説明

ポリアリーレン系共重合体、その製造方法およびプロトン伝導膜

【課題】広い温度範囲でプロトン伝導性が高く耐熱水性、化学的安定性、機械的強度に優れたプロトン伝導膜が得られるポリアリーレン系共重合体およびその製造方法の提供。
【解決手段】式(1)で表される構成単位含フッ素ポリアリーレン基、含CNポリアリーレン基を含有するポリアリーレン系共重合体。


[Yは−CO−や−SO2−等、Zは単結合や−O−等、Arは−SO3Hを有する芳香族基等、m、m’は0〜10の整数、m''は1〜100の整数、kは1〜4の整数]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレン系共重合体、その製造方法およびプロトン伝導膜に関し、さらに詳細には、一次電池用電解質、二次電池用電解質、燃料電池用高分子固体電解質、表示素子、各種センサー、信号伝達媒体、固体コンデンサー、イオン交換膜などに利用可能なプロトン伝導膜に有用であるスルホン酸基含有ポリアリーレン系共重合体、その製造方法および該スルホン酸基含有ポリアリーレン共重合体からなるプロトン伝導膜に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質は、通常、(水)溶液で用いられることが多い。しかし、近年、これを固体系に置き替えていく傾向が高まってきている。その第1の理由としては、たとえば、電気・電子材料に応用する場合のプロセッシングの容易さであり、第2の理由としては、軽薄短小および省電力化への移行である。
【0003】
従来、プロトン伝導性材料としては、無機化合物からなるもの、および、有機化合物からなるものの両方が知られている。無機化合物としては、たとえば水和化合物であるリン酸ウラニルなどが挙げられる。しかしながら、このような無機化合物からなる伝導層は、基板または電極との界面での接触が十分でないため、該伝導層を基板または電極上に形成するには問題が多い。
【0004】
一方、有機化合物としては、いわゆる陽イオン交換樹脂に属するポリマー、例えばポリスチレンスルホン酸などのビニル系ポリマーのスルホン化物、ナフィオン(商品名、デュポン社製)を代表とするパーフルオロアルキルスルホン酸ポリマー、パーフルオロアルキルカルボン酸ポリマーや、ポリベンズイミダゾールおよびポリエーテルエーテルケトンなどの耐熱性高分子にスルホン酸基またはリン酸基を導入したポリマー(たとえば、非特許文献1〜3参照)などの有機系ポリマーが挙げられる。
【0005】
上記有機系ポリマーは、通常、フィルム状で用いられるが、溶媒に可溶性であること、または熱可塑性であることを利用し、電極上に伝導膜を接合加工できる。しかしながら、これら有機系ポリマーの多くは、プロトン伝導度がまだ十分でないことに加え、高温(100℃以上)において耐久性、プロトン伝導性および力学的性質、特に弾性率が大きく低下すること、湿度条件に対する依存性が大きいこと、電極との密着性が十分ではないこと、含水ポリマー構造に起因する稼動中の過度の膨潤による強度の低下や形状の崩壊に至ることなどの問題がある。したがって、これら有機系ポリマーを、電気・電子材料などに応用するには種々問題がある。
【0006】
さらに、特許文献1には、スルホン化された剛直ポリフェニレンからなる固体高分子電解質が提案されている。このポリマーはフェニレン連鎖からなる芳香族化合物を重合して得られるポリマーを主成分とし、これをスルホン化剤と反応させてスルホン酸基を導入している。しかしながら、スルホン酸基の導入量の増加によって、プロトン伝導度も向上するものの、同時に、得られるスルホン化ポリマーの機械的特性、たとえば、破断伸びおよび耐折曲げ性などの靭性、ならびに、耐熱水性は著しく損なわれる。
【特許文献1】米国特許第5,403,675号公報
【非特許文献1】Polymer Preprints, Japan, Vol.42, No.7, p.2490〜2492 (1993)
【非特許文献2】Polymer Preprints, Japan, Vol.43, No.3, p.735〜736 (1994)
【非特許文献3】Polymer Preprints, Japan, Vol.42, No.3, p.730 (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、広範囲の温度領域にわたって高いプロトン伝導性を有するとともに、耐熱水性、化学的安定性、靭性および機械的強度に優れたプロトン伝導膜、該プロトン伝導膜が得られるポリアリーレン系共重合体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、スルホン酸基を有する特定の構成単位を含有し、主鎖中にフッ素基およびニトリル基が導入されたポリアリーレン系共重合体を用いることにより、広範囲の温度領域にわたって高いプロトン伝導性を有するとともに、耐熱水性および化学的安定性に優れたプロトン伝導膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係るポリアリーレン系共重合体は、下記一般式(1)で表される構成単位と、下記一般式(2−1)または(2−2)で表される構成単位と、下記一般式(3)で表される構成単位とを含有することを特徴とする。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)中、Yは、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−
(CF2i−(iは1〜10の整数である)および−C(CF32−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、Zは、独立に単結合、または、−O−、−S−、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)および−C(CH32−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、Arは、−SO3H、−O−(CR2eSO3Hまたは−S−(CR2eSO3Hで表される置換基を有する芳香族基を示し、Rは、独立に水素原子、
フッ素原子、アルキル基、および、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、eは1〜20の整数を示し、mは0〜10の整数を示し、m’は0〜10の整数を示し、m''は1〜100の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。
【0012】
【化2】

【0013】
式(2−1)および(2−2)中、Xは2価の基または単結合を示し、R11〜R13は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を示し、pは1〜4の整数を示し、qは1〜4の整数を示す。
【0014】
【化3】

【0015】
式(3)中、R21〜R23は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。
【0016】
本発明のポリアリーレン系共重合体は、下記一般式(4−1)または(4−2)で表される構成単位をさらに含有することが好ましい。
【0017】
【化4】

【0018】
式(4−1)および(4−2)中、R31〜R38は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、Jは、アルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO−および−SO2−からなる群より選ばれる少なくとも
1種の基を示す。
【0019】
本発明のポリアリーレン系共重合体は、スルホン酸基を0.5〜3.0meq/g含有すること、ならびに、フッ素原子を6重量%以上含有することが望ましい。
本発明に係る第1のポリアリーレン系共重合体の製造方法は、下記一般式(5−1)または(5−2)で表される化合物と、下記一般式(6−1)または(6−2)で表される化合物と、下記一般式(7)で表される化合物と、下記一般式(8−1)または(8−2)で表される化合物とを反応させることを特徴とする。
【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
式(5−1)および(5−2)中、Y、Z、m、m’、m”およびkは上記式中で定義した通りであり、R21〜R28は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、Raは炭素
原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはアルカリ金属原子を示し、Ar’は−SO3b、−O−(CR2eSO3bまたは−S−(CR2eSO3bで表される置換基を有する芳香族基を示し、Rbは炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはアルカリ
金属原子を示し、Rおよびeは上記式中で定義した通りであり、VおよびV’は、それぞれ独立にフッ素原子または塩素原子を示す。
【0023】
【化7】

