説明

ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物

【課題】 成形時のバリ発生量が少なく、且つ高流動の優れた成形性を有しながら、機械的強度も優れたポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A) アルコキシシランとの溶融混練による増粘倍率が2.0以上のポリアリーレンサルファイド樹脂20〜60重量%と(B) アルコキシシランとの溶融混練による増粘倍率が1.5以下で、数平均分子量が3000以上7000未満のポリアリーレンサルファイド樹脂80〜40重量%からなるポリアリーレンサルファイド樹脂混合物100重量部に対して、(C) アルコキシシラン化合物0.1〜3重量部、(D) 無機充填剤20〜300重量部を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形時のバリ発生量が少なく、且つ高流動の優れた成形性を有しながら、機械的強度も優れたポリアリーレンサルファイド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンサルファイド(以下PPSと略す場合がある)樹脂に代表されるポリアリーレンサルファイド(以下PASと略す場合がある)樹脂は、高い耐熱性、機械的強度、耐化学薬品性、寸法安定性、難燃性を有していることから、電気・電子機器部品材料、自動車機器部品材料、化学機器部品材料等に広く使用されている。
【0003】
しかしながら、PAS樹脂の欠点として、射出成形時にバリの発生が多いという問題がある。この問題を解決するための従来の方法としては、PAS樹脂に各種アルコキシシラン化合物を添加することが知られている(例えば、特許文献1〜3)。これらPAS樹脂組成物および成形品で、十分に低バリの効果を得るためには、PAS樹脂中にアルコキシシランと反応する部位、官能基が多いことが望ましい。ところが、反応性に富んだPAS樹脂を使用した場合には、アルコキシシラン化合物との反応により溶融粘度が増大し、成形が困難となるため、これら文献で示された方法では、市場の要求を十分満足させるには至っていない。
【0004】
これに対し、反応性の高い低分子量のオリゴマー成分を配合することで、低バリ性と高流動性を両立させることが提案されている(特許文献4)。ところが、これらオリゴマー成分は熱安定性に乏しいため高温の成形加工温度では熱的に不安定であり、発生ガスも多くなるという問題がある。
【特許文献1】特開平1−89208号公報
【特許文献2】特開平9−153383号公報
【特許文献3】特開平7−224224号公報
【特許文献4】特開2001−172500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、成形時のバリ発生量が少なく、且つ高流動の優れた成形性を有しながら、機械的強度も優れたポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、2種類の特定のPAS樹脂を使用し、これにアルコキシシラン化合物及び無機充填剤の夫々特定量を配合した樹脂組成物は、成形時のバリ発生量が少なく、且つ高流動の優れた成形性を有しながら、機械的強度も優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、
(A) アルコキシシランとの溶融混練による増粘倍率が2.0以上のポリアリーレンサルファイド樹脂20〜60重量%
(B) アルコキシシランとの溶融混練による増粘倍率が1.5以下で、数平均分子量が3000以上7000未満のポリアリーレンサルファイド樹脂80〜40重量%
からなるポリアリーレンサルファイド樹脂混合物100重量部に対して、
(C) アルコキシシラン化合物0.1〜3重量部
(D) 無機充填剤20〜300重量部
を配合してなるポリアリーレンサルファイド樹脂組成物である。
【0008】
但し、上記増粘倍率とは、ポリアリーレンサルファイド樹脂99重量%に、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン1重量%を配合し、320℃で溶融混練後の溶融粘度(310℃、ズリ速度1216sec-1)の、溶融混練前のポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度(310℃、ズリ速度1216sec-1)に対する比率である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の構成成分について詳細に説明する。本発明に用いる(A) および(B) 成分としてのPAS樹脂は、主として繰返し単位として-(Ar-S)-(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本発明では一般的に知られている分子構造のPAS樹脂を使用することができる。
【0010】
