説明

ポリアミド組成物、ポリアミド繊維、およびそれらの製造方法

【課題】本発明は、紡糸時の球晶生成抑制が可能で、結果として毛羽の生成が少なくかつ熱寸法安定性が優れたポリアミド繊維を得ることができるポリアミド組成物およびその製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】主としてポリヘキサメチレンアジパミドを含み、結晶化温度Tcおよび融点Tmが下記a,bおよびc式を満たし、かつナイロン12を含有することを特徴とするポリアミド組成物。
Tc(270)−Tc(300)≧15・・・・a
Tc(300)≦188・・・・b
Tm≧260・・・・c
ここでTc(T)は、温度T℃で溶融して測定した結晶化温度、Tmは融点を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド組成物、ポリアミド繊維、およびそれらの製造方法に関する。詳しくは、結晶化特性を改善することにより、織物用特にエアバック基布用として優れた特性を示すポリアミド組成物、ポリアミド繊維、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド繊維、特にポリヘキサメチレンアジパミド(以下ナイロン66と称す)繊維は、機械的強度が高く、また耐摩耗性、耐熱性に優れているため、産業用繊維としてはタイヤコ−ドやエアバッグ用として有用されている。
【0003】
特に、エアバッグ用としては、近年、世界的な自動車生産量の拡大、エアバッグ装着率の向上、エアバッグ装着部位の拡大等により、エアバッグ用基布の需要が増加している。エアバッグ用ナイロン66繊維の増産要請と共に、エアバッグ用基布の生産効率を高めるため、高速製織性に優れたナイロン66繊維が求められている。即ち、毛羽の少ないナイロン66繊維の供給が最大の課題となっている。
【0004】
毛羽の少ないナイロン66繊維の製造は、紡糸冷却時に生成する球晶を抑制することにより達成可能である。球晶生成の主な要因は、ナイロン66の重合工程および溶融紡糸工程で、ナイロン66ポリマが熱分解し生成した微小異物、および耐熱剤等の添加剤が熱分解して生成した微小な異物である。特に、重合中および溶融紡糸中は、ポリマの流れが悪く長時間滞留して熱分解、ゲル化して球晶核となる微小異物を生成することが多い。また、球晶生成は、上記球晶核の生成に加え、球晶の成長によって形成されるため結晶化速度にも依存する。特に、ナイロン66は結晶化速度が速いために、球晶生成とそれによる製糸障害が顕著である。
【0005】
球晶生成抑制技術として、共重合成分を微量共重合して結晶化速度を低下させる方法が行われている。また、特定の共重合成分を加えて、熱分解が生じてもゲル化し難い共重合ポリアミドとする方法も提案されている。これらに関して、例えば、特許文献1および特許文献2がある。
【0006】
特許文献1は、ナイロン66の球晶(球状集合体)の抑制とゲル化時間の増加により、製糸性を向上させることを課題とし、該課題は、2−メチルペンタメチレンジアミンおよび他のアミド単位を含有する三元ポリアミドおよび多元ポリアミド、ならびにこれから製造した製品、とすることによって解決できることを開示している。該特許文献によれば、球晶生成の減少、ゲル化時間の増加が可能となり、延伸性、光学的透明度、染色速度等、有用な効果が得られる繊維が得られ、捲縮加工して用いられることが示されている。
【0007】
しかしながら、該特許文献に記載された共重合ポリマは融点降下が比較的大きく、具体的に製造された共重合ポリマの融点降下は、最も小さいものでも2.1℃、多くは5〜10℃程度の範囲で融点降下している。かかる融点降下は、カ−ペット用嵩高捲縮糸(BCF)のように、通常常温で使用される製品では特に性能として不利にはならないこともあるが、融点降下に伴い、収縮率が高くなり熱寸法安定性が低下するため用途によっては、例えばエアバッグ用途などでは採用することが極めて困難である。
【0008】
特許文献2には、BCFカ−ペット用ナイロン66繊維の球晶を抑制し、フィラメントの表面が平滑で、室温で染色可能なナイロン66繊維を提供することを課題とし、該課題は、ナイロン66を主成分とし、ナイロン6を少量共重合することによって達成されることが開示されている。具体的には、上記ナイロン66繊維にはヘキサメチレンアジパミドを94〜96%、カプロラクタムを1〜6%、水溶性無機カルシウム塩を0.001〜2%配合したナイロン66共重合ポリアミドを用いることが開示されている。カプロラクタムを共重合することによって、ナイロン66の結晶化速度を低下させることにより、カ−ペット用BCFのように、単糸繊度が太く冷却し難い繊維においては、その球晶抑制効果は認められる。しかしながら、カプロラクタムを共重合する方法は球晶抑制効果は大きいものの、同時に融点降下も大きく利用できる分野が制限されるものであった。
