説明

ポリアミド系フィルム

【課題】 本発明の解決しようとする課題は、耐屈曲ピンホール性と耐摩耗ピンホール性を両立し、透明性かつ、粉体や塵埃等が静電付着し難く、湿度依存性が小さく、長期に亘り持続する帯電防止性が付与されたフィルムを提供することにある。
【解決手段】 脂肪族ポリアミド(A1)からなる(a)層ならびに脂肪族ポリアミド(A1)70質量%以上99.5質量%以下及びポリアミドエラストマー組成物(B)0.5質量%以上30質量%以下を含有する脂肪族ポリアミド組成物(A)からなる(b)層を含む2層以上を積層するフィルムであり、ポリアミドエラストマー組成物(B)は、ポリアミドエラストマー(B1)及び電解質塩化合物(B2)を含み、(b)層が少なくとも一方の最外層に配置され、全体の厚みに対する(a)層の厚み比率が20%以上95%以下、(b)層の厚み比率が5%以上40%以下であるポリアミド系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性に優れ、透明性が良好なポリアミド系フィルム及びポリアミド系二軸延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、強度、柔軟性、耐熱性、耐薬品性、特に、ガスバリア性に優れていることから、食品用包材、医療用輸液等の医療用包材、農薬や試薬等の容器等に幅広く使用されている。しかしながら、ポリアミド樹脂よりなるフィルムは、電気抵抗率が高いため、帯電しやすく、帯電した電気を漏洩することができない為、表面への埃の付着や、包材とした場合、内容物充填時のトラブル、商品表示等の印刷時のヒケ等、静電気に起因する種々の障害が発生する。また、近年、これらフィルムを用いた二次加工時の加工速度の高速化に伴い、増々帯電防止性不足による前記問題が顕在化しており、改善が望まれている。
【0003】
フィルムの帯電防止性を改良する方法としては、界面活性剤等をその表面に塗布する方法、又はポリアルキレンオキサイド等の吸水性化合物やアルキルアミン等を低分子型帯電防止剤として原料である樹脂に練り込む方法が知られている。しかしながら、これらの方法は、初期の帯電防止性には優れるもののブリードアウトしやすく、かつ耐水性が悪いため、高い帯電防止性効果が長期間持続しないという欠点を有している。また、湿度に対する、同効果の依存性が非常に高い。
特許文献1及び2には、フィルムの帯電防止効果の持続性を向上させ、同効果の湿度依存性を低減する方法として、ポリアミドとポリオキシアルキレングリコールを主成分とするポリエーテルエステルアミドエラストマーを熱可塑性樹脂に添加する方法が開示されている。
【0004】
一方、ポリアミドフィルムは食品等の包装フィルムとして市場に流通されているが、内容物と密着した際に、その弾性率が高く硬いため、内容物の表面形状への追従性が悪く、搬送、運搬時等において、ピンホールが生じ易いという問題を有していた。このピンホールの発生要因としては、屈曲によるピンホール(屈曲ピンホール)、擦れ(摩耗)によるピンホール(摩耗ピンホール)等の要因が考えられる。この屈曲ピンホールと摩耗ピンホールへの改善方法は相反するもので、フィルムの柔軟性を高くすると、屈曲ピンホールは発生し難くなるが、柔らかくなった分だけ擦れによるピンホールが生じ易くなり、摩耗ピンホールは発生し易くなる。
【0005】
上記の課題に対して、特許文献3には、ポリアミド、無機フィラー、ビスアミド化合物、ポリアミドエラストマーと電解質塩化合物よりなるポリアミドエラストマー組成物を含むポリアミド樹脂組成物及びそれよりなる成形物が、特許文献4には、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンから選ばれるキシリレンジアミンと、炭素原子数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を含有する半芳香族ポリアミドを含む層と、前記ポリアミド樹脂組成物からなる層を含む二軸延伸フィルムが開示されており、これらは、ガスバリア性、耐屈曲疲労性(屈曲ピンホールの防止効果)、透明性に優れ、粉体や塵埃等が静電付着し難く、湿度依存性が小さく、長期に亘り持続する帯電防止性が付与されている。
【0006】
さらに、特許文献5には、ポリアミド6と柔軟改質剤が含有された層が少なくとも一方の最外層に配され、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる層、柔軟改質剤を添加しないポリアミド6からなる層を有する二軸延伸ポリアミド系フィルムが開示されており、高い酸素バリア性と耐摩耗ピンホール性を有し、さらには、良好な耐屈曲ピンホール性も兼ね備えている。
しかし、耐屈曲ピンホール性と耐摩耗ピンホール性が共に優れ、帯電防止性の湿度依存性が小さく、長期に亘り持続する帯電防止性を有した包装用のフィルムは知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開昭60−023435号公報
【特許文献2】特開昭60−170646号公報
【特許文献3】特開2006−037070号公報
【特許文献4】特開2006−297894号公報
【特許文献5】特開2010−023242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の解決しようとする課題は、耐屈曲ピンホール性と耐摩耗ピンホール性を両立し、透明性かつ、粉体や塵埃等が静電付着し難く、湿度依存性が小さく、長期に亘り持続する帯電防止性が付与されたフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題が以下に示す本発明のポリアミド系フィルムにより、解決される事を見出した。
即ち、本発明は、脂肪族ポリアミド(A1)からなる(a)層ならびに脂肪族ポリアミド(A1)70質量%以上99.5質量%以下及びポリアミドエラストマー組成物(B)0.5質量%以上30質量%以下を含有する脂肪族ポリアミド組成物(A)からなる(b)層を含む2層以上を積層するフィルムであって、ポリアミドエラストマー組成物(B)は、ポリアミドエラストマー(B1)及び電解質塩化合物(B2)を含み、ポリアミドエラストマー(B1)は、ポリアミドハードセグメント(x)、及びアルキレン基の炭素原子数が2以上のアルキレンオキサイドの重合体を含むソフトセグメント(y)から得られるポリエーテルエステルアミドエラストマーであり、(b)層が少なくとも一方の最外層に配置され、全体の厚みに対する(a)層の厚み比率が20%以上95%以下、(b)層の厚み比率が5%以上40%以下であるポリアミド系フィルムに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、バリア性に優れ、湿度依存性が小さく、長期に亘り持続する帯電防止性が付与され、かつ透明性が良好で、優れた耐屈曲ピンホール性と耐摩耗ピンホール性を兼備するポリアミド系フィルムを提供することができる。このポリアミド系フィルムは、例えば、食品、医薬品、薬品、香料等を密封する包装材として、二次加工時の静電気の発生や蓄積に起因する問題や、搬送、運搬時におけるピンホールの発生を防止することができることから有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリアミド系フィルムは、脂肪族ポリアミド(A1)からなる(a)層ならびに脂肪族ポリアミド(A1)70質量%以上99.5質量%以下及びポリアミドエラストマー組成物(B)0.5質量%以上30質量%以下を含有する脂肪族ポリアミド組成物(A)からなる(b)層を含む2層以上を積層するフィルムであって、ポリアミドエラストマー組成物(B)は、ポリアミドエラストマー(B1)及び電解質塩化合物(B2)を含み、ポリアミドエラストマー(B1)は、ポリアミドハードセグメント(x)、及びアルキレン基の炭素原子数が2以上のアルキレンオキサイドの重合体を含むソフトセグメント(y)から得られるポリエーテルエステルアミドエラストマーであり、(b)層が少なくとも一方の最外層に配置され、全体の厚みに対する(a)層の厚み比率が20%以上95%以下、(b)層の厚み比率が5%以上40%以下である。
【0012】
本発明において使用される脂肪ポリアミド組成物(A)は、脂肪族ポリアミド(A1)、及びポリアミドエラストマー組成物(B)を含有する。
【0013】
[脂肪族ポリアミド(A1)]
脂肪族ポリアミド(A1)は、主鎖中にアミド結合(−CONH−)を有し、ラクタム、アミノカルボン酸、及び/又は脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を、溶融重合、溶液重合あるいは固相重合等の方法による重合、又は共重合により得ることができる。
【0014】
ラクタムとしては、炭素原子数6以上12以下のラクタムが挙げられ、具体的には、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等、アミノカルボン酸としては、炭素原子数6以上12以下のアミノカルボン酸が挙げられ、例えば、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。経済性、入手の容易さから、カプロラクタム、ドデカンラクタム、12−アミノドデカン酸が好ましい。
【0015】
また、脂肪族ジアミンとしては、炭素原子数2以上24以下の脂肪族ジアミンが挙げられ、具体的には、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコサメチレンジアミン、2−/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。経済性、入手の容易さから、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンが好ましく、ヘキサメチレンジアミンがより好ましい。
【0016】
一方、脂肪族ジカルボン酸としては、炭素原子数2以上24以下の脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。経済性、入手の容易さから、アジピン酸が好ましい。
【0017】