上記アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基などが挙げられる。PAS樹脂は、上記繰返し単位のみからなるホモポリマーでも良いし、下記の異種繰返し単位を含んだコポリマーが加工性等の点から好ましい場合もある。
【0011】
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いた、p−フェニレンサルファイド基を繰返し単位とするPPSが好ましく用いられる。また、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンサルファイド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp−フェニレンサルファイド基とm−フェニレンサルファイド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p−フェニレンサルファイド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。また、m−フェニレンサルファイド基は5〜30モル%、特に10〜20モル%含むものが共重合体としては好ましい。この場合、成分の繰り返し単位がランダム状のものより、ブロック状に含まれているもの(例えば、特開昭61−14228号公報に記載のもの)が加工性に優れ、且つ耐熱性、機械的物性も優れており、好ましく使用できる。又、これらのPAS樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できる。
【0012】
尚、直鎖状構造のPAS樹脂以外にも、縮重合させさせるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造又は架橋構造を形成させたポリマーも使用できる。
【0013】
本発明で使用される(A) PAS樹脂は、アルコキシシランとの溶融混練によって増粘を生じるPAS樹脂に限定される。即ち、(A) PAS樹脂は、PAS樹脂99重量%に、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン1重量%を配合し、320℃で0.5〜2分間溶融混練後の溶融粘度(310℃、ズリ速度1216sec-1)が、溶融混練前の元のPAS樹脂の溶融粘度(310℃、ズリ速度1216sec-1)の2.0倍以上であるPAS樹脂である。
【0014】
(A) PAS樹脂は、高い増粘倍率(2.0以上)を示すPAS樹脂であればいずれのものでも使用できるが、特に樹脂中の窒素元素の含有量が樹脂1kg当たり0.55gを超え、且つpHが4.5〜6.8のPAS樹脂が、高い増粘倍率を有するため好ましい。窒素元素の含有量が過小の場合、あるいはpHが6.8を超える場合は、PAS樹脂とアルコキシシランとの反応性が不十分となり、バリ抑制効果と機械的強度の向上が十分でなく好ましくない。また、PAS樹脂のpHが4.5未満であると、溶融加工時に腐食性ガスを多く発生させる等の問題点が生ずるため好ましくない。
【0015】
尚、PAS樹脂中の窒素元素の含有量は、微量窒素硫黄分析計等の市販の装置を用いて、通常の手法により測定できる。
【0016】
また、このポリマーのpHの値は、室温(15〜25℃)にて、ポリマー5gとアセトン15ml、及び精製水30mlをフラスコに入れ、振とう機を用いて30分間振とうした後、分液ロートで濾過し、この上澄みのpHをpHメーターで測定した値である。
【0017】
(A) PAS樹脂の窒素元素の含有量の調整方法としては、例えば、重合系内のスラリーpHを制御することによって調整できる。一例を挙げると、前段重合開始時の系内のpHが12を超えるように設定し、重合を開始することにより樹脂1kg当たり0.55gを超える窒素元素含有量のPAS樹脂を得ることができる。尚、窒素元素の含有量の上限は特に限定されないが、多くなりすぎると射出成形時の発生ガスが増大し、モールドデポジットが多くなるという問題が生じるので、一般的に樹脂1kg当たり0.6〜1.5g程度である。
【0018】
また、(A) PAS樹脂のpHを4.5〜6.8に調節する方法としては、重合後の洗浄処理による手法がプロセス上簡便で好ましいが、必ずしもこの方法に限定されるわけではない。洗浄処理による方法としては、例えば、重合後のポリマーを適当な酸性度の酸性水溶液で洗浄する方法が挙げられる。この場合、酸性水溶液として使用する酸としては、塩酸、硫酸、塩化アンモニウム等の無機酸;酢酸、蟻酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の飽和脂肪酸;アクリル酸、クロトン酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸;安息香酸、フタル酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸;シュウ酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸;メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられるが、中でも塩酸、酢酸、塩化アンモニウムが好ましい。また、酸性水溶液による洗浄の前後に、必要に応じて有機溶剤や水で洗浄してもよい。
