説明

ポリアミド樹脂組成物から作製され、流体透過バリヤ特性が改善された物品

本発明は、内燃機関で使用される燃料の輸送または貯蔵に適し、流体透過バリヤ特性が改善され、
(a)100重量部のポリアミド含有化合物と、
(b)5〜50重量部のフェノールノボラック樹脂と、任意選択的に
(c)組成物の全重量を基準として40重量パーセントまで存在するエチレン/α−オレフィンコポリマー衝撃改質剤とを含むポリアミド樹脂組成物から作製される成形品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種のポリアミド樹脂成形用組成物から作製され、流体透過に対するバリヤが改善され優れていることを特徴とする物品に関する。さらに詳細には、本発明は、かかるポリアミド成形用組成物から作製された、燃料の輸送および貯蔵に適した製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、優れた機械的諸特性、成形適性、および耐薬品性を特徴とし、したがって自動車部品、電気/電子構成要素、機械構成要素、および他の用途で使用されている。このようなポリアミド樹脂から作製される物品は、非常に望ましい物理的諸特性を有している。しかし、ある種の用途では、以前より通常のポリアミド成形用組成物から利用可能であるものより改善された流体透過に対するバリヤ特性を有することは望ましいはずである。
【0003】
改善された流体透過バリヤ特性を得るために、添加剤がポリアミド樹脂組成物で使用されている。例えば、(特許文献1)では、流体透過バリヤ特性を改善するためポリフェニレンスルフィドとポリアミドのブレンドを使用することが開示されている。
【0004】
(特許文献2)では、芳香族ポリアミド、および芳香族ポリアミドと混和しない他のポリマーを含む組成物が開示されている。この組成物は、流体透過バリヤ特性が改善されている。
【0005】
これらの文献はどちらも、本発明の特定の組成物、および本発明で使用する特定の組成物、または本発明の特定の組成物を特徴付ける予想外に優れた流体透過バリヤ特性を開示していない。
【0006】
【特許文献1】特開2002−284991号公報
【特許文献2】特開平04−140589号公報
【非特許文献1】SAE法 J2659「分化による流体透過性の測定試験方法」(SAE Method J2659 “Test Method to Measure Fluid Permeation of Polymeric Materials by Speciation”)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記に述べたことに基づいて、本発明の目的は、通常のポリアミド樹脂組成物から形成された従来技術の物品では示唆または認識されていない優れた流体透過バリヤ特性を有するポリアミド樹脂組成物から作製される物品を提供することである。本発明の別の目的は、流体受器およびチューブ材料、改善された耐透過性を必要とする用途向けのホース材料、ならびに他の燃料系統構成要素を含めて、自動車燃料および他の機関燃料との接触を必要とする用途で使用するための造形構造物および部品を提供することである。本発明の上記その他の目的、特徴、および利点は、以下の本発明の記述を参照するとより理解されよう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
記述した目的を達成できる本発明は、内燃機関で使用される燃料の輸送または貯蔵に適し、流体透過バリヤ特性が改善され、
(a)100重量部のポリアミドと、
(b)5〜50重量部のフェノールノボラック樹脂と
を含むポリアミド樹脂組成物から作製される成形品に関する。
【0009】
このような物品に有用な組成物は、任意選択的に組成物の全重量を基準として40重量パーセントまでのエチレン/α−オレフィンコポリマー衝撃改質剤を含むことができる。
【0010】
好ましい用途には、自動車、貨物自動車、レクリエーション用自動車、農機具、芝管理機具、および重機械で見られるものなど、内燃機関で使用するための炭化水素系燃料の輸送および貯蔵が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(ポリアミド)