脂肪族ポリアミド(A1)において、これらラクタム、アミノカルボン酸、又は脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を含む単一重合体又は共重合体を各々単独又は混合物の形で用いる事ができる。
【0018】
脂肪族ポリアミド(A1)は、炭素原子数6以上12以下のラクタム、炭素原子数6以上12以下のアミノカルボン酸、及び炭素原子数2以上24以下の脂肪族ジアミンと炭素原子数2以上24以下の脂肪族ジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導される単位を含む単独重合体又は共重合体が好ましく、具体例としては、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカンラクタム(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)やこれらの原料モノマーを用いたポリアミド共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。得られるフィルムの耐熱性、機械的強度、透明性、経済性、入手の容易さ等を考慮して、カプロラクタム、ヘキサメチレンアジパミド、及びドデカンラクタムからからなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導される単位を含む単独重合体又は共重合体が好ましい。具体的には、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、及びポリアミド6/66/12からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、得られるフィルムの耐熱性や機械的強度の観点から、ポリアミド6、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、及びポリアミド6/66/12からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0019】
脂肪族ポリアミド(A1)は、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機や二軸型混練押出機等の混練反応押出機等のポリアミド製造装置で製造できる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0020】
粘度測定方法(JIS K−6920)に準じ、96質量%硫酸中、ポリマー濃度1質量%、温度25℃の条件下にて測定した場合、脂肪族ポリアミド(A1)の相対粘度は、得られるポリアミド系フィルムの機械的性質とフィルムの成形性の観点から、2.0以上5.0以下であることが好ましく、2.5以上4.5以下であることがより好ましく、2.8以上4.0以下であることがさらに好ましい。
【0021】
尚、脂肪族ポリアミド(A1)の末端基の種類及びその濃度や分子量分布に特別の制約は無い。分子量調節や成形加工時の溶融安定化のため、分子量調整剤として、モノアミン、ジアミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加することができる。
【0022】
本発明において使用されるポリアミドエラストマー組成物(B)は、ポリアミドエラストマー(B1)と電解質塩化合物(B2)を含む。
【0023】
[ポリアミドエラストマー(B1)]
ポリアミドエラストマー(B1)は、ポリアミドハードセグメント(x)及びアルキレン基の炭素原子数が2以上のアルキレンオキサイドの重合体(ポリオキシアルキレングリコールと記載する場合もある。)を含むソフトセグメント(y)から得られるポリエーテルエステルアミドエラストマーであり、ポリアミドブロック(ポリアミドハードセグメント(x))とポリオキシアルキレングリコールブロック(ソフトセグメント(y))より構成され、これらブロックがエステル結合により結合されているブロック共重合体である。
ポリアミドエラストマー(B1)のポリアミドハードセグメント(x)は、脂肪族ポリアミド(A1)の説明中に記載した前記のラクタム、アミノカルボン酸、又は脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位(以下、ポリアミド構造単位と称する場合がある。)、かつ脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導される単位を含む。ポリアミドハードセグメント(x)は、カプロラクタム、又はドデカンラクタムから誘導される単位を含むことが好ましい。
【0024】
ポリアミドエラストマー(B1)のポリアミドハードセグメント(x)は、両末端にカルボキシル基を有するポリアミドであり、脂肪族ポリアミド(A1)の説明中に記載したラクタム、アミノカルボン酸、又は脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位、並びに脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導される単位を含む。
ポリアミドエラストマー(B1)のポリアミドハードセグメント(x)は、脂肪族ポリアミド(A1)と同一のポリアミド構造単位を含むことが好ましい。
【0025】
ポリアミドエラストマー(B1)のポリアミドハードセグメント(x)中のジカルボン酸単位は、分子量調整剤として使用され、この存在下に上記ポリアミド構造単位を常法により開環重合あるいは重縮合させることによって両末端カルボキシル基を有するポリアミドが得られる。
【0026】
使用されるジカルボン酸単位としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸から誘導される単位、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム、3−スルホイソフタル酸カリウム等の3−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及び3−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導される単位が好ましく、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及び3−スルホイソフタル酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導される単位がより好ましい。
【0027】
ポリアミドエラストマー(B1)のソフトセグメント(y)は、アルキレン基の炭素原子数が2以上のアルキレンオキサイドから誘導される単位より構成される重合体であるポリアルキレンオキサイドを含む。
【0028】
炭素原子数2以上のアルキレンオキサイドのアルキレン基は、炭素原子数2以上10以下のアルキレン基であり、具体的には、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、炭素原子数2以上4以下のアルキレン基が好ましく、炭素原子数2又は3のアルキレン基がより好ましく、制電性の観点から、炭素原子数2のアルキレン基、すなわちエチレン基がさらに好ましい。
すなわち、ポリアミドエラストマー(B1)のソフトセグメント(y)は、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、及びポリオキシテトラメチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導される単位を含有することが好ましく、ポリオキシエチレングリコール、及び/又はポリオキシプロピレングリコールから誘導される単位を含有することがより好ましく、ポリオキシエチレングリコールから誘導される単位を含有することがさらに好ましい。
【0029】
ポリアミドエラストマー(B1)の製法は特に限定されるものではないが、例えば下記製法[1]又は製法[2]を例示することができる。
製法[1]:ポリアミド構造単位とジカルボン酸を水の存在下又は非存在下で、高温で加圧反応させてポリアミドハードセグメント(x)を生成させ、これにソフトセグメント(y)を加えて、高温、減圧下で重合反応を行う方法。
製法[2]:ポリアミドハードセグメント(x)を形成するポリアミド構造単位及びジカルボン酸と、ソフトセグメント(y)を同じ反応槽に仕込み、水の存在下又は非存在下に、高温で加圧反応させることによって中間体として(x)を生成させ、その後減圧下で(x)と(y)との重合反応を行う方法。
【0030】
上記の重合反応には、通常、エステル化触媒が使用される。該触媒としては例えば、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、モノブチルスズオキシド等のスズ系触媒、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、テトラブチルジルコネート等のジルコニウム系触媒、酢酸ジルコニル、酢酸亜鉛等の有機酸金属塩系触媒等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
[電解質塩化合物(B2)]
電解質塩化合物(B2)は、アルカリ金属又は第2族元素のカチオンとイオン解離可能なアニオンの塩である。アルカリ金属としては、ナトリウム,カリウム,リチウム,セシウム等が挙げられる。第2族元素としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、制電性付与の観点から、イオン半径の小さいナトリウム,カリウム,リチウムが好ましく、ナトリウム、リチウムがより好ましい。
【0032】
