説明

ポリアミド溶着成形品

【課題】耐熱性に優れ、成形性、成形外観性が良好で、さらに溶着性(溶着強度)にも優れる溶着成形品を提供する。
【解決手段】(a−p)アジピン酸単位、(b−p)イソフタル酸単位、及び(c−p)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を含むジカルボン酸成分単位と、
ジアミン成分単位と、を含むポリアミド共重合体であって、
当該ポリアミド共重合体を構成する前記(a−p)、前記(b−p)、及び前記(c−p)を含む前記ジカルボン酸成分単位の合計100モル%における、前記(b−p)の含有量(モル%)と前記(c−p)との含有量(モル%)の関係が下記式(1)を満たすポリアミド共重合体を含有する溶着成形品。
(c−p)の含有量>(b−p)の含有量≧0.1 ・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド溶着成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリアミド樹脂は、成形加工性、機械物性及び耐薬品性に優れていることから、衣料用、産業資材用、自動車、電気・電子用及び工業用等の、様々な部品材料として広く用いられている。また、ガラス繊維を配合することにより、更に強度が向上するため、ガラス繊維で強化した状態でも広く使用されている。
【0003】
ポリアミド樹脂部材の成形方法としては、射出成形法が広く利用されているが、中空部を有する部品や複雑な形状の部品などは、一回の射出成形法での製造は困難であり、複数の部材を溶着することによって製造されることがある。
【0004】
この様な溶着においては、各種溶着技術、例えば、接着剤溶着、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着、射出溶着、レーザー溶着技術等が使用されている。 しかし、接着剤溶着は、作業が繁雑で、硬化に要する時間的ロスに加え、溶剤による周囲への汚染などの環境負荷の問題がある。
【0005】
一方、その他の溶着法は簡便な方法であるが、部品の大型化や複雑化に伴って、より高い溶着強度が要求されるようになり、溶着部分の強度が不十分であるためにその使用が制限されるのが現状であった。
【0006】
ポリアミド製の溶着接合用部材にはポリアミド6樹脂が主に使用されてきたが、耐熱性、耐薬品性に劣るため高温での使用はできなかった。一方、ポリアミド66樹脂は、耐熱性、耐薬品性に優れているものの、溶着強度が低いなどの問題があった。
【0007】
特許文献1 においては、ポリアミド66/6 の共重合体による溶着接合用部材が提案されており、溶着強度の改善はみられるが、それでもまだ溶着強度が不十分であった。また特許文献2 においては、ポリアミド66/6I の共重合体による溶着接合部材が提案されており、溶着強度は改善されているが6I 成分の共重合により強度、弾性率、耐熱性が低下し、機械物性の面で満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−337718 号公報
【特許文献2】特開2002−348371 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来開示されている技術によると、成形加工性に優れ、機械強度及び剛性のバランスを保持しつつ、溶着強度と成形品の外観を同時に満足するポリアミド溶着成形品が要望されている。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、成形性が良好で、溶着接合部の溶着強度と外観性にも優れたポリアミド溶着成形品を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、(a−p)アジピン酸単位、(b−p)イソフタル酸単位、及び(c−p)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を含むジカルボン酸成分単位と、ジアミン成分単位とを含むポリアミド共重合体であって、当該ポリアミド共重合体を構成する前記(a−p)、前記(b−p)、及び前記(c−p)を含む前記ジカルボン酸成分単位の合計100モル%における、前記(b−p)の含有量(モル%)と前記(c−p)の含有量(モル%)の関係が下記式(1)を満たすポリアミド共重合体(A)を含有するポリアミド樹脂組成物からなるポリアミド溶着成形品が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
(c−p)の含有量>(b−p)の含有量≧0.1 ・・・(1)
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0012】
〔1〕
(A):(a−p)アジピン酸単位、(b−p)イソフタル酸単位、及び(c−p)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を含むジカルボン酸成分単位と、ジアミン成分単位と、を含むポリアミド共重合体であって、
当該ポリアミド共重合体を構成する前記(a−p)、前記(b−p)、及び前記(c−p)を含む前記ジカルボン酸成分単位の合計100モル%における、前記(b−p)の含有量(モル%)と前記(c−p)との含有量(モル%)の関係が下記式(1)を満たすポリアミド共重合体を含有する溶着成形品。
(c−p)の含有量>(b−p)の含有量≧0.1 ・・・(1)
〔2〕
前記(A)ポリアミド共重合体100質量部と、(B)無機充填材1〜300質量部と、
を含有するポリアミド樹脂組成物からなる、前記〔1〕に記載の溶着成形品。
〔3〕
前記(a−p)、前記(b−p)、及び前記(c−p)を含む前記ジカルボン酸成分単位の合計100モル%に対して、
前記(a−p)アジピン酸単位の含有量が40〜80モル%であり、
前記(b−p)イソフタル酸単位の含有量が0.1〜25モル%であり、
前記(c−p)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位の含有量が15〜40モル%である、
前記〔1〕又は〔2〕に記載の溶着成形品。
〔4〕
前記ジアミン成分単位が、脂肪族ジアミン成分単位である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の溶着成形品。
〔5〕
前記ジアミン成分単位が、ヘキサメチレンジアミン単位である、前記〔4〕に記載の溶着成形品。
〔6〕
(a−m)アジピン酸、(b−m)イソフタル酸、及び(c−m)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、ジアミン成分と、を共重合させることにより得られるポリアミド共重合体であって、
前記(c−m)1,4−シクロジカルボン酸、前記(a−m)アジピン酸、及び前記(b−m)イソフタル酸を含むジカルボン酸成分それぞれに由来する単位の合計100モル%における、前記ポリアミド共重合体中における(b−p)イソフタル酸に由来する単位の含有量(モル%)と(c−1−p)1,4−シクロジカルボン酸に由来する単位のトランス異性体の単位の含有量(モル%)との関係が、下記式(2)を満たす(A)ポリアミド共重合体含有する、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の溶着成形品。
(c−1−p)1,4−シクロジカルボン酸に由来する単位のトランス異性体の単位の含有量>(b−p)イソフタル酸に由来する単位の含有量≧0.1 ・・・(2)
〔7〕
前記(a−m)アジピン酸、前記(b−m)イソフタル酸、及び前記(c−m)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含む前記ジカルボン酸成分と、
前記ジアミン成分と、
の、共重合における最終重合到達温度が270℃以上である、前記〔6〕に記載の溶着成形品。
〔8〕
前記共重合の原料モノマーとして用いる前記(c−m)1,4−シクロジカルボン酸中の前記シス異性体(c−2−m)に対する前記トランス異性体(c−1−m)のモル比率((c−1−m)/(c−2−m))が、50/50〜10/90である、前記〔6〕又は〔7〕に記載の溶着成形品。
〔9〕
自動車部品である前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一項に記載の溶着成形品。
〔10〕
電子部品である前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一項に記載の溶着成形品。
〔11〕
家電OA機器部品又は携帯機器部品である前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一項に記載の溶着成形品。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐熱性、成形性が良好で、溶着接合部の溶着強度と外観性にも優れたポリアミド共重合体を含有するポリアミド樹脂組成物からなる溶着成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】振動溶着時の平板の寸法、セット状態、振動方向を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
すなわち本発明は、以下に示すポリアミド樹脂組成物からなる、溶着成形品である。
【0016】
〔ポリアミド樹脂組成物〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、
(A):(a−p)アジピン酸単位、(b−p)イソフタル酸単位、及び(c−p)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を含むジカルボン酸成分単位と、
ジアミン成分単位と、を含むポリアミド共重合体であって、
当該ポリアミド共重合体を構成する前記(a−p)、前記(b−p)、及び前記(c−p)を含む前記ジカルボン酸成分単位の合計100モル%における、前記(b−p)の含有量(モル%)と前記(c−p)との含有量(モル%)の関係が下記式(1)を満たすポリアミド共重合体を、含有するポリアミド樹脂組成物である。
((A)ポリアミド共重合体)
【0017】
(A)ポリアミド共重合体(本明細書中、(A):ポリアミド共重合体、ポリアミド共重合体(A)と記載することもある。)は、(a−p)アジピン酸単位、(b−p)イソフタル酸単位、及び(c−p)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を含むジカルボン酸成分単位と、ジアミン成分単位とを含むポリアミド共重合体であって、当該ポリアミド共重合体を構成する前記(a−p)、前記(b−p)、及び前記(c−p)を含む前記ジカルボン酸成分単位の合計100モル%における、前記(b−p)の含有量(モル%)と前記(c−p)の含有量(モル%)の関係が、下記式(1)を満たすポリアミド共重合体である。