【0009】
また、重合組成物中にナイロン12またはナイロン12モノマ(ラウロラクタム)を含有させ、得られる樹脂組成物の物性を改良する技術としては特許文献3および4がある。
【0010】
特許文献3には、ポリエステルの初期重合物と重合度が10程度であるポリアミドを混合し、溶融状態で重縮合を行うことで、ポリアミドおよびポリエステルの両成分が均一かつ微細に分散混和させ、ポリアミドとポリエステルのポリマ特性を実質的に保有する、高重合度、高結晶性の重合組成物を提供する手法が開示されている。また、この手法による樹脂組成物は、ポリマブレンドおよび共重合とは異なる性質を持つことも示されている。
実施例には、ポリブチレンテレフタレートの初期重合物にナイロン12を添加し、重縮合した記載がある。しかし、相対粘度が1.2までしか上がっておらず、本発明の目的である産業用繊維として用いることは不可能であった。また、Tm,Tcとも低く、紡糸時の球晶生成抑制が可能で、毛羽の生成が少ないため製糸収率および品位に優れ、かつ熱寸法安定性が優れたポリアミド繊維を得ることはできなかった。
【0011】
特許文献4には、ナイロン6モノマ(ε−カプロラクタム)とナイロン66モノマであるアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩(以下AH塩)、およびナイロン12モノマ(ラウロラクタム)の3元共重合による、透明性に優れたポリアミドを提供する手法が開示されている。しかしその目的は柔軟性、延伸性に優れたポリアミドを得ることであり、熱寸法安定性に優れたポリアミド組成物を得ることはできなかった。
【特許文献1】特表平6−502671号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】米国特許第4,919,874号明細書(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開昭58−42645号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平11−71455号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは共重合による融点降下を抑え、かつ結晶化速度を低下させる技術について検討した結果、ナイロン66を製造する工程の重合前段階あるいは重合途中段階のいずれかの段階において融点が270℃以上300℃未満である化合物を原料あるいは重合系に添加する技術を開発した。該手法を用いると球晶の抑制が可能で、かつ熱寸法安定性に優れたポリアミド繊維を得ることが可能となった。しかしながら、添加化合物の融点は270℃以上であるため、重合段階で溶融または溶解することが容易ではなく、ナイロン66中に均一に微分散させるためには該添加物化合物を微細な粉末に加工する工程が必要であった。また、粉末の粒径や重合時間によっては、分散が不十分で球晶抑制効果とは逆に球晶の核剤となることも考えられた。そのため、微細な粉末に加工する工程がなくても添加化合物が微分散しており、かつ共重合による融点降下を抑え、かつ結晶化速度を低下させる技術が求められていた。
【0013】
本発明は、結晶化特性を改善することにより織物用特にエアバック基布用として優れた特性を示すポリアミド組成物、ポリアミド繊維、およびそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。
(1)主としてポリヘキサメチレンアジパミドを含み、結晶化温度Tcおよび融点Tmが下記a,bおよびc式を満たし、かつナイロン12を含有することを特徴とするポリアミド組成物。
Tc(270)−Tc(300)≧15・・・・a
Tc(300)≦188・・・・b
Tm≧260・・・・c
ここでTc(T)は、温度T℃で溶融して測定した結晶化温度、Tmは融点を示す。
(2)上記(1)記載のポリアミド組成物からなることを特徴とするポリアミド繊維。
(3)単糸繊度が4dtex以上であることを特徴とする上記(2)記載のポリアミド繊維。
(4)ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸を重合原料とするポリヘキサメチレンアジパミドの製造方法であって、重合前段階または重合途中段階において、ナイロン12を添加することを特徴とするポリアミド組成物の製造方法。