【0024】
式(6−1)および(6−2)中、X、R11〜R13、pおよびqは上記式中で定義した通りである。
【0025】
【化8】

【0026】
式(7)中、R21〜R23、VおよびV’は上記式中で定義した通りである。
【0027】
【化9】

【0028】
式(8−1)および(8−2)中、R31〜R38およびJは上記式中で定義した通りである。
本発明に係る第2のポリアリーレン系共重合体の製造方法は、下記一般式(5−3)または(5−4)で表される化合物と、上記一般式(6−1)または(6−2)で表される化合物と、上記一般式(7)で表される化合物と、上記一般式(8−1)または(8−2)で表される化合物とを反応させて得られたポリアリーレン系共重合体をスルホン化することを特徴とする。
【0029】
【化10】

【0030】
【化11】

【0031】
式(5−3)および(5−4)中、R21〜R28、Y、Z、m、m’、m”、VおよびV’は、上記式中で定義した通りであり、Ar''は、置換基を有しない芳香族基を示す。
本発明に係る第3のポリアリーレン系共重合体の製造方法は、下記一般式(5−5)または(5−6)で表される化合物と、上記一般式(6−1)または(6−2)で表される化合物と、上記一般式(7)で表される化合物と、上記一般式(8−1)または(8−2)で表される化合物とを反応させて得られた官能基を有するポリアリーレン系共重合体に、下記一般式(9−1)または(9−2)で表される化合物を反応させることを特徴とするポリアリーレン系共重合体の製造方法。
【0032】
【化12】

【0033】
【化13】

【0034】
式(5−5)および(5−6)中、R21〜R28、Y、m、m’、m”、VおよびV’は上記式中で定義した通りであり、Ar'''は−OMまたは−SMで表される置換基を有す
る芳香族基を示し、Mは水素原子またはアルカリ金属原子を示す。
【0035】
【化14】

【0036】
式(9−1)および(9−2)中、R、eおよびMは上記式中で定義した通りであり、Lは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。
本発明のプロトン伝導膜は、上記ポリアリーレン系共重合体を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明のポリアリーレン系共重合体を用いることにより、耐熱水性に優れ、熱による寸法変化が小さく、化学的安定性が向上し、特に、フェントン試薬耐性を指標とするラジカル耐久性に優れ、靭性および機械的強度に優れたプロトン伝導膜を得ることができる。
【0038】
また、本発明のポリアリーレン系共重合体は、スルホン酸基の導入量を容易に制御することができることから、広い温度範囲にわたって高いプロトン伝導性を有し、かつ、基板や電極に対する密着性が優れたプロトン伝導膜を得ることができる。
【0039】
したがって、本発明のポリアリーレン系共重合体を用いて形成されたプロトン伝導膜は、一次電池用電解質、二次電池用電解質、燃料電池用高分子固体電解質、表示素子、各種センサー、信号伝達媒体、固体コンデンサー、イオン交換膜などの伝導膜として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明に係るポリアリーレン系重合体、その製造方法およびプロトン伝導膜について、詳細に説明する。
[ポリアリーレン系共重合体]
本発明のスルホン酸基を含有するポリアリーレン系共重合体(以下「スルホン化ポリアリーレン」ともいう)は、上記一般式(1)で表される構成単位(以下「構成単位(1)」ともいう)と、上記一般式(2−1)もしくは(2−2)で表される構成単位(以下、それぞれ「構成単位(2−1)」、「構成単位(2−2)」ともいい、これらを総称して「構成単位(2)」ともいう)と、上記一般式(3)で表される構成単位(以下「構成単位(3)」ともいう)とを含有する。このスルホン化ポリアリーレンは、前記構成単位(1)、(2)および(3)のみから構成されていてもよいし、さらに他の構成単位、たとえば上記一般式(4−1)もしくは(4−2)で表される構成単位(以下、それぞれ「構成単位(4−1)、「構成単位(4−2)」ともいい、これらを総称して「構成単位(4)」ともいう)などを含んでいてもよい。
【0041】
本発明のスルホン化ポリアリーレンは、上記構成単位(1)を10〜90モル%、好ましくは20〜80モル%、より好ましくは30〜70モル%含有し、上記構成単位(2)を3〜40モル%、好ましくは6〜35モル%、より好ましくは10〜30モル%含有し、上記構成単位(3)を1〜40モル%、好ましくは3〜35モル%、より好ましくは5〜30モル%含有する。ただし、上記スルホン化ポリマーの全構成単位の合計を100モル%とする。
【0042】
本発明のスルホン化ポリアリーレンは、フッ素原子を6重量%以上、好ましくは7.5〜45重量%、より好ましくは10〜35重量%の範囲の量で含むことが望ましい。フッ素原子の含有量が上記範囲内にあることにより、耐熱水性を十分に確保することができる。
【0043】
<構成単位(1)>
上記式(1)中、Yは、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−
、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)および−C(CF32−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示す。このうち、−CO−および−SO2−が好ましい。
【0044】
Zは、独立に単結合、または、−O−、−S−、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)および−C(CH32−からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を示す。このうち、単結合および−O−が好ましい。
【0045】
Arは、−SO3H、−O−(CR2eSO3Hまたは−S−(CR2eSO3Hで表さ
れる置換基を有する芳香族基を示し、Rは、独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、および、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、eは1〜20の整数を示す。
【0046】
上記芳香族基としては、たとえば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。これらのうち、フェニル基およびナフチル基が好ましい。
上記−SO3H、−O−(CR2eSO3Hまたは−S−(CR2eSO3Hで表される
置換基は、少なくとも1個置換されていることが必要であり、ナフチル基である場合には2個以上置換していることが好ましい。
【0047】
mは0〜10、好ましくは0〜2の整数を示し、m’は0〜10、好ましくは0〜2の整数を示し、m''は1〜100の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。
上記構成単位(1)の好ましい構造としては、たとえば、
(1)m=0、m’=0であり、Yが−CO−であり、Arが置換基として−SO3Hを
有するフェニル基である構造、
(2)m=1、m’=0であり、Yが−CO−であり、Zが−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(3)m=1、m’=1、k=1であり、Yが−CO−であり、Zが−O−であり、Arが置換基として−SO3Hを有するフェニル基である構造、
(4)m=1、m’=0であり、Yが−CO−であり、Arが置換基として−SO3Hを
2個有するナフチル基である構造、
(5)m=1、m’=0であり、Yが−CO−であり、Zが−O−であり、Arが置換基として−O(CH24SO3Hを有するフェニル基である構造
などを挙げることができる。
【0048】
<構成単位(2)>
上記式(2−1)および(2−2)中、Xは2価の基または単結合を示し、該2価の基としては、たとえば、−CO−、−CONH−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−C(CF32−、−COO−、−SO2−、−O−、−S−、−(CH2j
(jは1〜10の整数である)、−C(CH32−などが挙げられる。R11〜R13は、水素原子またはアルキル基であり、該アルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。複数のR11〜R13はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。nは1〜4の整数であり、pは1〜4の整数である。
【0049】
<構成単位(3)>
上記式(3)中、R21〜R23はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基である。
【0050】
上記アルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基などが挙げられる。
上記一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基としては、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基などが挙げられ、これらの中では、トリフルオロメチル基およびペンタフルオロエチル基が好ましい。
【0051】
上記アリル基としては、たとえば、プロペニル基などが挙げられる。
上記アリール基としては、たとえば、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
【0052】
<構成単位(4)>
上記式(4−1)および(4−2)中、R31〜R38は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。Jは、アルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO−および−SO2−からなる群より選ばれる少なく
とも1種の基を示す。
【0053】
[スルホン化ポリアリーレンの製造方法]
本発明のスルホン化ポリアリーレンは、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体を加水分解する方法、スルホン酸基およびスルホン酸エステル基のいずれも含有しないポリアリーレン系共重合体(以下「非スルホン化ポリアリーレン」ともいう。)をスルホン化剤を用いてスルホン化する方法、あるいは、反応性の官能基を有する非スルホン化ポリアリーレンにスルホン酸基となりうる構造を有する化合物を反応させる方法によって得ることができる。
【0054】
1.スルホン酸エステル基の加水分解による製造方法
本発明のスルホン化ポリアリーレンは、
上記式(5−1)もしくは(5−2)で表される化合物(以下、それぞれ「化合物(5−1)」、「化合物(5−2)」ともいう)と、
上記式(6−1)もしくは(6−2)で表される化合物(以下、それぞれ「化合物(6−1)」、「化合物(6−2)」ともいう)と、
上記式(7)で表される化合物(以下「化合物(7)」ともいう)と、
上記式(8−1)もしくは(8−2)で表される化合物(以下、それぞれ「化合物(8−1)」、「化合物(8−2)」ともいう)と
を反応させて得られる、スルホン酸エステル基を含有するポリアリーレン系共重合体を加水分解して、スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換することにより製造することができる。このようにして得られたスルホン化ポリアリーレンは、上記構成単位(1)〜(4)を有する。
【0055】
<化合物(5−1)>
上記式(5−1)中、Y、Z、m、m’、m”およびkは、上記式(1)で定義した通
りであり、R21〜R23は、上記式(3)で定義した通りである。
【0056】
aは炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはアルカリ金属原子を示す。前
記炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチル基、アダマンタンメチル基、2−エチルヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]へプチル基、ビシクロ[2.2.1]へプチルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メチルブチル基、3,3−ジメチ
ル−2,4−ジオキソランメチル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、
ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基などの直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、脂環式炭化水素基、5員の複素環を有する炭化水素基などが挙げられる。これらの中では、n−ブチル基、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、特にネオペンチル基が好ましい。
【0057】
Ar’は−SO3b、−O−(CR2eSO3bまたは−S−(CR2eSO3bで表される置換基を有する芳香族基を示す。芳香族基としては、たとえば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。これらの中では、フェニル基およびナフチル基が好ましい。Rおよびeは上記式(1)で定義した通りである。
【0058】
bは、炭素原子数1〜20の炭化水素基を示し、具体的には上記Raと同様の炭化水素基が挙げられる。これらの中では、n−ブチル基、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、特にネオペンチル基が好ましい。
【0059】
上記−SO3b、−O−(CR2eSO3bまたは−S−(CR2eSO3bで表される置換基は、少なくとも1個置換されていることが必要であり、ナフチル基である場合には2個以上置換していることが好ましい。
【0060】
a基およびRb基は、1級アルコール由来でβ炭素が3級または4級炭素であること、好ましくは1級アルコール由来でβ位が4級炭素であることが、重合工程中の安定性に優れ、脱エステル化によるスルホン酸の生成に起因する重合阻害や架橋を引き起こさない点で望ましい。
【0061】
VおよびV’は同一でも異なっていてもよく、フッ素原子または塩素原子、好ましくはフッ素原子である。
上記化合物(5−1)としては、たとえば、以下の化合物が挙げられる。
【0062】
【化15】