【0018】
これにより、耐熱性に優れるだけでなく、溶着接合部の溶着強度と成形外観性に優れるポリアミド樹脂組成物とすることができる。
(c−p)の含有量>(b−p)の含有量≧0.1 ・・・(1)
【0019】
<ジカルボン酸成分>
前記(A)ポリアミド共重合体中のジカルボン酸成分単位の組成割合としては、前記(a−p)アジピン酸単位、(b−p)イソフタル酸単位、及び(c−p)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を含むジカルボン酸成分単位の合計100モル%に対して、好ましくは(a−p)アジピン酸単位の含有量が40〜80モル%、(b−p)イソフタル酸単位の含有量が0.1〜25モル%、及び(c−p)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位の含有量が15〜40モル%であり、より好ましい組成割合は(a−p)アジピン酸単位の含有量が45〜80モル%、(b−p)イソフタル酸単位の含有量が1〜25モル%、及び(c−p)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位の含有量が20〜40モル%であり、更に(b−p)と(c−p)の関係が上記式(1)を満たすポリアミド共重合体である。
【0020】
組成割合を上記範囲内とし、かつ前記式(1)の関係を満たすことにより、溶着接合部の溶着強度に優れ、成形外観性と耐熱性に優れたポリアミド樹脂組成物とすることができる。
なお、ポリアミド共重合体を構成する各組成の割合は核磁気共鳴装置(NMR)によって求めることができる。
【0021】
<ジアミン成分>
前記(A)ポリアミド共重合体中のジアミン成分単位としては、特に限定されないが、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、主鎖から分岐した置換基を持つジアミン等が挙げられ、これらの中でも、脂肪族ジアミンが好ましい。
【0022】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミン等の、炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。これら脂肪族ジアミン成分の中でも、剛性の観点から、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0023】
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン等の炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
これらのジアミン成分は、それぞれ1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0024】
<その他の共重合成分>
(A)ポリアミド共重合体には、本実施形態の目的を損なわない範囲で、(a−m)アジピン酸、(b−m)イソフタル酸、及び(c−m)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外の脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、重縮合可能なアミノ酸、ラクタム等を共重合成分として用いることができる。
【0025】
(a−m)アジピン酸、(b−m)イソフタル酸、及び(c−m)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸等の炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0026】
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸等の、脂環構造の炭素数が3〜10である、好ましくは脂環構造の炭素数が5〜10である、脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。脂環族ジカルボン酸は、無置換でもよいし置換基を有していてもよい。
【0027】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の、無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0028】
前記種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基等のハロゲン基、炭素数3〜10のアルキルシリル基、並びにスルホン酸基及びそのナトリウム塩等のその塩である基等が挙げられる。
【0029】
重縮合可能なアミノ酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。
【0030】
ラクタムとしては、例えば、ブチルラクタム、ピバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカノラクタム等が挙げられる。
【0031】
これらのジカルボン酸成分、アミノ酸成分、及びラクタム成分は、それぞれ1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0032】
<末端封止剤>
前記(A)ポリアミド共重合体の原料として、分子量調節や耐熱水性向上のために、末端封止剤を更に添加することができる。例えば、前記(A)ポリアミド共重合体を重合する際に、公知の末端封止剤を、さらに添加することができる。
【0033】
末端封止剤としては、特に限定されず、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類等が挙げられる。それらの中でも、製造コストの観点から、モノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。これらの末端封止剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
末端封止剤として用いられるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するモノカルボン酸であれば特に限定されず、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。これらのモノカルボン酸は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
末端封止剤として用いられるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するモノアミンであれば特に限定されず、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン;等が挙げられる。これらのモノアミンは、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
<数平均分子量>
前記(A)ポリアミド共重合体の分子量については、特に限定されないが、成形性及び機械物性の観点から、数平均分子量(Mn)は、好ましくは7000〜100000であり、より好ましくは7500〜50000であり、さらに好ましくは10000〜40000である。
【0037】
数平均分子量(Mn)は、例えば、トリフルオロ酢酸ナトリウムを0.1モル%溶解したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を溶媒として用い、標準試料としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0038】
前記(A)ポリアミド共重合体の数平均分子量(Mn)が7000以上の場合には、靱性の低下を一層抑制できる傾向があり、また100000以下の場合には、成形性の低下を一層抑制できる傾向がある。
【0039】
<融点>
前記(A)ポリアミド共重合体の融点は、好ましくは210〜340℃であり、より好ましくは230〜330℃であり、さらに好ましくは240〜320℃であり、よりさらに好ましくは240〜300℃である。
【0040】
融点の測定は、JIS K7121に準じて行うことができる。より具体的には、例えば、PERKIN−ELMER社製、「DSC−7」を用いて測定することができる。
【0041】
具体的には、サンプル8mgを用いて、昇温速度20℃/minの条件下、350℃まで昇温して、得られた融解曲線のピーク温度を融点とする。
【0042】
融点が210℃以上の場合には、耐薬品性や耐熱性の低下を一層抑制できる傾向があり、340℃以下の場合には成形時の熱分解等を一層抑制できる傾向がある。
【0043】
<ガラス転移温度>
前記(A)ポリアミド共重合体のガラス転移温度は、好ましくは55〜110℃であり、より好ましくは60〜105℃であり、さらに好ましくは60〜100℃である。
【0044】
ガラス転移温度の測定は、JIS K7121に準じて行うことができる。より具体的には、例えば、PERKIN−ELMER社製、「DSC−7」を用いて測定することができる。
【0045】
まず、試料をホットステージ(例えば、Mettler社製、「EP80」)で溶融させ、溶融状態のサンプルを液体窒素中に急冷し、固化させ、測定サンプルとする。測定サンプル10mgを用いて、昇温速度20℃/minの条件下、30〜300℃の範囲で昇温して、ガラス転移温度を測定することができる。
【0046】
ガラス転移温度が55℃以上の場合には、耐熱性や耐薬品性の低下を起こし難く、吸水性が増すことを効果的に防止できる。また、ガラス転移温度が110℃以下の場合には、成形外観性が更に優れたものが得られる。
【0047】
((A)ポリアミド共重合体の製造方法)
(A)ポリアミド共重合体の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0048】
例えば、アジピン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサメチレンジアミン、必要に応じてその他の成分との混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(熱溶融重合法);熱溶融重合法で得られたポリアミド共重合体を融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(熱溶融重合・固相重合法);アジピン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサメチレンジアミン、必要に応じてその他の成分との混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融させて重合度を上昇させる方法(プレポリマー・押出重合法);アジピン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサメチレンジアミン、必要に応じてその他の成分との混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(プレポリマー・固相重合法);アジピン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサメチレンジアミン、必要に応じてその他の成分との混合物、固体塩又は重縮合物を、固体状態を維持したまま重合(固相重合法)させる方法等が挙げられる。
