説明

ポリアミド樹脂及びその製造方法、ポリアミド樹脂を含む硬化性樹脂組成物

【課題】 温和な条件で硬化が可能であり、しかも低温での溶媒除去も容易に行なうことができる硬化性樹脂組成物を形成することができるポリアミド樹脂及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明のポリアミド樹脂は、メチルエチルケトンに可溶であり、反応性二重結合を有している。このようなポリアミド樹脂は、ジカルボン酸とジイソシアネートとを反応させてポリアミド樹脂を生成させる工程を有しており、ジカルボン酸として、反応性二重結合を有するジカルボン酸を含むものを用いる方法により製造可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂及びその製造方法、ポリアミド樹脂を含む硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂の製造方法としては、一般に、ジアミンと活性化されたジカルボン酸(酸ハライドや縮合剤)の重合反応による方法が知られている。しかし、この方法によれば、重合後にポリアミド樹脂と等量生成する副生成物を分離する必要があった。
【0003】
これに対し、ジカルボン酸とジイソシアネートとの反応によってポリアミド樹脂を製造する方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。このような方法によれば、副生成物が気体であるため、重合後の副生成物を分離する操作が必要なくなる。
【0004】
近年では、ポリアミド樹脂としては、各種用途に対応するため、多様な構造を有するものが製造されている。例えば、不飽和結合を有するポリアミド樹脂の製造方法として、(1)ポリイミド又はポリベンゾオキサゾール前駆体であるポリアミック酸の酸部位や水酸基に反応性二重結合を導入する方法(例えば、特許文献2参照)、(2)ジアミンと無水マレイン酸とを重合させる方法(例えば、特許文献3参照)、(3)ポリアミド末端に不飽和二重結合を有する炭化水素オリゴマーを付加する方法(例えば、特許文献4参照)、(4)部分的に反応性二重結合をポリアニリンに導入した後、酸クロライドで重合する方法(例えば、特許文献5参照)等が知られている。
【0005】
また、ポリアミド樹脂は、硬化性樹脂組成物として種々の用途に用いられることが知られている。例えば、上記(1)の方法で得られたポリアミド樹脂は、光硬化性樹脂組成物として、光照射によるパターニングを行なった後、加熱することにより、対応するポリイミドやポリベンゾオキサゾールに硬化させることができる。
【0006】
上述したようなポリアミド樹脂の製造方法には、一般に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ガンマブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等が用いられる。また、ポリアミド樹脂は、その重合度が高くなると、溶剤溶解性が悪くなることが知られている(例えば、特許文献6参照)。
【特許文献1】特開平6−172516号公報
【特許文献2】特許第2880523号公報
【特許文献3】特開平10−182837号公報
【特許文献4】特開2001−31759号公報
【特許文献5】特開平4−132733号公報
【特許文献6】特開2006−28367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリアミド樹脂は、例えば、上述したような硬化性樹脂組成物とされ、硬化反応によって保護膜等に変換されて用いられることが多い。この際、成膜は、ポリアミド樹脂を溶媒等に溶解又は分散させた溶液とした後、これを塗布した後、溶媒を除去することによって行われるのが一般的である。このような保護膜等の形成において、硬化反応は、膜を形成させる基板等への影響を低減する観点等から、できるだけ低温等の温和な条件で進行し得ることが好ましい。また、同様の観点から、上述したような成膜においては、ポリアミド樹脂を含む溶液を塗布した後の溶媒除去は、できるだけ低温で行なうことが望ましい。
【0008】
しかしながら、上述したような従来の製造方法等によって得られるポリアミド樹脂は、このような低温硬化、及び、低温での溶媒除去を十分に行なうことが困難な場合が少なくなかった。
【0009】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、温和な条件で硬化が可能であり、しかも低温での溶媒除去も容易に行なうことができる硬化性樹脂組成物を形成することができるポリアミド樹脂を提供することを目的とする。本発明はまた、このようなポリアミド樹脂の製造方法、及び、このポリアミド樹脂を含む硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のポリアミド樹脂は、メチルエチルケトンに可溶であり、反応性二重結合を有することを特徴とする。ここで、「メチルエチルケトンに可溶」なポリアミド樹脂とは、25℃においてメチルエチルケトン100gに1g以上溶解するものを意味することとする。
【0011】
上記本発明のポリアミド樹脂は、まず、分子中に反応性二重結合を有していることから、硬化性樹脂組成物として硬化反応させる際には、この反応性二重結合によって良好に架橋反応を生じることができ、反応性二重結合を有していない場合と比較して低温条件であっても十分に硬化を生じることができる。また、従来、このように反応性二重結合を有するポリアミド樹脂は、高沸点の溶媒にしか溶解できない傾向にあったが、本発明のポリアミド樹脂は、従来のものに比して比較的低沸点なメチルエチルケトンに溶解できる。そのため、成膜の工程を低温で行うことができ、基板等への影響を少なくできるほか、省エネルギー化を図ることもできる。
【0012】
上記本発明のポリアミド樹脂は、エポキシ(メタ)アクリレート化合物由来の構造単位を、2〜30モル%有していると好ましく、5〜10モル%有しているとより好ましい。エポキシ(メタ)アクリレート化合物由来の構造単位の割合が2モル%よりも少ないと、反応性二重結合による良好な架橋が生じ難くなり、他のジカルボン酸等との組み合わせによってはメチルエチルケトンに溶解し難くなるおそれがある。一方、30モル%よりも大きいと、得られるポリアミド樹脂の分子量が小さくなり易い傾向にあり、良好なフィルムが得られ難くなる場合がある。
【0013】
上述した本発明のポリアミド樹脂は、以下に示す製造方法によって好適に製造される。すなわち、本発明のポリアミド樹脂の製造方法は、反応性二重結合を有するポリアミド樹脂の製造方法において、ジカルボン酸とジイソシアネートとを反応させてポリアミド樹脂を生成させる工程を有しており、ジカルボン酸は、反応性二重結合を有するジカルボン酸を含むことを特徴とする。
【0014】
ここで、上述したような従来のポリアミド樹脂の製造方法には、次に示すような問題点があった。すなわち、まず、電子材料用途に樹脂を用いる際には、固形の不純物、金属不純物、イオン性不純物等が外観不良や性能低下を引き起こす原因となるため、これらの不純物が混入しないようにすることが望ましい。しかし、上記特許文献2、5に記載の方法では、酸ハロゲン化物や金属触媒等を用いているため副生成物が生じ、不純物の混入を防ぐためにこれらを分離する工程が必要であった。そのため、ポリアミド樹脂の製造方法が複雑となっていた。
