説明

ポリアミド組成物

【課題】靭性が高く、かつ、剛性、耐熱性、低吸水性、及び低そり性に優れるポリアミド組成物を提供すること。
【解決手段】(A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンと、を重合させたポリアミド、と、(B)層状珪酸塩と、を含有するポリアミド組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド組成物及びポリアミド組成物を含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド6及びポリアミド66(以下、それぞれ、「PA6」及び「PA66」と略称する場合がある。)などに代表されるポリアミドは、成形加工性、機械物性や耐薬品性に優れていることから、自動車用、電気及び電子用、機械工業用、産業資材用、工業材料用、並びに日用及び家庭品用などの各種部品材料として広く用いられている。
【0003】
自動車産業において、環境に対する取り組みとして、排出ガス低減のために、金属代替による車体軽量化の要求がある。該要求に応えるために、外装材料や内装材料などにポリアミドが一段と用いられる様になり、ポリアミド材料に対する耐熱性、強度及び外観などの要求特性のレベルは一層向上している。中でも、エンジンルーム内の温度も上昇傾向にあるため、ポリアミド材料に対する高耐熱化の要求が強まっている。
また、家電などの電気及び電子産業において、表面実装(SMT)ハンダの鉛フリー化に対応すべく、ハンダの融点上昇に耐えることができる、ポリアミド材料に対する高耐熱化が要求されている。
PA6及びPA66などのポリアミドでは、融点が低く、耐熱性の点でこれらの要求を満たすことができない。
【0004】
PA6及びPA66などの従来のポリアミドの前記問題点を解決するために、高融点ポリアミドが提案されている。具体的には、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド(以下、「PA6T」と略称する場合がある。)などが提案されている。
しかしながら、PA6Tは、融点が370℃程度という高融点ポリアミドであるため、溶融成形により成形品を得ようとしても、ポリアミドの熱分解が激しく起こり、十分な特性を有する成形品を得ることが難しい。
【0005】
PA6Tの前記問題点を解決するために、PA6TにPA6及びPA66などの脂肪族ポリアミドや、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンからなる非晶性芳香族ポリアミド(以下、「PA6I」と略称する場合がある。)などを共重合させ、融点を220〜340℃程度にまで低融点化したテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンを主成分とする高融点半芳香族ポリアミド(以下、「6T系共重合ポリアミド」と略称する場合がある。)などが提案されている。
6T系共重合体ポリアミドとして、特許文献1には、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなり、脂肪族ジアミンがヘキサメチレンジアミン及び2−メチルペンタメチレンジアミンの混合物である芳香族ポリアミド(以下、「PA6T/2MPDT」と略称する場合がある。)が開示されている。
また、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとからなる芳香族ポリアミドに対して、アジピン酸とテトラメチレンジアミンからなる高融点脂肪族ポリアミド(以下、「PA46」と略称する場合がある。)や、脂環族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなる脂環族ポリアミドなどが提案されている。
【0006】
特許文献2及び3には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなる脂環族ポリアミド(以下、「PA6C」と略称する場合がある。)と他のポリアミドとの半脂環族ポリアミド(以下、「PA6C共重合ポリアミド」と略称する場合がある。)が開示されている。
特許文献2には、ジカルボン酸単位として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を1〜40%配合した半脂環族ポリアミドの電気及び電子部材はハンダ耐熱性が向上することが開示され、特許文献3には、自動車部品では、流動性及び靭性などに優れることが開示されている。
【0007】
特許文献4には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含むジアミン単位からなるポリアミドが耐光性、靭性、成形性、軽量性、及び耐熱性などに優れることが開示されている。また本ポリマーの製造方法として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,9−ノナンジアミンを230℃以下で反応してプレポリマーを作り、そのプレポリマーを230℃で固相重合し融点311℃のポリアミドを製造することが開示されている。
また、特許文献5には、トランス/シス比が50/50から97/3である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を原料として用いたポリアミドが、耐熱性、低吸水性、及び耐光性などに優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平6−503590号公報
【特許文献2】特表平11−512476号公報
【特許文献3】特表2001−514695号公報
【特許文献4】特開平9−12868号公報
【特許文献5】国際公開第2002/048239号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
6T系共重合ポリアミドは確かに、低吸水性、高耐熱性、及び高耐薬品性という特性を持ってはいるものの、流動性が低く成形性や成形品表面外観が不十分であり、靭性、耐光性に劣る。そのため、外装部品のような成形品の外観が要求されたり、日光などに曝される用途では改善が望まれている。また比重も大きく、軽量性の面でも改善が望まれている。
【0010】
特許文献1に開示されたPA6T/2MPDTは、従来のPA6T共重合ポリアミドの問題点を一部改善することができるが、流動性、成形性、靭性、成形品表面外観、及び耐光性の面でその改善水準は不十分である。
PA46は、良好な耐熱性及び成形性を有するものの、吸水率が高く、また、吸水による寸法変化や機械物性の低下が著しく大きいという問題点を持っており、自動車用途などで要求される寸法変化の面で要求を満たせない場合がある。
【0011】
特許文献2及び3に開示されたPA6C共重合ポリアミドも、吸水率が高く、また、流動性が十分でないなどの問題がある
特許文献4及び5に開示されたポリアミドも、靭性、剛性、及び流動性の面で改善が不十分である。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、靭性が高く、かつ、剛性、耐熱性、低吸水性、及び低そり性に優れるポリアミド組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、脂環族ジカルボン酸と、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンと、を主たる構成成分として重合させたポリアミドと、層状珪酸塩と、を含有するポリアミド組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下のポリアミド組成物及びポリアミド組成物からなる成形品を提供する。
(1)
(A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンと、を重合させたポリアミドと、
(B)層状珪酸塩と、を含有するポリアミド組成物。
(2)
前記主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが、2−メチルペンタメチレンジアミンである、(1)に記載のポリアミド組成物。
(3)
前記脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、(1)又は(2)に記載のポリアミド組成物。
(4)
前記脂環族ジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミド組成物。
(5)
前記ポリアミドが、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させたポリアミドである、(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド組成物。
