容易さから、衣料用、産業資材用繊維、あるいは汎用のエンジニアリングプラスチックとして広く用いられているが、一方では、耐熱性不足、吸水による寸法安定性不良などの問題点も指摘されている。特に近年の表面実装技術(SMT)の発展に伴うリフロ−ハンダ耐熱性を必要とする電気・電子分野、あるいは年々耐熱性への要求が高まる自動車のエンジンル−ム部品などにおいては、従来のポリアミドの使用が困難となってきており、より耐熱性、耐薬品性、寸法安定性、機械特性に優れたポリアミドに対する要求が高まっている。
【0003】
一方、ポリフェニレンエーテルは機械的性質・電気的性質及び耐熱性が優れており、しかも寸法安定性に優れるため幅広い用途で使用されている。ポリフェニレンエーテル単独では成形加工性、耐薬品性に劣っており、これを改良するためにポリアミドを配合する技術が提案されている。ポリフェニレンエーテルは現在では非常に多種多様な用途に使用される材料となっている。
最近になって、ポリアミドおよびポリフェニレンエ−テル系樹脂が本来有する、優れた特性をバランス良く兼ね備え、優れた耐熱性を有し、かつ低吸水性に優れる技術として、テレフタル酸単位を60〜100モル%含むジカルボン酸単位と、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を60〜100モル%含むジアミン単位とからなるポリアミド系樹脂と、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有する組成物(特許文献1)が開示されている。また、ポリフェニレンエ−テル系樹脂として、α,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体で変性されたポリフェニレンエ−テル系樹脂を使用すると、耐熱性、力学物性が改善される技術(特許文献2)も開示されている。また、衝撃剤と相溶化されたポリフェニレンエーテル−半芳香族ポリアミド組成物として、テレフタル酸単位を60〜100モル%含むジカルボン酸単位と、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を60〜100モル%含むジアミン単位からなり、末端アミノ基濃度が45μmol/gより高いポリアミドを用いる技術(特許文献3〜6)が開示されている。
【0004】
また、線膨張係数の低減とアイゾット(Izod)衝撃値の向上をはかる手法として、平均粒子径が5μm以下の小さい板状無機フィラーをポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂に配合する試みがなされてきた。例えば、平均粒子径5μm以下、アスペクト比5以上のタルクを配合する技術(特許文献7)、平均粒子径5μm以下、アスペクト比3以上の板状無機フィラーを配合する技術(特許文献8)、平均粒子径3μm以下でかつ、ある特定の粒子径分布を持つ板状無機フィラーを配合する技術(特許文献9)等が開示されている。しかしながら、平均粒子径の小さい板状無機フィラーを使用することで、その表面積が大きい故、結果として、著しい流動性の低下、特に薄肉流動性の低下を招く。しかも上述した従来の技術では、面衝撃強度および引張伸びの改良が十分ではなかった。
一般に高融点の半芳香族ポリアミドを用いる場合、成形温度が高くなり、成形温度と樹脂の分解温度の差が小さいため、成形温度範囲が狭く、樹脂の流動性に大きな制約を受ける。したがって、上述した従来技術では衝撃強度と流動性が十分に満足するレベルには達していないのが現状であり、衝撃強度、流動性および線膨張係数のバランスに優れた樹脂組成物、さらに導電性も有する樹脂組成物が待望されていた。
【0005】
【特許文献1】特開2000−212433号公報
【特許文献2】特開2004−83792号公報
【特許文献3】米国公開特許2005−0038203号公報
【特許文献4】米国公開特許2005−0038191号公報
【特許文献5】米国公開特許2005−0038159号公報
【特許文献6】米国公開特許2005−0038171号公報
【特許文献7】特許第2715499号公報
【特許文献8】特許第3231435号公報
【特許文献9】特開2002−194206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリアミドおよびポリフェニレンエ−テル系樹脂が本来有する、優れた特性をバランス良く兼ね備え、優れた耐熱性および低吸水性で寸法安定性を保持しながら、流動性(特に、薄肉流動性)、衝撃特性のバランスを高次にバランスさせたポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエ−テル系樹脂および特定の板状無機フィラーを含有する熱可塑性樹脂組成物が、極めて優れた耐熱性および低吸水性を有し、かつ耐衝撃性を損なうことなく、成形時の流動性にも優れていることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、本発明は以下の通りである。
1.テレフタル酸単位を60〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなる半芳香族ポリアミド(A)を90〜30質量部、ポリフェニレンエ−テル(B)を10〜70質量部、および平均粒子径9μm以上20μm以下でかつ、粒子径の小さい方から25%の粒径(d25%)と75%の粒径(d75%)の比(d75%/d25%)が1.0以上2.5以下である板状無機フィラー(C)を10〜30質量部含有することを特徴とするポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
2.(C)板状無機フィラーの平均粒子径が10μmより大きく20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
3.(C)板状無機フィラーの粒子径の小さい方から25%の粒径(d25%)と75%の粒径(d75%)の比(d75%/d25%)が1.5以上2.2以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
4.(C)板状無機フィラーがタルクであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
5.(A)成分の末端アミノ基濃度が1μmol/g以上45μmol/g以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.(A)成分のポリアミドの末端アミノ基と末端カルボキシル基の濃度比が1.0以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
7.(A)成分中の分子鎖の末端基が末端封止剤により封止されている割合(末端封止率)が、10%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
8.(A)成分中の1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位とのモル比が、1,9−ノナンジアミン単位/2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位=100/0〜20/80の範囲内であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
9.該樹脂組成物中に、(A)および(B)成分の合計100質量部に対し、衝撃改良材(D)を1〜35質量部含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
10.(D)成分が、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなる芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体及び、または水素添加されたブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
11.(D)成分が、(D1)芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを55重量%以上90重量%未満の量で含有するブロック共重合体と、(D2)芳香族化合物を主体とする重合体ブロックを20重量%以上55重量%未満の量で含有するブロック共重合体から構成される2種類以上のブロック共重合体の混合物であり、混合物中の芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量が10,000以上30,000未満であり、かつ、共役ジエン化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量が50,000以上100,000未満であることを特徴とする請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物。
12.該樹脂組成物が、マレイン酸、無水マレイン酸、クエン酸、フマル酸からなる相溶化剤を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
13.該樹脂組成物中に、リン元素を1〜500ppm含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物。
14.(A)成分中のリン元素の濃度が1〜500ppmである半芳香族ポリアミドを使用することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の樹脂組成物。
15.該樹脂組成物中に、銅元素を1〜200ppm含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の樹脂組成物。
16.(B)成分が、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)及び/又は2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の樹脂組成物。
17.(E)成分として、導電材を含んでなることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の樹脂組成物。
18.(E)導電材が、導電性カーボンブラックおよびカーボンフィブリルからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項17に記載の樹脂組成物。