【0015】
また、特許文献3に記載の方法では、ジアミンと無水マレイン酸とによるイミド環の形成によってポリアミドとしての構造の繰り返し単位の割合が小さくなる傾向にあるため、得られる膜等の耐熱性が低くなったり、自己支持膜を形成できなかったりする不都合があった。さらに、特許文献5の方法においては、原料が分岐を多く含むためゲル化が生じ易く、これを抑制するためにポリアミド樹脂の繰り返し構造を大きくすることが困難な傾向にあった、
【0016】
さらにまた、特許文献4に記載されたような、ポリアミドの末端に二重結合を有する炭化水素オリゴマーを付加する方法では、末端にのみ二重結合を導入しているため、硬化の際に3次元架橋が効率的に生じないという問題もあった。
【0017】
これに対し、上記本発明のポリアミド樹脂の製造方法によれば、メチルエチルケトンへの溶解性に優れる化合物を選択し易い原料を用いていることから、結果として上記本発明のようなメチルエチルケトンに可溶なポリアミド樹脂を製造することが容易となる。
【0018】
また、本発明においては、ジカルボン酸とジイソシアネートとの反応によりポリアミド樹脂を製造しているため、副生成物が主に気体となる。したがって、不純物の混入が少ないポリアミド樹脂を得ることができ、不純物を分離する工程等を省略することが可能となる。さらに、原料であるジカルボン酸とジイソシアネートとの両方がポリアミド樹脂の繰り返し構造を形成することになるため、得られるポリアミド樹脂の繰り返し構造が大きくなり、高耐熱性で自己支持性にも優れる膜等を形成することが可能となる。
【0019】
さらにまた、本発明の製造方法においては、ジカルボン酸が反応性二重結合を有していることから、ジイソシアネートとの反応の結果得られるポリアミド樹脂は、末端だけでなく分子内にも反応性二重結合を有するものとなり得る。その結果、得られたポリアミド樹脂は、硬化の際に3次元架橋を良好に生じることができるものとなる。
【0020】
上記本発明のポリアミド樹脂の製造方法において、反応性二重結合を有するジカルボン酸は、メチルエチルケトンに可溶なものであると好ましい。メチルエチルケトンに可溶なジカルボン酸を用いることで、結果としてメチルエチルケトンに可溶な本発明のポリアミド樹脂が一層得られ易くなる。
【0021】
より具体的には、反応性二重結合を有するジカルボン酸は、カルボン酸無水物基との反応によりカルボキシル基を生成し得る官能基、及び、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、カルボン酸無水物との反応によって得られるものであると好ましい。
【0022】
このようにして得られたジカルボン酸は、反応性二重結合として、硬化の際の架橋反応を生じ易い(メタ)アクリロイル基を有するものとなるため、これをジイソシアネートと反応させて得られるポリアミド樹脂も、硬化により3次元架橋を良好に形成し得るものとなる。
【0023】
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」の表記は、便宜上、アクリロイル及びメタクリロイルをまとめて表記するものであり、アクリル及びメタクリルのいずれか一方又は両方の場合を全て包含する。同様に、「(メタ)アクリル」はアクリル及び/又はメタクリルを示し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを示す。
【0024】
また、カルボン酸無水物基との反応によりカルボキシル基を生成し得る官能基は、ヒドロキシル基であると好ましい。ヒドロキシル基は、カルボン酸無水物基と反応して良好にカルボキシル基を形成し得ることから、得られるカルボン酸は、イソシアネートとの反応に供されるカルボキシル基を良好に有するものとなる。その結果、本発明においては、カルボン酸とジイソシアネートとの反応が効率よく生じるようになり、これによりポリアミド樹脂が更に得られ易くなる。
【0025】
さらに、(メタ)アクリレート化合物は、2官能エポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸と、の反応によって得られたものであると一層好ましい。このような(メタ)アクリレート化合物を用いて得られたジカルボン酸を原料として用いることで、繰り返し単位にメチルエチルケトンへの溶解性に優れる多官能エポキシ化合物由来の構造を含むポリアミド樹脂が得られるようになる。したがって、メチルエチルケトンに可溶なポリアミド樹脂を一層容易に製造することが可能となる。
【0026】
本発明はまた、上記本発明の製造方法により得られたポリアミド樹脂を提供するものである。このようなポリアミド樹脂は、上述の如く、不純物の含有量が少ないほか、メチルエチルケトンに可溶なものとなり得る。
【0027】
さらに、本発明は、上記本発明のポリアミド樹脂を含み、好ましくは熱又は光によって硬化する硬化性樹脂組成物を提供する。かかる硬化性樹脂組成物は、上記本発明のポリアミド樹脂を含むことから、硬化の際に3次元架橋を良好に生じ、低温での硬化が可能であるばかりでなく、溶媒としてメチルエチルケトンを用いることができるため、溶媒除去等も従来に比して低温で行なうことができる。その結果、基板等へのダメージを極力小さくしながら、耐熱性等に優れた膜等を良好に形成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、低温での硬化が可能であり、しかも低温での溶媒除去も容易に行なうことができる硬化性樹脂組成物を形成することができるポリアミド樹脂を提供することが可能となる。また、このようなポリアミド樹脂の製造方法、及び、このポリアミド樹脂を含む硬化性樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
[ポリアミド樹脂の製造方法]
【0030】
まず、本発明のポリアミド樹脂を得るための製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0031】
好適な実施形態のポリアミド樹脂の製造方法は、ジカルボン酸とジイソシアネートとを反応させてポリアミド樹脂を生成させる工程を有しており、原料であるジカルボン酸は、反応性二重結合を有するジカルボン酸を含む。この反応では、原料であるジカルボン酸におけるカルボキシル基とジイソシアネートにおけるイソシアネート基との反応によりこれらの化合物が重合し、ポリアミド樹脂が生成する。
【0032】
原料であるジカルボン酸とジイソシアネートとの重合反応は、良好な反応速度を得る観点から100℃以上で行なうことが好ましく、140〜180℃で行なうことがより好ましい。また、この重合反応に際しては、イミダゾールやトリアルキルアミンといった3級アミンを触媒として用いてもよい。このような触媒を用いることで、重合反応を更に低い温度で行なうことができる。
【0033】