(5)上記(4)に記載の製造方法で得られたポリアミド組成物を溶融紡糸することを特徴とするポリアミド繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリアミド組成物によれば、織物用、特にエアバック基布用として優れた特性、すなわち紡糸時の球晶生成抑制が可能で、毛羽の生成が少ないため製糸収率および品位に優れ、かつ熱寸法安定性が優れたポリアミド繊維を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明について、以下に詳述する。
本発明のポリアミド組成物の主構成成分はポリヘキサメチレンアジパミドであり、本発明の効果を十分得るためには、ポリヘキサメチレンアジパミドの含有量は80重量%以上が好ましく、更に好ましくは90〜99.9重量%含有することである。
【0017】
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重合方法は特に限定されない。ポリヘキサメチレンアジパミドの重合方法には一般に連続重合法およびバッチ重合法があるが、バッチ重合法による本発明ポリアミド組成物の製造法の概略を示すと以下の通りである。
【0018】
AH塩水溶液を耐圧の反応容器に仕込み、内圧が1.7〜1.8MPaに到達するまで密閉加熱を行ない(昇圧工程)、その内圧を維持しながら内温が250〜260℃に達するまで加熱を行い(制圧工程)、その後、加熱を継続しながら内圧を徐々に大気圧まで放圧し、この間に内温を275〜290℃まで上昇させる(放圧工程)。そして、耐圧の反応容器内を減圧し、重合を進めた後(減圧工程)、加圧し、重合したポリマを吐出する。
【0019】
更に詳述すると、オートクレーブに、AH塩を50〜90重量%の水溶液として仕込む。オートクレーブ内の酸素を追い出すために空間部を窒素置換後、内圧が上昇し1.7〜1.8MPaに到達するまで圧力を逃がさないように加熱を行う(昇圧工程)。内圧が上昇し1.7〜1.8MPaまで到達したら内圧を維持するように調整しながらさらにオートクレーブ内を内温が250〜260℃に到達するまで加熱を継続する(制圧工程)。内温が250〜260℃に到達したら加熱を継続しながら約1〜2時間をかけて内圧を徐々に大気圧(0.1MPa)まで放圧し、この間に内温を275〜290℃まで上昇させる(放圧工程)。さらに0.09〜0.03MPaまで圧力を下げ10〜60分間重合を進める(減圧工程)。重合後のポリアミド組成物を直径2〜4mm程度のストランド状に押し出し、長さ3〜5mm程度にカッティングしてポリマチップとする。
【0020】
ポリマチップの硫酸相対粘度は約2.2〜3.5程度であることが好ましく、なかでも
2.5〜3.3であることが好ましい。上記硫酸相対粘度は、試料0.25gを98%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定し、ポリマ溶液と硫酸の落下秒数の比から求められる値とする。
【0021】
本発明のポリアミド組成物はナイロン12を含有するが、ナイロン12は重合原料であるヘキサメチレンジアミンとアジピン酸を仕込むまでの段階、すなわち重合前段階または重合途中段階においてポリヘキサメチレンアジパミド中に微分散するように添加することが好ましく、添加した化合物が十分微分散するためには、原料仕込み段階、前記昇圧工程または制圧工程で添加することがより好ましく、原料仕込み段階または昇圧工程で添加することがさらに好ましい。なお重合終了以降に添加した場合では添加したナイロン12が十分ポリヘキサメチレンアジパミド中に微分散されず、結晶化抑制効果を十分でなくなる。
【0022】
ナイロン12の添加量については特に制約はないが、本発明の効果を効率よく、かつ十分発現させるため、ポリヘキサメチレンアジパミドの原料モノマ100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部が特に好ましい。
【0023】
さらに添加するナイロン12の添加形状は特に限定されないが、重合時間が短い場合や添加時期が重合後期である場合、ポリヘキサメチレンアジパミド中に微分散させるために、0.1mm〜2mmの大きさの粉末とすることが好ましい。(上記範囲は、JIS規格のふるいを用いて分級する場合には、9.2メッシュパス、150メッシュオンに相当する。)
【0024】
重合時間は原料仕込み後の加熱開始から重合終了しオートクレーブから排出するまでの時間で0.5〜5時間が好ましい。0.5時間未満では添加するナイロン12の添加形状によっては十分に微分散しない場合があり、5時間を超えると添加した化合物が分解することで当初の目的が得られない場合がある。
【0025】