(6)
前記(A)ポリアミドの融点が、270〜350℃である、(1)〜(5)のいずれかに記載のポリアミド組成物。
(7)
前記(A)ポリアミドにおけるトランス異性体比率が50〜85%である、(1)〜(6)のいずれかに記載のポリアミド組成物。
(8)
前記(B)層状珪酸塩が、層間にオニウムイオンを有する有機物を挿入した層状珪酸塩である、(1)〜(7)のいずれかに記載のポリアミド組成物。
(9)
前記(A)ポリアミド100質量部に対して、前記(B)層状珪酸塩0.1〜30質量部を含有する、(1)〜(8)のいずれかに記載のポリアミド組成物。
(10)
(C)分散媒をさらに配合して製造された、(1)〜(9)のいずれかに記載のポリアミド組成物。
(11)
前記(C)分散媒が、水及び/又はε−カプロラクタムである、(10)に記載のポリアミド組成物。
(12)
前記(B)層状珪酸塩100質量部に対して、前記(C)分散媒0.1〜500質量部を含有する、(10)又は(11)に記載のポリアミド組成物。
(13)
(1)〜(12)のいずれかに記載のポリアミド組成物を含む成形品。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、剛性が高く、かつ、靭性、耐熱性、低吸水性、及び低そり性に優れるポリアミド組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0017】
本実施の形態のポリアミド組成物は、(A)ポリアミドと、(B)層状珪酸塩と、を含有するポリアミド組成物である。
【0018】
(A)ポリアミド
本実施の形態において用いられる(A)ポリアミドは、下記(a)及び(b)を重合させたポリアミドである:
(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸、
(b)少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミン。
本実施の形態において、ポリアミドとは主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する重合体を意味する。
【0019】
(a)ジカルボン酸
本実施の形態に用いられる(a)ジカルボン酸は、少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含む。
(a)ジカルボン酸として、脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含むことにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。
【0020】
(a−1)脂環族ジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸とも記される。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの、脂環構造の炭素数が3〜10である、好ましくは炭素数が5〜10である脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
【0021】
脂環族ジカルボン酸としては、耐熱性、低吸水性、及び剛性などの観点で、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であることが好ましい。
脂環族ジカルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
脂環族ジカルボン酸には、トランス体とシス体の幾何異性体が存在する。
原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸は、トランス体とシス体のどちらか一方を用いてもよく、トランス体とシス体の種々の比率の混合物として用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸は、高温で異性化し一定の比率になることやシス体の方がトランス体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、原料モノマーとして、トランス体/シス体比がモル比にして、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
脂環族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、液体クロマトグラフィー(HPLC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により求めることができる。
【0023】
本実施の形態に用いられる(a)ジカルボン酸の(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0024】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸などの炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0025】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基などのハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩などのその塩などが挙げられる。
【0026】
脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性などの観点で、好ましくは脂肪族ジカルボン酸であり、より好ましくは、炭素数が6以上である脂肪族ジカルボン酸である。
中でも、耐熱性及び低吸水性などの観点で、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸などが挙げられる。
中でも、耐熱性などの観点で、セバシン酸及びドデカン二酸が好ましい。
脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(a)ジカルボン酸成分として、さらに、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を含んでもよい。
多価カルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(a)ジカルボン酸中の(a−1)脂環族ジカルボン酸の割合(モル%)は、少なくとも50モル%である。脂環族ジカルボン酸の割合は、50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましい。脂環族ジカルボン酸の割合が、少なくとも50モル%であることにより、耐熱性、低吸水性、及び剛性などに優れるポリアミドとすることができる。
(a)ジカルボン酸中の(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸の割合(モル%)は、0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
【0029】
(a)ジカルボン酸成分として、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を含む場合には、(a−1)脂環族ジカルボン酸が50〜99.9モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸0.1〜50モル%であることが好ましく、(a−1)脂環族ジカルボン酸が60〜90モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸10〜40モル%であることがより好ましく、(a−1)脂環族ジカルボン酸が70〜85モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸15〜30モル%であることがさらに好ましい。
【0030】
本実施の形態において、(a)ジカルボン酸としては、上記ジカルボン酸として記載の化合物に限定されるものではなく、上記ジカルボン酸と等価な化合物であってもよい。
ジカルボン酸と等価な化合物としては、上記ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構造と同様のジカルボン酸構造となり得る化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、ジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物などが挙げられる。
【0031】
(b)ジアミン
本実施の形態に用いられる(b)ジアミンは、少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含む。
