説明

ポリアミノ酸誘導体及びケラチン繊維のトリートメント用組成物におけるそれらの用途

【課題】ケラチン繊維、特に毛髪を強くし手入れするための化粧品用組成物および化粧方法の提供。
【解決手段】 次の一般式(I):


[上式中:Xは-NH-であり;Rは、特に水素原子又はC-C40アルキル基を表し;Rは水素原子を表し;Rは-CHを表し;nはポリアミノ酸誘導体の分子量が200〜200000になるような1を越える数である]の少なくとも1つのポリアミノ酸を配合した化粧品用組成物およびこれを用いてケラチン繊維をトリートメントする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維、特に毛髪を強くし手入れするための化粧品用組成物におけるポリアミノ酸誘導体の使用に関する。
また、本発明は、ケラチン繊維を強くし手入れするための「直接的」又は「インシトゥー」トリートメント方法に関する。
【0002】
「直接的方法」という表現は、化粧品的に許容可能なビヒクルに、少なくとも1つの予め合成されたポリアミノ酸誘導体を含有せしめてなる化粧品用組成物を繊維に適用することによる繊維のトリートメントを意味する。
「インシトゥー方法」という表現は、繊維中でポリアミノ酸誘導体を生成する先駆物質を使用する繊維のトリートメントを意味する。
【背景技術】
【0003】
多様な種類のポリアミノ酸が開示されており、それらの用途はよく知られていて、特にその保湿特性のために幅広く使用されている。
この点について、日本国特許出願第07/041467号には、本質的にシステインからなる高分子量のポリアミノ酸クラス、並びにこれらのポリアミノ酸の調製方法が開示されている。
チオール及び/又はジスルフィド官能基の存在により特徴付けられるポリアミノ酸クラスは、日本国特許出願第06/248072号に開示されている。これらのポリアミノ酸はケラチンのチオール結合と反応し、ジスルフィド架橋を形成し、これにより毛髪の光沢と着色性を増大させることができる。
【0004】
他のクラスのポリアミノ酸は、日本国特許出願第04/198114号に開示されおり、これらの化合物は、中性及び酸性鎖を含有するアミノ酸から本質的になり、一般的に保湿剤として使用されている。
最後に、仏国特許出願第2533209号には、8〜24の炭素原子を有する疎水性鎖と親水性ペプチド鎖からなる両親媒性のリポペプチド、並びに非混和性媒体用の乳化剤としての又は液晶製造のための用途が開示されている。
【特許文献1】特開昭52−76441号公報
【特許文献2】特開昭64−61412号公報
【特許文献3】特開昭63−264597号公報
【特許文献4】特開平3−294298号公報
【特許文献5】特開平2−142712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
様々なクラスのポリアミノ酸について数多くの研究を行ったところ、驚くべきことに、また予期しないことに、特定のクラスのポリアミノ酸誘導体が、ケラチン繊維を強くする点においてかなりの性質を持っており、それが、ケラチン繊維の表面にポリペプチド物質のかなりの付着が形成されることによることを見出した。
さらに、毛髪用の化粧品用組成物にこれらのポリアミノ酸誘導体を使用すると、毛髪の保持力とボリュームを改善することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
よって、本発明の主題は、次の一般式(I):

{上式中:
Xは-O-、-S-又は-NR-であり

(i)水素原子、好ましくは
(ii)N、O又はSiから選択される少なくとも1つのヘテロ原子が挿入されていてもよく、及び/又はr'及びr''が同一でも異なっていてもよく、水素原子又はC1-Cアルキル基である少なくとも1つの次の式:

の基、又はヒドロキシル基で置換されていてもよい、直鎖状又は分枝状で飽和又は不飽和のC-C40アルキル基
(iii)sが0〜4である次の式:

の基
(iv)mが3〜5である次の式:

の基、を表し、
は水素原子、又はC-Cアルキル、-CH、-CHp-OH、-CHOH、-CHOH-CH又は-(CH)-NH基で、tが3〜5であるものを表し、
は水素原子又はC-Cアルキル基を表し、
は水素原子、-NH-、-OH、-SH、-CHOHCH、-CONH、次の各式:

の基、-C又は-Cp-OHを表し、
nはポリアミノ酸誘導体の分子量が200〜200000になるような1を越える平均数であり、繰り返し単位が同じ誘導体に対して同一であるか又は異なるものであって、その場合R及び/又はRがこれらの基に与えられる他の意味の少なくとも1つをとる}
の少なくとも1つのポリアミノ酸誘導体、又は該ポリアミノ酸誘導体の塩の、ケラチン繊維を強くするための化粧品用組成物における使用にある。
【0007】
好ましい一実施態様において、R基は水素原子以外である。
式(I)のポリアミノ酸は、ある場合には公知で、他の場合には新規である。
【0008】
それらの調製方法は、次の式:

[上式中:
及びRは上述した式(I)で付与されたものと同様の意味を有する]
の少なくとも1つのN-カルボキシ無水物(carboxyanhydride)と、次の式(III):
-XH (III)
[上式中、R及びXは上述した式(I)で付与されたものと同様の意味を有する]
の求核性化合物の間の重縮合反応からなる。
【0009】
式(II)のN-カルボキシ無水物は、D及び/又はL-α-アミノ酸をホスゲンと、不活性溶媒、例えばジオキサン又はテトラヒドロフラン(THF)中で反応させることによる、通常の方法により調製される。
【0010】
重縮合反応は、一般的に、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロエタン、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、脂肪族エーテル類、例えばエチルエーテル、イソプロピルエーテル及びtert-ブチルメチルエーテル、及び環状エーテル類、例えばテトラヒドロフラン及びジオキサンから選択される不活性溶媒中で、約0℃〜120℃の温度で行われる。しかしながら、反応溶媒は、場合によっては水であってもよい。
【0011】
程度の差はあれ顕著なCOの放出が反応開始から観察される。
場合によっては反応媒体を冷却した後、溶媒を蒸発させ、得られたポリアミノ酸をついで真空下で乾燥させる。
得られた純度によっては、得られた粗生成物の結晶化又は沈殿法等の精製工程を実施することができる。
上述したポリアミノ酸誘導体の調製方法において、求核性化合物は重縮合反応の開始剤として作用する。
好ましい一実施態様では、式(III)の求核性化合物のモル量は、式(II)のN-カルボキシ無水物1モル当たり、1/2〜1/3000、好ましくは1/5〜1/2000である。
【0012】
式(II)のN-カルボキシ無水物としては、特に:
− グリシン-N-カルボキシ無水物、
− サルコシン-N-カルボキシ無水物、
− スレオニン-N-カルボキシ無水物、
− セリン-N-カルボキシ無水物、
− バリン-N-カルボキシ無水物、
− ノルバリン-N-カルボキシ無水物、
− イソロイシン-N-カルボキシ無水物、
− ロイシン-N-カルボキシ無水物、
− ノルロイシン-N-カルボキシ無水物、
− リジン-N-カルボキシ無水物、
− フェニルアラニン-N-カルボキシ無水物、
− チロシン-N-カルボキシ無水物、及び
保護された形態であってもよい上述したN-カルボキシ無水物類を挙げることができる。
【0013】
式(III)の求核性化合物としては、特にアミン類、例えば2-アミノオクタデカン-1,3-ジオール、2-オクチルドデシルアミン、ヘキシルアミン、オレイルアミン、グルカミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン及びグルタミン、アルコキシドの形態のアルコール類、例えばナトリウムメトキシド、及びチオール類、例えばシステインを挙げることができる。
【0014】
本発明の組成物は種々の形態にすることができ、組成物の全重量に対して一般的には0.001〜30重量%、好ましくは0.01〜15重量%の割合で、ポリアミノ酸誘導体を含有することができる。
本発明の組成物の第1の実施態様において、それらはケラチン繊維を強化する
ためのシャンプー、又はシャンプー前又は後用の手入れ用組成物の形態である。
【0015】
これらの組成物の化粧品的に許容可能なビヒクルは、エタノール又はイソプロパノール等のアルコールを含有する水性アルコール媒体又は水性媒体のいずれかである。
【0016】
シャンプーの形態の組成物は、少なくとも1つのアニオン性、非イオン性、双性、両性又はカチオン性の界面活性剤をさらに含有する。
界面活性剤の割合は、組成物の全重量に対して一般的に0.01〜50重量%、好ましくは0.05〜30重量%である。
【0017】
非イオン性の界面活性剤が使用される場合、それは、組成物の全重量に対して一般的に0.1〜40重量%、好ましくは1〜20重量%の割合で使用される。
カチオン性界面活性剤の洗浄力は弱いため、それらはより好ましくは、シャンプー前又は後用の手入れ用組成物に使用される。
この実施態様の組成物に使用可能な界面活性剤は従来からよく知られており、特に仏国特許第2728163号に記載されている。
【0018】
これらのシャンプー前又は後用の手入れ用組成物は、さらにコンディショナーを含有することもできる。
本発明で使用可能なコンディショナーとしては、特に水素化又は非水素化天然油、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状、環状又は脂肪族の炭化水素ベースの合成油、例えばポリ-α-オレフィン類、特にポリデセン類及びポリイソブテン類、可溶性又は不溶性、有機変性した又はしていない揮発性又は非揮発性のシリコーン油、フッ化油、過フッ化油、脂肪エステル類、多価アルコール類及びグリセリド類を挙げることができる。
合成又は天然ロウ、シリコーンガム及び樹脂、第4級化又は非第4級化タンパク質又はタンパク質加水分解物、又はこれら種々の薬剤の混合物を、コンディショナーとしてさらに使用することができる。
【0019】
この第1の実施態様の組成物は、増粘剤、カチオン性、アニオン性、非イオン性又は両性型のポリマー、サンスクリーン、セラミド類、α-ヒドロキシ酸、防腐剤、抗菌剤、抗フケ剤、真珠光沢剤、染料、香料、電解質又は懸濁剤から選択される少なくとも1つの化粧品的又は皮膚科学的に許容可能な添加剤をさらに含有することができる。