電解質塩化合物(B2)のイオン解離可能なアニオンとしては、過塩素酸、過臭素酸等の過ハロゲン酸アニオン、塩素酸,臭素酸等のハロゲン酸アニオン、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲンアニオン、オクチルスルホン酸、ステアリルスルホン酸等のアルキルスルホン酸アニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のアリールスルホン酸アニオン、ラウリル硫酸,エチル硫酸等のアルキル硫酸アニオン、硫酸アニオン、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸アニオン、アルキルリン酸アニオン、リン酸アニオン、亜リン酸アニオン、硝酸アニオン、石炭酸アニオン、テトラフルオロホウ酸,ヘキサフルオロヒ酸、ヘキサフルオロリン酸等のハロゲン化物アニオン、トリクロロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、トリクロロ酢酸,トリフルオロ酢酸等のハロゲン化アルキルを有する有機酸アニオン、チオシアン酸アニオン、テトラフェニルホウ素アニオン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、経済性や安全性の観点から、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンアニオンが好ましく、過塩素酸がより好ましい。
【0033】
電解質塩化合物(B2)としては、具体的に、過塩素酸リチウム(LiClO)、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、過塩素酸カリウム(KClO)、過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(NaCFSO)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(Li・N(CFSO)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム(Na・N(CFSO)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム(K・N(CFSO)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウム(Li・C(CFSO)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンナトリウム(Na・C(CFSO)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、制電性付与や経済性の観点から、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンナトリウムが好ましく、過塩素酸ナトリウムがより好ましい。
【0034】
[ポリアミドエラストマー組成物(B)]
ポリアミドエラストマー組成物(B)において、電解質塩化合物(B2)をポリアミドエラストマー(B1)に添加する方法としては、組成物中に効果的に分散させるため、ポリアミドエラストマー(B1)に予め添加し分散させておくことが望ましく、特にポリアミドエラストマー(B1)の製造時に予め添加し分散させることが望ましい。ここで、ポリアミドエラストマー(B1)の製造時に電解質塩化合物(B2)を添加するには、該エラストマーの重合前、重合中、あるいは重合後エラストマーの分離・回収前に、該電解質塩化合物を一括又は分割して添加すればよい。また、この電解質塩化合物(B2)の添加方法としては、そのまま添加してもよく、重合成分にあらかじめ溶解して添加してもよく、さらには別の溶媒に溶解して添加してもよい。
【0035】
[脂肪族ポリアミド組成物(A)]
帯電防止性、耐屈曲ピンホール性の改良効果を十分に発揮し、耐熱性や機械的特性、フィルム成形性を十分に確保する観点から、脂肪族ポリアミド組成物(A)は、脂肪族ポリアミド(A1)70質量%以上99.5質量%以下及びポリアミドエラストマー組成物(B)0.5質量%以上30質量%以下を含有するポリアミド組成物であり、脂肪族ポリアミド(A1)75質量%以上98質量%以下とポリアミドエラストマー組成物(B)2質量%以上25質量%以下を含有することが好ましく、脂肪族ポリアミド(A1)80質量%以上97質量%以下とポリアミドエラストマー組成物(B)3質量%以上20質量%以下を含有することがより好ましく、脂肪族ポリアミド(A1)85質量%以上96質量%以下とポリアミドエラストマー組成物(B)4質量%以上15質量%以下を含有することがさらに好ましく、脂肪族ポリアミド(A1)87質量%以上94質量%以下とポリアミドエラストマー組成物(B)6質量%以上13質量%以下を含有することが特に好ましい。
【0036】
脂肪族ポリアミド組成物(A)は、本発明の特性を損なわない範囲でさらに必要に応じて各種添加剤を配合し、公知の方法で混合又は混練することによって製造される。例えば、脂肪族ポリアミド(A1)とポリアミドエラストマー組成物(B)に、必要に応じて各種添加剤を、タンブラーやミキサーを用いて、成形時に直接添加するドライブレンド法、成形時に使用する濃度で予め原料に一軸又は二軸の押出機を用いて溶融混練する練り込み法、あるいは予め高濃度で原料に一軸又は二軸の押出機を用いて練り込み、これを成形時に希釈して使用するマスターバッチ法等が挙げられる。
【0037】
各種添加剤としては、通常配合される各種の添加剤及び改質剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、滑剤、ブロッキング防止剤、フィラー、核剤、可塑剤、発泡剤、ブロッキング防止剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、防雲剤、離型剤、架橋剤、発泡剤、難燃剤、着色剤(顔料、染料等)、カップリング剤等を含有することができる。これらの各種添加剤は、脂肪族ポリアミド(A1)にも、本発明の特性を損なわない範囲で脂肪族ポリアミド組成物(A)と同様の方法で含有することができる。
【0038】
本発明の脂肪族ポリアミド組成物(A)は、帯電防止効果をさらに向上させる目的で、非イオン性、カチオン性もしくは両性の界面活性剤を含有させることができる。
非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキサイド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビット及びソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩類等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノカルボン酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
脂肪族ポリアミド組成物(A)、又は脂肪族ポリアミド(A1)には、目脂発生防止のため、ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩を添加することができる。ヒドロキシ脂肪酸マグネシウム塩は、ヒドロキシ飽和又は不飽和脂肪酸カルボン酸とマグネシウムの塩であり、具体的には、ヒドロキシラウリン酸マグネシウム塩、ヒドロキシミリスチン酸マグネシウム塩、ヒドロキシパルミチン酸マグネシウム塩、ヒドロキシステアリン酸マグネシウム塩、ヒドロキシベヘン酸マグネシウム塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0040】
さらに、脂肪族ポリアミド組成物(A)には、透明性、滑り性を改良する観点からビスアミド化合物を添加することができる。ビスアミド化合物としては、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスベヘン酸アミド、N,N’−ジオクタデシルアジピン酸アミド等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0041】
また、脂肪族ポリアミド組成物(A)には、滑り性を向上させる目的で、無機フィラー粒子を添加することもできる。無機フィラー粒子の具体例として、ゲルタイプシリカ、沈降タイプシリカ、球状シリカ等のシリカ、タルク、カオリン、モンモリロナイト、ゼオライト、マイカ、ガラスフレーク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0042】
また、脂肪族ポリアミド組成物(A)、又は脂肪族ポリアミド(A1)には、フィルム製造時の延伸性改良のため、非晶性ポリアミドを添加することができる。非晶性ポリアミドとは、示差走査型熱量計を用いて測定される吸熱曲線がベースの変化と区別がつかず、明確な融点を示さないポリアミドを指す。
【0043】
非晶性ポリアミドの具体例としては、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6I/66、ポリアミド6T/6I/6、ポリアミド6T/6、ポリアミド6I/6、ポリアミド6T/66、ポリアミド6I/66、ポリアミド6T/12、ポリアミド6I/12、ポリアミド6T/6I/12共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0044】
[半芳香族ポリアミド(C1)]
本発明における使用される半芳香族ポリアミド(C1)は、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンと、炭素原子数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を含有する半芳香族ポリアミドである。
半芳香族ポリアミド(C1)中の、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンから誘導される単位の含有量は、得られるフィルムのガスバリア性の観点から、半芳香族ポリアミド(C1)の全ジアミン単位に対して、70モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。炭素原子数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位の含有量は、得られるフィルムのガスバリア性の観点から、半芳香族ポリアミド(C1)の全ジカルボン酸単位に対して、70モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