本発明のポリアミド組成物の製造方法では、必要に応じて本発明の目的を阻害しない範囲において、モノカルボン酸を添加しポリヘキサメチレンアジパミドの末端を封鎖することができる。例示すれば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸のような脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸のような脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸のような芳香族モノカルボン酸などが挙げられる。上記モノカルボン酸の好ましい使用量は重合原料であるAH塩100molに対して通常0〜1molであり、好ましくは0〜0.5mol%である。
【0026】
また、本発明のポリアミド組成物の製造方法では、ポリヘキサメチレンアジパミドは必要に応じて本発明の目的を阻害しない範囲において、主構成単位であるヘキサメチレンジアミン単位とアジピン酸単位以外に他の1種または2種以上の他のラクタム単位、ジカルボン酸単位、ジアミン単位を含むことが可能である。これら単位を形成するための原料(共重合成分)を例示すれば、バレロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ウンデカラクタム、ラウロラクタム、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、ジエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタン、キシリレンジアミンなどが挙げられる。これら共重合成分の使用量はポリヘキサメチレンアジパミドの原料モノマ100重量部に対して0〜0.8重量部であることが好ましく、0〜0.4重量部であることが熱寸法安定性の点より好ましい。
【0027】
また本発明のポリアミド組成物の製造方法では、ポリアミド組成物を液相で重合した後、必要に応じ、本発明の目的を阻害しない範囲内でさらに重合度を高めるための固相重合を行うことや、さらにあるいは、用途に応じて例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、充填剤(グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ベントナイト、モンモリロナイト、合成雲母等の粒子状、繊維状、針状、板状充填材)を任意の時点で添加することができる。
【0028】
本発明のポリアミド組成物は、結晶化温度Tcおよび融点Tmが下記a,bおよびc式を満足することが必要である。
【0029】
結晶化温度Tcおよび融点Tmが下記a,bおよびc式を満足することにより、球晶抑制効果が著しく、かつ従来技術の共重合ポリアミドのような融点降下が極めて少ないポリアミド組成物が得られる。その結果、熱寸法安定性に優れ、かつ、製糸性向上、毛羽減少の効果が得られるの。かかる効果を有する本発明のポリアミド組成物は、下記式a〜cを満足することによって特徴付けられる。
Tc(270)−Tc(300)≧15・・・・a
Tc(300)≦188・・・・b
Tm≧260・・・・c
ここでTc(T)は、温度T℃で溶融して測定した結晶化温度、Tmは融点を示す。
【0030】
上記融点Tmは、示差走査型熱量計を用い、サンプル量4mg、昇温速度80℃/分で完全に溶融させた後、降温速度80℃/分で冷却し、さらに昇温速度80℃/分で昇温させた時の融解に基づく吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとする(ただしn数を5とする平均値として求めるものとする)。結晶化温度(Tc)は、同様に示差走査型熱量計を用い、温度T℃まで昇温し、温度T℃で6分間保持し、その後、降温速度80℃/分で降温した際に観測される、結晶化に基づく発熱ピークのピークトップ温度を結晶化温度Tc(T)とする(ただしn数を5とする平均値として求めるものとする)。上記条件で測定した場合のヘキサメチレンジアミンとアジピン酸のみから重合されたポリヘキサメチレンアジパミド単体(以下ポリヘキサメチレンアジパミド単体と称す)の平均値はTc(300)=193(各測定値のばらつき193.0±0.2)℃、Tm=263(各測定値のばらつき263.3±0.2)℃である。
【0031】
本発明におけるポリアミド組成物は、その添加時期や添加方法、添加物の形態等の条件により物性が変わる。そのため、本発明におけるポリアミド組成物を単純に定義することが困難であった。
【0032】