【0049】
(A)ポリアミド共重合体の重合形態としては、特に限定されず、バッチ式でも連続式でもよい。
【0050】
また、重合装置についても、特に限定されず、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダー等の押出機型反応器等を用いることができる。
【0051】
上記の製造方法の中でも、生産性の観点から、熱溶融重合法が好ましい。熱溶融重合法としては、例えば、バッチ式の熱溶融重合法等が挙げられる。バッチ式の熱溶融重合法の重合温度条件としては、特に限定されないが、生産性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。
【0052】
例えば、アジピン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩、又は水溶液等を、110〜200℃の温度下で攪拌し、約60〜90%まで水蒸気を徐々に抜いて加熱濃縮する。続いて、内部圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を除きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上、さらに好ましくは270℃以上に達した時点で、水及び/又はガス成分を除くとともに、圧力を徐々に抜いて常圧又は減圧下で重縮合を行う熱溶融重合法を用いることができる。
【0053】
さらには、アジピン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩、又は重縮合物を融点以下の温度で熱重縮合させる固相重合法等も用いることができる。
【0054】
これらの方法は必要に応じて組み合わせてもよい。
例えば、上記した、(a´−p)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位、(b´−p)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位、及び(c´−p)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位を含むポリアミド共重合体は、熱溶融重合法によって製造することができる。
【0055】
ポリアミド共重合体の構造単位は核磁気共鳴装置(NMR)によって確認することができる。
【0056】
(A)ポリアミド共重合体の重合工程においては、(a−m)アジピン酸、(b−m)イソフタル酸、及び(c−m)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなるジカルボン酸成分と、ジアミン成分とを共重合させるものとし、前記(c−m)1,4−シクロジカルボン酸、前記(a−m)アジピン酸、及び前記(b−m)イソフタル酸を含む、ジカルボン酸成分それぞれに由来する単位の合計100モル%としたとき、(A)ポリアミド共重合体を構成する前記(b−p)イソフタル酸に由来する単位の含有量(モル%)と(c−1−p)1,4−シクロジカルボン酸に由来する単位のトランス異性体の単位の含有量(モル%)との関係が、下記式(2)を満たすポリアミド共重合体を得ることが好ましい。
【0057】
(A)ポリアミド共重合体が、下記式(2)を満たすことにより、成形外観性を損なうことなく、溶着強度、耐熱性を一層向上させることができる。
【0058】
(c−1−p)1,4−シクロジカルボン酸に由来する単位のトランス異性体の単位の含有量>(b−p)イソフタル酸に由来する単位の含有量≧0.1 ・・・(2)
なお、(c−1−p)1,4−シクロジカルボン酸のトランス異性体に由来する単位の含有量と、(b−p)イソフタル酸に由来する単位の含有量は、それぞれNMRによって求められる。
【0059】
(A)ポリアミド共重合体の重合工程においては、(a−m)アジピン酸、(b−m)イソフタル酸、及び(c−m)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、ジアミン成分との共重合における最終内部温度は、好ましくは270℃以上、より好ましくは280℃以上、さらに好ましくは290℃以上である。これにより、ポリアミド共重合体中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のトランス異性体単位(c−1)の含有量を増やすことができ、成形外観性を損なうことなく、溶着強度、耐熱性に一層優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0060】
例えば、上記した熱溶融重合法を採用する場合、最終内部温度を上記温度範囲としつつ、常圧で又は減圧して重縮合を行うことが好ましい。
【0061】
(A)ポリアミド共重合体の重合工程において、ニーダー等の押出型反応機を用いる場合、押出の条件は、特に限定されないが、減圧度は0〜0.07MPa程度が好ましい。
【0062】
押出温度は、JIS K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点よりも1〜100℃程度高い温度であることが好ましい。剪断速度は、100(sec-1)以上程度であることが好ましく、平均滞留時間は、0.1〜15分間程度であることが好ましい。上記の押出条件とすることにより、着色や高分子量化できない等の問題の発生を効果的に抑制できる。
【0063】
(A)ポリアミド共重合体の重合工程においては、所定の重合触媒を用いてもよい。
【0064】
触媒は、ポリアミドの製造に用いられる公知のものであれば特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、オルト亜リン酸、ピロ亜リン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、2−メトキシフェニルホスホン酸、2−(2’−ピリジル)エチルホスホン酸、及びそれらの金属塩等が挙げられる。
【0065】
金属塩の金属としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等の金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
【0066】
また、エチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステル等のリン酸エステル類も用いることができる。
【0067】
上記のように、(A)ポリアミド共重合体の重合工程において、原料モノマーとして用いられる(c−m)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸には、トランス体とシス体の幾何異性体が存在する。
【0068】
原料モノマーとして用いられる(c−m)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は、トランス体とシス体のどちらか一方を用いてもよいし、トランス体とシス体の種々の比率の混合物として用いてもよい。
【0069】
(c−m)1,4−シクロジカルボン酸は高温で異性化し一定の比率になることや、シス体が、トランス体よりも、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、原料モノマーとして用いる(c−m)1,4−シクロジカルボン酸中のシス異性体(c−2−m)に対するトランス異性体(c−1−m)のモル比率((c−1−m)/(c−2−m))は、好ましくは50/50〜10/90であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
【0070】
トランス体/シス体比を上記範囲とすることにより、成形外観性を損なうことなく、溶着強度、耐熱性に一層優れるポリアミド樹脂組成物とすることができる。トランス体/シス体比は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができる。
【0071】
((B)無機充填材)
本実施の形態に用いられる(B)無機充填材としては、以下に制限されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが挙げられる。
【0072】
これらの中でも、強度及び表面外観の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、クレーが好ましい。また、より好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルクであり、更に好ましくは、ガラス繊維、ウォラストナイト、マイカであり、もっとも好ましくはガラス繊維である。上記した無機充填材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
まず、ガラス繊維や炭素繊維としては、その断面が真円状でも扁平状でもよい。かかる扁平状の断面としては、以下に制限されないが、例えば、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、及び長手方向の中央部がくびれた繭型が挙げられる。
【0073】
ガラス繊維や炭素繊維の中でも、優れた機械的強度を溶着成形品に付与できる観点から、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が100〜750μmであり、且つ重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)が10〜100であるものが、好適に用いられる。
【0074】
ここで、本明細書におけるガラス繊維及び炭素繊維の数平均繊維径及び重量平均繊維長は、以下の方法により求められた値である。溶着成形品を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理する。当該処理後の残渣分から、100本以上のガラス繊維、炭素繊維を任意に選択し、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)製、JSM−6700F)で観察して、これらのガラス繊維、炭素繊維の繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定する。加えて、倍率1,000倍で撮影した、上記100本以上のガラス繊維、炭素繊維についてのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより、重量平均繊維長を求める。