炭素原子数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、2−メチルアジピン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,2,4−/2,4,4−トリメチルアジピン酸、2−ブチルスベリン酸等から誘導される単位が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸から誘導される単位が好ましく、アジピン酸から誘導される単位がより好ましい。
【0046】
半芳香族ポリアミド(C1)は、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンと、炭素原子数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を、半芳香族ポリアミド(C1)の全重合単位に対して、70モル%以上含む限り、前記単位を除く他の単位を共重合することも可能である。
【0047】
半芳香族ポリアミド(C1)において、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンと、炭素原子数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を除く他の単位としては、以下の単位が挙げられる。
例えば、他のジアミン単位としては、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミンから誘導される単位、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミンから誘導される単位、m−/p−フェニレンジアミン、1,4−/1,5−/2,6−/2,7−ナフタレンジメチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジアミン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンから誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これら他のジアミン単位の含有量は、全ジアミン単位に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、0モル%以上10モル%以下であることがさらに好ましい。
【0048】
また、他のジカルボン酸単位としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、トリデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸の脂環式ジカルボン酸から誘導される単位、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これら他のジカルボン酸単位の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、0モル%以上10モル%以下であることがさらに好ましい。
その他の単位としては、カプロラクタム、ドデカンラクタム等のラクタムから誘導される単位、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸、p−アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノカルボン酸等のアミノカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。その他の単位の含有量は、全重合単位に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、0モル%以上10モル%以下であることがさらに好ましい。
【0049】
半芳香族ポリアミド(C1)の具体例としては、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンピメラミド(ポリアミドMXD7)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセパカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリパラキシリレンアゼラミド(ポリアミドPXD9)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)、ポリパラキシリレンドデカミド(ポリアミドPXD12)等の単独重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体(ポリアミドMXD6/PXD6)、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体(ポリアミドMXD7/PXD7)、メタキシリレン/パラキシリレンスベラミド共重合体(ポリアミドMXD8/PXD8)、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体(ポリアミドMXD9/PXD9)、メタキシリレン/パラキシリレンセバカミド共重合体(ポリアミドMXD10/PXD10)、メタキシリレン/パラキシリレンドデカミド共重合体(ポリアミドMXD12/PXD12)等の共重合体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0050】
粘度測定方法(JIS K−6920)に準じ、96質量%硫酸中、ポリマー濃度1質量%、温度25℃の条件下にて測定した場合、半芳香族ポリアミド(C1)の相対粘度は、フィルムの成形性と得られるフィルムの機械的性質の観点から、1.8以上4.0以下であることが好ましく、2.0以上3.5以下であることがより好ましい。
【0051】
半芳香族ポリアミド(C1)には、得られるフィルム等の成形物の特性を損なわない範囲内で、通常配合される各種の添加剤及び改質剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、滑剤、ブロッキング防止剤、フィラー、核剤、可塑剤、発泡剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、防雲剤、離型剤、架橋剤、発泡剤、難燃剤、着色剤(顔料、染料等)、カップリング剤等を含有することができる。
【0052】
半芳香族ポリアミド(C1)には、オレフィン系共重合体、及びその変性物やエラストマー等をフィルムの透明性や耐磨耗ピンホール性を損なわない範囲内で添加することができる。オレフィン系共重合体としては、エチレン/炭素原子数3以上10以下のα−オレフィン共重合体、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体部分ケン化物、エチレン/α,β−不飽和カルボン酸共重合体、アイオノマー重合体等が挙げられる。オレフィン系共重合体の変性物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された上記ポリオレフィン系共重合体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0053】
エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、前記の通り、本発明に規定された以外のポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー等のポリアミド系エラストマー、両末端にポリスチレン相、ゴム中間相として水素添加型ポリオレフィンを有し、ポリスチレン相が架橋点を担っているブロック共重合体であるスチレン系エラストマー等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0054】
[エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(C2)]
本発明において使用されるエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(C2)は、エチレンと酢酸ビニルからなる共重合体を、アルカリ触媒等を用いて公知の方法により、ケン化して得られる(以下、EVOH(C2)と称する場合がある。)。
さらに、溶融成形性、柔軟性、耐衝撃性、ガスバリア性の観点から、EVOH(C2)のエチレン含有量は、20モル%以上60モル%以下であることが好ましく、25モル%以上55モル%以下であることがより好ましく、25モル%以上45モル%以下であることがさらに好ましい。尚、EVOH(C2)がエチレン含有量の異なる2種類以上のEVOHの混合物からなる場合には、それぞれのエチレン含有量と混合質量比から算出される値をエチレン含有量とする。
【0055】
また、EVOH(C2)の酢酸ビニル成分のケン化度は、ガスバリア性の観点から、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98%モル以上であることがさらに好ましく、99モル%以上であることが特に好ましい。ここで、EVOH(C2)がケン化度の異なる2種類以上のEVOHの混合物からなる場合には、それぞれのケン化度と混合質量比から算出される値をケン化度とする。尚、EVOHのエチレン含有量及びケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0056】
EVOH(C2)のメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下)は、良好な溶融成形性を確保する観点から、0.1g/10分以上100g/10分以下であることが好ましく、0.3g/10分以上50g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以上20g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0057】