19.(E)導電材が、(A)ポリアミドと予め溶融混練されてなる導電性マスターバッチとして添加されてなることを特徴とする請求項17に記載の樹脂組成物。
20.ASTM D 256に準拠して測定した23℃におけるノッチ付アイゾット衝撃強度が50J/m以上であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
21.請求項1〜20のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、極めて優れた耐熱性を有し、かつ低吸水性で寸法安定性を保持しながら、流動性(特に、薄肉流動性)、衝撃特性のバランスを高次にバランスさせたポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の樹脂組成物を構成する各成分について詳しく述べる。
本発明の半芳香族ポリアミド(A)を構成するジカルボン酸単位(a)は、テレフタル酸単位を60〜100モル%含有する。ジカルボン酸単位(a)におけるテレフタル酸単位の含有率は、75〜100モル%の範囲内であることが好ましく、90〜100モル%の範囲内であることがより好ましい。
ジカルボン酸単位(a)は、40モル%以下であれば、テレフタル酸単位以外の他のジカルボン酸単位を含んでいてもよい。かかる他のジカルボン酸単位としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。これらのなかでも芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が好ましい。ジカルボン酸単位(a)におけるこれらの他のジカルボン酸単位の含有率は、25モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸から誘導される単位を、溶融成形が可能な範囲内で含んでいてもよい。
【0010】
本発明の半芳香族ポリアミド(A)を構成するジアミン単位(b)は、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を60〜100モル%含有している。ジアミン単位(b)における、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の含有率は、75〜100モル%であることが好ましく、90〜100モル%であることがより好ましい。1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を併用する場合には、1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比は、1,9−ノナンジアミン単位/2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位=100/0〜20/80であることが好ましい。より好ましくは、100/0〜50/50であり、さらに好ましくは、90/10〜60/40であり、最も好ましくは、90/10〜70/30である。
【0011】
ジアミン単位(b)は、40モル%以下であれば、1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位以外の他のジアミン単位を含んでいてもよい。かかる他のジアミン単位としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル等の芳香族ジアミンから誘導される単位を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を含むことができる。ジアミン単位(b)における、これらの他のジアミン単位の含有率は25モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
【0012】
本発明の半芳香族ポリアミド(A)の末端アミノ基濃度は、1μmol/g以上45μmol/g以下であることが好ましい。より好ましくは、10μmol/g以上45μmol/g以下、さらに好ましくは、20μmol/gより大きく45μmol/g以下、特に好ましくは20μmol/gより大きく40μmol/g以下である。(A)成分の末端アミノ基濃度はポリフェニレンエーテルとの反応性に大きく関与するため、1μmol/g以上45μmol/g以下の範囲にあることで耐衝撃性および流動性を高次にバランスさせることが可能となる。
また、(A)成分の末端アミノ基と末端カルボキシル基の濃度比が1.0以下であることが好ましい。末端アミノ基と末端カルボキシル基の濃度は、H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値より求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。具体的には、特開平7−228689号公報に記載された方法が挙げられる。
【0013】
(A)成分の末端基の調整方法は、公知の方法を用いることができる。例えばポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるようにジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物などから選ばれる1種以上を添加する方法が挙げられる。
本発明の半芳香族ポリアミド(A)は、その分子鎖の末端基の40%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましい。分子鎖の末端基が末端封止剤により封止されている割合(末端封止率)は、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。末端封止率が40%以上であれば、本発明の樹脂組成物の溶融成形時の粘度変化が小さく、得られる成形品の外観、耐熱水性等の物性が優れるので好ましい。
【0014】
本発明の半芳香族ポリアミド(A)の末端封止率は、ポリアミド系樹脂に存在する末端カルボキシル基、末端アミノ基および末端封止剤によって封止された末端基の数をそれぞれ測定し、下記の式に従って求めることができる。各末端基の数は、H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値より求めるのが精度、簡便さの点で好ましい。具体的には、特開平7−228689号公報に記載された方法に従うことが望ましい。
末端封止率(%)=[(α−β)/α]×100
〔式中、αは分子鎖の末端基の総数(これは通常、ポリアミド分子の数の2倍に等しい)を表し、βは封止されずに残ったカルボキシル基末端およびアミノ基末端の合計数を表す。〕
【0015】
末端封止剤としては、ポリアミド系樹脂末端のアミノ基またはカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば特に制限はないが、反応性および封止末端の安定性などの点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取扱いの容易さなどの点から、モノカルボン酸がより好ましい。その他、酸無水物、モノイソシアネ−ト、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコ−ル類などを末端封止剤として使用することもできる。
末端封止剤として使用されるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;これらの任意の混合物などを挙げることができる。これらのなかでも、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が好ましい。
【0016】
末端封止剤として使用されるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;これらの任意の混合物などを挙げることができる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格などの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが好ましい。
【0017】
本発明の半芳香族ポリアミド(A)は、結晶性ポリアミドを製造する方法として知られている任意の方法を用いて製造することができる。例えば、酸クロライドとジアミンを原料とする溶液重合法または界面重合法、ジカルボン酸とジアミンを原料とする溶融重合法、固相重合法、溶融押出重合法などの方法により製造することができる。特に、特開平7−228689および特開2000−103847号公報等に記載されている製造方法を用いることが好ましい。以下に、具体的なポリアミド系樹脂の製造方法の一例を示す。
まず、触媒および必要に応じて末端封止剤を最初にジアミンおよびジカルボン酸に一括して添加し、ポリアミド塩を製造した後、200〜250℃の温度において濃硫酸中30℃における極限粘度[η]が0.10〜0.60dl/gのプレポリマーを製造する。次いで、これをさらに固相重合するかあるいは溶融押出機を用いて重合を行うことにより、容易に半芳香族ポリアミド(A)を得ることができる。ここで、プレポリマーの極限粘度[η]が好ましくは0.10〜0.60dl/gの範囲内にあると、後重合の段階においてカルボキシル基とアミノ基のモルバランスのずれや重合速度の低下が少なく、さらに分子量分布の小さく、成形流動性に優れた半芳香族ポリアミドが得られる。重合の最終段階を固相重合により行う場合、減圧下または不活性ガス流通下に行うのが好ましく、重合温度が200〜280℃の範囲内であれば、重合速度が大きく、生産性に優れ、着色やゲル化を有効に押さえることができるので好ましい。重合の最終段階を溶融押出機により行う場合、重合温度が370℃以下であるとポリアミドの分解がほとんどなく、劣化の無い半芳香族ポリアミド(A)が得られるので好ましい。
【0018】
本発明の半芳香族ポリアミド(A)を製造するに際して、前記の末端封止剤の他に、例えば、触媒として、1)リン酸類、亜リン酸類および次亜リン酸類、2)リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類および次亜リン酸金属塩類、および3)リン酸エステルおよび亜リン酸エステル類等のリン酸化合物、亜リン酸化合物、次亜リン酸化合物から選ばれる1種以上を添加することが好ましい。