【0075】
上記のガラス繊維や炭素繊維を、シランカップリング剤などにより表面処理してもよい。前記シランカップリング剤としては、以下に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類、エポキシシラン類、並びにビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記の列挙した成分からなる群より選択される一以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
【0076】
また、上記のガラス繊維や炭素繊維については、さらに集束剤として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩、並びにカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを含む共重合体などを含んでもよい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
中でも、得られる溶着成形品の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましい。より好ましくは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせである。
【0078】
上記したカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体のうち、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、以下に制限されないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸及び無水シトラコン酸が挙げられ、中でも無水マレイン酸が好ましい。一方、前記のカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とは異なる不飽和ビニル単量体をいう。前記のカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体としては、以下に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレートが挙げられる。中でもスチレン及びブタジエンが好ましい。
【0079】
上記したこれらの組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される一以上であることがより好ましい。
また、上記したカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体は、重量平均分子量が2,000以上であることが好ましい。また、得られる溶着成形品の流動性を向上させる観点から、より好ましくは2,000〜1,000,000、さらに好ましくは2,000〜500,000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲル
【0080】
浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
エポキシ化合物としては、以下に制限されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、ウンデセンオキサイド、ドデセンオキサイド、ペンタデセンオキサイド及びエイコセンオキサイド等の脂肪族エポキシ化合物、グリシド−ル、エポキシペンタノ−ル、1−クロロ−3,4−エポキシブタン、1−クロロ−2−メチル−3,4−エポキシブタン、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロヘプテンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、メチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイド及びエポキシ化シクロヘキセンメチルアルコール等の脂環族エポキシ化合物、ピネンオキサイド等のテルペン系エポキシ化合物、スチレンオキサイド、p−クロロスチレンオキサイド及びm−クロロスチレンオキサイド等の芳香族エポキシ化合物、エポキシ化大豆油、並びにエポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
【0081】
上記のポリウレタン樹脂は、集束剤として一般的に用いられるものであれば特に制限されない。この具体例として、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)及びイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが好適に使用できる。
【0082】
上記のアクリル酸のホモポリマー(ポリアクリル酸)の重量平均分子量は1,000〜90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜25,000である。
【0083】
アクリル酸のポリマーは、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマーであってもよい。前記アクリル酸と共重合体を形成するモノマーとしては、以下に制限されないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸からなる群より選択される一以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く。)。好ましくは、上記したモノマーのうちエステル系モノマーを1種以上有する。
【0084】
上記のアクリル酸のポリマー(ホモポリマー及びコポリマーを共に含む。)は塩形態であってもよい。前記塩形態として、以下に制限されないが、例えば第一級、第二級又は第三級のアミンが挙げられる。かかるアクリル酸のポリマーの塩として、トリエチルアミン、トリエタノールアミン及びグリシンが挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性を向上させ、且つアミン臭を低減させる観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
【0085】
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、以下に制限されないが、3,000〜50,000の範囲であることが好ましい。すなわち、ガラス繊維や炭素繊維の集束性を向上させる観点から3,000以上が好ましく、得られる溶着成形品の機械的物性を向上させる観点から50,000以下が好ましい。
【0086】
ガラス繊維や炭素繊維は、公知の当該繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、上記の集束剤を、当該繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することにより、連続的に反応させて得られる。前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。かかる集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として、好ましくは0.2〜3質量%相当を付与(添加)し、より好ましくは0.3〜2質量%相当を付与(添加)する。すなわち、当該繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、得られる溶着成形品の熱安定性を向上させる観点から、3質量%以下であることが好ましい。ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよいし、ストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0087】
ガラス繊維及び炭素繊維以外の無機充填材としては、溶着成形品の強度及び表面外観を向上させる観点から、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、クレーが好ましい。これらの平均粒径は、靭性及び表面外観を向上させる観点から、0.01〜38μmが好ましい。0.03〜30μmがより好ましく、0.05〜25μmがさらに好ましく、0.10〜20μmがよりさらに好ましく、0.15〜15μmが最も好ましい。
【0088】
上記の平均粒径を38μm以下とすることにより、靭性及び表面外観に優れた溶着成形品とすることができる。一方、0.1μm以上とすることにより、コスト面及び粉体のハンドリング面と機械的物性(強度、靭性、溶着性など)とのバランスに優れた溶着成形品が得られる。
【0089】
ここで、無機充填材の中でも、ウォラストナイトのような針状の形状を持つものに関しては、数平均繊維径(以下、単に「平均繊維径」ともいう。)を平均粒径とする。また、針状で断面が円でない場合はその断面の長径の平均値を数平均繊維径とする。
【0090】
針状の形状を持つものの重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)に関しては、溶着成形品の表面外観を向上させ、且つ射出成形機などの金属性パーツの磨耗を防止する観点から、1.5〜10が好ましく、2.0〜5がより好ましく、2.5〜4がさらに好ましい。
【0091】
本明細書における針状の繊維(ウォラストナイト等)の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)製、JSM−6700F)を用いて行う。針状の繊維の繊維像を倍率1,000倍から50,000倍で撮影し、任意に選んだ500本の無機充填材から平均粒径(断面が円でない場合はその断面の長径の平均値)を測定する。
【0092】
ガラス繊維及び炭素繊維以外の無機充填材は、シランカップリング剤などを用いて表面処理してもよい。前記シランカップリング剤としては、以下に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類、エポキシシラン類、並びにビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記で列挙した成分から選択される一種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。このような表面処理剤は、予め(B)無機充填材の表面に処理してもよいし、(A)ポリアミドと(B)無機充填材とを混合する際に添加してもよい。
また、表面処理剤の添加量は、(B)無機充填材100質量%に対して、好ましくは0.05〜1.5質量%である。
【0093】