また、EVOH(C2)には、本発明の目的が阻害されない範囲であれば他の単量体を共重合することも可能である。他の単量体としては、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、酢酸1−ブテニル、ピバル酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセン等のα−オレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩、又は炭素原子数1以上18以下のモノ又はジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素原子数1以上18以下のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその酸塩又はその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素原子数1以上18以下のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその酸塩又はその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素原子数1以上18以下のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトシキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシランγ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0058】
また、EVOH(C2)には必要に応じて各種の添加剤を含有することもできる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、あるいは他の熱可塑性樹脂を挙げることができ、これらを本発明の作用効果が阻害されない範囲で含有することができる。具体的には、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−β−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ベンゼンエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−ペンタエリストール−ジホスファイト等の酸化防止剤、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、リン酸エステル等の可塑剤、ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール類等の帯電防止剤、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等のビス脂肪酸アミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩、ワックス、流動パラフィン、低分子量ポリオレフィン等の滑剤、酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸等の有機酸、ホウ酸化合物、リン酸化合物等の無機酸系化合物、ハイドロタルサイト類の金属塩等の安定剤、還元鉄粉類、亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、ハイドロキノン、没食子酸等の酸素吸収剤、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等の着色剤、グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、マイカ、セリサイト、タルク、シリカ、カオリン、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト等の充填剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0059】
EVOH(C2)には溶融安定性を改善する目的で、ホウ素化合物を含有することができる。ホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等が挙げられ、ホウ酸エステルとしては、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等が挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0060】
EVOH(C2)にはリン酸化合物を含有してもよい。リン酸化合物を含有することにより、溶融成形時のロングラン性、耐着色性が改良される。リン酸化合物としては、特に限定されず、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩としては、第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩が挙げられる。リン酸塩のカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムがより好ましい。
【0061】
また、EVOH(C2)に対し、アルカリ金属及び/又は第2族元素の塩を含有させることもでき、溶融安定性、ロングラン性の観点から好ましい。アルカリ金属もしくは第2族元素の塩のアニオン種としての限定はなく、カルボン酸塩、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等が挙げられる。アルカリ金属塩のカチオン種に限定はなく、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、第2族元素と塩を形成するカチオン種に限定はなく、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、ベリリウム塩、ストロンチウム塩等が挙げられる。具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カリウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸マグネシウム、リノール酸カルシウム、リノール酸マグネシウム、リノレン酸カルシウム、リノレン酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0062】
また、EVOH(C2)には、溶融安定性等を改善するために、本発明の目的を阻外しない範囲内で、ハイドロタルサイト類化合物、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤の1種又は2種以上を添加することができる。
【0063】
[ポリアミド系フィルム]
本発明のポリアミド系フィルムは、脂肪族ポリアミド(A1)からなる(a)層及び脂肪族ポリアミド組成物(A)からなる(b)層を含む2層以上から構成され、(b)層が少なくとも一方の最外層に配置され、全体の厚みに対する(a)層の厚み比率が20%以上95%以下、(b)層の厚み比率が5%以上40%以下である。好ましい実施態様としては、脂肪族ポリアミド(A1)からなる(a)層、脂肪族ポリアミド組成物(A)からなる(b)層、半芳香族ポリアミド(C1)又はEVOH(C2)からなる(c)層を含む3層以上を積層し、(b)層が少なくとも一方の最外層に配置され、全体厚みに対する、(a)層の厚み比率が20%以上60%以下、(b)層の厚み比率が5%以上40%以下、(c)層の厚み比率が5%以上40%以下である。半芳香族ポリアミド(C1)又はEVOH(C2)からなる(c)層を有することにより、ガスバリア性が優れたフィルムを得ることができる。
【0064】
本発明のポリアミド系フィルムの厚みは、用途により適宜決定すればよく特に制限されないが、未延伸フィルムの場合、10μm以上200μm以下であることが好ましく、15μm以上150μm以下であることがより好ましく、20μm以上100μm以下であることがさらに好ましく、延伸フィルムの場合、5μm以上50μm以下であることが好ましく、7μm以上40μm以下であることがより好ましく、9μm以上30μm以下であることがさらに好ましい。
【0065】
ポリアミド系フィルムが(a)層と(b)層を含む2層以上を積層するフィルムの場合、(a)層の厚みは、ポリアミド系フィルム全体の厚みに対して、20%以上95%以下であることが好ましく、65%以上90%以下であることがより好ましい。
(b)層の厚みは、ポリアミド系フィルム全体の厚みに対して、5%以上40%以下であることが好ましく、7%以上35%以下であることがより好ましく、9%以上30%以下であることがさらに好ましく、9%以上19%以下であることがさらに好ましい。
【0066】
ポリアミド系フィルムが(a)層、(b)層、及び(c)層を含む3層以上を積層するフィルムの場合、(a)層の厚みは、ポリアミド系フィルム全体の厚みに対して、20%以上60%以下であることが好ましく、25%以上55%以下であることがより好ましい。
(b)層の厚みは、ポリアミド系フィルム全体の厚みに対して、5%以上40%以下であることが好ましく、10%以上35%以下であることがより好ましく、12%以上30%以下であることがより好ましく、12%以上19%以下であることがさらに好ましい。 (c)層の厚みは、ポリアミド系フィルム全体の厚みに対して、5%以上40%以下であることが好ましく、10%以上35%以下であることがより好ましい。
【0067】
本発明のポリアミド系フィルムは、共押出法等の公知の方法により製造される。例えば、脂肪族ポリアミド(A1)、脂肪族ポリアミド組成物(A)、半芳香族ポリアミド(C1)等を別々の押出機で溶融したものを連続的にT−ダイより押出し、キャスティングロールにて冷却しながらフィルム状に成形する共押出T−ダイ法、環状のダイスより連続的に押出し、水を接触させて冷却する共押出水冷インフレーション法、同じく環状のダイスより押出し、空気によって冷却する共押出空冷インフレーション法等を用いて、実質的に無配向の未延伸フィルムとして製造される。しかし、得られるフィルムの強度及びガスバリアの観点から二軸延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルム用原反の成形法としては特に共押出T−ダイ法、共押出水冷インフレーション法が連続延伸性の点で優れている。