(b)ジアミンとして、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを少なくとも50モル%含むことにより、流動性、靭性及び剛性などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。
主鎖から分岐した置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
【0032】
(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4−ジメチルオクタメチレンジアミンなどの炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、耐熱性及び剛性などの観点で、2−メチルペンタメチレンジアミンであることが好ましい。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本実施の形態に用いられる(b)ジアミンの(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、及び芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0034】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミンなどの炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
【0035】
脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、及び1,3−シクロペンタンジアミンなどが挙げられる。
【0036】
芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミンなどが挙げられる。
【0037】
主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性などの観点で、好ましくは脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンであり、より好ましくは、炭素数4〜13の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、さらに好ましくは、炭素数6〜10の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、よりさらに好ましくはヘキサメチレンジアミンである。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(b)ジアミン成分として、さらに、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、ビスヘキサメチレントリアミンなどの3価以上の多価脂肪族アミンを含んでもよい。
多価脂肪族アミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(b)ジアミン中の(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合(モル%)は、少なくとも50モル%である。主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合は、50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましい。主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合が、少なくとも50モル%であることにより、流動性、靭性、及び剛性に優れるポリアミドとすることができる。
(b)ジアミン中の(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンの割合(モル%)は、0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
【0040】
(a)ジカルボン酸の添加量は、(b)ジアミンの添加量と同モル量付近であることが好ましい。重合反応中の(b)ジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、(a)ジカルボン酸全体のモル量1に対して、(b)ジアミン全体のモル量は、0.9〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.1であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
【0041】
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸
本実施の形態において用いられる(A)ポリアミドは、靭性の観点で、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させることができる。
本実施の形態に用いられる(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸とは、重(縮)合可能なラクタム及び/又はアミノカルボン酸を意味する。
(A)ポリアミドが、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を重合させたポリアミドである場合は、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸は、炭素数が4〜14のラクタム及び/又はアミノカルボン酸が好ましく、炭素数6〜12のラクタム及び/又はアミノカルボン酸を用いることがより好ましい。
【0042】
ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)などが挙げられる。
中でも、靭性の観点で、ε−カプロラクタム、ラウロラクタムなどが好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。
【0043】
アミノカルボン酸としては、例えば、前記ラクタムが開環した化合物であるω−アミノカルボン酸やα,ω−アミノ酸などが挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましく、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸などが挙げられ、アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸なども挙げられる。
【0044】
ラクタム及び/又はアミノカルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の添加量(モル%)は、(a)、(b)及び(c)の各モノマー全体のモル量に対して、0〜20モル%であることが好ましい。
【0046】
(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンからポリアミドを重合する際に、分子量調節のために公知の末端封止剤をさらに添加することができる。
末端封止剤としては、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類などが挙げられ、熱安定性の観点で、モノカルボン酸、及びモノアミンが好ましい。
末端封止剤としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族モノカルボン酸;並びに安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸;などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンなどの脂環族モノアミン;並びにアニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミンなどの芳香族モノアミン;などが挙げられる。
モノアミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンの組み合わせは、下記に限定されるものではなく、(a−1)少なくとも50モル%以上の脂環族ジカルボン酸及び(b−1)少なくとも50モル%以上の2−メチルペンタメチレンジアミンの組み合わせが好ましく、(a−1)少なくとも50モル%以上の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び(b−1)少なくとも50モル%以上の2−メチルペンタメチレンジアミンがより好ましい。