【0063】
【化16】

【0064】
上記化合物(5−1)は、下記一般式(10)で表される構造単位となりうる化合物(以下「化合物(10)」ともいう)と、下記一般式(11)で表される構造単位となりうる化合物(以下「化合物(11)」ともいう)とを、それぞれモノマーとして反応させて合成することができる。
【0065】
【化17】

【0066】
式(10)中、Y、Z、Ra、Ar’、k、mおよびm’は、上記式(5−1)中で定
義した通りである。
【0067】
【化18】

【0068】
式(11)中、R21〜R23およびVは、上記式(7)中で定義した通りである。
上記化合物(5−1)は、上記式(10)で表される構造単位を5〜99.99モル%、好ましくは10〜99.99モル%、より好ましくは20〜99.99モル%含み、上記式(11)で表される構造単位を0.01〜95モル%、好ましくは0.01〜90モル%、より好ましくは0.01〜80モル%含み、その数平均分子量は5000〜50万、好ましくは1万〜20万である。
【0069】
上記化合物(10)としては、たとえば、特開2004−137444号公報、特願2003−143903号、特願2003−143904号に記載されているスルホン酸エステル類を挙げることができる。
【0070】
上記化合物(11)の好ましい例として、以下の化合物を挙げることができる。
【0071】
【化19】

【0072】
このように、フッ素原子と、フッ素原子以外のハロゲン原子とをそれぞれ1つ有する化合物は、後述する触媒を用いた反応でフッ素原子は不活性であり、他のハロゲン原子のみが活性であることから、活性化された末端フルオロ体を得るのに好都合である。
【0073】
上記化合物(10)と化合物(11)とを反応させて化合物(5−1)を製造する際に
使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系としては、(i)遷
移金属塩および配位子となる化合物(以下「配位子成分」という)、または、配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)と、(ii)還元剤とを必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために「塩」を添加してもよい。
【0074】
ここで、遷移金属塩としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナートなどのニッケル化合物、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウムなどのパラジウム化合物、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄などの鉄化合物、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルトなどのコバルト化合物などが挙げられる。これらの中では、特に塩化ニッケルおよび臭化ニッケルが好ましい。
【0075】
また、配位子成分としては、トリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(3−メチルフェニル)ホスフィン、2,2'−ビピリジン、1,5−シ
クロオクタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンなどが挙げられる。これらの中では、トリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(3−メチルフェニル)ホスフィン、2,2'−ビピリジンが好ましい。上記配位子成分である化合物は、1種単独で用いても
、2種以上を併用してもよい。
【0076】
さらに、あらかじめ配位子が配位された遷移金属錯体としては、たとえば、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、硝酸ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、臭化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ヨウ化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、硝酸ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどが挙げられる。これらの中では、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)および塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)が好ましい。
【0077】
上記触媒系において使用することができる上記還元剤としては、たとえば、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどを挙げることできる。これらの中では、亜鉛、マグネシウムおよびマンガンが好ましい。これらの還元剤は、有機酸などの酸に接触させることにより、より活性化して用いることができる。
【0078】
また、上記触媒系において使用することのできる「塩」としては、たとえば、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのナトリウム化合物、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウムなどのカリウム化合物、フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウムなどのアンモニウム化合物などが挙げられる。これらの中では、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
【0079】
上記触媒系における各成分の使用割合は、遷移金属塩または遷移金属錯体が、上記モノマー(化合物(10)および(11))の総計1モルに対し、通常、0.0001〜10モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。上記範囲よりも少ないと、重合反応が十分に進行せず、一方、上記範囲を超えると、分子量が低下することがある。
【0080】
触媒系において、遷移金属塩および配位子成分を用いる場合、この配位子成分の使用割合は、遷移金属塩1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルで
ある。上記範囲よりも少ないと、触媒活性が不十分となり、一方、上記範囲を超えると、分子量が低下することがある。
【0081】
また、触媒系における還元剤の使用割合は、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。上記範囲よりも少ないと、重合が十分進行せず、一方、上記範囲を超えると、得られる重合体の精製が困難になることがある。
【0082】
さらに、触媒系に「塩」を使用する場合、その使用割合は、上記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.001〜100モル、好ましくは0.01〜1モルである。上記範囲よりも少ないと、重合速度を上げる効果が不十分であり、一方、上記範囲を超えると、得られる重合体の精製が困難になることがある。
【0083】
上記触媒系を用いる場合の反応溶媒としては、たとえば、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタムなどが挙げられ、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドンが好ましい。これらの反応溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましく、水分量は500ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。
【0084】
上記反応溶媒中における上記モノマーの総計の濃度は、通常、1〜90重量%、好ましくは5〜60重量%である。また、反応温度は、通常、0〜200℃、好ましくは50〜120℃であり、反応時間は、通常、0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
【0085】
上記化合物(10)と上記化合物(11)とを用いて、上記化合物(5−1)を得る際の反応式の一例を、以下に示す。
【0086】
【化20】