【0068】
得られた未延伸フィルムを延伸するには、従来から知られている方法が適用できる。例えば、未延伸フィルムをテンター式同時二軸延伸機で縦横同時に延伸する同時二軸延伸法、Tダイより溶融押出しした未延伸フィルムをロール式延伸機で縦方向に延伸した後、テンター式延伸機で横方向に延伸する逐次二軸延伸法が挙げられる。環状ダイより成形したチューブ状フィルムを気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブラー延伸法が挙げられる。延伸工程は未延伸フィルムの製造に引続き、連続して実施しても良いし、未延伸フィルムを一旦巻き取り、別工程として延伸を実施しても良い。
【0069】
ポリアミド系フィルムは使用用途によって異なるが、テンター式二軸延伸法、チューブラー法において、得られる二軸延伸フィルムの強度、バリア性を確保し、延伸時の破断発生を防止の観点から、通常、縦横各々2.0倍以上の延伸倍率で延伸され、2.0倍以上5.0倍以下の延伸倍率で延伸されることが好ましく、2.5倍以上4.5倍以下の延伸倍率で延伸されることがより好ましい。
【0070】
延伸温度は、30℃以上210℃以下であることが好ましく、50℃以上200℃以下であることがより好ましい。例えば、テンター式逐次二軸延伸法は、未延伸フィルムを40℃以上120℃以下の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に延伸し、続いてテンター式横延伸機によって60℃以上180℃以上の温度範囲内で横方向に延伸することにより二軸延伸フィルムを製造することができる。縦方向の延伸温度は、70℃以上100℃以下であることが好ましく、横方向の延伸温度は80℃以上160℃以下であることがより好ましい。
【0071】
上記方法により製造されたポリアミド系二軸延伸フィルムは、引続き熱処理をする。熱処理することにより常温における寸法安定性を付与することができる。この場合の熱処理温度は、80℃を下限として、使用する重合体の融点より5℃低い温度を上限とする範囲を選択することが好ましく、これにより常温寸法安定性のよい、任意の熱収縮率をもった延伸フィルムを得ることができる。
ポリアミド系二軸延伸フィルムは、熱収縮性が乏しいか、あるいは実質的に有していないものが望ましい。よって、延伸後に行なわれる熱処理温度は80℃以上であることが好ましく、80℃以上210℃以下であることがより好ましい。熱処理操作により、充分に熱固定されたフィルムは、常法に従い、冷却して巻き取ることができる。
【0072】
さらに、得られたポリアミド系フィルムは、印刷性、ラミネート、粘着剤付与性を高めるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等の表面処理を行うことができる。また、必要に応じて、このような処理がなされた後、印刷、ラミネート、粘着剤塗布、ヒートシール、蒸着、製袋、深絞り等の二次加工工程を経てそれぞれの目的とする用途に使用することができる。
【0073】
また、本発明のポリアミド系フィルムの全体の層数は特に制限されず、脂肪族ポリアミド(A1)からなる(a)層、脂肪族ポリアミド組成物(A)よりなる(b)層を含む少なくとも2層を積層するフィルムである限りはいずれでもよい。さらに、半芳香族ポリアミド(C1)又はEVOH(C2)からなる(c)層を有する3層以上から構成されるポリアミド系フィルムも好ましい実施態様である。ポリアミド系フィルムの全体の層数は、フィルム又はラミネート製造装置の機構から、8層以下であることが好ましく、2層以上7層以下であることがより好ましい。
【0074】
本発明のポリアミド系フィルムにおいて、脂肪族ポリアミド(A1)からなる(a)層、脂肪族ポリアミド組成物(A)からなる(b)層、半芳香族ポリアミド(C1)又はEVOH(C2)からなる(c)層としたとき、以下の層構成を例示することができる。
2層構造:(b)/(a)
3層構造:(b)/(a)/(b)、(b)/(c)/(a)、(b)/(a)/(c)
4層構造:(b)/(c)/(a)/(b)、(b)/(c)/(b)/(a)、(b)/(a)/(c)/(a)、(b)/(a)/(c)/(b)、(b)/(a)/(b)/(c)
5層構造:(b)/(a)/(c)/(a)/(b)、(b)/(a)/(c)/(b)/(a)、(b)/(c)/(a)/(b)/(a)、(b)/(a)/(b)/(c)/(a)、(b)/(a)/(b)/(a)/(c)
等の層構成を例示できるが、これに限定されるものではない。
本発明のポリアミド系フィルムは、(b)/(a)/(b)、(b)/(c)/(a)、(b)/(c)/(a)/(b)、(b)/(a)/(c)/(a)、(b)/(a)/(c)/(a)/(b)の層構成が好ましく、(b)/(a)/(b)又は(b)/(a)/(c)/(a)/(b)の層構成がより好ましい。尚、脂肪族ポリアミド組成物(A)よりなる(b)層は、少なくとも一方の最外層に配置される。
【0075】
本発明のポリアミド系フィルムは、(a)層、(b)層、好ましくは(c)層の3層以外に、更なる機能を付与、あるいは経済的に有利なフィルムを得るために、他の熱可塑性樹脂よりなる基材層をフィルムのさらに内側又は外側に設けることができる。
【0076】
積層される熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された化合物により変性された、上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル(LCP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルスルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、本発明において規定した以外のポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。
【0077】
また、得られたポリアミド系フィルムには、ヒートシール性を付与する観点から、シーラント層を設けることができる。シーラント層として使用される材料は、熱融着できる樹脂であればよく、一般にポリオレフィン系樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)、アイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0078】
シーラント層の積層方法としては、共押出法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。共押出法は、脂肪族ポリアミド(A1)、脂肪族ポリアミド組成物(A)、さらに必要に応じて、半芳香族ポリアミド(C1)又はEVOH(C2)と他の熱可塑性樹脂を共押出する方法であり、共押出シート成形、共押出キャスティングフィルム成形、共押出インフレーションフィルム成形等が挙げられる。押出ラミネート法は、本発明のポリアミド系フィルムと熱可塑性樹脂等の基材に、それぞれアンカーコート剤を塗布し、乾燥後、その間に熱可塑性樹脂等を溶融押出しながらロール間で冷却し圧力をかけて圧着することによりラミネートフィルムを得る方法である。ドライラミネート法は、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を本発明のポリアミド系フィルムに塗布し、乾燥後、熱可塑性樹脂等の基材と張り合わせることによりラミネートフィルムを得る方法である。ラミネート後のフィルムは、エージングすることで、接着強度を上げることができる。ラミネートする際には、本発明のポリアミド系フィルムの片面又は両面をコロナ処理して使用することが好ましい。特に必要に応じて接着性樹脂とともに共押出法により積層する方法は、アンカーコート剤や公知の接着剤等の表面処理工程が不要なため、環境に優しく、低コストであるため好ましい。
【0079】
さらに、無延伸、一軸又は二軸延伸熱可塑性樹脂フィルム又はシートや熱可塑性樹脂以外の任意の基材、例えば、紙、金属系材料、織布、不織布、金属綿、木材等を積層することも可能である。金属系材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、鉛、錫、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルト等の金属やこれらの金属化合物及びこれら2種類以上を含有するステンレス鋼等の合金鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅等の銅合金、ニッケル合金等の合金類等が挙げられる。
特に、ガスバリアや水蒸気バリア性をさらに向上させるために、金属及び/又は前記金属化合物を蒸着することも有効である。蒸着する材料としては、ケイ素や、アルミニウム、チタン、亜鉛、ジルコニウム、マグネシウム、スズ、銅、鉄等の金属や、これらの酸化物、窒化物、フッ素物、硫化物等が挙げられる。具体的には、SiOx(xは、1.0以上2.0以下)、アルミナ、マグネシア、硫化亜鉛、チタニア、ジルコニア、酸化セリウム等の無機酸化物や、HMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)等の有機化合物、シランガスのような無機ガスをキャリアガス及び酸化させるための酸素と混合後、反応により得られる酸化珪素等が挙げられる。蒸着簿膜の作製方法としては、物理的堆積法(PVD法)として真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学的堆積法(CVD法)としてプラズマCVD法や化学反応法等を用いることができる。
【0080】