前記1)のリン酸類、亜リン酸類および次亜リン酸類とは、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロ亜リン酸、二亜リン酸などを挙げることができる。
前記2)のリン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類および次亜リン酸金属塩類とは、前記1)のリン化合物と周期律表第1族及び第2族、マンガン、亜鉛、アルミニウム、アンモニア、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、ジアミンとの塩を挙げることができる。
前記3)のリン酸エステルおよび亜リン酸エステル類とは下記一般式で表される。
リン酸エステル;(OR)PO(OH)3−n
亜リン酸エステル;(OR)P(OH)3−n
【0019】
ここで、nは1、2あるいは3を表し、Rはアルキル基、フェニル基、あるいはそれらの基の一部が炭化水素基などで置換されたアルキル基を表す。nが2以上の場合、前記一般式内の複数の(RO)基は同じでも異なっていてもよい。
前記Rとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、ノニル基、デシル基、ステアリル基、オレイル基などの脂肪族基、フェニル基、ビフェニル基などの芳香族基、あるいはヒドロキシル基、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基などの置換基を有する芳香族基などをあげることができる。
【0020】
本発明の好ましいリン化合物は、リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類あるいは次亜リン酸金属塩類から選ばれる1種以上である。中でも、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸から選ばれるリン化合物と、周期律表第1族及び第2族、マンガン、亜鉛、アルミニウムから選ばれる金属との塩であることが好ましい。より好ましくは、リン酸、亜リン酸および次亜リン酸から選ばれるリン化合物と周期律表第1族金属とからなる金属塩であり、更に好ましくは亜リン酸あるいは次亜リン酸と周期律表第1族金属とからなる金属塩であり、もっとも好ましくは次亜リン酸ナトリウム(NaHPO)あるいはその水和物(NaHPO・nHO)である。
【0021】
(A)成分中のリン元素の濃度が1〜500ppmになるように配合することが好ましい。より好ましくは、1〜400ppmppm、さらに好ましくは、5〜400ppm、特に好ましくは、50〜400ppmである。
また本発明の樹脂組成物中には、リン元素を1〜500ppm含むことが好ましい。より好ましくは、5〜400ppm、さらに好ましくは、35〜200ppmである。
リン元素の定量は、例えば、装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)にて定量できる。
【0022】
本発明の半芳香族ポリアミド(A)の耐熱安定性を向上させる目的で公知となっている特開平1−163262号公報に記載されてあるような金属系安定剤も、問題なく使用することができる。
これら金属系安定剤の中でも、CuI、CuCl 、酢酸銅、ステアリン酸セリウム等が挙げられ、CuI、酢酸銅等に代表される銅化合物がより好ましい。さらに好ましくはCuIである。これら銅化合物の好ましい配合量としては、該(A)成分中の銅元素の濃度が1〜200ppmになるように配合することが好ましい。より好ましくは1〜100ppm、さらに好ましくは1〜70ppmである。
【0023】
また、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等に代表されるハロゲン化アルキル金属化合物も好適に使用することができる。これらハロゲン化アルキル金属化合物の好ましい配合量としては、該(A)成分中のハロゲン元素の濃度が10〜2000ppmになるように配合することが好ましい。より好ましくは100〜1500ppm、さらに好ましくは100〜1000ppmである。
特に、銅化合物とハロゲン化アルキル金属化合物を併用添加することが好ましい。その銅元素とハロゲン元素の比(銅元素/ハロゲン元素)は、1/5〜1/30が好ましく、1/10〜1/20がより好ましい。
【0024】
本発明の樹脂組成物中には、ハロゲン化アルカリ金属化合物及び/又は銅化合物を含むことが好ましく、銅元素を1〜200ppm含むことがより好ましい。より好ましくは1〜100ppm、さらに好ましくは1〜30ppm含むことである。
銅元素の定量は、リン元素の定量同様に、例えば、装置はThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により定量することができる。
ハロゲン元素の定量は、試料をフラスコ燃焼法により分解した後、イオンクロマトグラフィー(IC)、例えば、横河電機社製IC7000S型を用いて定量することができる。
【0025】
本発明の半芳香族ポリアミド(A)は、濃硫酸中30℃の条件下で測定した極限粘度[η]が、0.6〜2.0dl/gであることが好ましく、0.7〜1.5dl/gであることがより好ましく、0.8〜1.3dl/gであることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物中に、(A)成分以外の他のポリアミドを本発明の目的を行なわない範囲で添加しても構わない。具体的には、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6T系およびこれらのコポリマーおよびブレンド等が挙げられる。
更に、ポリアミドに添加することが可能な公知の添加剤等も(A)成分100質量部に対して10質量部未満の量で添加しても構わない。
本発明で(B)成分として使用できるポリフェニレンエーテルとは、下記式の構造単位からなる、単独重合体及び/または共重合体である。
【0026】
【化1】

【0027】
〔式中、Oは酸素原子、各Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級もしくは第二級のC1〜C7アルキル基、フェニル基、C1〜C7ハロアルキル基、C1〜C7アミノアルキル基、C1〜C7ヒドロカルビロキシ基、又はハロヒドロカルビロキシ基(但し、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている)を表わす。〕
【0028】
本発明のポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、日本国特公昭52−17880号公報に記載されているような2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)のごときポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
【0029】
これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体、またはこれらの混合物である。
また、2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体を使用する場合の各単量体ユニットの比率は、ポリフェニレンエーテル共重合体全量を100質量%としたときに、約80〜約90質量%の2,6−ジメチル−1,4−フェノールと、約10〜約20質量%の2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールからなる共重合体がさらに好ましい。
【0030】
本発明で用いるポリフェニレンエーテルの製造方法は公知の方法で得られるものであれば特に限定されるものではない。例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び同63−152628号公報等に記載された製造方法等が挙げられる。
本発明で使用することのできるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜0.70dl/gの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60dl/gの範囲、より好ましくは0.40〜0.55dl/gの範囲である。
【0031】
本発明においては、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドしたものであっても何ら問題なく使用することができる。例えば、還元粘度0.45dl/g以下のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルの混合物、還元粘度0.40dl/g以下の低分子量ポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dl/g以上のポリフェニレンエーテルの混合物等が挙げられるが、もちろん、これらに限定されることはない。
また、本発明で使用できるポリフェニレンエーテルは、全部が変性されたポリフェニレンエーテル又は未変性のポリフェニレンエーテルと変性されたポリフェニレンエーテルとの混合物であっても構わない。
【0032】
ここでいう変性されたポリフェニレンエーテルとは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたポリフェニレンエーテルを指す。
該変性されたポリフェニレンエーテルの製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下で100℃以上、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の温度範囲でポリフェニレンエーテルを溶融させることなく変性化合物と反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度以上360℃以下の温度範囲で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下でポリフェニレンエーテルのガラス転移温度未満の温度で、ポリフェニレンエーテルと変性化合物を溶液中で反応させる方法等が挙げられる。これらいずれの方法でも構わないが、(1)及び(2)の方法が好ましい。
【0033】
次に分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物について具体的に説明する。