そこで本発明のポリアミド組成物を、冷却結晶化したときの結晶化し易さの指標である結晶化温度Tcと熱寸法安定性の指標であるポリヘキサメチレンアジパミド単体との融点Tmを用いて上記のとおり定義した。
【0033】
上記式aは、ナイロン66の一般的な溶融紡糸温度である300℃まで昇温・溶融した後、冷却結晶化したときの結晶化温度Tc(300)が、ナイロン66の融点以上であるが比較的低温である270℃で溶融した後、冷却結晶化したときの結晶化温度Tc(270)に比較して15℃以上低いことを表している。すなわち本発明のポリアミド組成物は比較的高温で溶融した場合には、結晶化温度が低く結晶化しにくく、逆に比較的低温で溶融した場合には結晶化温度が高く結晶化しやすいことを示している。
【0034】
つまり、本発明のポリアミド組成物を300℃まで昇温・溶融した場合には、冷却過程で結晶核となる成分は生成しにくいが、一方270℃で溶融した場合は、結晶核となるポリマ成分が残存していることを意味している。
【0035】
Tc(300)が低いことは、糸球晶を抑制し毛羽の少ないポリアミド繊維が得やすいことを意味し、Tc(270)が高いことは、ポリアミド組成物の繊維構造形成過程で結晶化が進み易いことを示す。このことは、延伸によって配向した繊維構造が熱固定され易いことを意味し熱寸法安定性に優れたポリアミド繊維が得やすいことを意味する。紡糸時の球晶抑制効果と熱寸法安定性を両立するためにはその温度差が15℃以上であることが必要であり、16℃以上であることが好ましい。上限としては50℃以下であることが、上記特性の十分な効果が得られるという点で好ましい。
【0036】
ポリヘキサメチレンアジパミド単体の場合は、Tc(300)とTc(270)の温度差は通常12℃程度である。また、球晶抑制技術として従来から知られている、例えばラクタムなどの共重合ポリアミドは、Tc(270)とTc(300)共に低下するが、Tc(300)よりもTc(270)の低下が大きいため温度差は小さい。さらにタルク、シリカなどの無機微粒子を結晶化核剤として添加した場合は、Tc(270)とTc(300)が共に上昇するが、Tc(270)よりもTc(300)の上昇が大きいため、共重合の場合と同様に温度差は小さくなる。本温度差が15℃未満のポリアミド組成物では紡糸時の球晶抑制効果と熱寸法安定性を両立することができない。
【0037】
上記式bは、本発明のポリアミド組成物は300℃まで昇温・溶融した後、冷却結晶化したときの結晶化温度Tc(300)が188℃以下であることを示している。これは、ポリヘキサメチレンアジパミド単体の結晶化温度(193℃)よりも5℃以上低いことを意味しており、ナイロン66の一般的な溶融紡糸温度である300℃まで昇温・溶融した場合、ポリヘキサメチレンアジパミド単体よりも結晶化速度が遅く、球晶の発生が抑えられる事を意味している。結晶化温度Tc(300)がポリヘキサメチレンアジパミド単体を同様に測定した場合の結晶化温度(193℃)よりも5℃以上低くない場合、つまり、Tc(300)が188℃を越える場合は結晶化速度が十分遅くないために球晶の発生を抑制することができず毛羽の生成が少ないポリアミド繊維を得ることができない。Tc(300)は186℃以下であることが好ましい。下限としては178℃以上である。
【0038】
上記式cは、本発明のポリアミド組成物の融点が260℃以上であることを示している。これは、ポリヘキサメチレンアジパミド単体からの融点降下が3℃以内であることを意味している。融点降下は2℃以内、つまり融点が261℃以上であることが好ましい。上限としては、270℃以下であることが、溶融紡糸における適性の点から好ましい。融点降下が3℃を超える場合、つまり、融点が260℃未満であると、収縮率が高くなり熱寸法安定性の低下が大きくなり利用できる分野が制限され、例えばエアバッグ用途などでは採用することができない。
【0039】
従来の球晶抑制技術である共重合ポリアミドポリマはその共重合比率にもよるが上記b式の条件を満足することが可能である。しかし融点降下のため同時にc式を満足する共重合ポリアミドは得られていなかった。
【0040】
本発明のポリアミド組成物は前記特徴を有するが、Tc(270)は好ましくは200℃〜225℃である。上記範囲にあるときに繊維構造形成時の結晶化が極めて良好で、寸法安定性に優れた繊維を得ることができる。
【0041】
上記本発明のポリアミド組成物は、ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸を重合しポリヘキサメチレンアジパミドを製造する工程の重合前段階または重合途中段階において、ナイロン12を添加することにより製造が可能である。
【0042】