本発明のポリアミド系フィルムは、バリア性に優れ、湿度依存性が小さく、長期に亘り持続する帯電防止性が付与され、かつ透明性が良好で、優れた耐屈曲ピンホール性と耐摩耗ピンホール性を兼備しており、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品類包装用、加工肉類包装用、粉体食品包装用、電気・電子部品包装用、飲料、化粧品、医薬品、洗剤、香粧品、工業薬品、農薬、燃料包装用、壁紙、マット、床材、フレコン内袋、コンテナー、防汚フィルム、防塵フィルム、バルーン等に使用することができ、食品、医薬品、薬品、香料等を密封する包装材として有用であり、食品包装用としてより好適に使用できる。該フィルム包材は蓋材、パウチ類、真空包装、スキンパック、深絞り包装、ロケット包装が挙げられる。該パウチ類は、三方シール、四方シール、ピロー、ガゼット、スタンデイングパウチ等の形態で使用される。さらに、本発明のポリアミド系フィルムは、二次加工時の静電気の発生や蓄積に起因する問題の発生を防止でき、搬送、運搬時におけるピンホールの発生を防止することが可能であることから、ハム・ソーセージ等の重量物の包装用フィルムや、和菓子のガゼット包装等袋の輸送時に擦られてピンホールが発生しやすい包装用フィルムや、突起や角をもつ食品、例えば、切り餅、甲殻類、骨付き肉の包装用フィルムとして、特に好適に使用できる。
【実施例】
【0081】
以下において実施例及び比較例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。実施例において使用した原材料、及びフィルムの各種評価方法を示す。
【0082】
[実施例及び比較例において使用した原材料]
脂肪族ポリアミド(A1)
・ポリアミド6(A1−1)(カプロラクタムから得られるポリアミド):宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B、相対粘度3.35
・ポリアミド6/66(A1−2)(カプロラクタム並びにヘキメチレンジアミン及びアジピン酸から得られるポリアミド):宇部興産(株)製、UBE NYLON 5023B、相対粘度3.05
・ポリアミド12(A1−3)(ドデカンラクタムから得られるポリアミド):宇部興産(株)製、UBESTA 3030XA、相対粘度2.24
【0083】
ポリアミドエラストマー組成物(B)
・ポリエーテルエステルアミドエラストマー組成物(B−1)(カプロラクタム、アジピン酸、及びポリエチレンオキサイドから得られるポリエーテルエステルアミドエラストマー(B1−1)と電解質塩化合物として過塩素酸ナトリウム(B2)を含有):BASFジャパン(株)製、イルガスタットP22
・ポリエーテルエステルアミドエラストマー組成物(B−2)(ドデカンラクタム、アジピン酸、及びポリエチレンオキサイドから得られるポリエーテルエステルアミドエラストマー(B1−2)と電解質塩化合物として過塩素酸ナトリウム(B2)を含有):BASFジャパン(株)製、イルガスタットP18
【0084】
ポリアミドエラストマー(B1)
・ポリエーテルエステルアミドエラストマー(B1−3)(ドデカンラクタム、ドデカン二酸、及びポリテトラメチレンオキサイドから得られるポリエーテルエステルアミドエラストマー):ダイセル・エボニック(株)製、ダイアミド E40−S1
【0085】
半芳香族ポリアミド(C1)
ポリアミドMXD6(C1−1)(m−キシリレンジアミンとアジピン酸から得られるポリアミド):三菱ガス化学(株)製、MX−ナイロン6011、相対粘度2.6
【0086】
エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(C2)(EVOH)
エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(C2−1):日本合成化学(株)製、ソアノールDC3203、エチレン含有量32モル%、ケン化度99モル%以上、MFR 3.8g/10分(210℃、2160g荷重下)
【0087】
[帯電防止性]
1)表面固有抵抗値
評価フィルムを23℃、50%相対湿度(RH)で3日間状態調節したのち、絶縁抵抗計(横河ヒューレット・パッカード(株)製、4329A型)を用いて、23℃、50%相対湿度(RH)の雰囲気下、印加電圧500V、30秒の条件にて表面固有抵抗値を測定した。
【0088】
2)帯電圧半減期
評価フィルムを23℃、50%相対湿度(RH)で3日間状態調節したのち、スタチックオネストメーター(シシド静電気(株)製、H−0110)を用いて、23℃、50%相対湿度(RH)の雰囲気下、印加電圧10kV、試料間距離20mmの条件にて、帯電圧半減期を測定した。
【0089】
[透明性]
透明性の尺度であるヘイズはASTM D−1003に準じ、直読ヘイズコンピューター(スガ試験機(株)製、HGM−2DP)を使用して、評価フィルムを測定した。
【0090】
[耐屈曲ピンホール性(繰り返し屈曲疲労テスト)]
評価フィルムを恒温槽付ゲルボフレックステスター(理学工業(株)製)により、MIL−E−131Cの規格に準じ、0℃下で1,000回の屈曲テストを行った後、ピンホール探知器(サンコウ電子(株)製)を使用して、フィルムに生じたピンホールの個数を測定した。ピンホール数が少ないほど、耐屈曲ピンホール性に優れている。
【0091】
[耐摩耗ピンホール性]
得られたフィルムを用いて、縦250mm、横200mmの寸法に製袋した袋に、市販の切り餅を20個、1kg入れ、真空包装した。この袋を、直径300mm、高さ340mmの寸法のステンレス製丸缶に入れて、これを回転ドラムにセットし、23℃、50%相対湿度(RH)の雰囲気下で、回転数40回/分にて、60分間回転させた後、ピンホール探知器(サンコウ電子(株)製)を使用して、フィルムに生じたピンホールの個数を測定した。ピンホール数が少ないほど、耐摩擦ピンホール性に優れている。
【0092】
[酸素ガスバリア性]
JIS K−7126(等圧法)に規定されている方法に従って、ガス透過度測定器(モダンコントロール(株)製、MOCON−OX−TRAN2/20)を使用して、23℃、相対湿度(RH)50%の条件下で酸素ガス透過度を測定し、その測定値とフィルムの厚みに基づいて、酸素ガス透過率(単位:ml/(m・day・MPa)/(1枚厚み))を算出した。
【0093】
実施例1
ポリアミド6(A1−1)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B)90質量%及びポリエーテルエステルアミドエラストマー組成物(B−1)(BASFジャパン(株)製、イルガスタットP22)10質量%を添加したものを二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30型)に供給し、押出機設定温度250℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、溶融混練して、造粒し、乾燥し、脂肪族ポリアミド組成物を得た。 (a)層がポリアミド6(A1−1)、(b)層が得られた脂肪族ポリアミド組成物100質量部に対して、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド0.07質量部を含有した組成物からなるよう、円形3層ダイを備えた40mmφの押出機にて、ポリアミド6(A1−1)を押出温度260℃、脂肪族ポリアミド組成物を押出温度260℃にて別々に溶融させ、20℃の水により冷却しながら、引き取りを行い、層構成が(b)/(a)/(b)の3層を直接積層したポリアミド未延伸フィルムを得た。
引き続き、気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブラー延伸法にて、延伸温度180℃、延伸倍率(縦、横ともに)3.0倍にて延伸を行った。その後、得られたチューブ状フィルムの端を切り開き、フラット状のフィルムをテンター内に導入し、幅方向に弛緩処理を行ないつつ、210℃にて熱固定処理を行なった。フィルム両端をクリップから解放し、耳部をトリミングして巻き取り、(b)/(a)/(b)=2μm/11μm/2μmのポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。該ポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0094】
実施例2〜3
実施例1において、脂肪族ポリアミド組成物中のポリアミド6(A1−1)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B)とポリエーテルエステルアミドエラストマー組成物(B−1)(BASFジャパン(株)製、イルガスタットP22)の添加割合を表1に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0095】
実施例4
実施例1において、(a)層に使用したポリアミド6(A1−1)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B)をポリアミド12(A1−3)(宇部興産(株)製、UBESTA 3030XA)に、(b)層に使用した脂肪族ポリアミド組成物中のポリアミド6(A1−1)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B)をポリアミド12(A1−3)(宇部興産(株)製、UBESTA 3030XA)に、ポリエーテルエステルアミドエラストマー組成物(B−1)(BASFジャパン(株)製、イルガスタットP22)をポリエーテルエステルアミドエラストマー組成物(B−2)(BASFジャパン(株)製、イルガスタットP18)に変え、ポリアミド12(A1−3)と脂肪族ポリアミド組成物の押出温度を240℃に変更した以外は、実施例1と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0096】
実施例5
(a)層がポリアミド6(A1−1)(宇部興産(株)製、UBE NYLON1022B)、(b)層が実施例1で得られた脂肪族ポリアミド組成物、(c)層がポリアミドMXD6(C1−1)(三菱ガス化学(株)製、MX−ナイロン6011)からなるよう、円形5層ダイを備えた40mmφの押出機にて、(ポリアミド6(A1−1)を押出温度260℃、実施例1で得られた脂肪族ポリアミド組成物を押出温度260℃,ポリアミドMXD6(C1−1)を押出温度280℃にて別々に溶融させ、20℃の水により冷却しながら、引き取りを行い、層構成が(b)/(a)/(c)/(a)/(b)の5層を直接積層したポリアミド未延伸フィルムを得た。 引き続き、気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブラー延伸法にて、延伸温度180℃、延伸倍率(縦、横ともに)3.0倍にて延伸を行った。その後、チューブ状フィルムの端を切り開き、フラット状のフィルムをテンター内に導入し、幅方向に弛緩処理を行ないつつ、210℃にて熱固定処理を行なった。フィルム両端をクリップから解放し、耳部をトリミングして巻き取り、(b)/(a)/(c)/(a)/(b)=2μm/3μm/5μm/3μm/2μmのポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。該ポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0097】
