説明

ポリアミド樹脂組成物

ポリカルボジイミドと、ガラス繊維と、任意選択的に衝撃改質剤とを含む、良好な耐衝撃性および剛性を有するポリアミド組成物。それから形成された物品も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年9月8日出願の米国特許出願第11/518,056号明細書の利益を請求する。
【0002】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。特に本発明は、ポリカルボジイミドと、ガラス繊維と、任意選択的に衝撃改質剤とを含むポリアミド樹脂組成物に関する。このポリアミド組成物は、良好な耐衝撃性および良好な剛性を有する。
【背景技術】
【0003】
ポリアミド組成物は、それらの優れた物性、耐薬品性、および加工の容易さ(すなわち、加工性)のため、多種多様の用途で使用されている。一般的な用途として、自動車部品、電気部品、電子部品が挙げられる。
【0004】
ポリアミドは良好な固有強靭性または耐衝撃性を有するが、ポリアミド組成物の強靭性を高めるために、低弾性ゴム衝撃改質剤をしばしば使用する。しかしながら、得られるポリアミド樹脂の剛性または硬さは、これらの衝撃改質剤の添加によって低下し得る。
【0005】
補強剤および充填剤、特に無機補強剤(例えば、ガラス繊維)および鉱物性充填剤の添加によって、ポリアミド組成物の剛性を改善することができるが、得られる樹脂の強靭性は、この処置によって低下し得る。
【0006】
要約すると、ゴム衝撃改質剤および/または無機補強剤の単純な添加は、ポリアミド組成物の剛性および強靭性の両方を改善するために、典型的に望ましくない。
【0007】
反応性官能基で変性されたエラストマー材料をポリアミド樹脂に添加することによって、衝撃強度を著しく改善することができることが知られている。例えば、a)ポリアミド(66ナイロンおよび6ナイロンの混合物)60〜97重量%と、b)(i)カルボキシルもしくはカルボキシレート官能基を有するエラストマーオレフィンコポリマー、または(ii)三元共重合性モノマーを含有し得、そして金属塩基性塩でその酸性成分を中和することによって少なくとも部分的にイオン化された、少なくとも1種のα−オレフィンおよび少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸のイオンコポリマーから選択されるポリマー強化剤3〜40重量%とを含有する強化ポリアミドブレンドが、特許文献1に開示されている。
【0008】
ポリカルボジイミドの添加によって、溶融粘度および加水分解に対する耐性が改善されたポリアミド組成物が開示されている。例えば、ユニークな流動学的特性および改善された剪断特性を有する、ポリカルボジイミドによって変性された、扱いやすいポリアミド製品が、特許文献2に開示されている。ポリカルボジイミドは架橋剤として機能し、カルボジイミド基が、ポリアミド中で末端COOHおよびNH基を架橋することが開示されている。
【0009】
特許文献3には、高温で加水分解に対して安定化する0.1〜5重量芳香族ポリカルボジイミドを含有するポリアミド樹脂組成物が開示されている。
【0010】
特許文献4は、ポリアミド中のカルボジイミド基対酸基のモル当量比が0.10対3.5で、芳香族または脂肪族ポリカルボジイミドを含むポリアミド樹脂組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,346,194号明細書
【特許文献2】米国特許第4,128,599号明細書
【特許文献3】米国特許第5,360,888号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0010094号明細書
【特許文献5】米国特許第2,941,956号明細書
【特許文献6】特公昭47−33279号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J.Org.Chem.、28、2069−2075(1963)、Chemical Reviews、81、619−621(1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、良好な剛性および良好な強靭性の両方を示す組成物を提供することと、その組成物から成形された物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様において、本発明は、(a)少なくとも1種のポリアミド成分と、(b)ガラス繊維と、(c)少なくとも1種のポリカルボジイミド成分とを含むポリアミド組成物である。本発明のポリアミド組成物は、さらに(d)少なくとも1種の衝撃改質剤を含み得る。さらに、上記組成物から成形された物品を提供する。本発明の成形物品は、著しい強靭性および著しい剛性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の効果を説明するグラフである。X軸は曲げ弾性率を意味し、硬さまたは剛性を意味する。Y軸はシャルピー アイゾット インパクト(Charpy Izod Impact)を意味し、強靭性を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の組成物は、ポリアミドと、ポリカルボジイミドと、ガラス繊維と、任意選択的に衝撃改質剤とを含む。上記の通り、ゴム衝撃改質剤または無機補強剤のいずれか、あるいは両方をポリアミドに単独で添加することによって形成されたポリアミド樹脂は、望ましい剛性および望ましい強靭性の両方を特性を提供しない。しかしながら、驚くべきことに、ポリアミド、ガラス繊維およびポリカルボジイミドを含むポリアミド組成物は、良好な剛性および良好な強靭性の両方を示す。さらに、衝撃改質剤の添加によって、これらの特性を改善することができる。