【0019】
(A) PAS樹脂の数平均分子量としては、一般的に用いられる分子量の範囲のものが使用できるが、流動、機械的強度の観点から、数平均分子量3000以上7000未満のものがより好ましい。
【0020】
PAS樹脂の数平均分子量は、1−クロロナフタレンを溶媒とする高温ゲル浸透クロマトグラフ法で求めることができる。
【0021】
本発明で(A) PAS樹脂と併用される(B) PAS樹脂は、アルコキシシランとの溶融混練によって実質的に増粘しないPAS樹脂に限定される。即ち、(B) PAS樹脂は、PAS樹脂99重量%に、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン1重量%を配合し、320℃で0.5〜2分間溶融混練後の溶融粘度(310℃、ズリ速度1216sec-1)が、溶融混練前の元のPAS樹脂の溶融粘度(310℃、ズリ速度1216sec-1)の1.5倍以下であるPAS樹脂である。増粘倍率が1.5より大きいPAS樹脂を用いた場合には、増粘が大きく流動性の低下が著しく大きくなり成形が困難になる。
【0022】
本発明で使用する(B) PAS樹脂は、アルコキシシランとの溶融混練によって実質的に増粘しないPAS樹脂であれば、いずれの製造方法、調製方法により得たものでもかまわないが、以下の幾つかの製造方法、調製方法で得ることができる。
【0023】
例えば、下記(1) 、(2) を特徴とする製造法によって得ることができる。
(1) 反応槽内に、有機アミド溶媒、アルカリ金属水硫化物を含む硫黄源、及び必要に応じてアルカリ金属水酸化物の全仕込み量の一部を仕込み、これらを含有する混合物を加熱して、該混合物を含有する系内から水を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する脱水工程、並びに
(2) 脱水工程後の系内に残存する混合物とジハロ芳香族化合物とを混合し、これらを含む重合反応混合物を加熱して、硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させると共に、重合反応混合物中にアルカリ金属水酸化物を連続的に又は分割して添加し、重合反応の開始から終了に至るまでの間、重合反応混合物のpHを7〜12.5の範囲内に制御する重合工程を含む
ことを特徴とするポリアリーレンサルファイド樹脂組成物の製造法
本製法で得られる(B) PAS樹脂は、樹脂中の窒素元素の含有量が樹脂1kg当たり0.50g以下の特徴を有するとともに、ほとんどアルコキシシランとの溶融混練によって増粘しないという特徴を有する。本製法で得られるPAS樹脂中の窒素元素の含有量が少ないほど、増粘倍率は小さくなるため好ましい。
【0024】
また、上記特性を有する(B) PAS樹脂は、重合後のポリマーの洗浄方法によっても調製することができる。例えば、通常知られている方法で重合された後のポリマーを洗浄する際に、酸性水溶液での洗浄工程を含まない、有機溶媒および/または水、熱水のいずれかでのみ洗浄することでも(B) PAS樹脂を調製することができる。このポリマーのpHは7より大きくなり、アルコキシシランとの反応性は低く、増粘倍率1.5以下である。
【0025】
さらに、(B) PAS樹脂は、一般的に知られる重合方法で得られた比較的低分子量のPAS樹脂を酸素存在下で220℃以上の温度で熱処理することで得ることもできる。これら製造方法は、一般的に知られている熱架橋型PAS樹脂の製造法と同等のものである。
【0026】
本発明で使用する(B) PAS樹脂は、数平均分子量が3000以上7000未満のものが用いられる。数平均分子量が3000未満では、熱安定性が悪化し発生ガスが多くなり、7000以上では流動性が低下し成形上の問題が発生する。
【0027】
尚、(B) PAS樹脂の窒素元素の含有量、pH、数平均分子量の測定は、前記(A) PAS樹脂の場合と同様に行える。
【0028】
本発明で使用する(A) PAS樹脂と(B) PAS樹脂のポリアリーレンサルファイド樹脂混合物において、各成分の比率は(A) 20〜60重量%、(B) 80〜40重量%である。(A) PAS樹脂の配合量が多すぎると流動性が低下し、(B) PAS樹脂の配合量が多すぎる場合には機械的強度が低くなる。
【0029】