実施例6
実施例5において、(c)層に使用したポリアミドMXD6(C1−1)(三菱ガス化学(株)製、MX−ナイロン6011)をEVOH(C2−1)(日本合成化学(株)製、ソアノールDC3203)に変え、EVOH(C2−1)の押出温度を230℃に、各層の厚みを(b)/(a)/(c)/(a)/(b)=2μm/4μm/3μm/4μm/2μmに変更した以外は、実施例5と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0098】
実施例7
実施例5において、(a)層に使用したポリアミド6(A1−1)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B)をポリアミド6(A1−1)とポリアミド6/66(A1−2)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 5023B)の添加比率が(A1−1)/(A1−2)=80/20質量%である混合物に変更した以外は、実施例5と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0099】
実施例8
実施例6において、(a)層に使用したポリアミド6(A1−1)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B)をポリアミド6(A1−1)とポリアミド6/66(A1−2)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 5023B)の添加比率が(A1−1)/(A1−2)=80/20質量%である混合物に変更した以外は、実施例6と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0100】
比較例1
実施例1において、(b)層に使用した脂肪族ポリアミド組成物を使用しないこと以外は、実施例1と同様に、(a)層の厚みが15μmのポリアミド二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0101】
比較例2
実施例1において、(a)層に使用したポリアミド6(A1−1)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B)を使用しないこと以外は、実施例1と同様に、(b)層の厚みが15μmのポリアミド二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0102】
比較例3
実施例1において、各層の厚みを(b)/(a)/(b)=6μm/3μm/6μmと変更した以外は、実施例1と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0103】
比較例4
実施例1において、(b)層に使用した脂肪族ポリアミド組成物中のポリアミド6(A1−1)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B)とポリエーテルエステルアミドエラストマー組成物(B−1)(BASFジャパン(株)製、イルガスタットP22)の添加割合を表1に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0104】
比較例5
実施例1において、(b)層に使用した脂肪族ポリアミド組成物中のポリアミド6(A1−1)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B)とポリエーテルエステルアミドエラストマー組成物(B−1)(BASFジャパン(株)製、イルガスタットP22)の添加割合を表1に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様に成形を行ったが、安定した製膜ができなかった。
【0105】
比較例6
実施例1において、(b)層に使用した脂肪族ポリアミド組成物中のポリエーテルエステルアミドエラストマー組成物(B−1)(BASFジャパン(株)製、イルガスタットP22)をポリエーテルエステルアミドエラストマー(B1−3)(ダイセル・エボニック(株)製、ダイアミド E40−S1)に変更した以外は、実施例1と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0106】
比較例7
実施例5において、(b)層に使用した脂肪族ポリアミド組成物を使用しないことと、各層の厚みを(a)/(c)/(a)=5μm/5μm/5μmに変更した以外は、実施例5と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0107】
比較例8
実施例5において、(a)層に使用したポリアミド6(A1−1)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B)を使用しないことと、各層の厚みを(b)/(c)/(b)=5μm/5μm/5μmに変更した以外は、実施例5と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0108】
比較例9
実施例5において、各層の厚みを(b)/(a)/(c)/(a)/(b)=4μm/1μm/5μm/1μm/4μmと変更した以外は、実施例5と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0109】
比較例10
実施例6において、(b)層に使用した脂肪族ポリアミド組成物を使用しないことと、各層の厚みを(a)/(c)/(a)=6μm/3μm/6μmに変更した以外は、実施例6と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0110】
比較例11
実施例6において、(a)層に使用したポリアミド6(A1−1)(宇部興産(株)製、UBE NYLON 1022B)を使用しないことと、各層の厚みを(b)/(c)/(b)=6μm/3μm/6μmに変更した以外は、実施例6と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0111】
比較例12
実施例6において、各層の厚みを(b)/(a)/(c)/(a)/(b)=5μm/1μm/3μm/1μm/5μmと変更した以外は、実施例6と同様にポリアミド系二軸延伸フィルムを得た。得られたポリアミド系二軸延伸フィルムの物性測定結果を表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
表1より、表面固有抵抗値が1014以下の場合、帯電防止性に優れ、1012以下の場合、特に優れると判断し、帯電圧半減期が10秒以下の場合、帯電防止性に優れ、5秒以下の場合、特に優れると判断した。ヘイズの値が5.0%以下の場合、透明性に優れると判断した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド(A1)からなる(a)層と、
脂肪族ポリアミド(A1)70質量%以上99.5質量%以下及びポリアミドエラストマー組成物(B)0.5質量%以上30質量%以下を含有する脂肪族ポリアミド組成物(A)からなる(b)層を含む2層以上を積層するフィルムであり、
ポリアミドエラストマー組成物(B)は、ポリアミドエラストマー(B1)及び電解質塩化合物(B2)を含み、
ポリアミドエラストマー(B1)は、ポリアミドハードセグメント(x)及びアルキレン基の炭素原子数が2以上のアルキレンオキサイドの重合体を含むソフトセグメント(y)から得られるポリエーテルエステルアミドエラストマーであり、
(b)層が少なくとも一方の最外層に配置され、
全体の厚みに対する(a)層の厚み比率が20%以上95%以下、(b)層の厚み比率が5%以上40%以下であるポリアミド系フィルム。
【請求項2】
ポリアミド系フィルムは、さらに、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンと、炭素原子数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を含有する半芳香族ポリアミド(C1)、又はエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(C2)からなる(c)層を含み、
全体厚みに対する(a)層の厚み比率が20%以上90%以下、(b)層の厚み比率が5%以上40%以下、(c)層の厚み比率が5%以上40%以下である請求項1記載のポリアミド系フィルム。
【請求項3】
(b)/(a)/(b)又は(b)/(a)/(c)/(a)/(b)の層構成で積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項4】
縦横各々2.0倍以上延伸された請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項5】
食品包装に用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド系フィルム。

【公開番号】特開2012−61851(P2012−61851A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180196(P2011−180196)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】