(B)無機充填材の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部であり、より好ましくは10〜200質量部であり、さらに好ましくは15〜180質量部であり、さらにより好ましくは20〜160質量部であり、最も好ましくは30〜150質量部である。
【0094】
上記の含有量を1質量部以上とすることにより、得られる溶着成形品の強度を向上させる効果が十分発現される。一方、上記の含有量を300質量部以下とすることにより、押出性、成形性及び表面外観に優れた溶着成形品を得ることができる。
(その他の添加剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、熱劣化、熱時の変色防止、耐熱エージング性、及び耐候性の向上を目的に、劣化抑制剤を添加してもよい。
【0095】
劣化抑制剤としては、特に限定されないが、例えば、酢酸銅及びヨウ化銅等の銅化合物、ヒンダードフェノール化合物等のフェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系安定剤、及びイオウ系安定剤等からなる群より選ばれる少なくとも1種の劣化防止剤が挙げられる。
【0096】
これらの、劣化抑制剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0097】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、成形性改良剤を配合してもよい。
【0098】
成形性改良剤としては、特に限定されないが、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミド等からなる群より選ばれる少なくとも1種の成形性改良剤が挙げられる。
【0099】
高級脂肪酸としては、例えば、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、及びモンタン酸等の炭素数8〜40の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸及びモンタン酸等が好ましい。
【0100】
高級脂肪酸金属塩とは、前記高級脂肪酸の金属塩である。金属塩の金属元素としては、元素周期律表の第1,2,3族元素、亜鉛、及びアルミニウム等が好ましく、カルシウム、ナトリウム、カリウム、及びマグネシウム等の第1,2族元素、並びにアルミニウム等がより好ましい。
【0101】
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、及びモンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム等が挙げられる。
【0102】
これらの中でも、成形性の観点から、モンタン酸の金属塩及びステアリン酸の金属塩等が好ましい。
【0103】
高級脂肪酸エステルとは、前記高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。
これらの中でも、成形性の観点から、炭素数8〜40の脂肪族カルボン酸と炭素数8〜40の脂肪族アルコールとのエステルが好ましい。
【0104】
前記アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びラウリルアルコール等が挙げられる。高級脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。
【0105】
高級脂肪酸アミドとは、前記高級脂肪酸のアミド化合物である。
高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリルアミド、N−ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
【0106】
これらの中でも、成形性の観点から、好ましくはステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、及びN−ステアリルエルカ酸アミドであり、より好ましくはエチレンビスステアリルアミド及びN−ステアリルエルカ酸アミドである。これらの、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミドは、それぞれ1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0107】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、着色剤を添加してもよい。
【0108】
着色剤としては、特に限定されないが、例えば、ニグロシン等の染料、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料、アルミニウム、着色アルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金、酸化鉄、ステンレス、及びチタン等の金属粒子、並びにマイカ製パール顔料、カラーグラファイト、カラーガラス繊維、及びカラーガラスフレーク等のメタリック顔料等からなる群より選ばれる少なくとも1種の着色剤が挙げられる。
【0109】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、他の樹脂を配合してもよい。
他の樹脂としては、特に限定されず、熱可塑性樹脂やゴム成分等が挙げられる。
【0110】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、66、612、66/6I等の他のポリアミド;ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリエーテル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン等の縮合系樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンープロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲンビニル化合物系樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0111】
ゴム成分としては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンランダム共重合体、スチレン−エチレン−ブチレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−(1−ブテン)共重合体、エチレン−(1−ヘキセン)共重合体、エチレン−(1−オクテン)共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、又はブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレンコアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプ等が挙げられる。
これらのゴム成分は、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0112】
〔ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド共重合体に、上述した(B)無機充填材、劣化抑制剤、成形性改良剤、着色剤等の各種添加剤、その他の樹脂等を配合することにより作製できる。
配合方法としては、特に限定されず、公知の押出技術を用いることができる。その際、配合、混練方法や混練順序は、特に限定されず、通常用いられる混合機、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー、及びリボンブレンダー等を用いて混合できる。
混練機としては、通常、1軸又は多軸の押出機が用いられるが、これらの中でも、生産性の観点から、減圧装置を備えた2軸押出機が好ましい。
【0113】
〔ポリアミド樹脂組成物の成形品〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の成形品は、上述した本実施形態のポリアミド樹脂組成物を、所定の方法により成形することにより得られる。
【0114】
成形方法としては、本実施形態のポリアミド樹脂組成物から成形品を得ることができる方法であれば、特に限定されず、公知の成形方法を用いることができる。
【0115】
例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、及び金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。
【0116】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を含む成形品は、耐熱性、成形性が良好でかつ溶着接合部の溶着強度と外観性に優れるため、溶着成形品の用途に用いることができる。
【0117】
ポリアミド溶着成形品としては、特に限定されないが、例えば、自動車部品、電気部品、電子部品、携帯機器部品、機械・工業部品、事務機器部品、航空・宇宙部品において好適に用いることができる。
【0118】
自動車部品としては、例えば、自動車の内装・外板・外装部品、自動車エンジンルーム内の部品、自動車電装部品等が挙げられる。
【0119】
電器・電子部品としては、例えば、コネクター、スイッチ、リレー、プリント配線板、電子部品ハウジング、コンセント、ノイズフィルター、コイルボビン、及びモーターエンドキャップ等が挙げられる。
【0120】
携帯機器部品としては、例えば、携帯電話、スマートフォン、パソコン、携帯ゲーム機器、デジタルカメラ等の筐体、及び構造体等が挙げられる。
【0121】
また、本実施形態の溶着成形品は、表面外観に優れているので、成形品表面に塗装膜を形成させた成形品としても好ましく用いられる。塗装膜の形成方法は公知の方法であれば特に制限はなく、例えば、スプレー法、静電塗装法等の塗装によることができる。また、塗装に用いる塗料は、公知のものであれば特に限定されず、メラミン架橋タイプのポリエステルポリオール樹脂塗料、アクリルウレタン系塗料等を用いることができる。
【実施例】
【0122】
以下、実施例によって本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた材料の構造、物性の測定方法、成形方法、評価方法を以下に示す。
【0123】
〔材料の構造、物性の測定方法〕
(ポリアミドの数平均分子量(Mn))
ポリアミド共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。
【0124】
装置は東ソー(株)製、「HLC−8020」を、検出器は示差屈折計(RI)を、溶媒はトリフルオロ酢酸ナトリウムを0.1モル%溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を、カラムは東ソー(株)製、「TSKgel−GMHHR−H」2本と「G1000HHR」1本を用いた。