これらの組み合わせをポリアミドの成分として重合させることにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性に優れることを同時に満足する高融点ポリアミドとすることができる。
【0050】
(A)ポリアミドにおいて、脂環族ジカルボン酸構造は、トランス異性体及びシス異性体の幾何異性体として存在する。
ポリアミド中における脂環族ジカルボン酸構造のトランス異性体比率は、ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸全体中のトランス異性体である比率を表し、トランス異性体比率は、好ましくは50〜85モル%であり、より好ましくは50〜80モル%であり、さらに好ましくは60〜80モル%である。
(a−1)脂環族ジカルボン酸としては、トランス体/シス体比(モル比)が50/50〜0/100である脂環族ジカルボン酸を用いることが好ましいが、(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンの重合により得られるポリアミドとしては、トランス異性体比率が50〜85モル%であることが好ましい。
トランス異性体比率が上記範囲内にあることにより、ポリアミドは、高融点、靭性及び剛性に優れるという特徴に加えて、高いTgによる熱時剛性と、通常では耐熱性と相反する性質である流動性と、高い結晶性を同時に満足するという性質を持つ。
ポリアミドのこれらの特徴は、(a)少なくとも50モル%以上の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、(b)少なくとも50モル%以上の2−メチルペンタメチレンジアミンの組み合わせからなり、かつトランス異性体比率が50〜85モル%であるポリアミドで特に顕著である。
本実施の形態において、トランス異性体比率は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0051】
(A)ポリアミドの製造方法としては、(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つ脂肪族ジアミンを含むジアミンと、を重合させる工程を含む、ポリアミドの製造方法であれば、特に限定されるものではない。
ポリアミドの製造方法としては、ポリアミドの重合度を上昇させる工程を、さらに含むことが好ましい。
【0052】
ポリアミドの製造方法としては、例えば、以下に例示するように種々の方法が挙げられる:
1)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と略称する場合がある。)、
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」と略称する場合がある。)、
3)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダーなどの押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」と略称する場合がある。)、
4)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」と略称する場合がある。)、
5)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物を固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」と略称する場合がある)、
6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いたて重合させる方法「溶液法」。
【0053】
ポリアミドの製造方法において、脂環族ジカルボン酸のトランス異性体比率を50〜85%に維持して重合することが好ましく、ポリアミドの流動性の観点から、50〜80%に維持して重合することがより好ましい。
トランス異性体比率を上記範囲内に、特に、80%以下に維持することにより、色調や引張伸度に優れ、高融点のポリアミドを得ることができる。
ポリアミドの製造方法において、重合度を上昇させてポリアミドの融点を上昇させるために、加熱の温度を上昇させたり、及び/又は加熱の時間を長くする必要が生ずるが、その場合、加熱によるポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下が起こる場合がある。また、分子量の上昇する速度が著しく低下する場合がある。
ポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下を防止することができるため、トランス異性体比率を80%以下に維持して重合することが好適である。
【0054】
ポリアミドを製造する方法としては、トランス異性体比率を80%以下に維持することが容易であるため、また、得られるポリアミドの色調に優れるため、1)熱溶融重合法、及び2)熱溶融重合・固相重合法によりポリアミドを製造することが好ましい。
【0055】
ポリアミドの製造方法において、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。
重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、及びニーダーなどの押出機型反応器などが挙げられる。
【0056】
ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、以下に記載するバッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造することができる。
バッチ式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒として、ポリアミド成分((a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び、必要に応じて、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を含有する約40〜60質量%の溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。その後、窒素などの不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。該ストランドを、冷却、カッティングしてペレットを得る。
【0057】
ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、以下に記載する連続式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造することができる。
連続式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒としてポリアミド成分を含有する約40〜60質量%の溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱し、次いで、濃縮層/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。該濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出し、その後、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧する。その後、ポリアミド溶融物は押し出されてストランドとなり、冷却、カッティングされペレットとなる。
【0058】
本実施の形態における(A)ポリアミドの分子量としては、25℃の相対粘度ηrを指標とした。
本実施の形態における(A)ポリアミドの分子量は、靭性及び剛性などの機械物性並びに成形性などの観点で、JIS−K6810に従って測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の相対粘度ηrにおいて、好ましくは1.5〜7.0であり、より好ましくは1.7〜6.0であり、さらに好ましくは1.9〜5.5である。
25℃の相対粘度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K6810に準じて行うことができる。
【0059】
本実施の形態における(A)ポリアミドの融点は、Tm2として、耐熱性の観点から、270〜350℃であることが好ましい。融点Tm2は、好ましくは270℃以上であり、より好ましくは275℃以上であり、さらに好ましくは280℃以上である。また、融点Tm2は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下であり、さらに好ましくは335℃以下であり、よりさらに好ましくは330℃以下である。