分子内に炭素−炭素二重結合とカルボン酸基及び/又は酸無水物基を同時に有する変性化合物としては、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸及びこれらの酸無水物などが挙げられる。これらの内フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、フマル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
また、これら不飽和ジカルボン酸のカルボキシル基の、1個または2個のカルボキシル基がエステル化された化合物も使用可能である。
【0034】
分子内に炭素−炭素二重結合とグリシジル基を同時に有する変性化合物としては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、エポキシ化天然油脂等が挙げられる。
これらの中でグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレートが特に好ましい。
分子内に炭素−炭素二重結合と水酸基を同時に有する変性化合物としては、アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ペンタジエン−3−オールなどの一般式C2n−3OH(nは正の整数)の不飽和アルコール、一般式C2n−5OH、C2n−7OH(nは正の整数)等の不飽和アルコール等が挙げられる。
【0035】
上述した変性化合物は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の変性化合物の添加量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、更に好ましくは0.3〜5質量部である。
上記ラジカル開始剤の例としては、公知の有機化酸化物、ジアゾ化合物などが挙げられる。具体例としては、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
ラジカル開始剤を用いて変性されたポリフェニレンエーテルを製造する際の好ましいラジカル開始剤の量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.001〜1質量部である。
【0036】
また、変性されたポリフェニレンエーテル中の変性化合物の付加率は、0.01〜5質量%が好ましい。より好ましくは0.1〜3質量%である。
該変性されたポリフェニレンエーテル中には、未反応の変性化合物及び/または、変性化合物の重合体が残存していても構わない。
また、ポリフェニレンエーテルの安定化の為に公知となっている各種安定剤も好適に使用することができる。安定剤の例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の金属系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、リン酸エステル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤である。これらの好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して5質量部未満である。
【0037】
更に、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な公知の添加剤等もポリフェニレンエーテル100質量部に対して10質量部未満の量で添加しても構わない。
本発明の樹脂組成物中の(A)成分が連続相を形成し、(B)成分が平均粒子径0.1〜2μmの分散相として存在することが好ましい。また、耐衝撃性および流動性を高次にバランスさせるためには、(B)成分の平均粒子径が、0.1〜1.6μmであることがより好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.4μm、特に好ましくは0.6〜1.2μmである。
また、(A)成分が連続相を形成し、(B)成分が分散相を形成し、PPE粒子の99%が2.0μm以下の粒子であることが好ましい。より好ましくは1.5μm以下である。
【0038】
なお、本発明におけるPPE分散粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡写真法により求めることができ、次のように算出した。すなわち、ペレットあるいは成型品より切り取った超薄切片の透過電子顕微鏡写真(5000倍)を調整し、分散粒子径d、粒子数niを求め、PPE分散粒子の数平均粒子径(=Σd/ni)を算出する。
この場合、粒子形状が球形とみなせない場合には、その短径と長径を測定し、両者の和の1/2とした。また、平均粒子径の算出には最低1000個の粒子径を測定する。
本発明における(A)成分と(B)成分のポリフェニレンエ−テルの質量比は、ポリアミド/ポリフェニレンエーテルが90/10〜30/70である。より好ましくは70/30〜40/60、さらに好ましくは70/30〜45/55である。
本発明の樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる目的で、衝撃改良材(D)を添加することが好ましい。
【0039】
本発明で使用できる衝撃改良材としては、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体及びその水素添加物、エチレン−α−オレフィン共重合体、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、及びスチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)からなる群より選ばれる1種以上を挙げることができる。
本発明の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上が芳香族ビニル化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物であるブロックを指す。より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0040】
この場合、例えば芳香族ビニル化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物もしくは他の化合物が結合されているブロックの場合であっても、該ブロックの50質量%が芳香族ビニル化合物より形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロク共重合体とみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
芳香族ビニル化合物の具体例としてはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらから選ばれた1種以上の化合物が用いられるが、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。
【0041】
ブロック共重合体の共役ジエン化合物ブロック部分のミクロ構造は1,2−ビニル含量もしくは1,2−ビニル含量と3,4−ビニル含量の合計量が5〜80%が好ましく、さらには10〜50%が好ましく、15〜40%が最も好ましい。
本発明におけるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック[S]と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック[B]が、S−B型、S−B−S型、S−B−S−B型から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体である事が好ましく、これらの混合物であっても構わない。これらの中でもS−B型、S−B−S型、又はこれらの混合物がより好ましく、S−B−S型がもっとも好ましい。
【0042】
また、本発明で使用することのできる芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体は、水素添加されたブロック共重合体であることがより好ましい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加処理することにより、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合を0を越えて100%の範囲で制御したものをいう。該水素添加されたブロック共重合体の好ましい水素添加率は80%以上であり、最も好ましくは98%以上である。
これらブロック共重合体は水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体の混合物としても問題なく使用可能である。
【0043】
また、これら芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体は、本発明の趣旨に反しない限り、結合形式の異なるもの、芳香族ビニル化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2−結合ビニル含有量もしくは1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量の異なるもの、芳香族ビニル化合物成分含有量の異なるもの等を混合して用いても構わない。
本発明に使用するブロック共重合体として、低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体との混合物であることが望ましい。具体的には、数平均分子量120,000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量120,000以上の高分子量ブロック共重合体の混合物である。より好ましくは、数平均分子量120,000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量170,000以上の高分子量ブロック共重合体の混合物である。
【0044】
これら低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体の質量比は、低分子量ブロック共重合体/高分子量ブロック共重合体=95/5〜5/95である。好ましくは90/10〜10/90である。