次に、本発明で(C) 成分として使用されるアルコキシシラン化合物は特に限定されるものではなく、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、イソシアネートアルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン等が挙げられ、好ましくはエポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、イソシアネートアルコキシシランである。これらアルコキシシランは1種または2種以上を用いることができる。アルコキシシラン1分子中のアルコキシ基数は2個以上が好ましく、さらには好ましくは3個以上である。また、アルコキシ基の中の炭素数としては1〜10が好ましく、特に好ましくは1〜4である。
【0030】
エポキシアルコキシシランの例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
アミノアルコキシシランの例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジアリルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0032】
イソシアネートアルコキシシランの例としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
ビニルアルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0034】
メルカプトアルコキシシランの例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
これら(C) アルコキシシランは、予め重合された数量体のオリゴマーを使用してもかまわない。また、水、その他溶媒等を添加して粘度および反応性を調整したものも用いることができる。
【0036】
(C) アルコキシシラン化合物の配合量は、PAS樹脂混合物100重量部に対して0.1〜3重量部であり、好ましくは0.2〜2重量部である。アルコキシシラン化合物の配合量が少なすぎると、バリが長くなるとともに機械的強度が不十分となる。また、アルコキシシラン化合物の配合量が多すぎると、発生ガスが多くなる等の問題が生じ、好ましくない。
【0037】
次に、本発明では、十分な機械的強度を得るために(D) 無機充填剤を配合する。無機充填剤としては、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、カーボン繊維、軽質炭酸カルシウム、重質ないし微粉化炭酸カルシウム、特殊カルシウム系充填材等の炭酸カルシウム、霞石、閃長石微粉末、モンモリロナイト、ベントナイト等の焼成クレー、シラン改質クレー等のクレー(珪酸アルミニウム粉末)、タルク、溶融シリカ、合成シリカ、結晶シリカ等のシリカ(二酸化珪素)粉末、珪藻土、珪砂等の珪酸含有化合物、軽石粉、軽石バルーン、スレート粉、雲母粉等の天然鉱物の粉砕品、アルミナ、アルミナコロイド(アルミナゾル)、アルミナ・ホワイト、硫酸アルミニウム等のアルミナ含有化合物、硫酸バリウム、リトポン、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、グラファイト(黒鉛)等の鉱物、ガラスビーズ、ガラス中空体、ガラスフレーク、発泡ガラスビーズ等のガラス系フィラー、フライアッシュ球、火山ガラス中空体、合成無機中空体、単結晶チタン酸カリウム、カーボンナノチューブ、炭素中空球、炭素64フラーレン、無煙炭粉末、人造氷晶石(クリオライト)、酸化チタン、酸化マグネシウム、塩基性マグネシウム、ドロマイト、チタン酸カリウム、亜硫酸カルシウム、マイカ、アスベスト、珪酸カルシウム、アルモニウム粉、硫化モリブデン等が挙げられる。
【0038】
これら無機充填剤(D) は、2種以上を併用して配合することができる。
【0039】
無機充填剤(D) 成分の配合量は、PAS樹脂混合物100重量部に対し、20〜300重量部であり、好ましくは30〜250重量部である。(D) 成分の配合量が過少であると十分な機械的強度が得られず、また過大であると成形性、熱安定性、機械的強度が低下し、好ましくない。
【0040】
更に、本発明のPAS樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて他の熱可塑性樹脂、有機充填材、各種配合剤を添加することができる。
【0041】
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアセタール等の他、液晶性ポリマー、芳香族ポリエステル、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン等のアミド系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリルスチレン(AS樹脂)、ポリスチレン、ノルボルネン樹脂等の環状オレフィン樹脂などが挙げられる。
【0042】