【0087】
<化合物(5−2)>
上記式(5−2)中、R21〜R28は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基である。Y、Z、m、m’、m''およびkは、上記式(1)中で定義した通りであり、Ra、Ar’、VおよびV’は、上記式(5−1)中で定義した通りである。
【0088】
上記化合物(5−2)としては、たとえば、以下の化合物が挙げられる。
【0089】
【化21】

【0090】
【化22】

【0091】
【化23】

【0092】
【化24】

【0093】
この化合物(5−2)は、上記化合物(10)と、下記一般式(12)で表される構造単位となりうる化合物(以下「化合物(12)」ともいう)とを、それぞれモノマーとして反応させて合成することができる。
【0094】
【化25】

【0095】
式(12)中、R21〜R28およびVは、上記式(5−2)中で定義した通りであり、Yは上記式(1)中で定義した通りである。
上記化合物(5−2)は、上記式(10)で表される構造単位を5〜99.99モル%、好ましくは10〜99.99モル%、より好ましくは20〜99.99モル%含み、上記式(12)で表される構造単位を0.01〜95モル%、好ましくは0.01〜90モル%、より好ましくは0.01〜80モル%含み、その数平均分子量は5000〜50万、好ましくは1万〜20万である。
【0096】
化合物(10)と化合物(12)とを反応させて化合物(5−2)を製造する際の合成条件は、上記化合物(5−1)を製造する際の合成条件と同様である。
上記化合物(12)の好ましい例として、以下の化合物が挙げられる。
【0097】
【化26】

【0098】
このように、フッ素原子と、フッ素原子以外のハロゲン原子とをそれぞれ1つ有する化合物は、前述した触媒を用いた反応でフッ素原子は不活性であり、他のハロゲン原子のみが活性であることから、活性化された末端フルオロ体を得るのに好都合である。
【0099】
<化合物(6−1)>
上記化合物(6−1)の好ましい例として、以下の化合物が挙げられる。
【0100】
【化27】

【0101】
<化合物(6−2)>
上記化合物(6−2)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0102】
【化28】

【0103】
<化合物(7)>
上記化合物(7)の好ましい例として、以下の化合物が挙げられる。
【0104】
【化29】

【0105】
<化合物(8−1)>
上記化合物(8−1)の好ましい例として、以下の化合物が挙げられる。
【0106】
【化30】

【0107】
<化合物(8−2)>
上記化合物(8−2)としては、たとえば、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタンなどが挙げられる。
【0108】
<スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンの合成>
上記化合物(5−1)もしくは(5−2)と、上記化合物(6−1)もしくは(6−2)と、上記化合物(7)と、上記化合物(8−1)もしくは(8−2)とを用いて、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体を得る際の反応式の一例を、以下に示す。
【0109】
【化31】

【0110】
式中、b、cおよびdは、繰り返し単位数を示す。
このように、化合物(8−2)を用い、これに炭酸カリウムを加えて反応性の高いフェノキシドに変え、反応溶媒として、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン系双極子極性溶媒などを用い、化合物(5−1)、化合物(6−1)および化合物(7)を反応温度50〜200℃で1〜30時間反応させることにより、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体を得ることができる。
【0111】
化合物(8−2)のフェノールをアルカリ金属塩とするために、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキサイドのような誘電率の高い極性溶媒中でリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩などを加える。
【0112】
上記アルカリ金属は、フェノールの水酸基に対し過剰気味で反応させ、通常、1.1〜2倍当量、好ましくは1.2〜1.5倍当量を使用する。この際、生成する縮合水を共沸により系外に除去するための共沸溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカヒドロナフタレン、クロロベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトールなどの水と共沸する溶媒を共存させてもよい。
【0113】
それぞれの化合物の使用割合としては、通常、化合物(5−1)もしくは(5−2)と
、化合物(6−1)もしくは(6−2)と、化合物(7)との合計モル数に対する化合物(8−1)もしくは(8−2)のモル数の比[(8−1)or(8−2)]/[(5−1)or(5−2)+(6−1)or(6−2)+(7)]は、1.25/1.00〜1.00/1.25である。
【0114】
ここで、上記式における繰り返し単位数について、(b+c+d)に対するcのモル比(%)は、1〜99.99%、好ましくは5〜99.99%、より好ましくは10〜99.99%である。
【0115】
<スルホン酸エステル基の加水分解>
上記のようにして得られたスルホン酸エステル基を有するポリアリーレンのスルホン酸エステル基を加水分解する方法としては、
(1)少量の塩酸を含む過剰量の水またはアルコール中に、上記スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを投入し、5分間以上撹拌する方法
(2)トリフルオロ酢酸中で、上記スルホン酸エステル基を有するポリアリーレンを80〜120℃程度の温度で、5〜10時間程度反応させる方法
(3)上記ポリアリーレン中のスルホン酸エステル基(−SO3R)1モルに対して1〜
5倍モルのリチウムブロマイドを含む溶液、たとえばN−メチルピロリドンなどの溶液中で、該ポリアリーレンを80〜150℃程度の温度で3〜10時間程度反応させた後、塩酸を添加する方法
などを挙げることができる。
【0116】
2.スルホン化剤を用いたスルホン化による製造方法
次に、後スルホン化によるスルホン化ポリアリーレンの製造方法について説明する。
本発明のスルホン化ポリアリーレンは、上記式(5−3)もしくは(5−4)で表される化合物(以下、それぞれ「化合物(5−3)」、「化合物(5−4)」ともいう)と、上記化合物(6−1)もしくは(6−2)と、上記化合物(7)と、上記化合物(8−1)もしくは(8−2)とを、上記と同様の方法により反応させて得られる非スルホン化ポリアリーレンを、スルホン化剤を用いた通常のスルホン化により製造することができる。このようにして得られたスルホン化ポリアリーレンは、上記構成単位(1)〜(4)を有する。
【0117】
<化合物(5−3)>
上記式(5−3)中、Ar”は、置換基を有しない芳香族基を示す。芳香族基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基などが挙げられる。これらの中では、フェニル基およびナフチル基が好ましい。
【0118】
上記化合物(5−3)としては、たとえば、以下の化合物が挙げられる。
【0119】
【化32】

【0120】
上記化合物(5−3)は、下記一般式(13)で表される構造単位となりうる化合物(以下「化合物(13)」ともいう)と、上記化合物(11)とを、それぞれモノマーとして反応させて合成することができる。
【0121】
【化33】