(A)ポリアミドの融点Tm2を270℃以上とすることにより、耐熱性に優れるポリアミドとすることができる。また、(A)ポリアミドの融点Tm2を350℃以下とすることにより、押出、成形などの溶融加工でのポリアミドの熱分解などを抑制することができる。
【0060】
本実施の形態における(A)ポリアミドの融解熱量ΔHは、耐熱性の観点から、好ましくは10J/g以上であり、より好ましくは14J/g以上であり、さらに好ましくは18J/g以上であり、よりさらに好ましくは20J/g以上である。
本実施の形態における(A)ポリアミドの融点(Tm1又はTm2)及び融解熱量ΔHの測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
融点及び融解熱量の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
【0061】
本実施の形態における(A)ポリアミドのガラス転移温度Tgは、90〜170℃であることが好ましい。ガラス転移温度は、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上である。ガラス転移温度は、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは165℃以下であり、さらに好ましくは160℃以下である。
(A)ポリアミドのガラス転移温度を90℃以上とすることにより、耐熱性や耐薬品性に優れるポリアミドとすることができる。また、(A)ポリアミドのガラス転移温度を170℃以下とすることにより、外観のよい成形品を得ることができる。
ガラス転移温度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
ガラス転移温度の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
【0062】
(B)層状珪酸塩
本実施の形態のポリアミド組成物は、前記(A)ポリアミドと、(B)層状珪酸塩と、を含有するポリアミド組成物である。
ポリアミド組成物として、(B)層状珪酸塩を含有することにより、流動性及び靭性が高く、かつ、耐熱性、低吸水性、及び剛性に優れるポリアミドの性質を損なうことなく、ポリアミド組成物としても、流動性及び靭性が高く、かつ、耐熱性、低吸水性、剛性、及び低そり性に優れるポリアミド組成物とすることができる。
【0063】
本実施の形態に用いられる(B)層状珪酸塩は、珪酸マグネシウム又は珪酸アルミニウムの層から構成されるフィロ珪酸塩である。
層状珪酸塩としては、合成した層状珪酸塩であってもよく、天然由来の層状珪酸塩であってもよい。
層状珪酸塩としては、例えば、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、サポナイト、バイデライト、ヘクトライト、スティブンサイト、バーミキュライト、及びハロイサイトなどが挙げられ、モンモリロナイト及び膨潤性フッ素雲母などが好ましい。
膨潤性フッ素雲母の場合、タルク、珪フッ化ナトリウム及び/又は珪フッ化リチウム等を原料として固相で合成されたものが挙げられる。
これら層状珪酸塩を1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
層状珪酸塩としては、95%以上に高純度化したものが好ましく、高純度化する方法としては、特に限定されないが、自然沈降、遠心分離などの方法が挙げられる。
【0065】
層状珪酸塩は、平均粒子径0.02〜500μmの範囲のものが好ましい。
層状珪酸塩の陽イオン交換容量は、30〜300ミリ当量/100gであることが好ましく、より好ましくは、50〜200ミリ当量/100gであり、さらに好ましくは、80〜150ミリ当量/100gである。
本実施の形態において、陽イオン交換容量は、酢酸アンモニウム溶液浸出法、遠心法、水素化−バリウム交換法などの方法により測定することができる。
【0066】
層状珪酸塩は、層間にアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンなどを含むものが好ましく、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとしては、Na+イオン及びLi+イオンが好ましい。
層間のアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンなどは、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、及びスルホニウムイオンなどのオニウムイオンでイオン置換することが好ましい。
層状珪酸塩が、オニウムイオンでイオン置換されていることにより、剪断による層状珪酸塩の層の剥離を容易にすることができ、また、層状珪酸塩の分散性が向上することにより、ポリアミドと層状珪酸塩との相溶性を向上させることができる。
【0067】
オニウムイオンとしては、オニウムイオンを分子内に有する有機物であることが好ましく、分子中にアルキル鎖及び/又はアルキル鎖の一部にカルボン酸が共有結合している構造とオニウムイオンを有する有機化合物が挙げられ、塩化物イオンなどをカウンターイオンとして、オニウムイオンを有する構造を分子内に有している。
アルキル鎖の炭素原子数は、6個以上であることが好ましい。
オニウムイオンを有する有機物としては、アンモニウム基を有する有機化合物が挙げられ、例えば、オクタデシルアンモニウムイオン、モノメチルアンモニウムイオン、ジメチルオクタデシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、並びに4−アミノ−n−酪酸、6−アミノ−n−カプロン酸、8−アミノ−n−カプロン酸、10−アミノデカン酸、12−アミノドデカン酸、14−アミノテトラデカン酸、16−アミノヘキサデカン酸、及び18−アミノオクタデカン酸などのω−アミノ酸の両性イオンである、カルボキシル基とアンモニウム基を有する有機化合物(ω−アミノ酸のアンモニウム塩)などが挙げられる。
【0068】
層状珪酸塩は、ミキサー、ボールミル、振動ミル、ピンミル、及びジェットミル、揺漬機などにより粉砕処理し、予め、所望の形状、大きさに調整しておくことが好ましい。
【0069】
層間にオニウムイオンを有する有機物を挿入した層状珪酸塩の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、モンモリロナイトと12−アミノドデカン酸のアンモニウム塩の場合を例示すると、モンモリロナイトを水に混合分散した後、12−アミノドデカン酸と濃塩酸を加え、攪拌する。その後、水で充分洗浄し、乾燥を行うことによって、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンがオニウムイオンでイオン置換されたモンモリロナイトの乾燥固体塊を得る方法が挙げられる。
この塊状の複合物を粉砕機で細粒化し、12−アミノドデカン酸のアンモニウム塩がモンモリロナイトの層間にインターカレートした粉体を得ることができる。
層間にオニウムイオンを有する有機物を挿入した層状珪酸塩としては、乾燥した粉末状のものを用いてもよく、水などの分散媒との懸濁液状態であるものを用いてもよい。
【0070】
本実施の形態におけるポリアミド組成物の製造方法としては、(A)ポリアミドと(B)層状珪酸塩とを混合する方法であれば、特に限定されるものではない。
より具体的には、混合方法は、例えば、(A)ポリアミドと(B)層状珪酸塩とをヘンシェルミキサーなどを用いて混合し溶融混練機に供給し混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にしたポリアミドに、一つ又は複数のサイドフィーダーから層状珪酸塩を配合する方法などが挙げられる。
溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。
例えば、溶融混練温度は、樹脂温度にして250〜375℃程度であることが好ましい。溶融混練時間は、0.5〜5分程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、公知の装置を用いることができる、例えば単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー及びミキシングロールなどの溶融混練機が好ましく用いられる。
【0071】
本実施の形態において、(B)層状珪酸塩の配合量は、特に限定されないが、(A)ポリアミド100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.5〜20質量部であり、さらに好ましくは1〜10質量部である。
(B)層状珪酸塩の配合量を0.1質量部以上とすることにより、剛性及び低そり性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。また、(B)層状珪酸塩の配合量を30質量部以下とすることにより、成形加工時の流動性の低下を抑制することができる。さらに靭性や成形品外観の低下を抑制することができる。