添加剤は、組成物の全重量に対して、一般的に0.01〜20重量%、好ましくは0.02〜10重量%の割合で本発明の組成物中に存在する。
【0020】
本発明の組成物のpHは、一般的に7未満、好ましくは3〜4.5である。
【0021】
本発明の組成物の第2の実施態様において、それらは無水又は水性型のムースを形成する組成物の形態である。
ムース組成物が無水型である場合、化粧品的に許容可能なビヒクルとして脂肪相、発泡剤及び噴霧剤を含有する。
【0022】
使用可能な油及びロウとしては、特に、植物、動物、鉱物又は合成由来のものを挙げることができる。これらの油及びロウは従来からよく知られており、特に仏国特許第2668927号に記載されている。
化粧品用の油又は油とロウの混合物は、脂肪相の全重量に対して、一般的に20〜99重量%、好ましくは25〜85重量%の割合で存在する。
【0023】
ムース組成物が水性型である場合、化粧品的に許容可能なビヒクルとして水性溶液又は水性アルコール混合物、発泡剤及び噴霧剤を含有する。
水性アルコール混合物には、例えばC-Cアルコール、例えばエタノール又はイソプロパノールが含まれる。
水性アルコール溶液が使用される場合、アルコールの割合は組成物の全重量に対して約50%を越えず、好ましくは30重量%未満である。
【0024】
使用可能な発泡剤又は界面活性剤としては、とりわけアニオン性、非イオン性、双性、両性及びカチオン性の界面活性剤を挙げることができる。また、仏国特許出願第82/07996号に記載されているもの等のカチオン性又はアニオン性ポリマー、又は仏国特許出願第96/02125号に記載されているようなカチオン性及び両性ポリマーの組合を挙げることもできる。
発泡剤の割合は、組成物の全重量に対して0.05〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%、特に0.2〜5重量%とすることができる。
【0025】
水性型のムース組成物は、組成物の全重量に対して0.01〜16重量%の割合で可塑剤を含有することができる。
使用可能な可塑剤はよく知られており、特に仏国特許第2719995号に記載されている。
【0026】
ムース組成物に添加可能な成分としては、組成物自体又は毛髪を着色する機能を有する染料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、pH調節剤、香料、ビタミン類、植物及び動物からの抽出物、シリコーン類、サンスクリーン及びケラチン繊維をトリートメントするための他の薬剤を挙げることができる。
【0027】
これらのムース組成物に好ましく使用される噴霧剤としては、例えば、圧縮空気、二酸化炭素、一酸化二窒素、窒素、ジメチルエーテル、液化可能な脂肪族炭化水素、例えばプロパン、イソブタンを含むブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン及びそれらの混合物、クロロヒドロカーボン及び/又はフルオロヒドロカーボン又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0028】
クロロヒドロカーボン及び/又はフルオロヒドロカーボンとしては、モノクロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、モノクロロジフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン及びジクロロテトラフルオロエタン、並びにそれらの混合物、特にモノクロロジフルオロメタン/モノクロロジフルオロエタン(40/60)の混合物、及びジクロロジフルオロメタン/ジクロロテトラフルオロエタン(60/40)の混合物を挙げることができる。
【0029】
使用される噴霧剤の割合は重要ではないが、それにより、生じる泡の密度が決定される。噴霧剤の割合を高くすればする程、泡の密度が低くなる。一般的に、泡の密度は約0.02g/cm〜約0.20g/cm、好ましくは約0.05g/cm〜約0.15g/cmの範囲である。
噴霧剤の割合は、エアゾール組成物の全重量に対して、一般的に1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%である。
エアゾール容器の最初の圧力は、一般的に約1〜4バール(10〜4x10Pa)である。
エアゾールフォームのバルブシステム及び容器の種類は、この実施態様において本発明を行うのに適切なものである。
【0030】
本発明の組成物の第3の実施態様において、それらは水中油型又は油中水型のエマルション又は分散液の形態、特にマイクロエマルション又はゲルの形態である。
水性相は、組成物の全重量に対して、水中油型エマルションでは60〜90重量%、油中水型エマルションでは30〜60重量%の割合で一般的に存在する。
脂肪相は、組成物の全重量に対して、水中油型エマルションでは5〜25重量%、油中水型エマルションでは30〜50重量%の割合で一般的に存在する。
脂肪相は、少なくとも1つの化粧品用油、又は少なくとも1つの油と少なくとも1つのロウとの混合物からなり、これらは仏国特許第2668927号に記載されているような鉱物、植物、動物又は合成由来のものである。
【0031】
水中油型エマルションの形態の組成物に使用可能な乳化剤としては、とりわけ硫酸ラウリル、トリエタノールアミンステアラート又は脂肪アルコール類、例えばステアリルアルコール又はセチルアルコールを挙げることができる。