【0122】
式(13)中、Y、Z、m、m’は上記式(1)中で定義した通りであり、Ar”は上記式(5−3)中で定義した通りである。
上記化合物(5−3)は、上記式(13)で表される構造単位を5〜99.99モル%、好ましくは10〜99.99モル%、より好ましくは20〜99.99モル%含み、上記式(11)で表される構造単位を0.01〜95モル%、好ましくは0.01〜90モル%、より好ましくは0.01〜80モル%含み、その数平均分子量は5000〜50万、好ましくは1万〜20万である。
【0123】
上記化合物(13)としては、たとえば、特開2001−342241号公報や特開2002−293889号公報に記載の化合物などが挙げられる。
化合物(13)と化合物(11)とを反応させて化合物(5−3)を製造する際の合成条件は、上記化合物(5−1)を製造する際の合成条件と同様である。
【0124】
<化合物(5−4)>
上記化合物(5−4)としては、たとえば、以下の化合物が挙げられる。
【0125】
【化34】

【0126】
上記化合物(5−4)は、上記化合物(13)と化合物(12)とを、それぞれモノマーとして反応させて合成することができる。化合物(5−4)は、上記式(13)で表される構造単位を5〜99.99モル%、好ましくは10〜99.99モル%、より好ましくは20〜99.99モル%含み、上記式(12)で表される構造単位を0.01〜95モル%、好ましくは0.01〜90モル%、より好ましくは0.01〜80モル%含み、その数平均分子量は5000〜50万、好ましくは1万〜20万である。
【0127】
上記化合物(13)と化合物(12)とを反応させて化合物(5−4)を製造する際の合成条件は、上記化合物(5−1)を製造する際の合成条件と同様である。
<非スルホン化ポリアリーレンの合成>
スルホン化する前の前駆体であるポリアリーレン系共重合体は、上記化合物(5−3)もしくは(5−4)と、上記化合物(6−1)もしくは(6−2)と、上記化合物(7)と、上記化合物(8−1)もしくは(8−2)とを反応させることにより得ることができる。反応条件に関しては、前述したとおりである。
【0128】
<スルホン化>
得られた非スルホン化ポリアリーレンを、たとえば、特開2001−342241号公報に記載されている方法でスルホン化することにより、本発明のスルホン化ポリアリーレンを得ることができる。
【0129】
3.反応性官能基とスルホン化剤との反応による製造方法
次に、反応性の官能基とスルホン化剤とを反応させることにより、非スルホン化ポリア
リーレンにスルホン酸基を導入する方法について説明する。
【0130】
本発明のスルホン化ポリアリーレンは、上記式(5−5)もしくは(5−6)で表される化合物(以下、それぞれ「化合物(5−5)」、「化合物(5−6)」ともいう)と、上記化合物(6−1)もしくは(6−2)と、上記化合物(7)と、上記化合物(8−1)もしくは(8−2)とを反応させて得られる官能基を有するポリアリーレン系共重合体に、上記一般式(9−1)もしくは(9−2)で表される化合物(以下、それぞれ「化合物(9−1)」、「化合物(9−2)」ともいう)を反応させることにより製造することができる。このようにして得られたスルホン酸基含有共重合体は、上記構成単位(1)〜(4)を有する。
【0131】
<化合物(5−5)>
上記式(5−5)中、Ar'''は、−OMまたは−SMで表される置換基を有する芳香
族基を示す。芳香族基としては、たとえば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などが挙げられる。これらの中では、フェニル基およびナフチル基が好ましい。Mは水素原子またはアルカリ金属原子を示す。アルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子などが挙げられる。
【0132】
上記化合物(5−5)としては、たとえば、以下の化合物が挙げられる。
【0133】
【化35】

【0134】
上記化合物(5−5)は、下記一般式(14)で表される構造単位となりうる化合物(以下「化合物(14)」ともいう)と、上記化合物(11)とを、それぞれモノマーとして反応させて合成することができる。
【0135】
【化36】

【0136】
上記化合物(5−5)は、上記式(14)で表される構造単位を5〜99.99モル%、好ましくは10〜99.99モル%、より好ましくは20〜99.99モル%含み、上記式(11)で表される構造単位を0.01〜95モル%、好ましくは0.01〜90モル%、より好ましくは0.01〜80モル%含み、その数平均分子量は5000〜50万、好ましくは1万〜20万である。
【0137】
上記化合物(14)としては、たとえば、特願2003−275409号や特願2003−295974号に記載の化合物などが挙げられる。
上記化合物(14)と化合物(11)とを反応させて化合物(5−5)を製造する際の合成条件は、上記化合物(5−1)を製造する際の合成条件と同様である。
【0138】
<化合物(5−6)>
上記化合物(5−6)としては、たとえば、以下の化合物が挙げられる。
【0139】
【化37】