本発明に使用するブロック共重合体は、(D1)芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを55質量%以上90質量%未満の量で含有するブロック共重合体と、(D2)芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを20質量%以上55質量%未満の量で含有するブロック共重合体から構成される2種類以上のブロック共重合体の混合物であることが好ましい。
【0045】
また、その混合物中の芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量が10,000以上30,000未満、かつ、共役ジエン化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量が50,000以上100,000未満の範囲にあることがより好ましい。さらに好ましくは、ブロック共重合体の混合物中の芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量が10,000以上25,000未満、かつ、共役ジエン化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量が50,000以上80,000未満であることがさらに好ましい。この範囲内の芳香族ビニル重合体ブロックを持つブロック共重合体を用いることにより、流動性を保持しながら耐衝撃性の中でも特に面衝撃をより向上させることができる。
【0046】
各ブロック共重合体の数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(GPC)を用いて、紫外分光検出器で測定し、標準ポリスチレンで換算した数平均分子量の事を指す。この時、重合時の触媒失活による低分子量成分が検出されることがあるが、その場合は分子量計算に低分子量成分は含めない。
1種類のブロック共重合体の芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量は、上述したブロック共重合体の数平均分子量を用いて、下式により求めることができる。
Mn(a),n={Mn×a/(a+b)}/N(a) (2)
上式中において、Mn(a),nはブロック共重合体nの芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量、Mnはブロック共重合体nの数平均分子量、aはブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、bはブロック共重合体n中の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、およびN(a)はブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの数を表す。
【0047】
さらに、ブロック共重合体は2種類以上のブロック共重合体の混合物であるため、混合物中の芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量は、下式により求めることができる。
Mn(a),av=Σ(Mn(a),n×Cn) (3)
上式中において、Mn(a),avはブロック共重合体の混合物中の芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量、Mn(a),nはブロック共重合体nの芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量、Cnはブロック共重合体混合物中のブロック共重合体nの質量分率を表す。
【0048】
一方、1種類のブロック共重合体の共役ジエン化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量は、上述したブロック共重合体の数平均分子量を用いて、下式により求めることができる。
Mn(b),n={Mn×b/(a+b)}/N(b) (4)
上式中において、Mn(b),nはブロック共重合体nの共役ジエン化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量、Mnはブロック共重合体nの数平均分子量、aはブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、bはブロック共重合体n中の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、およびN(b)はブロック共重合体n中の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの数を表す。
【0049】
さらに、ブロック共重合体は2種類以上のブロック共重合体の混合物であるため、混合物中の共役ジエン化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量は、下式により求めることができる。
Mn(b),av=Σ(Mn(b),n×Cn) (5)
上式中において、Mn(b),avはブロック共重合体の混合物中の共役ジエン化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量、Mn(b),nはブロック共重合体nの共役ジエン化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量、Cnはブロック共重合体混合物中のブロック共重合体nの質量分率を表す。
【0050】
また、本発明で使用するブロック共重合体は、全部が変性されたブロック共重合体であっても、未変性のブロック共重合体と変性されたブロック共重合体との混合物であっても構わない。
ここでいう変性されたブロック共重合体とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたブロック共重合体を指す。
該変性されたブロック共重合体の製法としては、(1)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下でブロック共重合体の軟化点温度以上250℃以下の温度範囲で変性化合物と溶融混練し反応させる方法、(2)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下でブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶液中で反応させる方法、(3)ラジカル開始剤の存在下又は非存在下でブロック共重合体の軟化点以下の温度で、ブロック共重合体と変性化合物を溶融させることなく反応させる方法等が挙げられる。これらいずれの方法でも構わないが、(1)の方法が好ましく、更には(1)の中でもラジカル開始剤存在下で行う方法が最も好ましい。
【0051】
ここでいう分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合または、三重結合及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する少なくとも1種の変性化合物とは、変性されたポリフェニレンエーテルで述べた変性化合物と同じものが使用できる。
本発明における衝撃改良材(D)の配合量としては、(A)成分であるポリアミドと(B)成分であるポリフェニレンエーテルの合計量100質量部に対し、1〜35質量部であることが好ましく、耐熱性および流動性の観点から、3〜30質量部がより好ましい。
本発明において、公知のポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤を添加することが可能である。
【0052】
相溶化剤を使用する主な目的は、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物の物理的性質を改良することである。本発明で使用できる相溶化剤とは、ポリフェニレンエーテル、ポリアミドまたはこれら両者と相互作用する多官能性の化合物を指すものである。この相互作用は化学的(たとえばグラフト化)であっても、または物理的(たとえば分散相の表面特性の変化)であってもよい。
いずれにしても得られるポリアミド−ポリフェニレンエーテル混合物は改良された相溶性を示す。
本発明において使用することのできる相溶化剤の例としては、WO01/81473号明細書中に詳細に記載されており、これら公知の相溶化剤はすべて使用可能であり、併用使用も可能である。
【0053】
これら、種々の相溶化剤の中でも、特に好適な相溶化剤の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、クエン酸、フマル酸が挙げられる。特に好ましくは、マレイン酸、無水マレイン酸である。
本発明における相溶化剤の好ましい量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの混合物100質量部に対して0.01〜2質量部であり、より好ましくは0.1〜1質量部、最も好ましくは0.1〜0.5質量%である。
さらに、本発明ではスチレン系重合体を含んでいてもよい。本発明でいうスチレン系重合体とは、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。スチレン系重合体を含むことで、本発明の課題を達成する他に、耐候性を向上することができる。スチレン系重合体の好ましい配合量としては、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対し、50質量部未満の量である。
【0054】
本発明の板状無機フィラー(C)は、平均粒子径9μm以上20μm以下でかつ、粒子径の小さい方から25%の粒径(d25%)と75%の粒径(d75%)の比(d75%/d25%)が1.0以上2.5以下である。より好ましい板状無機フィラーの平均粒子径は、10μmより大きく20μm以下であり、さらに好ましくは10μmより大きく16μm以下である。また、この板状無機フィラーの粒子径の測定において、粒子径の小さい方から25%の粒径(d25%)と75%の粒径(d75%)の比(d75%/d25%)が1.5以上2.2以下であることがより好ましく、1.7以上2.2以下であることがさらに好ましい。また、粒子径10μm以下の割合が40%以下であることがさらに好ましい。すなわち、平均粒子径が9μm以上20μm以下の比較的大きい粒子径で、かつ粒子径分布の狭い板状無機フィラーを使用することで、流動性と面衝撃強度のバランスを更に高くする事が可能となる。