本発明者らは共重合による融点降下を抑え、かつ結晶化速度を低下させる技術について検討した結果、ナイロン66を製造する工程の重合前段階あるいは重合途中段階のいずれかの段階において融点が270℃以上300℃未満である化合物を原料あるいは重合系に添加する技術を開発した。該手法を用いると球晶の抑制が可能で、かつ熱寸法安定性に優れたポリアミド繊維を得ることが可能となった。しかしながら、該添加化合物の融点は270℃以上であるため、重合段階で溶融または溶解することが容易ではなく、ナイロン66中に均一に微分散させるためには該添加化合物を微細な粉末に加工する工程が必要であった。また、粉末の粒径や重合時間によっては、分散が不十分で球晶抑制効果とは逆に球晶の核剤となることも考えられた。
【0043】
本発明のポリアミド組成物は、融点が270℃以上300℃未満である化合物ではなく、融点の低いナイロン12を添加することにより、微細な粉末に加工する工程が入れなくても添加化合物が微分散し、共重合による融点降下を抑え、かつ結晶化速度を低下させることができる。得られるポリアミド組成物の詳細な構造については定かではないが、添加物が分子レベルで微分散していることにより上記特性が達成されているものであると推測している。
【0044】
本発明のポリアミド組成物は、ポリアミド繊維の紡糸温度である300℃にて溶融した時、結晶化速度が遅く球晶が発生しにくい。そのためポリアミド繊維とする場合には単糸繊度が4dtex以上であることが好ましい。単糸繊度が4dtex未満の場合は糸の冷却が速く、本発明のポリアミド組成物の効果はあるものの改善効果は小さいものとなる。単糸繊度はJIS L1017:2002の8.3の方法で測定するものとする。
【0045】
本発明のポリアミド組成物からなる繊維は、毛羽が少ないことから、高速で製織されるような織物用、特にエアバッグ基布用として特に有用である。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、実施例に記載した特性値の測定法は以下の通りである。
【0047】
(1)硫酸相対粘度:試料0.25gを98%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。相対粘度はポリマ溶液と硫酸の落下秒数の比から求めた。
【0048】
(2)融点(Tm):融点範囲0〜730℃のサンプルはPerkin−Elmer社製Diamond DSCの示差走査型熱量計を用い、融点範囲730〜1000℃のサンプルはPerkin−Elmer社製DSC−2型を用いて測定した。サンプル量4mg、昇温速度80℃/分で完全に溶融させた後、降温速度80℃/分で冷却し、さらに昇温速度80℃/分で昇温させた時の融解に基づく吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとした(n数5で測定し、その平均値を求めた)。
【0049】
(3)結晶化温度(Tc):Perkin−Elmer社製DSC−7型の示差走査型熱量計を用いて測定した。サンプル量4mg、昇温速度80℃/分で温度T℃まで昇温し、温度T℃で6分間保持し、その後、降温速度80℃/分で降温した際に観測される、結晶化に基づく発熱ピークのピークトップ温度を結晶化温度Tc(T)としたn数5で測定し、その平均値を求めた。
【0050】
(4)繊度:JIS L1017:2002の8.3に従って測定した。
【0051】
(5)沸騰水収縮率:JIS L1017:2002の8.14に従って測定した。
【0052】
(6)球晶生成度:未延伸糸フィラメントを試料とし、パラフィンで包埋して切片を取り、この切片をスライドグラス上で、キシレンを滴下してパラフィンを溶解除去し、観察用試料とした。偏光顕微鏡(ニコン/ME−600)で200倍で観察し、画像をプリントアントして、断面に占める球晶の面積(%)を求めた。
【0053】
(7)毛羽発生頻度:ENKA社製の赤外線毛羽センサ−で毛羽をカウントし、原糸1千万m当たりの毛羽個数を求めた。
【0054】
実施例1