油中水型エマルションの形態の組成物に使用可能な乳化剤としては、とりわけ、グリセロールエステル類、エトキシル化アルコール類、ラノリン、ラノリンアルコール、コレステロール及び種々のソルビタンオレアートを挙げることができる。
乳化剤は、一般的に、組成物の全重量に対して1〜10重量%の割合で存在する。
【0032】
この実施態様において、組成物は、好ましくは透明なマイクロエマルション又はゲルであり、過度の乳化剤、及び少なくとも1つの低粘度の鉱物性油を含有する。
ゲル組成物において使用可能な鉱物性油は短い炭素ベース鎖を含有し、組成物の全重量に対して15〜20重量%の割合で存在する。
ゲルの形態の組成物用の乳化剤としては、特にポリオキシエチル化エーテル及びオレイルアルコール、又はそのホスホン酸エステル、ポリエトキシル化ラウリルアルコール、ポリエトキシル化オレイルアルコール、オキシエチル化セチルアルコール及び種々の脂肪酸のポリオキシエチレングリコールを挙げることができる。
またゲルの形態の組成物は、カップリング剤、例えば2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、多価アルコール、例えばソルビトール、ポリエチレングリコール、ラノリン又はラノリンアルコール、並びに防腐剤をさらに含有することができる。
【0033】
本発明の組成物の第4の実施態様では、それらはローションの形態である。
これらのローション用のビヒクルは、エタノール又はイソプロパノール等のアルコールと脱イオン水を、実質的に等量含有する水性アルコール溶液、又は水溶液である。
また、ローションはイソプロピルエステル及びポリアルキレングリコール又はそれらのオレアートから選択される少なくとも1つの物質をさらに含有する。
【0034】
本発明の組成物の最後の実施態様において、それらはラッカー、特に毛髪用のエアゾールラッカーの形態である。
ラッカーに一般に使用される化粧品的に許容可能なビヒクルは、アルコール、例えばエタノール又はイソプロパノール、又は水性アルコール混合物からなる。
この特定の実施態様におけるラッカーは、少なくとも1つの皮膜形成樹脂、少なくとも1つの可塑剤及び噴霧剤をさらに含有する。
【0035】
ラッカーに使用される皮膜形成樹脂は従来からよく知られているものであり、特に仏国特許第2684874号に記載されているものを挙げることができ、それらは組成物の全重量に対して3〜6重量%の割合で存在する。
好ましい可塑剤としては、特にグリコールエーテル類、ベンジルアルコール、トリエチルシトラート、1,3-ブチレングリコール及びプロピレンカーボナートを挙げることができ、それらは組成物の全重量に対してX%〜Y%の間の割合で存在する。
ラッカー用の噴霧剤は、ムースの形態の組成物の調製において一覧した少なくとも1つの薬剤から選択することができる。
この実施態様のラッカーは、他の従来からの成分、例えば腐敗阻害剤、柔軟剤、香料、シリコーン類、サンスクリーン、染料、防腐剤、消泡剤及びビタミン類をさらに含有することができる。
【0036】
適切な容器に、組成物すなわち「液体」を入れた後、容器に適切なバルブ及び散布システムを取り付ける。
使用可能なバルブとしては、特に仏国特許第2382637号に記載されているものを挙げることができる。
【0037】
また、本発明の主題は、「直接的」トリートメント方法として上述された、ケラチン繊維の修復手入れ及びトリートメント方法にあり、この方法は、少なくとも1つのポリアミノ酸誘導体を含有する上述した組成物をケラチン繊維に適用し、組成物を放置してケラチン繊維に作用させ、場合によっては続いてケラチン繊維をすすぐことからなる。
【0038】
「インシトゥー」トリートメント方法として上述されたケラチン繊維の修復手入れ及びトリートメント方法の特に好ましい実施態様においては、式(I)のポリアミノ酸誘導体が「インシトゥー」で、すなわちポリアミノ酸誘導体を生成する先駆物質により、トリートメントされるケラチン繊維上で直接形成される。
これらの先駆物質は、一方では式(II)のN-カルボキシ無水物であり、他方では式(III)の求核性化合物であり、トリートメントを行うために、2つの部材に包装された形態になっている。
第1部材は固体形状又は化粧品的に許容可能なビヒクルに希釈された少なくとも1つの式(II)のN-カルボキシ無水物を収容し、第2部材は固体形状又は化粧品的に許容可能なビヒクルに希釈された式(III)の求核性化合物を収容している。
【0039】
式(II)のN-カルボキシ無水物用の化粧品的に許容可能なビヒクルは、有機溶媒、水又はそれらの混合物である。式(III)の求核性化合物用の化粧品的に許容可能なビヒクルは好ましくは水である。
【0040】
「インシトゥー」トリートメント方法は、第1段階において、予め湿らせておいてもよい毛髪に、液体媒体を使用して任意に希釈した後に、パッケージの第1部材を適用し、第2段階においても、任意に希釈、特に水ベースで希釈した後に、パッケージの第2部材を適用することからなる。
この方法において、所望するならば、2つの部材を予め混合しておき、得られた溶液を毛髪に直接適用することもできる。
ついで、毛髪を擦りあわせ、水性媒体中で、ポリアミノ酸誘導体として先駆物質を重縮合させる。一般的に、重縮合は約2〜30分後には完了する。
この時間後に、毛髪をすすぎ、場合によってはシャンプーで洗浄する。
【0041】
ポリアミノ酸誘導体の調製例、及び化粧品用組成物及び毛髪のトリートメント方法の具体例を以下に例証する。
実施例1
が次の式:

のものであり、X=-NH-、R=H、R=-CH及びn=14.2である式(I)のポリアミノ酸の調製
46g(0.4モル)のサルコシン-N-カルボキシ無水物を、窒素雰囲気下で、コンデンサー、温度計、窒素引入口、付加的な漏斗及び攪拌機を具備する1リットルの反応器において、250cmのトルエンに懸濁する。ついで、8.2g(0.027モル)の(D/L、エリトロ-トレオ)2-アミノオクタデカン-1,3-ジオールと250cmのトルエンの懸濁液を分割して添加する。添加し終えてから、反応混合物を80℃で約3時間保持する。室温まで冷却し、200cmのエタノール(98℃)を添加しで媒体を溶解させる。
減圧下で溶媒を蒸発させ、真空下で乾燥させた後、34.5gの褐色に着色したパウダーが得られた。
「n」インデクスをNMRにより決定した。
上述した同様の手順に従い、(DL)-2-アミノオクタデカン-1,3-ジオールの割合を変えることにより、同じ構造を有するが、次の「n」インデクスを有するポリアミノ酸を得た:
実施例1(a):n=9.8
実施例1(b):n=7.6
【0042】
実施例2
が次の式:

のものであり、X=-NH-、R=H、R=-CH及びn=14である式(I)のポリアミノ酸の調製
46g(0.4モル)のサルコシン-N-カルボキシ無水物を、コンデンサー、温度計、窒素引入口、付加的な漏斗及び攪拌機を具備する1リットルの反応器において、500cmのトルエンに懸濁する。ついで、8.1g(0.027モル)の2-オクチルドデシルアミンを滴下する。添加し終えてから、混合物を80℃で約2時間保持する。室温まで冷却し、50cmのエタノール(95℃)を添加する。減圧下で溶媒を蒸発させ、真空下で乾燥させた後、36.7gの褐色に着色したパウダーが得られた。
「n」インデクスをNMRにより決定した。
上述した同様の手順に従い、2-オクチルドデシルアミンの割合を変えることにより、同じ構造を有するが、次の「n」インデクスを有するポリアミノ酸をた:
実施例2(a):n=9.6
実施例2(b):n=7.4
【0043】
実施例3
=C1633、X=-NH-、R=H、R=-CH及びn=7.2である式(I)のポリアミノ酸の調製
サルコシン-N-カルボキシ無水物とヘキサデシルアミン12g(0.05モル)を反応させた以外は、実施例2に記載されたものと同様の手順に従い、このポリアミノ酸を得る。
溶媒を蒸発させ、真空下で乾燥させた後、40gのパウダーが得られた。
ヘキサデシルアミンの割合を変えることにより、同じ構造を有するが、次の「n」インデクスを有するポリアミノ酸を得た:
実施例3(a):n=9.2
実施例3(b):n=12.5
【0044】
実施例4
=C17-CH=CH-C16、X=-NH-、R=H、R=-CH及びn=7.4である式(I)のポリアミノ酸誘導体の調製
サルコシン-N-カルボキシ無水物とオレイルアミン13g(0.05モル)を反応させた以外は、実施例2に記載されたものと同様の手順に従い、このポリアミノ酸を得る。
溶媒を蒸発させ、真空下で乾燥させた後、42gのパウダーが得られた。
オレイルアミンの割合を変えることにより、同じ構造を有するが、次の「n」インデクスを有するポリアミノ酸誘導体を得た:
実施例4(a):n=10.5
実施例4(b):n=13.2
【0045】
実施例5
が次の式:

のものであり、X=-NH-、R=H、R=-CH及びn=12.1である式(I)のポリアミノ酸の調製
10g(0.08モル)のサルコシン-N-カルボキシ無水物を、攪拌しつつ500mlの円錐フラスコに入れ、続いて100cmの蒸留水(pH6.7)を添加し、1回で1g(0.006モル)のリジンを添加する。
かなりのCOが発生し、混合物を室温で約30分間攪拌し続ける。減圧下で水分を蒸発させ、真空下で乾燥させた後、6.7gの褐色に着色したパウダーが得られた。
「n」インデクスをNMRにより決定した。
上述した同様の手順に従い、リジンの割合を変えることにより、同じ構造を有するが、次の「n」インデクスを有するポリアミノ酸誘導体を得た:
実施例5(a):n=50
実施例5(b):n=25
実施例5(c):n=6
実施例5(d):n=3
【0046】
実施例6
が次の式:

のものであり、X=S、R=H、R=-CH及びn=13(理論的インデクス)である式(I)のポリアミノ酸の調製
リジンをこれに相当するモル量のシステインと換えた以外は、実施例5に記載されたものと同様の手順に従い、このポリアミノ酸を得る。
【0047】
実施例7
が次の式:

のものであり、X=-NH-、R=H、R=-CH及びn=12(理論的インデクス)である式(I)のポリアミノ酸の調製
リジンをこれに相当するモル量のアルギニンと換えた以外は、実施例5に記載されたものと同様の手順に従い、このポリアミノ酸を得る。
【0048】
実施例8
が次の式:

のものであり、X=-NH-、R=H、R=-CH及びn=12(理論的インデクス)である式(I)のポリアミノ酸の調製
リジンをこれに相当するモル量のヒスチジンと換えた以外は、実施例5に記載されたものと同様の手順に従い、このポリアミノ酸を得る。
【0049】
実施例9
が次の式:

のものであり、X=-NH-、R=H、R=-CH及びn=13(理論的インデクス)である式(I)のポリアミノ酸の調製
リジンをこれに相当するモル量のグルタミンと換えた以外は、実施例5に記載されたものと同様の手順に従い、このポリアミノ酸を得る。
【0050】
実施例10
が次の式:

のものであり、X=-NH-、R=H、R=-CH及びn=12(理論的インデクス)である式(I)のポリアミノ酸の調製
リジンをこれに相当するモル量のグルカミンと換えた以外は、実施例5に記載されたものと同様の手順に従い、このポリアミノ酸を得る。
【0051】
化粧品用組成物の実施例
次の毛髪の手入れ用及び毛髪のトリートメント用組成物を調製した:
実施例11:シャンプー
− ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(28%A.M.) 75g
− 「エンピラン(Empilan)CIS(登録商標)」の
名称でアルブライト&ウイルソン社(Albrig
ht & Wilson)から販売されているヤシ酸モ
ノイソプロパノールアミド 1g
− 実施例5のポリアミノ酸 1g
− 水 全体を100gにする量
このようにして調製されたシャンプーは澄んだ外観をしている。
【0052】
実施例12:すすがれる毛髪用コンディショナー
− 「レオクワット(Rewoquat)W75PG(登録商
標)」の名称でウィトコ社(Witco)から販売され
ている1-メチル-2-獣脂-3-スルファミドエ
チルイミダゾリウム-メトスルファート/プロ 2gA.M.
ペングリコール(75/25)
− 実施例5のポリアミノ酸 0.5g
− セチルアルコールとセチルステアリルアルコ
ールのオキシエチレン化混合物 3g
− 防腐剤、香料 適量
− 自発的pH5.2
− 水 全体を100gにする量
【0053】
実施例13:シャンプー
− ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(28%A.M.) 60g
− ココイルベタイン 9g
− 実施例1のポリアミノ酸 0.5g
− 防腐剤、香料 適量
− HCl pHを6にする量
− 水 全体を100gにする量
このようにして調製されたシャンプーは乳白色である。
【0054】
実施例14:すすがれるもつれをほぐすためのローション
− トーホー社(Toho)から「カチナル(Catinal)D
C50(登録商標)」販売されている水に80%
のベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド
が入ったもの/イソプロパノールの混合物(1
5/85) 0.5gA.M.
− 実施例4のポリアミノ酸 0.1g
− 防腐剤、香料 適量
− NaOH pHを5.5にする量
− 水 全体を100gにする量
【0055】
以下の強化トリートメントの実施例を頭髪において行った(「インシトゥー」)。
実施例15:2つの部材に入ったコンディショナーを使用する毛髪のトリートメント方法
まず、ソケタール(Soketal)(登録商標)(D,L-α,β-イソプロピリデングリセロール)又はジメチルエチルイソルバイド(sorbide)で10%に希釈したサルコシン-N-カルボキシ無水物溶液を含有する第1のコンディショナーを予め湿らせておいた毛髪に適用する。このようにして適用された溶液を、完全に毛髪に含浸させる。次に、水で4%に希釈したL-リジン溶液を含有する第2のコンディショナーを適用する。15分間放置して作用させた後、毛髪を温水ですすぎ、シャンプーして、最後に乾燥させる。
【0056】
実施例16:2つの部材に入った固形コンディショナーを使用する毛髪のトリートメント方法
まず、固体形態のサルコシン-N-カルボキシ無水物を予め湿らせておいた毛髪に適用し、ついで約5分間マッサージする。次に、別個に包装された、水で4%に希釈したL-リジン溶液を毛髪に添加する。
約15分間放置して作用させた後、毛髪を温水ですすぎ、シャンプーして乾燥させる。
実施例15又は16で処理された毛髪は、保持力及びボリュームにおいてかなりの改善が見られた。
【0057】
比較テスト
ケラチン繊維強化特性の研究
ナチュラルな毛髪又は脱色した毛髪の強化性を「インシトゥー」方法でトリートメントした後に評価した。
一方では0.6gで15cmのナチュラルなダークチェスナット色の毛髪の束を、他方では脱色した毛髪の束を、まず37℃のリン酸バッファーに含浸し、水ですすぎ、ついでシャンプーし、再度すすいだ。
得られた毛髪の束の一部を対照体とし、残りのものを、37℃のリン酸バッファーにおいて、0.1gのリジンと1gのサルコシン-N-カルボキシ無水物(サルコシンNCA)を混合することにより、使用時に調製された溶液を使用してトリートメントした。重縮合反応の発生の約30分後、毛髪を水ですすぎ、シャンプーした後、再度すすいだ。
【0058】
このようにして処理された毛髪の束の強度を、可撓性振子テスト(flexibility pendulum test)により定量した。この可撓性振子テストは、10mm長さの39の毛髪サンプルを曲げる、47gのバラストおもりを有する振子の振動数を測定することからなる。毛髪の強化特性は振子の振動数に反比例する。特に、毛髪の強度がいくらか増加すると、振子の振動数が減少することに現れる。
【0059】
25℃、相対湿度45%におけるナチュラルな又は脱色した毛髪の束の3つのサンプルの振動数の測定結果を次の表1に示す。

【0060】
処理を行う前のナチュラルな毛髪と脱色した毛髪との間に見られる振動数の違いは、脱色により毛髪の剛性がかなり増加しているという事実により、本質的に説明することができる。
上述した表1の結果には、ナチュラルな毛髪で6%未満、脱色した毛髪で3%未満の振子の振動数が減少することが示されている。
このように「インシトゥー」トリートメントにより、重縮合反応後に、ナチュラル及び脱色した毛髪に固有の剛性がかなり増加する。毛髪の束をシャンプーしてすすいだ後でも、これらの特性は保持され、常に可視できる程である。
【0061】
ケラチン繊維におけるポリリジン-サルコシンの付着度合いの定量
ポリリジン-サルコシンの付着度合いを、「直接的」トリートメント又は「インシトゥー」トリートメントの後の、ナチュラル又は脱色した毛髪の束の表面に残ったサルコシンの量をアッセイすることにより測定した。
サルコシンの付着度合いの定量は、トリートメントされた毛髪の束をすすいだ後、及びトリートメントされた毛髪の束をすすいでシャンプーした後に行った。
これらの施術を施した後の毛髪の束を、酸加水分解物にさらし、残ったサルコシンの量をヒタチL8500Aアミノ酸自動分析器を使用して測定した。
【0062】
ナチュラル又は脱色した毛髪のサンプル表面で見出されたサルコシンの量を以下の表2に示す。これらの量は毛髪100g当たりの毛髪に残存するサルコシンのグラムで表している。