【0072】
(C)分散媒
本実施の形態のポリアミド組成物は、(C)分散媒をさらに配合して製造されたポリアミド組成物であることが好ましい。
ポリアミド組成物として、(A)ポリアミド及び(B)層状珪酸塩に、(C)分散媒をさらに配合して製造することにより、流動性及び靭性が高く、かつ、耐熱性、低吸水性、剛性、及び低そり性に優れ、さらに、分散性に優れるポリアミド組成物とすることができる。
(C)分散媒をさらに配合して製造されるポリアミド組成物は、(A)ポリアミドと、(B)層状珪酸塩と、を含むポリアミド組成物であって、(A)ポリアミド及び(B)層状珪酸塩に、(C)分散媒を配合して製造されるポリアミド組成物である。
【0073】
(C)分散媒としては、水、ε−カプロラクタム、メタノール、及びエタノールなどが挙げられ、水及び/又はε−カプロラクタムが好ましい。
これら分散媒を1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
分散媒は、層状珪酸塩の層間を広げる役割、混練等において層状珪酸塩の分散を容易にする役割を担うものである。
層状珪酸塩を分散媒で膨潤状態する方法・条件は特に制限されず、例えば容器内に入れ攪拌された分散媒に少量ずつ層状珪酸塩を投入する方法がある。混合条件も任意に選択できるが、分散媒の劣化や蒸発が生じない程度の高温で、長時間攪拌した方が、膨潤状態にするには、より好ましい。なお膨潤状態にした複合体はそのまま混練等に供することができるが、必要に応じて分散媒の一部を除去してから混練等に供することもできる。
(A)ポリアミドと(B)層状珪酸塩を混合する際に、適宜、(C)分散媒を配合して、混合することにより、分散媒によって層状珪酸塩が膨潤する。(A)ポリアミド、(B)層状珪酸塩、及び(C)分散媒を溶融混練することによりポリアミド組成物とすることができるが、溶融混練し、押出することにより層状珪酸塩の層が一層ずつ剥がれてポリアミド組成物における分散性が向上することにより、靭性に優れるポリアミド組成物とすることができる。
【0074】
本実施の形態のポリアミド組成物の製造方法として、(A)ポリアミド、(B)層状珪酸塩、及び(C)分散媒を混合することもできる。
(B)層状珪酸塩と(C)分散媒の混合は、(A)ポリアミドと混練する際に行ってもよく、(A)ポリアミドと混練する前に行ってもよい。また、(A)ポリアミドと(B)層状珪酸塩を混合する工程において、(C)分散媒は適宜混合してポリアミド組成物を製造することができる。
【0075】
本実施の形態において、(C)分散媒の配合量は、特に限定されないが、(B)層状珪酸塩100質量部に対して、好ましくは0.1〜500質量部である。(C)分散媒の配合量は、(B)層状珪酸塩100質量部に対して、より好ましくは50質量部以上であり、さらに好ましくは80質量部以上であり、よりさらに好ましくは100質量部以上であり、また、より好ましくは400質量部以下であり、さらに好ましくは300質量部以下である。
(C)分散媒の配合量を0.1質量部以上とすることにより、剛性、靭性、低そり性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。また、(C)分散媒の配合量を500質量部以下とすることにより、混練工程での押出機からのガス発生を抑制でき、生産性が向上する。
【0076】
本実施の形態におけるポリアミド組成物の引張強度は、好ましくは85MPa以上であり、より好ましくは90MPa以上であり、さらに好ましくは100MPa以上である。
引張強度の測定は、下記実施例に記載するように、ASTM D638に準じて行うことができる。
引張強度が85MPa以上であることにより、剛性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
【0077】
本実施の形態におけるポリアミド組成物の引張伸度は、好ましくは1.0%以上であり、より好ましくは3.0%以上であり、さらに好ましくは4.0%以上であり、よりさらに好ましくは5.0%以上であり、もっとも好ましくは6.0%以上である。
引張伸度の測定は、下記実施例に記載するように、ASTM D638に準じて行うことができる。
引張伸度が1.0%以上であることにより、靭性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
【0078】
本実施の形態におけるポリアミド組成物の吸水率は、好ましくは4.0%以下であり、より好ましくは3.0%以下であり、さらに好ましくは2.4%以下である。
吸水率の測定は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
吸水率が3.0%以下であることにより、低吸水性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
【0079】
本実施の形態におけるポリアミド組成物のそり量は、好ましくは0.9mm以下であり、より好ましくは0.8mm以下であり、さらに好ましくは0.7mm以下である。
そり量の測定は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
そり量が0.9mm以下であることにより、低そり性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
【0080】
本実施の形態におけるポリアミド組成物の荷重たわみ温度は、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは120℃以上である。
荷重たわみ温度の測定は、下記実施例に記載するように、ISO−75−2に準じた方法により測定することができる。
荷重たわみ温度は、80℃以上であることにより、耐熱性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
【0081】
本実施の形態のポリアミド組成物には、本実施の形態の目的を損なわない範囲で、例えば、強化材、難燃剤、フィブリル化剤、顔料及び染料などの着色剤(着色マスターバッチ含む)、可塑剤、帯電防止剤、流動性改良剤、充填剤、補強剤、展着剤、並びに他のポリマーなどを添加することができる。
【0082】
本実施の形態におけるポリアミド組成物を含む成形品は、公知の成形方法、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法を用いてポリアミド組成物から得ることができる。
【0083】
本実施の形態におけるポリアミド組成物から得られる成形品は、靭性が高く、かつ、剛性、耐熱性、低吸水性、及び低そり性に優れる。したがって、本実施の形態のポリアミド組成物は、例えば、自動車用、機械工業用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、並びに日用及び家庭品用などの各種部品材料として、また、押出用途などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0084】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。なお、本実施例において、1Kg/cm2は、0.098MPaを意味する。
【0085】
[原材料]
本実施例において下記化合物を用いた。
(A)ポリアミド
(a)ジカルボン酸
(1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA) イーストマンケミカル製 商品名 1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体(モル比)=25/75)
(2)テレフタル酸(TPA) 和光純薬工業製 商品名 テレフタル酸
(3)アジピン酸(ADA) 和光純薬工業製 商品名 アジピン酸
(4)ドデカン二酸(C12DA) 和光純薬工業製 商品名 ドデカン二酸
【0086】
(b)ジアミン
(5)2−メチルペンタメチレンジアミン(2MPD) 東京化成工業製 商品名 2−メチル−1,5−ジアミノペンタン
(6)ヘキサメチレンジアミン(HMD) 和光純薬工業製 商品名 ヘキサメチレンジアミン
(7)1,9−ノナメチレンジアミン(NMD) アルドリッチ製 商品名 1,9−ノナンジアミン
(8)2−メチルオクタメチレンジアミン(2MOD) 特開平05−17413号公報に記載されている製法を参考にして製造した。
【0087】
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸
(9)ε−カプロラクタム(ε−CPL) 和光純薬工業製 商品名 ε−カプロラクタム
【0088】
(B)層状珪酸塩