0.2mのオートクレーブに、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との塩であるヘキサメチレンジアンモニウムアジペート(AH塩)の90重量%水溶液120kgおよびナイロン12ペレット(アルドリッチケミカル社製、融点:178℃)を2.2kg(原料モノマ100重郎部当たり2重量部)仕込み、オートクレーブ内の酸素を追い出すために空間部を窒素置換した。その後、密閉系でオートクレーブを300℃で加熱し、内圧が1.7MPaまで上昇した時点(内温210℃)で、圧力を維持するようにオートクレーブ上部のバルブを開け圧力を制御した。内温が250℃に到達した時点から内圧を1時間で0.1MPaまで徐々に放圧した。さらに真空ポンプを用いて系内の圧力を0.05MPaまで減じ30分間維持し重合を終えた。このときの内温は285℃であった。重合時間は4時間であった。次に、重合により得られたポリアミド組成物を直径約3mmのストランド状に押し出し、長さ約4mmにカッティングし、ペレットを得た。ポリアミド組成物の硫酸相対粘度は3.1であった。ペレットを267Paで、15時間保持し乾燥および調湿を行い硫酸相対粘度3.3、水分率0.08%のポリアミド組成物を得た。得られたポリアミド組成物の特性を表1に示す。
【0055】
次に、ポリアミド組成物をエクストル−ダ−型紡糸機で溶融紡糸した。紡糸温度を300℃、紡糸パック中で20μ金属フィルタ−を用いて濾過した後、直径0.3mmで孔数36の口金を用いて紡糸した。口金直下には20cmの加熱筒を取り付け、口金面から25cmの間を300℃の高温雰囲気とし、紡出した。紡出糸条は高温雰囲気を通過後18℃の冷風で冷却固化した。次いで、糸条に油剤を付与した後、600m/分で回転する引き取りロ−ル(1FR)に捲回して引き取った。
【0056】
次に、引き取り糸条は、給糸ロ−ル(2FR)との間で5%のストレッチをかけた後、引き続き2FRと第1延伸ロ−ル(1DR)との間で1段めの延伸、1DRと第2延伸ロ−ル(2DR)の間で2段めの延伸を行った。次いで、延伸糸条は弛緩ロ−ル(RR)との間で8%の弛緩をした後、巻取機で巻き取った。1FRおよび2FRは30℃、1DRは120℃、2DRは245℃、RRは100℃とした。各ロ−ルは全て2個1対からなるネルソン型ロ−ルである。かくして、235dtex−36filamentのポリアミド繊維を得た。
【0057】
球晶生成度の評価は引き取りロ−ルに少量捲きつかせてサンプリングした未延伸糸で行った。得られたポリアミド繊維の特性を表1に示す。
【0058】
実施例2
ナイロン12ペレットを1.1kg(原料モノマ100重郎部当たり1重量部)重合原料に仕込んだ以外は実施例1と同様の条件で重合を行い、ポリアミド組成物を得た。さらに実施例1と同様にしてポリアミド繊維を得た。得られたポリアミド組成物およびポリアミド繊維の特性を表1に示す。
【0059】
実施例3
ナイロン12ペレットを0.54kg(原料モノマ100重郎部当たり0.5重量部)重合原料に仕込んだ以外は実施例1と同様の条件で重合を行い、ポリアミド組成物を得た。さらに実施例1と同様にしてポリアミド繊維を得た。得られたポリアミド組成物およびポリアミド繊維の特性を表1に示す。
【0060】
実施例4
あらかじめミキサーで粉砕し、36メッシュを通過し、100メッシュにとどまる粉末を分取したナイロン12を重合原料に添加した以外は実施例2と同様の条件で重合を行い、ポリアミド組成物を得た。さらに実施例2と同様にしてポリアミド繊維を得た。得られたポリアミド組成物およびポリアミド繊維の特性を表1に示す。
【0061】
実施例5
ナイロン12ペレットを重合途中段階(制圧工程)で添加した以外は実施例2と同様の条件で重合を行い、ポリアミド組成物を得た。さらに実施例2と同様にしてポリアミド繊維を得た。得られたポリアミド組成物およびポリアミド繊維の特性を表1に示す。
【0062】
比較例1
ナイロン12を用いずにAH塩のみを用いた以外は実施例1と同様の条件で重合を行い、ポリアミド組成物を得た。さらに実施例1と同様にしてポリアミド繊維を得た。得られたポリアミド組成物およびポリアミド繊維の特性を表2に示す。
【0063】
比較例2
ナイロン12の代わりに12−アミノドデカン酸を用いた以外は実施例1と同様の条件で重合を行い、ポリアミド組成物を得た。さらに実施例1と同様にしてポリアミド繊維を得た。得られたポリアミド組成物およびポリアミド繊維の特性を表2に示す。
【0064】
比較例3
ナイロン12のかわりに、あらかじめミキサーで粉砕し、36メッシュを通過し、100メッシュにとどまる粉末を分取したナイロン46(アルドリッチケミカル社製、融点:293℃)を用いた以外は実施例2と同様の条件で重合を行い、ポリアミド組成物を得た。さらに実施例2と同様にしてポリアミド繊維を得た。得られたポリアミド組成物およびポリアミド繊維の特性を表2に示す。
【0065】
比較例4
ナイロン46ペレットを粉砕せず、そのまま重合原料に添加した以外は比較例3と同様の条件で重合を行った。しかし、重合が終了し、ポリアミドを押し出す際に未溶融のナイロン46ペレットが残っていたためにポリアミドの押し出しが不可能となり、ペレット化することが不可能となった。
【0066】