【0140】
上記化合物(5−6)は、上記化合物(14)と化合物(12)とを、それぞれモノマーとして反応させて合成することができる。化合物(5−6)は、上記式(14)で表される構造単位を5〜99.99モル%、好ましくは10〜99.99モル%、より好ましくは20〜99.99モル%含み、上記式(12)で表される構造単位を0.01〜95
モル%、好ましくは0.01〜90モル%、より好ましくは0.01〜80モル%含み、その数平均分子量は5000〜50万、好ましくは1万〜20万である。
【0141】
上記化合物(14)と化合物(12)とを反応させて化合物(5−6)を製造する際の合成条件は、上記化合物(5−1)を製造する際の合成条件と同様である。
<化合物(9−1),(9−2)>
上記化合物(9−1)および(9−2)としては、たとえば、特願2003−295974号に記載の化合物などが挙げられる。
【0142】
<反応性官能基を有するポリアリーレンの合成>
反応性官能基を有するポリアリーレンは、上記化合物(5−5)もしくは(5−6)と、上記化合物(6−1)もしくは(6−2)と、上記化合物(7)と、上記化合物(8−1)もしくは(8−2)とを反応させることにより得ることができる。反応条件に関しては、前述したとおりである。
【0143】
<反応性官能基とスルホン化剤との反応によるスルホン酸基の導入>
得られた反応性官能基を有するポリアリーレンに、上記化合物(9−1)もしくは(9−2)を反応させることにより、本発明のスルホン化ポリアリーレンを得ることができる。化合物(9−1)もしくは(9−2)を反応させる条件等に関しては、たとえば、特願2003−295974号に記載されている条件等を採用することができる。
【0144】
(スルホン化ポリアリーレンの性質)
上記のようにして得られるスルホン化ポリアリーレンは、重合体1gあたり、好ましくは0.5〜3.0meq/g、より好ましくは0.8〜2.8meq/gのスルホン酸基を含有する。スルホン酸基量が上記範囲よりも少ないと、プロトン伝導度が低く実用的ではない。一方、上記範囲を超えると、耐水性が大幅に低下してしまうことがあるため好ましくない。上記スルホン酸基量は、たとえば、上記モノマーの種類、使用割合、組み合わせ、上記構成単位の比率などを変えることにより、調整することができる。
【0145】
上記スルホン化ポリアリーレンの分子量は、強度と加工性のバランスの観点から、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下「Mw」ともいう)で、1万〜100万、好ましくは2万〜50万、より好ましくは5万〜30万である。Mwが上記範囲より低いと高分子電解質の十分な強度が得られず、上記範囲より高いと加工が困難となる傾向にある。
【0146】
[プロトン伝導膜]
本発明のスルホン化ポリアリーレンを、一次電池用電解質、二次電池用電解質、燃料電池用高分子固体電解質、表示素子、各種センサー、信号伝達媒体、固体コンデンサー、イオン交換膜などに用いることができる。この場合、前記スルホン化ポリアリーレンは、膜状態、溶液状態または粉体状態で用いることが考えられるが、これらの中では、膜状態または溶液状態が好ましい(以下、膜状態のことを「高分子電解質膜」または「プロトン伝導膜」ともいう)。
【0147】
本発明のプロトン伝導膜は、上記スルホン化ポリアリーレンを有機溶剤中で混合し、それを基体上に流延してフィルム状に成形するキャスティング法などにより製造することができる。
【0148】
上記基体としては、通常の溶液キャスティング法に用いられる基体であれば特に限定されず、たとえばプラスチック製、金属製などの基体が用いられ、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの熱可塑性樹脂からなる基体が用いられる。
【0149】
上記スルホン化ポリアリーレンを混合させる溶媒としては、共重合体を溶解する溶媒や膨潤させる溶媒であれば特に限定されず、たとえば、N−メチル−2−ピロリドン、N,
N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメ
チルスルホキシド、ジメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノン、アセトニトリルなどの非プロトン系極性溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロ
ベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、iso−プロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、γ−ブチルラクトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン等のエーテル類などの溶
剤が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、特に溶解性および溶液粘度の面から、N−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」ともいう。)が好ましい。
【0150】
また、上記溶媒として、非プロトン系極性溶剤と他の溶剤との混合物を用いる場合、該混合物の組成は、非プロトン系極性溶剤が95〜25重量%、好ましくは90〜25重量%、他の溶剤が5〜75重量%、好ましくは10〜75重量%(ただし、合計は100重量%)である。他の溶剤の量が上記範囲内にあると、溶液粘度を下げる効果に優れる。この場合の非プロトン系極性溶剤と他の溶剤との組み合わせとしては、非プロトン系極性溶剤としてNMP、他の溶剤として幅広い組成範囲で溶液粘度を下げる効果があるメタノールが好ましい。
【0151】
上記重合体と添加剤を溶解させた溶液のポリマー濃度は、上記スルホン化ポリアリーレンの分子量にもよるが、通常、5〜40重量%、好ましくは7〜25重量%である。ポリマー濃度が上記範囲よりも低いと、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすく、上記範囲を超えると、溶液粘度が高すぎてフィルム化し難く、また、表面平滑性に欠けることがある。
【0152】
なお、溶液粘度は、上記スルホン酸含有ポリアリーレン系共重合体の分子量、ポリマー濃度および添加剤の濃度などによって異なるが、通常、2,000〜100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。溶液粘度が上記範囲よりも低いと、成膜中の溶液の滞留性が悪く、基体から流れてしまうことがあり、上記範囲を超えると、粘度が高過ぎてダイからの押し出しができず、流延法によるフィルム化が困難となることがある。
【0153】
上記のようにして成膜した後、得られた未乾燥フィルムを水に浸漬すると、未乾燥フィルム中の有機溶剤を水と置換することができ、得られるプロトン伝導膜の残留溶媒量を低減することができる。なお、成膜後、未乾燥フィルムを水に浸漬する前に、未乾燥フィルムを予備乾燥してもよい。予備乾燥は、未乾燥フィルムを通常50〜150℃の温度で、0.1〜10時間保持することにより行われる。
【0154】
未乾燥フィルム(予備乾燥後のフィルムも含む。以下同じ。)を水に浸漬する際は、枚葉を水に浸漬するバッチ方式でもよく、基板フィルム(たとえば、PET)上に成膜された状態の積層フィルムのまま、または基板から分離した膜を水に浸漬させて、巻き取っていく連続方式でもよい。また、バッチ方式の場合は、処理後のフィルム表面に皺が形成されるのを抑制するために、未乾燥フィルムを枠にはめるなどの方法で、水に浸漬させることが好ましい。
【0155】
未乾燥フィルムを水に浸漬する際の水の使用量は、未乾燥フィルム1重量部に対して、10重量部以上、好ましくは30重量部以上、より好ましくは50重量部以上の割合である。水の使用量が上記範囲であれば、得られるプロトン伝導膜の残存溶媒量を少なくすることができる。また、浸漬に使用する水を交換したり、オーバーフローさせたりして、常に水中の有機溶媒濃度を一定濃度以下に維持しておくことも、得られる高分子電解質膜の残存溶媒量を低減することに有効である。さらに、高分子電解質膜中に残存する有機溶媒量の面内分布を小さく抑えるためには、水中の有機溶媒濃度を撹拌等によって均質化させることが効果的である。
【0156】
未乾燥フィルムを水に浸漬する際の水の温度は、置換速度および取り扱いやすさの点から、通常5〜80℃、好ましくは10〜60℃の範囲である。高温ほど、有機溶媒と水との置換速度は速くなるが、フィルムの吸水量も大きくなるので、乾燥後に得られる高分子電解質膜の表面状態が悪化することがある。また、フィルムの浸漬時間は、初期の残存溶媒量、水の使用量および処理温度にもよるが、通常10分〜240時間、好ましくは30分〜100時間の範囲である。
【0157】
上記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後乾燥すると、残存溶媒量が低減された膜が得られる。このようにして得られる膜の残存溶媒量は、通常5重量%以下である。また、浸漬条件によっては、得られる膜の残存溶媒量を1重量%以下とすることができる。このような条件としては、たとえば、未乾燥フィルム1重量部に対する水の使用量が50重量部以上であり、浸漬する際の水の温度が10〜60℃、浸漬時間が10分〜10時間である。
【0158】
上記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後、フィルムを30〜100℃、好ましくは50〜80℃で、10〜180分、好ましくは15〜60分乾燥し、次いで、50〜150℃で、好ましくは500mmHg〜0.1mmHgの減圧下、0.5〜24時間、真空乾燥することにより、膜を得ることができる。
【0159】
上記のような方法により得られるプロトン伝導膜は、その乾燥膜厚が、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。
また、上記スルホン酸エステル基あるいはスルホン酸のアルカリ金属塩を有するポリアリーレン系共重合体を、上述したような方法でフィルム状に成形した後、加水分解や酸処理等の適切な後処理を施すことにより、スルホン化ポリアリーレンからなるプロトン伝導膜を製造することができる。
【0160】
上記プロトン伝導膜を製造する際に、上記スルホン化ポリアリーレン以外に、硫酸、リン酸などの無機酸、リン酸ガラス、タングステン酸、リン酸塩水和物、β-アルミナプロ
トン置換体、プロトン導入酸化物等の無機プロトン伝導体粒子、カルボン酸を含む有機酸、スルホン酸を含む有機酸、ホスホン酸を含む有機酸、適量の水などを併用してもよい。
【0161】
また、上記スルホン化ポリアリーレンは、老化防止剤、好ましくは分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物を含有させて使用してもよく、老化防止剤を含有することで電解質としての耐久性をより向上させることができる。
【0162】
本発明で使用することのできるヒンダードフェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5
−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 259
)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン(商品名:IRGANOX 565)、ペンタエリスリチルーテトラ
キス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4
−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(商品名:IRGANOX
1076)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(IRGAONOX 1098)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4?ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:IRGANOX 1330)、トリス
−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト(商品名:IRGANOX 3114)、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチ
ルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:Sumilizer GA-80)などを挙げることができる。
【0163】
上記ヒンダードフェノール系化合物は、スルホン化ポリアリーレン100重量部に対して0.01〜10重量部の量で使用することが好ましい。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0164】
実施例中の各種の評価項目は、下記のようにして測定および評価した。なお、本実施例において、各種測定に用いられるスルホン化ポリマーフィルム(プロトン伝導膜)は、得られたスルホン化ポリマーをN−メチルピロリドンに溶解させた後、キャスティング法によって作製した。
【0165】
(分子量)
共重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、溶媒にNMP緩衝溶液を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン換算の分子量を求めた。NMP緩衝溶液は、NMP(3L)/リン酸(3.3mL)/臭化リチウム(7.83g)の比率で調整した。
【0166】
(スルホン酸基量)
得られたスルホン化ポリマーの水洗水が中性になるまで蒸留水で洗浄して、フリーの残存している酸を除去した後、乾燥させた。この後、所定量を秤量し、THF/水の混合溶剤に溶解させ、フェノールフタレインを指示薬としてNaOHの標準液にて滴定し、中和点からスルホン酸基量(イオン交換容量)(meq/g)を求めた。
【0167】
(破断強度および弾性率の測定)
電解質膜の破断強度および弾性率を、JIS K7113に準じて測定した(引っ張り速度:50mm/min)。ただし、弾性率は、標線間距離をチャック間距離とし算出した。JIS K7113に従い、温度23±2℃、相対湿度50±5%の条件下で48時間試料の状態調整を行った。また、試料の打ち抜きは、JIS K6251に記載の7号ダンベルを用いた。引っ張り試験測定装置は、INSTRON製5543を用いた。
【0168】
(耐折り曲げ性)
厚さ50μmに製膜したスルホン化ポリマーフィルムについて、耐折り曲げ性試験機を用いて、屈曲回数166回/分、荷重200g、屈曲変形角度135℃の条件で破損までの折り曲げ回数を測定した。破損までの折り曲げ回数が500回以上のものを良とし、500回未満のものを不良とした。
【0169】
(フェントン試験)
3重量%の過酸化水素に硫酸鉄・七水和物を鉄イオンの濃度が20ppmになるようにフェントン試薬を調製した。250mlのポリエチレン製容器に200gのフェントン試薬を採取し、3cm×4cmに切削したスルホン化ポリマーフィルムを投入して密栓後、40℃の恒温水槽に浸漬させ、30時間のフェントン試験を行った。フェントン試験後、フィルムを取り出し、イオン交換水にて水洗後、25℃、50%RHで12時間状態調整した後、各種物性測定を行った。フェントン試験における重量保持率は、下記の数式により算出した。
重量保持率(%)=試験後のフィルム重量/試験前のフィルム重量×100
(プロトン伝導度)
まず、交流抵抗を、5mm幅の短冊状の試料膜の表面に、白金線(φ=0.5mm)を押し当て、恒温恒湿装置中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンス測定から求めた。すなわち、85℃、相対湿度90%の環境下で交流10kHzにおけるインピーダンスを測定した。抵抗測定装置として、(株)NF回路設計ブロック製のケミカルインピーダンス測定システムを用い、恒温恒湿装置には、(株)ヤマト科学製のJW241を使用した。白金線は、5mm間隔に5本押し当てて、線間距離を5〜20mmに変化させ、交流抵抗を測定した。次いで、線間距離と抵抗の勾配から、膜の比抵抗を算出し、比抵抗の逆数からプロトン伝導度を算出した。
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
(熱水耐性試験)
フィルムを2.0cm×3.0cmにカットして秤量し、試験用のテストピースとした。24℃、RH50%条件下にて状態調整した後、このフィルムを、ポリカーボネート製の250ml瓶に入れ、そこに約100mlの蒸留水を加え、プレッシャークッカー試験機(HIRAYAMA MFS CORP製「PC-242HS」)を用いて、120℃で24時間加温した。試験
終了後、各フィルムを熱水中から取り出し、軽く表面の水をキムワイプで拭き取り、含水時の重量を秤量し、含水率を求めた。また、そのフィルムの寸法を測定し、膨潤率を求めた。さらに、この膜を24℃、RH50%条件下で状態調整し、水を留去して、熱水試験後の重量を秤量し、重量残存率を求めた。
【0170】
(フッ素原子の含有量)
フッ素原子の含有量(重量%)は、蛍光X線分析により求めた。
〔実施例1〕
攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた1Lの三口フラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル120.4g(300mmol)、2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリル2.8g(18mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド3.93g(6mmol)、ヨウ化ナトリウム1.35g(9mmol)、トリフェニルホスフィン31.5g(120mmol)および亜鉛47.1g(720mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。ここにN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)361mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc365mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。ろ液をメタノール/塩酸中に注いでポリマーを凝固させ、凝固ポリマーをメタノールで洗浄した後、風乾させた。乾燥させた凝固ポリマーをテトラハイドロフランに再溶解し、メタノールで凝固させることにより精製を行った。得られたポリマー(式(30−1))の数平均分子量(Mn)は12,400、重量平均分子量(Mw)は28,500であった。
【0171】
【化38】