他の熱可塑性樹脂として用いられるオレフィン系樹脂としては、反応性官能基を有するポリオレフィンあるいはオレフィン系共重合体等も使用することができる。これらのポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、各種のエチレン/プロピレン基等が挙げられ、反応性官能基としては、酸無水物基、グリシジル基、カルボキシル基等が挙げられ、α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルからなる共重合体が好ましい。該α−オレフィンとしては、エチレンが好ましく、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル等が挙げられ、好ましくはメタクリル酸グリシジルである。該ポリオレフィンとしては、他の不飽和モノマー、例えばビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリロニトリル、スチレン等を含有率40重量%以下で共重合したものでもよい。
【0043】
有機充填剤としては、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、フッ素繊維、ポリアラミド繊維、エボナイト粉末、熱硬化性樹脂中空球、熱硬化性樹脂フィラー、エポキシ樹脂フィラー、シリコーン系フィラー、サラン中空球、セラック、木粉、コルク粉末、ポリビニルアルコール繊維、セルロースパウダー、木材パルプ等が挙げられる。
【0044】
その他の配合剤としては、熱可塑性樹脂材料で通常用いられているものであれば格別な制限はなく、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近紫外線吸収剤、染料や顔料等の着色剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、難燃剤、核剤、腐蝕防止剤等が挙げられる。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、上記成分を必要に応じて混合して調製される。混合方法はこれらの成分が十分に分散する方法であれば特に限定されない。例えば、ミキサーや二軸混練機、ロール、ブラベンダー、一軸もしくは二軸押出機等で溶融状態で混練する方法等がある。特に押出機を用いて溶融状態で混練したのち押出し、これを適当な長さに切ってペレットとするのが、生産性が高く、好適である。溶融混練時の温度は、樹脂成分が溶融する温度より5℃ないし100℃高い温度であり、特に好ましくは樹脂の融点より10℃ないし60℃高い温度である。
【0046】
本発明のPAS樹脂組成物は、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、ブロー成形等により成形することができる。本発明の上記成形品の用途としては、電気・電子機器部品材料、自動車機器部品材料、化学機器部品材料、水廻り関連部品材料等が挙げられる。
【実施例】
【0047】
次に実施例、比較例で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例に用いた各(A) 、(B) 、(C) 、(D) の具体的物質は以下の通りである。
(A) 増粘倍率2.0以上のPAS樹脂
(A-1)
20LのオートクレーブにNMP(N−メチル−2−ピロリドン)5700gを仕込み、窒素ガスで置換後、約1時間かけて、攪拌機の回転数250rpmで撹拌しながら、100℃まで昇温した。100℃に到達後、濃度74.7重量%のNaOH水溶液1170g、硫黄源水溶液1990g(NaSH=21.8モル及びNaS=0.50モルを含む)、及びNMP1000gを加え、約2時間かけて、徐々に200℃まで昇温し、水942g、NMP1587g、及び0.31モルの硫化水素を系外に排出した。
【0048】
上記脱水工程の後、170℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン3410g、NMP2800g、水133g、及び濃度97重量%のNaOHを23g加えたところ、缶内温度は130℃、pHは13.3になった。引き続き、攪拌機の回転数250rpmで撹拌しながら、180℃まで30分間かけて昇温し、更に180℃から220℃の間は60分間かけて昇温した。その温度で60分間反応させた後、230℃まで30分間かけて昇温し、230℃で90分間反応を行い、前段重合を行った。
【0049】
前段重合終了後、直ちに攪拌機の回転数を400rpmに上げ、水340gを圧入した。水圧入後、255℃まで1時間かけて昇温し、その温度で4時間反応させ、後段重合を行った。後段重合終了時点での系のpHは10.3であった。
【0050】
後段重合終了後、反応混合物を室温付近まで冷却してから、内容物を100メッシュのスクリーンにかけ、粒状ポリマーを濾別し、次いで、アセトン洗いを3回、水洗を3回、0.3%酢酸洗を行い、その後、水洗を4回行い、洗浄した粒状ポリマーを得た。粒状ポリマーは、105℃で13時間乾燥した。このようにして得られた粒状ポリマーは、増粘倍率3.9、数平均分子量5900、窒素元素の含有量が樹脂1kg当たり0.71g、pHが6.5であった。
(A-2)