(10)モンモリロナイト クニミネ工業製 クニピア(登録商標)F 陽イオン交換容量:115ミリ当量/100g、平均粒子径:2μm
以下、「モンモリロナイト(未処理品)」と略記する。
【0089】
(d)層状珪酸塩層間に挿入する有機物
(11)12−アミノドデカン酸 和光純薬工業製 純度99%
【0090】
(C)分散媒
(9)ε−カプロラクタム(ε−CPL) 和光純薬工業製 商品名 ε−カプロラクタム
(12)水 和光純薬工業製 精製水
【0091】
[ポリアミド成分量の計算]
(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた全ての(a)ジカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル%は、(原料モノマーとして加えた(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル数/原料モノマーとして加えた全ての(b)ジアミンのモル数)×100として、計算により求めた。
また、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた、全ての(a)ジカルボン酸のモル数+(b)全てのジアミンのモル数+(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
なお、上記式により計算する際に、分母及び分子には、追添分として加えた(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル数は含まれない。
【0092】
[測定方法]
(1)融点Tm1、Tm2(℃)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minでサンプルの融点に応じて300〜350℃まで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とし、昇温の最高温度の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温し、30℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで同様に昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最大ピーク温度を融点Tm2(℃)とし、その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。なお、ピークが複数ある場合には、ΔHが1J/g以上のものをピークとみなした。例えば、融点295℃、ΔH=20J/gと融点325℃、ΔH=5J/gの二つのピークが存在する場合、融点は325℃とした。また、融点としてはTm2を採用した。
【0093】
(2)ガラス転移温度Tg(℃)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、試料をホットステージ(Mettler社製EP80)で溶融させて得られた溶融状態のサンプルを、液体窒素を用いて急冷し、固化させ、測定サンプルとした。該測定サンプル10mgを用いて、昇温スピード20℃/minの条件下、30〜350℃の範囲で昇温して、ガラス転移温度を測定した。
【0094】
(3)25℃の相対粘度ηr
JIS−K6810に準じて測定した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作成し、25℃の温度条件下で測定した。
(4)トランス異性体比率
ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、1H−NMRを測定した。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、トランス異性体に由来する1.98ppmのピーク面積とシス異性体に由来する1.77ppmと1.86ppmのピーク面積の比率からトランス異性体比率を求めた。
【0095】
(5)引張強度(MPa)及び引張伸度(%)
ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を用いて、ASTM D638に準じて行った。
成形試験片は、射出成形機(日精樹脂(株)製PS40E)にASTM引張試験(ASTM D638)用のダンベル試験片(3mm厚)の金型(金型温度=Tg+20℃)を取り付けて、シリンダー温度=(Tm2+10)℃〜(Tm2+30)℃で成形を行った。
【0096】
(6)吸水率(%)
ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を成形後の絶乾状態(dry as mold)で、試験前質量(吸水前質量)を測定した。80℃の純水中に24時間浸漬させた。その後、水中から試験片を取り出し、表面の付着水分をふき取り、恒温恒湿(23℃、50RH%)雰囲気下に30分放置後、試験後質量(吸水後質量)を測定した。吸水前質量に対しての吸水後質量の増分を吸水量とし、吸水前質量に対する吸水量の割合を、試行数n=3で求め、その平均値を吸水率(%)とした。
【0097】
(7)水平面との最大隙間間隙(mm)(そり特性として)
ポリアミド組成物ペレットを射出成形機で、射出成形条件はシリンダー温度をTm2+30℃、金型温度Tg+20℃、成形サイクル60秒で、厚み3mm、一辺130mmの金型を用いて射出成形した平板を得た。平板を水平面に置き、水平面との最大隙間間隔としてそり量を測定した。
【0098】
(8)荷重たわみ温度(℃)
ISO引張試験用のダンベル射出成形試験片(4mm厚)を用いて、ISO−75−2に準じ、荷重1.8MPaにおける荷重たわみ温度を測定した。
成形試験片は、射出成形機(日精樹脂(株)製PS40E)にISO引張試験用のダンベル試験片(4mm厚)の金型(金型温度=Tg+20℃)を取り付けて、シリンダー温度=(Tm2+10)℃〜(Tm2+30)℃で成形を行った。
【0099】
(9)分散性
ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)をウルトラミクロトーム(Reichert−Nissei製)により切削して、85nm厚の超薄切片を得た。日本電子(株)製透過型電子顕微鏡JEM1200を用いて、超薄切片を観察した。透過型電子顕微鏡による評価を下記の基準に基づいて評価を行った。
◎:1μm以下の層が50%以上認められる。
○:1μm以下の層が50%〜30%
△:1μm以下の層が30%〜10%
×:分散性が非常に悪い。1μm以下の層が10%未満。
【0100】
[製造例1]
「熱溶融重合法」でのポリアミド重合を実施した。
(a)CHDA896g(5.20モル)、及び(b)2MPD604g(5.20モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作った。該均一水溶液に2MPD15g(0.13モル)を追添した。
得られた水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、液温(内温)が50℃になるまで保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5Kg/cm2になるまで、液温を約50℃から加熱を続けた(この系での液温は約145℃であった。)。槽内の圧力を約2.5Kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約75質量%になるまで濃縮した(この系での液温は約160℃であった。)。水の除去を止め、槽内の圧力が約30Kg/cm2になるまで加熱を続けた(この系での液温は約245℃であった。)。槽内の圧力を約30Kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、最終温度−50℃になるまで加熱を続けた。液温が最終温度−50℃(ここでは300℃)まで上昇した後に、加熱は続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0Kg/cm2)になるまで120分ほどかけながら降圧した。
その後、樹脂温度(液温)の最終温度が約350℃になるようにヒーター温度を調整した。樹脂温度はその状態のまま、槽内を真空装置で400torrの減圧下に30分維持した。その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドを窒素気流中で乾燥し水分含有率を約0.1質量%未満に調整してから、ポリアミドの上記(1)〜(4)の測定結果を表1に示す。
【0101】
[製造例2〜11]
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、表1に記載の化合物と量を用いたことと、樹脂温度の最終温度を表1に記載の温度にしたこと以外は、製造例1に記載した方法と同様の方法により、ポリアミドの重合を行った(「熱溶融重合法」)。