【0172】
攪拌機、温度計、Dean-stark管、窒素導入管および冷却管を取り付けた1Lの三口フラスコに、得られた式(30−1)で表される重合体(Mn:12400)67.0g(5
.4mmol)、2,6−ジクロロベンゾニトリル(2,6−DBN)1.65g(9.6mmol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(Bis−AF)20.2g(60mmol)および炭酸カリウム11.7g(78mmol)をはかりとった。窒素置換後、DMAc300mLおよびトルエン150mLを加えて攪拌し、オイルバスで反応液を150℃で加熱還流させた。反応によって生成した水はDean-stark管にトラップした。3時間後、水の生成がほとんど認められなくなったところで、トルエンをDean-stark管から系外に除去し、160℃で5時間反応を行った。次に、反応溶液を50℃まで冷却した後、パーフルオロビフェニル(PFBP)15.0g(45mmol)を加えてさらに2時間重合を行った。反応終了後、DMAc900mlを加えて反応溶液を希釈し、臭化リチウム51.7g(595mmol)を加えた。7時間攪拌後、反応液をアセトン5Lに注いで生成物を沈殿させた。次いで、得られた生成物を1N塩酸、純水の順で洗浄した後、乾燥して目的の重合体93gを得た。得られた重合体のMwは135,000であった。得られた重合体は式(30−2)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.32meq/gであった。
【0173】
【化39】