【0017】
ポリアミド
本発明の組成物のポリアミドは、少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドを含む。ポリアミドは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーまたはより高次のポリマーであってもよい。2種以上のポリアミドのブレンドが使用されてもよい。適切なポリアミドは、ジカルボン酸もしくはそれらの誘導体とジアミンとの縮合生成物、および/またはアミノカルボン酸の縮合生成物、および/またはラクタムの開環重合生成物であり得る。適切なジカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、イソフタル酸およびテレフタル酸が挙げられる。適切なジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシリレンジアミン、およびp−キシリレンジアミンが挙げられる。適切なアミノカルボン酸は、11−アミノドデカン酸である。適切なラクタムは、カプロラクタムおよびラウロラクタムを含む。
【0018】
好ましい脂肪族ポリアミドとしては、ポリアミド6;ポリアミド66;ポリアミド46;ポリアミド69;ポリアミド610;ポリアミド612;ポリアミド1010;ポリアミド11;ポリアミド12;ポリ(m−キシリレンアジパミド)(ポリアミドMXD6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9T)、ヘキサメチレンテレフタルアミドおよびヘキサメチレンアジパミドのポリアミド(ポリアミド6T/66)のような半芳香族ポリアミド;ヘキサメチレンテレフタルアミドおよび2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドのポリアミド(ポリアミド6T/DT);ヘキサメチレンイソフタルアミドおよびヘキサメチレンアジパミドのポリアミド(ポリアミド6I/66);ヘキサメチレンテレフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド、およびヘキサメチレンアジパミドのポリアミド(ポリアミド6T/6I/66)、ならびにこれらのポリマーのコポリマーおよび混合物が挙げられる。
【0019】
適切な脂肪族ポリアミドの例としては、ポリアミド66/6コポリマー;ポリアミド66/68コポリマー;ポリアミド66/610コポリマー;ポリアミド66/612コポリマー;ポリアミド66/10コポリマー;ポリアミド66/12コポリマー;ポリアミド6/68コポリマー;ポリアミド6/610コポリマー;ポリアミド6/612コポリマー;ポリアミド6/10コポリマー;ポリアミド6/12コポリマー;ポリアミド6/66/610ターポリマー;ポリアミド6/66/69ターポリマー;ポリアミド6/66/11ターポリマー;ポリアミド6/66/12ターポリマー;ポリアミド6/610/11ターポリマー;ポリアミド6/610/12ターポリマー;およびポリアミド6/66/PACM(ビス−p−{アミノシクロヘキシル}メタン)ターポリマーが挙げられる。
【0020】
好ましいポリアミドは、ポリカルボジイミド添加の効果を最大化するという観点から、ポリアミド66である。他の熱可塑性ポリマーとのポリアミドのブレンドを使用してもよい。ポリアミドは、組成物の総重量を基準として、好ましくは約65〜約84.7重量%、またはより好ましくは約70〜約80重量%の量で存在する。
【0021】
ガラス繊維
プラスチック材料の補強に利用可能ないずれのガラス繊維も使用に適している。ガラス繊維としては、限定されないが、チョップド ストランド(chopped strand)E−ガラス繊維が挙げられる。
【0022】
衝撃改質剤が組成物中に含まれない場合、ガラス繊維は、組成物の総重量を基準として、好ましくは約15〜約39.7重量%、またはより好ましくは約20〜約35重量%の量で組成物中に存在する。衝撃改質剤が組成物中に含まれる場合、ガラス繊維は、組成物の総重量を基準として、好ましくは約3〜約20重量%、より好ましくは約5〜約15重量%、またはさらにより好ましくは約8〜約12重量%の量で組成物中に存在する。本明細書で教示および請求されたようにポリアミド組成物中に上記範囲内で組み合わせられた場合、望ましい剛性および強靭性を持つ樹脂物品を得ることができる。
【0023】
ポリカルボジイミド
ポリカルボジイミドは、脂肪族、脂環式または芳香族ポリカルボジイミドであり得、次の化学式:
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、R基は、脂肪族、脂環式または芳香族基を表す)によって表すことができる。
【0026】
適切なR基の例としては、限定されないが、2,6−ジイソプロピルベンゼン、ナフタレン、3,5−ジエチルトルエン、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチレンフェニル)、4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−6−メチルフェニル)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)、4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−5−メチルシクロヘキシル)、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン、およびメチルシクロヘキサン等から誘導された二価の基が挙げられる。