【0055】
ここでいう平均粒子径および粒子径分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒子径である。また、板状無機フィラーの分散溶媒としてエタノールを用いて測定される値である。
本発明の板状無機フィラーは、上記の形状であれば、例えばカオリナイト、タルク、絹雲母、白雲母及び金雲母等の雲母類、クロライト、モンモリロナイト、ハロサイト等の層状粘土鉱物、ガラスフレーク、金属板状粒子等の人造板状フィラーを粉砕及び/又は篩分けして得たものを使用することができる。特に、珪酸マグネシウムを主成分とする天然鉱物を精製、粉砕及び分級したタルクが好ましい。また、人工的に合成したものも使用可能である。これらの充填剤を一種以上配合することが可能である。
【0056】
本発明の板状無機フィラーがタルクであることが好ましい。また広角X線回折によるタルクの(0 0 2)回折面の結晶子径が600Å以上であることがより好ましい。さらに好ましくは、(0 0 2)回折面の結晶子径が620Å以上、特に好ましくは650Å以上である。
ここでいうタルクの(0 0 2)回折面は、広角X線回折装置を用いて、タルクMgSi10(OH)が同定され、その層間距離がタルクの(0 0 2)回折面による格子面間隔である約9.39Åに一致することにより確認できる。また、タルクの(0 0 2)回折面の結晶子径は、そのピークの半値幅より算出される。
【0057】
また、これらのタルクには、表面処理剤として、高級脂肪酸またはそのエステル、塩等の誘導体(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、ステアリン酸エチルエステル等)やカップリング剤(例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等)を必要により使用することができる。その使用量としてはタルクに対して0.05〜5質量%であることが好ましい。
これらタルクの配合量は、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して10〜30質量部である。
タルクは、ポリアミドの重合から成形までの任意の段階で添加することができる。好ましくは、押出工程および成形工程(ドライブレンドを含む)の段階で添加することである。
【0058】
本発明では、導電材(E)を添加しても構わない。
本発明で使用可能な導電材(E)の具体例としては、導電性カーボンブラック、カーボンフィブリル(カーボンナノチューブともいう)、カーボンファイバー等が挙げられる。特に好ましくは、導電性カーボンブラックおよびカーボンフィブリルである。
本発明で使用できる導電性カーボンブラックとしては、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が250ml/100g以上のものが好ましく、より好ましくはDBP吸油量が300ml/100g以上、更に好ましくは350ml/100g以上のカーボンブラックである。ここで言うDBP吸油量とは、ASTM D2414に定められた方法で測定した値である。
【0059】
また、本発明で使用できる導電性カーボンブラックはBET比表面積(JIS K6221−1982)が200m/g以上のものが好ましく、更には400m/g以上のものがより好ましい。市販されているものを例示すると、ケッチェンブラックインターナショナル社のケッチェンブラックECやケッチェンブラックEC−600JD等が挙げられる。
本発明で使用できるカーボンフィブリルとしては、米国特許4663230号明細書、米国特許5165909号公報、米国特許5171560号公報、米国特許5578543号明細書、米国特許5589152号明細書、米国特許5650370号明細書、米国特許6235674号明細書等に記載されている繊維径が75nm未満で中空構造をした分岐の少ない炭素系繊維を言う。また、1μm以下のピッチでらせんが一周するコイル状形状のものも含まれる。市販されているものとしては、ハイペリオンキャタリシスインターナショナル社から入手可能なカーボンフィブリル(BNフィブリル)を挙げることができる。
【0060】
本発明で使用できるカーボンファイバーとしては、ポリアクリロニトリル系カーボンファイバー、レーヨン系カーボンファイバー、リグニン系カーボンファイバー、ピッチ系カーボンファイバー等が挙げられる。これらを単独で使用しても構わないし、2種類以上を併用しても構わない。
本発明における導電材(E)の好ましい配合量は、(A)および(B)成分の合計量100質量部に対して、0.5〜20質量部である。より好ましくは、0.5〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部、特に好ましくは1〜2質量%である。
これら導電材の添加方法に関しては特に制限はないが、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの溶融混合物中に、該導電材を添加して溶融混練する方法、ポリアミドに該導電材を予め配合したマスターバッチの形態で添加する方法等が挙げられる。特に、ポリアミド中に該導電材を配合したマスターバッチの形態で添加することが好ましい。
【0061】
該導電材がカーボンフィブリルの場合には、マスターバッチとして、ハイペリオンキャタリストインターナショナル社から入手可能なポリアミド66/カーボンフィブリルマスターバッチ(商品名:Polyamide66 with Fibril TM Nanotubes RMB4620−00:カーボンフィブリル量20%)を使用することができる。
これらマスターバッチ中の導電材の量としては、マスターバッチを100質量%としたとき、導電材の量が5〜25質量%である事が望ましい。
これらマスターバッチの製造方法の例としては、上流側に1箇所と下流側に1箇所以上の供給口を有する二軸押出機を使用して、上流側より(A)成分であるポリアミドを供給し、下流側より導電材を添加して溶融混練する製造方法、上流側より(A)成分であるポリアミドの一部を供給し、下流側より残りのポリアミドと導電材を同時添加して溶融混練する製造方法が挙げられる。
【0062】
また、これらマスターバッチを製造する際の加工機械の設定温度として特に制限はないが、240〜350℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは240〜330℃の範囲である。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の無機充填材を添加しても構わない。本発明において使用できる無機充填材の例としては、ガラス繊維、ウォラストナイト、ゾノトライト、酸化チタン、チタン酸カリウム、酸化亜鉛等が挙げられる。中でもガラス繊維、ウォラストナイト、クレイ、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましく、より好ましくはガラス繊維、ウォラストナイト、酸化チタンである。
【0063】
本発明で使用することができるガラス繊維に特に制限はなく、長繊維タイプのロービング、短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバー等から選択して使用できる。これらの中でも、平均繊維径5〜20μmのものが好ましく、より好ましくは平均繊維径8〜17μmのものである。
これらのガラス繊維には、カップリング剤(例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等)等で表面処理しても構わない。また、集束剤が塗布されていてもよく、エポキシ系、ウレタン系、ウレタン/マレイン酸変性系、ウレタン/アミン変性系の化合物が好ましく使用できる。これら表面処理剤と集束剤は併用してもよい。これらガラス繊維の好ましい配合量は、(A)および(B)成分の合計100質量部に対して2〜80質量部である。より好ましくは2〜70質量部であり、さらに好ましくは5〜60質量部である。
【0064】
本発明で使用することができるウォラストナイトは、珪酸カルシウムを成分とする天然鉱物を精製、粉砕及び分級したものである。また、人工的に合成したものも使用可能である。ウォラストナイトの大きさとしては、平均粒子径2〜9μm、アスペクト比5以上のものが好ましく、より好ましくは平均粒子径3〜7μm、アスペクト比5以上のもの、さらに好ましくは平均粒子径3〜7μm、アスペクト比8以上30以下のものである。
また、これらのウォラストナイトには、表面処理剤として、高級脂肪酸またはそのエステル、塩等の誘導体(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、ステアリン酸エチルエステル等)やカップリング剤(例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等)を必要により使用することができる。その使用量としてはウォラストナイトに対して0.05〜5質量%であることが好ましい。
これらウォラストナイトの好ましい配合量は、(A)および(B)成分の合計100質量部に対して2〜80質量部である。より好ましくは2〜70質量部であり、さらに好ましくは5〜60質量部である。
【0065】
本発明では、上記した成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて付加的成分を添加しても構わない。
付加的成分の例を以下に挙げる。
無機充填材と樹脂との親和性を高める為の公知の密着性改良剤、難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、有機燐酸エステル化合物、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、可塑剤(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)及び、三酸化アンチモン等の難燃助剤、帯電防止剤、各種過酸化物、硫化亜鉛、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等である。
【0066】
これらの成分の具体的な添加量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルの合計100質量部に対して、合計で100質量部を超えない範囲である。