本発明で使用するポリアミドは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、またはより高い次元のポリマーとすることができる。これは、2つ以上のポリアミドのブレンドとすることもできる。適切な脂肪族ポリアミドの例は、ポリアミド6、66、46、610、69、612、10、10、11、12である。テレフタル酸およびその誘導体やイソフタル酸およびその誘導体のようなモノマーから誘導された芳香族ポリアミドを使用することもできる。例としては、6T/66、6TXT、MXD6、6T/6I、9T、および10Tがある。ただし、「T」は、テレフタル酸またはその誘導体から誘導されたポリマーを指し、「MXD」は、m−キシリレンジアミンを指す。ポリアミドと熱可塑性ポリマーのブレンドを使用することもできる。
【0012】
ポリアミドは、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、もしくはその誘導体、他の脂肪族および芳香族ジカルボン酸、ならびに脂肪族アルキレンジアミン、芳香族ジアミン、ならびに/または脂環式ジアミンから誘導することができる。また、ラクタムまたはアミノ酸から誘導することもできる。
【0013】
脂肪族ポリアミドコポリマーまたは脂肪族ポリアミドターポリマーの例としては、ポリアミド66/6コポリマー、ポリアミド66/68コポリマー、ポリアミド66/610コポリマー、ポリアミド66/612コポリマー、ポリアミド66/10コポリマー、ポリアミド66/12コポリマー、ポリアミド6/68コポリマー、ポリアミド6/610コポリマー、ポリアミド6/612コポリマー、ポリアミド6/10コポリマー、ポリアミド6/12コポリマー、ポリアミド6/66/610ターポリマー、ポリアミド6/66/69ターポリマー、ポリアミド6/66/11ターポリマー、ポリアミド6/66/12ターポリマー、ポリアミド6/610/11ターポリマー、ポリアミド6/610/12ターポリマー、およびポリアミド6/66/PACM(ビス−p−(アミノシクロヘキシル)メタン)ターポリマーがある。
【0014】
これらのうち、ポリアミド66/6コポリマー、ポリアミド6/66/610ターポリマー、ポリアミド6/66/612ターポリマー、および2つ以上のこれらポリマーの混合物が好ましい。特に好ましいのは、ポリアミド66単位とポリアミド6単位のモル比が98:2〜2:98であるポリアミド66/6コポリマー;ポリアミド6単位とポリアミド66単位を合わせたモルと、ポリアミド610単位のモルの比が98:2〜25:75であり、ポリアミド6単位とポリアミド66単位のモル比が2:98〜98:2であるポリアミド6/66/610ターポリマー;およびポリアミド6単位とポリアミド66単位を合わせたモルとポリアミド612単位のモルの比が98:2〜25:75であり、ポリアミド6単位とポリアミド66単位のモル比が2:98〜98:2であるポリアミド6/66/612ターポリマーである。
【0015】
ポリアミド66、11、12、6/10、6/12、および10/10は、流体(液体と気体)燃料材料の透過に対して良好なバリヤ特性、ならびに良好な機械的諸特性、成形適性、および耐薬品特性を必要とする用途で使用するための物品を成形する際に使用する場合特に有利である。燃料材料は、炭化水素、またはアルコールなど他の燃料を含む炭化水素であることが好ましい。上記に挙げたポリアミドを、単独で、または1つまたは複数の他のポリアミドと組み合わせて使用することができる。本発明で使用する好ましいポリアミドは、ポリアミド66と少なくとも1種の他のポリアミドホモポリマー、ポリアミドコポリマー、またはポリアミドターポリマーとの混合物である。
【0016】
(フェノールノボラック樹脂)
本発明で使用するフェノールノボラック樹脂は、通常のプラスチック成形品用の樹脂で使用できる範囲で制限されない。本発明で使用するフェノールノボラック樹脂の量は、上述のポリアミド100重量部を基準として5〜50重量部、または好ましくは10〜30重量部である。5重量部未満しか存在しない場合、溶融状態において流動性が高く、流体透過バリヤ特性が改善された組成物を得ることができない。50重量部を超えて存在する場合、物理的諸特性は著しく低下する。
【0017】
(衝撃改質剤)