表1、2に記載のとおり、実施例はいずれも本発明の結晶化温度特性、融点を有し、本発明のポリアミド組成物による繊維の球晶生成は少なくまた繊維は熱安定性に優れることがわかる。
【0067】
また、比較例3、4より、ナイロン46についても本発明の結晶化温度特性、融点を有しているが、ナイロン66中に均一に微分散させるためには該添加化合物を微細な粉末に加工する工程が必要である。一方、実施例1〜5より、ナイロン12については、粉砕は不要である。また、実施例5では重合途中段階でナイロン12ペレットを添加してもナイロン66中に均一に微分散し、本発明の結晶化温度特性、融点を示しており、溶融・分散性に優れていることがわかる。
【0068】
実施例1〜5および比較例1〜4の少量テスト結果を基に代表例を用いて拡大評価により、2000kgのポリアミド組成物を用いて原糸毛羽を評価した。
【0069】
実施例6
6mのオートクレーブに、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との塩であるヘキサメチレンジアンモニウムアジペート(AH塩)の90重量%水溶液3000kgおよびナイロン12を27kg(原料モノマ100重郎部当たり1重量部)仕込み、オートクレーブ内の酸素を追い出すために空間部を窒素置換した。その後、密閉系でオートクレーブを300℃で加熱し、内圧が1.7MPaまで上昇した時点(内温210℃)で、圧力を維持するようにオートクレーブ上部のバルブを開け圧力を制御した。内温が250℃に到達した時点から内圧を1時間で0.1MPaまで徐々に放圧した。さらに真空ポンプを用いて系内の圧力を0.05MPaまで減じ30分間維持し重合を終えた。このときの内温は285℃であった。重合時間は4時間であった。次に、重合により得られたポリアミド組成物を直径約3mmのストランド状に押し出し、長さ約4mmにカッティングし、ペレットを得た。ポリアミド組成物の硫酸相対粘度は3.1であった。ペレットを267Paで、15時間保持し乾燥および調湿を行い硫酸相対粘度3.3、水分率0.08%のポリアミド組成物を得た。
【0070】
次に、実施例1と同様の方法にて235dtex−36filamentのポリアミド繊維を得たが、その際に2000kgのポリアミド繊維を巻き取る際に毛羽発生頻度を調べた。得られたポリアミド組成物およびポリアミド繊維の特性、ならびに毛羽発生頻度を表3に示す。
【0071】
比較例5
ナイロン12を用いずに実施例6と同様に重合を行いポリヘキサメチレンアジパミド単体を得、紡糸により235dtex−36filamentのポリアミド繊維を得た。実施例6と同様にポリアミド繊維を巻き取る際に毛羽発生頻度を調べた。得られたポリアミド組成物およびポリアミド繊維の特性、ならびに毛羽発生頻度を表3に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のポリアミド組成物、ポリアミド繊維、およびそれらの製造方法は、織物用特にエアバック基布用ポリアミド繊維原料として好適であり、毛羽の生成が少なくかつ熱寸法安定性が優れたポリアミド繊維を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主としてポリヘキサメチレンアジパミドを含み、結晶化温度Tcおよび融点Tmが下記a,bおよびc式を満たし、かつナイロン12を含有することを特徴とするポリアミド組成物。
Tc(270)−Tc(300)≧15・・・・a
Tc(300)≦188・・・・b
Tm≧260・・・・c
ここでTc(T)は、温度T℃で溶融して測定した結晶化温度、Tmは融点を示す。
【請求項2】
請求項1記載のポリアミド組成物からなることを特徴とするポリアミド繊維。
【請求項3】
単糸繊度が4dtex以上であることを特徴とする請求項2記載のポリアミド繊維。
【請求項4】
ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸を重合原料とするポリヘキサメチレンアジパミドの製造方法であって、重合前段階または重合途中段階において、ナイロン12を添加することを特徴とするポリアミド組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法で得られたポリアミド組成物を溶融紡糸することを特徴とするポリアミド繊維の製造方法。

【公開番号】特開2008−163227(P2008−163227A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355404(P2006−355404)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】