20LのオートクレーブにNMP(N−メチル−2−ピロリドン)5700gを仕込み、窒素ガスで置換後、約1時間かけて、攪拌機の回転数250rpmで撹拌しながら、100℃まで昇温した。100℃に到達後、濃度74.7重量%のNaOH水溶液1170g、硫黄源水溶液1990g(NaSH=21.8モル及びNaS=0.50モルを含む)、及びNMP1000gを加え、約2時間かけて、徐々に200℃まで昇温し、水945g、NMP1590g、及び0.31モルの硫化水素を系外に排出した。
【0051】
上記脱水工程の後、170℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン3283g、NMP2800g、水133g、及び濃度97重量%のNaOHを23g加えたところ、缶内温度は130℃、pHは13.2になった。引き続き、攪拌機の回転数250rpmで撹拌しながら、180℃まで30分間かけて昇温し、更に180℃から220℃の間は60分間かけて昇温した。その温度で60分間反応させた後、230℃まで30分間かけて昇温し、230℃で90分間反応を行い、前段重合を行った。
【0052】
前段重合終了後、直ちに攪拌機の回転数を400rpmに上げ、水340gを圧入した。水圧入後、260℃まで1時間かけて昇温し、その温度で5時間反応させ、後段重合を行った。後段重合終了時点での系のpHは10.1であった。
【0053】
後段重合終了後、反応混合物を室温付近まで冷却してから、内容物を100メッシュのスクリーンにかけ、粒状ポリマーを濾別し、次いで、アセトン洗いを3回、水洗を3回、0.3%酢酸洗を行い、その後、水洗を4回行い、洗浄した粒状ポリマーを得た。粒状ポリマーは、105℃で13時間乾燥した。このようにして得られた粒状ポリマーは、増粘倍率4.3、数平均分子量9400、窒素元素の含有量が樹脂1kg当たり0.85g、pHが6.5であった。
(B) 増粘倍率1.5以下のPAS樹脂
(B-1)
20LのオートクレーブにNMP(N−メチル−2−ピロリドン)5700gを仕込み、窒素ガスで置換後、約1時間かけて、攪拌機の回転数250rpmで撹拌しながら、100℃まで昇温した。100℃に到達後、硫黄源水溶液1990g(NaSH=21.9モル及びNaS=0.40モルを含む)、及びNMP1000gを加え、約2時間かけて、徐々に200℃まで昇温し、水724g、NMP1365g、及び0.70モルの硫化水素を系外に排出した。
【0054】
上記脱水工程の後、170℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン3350g、及びNMP2800gを加えたところ、缶内温度は130℃になった。180℃まで30分間かけて昇温した後、NaOHの添加を開始し、重合反応系のpHを11.5〜12.0に制御した。引き続き、攪拌機の回転数250rpmで撹拌しながら、180℃まで30分間かけて昇温し、更に180℃から220℃の間は60分間かけて昇温した。その温度で60分間反応させた後、230℃まで30分間かけて昇温し、230℃で90分間反応を行い、前段重合を行った。
【0055】
前段重合工程を通して、重合反応系のpHを11.5〜12.0の範囲に維持するように、ポンプを用いて濃度73.7重量%のNaOH水溶液1180gを連続的に添加した。
【0056】
前段重合終了後、直ちに攪拌機の回転数を400rpmに上げ、水340gを圧入した。水圧入後、255℃まで1時間かけて昇温し、その温度で3時間反応させ、後段重合を行った。後段重合終了時点での系のpHは10.0であった。
【0057】
後段重合終了後、反応混合物を室温付近まで冷却してから、内容物を100メッシュのスクリーンにかけ、粒状ポリマーを濾別し、次いで、アセトン洗いを3回、水洗を3回、0.3%酢酸洗を行い、その後、水洗を4回行い、洗浄した粒状ポリマーを得た。粒状ポリマーは、105℃で13時間乾燥した。このようにして得られた粒状ポリマーは、増粘倍率1.1、数平均分子量5200、窒素元素の含有量が樹脂1kg当たり0.34gであった。
(B-2)
熱架橋PAS樹脂(大日本インキ(株)製、K−2)を用いた。この熱架橋PAS樹脂の増粘倍率は1.1、数平均分子量は6400であった。
(B'-1) ;比較品
20LのオートクレーブにNMP(N−メチル−2−ピロリドン)5700gを仕込み、窒素ガスで置換後、約1時間かけて、攪拌機の回転数250rpmで撹拌しながら、100℃まで昇温した。100℃に到達後、硫黄源水溶液1990g(NaSH=21.9モル及びNaS=0.40モルを含む)、及びNMP1000gを加え、約2時間かけて、徐々に200℃まで昇温し、水729g、NMP1370g、及び0.70モルの硫化水素を系外に排出した。
【0058】