この重合反応において、ジイソシアネートは、原料のジカルボン酸の総量に対して0.7〜1.3当量用いることが好ましく、1.0〜1.2当量用いることがより好ましい。ジイソシアネートの使用量が原料のカルボン酸に対して1当量より少ない場合、未反応のカルボン酸が残ることとなる。一方、1.3当量を超える場合は、未反応のジイソシアネートによって副反応が生じ、高分子量のポリアミド樹脂が得られ難くなるほか、副生成物によりポリアミド樹脂の耐熱性等の特性が低下するおそれがある。
【0034】
以下、原料であるジカルボン酸及びジイソシアネートについて説明する。
【0035】
まず、ジイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。ジイソシアネートとしては、単一の化合物だけを用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
次に、原料であるカルボン酸は、反応性二重結合を有するジカルボン酸を含む。このジカルボン酸は、ジイソシアネートとの重合反応を可能とするため、分子内にカルボキシル基を2つ有している。以下、好適なジカルボン酸について詳細に説明する。
【0037】
原料であるジカルボン酸は、上述の如く、反応性二重結合を有するジカルボン酸を含み、この反応性二重結合を有するジカルボン酸としては、一つまたは複数の反応性二重結合を有し、且つ、2つのカルボキシル基を有するジカルボン酸が好ましい。反応性二重結合としては、(メタ)アクリロイル基が、ポリアミド樹脂において良好に架橋反応を生じ得るため好ましい。また、ジカルボン酸は、メチルエチルケトンに可溶なものであると、得られるポリアミド樹脂もメチルエチルケトンに可溶なものとなり易いため、特に好ましい。
【0038】
反応性二重結合として(メタ)アクリロイル基を有するジカルボン酸としては、カルボン酸無水物基との反応によりカルボキシル基を生成し得る官能基(以下、「カルボキシル生成基」という)、及び、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、カルボン酸無水物(ジカルボン酸無水物)との反応によって得られたものが好ましい。前者の(メタ)アクリレート化合物が2つのカルボキシル生成基を有することで、(メタ)アクリレート化合物の2箇所においてカルボン酸無水物との反応が生じ、これによりジカルボン酸が得られる。(メタ)アクリレート化合物は、上記反応での分岐によるゲル化を抑制する観点から、平均してカルボキシル生成基を2.0個以上2.5個以下有していることが好ましい。
【0039】
このような反応性二重結合を有するジカルボン酸としては、特に、下記式(1a)で表されるようなエポキシアクリレートと、下記式(1b)で表されるようなカルボン酸無水物との反応によって得られるもの(下記式(1c)で表されるジカルボン酸)が好ましい。ここで、エポキシアクリレートとは、多官能エポキシ化合物のエポキシ基にアクリル酸が反応して得られた化合物である。このエポキシアクリレートは、カルボキシル生成基として、上記反応により生じたヒドロキシル基を有するものとなる。この反応は、例えば、下記化学式(1)によって表される。下記式(1a)中、Aはエポキシアクリレートにおけるエポキシ化合物由来の構造単位であり、下記式(1b)中のBは、カルボン酸無水物における酸無水物基以外の構造単位である。
【化1】

【0040】
ここで、上記カルボン酸無水物としては、特に制限はないが、例えば次のようなものが挙げられる。すなわち、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、マレイン酸等を例示できる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
一方、上記エポキシアクリレートとしては、下記式(2a)で表されるような多官能エポキシ化合物、特にビスエポキシ化合物と、下記式(2b)で表されるアクリル酸との反応によって得られたものが好適である。このような反応は、例えば、下記化学式(2)によって表される。式(2a)中のAは、多官能エポキシ化合物の反応に寄与しない主構造(式(2a)ではグリシジル基を除く構造単位)を示し、上記化学式(1)におけるAをそのまま形成する。
【化2】

【0042】
エポキシアクリレートの生成反応の原料である多官能エポキシ化合物は、ビスエポキシ化合物及びそれ以外の多官能エポキシ化合物を含んでいてもよいが、得られるポリアミド樹脂の過度の分岐を防ぐために、全体として平均で一分子あたりのエポキシ基が2以上、2.5以下であることが特に好ましい。
【0043】
ビスエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物(例えばジャパンエポキシレジン社製エピコート825)、ビスフェノールF型エポキシ化合物(例えばジャパンエポキシレジン社製エピコート806)、ビフェニル型エポキシ化合物(例えばジャパンエポキシレジン社製エピコートYX4000H)等が例示できる。
【0044】
なお、エポキシアクリレートとしては、上記の反応により得られるもののほか、市販のエポキシアクリレートをそのまま適用してもよい。市販のエポキシアクリレートとしては、例えばEA−1020(新中村化学工業株式会社製商品名、ヒドロキシル基当量270)、EMA−1020(新中村化学工業株式会社製商品名、ヒドロキシル基当量280)、EA−5520(新中村化学工業株式会社製商品名、ヒドロキシル基当量173)、EA−5421(新中村化学工業株式会社製商品名、ヒドロキシル基当量230)等が挙げられる。これらのエポキシアクリレートの1分子中のヒドロキシ基は2以上、2.5以下である。
【0045】
一般に、ジオールとジイソシアネートとの反応ではポリウレタンが生成するが、エポキシアクリレートとジイソシアネートとの反応ではゲル化が進行してしまう場合がある。そこで、本実施形態においては、エポキシアクリレートにおけるヒドロキシル基とカルボン酸無水物とを確実に反応させることで、このようなゲル化を抑制することが可能となる。
【0046】
原料であるジカルボン酸を得るためのエポキシアクリレートとカルボン酸無水物との反応は、室温(25℃)下で行うこともできるが、反応速度の観点から30℃〜150℃が好ましく、80℃〜120℃がより好ましい。この反応では、理論的にはカルボン酸無水物をエポキシアクリレートのヒドロキシル基の当量と100%反応させることが可能であるが、良好な反応率を得る観点からは、反応に用いるカルボン酸無水物の量は、ヒドロキシル基の当量に対して0.80〜1.10であると好ましく、0.90〜1.05であるとより好ましい。このカルボン酸無水物の量が0.8当量より少ない場合、未反応のヒドロキシル基が残ることとなりゲル化が生じ易くなる傾向にある。一方、1.10当量を超える場合は、未反応のカルボン酸無水物による副反応が引き起こされ、生成する樹脂の分子量が低下して、耐熱性等の物性が低下するおそれがある。
【0047】