本発明のポリアミド樹脂組成物は、任意選択的に、エチレン−α−オレフィンからなるエラストマー、エチレン−プロピレン−ジエンからなるエラストマー、およびエチレン−不飽和カルボン酸からなるエラストマー、エチレン−不飽和カルボン酸エステルからなるエラストマー、エチレン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルからなるエラストマー、α−オレフィン−不飽和カルボン酸エステルからなるエラストマー、α−オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルからなるエラストマー、エチレン−α−オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステルからなるエラストマー、および上記に記載したエラストマーのグラフト改質材料からなる群から選択される少なくとも1種を含む改質ポリマーを含むエラストマー衝撃改質剤をさらに含むことができる。2つ以上の未改質エラストマー、または改質エラストマーをブレンドすることもできる。上記に記載した未改質エラストマーの少なくとも1種、および上記に記載した改質エラストマーの少なくとも1種をブレンドすることもできる。本質的にカルボン酸−無水カルボン酸で改質されたエチレン−プロピレン−ジエンからなるエラストマーを使用できることが好ましい。本質的に無水カルボン酸で改質されたエチレン−プロピレン−ジエンからなるエラストマーは、例えばエチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエンとエチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン−g−無水マレイン酸の混合物;エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン/ノルボマジエン−g−無水マレイン酸フマル酸;エチレン/1,4−ヘキサジエン/ノルボマジエン−g−無水マレイン酸モノエチルエステル;エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン/ノルボマジエン−g−フマル酸;エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエンとエチレン/無水マレイン酸モノエチレンエステルの混合物;エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエンとエチレン/マレイン酸モノブチルエステルの混合物;エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエンとエチレン/無水マレイン酸の混合物などとすることができる。
【0018】
衝撃改質剤が存在する場合、組成物の全重量を基準として5〜40重量パーセントで存在することが好ましい。衝撃改質剤が5重量パーセント未満の量しか存在していない場合、組成物から成形された物品は、多くの場合許容できる機械的諸特性を有していない。例えば、これらは十分な衝撃強さを有していないことが多い。衝撃改質剤が、40重量パーセントの量を超えて存在する場合、その結果は、ポリアミド樹脂組成物の特性の望ましくない変化となる恐れがある。これは、水分の存在下での成形品の低そり、およびより優れた寸法安定性を含めて、諸特性のバランスが特にクリティカルな技術的に厳しい用途の場合特に重要な点である。
【0019】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、組成物の燃料バリヤ特性が悪影響を受けない程度に、さらに他のポリマー、無機充填剤、有機充填剤、熱安定剤、可塑剤、酸化防止剤、成核剤、染料、顔料、離型剤、難燃剤、衝撃改質剤、および先に述べた成分に加えて他の添加剤を含むことができる。
【0020】
ポリアミド樹脂組成物は、さらに任意選択的に、1つまたは複数のステンレス鋼繊維、炭素繊維、ニッケルコーティングした炭素繊維、カーボンブラック、およびカーボンナノチューブなどの導電性添加剤を含むことができる。導電性添加剤を使用する場合、組成物の全重量を基準として約1〜約15重量パーセント、好ましくは約2〜約10重量パーセントで存在することが好ましい。
【0021】
本発明の物品を作製するために使用するポリアミド樹脂を溶融ブレンドし、知られている任意の製造方法によって製造することができる。成分材料を、単軸または二軸押出機、ブレンダ、混練機、バンバリーミキサなどの溶融ミキサを使用して均質になるまで混合して、樹脂組成物を得ることができる。または、材料の一部分を溶融ミキサで混合することができ、次いで材料の残部を添加し、さらに均質になるまで溶融することができる。
【0022】