【0125】
溶媒流量は0.6mL/min、サンプル濃度は1〜3(mgサンプル)/1(mL溶媒)であり、フィルターでろ過し、不溶分を除去し、測定試料とした。
【0126】
得られた溶出曲線をもとに、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算により、数平均分子量(Mn)を算出した。
(ポリアミド共重合体中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のトランス異性体比率、及びポリアミド共重合体中の構成単位)
ポリアミド共重合体中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のトランス異性体比率は、ポリアミド共重合体30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、1H−NMRで測定した。
【0127】
装置は日本電子(株)製、「JNM ECA−500」を用いた。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、トランス異性体に由来するピーク面積とシス異性体に由来するピーク面積との比率からトランス異性体比率(トランス異性体/シス異性体)を求めた。
【0128】
また、ポリアミド共重合体中の構成単位の割合は、1H−NMRで測定し、各成分に由来するピーク面積の比率から求めた。
比率計算に用いたピークを下記に示す。
【0129】
<ポリアミド共重合体中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のトランス/シス比>
トランスピーク:1.98ppm
シスピーク:1.77ppm、1.86ppm
【0130】
<ポリアミド共重合体中の構成単位の割合>
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸:上記トランス/シス比に用いたピーク
アジピン酸 :2.3ppm、2.4ppm
イソフタル酸 :3.5ppm
ヘキサメチレンジアミン :3.28ppm、3.5ppm
【0131】
(原料1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のトランス/シスのモル比)
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)装置を用いて、原料モノマーである1,4−シクロヘキサンジカルボン酸におけるトランス/シスのモル比を測定した。
【0132】
HPLC装置としては、島津製作所(株)製 LC−10Aを用いた。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノマーを、逆相カラムを用いたグレジェント溶離法により、トランス成分(溶出時間約11分)と、シス成分(溶出時間約14.5分)とに分離し、それぞれのピーク面積の比により求めた。
HPLC分析条件の詳細を以下に示す。
【0133】
装置:島津製作所(株)LC−10A vp
逆相(C30)カラム:野村化学(株)Develosil PRAQUOUS
温度:40℃
流速:1.0mL/min
検出:UV214nm
移動相A:水(0.1質量% トリフルオロ酢酸含有))
移動相B:水/アセトニトリル=10/90(0.1質量%トリフルオロ酢酸含有)
移動相混合比:B=0→100%(15分間)
試料濃度:10mg/mL
(溶媒:(水/アセトニトリル=50/50)
試料溶液注入量:20mL
(融点(℃))
融点は、JIS K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製、「DSC−7」を用いて測定した。
【0134】
測定条件は、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とし、Tm1+40℃の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温、2分間保持した後、昇温速度20℃/minで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)のピーク温度を融点(Tm2(℃))とした。
【0135】
(ガラス転移温度(℃))
ガラス転移温度は、JIS K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製、「DSC−7」を用いて測定した。
まず、サンプルをホットステージ(Mettler社製、「EP80」)で溶融させ、溶融状態のサンプルを液体窒素中で急冷し、固化させ、測定用サンプルとした。
測定用サンプル10mgを、昇温速度20℃/minの条件下、30〜300℃の範囲で昇温して、そのガラス転移温度(Tg(℃))を測定した。
【0136】
〔溶着強度評価用の溶着成形品の作製〕
実施例及び比較例で得られたポリアミド組成物ペレットを、射出成形機[住友重機械工業(株)製SE130D]を用いて、二種類の厚みの平板プレート成形片(12cm×8cm、厚さ10mm、12cm×8cm、厚さ3mm)を得た。射出条件(3mm厚)は、射出圧力105MPa、射出時間0.4秒、、保圧時間12秒、冷却時間18秒、スクリュー回転数100rpmに設定。射出条件(10mm厚)は、射出圧力55MPa、射出時間0.2秒、、保圧時間30秒、冷却時間60秒、スクリュー回転数100rpmに設定。金型温度をTg+20℃、シリンダー温度=(Tm2+10)℃〜(Tm2+30)℃に設定し、得られた平板を切削し、二種類の厚みの平板プレート試験片(4cm×12cm、厚さ10mm、4cm×12cm、厚さ3mm)を得た。
【0137】
得られた二種類の平板の側面(12cm×10mmの面と12cm×3mmの面)同士を図1に示す様にあわせて、BRANSON製MICRO PPL振動溶着機を用いて、周波数233Hz、溶着圧力10.2kgf/cm2、振幅1.5mm(厚み方向)、溶着代2mmの条件で溶着した。
【0138】
溶着成形片を溶着面と垂直方向に2cm間隔に切削し、幅2cmの溶着試験片を作成した。
作成した溶着試験片を引張速度5mm/minで引張試験を行い、破断時の強度を測定し、溶着強度とした。
【0139】
〔成形外観性評価用の成形品の作製〕
実施例及び比較例で得られたポリアミド組成物ペレットを、射出成形機は[東芝機械(株)製IS150E]を用いて、金型温度を90℃に設定し、射出時間12秒、冷却時間20秒の射出成形条件で、縦130mm×横130mm×厚み4mmの試験片を得た。なお、シリンダー温度は、前記融点測定法に準じて求めたポリアミド共重合体の融点より約30℃高い温度条件に設定した。
【0140】
(外観性の測定)
堀場(株)製、ハンディ光沢度計「IG320」により、前記成形外観性評価用の成形品の60℃反射グロス値を求めた。
【0141】
〔ポリアミド共重合体(A)〕
(材料)
実施例、及び比較例におけるポリアミド共重合体の製造において、下記化合物を用いた。
(1)アジピン酸 和光純薬工業(株)製 商品名:アジピン酸
(2)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸 イーストマンケミカル製 商品名:1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体(モル比)=25/75)
(3)イソフタル酸 和光純薬工業(株)製 商品名:イソフタル酸
(4)ヘキサメチレンジアミン 和光純薬工業(株)製 商品名:ヘキサメチレンジアミン
【0142】
<製造例1:ポリアミド共重合体(A1)の製造>
アジピン酸517.0g(3.54モル)、イソフタル酸55.1g(0.33モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸285.5g(1.66モル)、ヘキサメチレンジアミン642.3g(5.53モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を準備した。
【0143】
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110〜150℃の温度下で撹拌しながら、水蒸気を徐々に抜いて、溶液濃度70質量%まで濃縮した。その後、内部温度を218℃まで昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そして、内部温度が270℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
【0144】
次に、1時間かけて圧力を1MPaまで下げ、更に15分、窒素をオートクレーブ内部に流しながら重合を進めて、ポリアミド共重合体を得た。このとき、重合の最終内部温度は290℃であった。
【0145】
得られたポリアミド共重合体を2mm以下の大きさまで粉砕し、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥した。得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は69.8モル%であった。
【0146】
得られたポリアミド共重合体(A1)の組成を下記表1に示す。下記表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A1)の分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0147】
<製造例2:ポリアミド共重合体(A2)の製造>
アジピン酸440.9g(3.02モル)、イソフタル酸91.1g(0.55モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸330.6g(1.92モル)、ヘキサメチレンジアミン637.4g(5.49モル)とした以外は製造例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。
【0148】
このとき、重合の最終内部温度は291℃であった。得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は71.4モル%であった。
【0149】
得られたポリアミド共重合体(A2)の組成を下記表1に示す。下記表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A2)の分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0150】
<製造例3:ポリアミド共重合体(A3)の製造>