【0027】
ポリカルボジイミドは、当業者に既知の様々な方法によって製造することができる。従来の製造方法については、特許文献5、特許文献6、非特許文献1に記載されている。典型的に、それらは、有機ジイソシアネートの脱カルボキシル基を伴う縮合反応によって製造される。この方法によって、イソシアネート末端を有するポリカルボジイミドが生じる。
【0028】
芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートまたはそれらの混合物を、例えば、ポリカルボジイミドを調製するために使用することができる。適切な例としては、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、および1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
連鎖停止剤を使用して、重合を制御し、またイソシアネート以外の末端基を有するポリカルボジイミドを得ることができる。適切な連鎖停止剤の例としては、モノイソシアネートが挙げられる。適切なモノイソシアネートとしては、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネートおよびナフチルイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
他の適切な連鎖停止剤としては、アルコール、アミン、イミン、カルボン酸、チオール、エーテルおよびエポキシドが挙げられる。例として、メタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、クエン酸、安息香酸、シクロヘキサン酸、エチレンメルカプタン、アリールメルカプタンおよびチオフェノールが挙げられる。
【0031】
ポリカルボジイミドを形成するための有機ジイソシアネートの反応は、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−e−ホスホレン−1オキシドおよび上記の3−ホスホレン異性体のようなカルボジイミド化触媒の存在下で実行される。中でも、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1オキシドは、特に反応性である。
【0032】
ポリカルボジイミドは、組成物の総重量を基準として、好ましくは約0.3〜約5重量%、またはより好ましくは約0.5重量%超〜約2.0重量%の量で組成物中に存在する。上記範囲内で、優れた剛性および強靭性を持つ樹脂物品を得ることができる。
【0033】
衝撃改質剤
任意選択の衝撃改質剤は、ポリアミド樹脂を強化するために適切なものとして公知の、または適切なものとして見いだされているいずれの衝撃改質剤であってもよい。適切な衝撃改質剤の例は、参照により本明細書に援用される米国特許第4,174,358号明細書に挙げられている。好ましい衝撃改質剤は、カルボキシル置換ポリオレフィンであって、すなわち、そのポリオレフィン骨格自体に、または側鎖に結合したカルボン酸部分を有するポリオレフィンである。「カルボン酸部分」とは、ジカルボン酸、ジエステル、ジカルボン酸モノエステル、酸無水物、モノカルボン酸およびエステル、ならびに塩の1種または複数種のようなカルボン酸基を意味する。カルボン酸塩は、中和されたカルボン酸である。有用な衝撃改質剤は、ジカルボキシ置換ポリオレフィンであって、すなわち、そのポリオレフィン骨格自体に、または側鎖に結合したジカルボン酸部分を有するポリオレフィンである。「ジカルボン酸部分」とは、ジカルボン酸、ジエステル、ジカルボン酸モノエステルおよび酸無水物の1種または複数種のようなジカルボン酸基を意味する。好ましいポリオレフィンは、エチレンと、1種または複数種の炭化水素である追加オレフィンとのコポリマーである。
【0034】
衝撃改質剤は、好ましくは、エチレン/α−オレフィンポリオレフィンのようなオレフィンコポリマーをベースとする。オレフィンコポリマーを調製するために適切なオレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘプテンまたは1−ヘキセンのような2〜8個の炭素原子を有するアルケンが含まれる。ポリオレフィンの調製で、1,4−ヘキサジエン、2,5−ノルボルナジエン、1,7−オクタジエン、および/またはジシクロペンタジエンのようなジエンモノマーを任意選択的に使用してもよい。好ましいオレフィンコポリマーは、エチレン、3〜6個の炭素原子を有する少なくとも1種のα−オレフィンおよび少なくとも1種の非抱合型ジエンから導き出されるポリマーである。特に好ましいポリオレフィンは、1,4−ヘキサジエンおよび/またはジシクロペンタジエンから製造されるエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ポリマー、ならびにエチレン/プロピレンコポリマーである。
【0035】
不飽和カルボキシル含有モノマーとの共重合によるポリオレフィン調製の間、カルボキシル部分をオレフィンコポリマーに導入し、衝撃改質剤を形成してもよい。またカルボキシル部分は、酸、エステル、二酸、ジエステル、酸エステルまたは無水物のようなカルボキシル部分を含有する不飽和グラフト剤によるポリオレフィンのグラフトによって導入されてもよい。
【0036】
適切な不飽和カルボン酸含有コモノマーまたはグラフト剤の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸モノエチルエステルの金属塩、フマル酸、フマル酸モノエチルエステル、イタコン酸、ビニル安息香酸、ビニルフタル酸、フマル酸モノエチルエステルの金属塩、ならびにマレイン酸、フマル酸またはイタコン酸のメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ステアリル、メトキシエチル、エトキシエチル、ヒドロキシまたはエチル、モノエステルおよびジエステル等が挙げられる。無水マレイン酸が好ましい。