本発明の樹脂組成物は、ASTM D 256に準拠して測定した23℃におけるノッチ付アイゾット衝撃値が50J/m以上であることが好ましい。
本発明の組成物を得るための具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられる。中でも二軸押出機が好ましく、特に、上流側供給口と1カ所以上の下流側供給口を備えたスクリュー直径25mm以上でL/Dが30以上の二軸押出機が好ましく、スクリュー直径45mm以上でL/Dが30以上の二軸押出機が最も好ましい。
この際の加工機械のシリンダー設定温度は特に限定されるものではなく、通常240〜360℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができる。
【0067】
本発明の樹脂組成物を得るための製法は特に限定はないが、その例のいくつかを以下に列挙する。
1.少なくとも上流部に1箇所の供給口を備えた二軸押出機を用いて、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド及び板状無機フィラー、さらに付加的に導電材(マスターバッチを含む)を供給し溶融混練する方法。
2.少なくとも上流部(第1供給口)及び中流部(第2供給口)の2箇所の供給口を備えた二軸押出機を用いて、第1供給口よりポリフェニレンエーテル及びゴム状重合体を供給し溶融混練した後、第2供給口よりポリアミド及び板状無機フィラー、さらに付加的に導電材(マスターバッチを含む)を供給し溶融混練する方法。
3.少なくとも上流部(第1供給口)、中流部(第2供給口)、下流部(第3供給口)の3箇所の供給口を備えた二軸押出機を用いて、第1供給口よりポリフェニレンエーテル及びゴム状重合体を供給し溶融混練した後、第2供給口よりポリアミド、さらに付加的に導電材(マスターバッチを含む)を供給し溶融混練し、更に第3供給口より板状無機フィラー、さらに付加的に導電材(マスターバッチを含む)を供給し溶融混練する方法、等が挙げられる。
これらの中でも上記3の方法が最も好ましい。また特に、板状無機フィラーおよび導電材の一部または全部をマスターバッチの形態で添加することがより好ましい。
【0068】
また、溶融混練温度も特に限定されるものではないが、通常240〜360℃の中から好適な組成物が得られる条件を任意に選ぶことができる。
本発明の樹脂組成物を用いて成形品を製造するに当たっては、目的とする成形品の種類、用途、形状などに応じて、一般に用いられている種々の成形方法や成形装置が使用できる。何ら限定されるものではないが、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロ−成形、カレンダ−成形、流延成形などの任意の成形法によって成形品を製造することができ、またそれらの成形技術の複合によっても成形を行うことができる。さらに、各種熱可塑性樹脂またはその組成物、熱硬化性樹脂、紙、布帛、金属、木材、セラミックスなどの各種の材料との複合成形体とすることもできる。
【0069】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミドおよびポリフェニレンエ−テル系樹脂が本来有する、優れた特性をバランス良く兼ね備え、優れた耐熱性を有し、かつ低吸水性であり、しかも耐衝撃性や成形性に優れているので、それらの特性を生かして、自動車部品、工業材料、産業資材、電気電子部品、機械部品、事務機器用部品、家庭用品、シ−ト、フイルム、繊維、その他の任意の形状および用途の各種成形品の製造に有効に使用することができる。
例えばリレーブロック材料等に代表されるオートバイ・自動車の電装部品、ICトレー材料、各種ディスクプレーヤー等のシャーシー、キャビネット、SMTコネクター等の電気・電子部品、各種コンピューターおよびその周辺機器等のOA部品や機械部品、さらにはオートバイのカウルや、自動車のバンパー・フェンダー・ドアーパネル・各種モール・エンブレム・アウタードアハンドル・ドアミラーハウジング・ホイールキャップ・ルーフレール及びそのステイ材・スポイラー等に代表される外装品や、インストゥルメントパネル、コンソールボックス、トリム等に代表される内装部品、ラジエータタンク等の自動車アンダーウード部品、シリンダーヘッドカバー等の自動車エンジン周り部品等に好適に使用できる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に示されたものに限定されるものではない。
(使用した原料)
(1)半芳香族ポリアミド(PA9T)
(1−1)ポリアミド9T(以下、PA9T−1と略記)
特開2000−212433号公報の実施例に記載の方法に従い、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を3272.96g(19.7モル)、ジアミン成分として1,9−ノナンジアミン2532.64g(16.0モル)および2−メチル−1,8−オクタンジアミン633.16g(4.0モル)、末端封止剤として安息香酸73.26g(0.60モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物6.5g(原料に対して0.1質量%)および蒸留水6リットルを内容積20リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間撹拌し、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、オートクレーブは22kg/cm2 まで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を22kg/cm2 に保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を10kg/cm2 まで下げ、更に1時間反応させて、極限粘度[η]が0.25dl/gのプレポリマーを得た。これを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。これを230℃、0.1mmHg下にて、10時間固相重合し、ポリアミドの粒状ポリマーを得た。得られた粒状ポリマーをシリンダー温度330℃に設定した二軸押出機を用いてペレット状のPA9T−1を得た。
融点:304℃、極限粘度[η]:1.20dl/g、末端封止率:90%、末端アミノ基濃度:10μmol/g、末端カルボキシル基:60μmol/g、リン元素含有量:300ppm
【0071】
(1−2)ポリアミド9T(以下、PA9T−2と略記)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を3322.80g(20.0モル)、ジアミン成分として1,9−ノナンジアミン2532.64g(16.0モル)および2−メチル−1,8−オクタンジアミン633.16g(4.0モル)、オクチルアミン103.41g(0.8モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物6.5g(原料に対して0.1質量%)および蒸留水6リットルを使用し、(1−1)と同様な方法により重合を行い、ポリアミドの粒状ポリマーを得た。得られた粒状ポリマー100重量部をシリンダー温度330℃に設定した二軸押出機を用いてペレット状のPA9T−2を得た。
融点:304℃、極限粘度[η]:1.10dl/g、末端封止率:71%、末端アミノ基濃度:60μmol/g、末端カルボキシル基:20μmol/g、リン元素含有量:290ppm
【0072】
(2)ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略記)
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
還元粘度:0.52dl/g、(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)
(3)衝撃改良材
ポリスチレン−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体
(以下、SEBSと略記)
(3−1)SEBS−1
数平均分子量=100,000
スチレン成分合計含有量=30%
(3−2)SEBS−2
数平均分子量=77,000
スチレン成分合計含有量=67%
(4)無水マレイン酸(以下、MAHと略記)
商品名:CRYSTALMAN−AB(日本油脂社製)
【0073】
(5)板状無機フィラー
(タルク−1)
平均粒子径:8.89μm、メジアン径:8.38μm
d75%/d25%=1.64、(0 0 2)回折面の結晶子径=580Å
粒子径10μm以下の割合=68%、粒子径20μm以上の割合=1%
(タルク−2)
平均粒子径:11.85μm、メジアン径:10.68μm
d75%/d25%=1.91、(0 0 2)回折面の結晶子径=620Å
粒子径10μm以下の割合=45%、粒子径20μm以上の割合=9%
(タルク−3)
平均粒子径:13.62μm、メジアン径:12.31μm
d75%/d25%=1.88、(0 0 2)回折面の結晶子径=670Å
粒子径10μm以下の割合=33%、粒子径20μm以上の割合=15%
(タルク−4)
平均粒子径:17.67μm、メジアン径:12.41μm
d75%/d25%=2.64、(0 0 2)回折面の結晶子径=670Å
粒子径10μm以下の割合=38%、粒子径20μm以上の割合=27%
(6)導電材
ポリアミド66(粘度数:120(ISO307に従い96%硫酸中で測定))を90質量部と、導電性カーボンブラック(ケッチェンブラックEC600−JD:ケッチェンブラックインターナショナル社製)を10質量部とを、二軸押出機を用いて溶融混練し、導電性マスターバッチ(PA66/KB−MB)を得た。
【0074】
(評価方法)
以下に、解析、評価方法について述べる。
<Izod衝撃値>
得られた樹脂組成物ペレットを、日本国東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度を320℃、金型温度を130℃に設定)にて厚み3.2mmの短冊成形片を成形した。ノッチ付きIzod衝撃試験は、ASTM D256に準拠し、厚み3.2mmのノッチ付衝撃強度を23℃および−30℃の温度条件下で測定した。
<面衝撃強度(Dart)>