アジピン酸509.4g(3.49モル)、イソフタル酸128.7g(0.77モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸219.1g(1.27モル)、ヘキサメチレンジアミン642.9g(5.53モル)とした以外は製造例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は292℃であった。
得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は71.8モル%であった。
【0151】
得られたポリアミド共重合体(A3)の組成を下記表1に示す。表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A3)の分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0152】
<製造例4:ポリアミド共重合体(A4)の製造>
アジピン酸433.3g(2.97モル)、イソフタル酸173.3g(1.04モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸255.3g(1.48モル)、ヘキサメチレンジアミン638.1g(5.49モル)とした以外は製造例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は293℃であった。
得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は72.0モル%であった。
【0153】
得られたポリアミド共重合体(A4)の組成を下記表1に示す。下記表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A4)分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0154】
<製造例5:ポリアミド共重合体(A5)の製造>
アジピン酸595.3g(4.07モル)、イソフタル酸83.4g(0.50モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸172.9g(1.00モル)、ヘキサメチレンジアミン648.4g(5.58モル)とした以外は製造例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は290℃であった。
得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は72.2モル%であった。
【0155】
得られたポリアミド共重合体(A5)の組成を下記表1に示す。下記表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A5)の分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0156】
<製造例6:ポリアミド共重合体(A6)の製造>
アジピン酸333.5g(2.28モル)、イソフタル酸207.6g(1.25モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸327.5g(1.90モル)、ヘキサメチレンジアミン631.4g(5.43モル)とした以外は製造例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は290℃であった。
得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は70.2モル%であった。
【0157】
得られたポリアミド共重合体(A6)の組成を下記表1に示す。下記表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A6)の分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0158】
<製造例7:ポリアミド共重合体(A7)の製造>
アジピン酸332.9g(2.28モル)、イソフタル酸135.2g(0.81モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸401.6g(2.33モル)、ヘキサメチレンジアミン630.3g(5.42モル)とした以外は製造例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は292℃であった。
得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は72.1モル%であった。
【0159】
得られたポリアミド共重合体(A7)の組成を下記表1に示す。下記表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A7)の分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0160】
<製造例8:ポリアミド共重合体(A8)の製造>
アジピン酸268.1g(1.83モル)、イソフタル酸233.1g(1.40モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸371.7g(2.16モル)、ヘキサメチレンジアミン627.1g(5.40モル)とした以外は製造例1に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。このとき、重合の最終内部温度は291℃であった。
得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は72.3モル%であった。
【0161】
得られたポリアミド共重合体(A8)の組成を下記表1に示す。下記表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A8)の分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0162】
<製造例9:ポリアミド共重合体(A9)>
アジピン酸692.2g(4.74モル)、イソフタル酸74.9g(0.45モル)、トランス体/シス体のモル比が80/20である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸77.7g(0.45モル)、ヘキサメチレンジアミン655.2g(5.64モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を準備した。この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。110〜150℃の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を218℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、253℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
【0163】
次に、1時間かけて圧力を1MPaまで下げ、更に15分間、窒素をオートクレーブ内部に流しながら重合を進めて、ポリアミド共重合体を得た。
これを2mm以下の大きさまで粉砕し、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥した。
【0164】
得られたポリアミド共重合体(A9)の組成を下記表1に示す。下記表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A9)の分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0165】
<製造例10:ポリアミド共重合体(A10)>
アジピン酸595.9g(4.08モル)、イソフタル酸129.9g(0.78モル)、トランス体/シス体のモル比が80/20である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸125.0g(0.73モル)、ヘキサメチレンジアミン649.1g(5.59モル)とした以外は、製造例9に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。
【0166】
得られたポリアミド共重合体(A10)の組成を下記表1に示す。下記表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A10)の分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0167】
<製造例11:ポリアミド共重合体(A11)>
アジピン酸317.5g(2.17モル)、イソフタル酸270.7g(1.63モル)、トランス体/シス体のモル比が80/20である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸280.6g(1.63モル)、ヘキサメチレンジアミン631.2g(5.43モル)とした以外は、製造例9に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。
【0168】
得られたポリアミド共重合体(A11)の組成を下記表1に示す。下記表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A11)の分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0169】
<製造例12:ポリアミド共重合体(A12)>
アジピン酸509.9g(3.49モル)、イソフタル酸174.8g(1.05モル)、トランス体/シス体のモル比が80/20である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸171.7g(1.00モル)、ヘキサメチレンジアミン643.6g(5.54モル)とした以外は製造例9に記載した方法で、ポリアミド共重合体を重合した。
【0170】
得られたポリアミド共重合体(A12)の組成を下記表1に示す。下記表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A12)の分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0171】
<製造例13:ポリアミド共重合体(A13)>
アジピン酸509.4g(3.49モル)、イソフタル酸128.7g(0.77モル)、トランス体/シス体のモル比が25/75である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸219.1g(1.27モル)、ヘキサメチレンジアミン642.9g(5.53モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作った。
【0172】