【0037】
好ましい衝撃改質剤は、EPDMポリマー、または無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/プロピレンコポリマーである。ポリエチレン、ポリプロピレンおよびEPDMポリマーのようなポリオレフィンと、カルボキシル部分を含有する不飽和化合物でグラフトされたポリオレフィンとのブレンドを衝撃改質剤として使用してもよい。
【0038】
他の好ましい衝撃改質剤は、イオノマー、すなわち、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のような二価金属カチオンによって部分的に中和されたカルボキシル含有ポリマーである。好ましいイオノマーは、亜鉛で部分的に中和されたエチレン/アクリル酸およびエチレン/メタクリル酸コポリマーである。イオノマーは、本願特許出願人から、Surlyn(登録商標)の商標で市販品として入手可能である。
【0039】
使用時、衝撃改質剤は、組成物の総重量を基準として、好ましくは約3〜約20重量%、または好ましくは約5〜約15重量%、またはより好ましくは約8〜約12重量%の量で組成物中に存在する。衝撃改質剤の重量パーセントは比較的低いが、本発明において強靭性は著しく改善される。
【0040】
本発明の組成物は、難燃剤、潤滑剤、離型剤、染料および顔料、UV光安定剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、ならびに無機充填剤のような他の添加剤をさらに含んでもよい。本発明の目的を阻止する実施形態が除外されることを除き、本発明の教示と矛盾しない量で、他の任意選択の添加剤を添加してよい。
【0041】
本発明の組成物は、溶解混合ブレンドであり、全てのポリマー成分が、互いの範囲内で良好に分散し、そして全ての非ポリマー成分が、ポリマーマトリックス中に分散し、それによって結合され、そしてブレンドは統合された全体を形成する。本発明のポリマー成分と非ポリマー成分とを組み合わせるために、いかなる溶融混合方法が使用されてもよい。
【0042】
例えば、一軸もしくは二軸スクリュー押出機;ブレンダー;ニーダー;またはBanburyミキサーのような溶解物ミキサーに、1回の添加工程で一度に、もしくは段階的な様式で、ポリマー成分および非ポリマー成分を添加し、次いで溶融混合することができる。段階的な様式でポリマー成分および非ポリマー成分を添加する場合、ポリマー成分および/または非ポリマー成分の一部を最初に添加し、溶融混合して、そしてその後、残りのポリマー成分および非ポリマー成分を添加し、そして十分に混合された組成物が得られるまで、さらに溶融混合する。
【0043】
成形、例えば、射出成形、吹込み成形、押出成形、熱形成、溶解物キャスティング、真空成形および回転成形などの当業者に既知の方法を使用して、本発明の組成物を物品へと形成してもよい。異なる材料から製造される物品上へ組成物をオーバー形成してもよい。組成物をフィルムまたはシートへと押出してもよい。組成物をモノフィラメントへと形成してもよい。
【0044】
得られた物品は、ハウジング、自動車部品、電気商品、電子部品および構造材料を含む様々な用途で使用することができる。好ましい物品としては、ギアが挙げられる。
【実施例】
【0045】
実施例1〜2および比較例1〜2の調製
表1に示される成分を、デュアルシャフトニーダー中で溶融ブレンドし、押出し、凝固して、ペレットへと切断した。成分量は、組成物の総重量を基準とする重量%で与えられる。
【0046】
試験片の調製
非強化ナイロン樹脂の通常の成形条件を使用し、上記得られたペレットから、高さ4.0mm×長さ175mm×幅20mmのISO試験片を形成した。
【0047】
物性の測定
上記試験片を使用し、物性を測定した。
ISO527−1/2に従って、引張強度、弾性率および破断点伸びを測定した。
ISO178に従って、曲げ弾性率および曲げ強さを測定した。
ISO179/1eAに従って、ノッチドシャルピー衝撃強度を測定した。
【0048】
実施例および比較例の組成物中成分として以下の材料を使用した。
ポリアミドA(ポリアミド6,6):DuPontより入手可能なZytel(登録商標)101。
ポリアミドB(33%ガラス繊維補強ポリアミド6,6):DuPontより入手可能なZytel(登録商標)70G33HSL。
ポリカルボジイミド:Rheinchemie GmbHから入手可能なStabaxol P(登録商標)、芳香族ポリカルボジイミド。
衝撃改質剤:無水マレイン酸でグラフト化されたEPDMゴム。
ガラス繊維:Owens Corning Co. Ltdから供給されたチョップド ストランドE−ガラス繊維
製品番号:CS 03 DE FT2A。
【0049】
【表1】

【0050】
比較例1と実施例1、比較例2と実施例2との比較から明白であるように、ポリカルボジイミドおよび衝撃改質剤に加えて、ガラス繊維を含有するポリアミド組成物では、両方とも剛性および他の物性を著しく犠牲にすることなく、強靭性が著しく改善されている。特に、他の物性の中でも著しく改善されたノッチド シャルピー(notched Charpy)および破断点伸びは強靭性を意味するが、高いレベルで維持されている。
【0051】