以上、原料であるジカルボン酸として、反応性二重結合を有するジカルボン酸について説明したが、ポリアミド樹脂を得るためのジカルボン酸とジイソシアネートとの反応においては、反応性二重結合を有するジカルボン酸に加え、その他のジカルボン酸を併用することもできる。その他のジカルボン酸を適宜選択することで、樹脂骨格を変えることができ、例えば、反応性二重結合による過度の3次元架橋を抑制したり、耐熱性を向上させたりすることが可能となる。ただし、ポリアミド樹脂の低温硬化性を確実に得る観点からは、全ての原料のジカルボン酸のうち、反応性二重結合を有するジカルボン酸が10モル%以上であることがより好ましい。
【0048】
その他のジカルボン酸の具体例としては、特に制限されないが、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸やイミドジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸も、メチルエチルケトンに可溶なものであると好ましい。ジカルボン酸としてこれらを併用することで、反応性二重結合による過度の3次元架橋を抑制したり、得られるポリアミド樹脂の耐熱性を向上させたりすることができる。ここで、イミドジカルボン酸とは、ジアミンと2当量のトリメリット酸の反応から導かれるものである。これらのその他のジカルボン酸は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
特に、ジカルボン酸としてイミドジカルボン酸を併用すると、得られるポリアミド樹脂は、アミド基のほかにイミド基も含有し、いわゆるポリアミドイミド樹脂としての構造を含むようになり、高耐熱性、高強度といった特性を具備することができる。イミドジカルボン酸は、上述の如く、ジアミンとトリメリット酸との反応により得られるものであるが、このジアミンとしては、特に制限はないが、以下のようなものが挙げられる。
【0050】
すなわち、例えば、芳香族ジアミンとして、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニル−ビフェニル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテル等が例示できる。また、脂肪族ジアミンとして、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、ポリプロピレンオキサイドジアミン(商品名ジェファーミン)等が例示できる。さらに、シロキサンジアミンとしては、ポリジメチルシロキサンジアミン(シリコーンオイルX−22−161AS(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)、KF−8010(アミン当量415)(以上、信越化学工業株式会社製))等を例示できる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
これらのジアミンが、メチルエチルケトンに可溶なものであると、イミドジカルボン酸、ひいてはポリアミド樹脂もメチルエチルケトンに可溶なものとなり易いため、特に好ましい。かかる観点からは、ジアミンとして、ポリプロピレンオキサイドジアミンを用いることが特に好ましい。
[ポリアミド樹脂]
【0052】
上述したような製造方法により、ポリアミド樹脂を良好に得ることができるが、好適な実施形態のポリアミド樹脂は、メチルエチルケトンに可溶であり、反応性二重結合を有するものである。
【0053】
本実施形態のポリアミド樹脂は、反応性二重結合を、当該樹脂を構成している分子の末端に有しており、分子内にも有していると好ましい。ポリアミド樹脂の繰り返し構造中に含まれているとより好ましい。このように反応性二重結合を有することで、良好な低温硬化性が得られるようになる。
【0054】
ポリアミド樹脂が有している反応性二重結合は、(メタ)アクリロイル基であると好ましい。このような反応性二重結合は、上述した製造方法において、原料として(メタ)アクリレート化合物を用いることで導入することができる。
【0055】
また、ポリアミド樹脂は、エポキシ(メタ)アクリレート由来の構造単位を含むことが好ましい。エポキシ(メタ)アクリレート由来の構造単位とは、原料として用いたエポキシ(メタ)アクリレートのうち、ポリアミドの製造過程において反応しないで残存した構造単位を意味する。この構造単位を形成するエポキシ(メタ)アクリレートは、メチルエチルケトンに可溶なものであると特に好適である。
【0056】
この場合、エポキシ(メタ)アクリレート由来の構造単位は、ポリアミド樹脂中、2〜30モル%含まれていると好ましく、5〜10モル%含まれているとより好ましい。このようにエポキシ(メタ)アクリレート由来の構造単位が含まれていると、得られるポリアミド樹脂が、メチルエチルケトンに可溶なものとなり易い。この場合、反応性二重結合である(メタ)アクリロイル基は、エポキシ(メタ)アクリレート由来の構造単位が有することとなる。
【0057】
上述した製造方法のように、ポリアミド樹脂は、エポキシ(メタ)アクリレートとカルボン酸無水物との反応により得られるカルボン酸と、ジイソシアネートとの反応によって得られたものであると更に好ましい。この場合、ポリアミド樹脂は、上述したエポキシ(メタ)アクリレート由来の構造単位を含むジカルボン酸の構造単位と、ジイソシアネートの構造単位とが交互に繰り返し結合された構造を主に有することとなる。そして、この場合、原料として用いたジイソシアネートも、メチルエチルケトンに可溶なものであると特に好適である。
[硬化性樹脂組成物]
【0058】
上述した反応性二重結合を有するポリアミド樹脂は、必要に応じて硬化促進剤、希釈剤、架橋剤、粒子、難燃剤、増感剤を組み合わせて硬化性樹脂組成物として適用することができる。なお、ポリアミド樹脂は、それ自体が反応性二重結合により硬化可能であることから、単独で硬化性樹脂組成物として適用することもできる。
【0059】
ポリアミド樹脂と硬化促進剤を含む硬化性樹脂組成物は、架橋を効率よく生じることができ、優れた低温硬化性を有する傾向にあることから好適である。硬化促進剤は、ポリアミド樹脂の有する反応性二重結合同士の反応を促進するものであれば特に制限はなく、使用する硬化温度や照射光の波長等の条件に応じて適宜選択することができる。硬化促進剤には、例えば、過酸化物系、ラジカル系、カチオン系等の化合物が挙げられ、これらは複数組み合わせてもよい。
【0060】