【0063】
上述した表2から、トリートメント及びすすぎ後も、かなりのサルコシンが付着していることが見出される。このサルコシン付着物は、続くシャンプーの後でも満足のいく割合で残存している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)次の式(II):

[上式中:
は水素原子、又はC-Cアルキル、-CH、-CHpOH、-CHOH、-CHOH-CH又は-(CH)-NH基で、tが3〜5であるものを表し
は水素原子を表す]
のN-カルボキシ無水物と、
(b)次の式(III):
-XH (III)
[上式中:
XはNHを表し、
は、
(ii)N、O又はSiから選択される少なくとも1つのヘテロ原子が挿入されていてもよく、及び/又はr'及びr''が同一でも異なっていてもよく、水素原子又はC1-Cアルキル基である少なくとも1つの次の式:

の基又はヒドロキシル基で置換されていてもよい、直鎖状又は分枝状で飽和又は不飽和のC-C40アルキル基
(iii)sが0〜4である次の式:

の基で、Rは水素原子、NH、OH、SH、-CHOHCH、-CONH、次の各式:

の基、-C又は-CpOHを表し、
(iv)mが3〜5である次の式:

の基、を表し;又は、式(III)の化合物がシステインである]
の求核性化合物であるポリアミノ酸先駆物質(a)と(b)を、湿らされていてもよいケラチン繊維に同時に又は別個に適用し、該繊維を2〜30分間擦りあわせ、場合によってはすすぐことからなることを特徴とするケラチン繊維のトリートメント方法。
【請求項2】
式(II)のN-カルボキシル無水物が:
− グリシン-N-カルボキシ無水物、
− サルコシン-N-カルボキシ無水物、
− スレオニン-N-カルボキシ無水物、
− セリン-N-カルボキシ無水物、
− バリン-N-カルボキシ無水物、
− ノルバリン-N-カルボキシ無水物、
− イソロイシン-N-カルボキシ無水物、
− ロイシン-N-カルボキシ無水物、
− ノルロイシン-N-カルボキシ無水物、
− リジン-N-カルボキシ無水物、
− フェニルアラニン-N-カルボキシ無水物、
− チロシン-N-カルボキシ無水物、及び
保護された形態であってもよい上述したN-カルボキシ無水物類から選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(III)の求核性化合物としては、アミン類、例えば2-アミノオクタデカン-1,3-ジオール、2-オクチルドデシルアミン、ヘキシルアミン、オレイルアミン、グルカミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン及びグルタミン、アルコキシドの形態のアルコール類、例えばナトリウムメトキシド、及びチオール類、例えばシステインから選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
すすぎ工程の後に、ケラチン繊維をシャンプーで洗浄することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第1部材が固体形状又は化粧品的に許容可能なビヒクルに希釈された請求項1に記載の少なくとも1つの式(II)のN-カルボキシ無水物を収容し、第2部材が固体形状又は化粧品的に許容可能なビヒクルに希釈された請求項1に記載の式(III)の求核性化合物を収容していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法を実施するための二部材からなる包装体。
【請求項6】
式(II)のN-カルボキシ無水物用の化粧品的に許容可能なビヒクルが、有機溶媒、水又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項5に記載の二部材からなる包装体。
【請求項7】
式(III)の求核性化合物用の化粧品的に許容可能なビヒクルが水であることを特徴とする請求項5に記載の二部材からなる包装体。
【請求項8】
二部材の少なくとも1つが、柔軟剤、香料、植物及び動物からの抽出物、セラミド類、シリコーン類、サンスクリーン、染料、抗菌剤、ビタミン類、防腐剤、金属イオン封鎖剤、pH調節剤及びケラチン繊維のトリートメント用の他の活性物質から選択される少なくとも1つの通常の化粧品用成分を含有していることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の二部材からなる包装体。

【公開番号】特開2008−88180(P2008−88180A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288095(P2007−288095)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【分割の表示】特願2004−269993(P2004−269993)の分割
【原出願日】平成11年2月5日(1999.2.5)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】