上記脱水工程の後、170℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン3236g、及びNMP2800gを加えたところ、缶内温度は130℃になった。180℃まで30分間かけて昇温した後、NaOHの添加を開始し、重合反応系のpHを11.5〜12.0に制御した。引き続き、攪拌機の回転数250rpmで撹拌しながら、180℃まで30分間かけて昇温し、更に180℃から220℃の間は60分間かけて昇温した。その温度で60分間反応させた後、230℃まで30分間かけて昇温し、230℃で90分間反応を行い、前段重合を行った。
【0059】
前段重合工程を通して、重合反応系のpHを11.5〜12.0の範囲に維持するように、ポンプを用いて濃度73.7重量%のNaOH水溶液1180gを連続的に添加した。
【0060】
前段重合終了後、直ちに攪拌機の回転数を400rpmに上げ、水340gを圧入した。水圧入後、260℃まで1時間かけて昇温し、その温度で4時間反応させ、後段重合を行った。後段重合終了時点での系のpHは10.0であった。
【0061】
後段重合終了後、反応混合物を室温付近まで冷却してから、内容物を100メッシュのスクリーンにかけ、粒状ポリマーを濾別し、次いで、アセトン洗いを3回、水洗を3回、0.3%酢酸洗を行い、その後、水洗を4回行い、洗浄した粒状ポリマーを得た。粒状ポリマーは、105℃で13時間乾燥した。このようにして得られた粒状ポリマーは、増粘倍率1.1、数平均分子量9200、窒素元素の含有量が樹脂1kg当たり0.32gであった。
(B'-2) ;比較品
熱架橋PAS樹脂(東レ(株)製、L2120)を用いた。この熱架橋PAS樹脂の増粘倍率は1.1、数平均分子量は9300であった。
(C) アルコキシシラン
(C-1)
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8331)
(C-2)
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8350)
(C-3)
γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−9007)
(D) 無機充填剤
(D-1)
ガラス繊維 13μmφチョップドストランド(日本電気ガラス製、ECS03T−717)
(D-2)
炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル(株)製、ホワイトンP−30)
また、実施例および比較例での評価方法は以下の通りである。
[増粘倍率の測定法]
140℃、3時間で乾燥したポリマー約20gを用いて、東洋精機製キャピログラフ1Bにより溶融粘度を測定した。この際、キャピラリーは、1mmφ×20mmlのフラットダイを使用し、設定温度は310℃とした。ポリマー試料を装置に導入し、5分間保持した後、ズリ速度1216sec-1での溶融粘度を測定し、これを溶融混練前の元のポリマーの溶融粘度とした。
【0062】
このポリマー99重量%に、(C-1) γ−アミノプロピルトリエトキシシラン1重量%を配合し、ヘンシェルミキサーで1分間混合後、速やかに二軸押出機(池貝製PCM−30)に投入し、樹脂温度320℃、スクリュー回転数100rpm、押出量10kg/hrの条件で溶融混練し、樹脂ペレットを作成した。この樹脂ペレットを140℃、3時間の条件で乾燥後、東洋精機製キャピログラフ1Bにより、元のポリマーの測定と同じ条件で溶融粘度を測定し、これを溶融混練後の溶融粘度とした。
【0063】
増粘倍率は、(溶融混練後の溶融粘度)/(溶融混練前の元のポリマーの溶融粘度)にて計算される増粘比率とした。
[窒素量の分析法]
微量窒素硫黄分析計(ANTEK社製、ANTEK7000)を用いてPAS樹脂中の窒素含有量を測定した(窒素量の検量線はトリフェニルアミンのエチルベンゼン溶液を用いて作成した)。
[PAS樹脂のpHの測定法]
室温(15〜25℃)にて、サンプル5gとアセトン15ml、及び精製水30mlをフラスコに入れ、振とう機を用いて30分間振とうした後、分液ロートで濾過した。その上澄みのpHをpHメーターで測定した。
[PAS樹脂の分子量の測定法]
溶媒として1−クロロナフタレンを使用し、オイルバスで230℃/10分間加熱溶解させて、0.05重量%濃度溶液を調製した。高温ゲル浸透クロマトグラフ法(測定装置;センシュー科学SSC−7000、UV検出器)を行い、標準ポリスチレン換算で数平均分子量を算出した。
[組成物の溶融粘度(流動性の指標)]
成形用樹脂ペレットを140℃、3時間の条件で乾燥後、東洋精機製キャピログラフ1Bにより溶融粘度を測定した。この際、キャピラリーは、1mmφ×20mmlのフラットダイを使用し、設定温度は310℃とした。ポリマー試料を装置に導入し、5分間保持した後、ズリ速度1000sec-1での溶融粘度を測定した。溶融粘度が高いほど流動性が悪く、これを流動性の指標とした。
[バリ発生の評価]
一部に20μmの金型間隙を有するバリ測定部が外周に設けられている円盤状キャビティーの金型を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度150℃で、キャビティーが完全に充填するのに必要な最小圧力で射出成形し、その部分に発生するバリ長さを写像投影機にて拡大して測定した。