硬化促進剤としては、具体的には、過酸化物系として、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン等のペルオキシケタール化合物、α,α’−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキサン、ジ−t−ヘキシルペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、t−ブチルクミルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド等のジアルキルペルオキサイド系、メチルエチルケトンペルオキサイド等のケトンペルオキサイド化合物、ペルオキシ安息香酸t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン等のペルオキシエステル化合物等が挙げられる。ラジカル系としては、ベンゾフェノン、2−メチルー[4―(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4,4‘−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物、チタノセン等の金属錯体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィン酸化合物、2−ヒドロキシ−1,2−ジフェニルエタノン、2−イソプロピル−1,2−ジフェニルエタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタノン、1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンゾイン化合物、メチルジエタノールアミン等のアミン化合物、4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル等のエステル化合物等が挙げられる。カチオン系としては、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィド−ビスヘキサフロロフォスフェート、ジフェニルヨードニウム−ヘキサフロロフォスフェート等のオニウム塩や(シクロペンタジエニル)(イソプロピルベンゼン)鉄(II)等の金属錯体等を例示することができる。
【0061】
硬化促進剤の配合量は特に制限されないが、ポリアミド樹脂の特性を維持するために、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部であると好ましく、0.1〜10重量部であるとより好ましい。なお、硬化促進剤としては、上述したもののうち1種類の化合物を用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0062】
また、硬化性樹脂組成物は、希釈剤を含むことで、他の成分が溶解又は分散された状態とすることができ、作業上、有利となる傾向にある。希釈剤は、ポリアミド樹脂等の他の成分を溶解又は分散できるものであれば特に制限されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ガンマブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等を例示でき、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0063】
硬化性樹脂組成物は、さらに架橋剤を含むと、3次元架橋がより形成され易くなって硬化を効率よく生じることができ、硬化物の熱膨張率、接着性、耐薬品性等の物性を改善することができる傾向にある。架橋剤としては、ポリアミド樹脂の反応性二重結合と反応可能な官能基を複数含む化合物であれば制限はない。
【0064】
このような化合物としては、ビスマレイミド化合物、ビスナジック酸化合物、ジ(メタ)アクリレート等を例示できる。架橋剤を含む場合、その配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して1〜90重量部であると好ましく、5〜70重量部であるとより好ましい。この配合量が1重量部より少ないときは、架橋剤の効果が十分に発現しない傾向にあり、また、90重量部より多いときは、架橋剤の特性が支配的になりポリアミド樹脂の特性が失われる傾向がある。
【0065】
さらに、硬化性樹脂組成物は、所定の粒子を含むことにより、硬化物の膨張率や電気特性を改善できる傾向にある。粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等からなる粒子を例示することができる。この粒子の最大粒径は500nm以下であると好ましい。粒子の粒径が500nmより大きいと、硬化膜とした時に欠陥を生じる可能性が高まり好ましくない。粒子を含む場合、その配合量は、硬化性樹脂組成物100重量部に対して1〜90重量部になるようにするのが好ましい。この配合量が1重量部未満であると、粒子の効果が少なくなる傾向にあり、90重量部を超えると欠陥の発生等により信頼性の低下を招くおそれがあるため、好ましくない。
【0066】
難燃剤は、硬化性樹脂組成物に難燃性を付与できる成分である。この難燃剤としては、一般に使用される添加型の難燃剤であれば特に制限無く適用できる。難燃剤を含む場合、その配合量は、硬化性樹脂組成物100重量部に対して0.1〜50重量部となるようにすることが好ましい。この配合量が0.1重量部未満であると難燃剤の効果が少なくなる傾向にあり、50重量部を超えると樹脂の物性の低下を招くおそれがあるため好ましくない。
【0067】
さらに、硬化性樹脂組成物は、増感剤を含むことで、光の吸収を効率よく生じるようになり、光による硬化性が向上する。増感剤は、照射する光の波長に応じて公知のものを適宜選択して用いればよい。増感剤の配合量は、特に制限はないが、ポリアミド樹脂の特性を維持しつつ、光照射による像形成を良好に生じさせるため、硬化性樹脂組成物の固形分に対して0.01〜20重量%であると好ましく、0.1〜10重量部であるとより好ましい。
【0068】
さらにまた、硬化性樹脂組成物は、その他、必要に応じて、ゴム系エラストマ、顔料、レべリング剤、消泡剤、イオントラップ剤等を更に含んでいてもよい。
[接着層]
【0069】
上述した硬化性樹脂組成物は、例えば、所定の基体を他の基板(プリント配線板等)に接着するための接着層を形成することができる。接着層は、例えば、硬化性樹脂組成物を、接着層を形成させるべき基体上に直接塗布する方法や、硬化性樹脂組成物からなるフィルム(接着フィルム)を用いる方法等により形成することができる。
【0070】
硬化性樹脂組成物を直接塗布する方法の場合、例えば、まず、硬化性樹脂組成物を有機溶媒等に溶解した溶液とする。次いで、この溶液を、スピンコーター、マルチコーター等を用いて基体上に塗布した後、加熱等により乾燥させることで、硬化性樹脂組成物層を形成する。これが、接着層として機能する。
【0071】
また、後者の接着フィルムを用いる方法においては、予め所定の支持体上に硬化性樹脂組成物層(接着フィルム)が形成されたものを準備しておき、この接着フィルムを基体に接着する。この場合、接着フィルムは、支持体に対し、硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解等した溶液を塗布した後、加熱や熱風吹き付けにより溶媒を揮発し、乾燥させることによって得ることができる。この接着フィルムの接着後、必要に応じて加熱による乾燥等を更に行なうことにより、基体上に硬化性樹脂組成物層からなる接着層を形成することができる。なお、支持体は、基体への接着前に接着フィルムから除去してもよく、接着後に除去してもよい。
【0072】
フィルム形成に用いる支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、4フッ化エチレンフィルム、離型紙、銅箔やアルミ箔等の金属箔等が例示できる。支持体の厚さは、10〜150μmであることが好ましい。なお、支持体の表面には、マッド処理、コロナ処理、離型処理等が施されていてもよい。