燃料関連の用途のための部品の多くは、このような部品とともに使用する燃料に対して低透過性を示さなければならない。本発明の物品は、燃料関連の用途、および良好なバリヤ特性を有する物品が液体または気体燃料に対して低い程度の透過性を必要とする他の用途で使用するためのものである。このような応用例には、自動車および貨物自動車、レクリエーション用自動車、芝刈り機、農機具など内燃機関で使用する燃料の輸送または貯蔵に適した物品が含まれる。このような燃料の例は、ガソリン、ディーゼル燃料、および他の炭化水素系燃料である。炭化水素系燃料は、アルコールなど別の成分を含むことがある。アルコールは、メタノールおよび/またはエタノールを含むことがある。本発明の物品の例は、キャニスタ(cannister)、炭素キャニスタケース、燃料弁、燃料注入口、燃料絞り部(fuel neck)、燃料ライン、および燃料タンクである。
【0023】
本発明の物品は、射出成形、吹込成形、押出、熱成形など知られている任意の手段で形成することができる。
【0024】
本発明を以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0025】
(実施例1、および比較例1)
成分をドライブレンドし、次いで東芝(Toshiba)によって製造された二軸押出機TEM−35を使用して、温度295℃、スクリュー速度200rpmで混合した。押出機を出ると、溶融ポリマーを水浴で急冷し、ペレット化した。
【0026】
流体透過性の測定用のディスク(厚さ1/16インチ、直径3インチ)を作製し、(非特許文献1)に従って、40℃で実施した。
【0027】
表1に示す成分は以下の通りであった。
ナイロン66:ポリアミド66(本願特許出願人製造のザイテル(Zytel(登録商標))FE1111)
ノボラック樹脂:フェノールおよびホルムアルデヒドから調製した数平均分子量約1060のノボラック樹脂
改質EPDM:無水マレイン酸でグラフトしたEPDM(エチレン/プロピレン/ジエンポリオレフィン)
【0028】
【表1】

【0029】
下記の表に、透過性試験の結果を示す。
【0030】
(表2)
流体透過性バリヤ試験は、ガソリン中10%エタノールを使用し、飽和点、40℃での減量速度を決定することによって実施した。
【0031】
【表2】

【0032】
実施例1と比較例1の流体透過速度を比較すると、ノボラック添加が流体透過バリヤ特性に対して有効であることが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関で使用される燃料の輸送または貯蔵に適し、流体透過バリヤ特性が改善され、
(a)100重量部のポリアミドと、
(b)5〜50重量部のフェノールノボラック樹脂と
を含むポリアミド樹脂組成物から作製されることを特徴とする成形品。
【請求項2】
さらに、組成物の全重量を基準として5〜40重量パーセントのエチレン/α−オレフィンコポリマー衝撃改質剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
さらに、無機充填剤、有機充填剤、熱安定剤、可塑剤、酸化防止剤、成核剤、染料、顔料、離型剤、および難燃剤からなる群から選択される1つまたは複数の添加剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の成形品。
【請求項4】
燃料キャニスタ(cannister)の形態であることを特徴とする請求項1に記載の成形品。
【請求項5】
燃料弁の形態であることを特徴とする請求項1に記載の成形品。
【請求項6】
燃料注入口の形態であることを特徴とする請求項1に記載の成形品。
【請求項7】
燃料絞り部(fuel neck)の形態であることを特徴とする請求項1に記載の成形品。
【請求項8】
燃料タンクの形態であることを特徴とする請求項1に記載の成形品。
【請求項9】
燃料ラインの形態であることを特徴とする請求項1に記載の成形品。
【請求項10】
さらに、ステンレス鋼繊維、炭素繊維、ニッケルコーティングした炭素繊維、カーボンブラック、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される1つまたは複数の導電性添加剤を、組成物の全重量を基準として約1〜約15重量パーセント含むことを特徴とする請求項1に記載の成形品。

【公表番号】特表2007−502358(P2007−502358A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533405(P2006−533405)
【出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/016430
【国際公開番号】WO2004/104102
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】