この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。110〜150℃の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を218℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、253℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
【0173】
次に、1時間かけて圧力を1MPaまで下げ、更に15分間、窒素をオートクレーブ内部に流しながら重合を進めて、ポリアミド共重合体を得た。このとき、重合の最終内部温度は275℃であった。
これを2mm以下の大きさまで粉砕し、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥した。
【0174】
得られたポリアミド共重合体に含まれる1,4−シクロジカルボン酸成分のトランス異性体比率は56.7モル%であった。
得られたポリアミド共重合体(A13)の組成を下記表1に示す。下記表1に示すポリアミド共重合体の構成単位の割合は、得られた共重合体を1H−NMRにより分析することによって求めた。
得られたポリアミド共重合体(A13)の分子量、融点、ガラス転移温度を、上記記載の方法により評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0175】
〔無機充填材(B)〕
ガラス繊維(B1) Chongqiung Polycomp International Corporation製 商品名:ECS301HP 平均繊維径:10μm、カット長:3mm
【0176】
〔ポリアミド樹脂組成物〕
<実施例1>
ポリアミド共重合体(A1)100質量部を、東芝機械社製、TEM35mm2軸押出機(設定温度:前記融点測定法に準じて求めたポリアミド共重合体の融点より約30℃高い温度、スクリュー回転数300rpm)にフィードホッパーより供給した。
さらに、サイドフィード口より、ポリアミド共重合体(A)100質量部に対して、ガラス繊維(B1)を100質量部の割合で供給し、紡口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0177】
<実施例2>
ポリアミド共重合体(A2)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0178】
<実施例3>
ポリアミド共重合体(A3)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0179】
<実施例4>
ポリアミド共重合体(A3)100質量部を、東芝機械社製、TEM35mm2軸押出機(設定温度:前記融点測定法に準じて求めたポリアミド共重合体の融点より約30℃高い温度、スクリュー回転数300rpm)にフィードホッパーより供給した。
さらに、サイドフィード口より、ポリアミド共重合体(A)100質量部に対して、ガラス繊維(B1)を50質量部の割合で供給し、紡口より押出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてペレット状のポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0180】
<実施例5>
ポリアミド共重合体(A4)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0181】
<実施例6>
ポリアミド共重合体(A5)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0182】
<実施例7>
ポリアミド共重合体(A6)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0183】
<実施例8>
ポリアミド共重合体(A7)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0184】
<実施例9>
ポリアミド共重合体(A8)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0185】
<実施例10>
ポリアミド共重合体(A13)を用いた以外は、実施例に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0186】
<比較例1>
ポリアミド共重合体(A9)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す
【0187】
<比較例2>
ポリアミド共重合体(A10)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す
【0188】
<比較例3>
ポリアミド共重合体(A11)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0189】
<比較例4>
ポリアミド共重合体(A12)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す
【0190】
<比較例5>
ポリアミド共重合体(A3)、繊維強化材(B2)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
上記記載の方法により、上述した樹脂組成物の融点、ガラス転移温度、溶着強度、外観性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0191】
【表1】

【0192】
【表2】

【0193】
表2に示すように、各実施例のポリアミド共重合体から得られた溶着成形品は、耐熱性、成形外観性を損なうことなく、溶着性に優れていることが確認された。
一方、表2に示すように、各比較例のポリアミド共重合体から得られた溶着成形品は、、溶着性、耐熱性、成形外観性のいずれかにおいて低下したことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明の溶着成形品は、自動車分野、電気・電子分野、携帯機器分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野、日用・家庭用品分野などの各種部品として産業上の利用可能性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A):(a−p)アジピン酸単位、(b−p)イソフタル酸単位、及び(c−p)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を含むジカルボン酸成分単位と、
ジアミン成分単位と、を含むポリアミド共重合体であって、
当該ポリアミド共重合体を構成する前記(a−p)、前記(b−p)、及び前記(c−p)を含む前記ジカルボン酸成分単位の合計100モル%における、前記(b−p)の含有量(モル%)と前記(c−p)との含有量(モル%)の関係が下記式(1)を満たすポリアミド共重合体を含有する溶着成形品。
(c−p)の含有量>(b−p)の含有量≧0.1 ・・・(1)
【請求項2】
前記(A)ポリアミド共重合体100質量部と、(B)無機充填材1〜300質量部と、
を含有するポリアミド樹脂組成物からなる、請求項1に記載の溶着成形品。
【請求項3】
前記(a−p)、前記(b−p)、及び前記(c−p)を含む前記ジカルボン酸成分単位の合計100モル%に対して、
前記(a−p)アジピン酸単位の含有量が40〜80モル%であり、
前記(b−p)イソフタル酸単位の含有量が0.1〜25モル%であり、
前記(c−p)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位の含有量が15〜40モル%である、
請求項1又は2のいずれか一項に記載の溶着成形品。
【請求項4】
前記ジアミン成分単位が、脂肪族ジアミン成分単位である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の溶着成形品。
【請求項5】
前記ジアミン成分単位が、ヘキサメチレンジアミン単位である、請求項4に記載の溶着成形品。
【請求項6】
(a−m)アジピン酸、(b−m)イソフタル酸、及び(c−m)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、ジアミン成分と、を共重合させることにより得られるポリアミド共重合体であって、
前記(c−m)1,4−シクロジカルボン酸、前記(a−m)アジピン酸、及び前記(b−m)イソフタル酸を含むジカルボン酸成分それぞれに由来する単位の合計100モル%における、前記ポリアミド共重合体中における(b−p)イソフタル酸に由来する単位の含有量(モル%)と(c−1−p)1,4−シクロジカルボン酸に由来する単位のトランス異性体の単位の含有量(モル%)との関係が、下記式(2)を満たす(A)ポリアミド共重合体含有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の溶着成形品。
(c−1−p)1,4−シクロジカルボン酸に由来する単位のトランス異性体の単位の含有量>(b−p)イソフタル酸に由来する単位の含有量≧0.1 ・・・(2)
【請求項7】
前記(a−m)アジピン酸、前記(b−m)イソフタル酸、及び前記(c−m)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含む前記ジカルボン酸成分と、
前記ジアミン成分と、
の、共重合における最終重合到達温度が270℃以上である、請求項6に記載の溶着成形品。
【請求項8】
前記共重合の原料モノマーとして用いる前記(c−m)1,4−シクロジカルボン酸中の前記シス異性体(c−2−m)に対する前記トランス異性体(c−1−m)のモル比率((c−1−m)/(c−2−m))が、50/50〜10/90である、請求項6又は7のいずれか一項に記載の溶着成形品。
【請求項9】
自動車部品である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の溶着成形品。
【請求項10】
電子部品である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の溶着成形品。
【請求項11】
家電OA機器部品又は携帯機器部品である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の溶着成形品。

【図1】
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【公開番号】特開2013−1836(P2013−1836A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135368(P2011−135368)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】