【0073】
上述接着フィルムの保存方法としては、接着フィルムを一定の長さに裁断してシート状で保存する方法や、これを更に巻き取ってロール状で保存する方法が挙げられる。保存性、生産性及び作業性の観点からは、接着フィルムにおける接着層上に、更に保護フィルムを積層させ、これをロール状に巻き取って保存することが好ましい。この場合、保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、離型紙等が挙げられる。保護フィルムには、マット処理、エンボス加工、離型処理が施されていてもよい。
【0074】
接着層を形成させる基体としては、銅、アルミ、ポリイミド、セラミック、ガラス等を例示することができるが、適用可能な基体は必ずしもこれらに限定されない。
【0075】
基体上に形成された接着層は、例えば、他の基板等に接着した後、加熱したり、光を照射したりすることによって、全面的に、又は部分的に重合させることにより硬化させることができる。これにより、基体を他の基板等に対して強力に接着させることができる。
【0076】
加熱により硬化させる場合、加熱は、ホットプレートやオーブン等を用いて行なうことができる。この場合、硬化温度は、硬化促進剤の有無や種類によっても異なるが、130〜230℃であることが、作業上の観点からも好ましい。
【0077】
また、光の照射により硬化させる場合、その光源は特に限定されないが、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、エキシマーレーザー、窒素レーザー、YAGレーザー等のレーザー光源等を適用することができる。また、特定の波長を使用する場合には、必要に応じて光学フィルターを利用してもよい。光の照射により硬化する場合、光照射後、さらにホットプレートやオーブン等により後加熱を行なうことで硬化を完全にすることもできる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[ポリアミド樹脂の合成]
【0079】
(実施例1)
ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、エポキシアクリレートEA−1020(新中村化学工業株式会社製商品名、ヒドロキシル基当量270)37mmol、ジカルボン酸無水物としてシス−4−シクロヘキセン−1、2−ジカルボン酸無水物78mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン85gを加え、温度を100℃に昇温させて2時間撹拌した。
【0080】
フラスコの溶液を室温(25℃)まで冷却した後、ジイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート26mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、実施例1のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0081】
(実施例2)
ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン36mmol、シロキサンジアミンとしてKF−8010(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量415)2mmol、シクロヘキサントリカルボン酸無水物(三菱ガス化学株式会社製商品名)79mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン157g加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
【0082】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。これにより、イミドジカルボン酸を含む溶液を得た。
【0083】
このフラスコの溶液を室温(25℃)まで冷却した後、エポキシアクリレートとしてEA−1020(新中村化学工業株式会社製商品名、ヒドロキシル基当量270)38mmol、シス−4−シクロヘキセン−1、2−ジカルボン酸水物79mmolを加え、温度を100℃に上昇させて2時間反応させた。再度フラスコの溶液を室温(25℃)まで冷却した後、ジイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート52mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、実施例2のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0084】
(実施例3)
ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物としてポリプロピレンオキサイドジアミン(三井化学ファイン株式会社製商品名ジェファーミンD−400)53mmol、無水トリメリット酸110mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン236g加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
【0085】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。これにより、イミドジカルボン酸を含む溶液を得た。
【0086】
このフラスコの溶液を室温(25℃)まで冷却した後、エポキシアクリレートとしてEA−5520(新中村化学工業株式会社製商品名、ヒドロキシル基当量173)123mmol、シス−4−シクロヘキセン−1、2−ジカルボン酸水物245mmolを加え、温度を100℃に上昇させて2時間反応させた。再度フラスコの溶液を室温(25℃)まで冷却した後、アクリル酸9mmol、ジイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート193mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、実施例3のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0087】
(実施例4)
ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物としてポリプロピレンオキサイドジアミン(三井化学ファイン株式会社製商品名ジェファーミンD−400)47mmol、無水トリメリット酸98mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン254g加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
【0088】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。これにより、イミドジカルボン酸を含む溶液を得た。
【0089】