[曲げ強さおよび曲げ弾性率の評価]
シリンダー温度320℃、金型温度150℃にて厚さ4mmの曲げ試験片を成形し、ISO178に準じて曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
実施例1〜8、比較例1〜10
(D-1) ガラス繊維以外の各成分を表1、2に示す配合量にてヘンシェルミキサーで5分間混合した。この原料混合物を二軸押出機に投入し、(D-1) ガラス繊維は二軸押出機のサイドフィード部より別添加し、樹脂温度350℃にて溶融混練し、各樹脂組成物のペレットを作った。得られたペレットについて、上述の方法にて溶融粘度、バリ長さの評価、曲げ強さおよび曲げ弾性率の評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) アルコキシシランとの溶融混練による増粘倍率が2.0以上のポリアリーレンサルファイド樹脂20〜60重量%
(B) アルコキシシランとの溶融混練による増粘倍率が1.5以下で、数平均分子量が3000以上7000未満のポリアリーレンサルファイド樹脂80〜40重量%
からなるポリアリーレンサルファイド樹脂混合物100重量部に対して、
(C) アルコキシシラン化合物0.1〜3重量部
(D) 無機充填剤20〜300重量部
を配合してなるポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
但し、上記増粘倍率とは、ポリアリーレンサルファイド樹脂99重量%に、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン1重量%を配合し、320℃で溶融混練後の溶融粘度(310℃、ズリ速度1216sec-1)の、溶融混練前のポリアリーレンサルファイド樹脂の溶融粘度(310℃、ズリ速度1216sec-1)に対する比率である。
【請求項2】
(A) 成分が、樹脂中の窒素元素の含有量が樹脂1kg当たり0.55gを超え、pHが4.5〜6.8のポリアリーレンサルファイド樹脂である請求項1記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項3】
(A) 成分が、数平均分子量が3000以上7000未満のポリアリーレンサルファイド樹脂である請求項1又は2記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項4】
(B) 成分が、樹脂中の窒素元素の含有量が樹脂1kg当たり0.50g以下のポリアリーレンサルファイド樹脂である請求項1〜3の何れか1項記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項5】
(B) 成分が、下記(1) 、(2) を特徴とする製造法によって得られたポリアリーレンサルファイド樹脂である請求項1〜4の何れか1項記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
(1) 反応槽内に、有機アミド溶媒、アルカリ金属水硫化物を含む硫黄源、及び必要に応じてアルカリ金属水酸化物の全仕込み量の一部を仕込み、これらを含有する混合物を加熱して、該混合物を含有する系内から水を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する脱水工程、並びに
(2) 脱水工程後の系内に残存する混合物とジハロ芳香族化合物とを混合し、これらを含む重合反応混合物を加熱して、硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合反応させると共に、重合反応混合物中にアルカリ金属水酸化物を連続的に又は分割して添加し、重合反応の開始から終了に至るまでの間、重合反応混合物のpHを7〜12.5の範囲内に制御する重合工程を含む
ことを特徴とするポリアリーレンサルファイド樹脂組成物の製造法
【請求項6】
(B) 成分が、熱処理された架橋型ポリアリーレンサルファイド樹脂である請求項1〜3の何れか1項記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項7】
(C) アルコキシシラン化合物が、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン及びイソシアネートアルコキシシランから選ばれた1種又は2種以上の混合物である請求項1〜6の何れか1項記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−77264(P2007−77264A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266715(P2005−266715)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】