得られたポリアミドを窒素気流中で乾燥し水分含有率を約0.1質量%未満に調整してから、ポリアミドの上記(1)〜(4)の測定結果を表1に示す。
【0102】
[比較製造例1]
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、表2に記載の化合物と量を用いたことと、樹脂温度の最終温度を表2に記載の温度にしたこと以外は、製造例1に記載した方法と同様の方法により、ポリアミドの重合を行った(「熱溶融重合法」)。
比較製造例1においては、重合途中で、オートクレーブ内で固化したため、ストランドでの取り出しができなかったので、冷却後、塊で取り出し、粉砕機にて粉砕して、ペレットくらいの大きさにした。
得られたポリアミドを窒素気流中で乾燥し水分含有率を約0.1質量%未満に調整してから、ポリアミドの上記(1)〜(4)の測定結果を表2に示す。
【0103】
[比較製造例2〜7]
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、表2に記載の化合物と量を用いたことと、樹脂温度の最終温度を表2に記載の温度にしたこと以外は、製造例1に記載した方法と同様の方法により、ポリアミドの重合を行った(「熱溶融重合法」)。
得られたポリアミドを窒素気流中で乾燥し水分含有率を約0.1質量%未満に調整してから、ポリアミドの上記(1)〜(4)の測定結果を表2示す。
【0104】
[製造例12]
モンモリロナイト(未処理品)100gを水2Lに混合分散し、これに28.1gの12−アミノドデカン酸と12mLの濃塩酸を加え、80℃で60分間攪拌した。ブフナーロートを用いて、水で充分洗浄しながら、吸引濾過を行った後、80℃で48時間真空乾燥を行い、イオン置換されたモンモリロナイトの乾燥固体塊を得た。
この塊状の複合物を粉砕機で1〜10μm程度に細粒化し、12−アミノドデカン酸のアンモニウム塩が粘土鉱物の層間にインターカレートした粉体を得た(以下、この粉体を「モンモリロナイト(処理品)」と略記する。)。
【0105】
[実施例1]
製造例1のポリアミドを窒素気流中で乾燥し水分含有率を約0.1質量%未満に調整して用いた。2軸押出機(東芝機械(株)製TEM35、L/D=47.6(D=37mmφ)、設定温度融点Tm2+20℃(この場合、327+20=347℃)、スクリュー回転数300rpm)を用いて、押出し機最上流部に設けられたトップフィード口より、製造例1のポリアミド100質量部に対して、モンモリロナイト(処理品)、水、及びε−CPLを予め表1に示す割合(質量部)でブレンドしたものを供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物の上記(5)〜(9)の測定結果を表1に示す。
【0106】
[実施例2]
モンモリロナイト(処理品)、水、及びε−CPLの配合量を表1に記載の配合量にした以外は、実施例1と同様の方法により実施して、ポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物の上記(5)〜(9)の測定結果を表1に示す。
【0107】
[実施例3]
水及びε−CPLを添加しない以外は、実施例2と同様の方法により実施して、ポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物の上記(5)〜(9)の測定結果を表1に示す。
【0108】
[実施例4]
モンモリロナイト(処理品)に代えてモンモリロナイト(未処理品)を添加した以外は、実施例3と同様の方法により実施して、ポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物の上記(5)〜(9)の測定結果を表1に示す。
【0109】
[実施例5〜14]
製造例1のポリアミドに代えて製造例2〜11のポリアミドを用いる以外は、実施例2と同様の方法によりに実施して、ポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物の上記(5)〜(9)の測定結果を表1に示す。
【0110】
[製造例1]
製造例1のポリアミドペレットの上記(5)〜(9)の測定結果を表1に示す。
【0111】
[比較例1]
製造例1のポリアミドに代えて比較製造例1のポリアミドを用いる以外は、実施例2と同様の方法により実施しようとしたが、押出状態が非常に不安定で、ポリアミド組成物を得ることができなかった。
【0112】
[比較例3〜8]
製造例1のポリアミドに代えて比較製造例2〜7のポリアミドを用いる以外は、実施例2と同様の方法により実施して、ポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物の上記(5)〜(9)の測定結果を表2に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
表1の結果から、(A)ポリアミドと、(B)層状珪酸塩と、を含有する実施例1〜14のポリアミド組成物は、剛性、靭性、耐熱性、低吸水性、及び低そり性の全ての点で特に優れた特性を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、靭性が高く、かつ、剛性、耐熱性、低吸水性、及び低そり性に優れるポリアミド組成物を提供することができる。
本発明のポリアミド組成物は、自動車用、機械工業用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、並びに日用及び家庭品用など各種部品の成形材料として好適に使用することができるなど、産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンと、を重合させたポリアミドと、
(B)層状珪酸塩と、を含有するポリアミド組成物。
【請求項2】
前記主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが、2−メチルペンタメチレンジアミンである、請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
前記脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、請求項1又は2に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
前記脂環族ジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド組成物。
【請求項5】
前記ポリアミドが、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させたポリアミドである、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド組成物。
【請求項6】
前記(A)ポリアミドの融点が、270〜350℃である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド組成物。
【請求項7】
前記(A)ポリアミドにおけるトランス異性体比率が50〜85%である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド組成物。
【請求項8】
前記(B)層状珪酸塩が、層間にオニウムイオンを有する有機物を挿入した層状珪酸塩である、請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド組成物。
【請求項9】
前記(A)ポリアミド100質量部に対して、前記(B)層状珪酸塩0.1〜30質量部を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載のポリアミド組成物。
【請求項10】
(C)分散媒をさらに配合して製造された、請求項1〜9のいずれかに記載のポリアミド組成物。
【請求項11】
前記(C)分散媒が、水及び/又はε−カプロラクタムである、請求項10に記載のポリアミド組成物。
【請求項12】
前記(B)層状珪酸塩100質量部に対して、前記(C)分散媒0.1〜500質量部を含有する、請求項10又は11に記載のポリアミド組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のポリアミド組成物を含む成形品。

【公開番号】特開2011−16913(P2011−16913A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162111(P2009−162111)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】