このフラスコの溶液を室温(25℃)まで冷却した後、エポキシアクリレートとしてEA−1020(新中村化学工業株式会社製商品名、ヒドロキシル基当量270)109mmol、シス−4−シクロヘキセンー1、2−ジカルボン酸水物217mmolを加え、温度を100℃に上昇させて2時間反応させた。再度フラスコの溶液を室温(25℃)まで冷却した後、アクリル酸8mmol、ジイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート171mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、実施例4のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0090】
(比較例1)
ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1000mLのセパラブルフラスコにジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン171mmol、シロキサンジアミンとしてKF−8010(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量415)9mmol、無水トリメリット酸378mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン425g加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
【0091】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン200mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。これにより、イミドジカルボン酸を含む溶液を得た。
【0092】
フラスコの溶液を室温(25℃)まで冷却した後、ジイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート50mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、比較例1のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0093】
(比較例2)
ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン80mmol、シロキサンジアミンとしてKF−8010(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量415)4mmol、無水トリメリット酸176mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン349g加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
【0094】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン200mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。これにより、イミドジカルボン酸を含む溶液を得た。
【0095】
このフラスコの溶液を室温(25℃)まで冷却した後、エポキシアクリレートとしてEA−1020(新中村化学工業株式会社製商品名、ヒドロキシル基当量270)84mmol、シス−4−シクロヘキセン−1、2−ジカルボン酸水物176mmolを加え、温度を100℃に上昇させて2時間反応させた。再度フラスコの溶液を室温(25℃)まで冷却した後、ジイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート117mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、比較例2のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0096】
(比較例3)
ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた500mLのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物として2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン43mmol、シロキサンジアミンとしてKF−8010(信越化学工業株式会社製商品名、アミン当量415)2mmol、シクロヘキサントリカルボン酸無水物(三菱ガス化学株式会社製商品名)95mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン140g加え、温度を80℃に昇温させて30分間撹拌した。
【0097】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを加え、温度を160℃に昇温させて4時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。これにより、イミドジカルボン酸を含む溶液を得た。
【0098】
フラスコの溶液を室温(25℃)まで冷却した後、エポキシアクリレートとしてEA−1020(新中村化学工業株式会社製商品名、ヒドロキシル基当量270)15mmol、シス−4−シクロヘキセン−1、2−ジカルボン酸水物32mmolを加え、温度を100℃に上昇させて2時間反応させた。再度フラスコの溶液を室温(25℃)まで冷却した後、ジイソシアネートとして、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート69mmolを加え、温度を150℃に上昇させて2時間反応させ、比較例3のポリアミド樹脂のNMP溶液を得た。
[硬化性樹脂組成物の調製]
【0099】
(実施例5)
実施例1で得たポリアミド樹脂のNMP溶液に、硬化促進剤としてα,α’−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日本油脂株式会社、パーブチルP)を総固形分重量の1重量%になるように加えた。さらに、N,N−ジメチルアセトアミドで適当な粘度に希釈して、硬化性樹脂組成物の溶液を得た。
【0100】
(実施例6)
実施例2で得たポリアミド樹脂のNMP溶液に、硬化促進剤としてα,α’−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日本油脂株式会社、パーブチルP)を総固形分重量の1重量%になるように加えた。さらに、N,N−ジメチルアセトアミドで適当な粘度に希釈して、硬化性樹脂組成物の溶液を得た。
【0101】
(実施例7)
実施例3で得たポリアミド樹脂のNMP溶液に、硬化促進剤としてα,α’−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日本油脂株式会社、パーブチルP)を総固形分重量の1重量%になるように加えた。さらに、N,N−ジメチルアセトアミドで適当な粘度に希釈して、硬化性樹脂組成物の溶液を得た。