得られた樹脂組成物ペレットを、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度を320℃、金型温度を130℃に設定)にて、射出時間20秒、冷却時間30秒にて50×90×2.5mmの平板試験片を作成し、グラフィックインパクトテスター(東洋精機社製)を用いて、ホルダ径φ40mm、ストライカー径12.7mm、ストライカー重量6.5kgを使用し、高さ128cmから衝撃試験を行い、全吸収エネルギーを23℃の温度条件下で測定した。
【0075】
<薄肉流動性>
得られた樹脂組成物ペレットを日精樹脂工業(株)製FE120成形機を用いて、厚み2mmのスパイラルフローを測定した。成形条件は、シリンダー温度:330℃、金型温度:130℃、射出圧力:150MPaとした。
<線膨張係数>
得られた樹脂組成物ペレットを80℃で3時間乾燥した後、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度320℃、金型温度130℃に設定)にて、射出時間20秒、冷却時間20秒にて50×90×2.5mmの平板試験片を作成し、試験を実施した。
平板の中央部分から、10×4×2.5mmの試験片を切出し、JIS K7197に準拠して、TMA−7(パーキンエルマー社製)を用いて、昇温速度=5℃/分、荷重=10mNで、−30〜80℃の線膨張係数を測定した。
【0076】
<導電性>
得られた樹脂組成物ペレットを80℃で3時間乾燥した後、東芝IS−80EPN成形機(シリンダー温度320℃、金型温度130℃に設定)を用いて、ダンベルバーとしてISO294の記載の如く成形した。この試験片の両端を折り取って均一な断面積10×4mm、長さ70mmで両端に破断面を持つ試験片とした。
試験片の折り取り方については、−75〜−70℃のドライアイス/メタノールの中に、予めカッターナイフでキズをつけた試験片を1時間浸漬後、折り取る方法で行った。この両端の破断面に銀塗料を塗布し、エレクトロメーター(アドバンテスト製、R8340A)を用いて、250Vの印加電圧で両方の破断面間の体積抵抗率を測定した。測定は5個の異なる試験片を用いて行い、その加算平均値を導電性(体積固有抵抗値)とした。
【0077】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
上流部(第1供給口)、中流部(第2供給口)および下流部(第3供給口)の供給口を有する二軸押出機[ZSK−25:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流側供給口から下流側供給口の手前までを320℃、下流側供給口からダイまでを280℃に設定し、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/hで、表1記載の割合となるように、第1供給口より、ポリフェニレンエーテル、衝撃改良材を供給し、第2供給口より、ポリアミド9T(付加的に導電性マスターバッチ(PA66/KB−MB))を供給し、更に、第3供給口より、種々のタルクを供給して溶融混練することにより、樹脂組成物のペレットを作成した。
得られた該ペレットについて上述した各種試験を行った。組成および結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
平均粒子径9μm以上20μm以下でかつ、粒子径の小さい方から25%の粒径(d25%)と75%の粒径(d75%)の比(d75%/d25%)が1.0以上2.5以下である板状無機フィラーを使用することで、優れた寸法安定性を保持しながら面衝撃強度と流動性のバランスを向上させた組成物が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明により、優れた耐熱性および低吸水性で寸法安定性を保持しながら、流動性(特に、薄肉流動性)、衝撃特性のバランスを高次にバランスさせたポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得ることができる。電気・電子部品、OA部品、車両部品、機械部品などの幅広い分野に使用することができる。とりわけ、大型成形品が必要とされる自動車等の外装部品に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸単位を60〜100モル%含有するジカルボン酸単位(a)と、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位を60〜100モル%含有するジアミン単位(b)とからなる半芳香族ポリアミド(A)を90〜30質量部、ポリフェニレンエ−テル(B)を10〜70質量部、および平均粒子径9μm以上20μm以下でかつ、粒子径の小さい方から25%の粒径(d25%)と75%の粒径(d75%)の比(d75%/d25%)が1.0以上2.5以下である板状無機フィラー(C)を10〜30質量部含有することを特徴とするポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項2】
(C)板状無機フィラーの平均粒子径が10μmより大きく20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(C)板状無機フィラーの粒子径の小さい方から25%の粒径(d25%)と75%の粒径(d75%)の比(d75%/d25%)が1.5以上2.2以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(C)板状無機フィラーがタルクであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分の末端アミノ基濃度が1μmol/g以上45μmol/g以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(A)成分のポリアミドの末端アミノ基と末端カルボキシル基の濃度比が1.0以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(A)成分中の分子鎖の末端基が末端封止剤により封止されている割合(末端封止率)が、40%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(A)成分中の1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位とのモル比が、1,9−ノナンジアミン単位/2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位=100/0〜20/80の範囲内であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
該樹脂組成物中に、(A)および(B)成分の合計100質量部に対し、衝撃改良材(D)を1〜35質量部含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(D)成分が、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなる芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体及び、または水素添加されたブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
(D)成分が、(D1)芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを55重量%以上90重量%未満の量で含有するブロック共重合体と、(D2)芳香族化合物を主体とする重合体ブロックを20重量%以上55重量%未満の量で含有するブロック共重合体から構成される2種類以上のブロック共重合体の混合物であり、混合物中の芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量が10,000以上30,000未満であり、かつ、共役ジエン化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量が50,000以上100,000未満であることを特徴とする請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
該樹脂組成物が、マレイン酸、無水マレイン酸、クエン酸、フマル酸からなる相溶化剤を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項13】
該樹脂組成物中に、リン元素を1〜500ppm含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項14】
(A)成分中のリン元素の濃度が1〜500ppmである半芳香族ポリアミドを使用することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項15】
該樹脂組成物中に、銅元素を1〜200ppm含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項16】
(B)成分が、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)及び/又は2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項17】
(E)成分として、導電材を含んでなることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項18】
(E)導電材が、導電性カーボンブラックおよびカーボンフィブリルからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項17に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
(E)導電材が、(A)ポリアミドと予め溶融混練されてなる導電性マスターバッチとして添加されてなることを特徴とする請求項17に記載の樹脂組成物。
【請求項20】
ASTM D 256に準拠して測定した23℃におけるノッチ付アイゾット衝撃強度が50J/m以上であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形体。

【公開番号】特開2007−154127(P2007−154127A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354772(P2005−354772)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】