実施例3、実施例4および比較例3を比較すると、ガラス繊維に加えてポリカルボジイミドが含まれることによって、他の物性が高いレベルで維持されているが、強靭性の著しい改善が示されている。衝撃改質剤をさらに添加することによって、実施例1および実施例2と同レベルの強靭性を達成することができるが、一般的に剛性は強烈に低下する。
【0052】
図1は、本発明の効果を説明するグラフである。X軸は曲げ弾性率を意味し、硬さまたは剛性を意味する。Y軸はシャルピー アイゾット インパクト(Charpy Izod Impact)を意味し、強靭性を意味する。図1に明白に示されるように、カルボジイミドの添加によって、高い硬さおよび強靭性を有する樹脂性物品を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のポリアミド成分と、(b)ガラス繊維と、(c)少なくとも1種のポリカルボジイミド成分とを含むポリアミド組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記組成物の総重量を基準とする重量%で、約60〜約84.7重量%のポリアミド(a)と、約15〜約39.7重量%のガラス繊維(b)と、約0.3〜約5重量%のポリカルボジイミド(c)とを含む組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリアミドが、ポリアミド66/6コポリマー;ポリアミド66/68コポリマー;ポリアミド66/610コポリマー;ポリアミド66/612コポリマー;ポリアミド66/10コポリマー;ポリアミド66/12コポリマー;ポリアミド6/68コポリマー;ポリアミド6/610コポリマー;ポリアミド6/612コポリマー;ポリアミド6/10コポリマー;ポリアミド6/12コポリマー;ポリアミド6/66/610ターポリマー;ポリアミド6/66/69ターポリマー;ポリアミド6/66/11ターポリマー;ポリアミド6/66/12ターポリマー;ポリアミド6/610/11ターポリマー;ポリアミド6/610/12ターポリマー;およびポリアミド6/66/PACM(ビス−p−{アミノシクロヘキシル}メタン)ターポリマーからなる群から選択される1つまたは複数である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリアミドが、ポリアミド6;ポリアミド66;ポリアミド46;ポリアミド69;ポリアミド610;ポリアミド612;ポリアミド1010;ポリアミド11;ポリアミド12;半芳香族ポリアミド;ヘキサメチレンテレフタルアミドおよび2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドのポリアミド;ヘキサメチレンイソフタルアミドおよびヘキサメチレンアジパミドのポリアミド;ヘキサメチレンテレフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド、およびヘキサメチレンアジパミドのポリアミド;ならびにそれらのコポリマーおよび混合物からなる群から選択される1つまたは複数である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のポリアミドが、ポリ(m−キシリレンアジパミド);ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド);ポリ(デカメチレンテレフタルアミド);ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド);ならびにヘキサメチレンテレフタルアミドおよびヘキサメチレンアジパミドのポリアミドからなる群から選択される1つまたは複数である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリアミドがポリアミド66である請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
(d)少なくとも1種の衝撃改質剤をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物であって、組成物の総重量を基準として、約65〜約84.7重量%のポリアミド(a)と、約3〜約20重量%のガラス繊維(b)と、約0.3〜約5重量%のポリカルボジイミド(c)と、(d)約5〜約15重量%の衝撃改質剤とを含む組成物。
【請求項9】
前記衝撃改質剤が、無水マレイン酸でグラフトされたエチレン−プロピレン−ジエンポリマー、または無水マレイン酸でグラフトされたエチレン−プロピレンコポリマーを含む請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記衝撃改質剤がイオノマーである請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のポリカルボジイミドが、脂肪族、脂環式または芳香族ポリカルボジイミドである請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物から成形された物品。
【請求項13】
ギアの形態である請求項12に記載の物品。

【図1】
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【公表番号】特表2010−502818(P2010−502818A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527444(P2009−527444)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/019621
【国際公開番号】WO2008/030600
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】