【0102】
(実施例8)
実施例4で得たポリアミド樹脂のNMP溶液に、硬化促進剤としてα,α’−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日本油脂株式会社、パーブチルP)を総固形分重量の1重量%になるように加えた。さらに、N,N−ジメチルアセトアミドで適当な粘度に希釈して、硬化性樹脂組成物の溶液を得た。
【0103】
(比較例4)
比較例1で得たポリアミド樹脂のNMP溶液に、硬化促進剤としてα,α’−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日本油脂株式会社、パーブチルP)を総固形分重量の1重量%になるように加えた。さらに、N,N−ジメチルアセトアミドで適当な粘度に希釈して、硬化性樹脂組成物の溶液を得た。
【0104】
(比較例5)
比較例2で得たポリアミド樹脂のNMP溶液に、硬化促進剤としてα,α’−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日本油脂株式会社、パーブチルP)を総固形分重量の1重量%になるように加えた。さらに、N,N−ジメチルアセトアミドで適当な粘度に希釈して、硬化性樹脂組成物の溶液を得た。
【0105】
(比較例6)
比較例3で得たポリアミド樹脂のNMP溶液に、硬化促進剤としてα,α’−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日本油脂株式会社、パーブチルP)を総固形分重量の1重量%になるように加えた。さらに、N,N−ジメチルアセトアミドで適当な粘度に希釈して、硬化性樹脂組成物の溶液を得た。
[ポリアミド樹脂及び硬化性樹脂組成物の評価]
【0106】
(ポリアミド樹脂のエポキシアクリレート由来の構造単位の割合)
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたポリアミド樹脂における、エポキシアクリレート由来の構造単位の割合をそれぞれ算出したところ、それぞれ、実施例1が26.3モル%、実施例2が12.2モル%、実施例3が16.7モル%、実施例4が16.7モル%、比較例1が0モル%、比較例2が12.2モル%、比較例3が11.8モル%であった。
【0107】
(ポリアミド樹脂のメチルエチルケトンへの溶解性の評価)
実施例1〜4及び比較例1のポリアミド樹脂を、メタノールにて沈殿して濾過回収し、更に真空乾燥したサンプル5.0gを、それぞれメチルエチルケトン5.0gに溶解させた。その結果、各実施例又は比較例に対応するポリアミド樹脂のサンプルのメチルエチルケトンへの溶解性は、表1に示す通りであった。
【表1】

【0108】
(ポリアミド樹脂の分子量の測定)
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw;スチレン換算)を測定したところ、表2に示す通りであった。
【表2】

【0109】
(硬化性樹脂組成物の硬化性の評価)
まず、実施例5〜8、比較例4〜6で調製した硬化性樹脂組成物の溶液を、PETフィルム上に均一に塗布し、100℃で15分乾燥させた。その後、乾燥したフィルムをPETフィルムから剥がして、硬化性樹脂組成物からなる未硬化の樹脂フィルムを得た。
【0110】
次いで、実施例5〜8、比較例4〜6の硬化性樹脂組成物を用いて作製した各樹脂フィルム(10mg)について、50〜350℃の温度範囲(10℃/分昇温)で発熱量および発熱温度の測定を行った。測定には、示差走査熱量分析装置(DSC:パーキンエルマ社製 PYRIS1 DSC)を用いた。得られた結果を表3に示す。なお、表3中、発熱量は硬化促進剤のみのブランク値を差し引いた値であり、温度は最大発熱量を示した温度である。
【表3】

【0111】
以上示した通り、実施例1〜4のポリアミド樹脂は、いずれもメチルエチルケトンに可溶であり、十分な分子量を有していた。また、実施例1〜4のポリアミド樹脂を含む硬化性樹脂組成物は、比較例1〜3のポリアミド樹脂を用いた場合に比して低温で大きな発熱量が得られることが確認された。これらの結果から、実施例1〜4のポリアミド樹脂によれば、高い耐熱性を有し、低温硬化による膜形成が可能であり、しかも、成膜性にも優れる硬化性樹脂組成物が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルエチルケトンに可溶であり、反応性二重結合を有するポリアミド樹脂。
【請求項2】
エポキシ(メタ)アクリレート化合物由来の構造単位を、2〜30モル%有している、請求項1記載のポリアミド樹脂。
【請求項3】
反応性二重結合を有するポリアミド樹脂の製造方法において、
ジカルボン酸とジイソシアネートとを反応させてポリアミド樹脂を生成させる工程を有しており、
前記ジカルボン酸は、反応性二重結合を有するジカルボン酸を含む、ポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記反応性二重結合を有するジカルボン酸は、メチルエチルケトンに可溶なものである、請求項3記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記反応性二重結合を有するジカルボン酸は、カルボン酸無水物基との反応によりカルボキシル基を生成し得る官能基、及び、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物と、カルボン酸無水物との反応によって得られるものである、請求項3又は4記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項6】
カルボン酸無水物基との反応によりカルボキシル基を生成し得る官能基が、ヒドロキシル基である、請求項5記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレート化合物は、2官能エポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸と、の反応によって得られたエポキシ(メタ)アクリレートである、請求項5又は6記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか一項に記載の製造方法によって得られた、ポリアミド樹脂。
【請求項9】
請求項1、2及び8のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂を含む、硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
熱又は光によって硬化する、請求項9記載の硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−280511(P2008−280511A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323713(P2007−323713)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】