【0174】
〔実施例2〕
実施例1において、2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリルを4−クロロ−4’−フルオロベンゾフェノン(CFBP)4.2g(18mmol)に変更し、得られた共重合体(Mn:12000)64.8g(5.4mmol)を用いて重合し、臭化リチウム4
9.33g(294mmol)を用いて加水分解したこと以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、Mwが155,000のスルホン化ポリマーを得た。このポリマーのイオン交換容量は2.29meq/gであった。
【0175】
〔実施例3〕
実施例1において、式(30−1)で表される重合体(Mn:12400)52.8g
(4.2mmol)、2,6−DBN1.86g(10.8mmol)、PFBPをパーフルオロベンゼン(PFB)8.37g(45mmol)、臭化リチウム40.2g(4
63mmol)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、Mwが128,000のスルホン化ポリマーを得た。このポリマーのイオン交換容量は2.31meq/gであった。
【0176】
〔実施例4〕
実施例1において、式(30−1)で表される重合体(Mn:12400)63.24
g(5.1mmol)、2,3、5、6−テトラフルオロベンゾニトリル1.73g(9.9mmol)、臭化リチウム48.8g(562mmol)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、Mwが135,000のスルホン化ポリマーを得た。このポリマーのイオン交換容量は2.28meq/gであった。
【0177】
〔実施例5〕
攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた1Lの三口フラスコに、1,3−〔7−(2,5−ジクロロベンゾイル)フェノキシ〕ナフタレンジスルホン酸ネオペンチル208.1g(300mmol)、2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリル2.8g(18mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド3.93g(6mmol)、ヨウ化ナトリウム1.35g(9mmol)、トリフェニルホスフィン31.5g(120mmol)および亜鉛47.1g(720mmol)をはかりとり、乾燥窒素置換した。ここにDMAc361mLを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間攪拌を続けた後、DMAc365mLを加えて希釈し、不溶物を濾過した。ろ液をメタノール/塩酸中に注いでポリマーを凝固させ、凝固ポリマーをメタノールで洗浄した後、風乾させた。乾燥させた凝固ポリマーをテトラハイドロフランに再溶解し、メタノールで凝固させることにより精製を行った。得られたポリマー(式(30−3))のMnは11,000、Mwは23,400であった。
【0178】
【化40】

【0179】
攪拌機、温度計、Dean-stark管、窒素導入管および冷却管をとりつけた1Lの三口フラスコに、得られた式(30−3)で表される重合体(Mn:11,100)52.8g(
4.8mmol)、2,6−DBN1.76g(10.2mmol)、Bis−AF20.2g(60mmol)および炭酸カリウム11.7g(78mmol)をはかりとった。窒素置換後、DMAc300mLおよびトルエン150mLを加えて攪拌し、オイルバ
スで反応液を150℃で加熱還流させた。反応によって生成した水はDean-stark管にトラップした。3時間後、水の生成がほとんど認められなくなったところで、トルエンをDean-stark管から系外に除去し、160℃で5時間反応を行った。次に、反応溶液を50℃まで冷却した後、PFBP15.0g(45mmol)を加えてさらに2時間重合を行った。反応終了後、DMAc900mlを加えて反応溶液を希釈し、臭化リチウム21.8g(252mmol)を加えた。7時間攪拌後、反応液をアセトン5Lに注いで生成物を沈殿させた。次いで、得られた生成物を1N塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して目的の重合体93gを得た。得られた重合体のMwは145,000であった。得られた重合体は式(30−4)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.28meq/gであった。
【0180】
【化41】

【0181】
〔実施例6〕
実施例5において、2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリルをCFBP4.2g(18mmol)に変更し、得られた共重合体(Mn:11500)62.1g(5.4mm
ol)を用いて重合を行い、臭化リチウム25.5g(294mmol)を用いて加水分解を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、Mwが152,000のスルホン酸基含有ポリマーを得た。このポリマーのイオン交換容量は2.27meq/gであった。
【0182】
〔実施例7〕
撹拌羽根、温度計および窒素導入管を取り付けた500mLの3口フラスコに、2,5−ジクロロ−4’−(4−フェノキシフェノキシ)ベンゾフェノン(2,5−DCPPB)84.0g(193mmol)、CFBP1.64g(7mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド3.93g(6mmol)、よう化ナトリウム3.90g(26mmol)、トリフェニルホスフィン21.0g(80mmol)および亜鉛31.4g(480mmol)をはかりとった。70℃に加熱したオイルバスにフラスコをつけ、2時間真空乾燥した。内部を数回乾燥窒素置換した後、脱水したN-メチルピ
ロリドン187mlを加えて重合を開始した。反応温度が90℃を超えないように制御しながら3時間重合を続けた。次に、テトラヒドロフラン250mlを加えて重合溶液を希釈し、不溶物をろ過した。ろ液を4Lのメタノールに注ぎ、反応物を凝固させた。これをろ過、乾燥し、目的の重合体(式(30−5))69gを得た。GPC(ポリスチレン換算)で求めた生成物のMnは13,700、Mwは43,300であった。
【0183】
【化42】

【0184】
撹拌羽根、温度計、Dean−stark管、還流冷却管および窒素導入管を取り付け
た500mLの3口フラスコに、式(30−5)で表される重合体(Mn:13,700
)65.8g(4.8mmol)、2,6−DBN1.76g(10.2mmol)、Bis−AF20.2g(60mmol)、炭酸カリウム11.7g(78mmol)、DMAc300mLおよびトルエン150mLを加えた。反応液を加熱撹拌し、2時間還流させ、Dean−stark管から反応によって生成した水と、トルエン約300mLを
除去した。反応溶液を50℃まで冷却した後、PFBP15.0g(45mmol)を加えて2時間重合した。DMAc900mLを加えて反応溶液を希釈後、不溶の塩をろ過によって除去した。ろ液をメタノール7.5Lに注ぎ、重合体を沈殿させた。これをろ過、乾燥し、目的の共重合体(式(30−6))95gを得た。得られた共重合体のMwは184,000であった。
【0185】
【化43】

【0186】
撹拌羽根、温度計および窒素導入管を取り付けた300mLの3口フラスコに、得られた式(30−6)で表される重合体20gおよび濃硫酸200mLをとり、70℃で5時間撹拌した。ポリマーをろ過し、蒸留水で、洗浄液のpHが中性になるまで洗浄した。次に、真空乾燥し、目的の重合体23gを得た。得られた重合体のMwは194,000であった。得られた重合体は下記式(30−7)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.29meq/gであった。
【0187】
【化44】

【0188】
〔実施例8〕
実施例7において、CFBPを2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリル1.09g(7mmol)に変更し、得られた共重合体(Mn:12,700)61.0(4.8mm
ol)を用いたこと以外は、実施例7と同様の方法で合成を行い、Mwが173,000のスルホン化ポリマーを得た。このポリマーのイオン交換容量は2.23meq/gであった。
【0189】
〔実施例9〕
攪拌羽根、温度計および窒素導入管を取り付けた1Lのフラスコに、2,5−ジクロロ−4’−(テトラヒドロ−2−ピラニルオキシ)ベンゾフェノン105.4g(300mmol)、2−クロロ−6−フルオロベンゾニトリル2.8g(18mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド3.93g(6mmol)、ヨウ化ナトリウム1.35g(9mmol)、トリフェニルホスフィン31.5g(120mmol)および亜鉛47.1g(720mmol)をとり、真空乾燥した。乾燥窒素でフラスコ内を置換した後、DMAc316mLを加え、重合を開始した。重合中は反応液の温度が70〜90℃の範囲になるように制御した。3時間後、DMAc1200mLを加えて希釈し、不溶物をろ過して、重合体溶液のろ液を得た。
【0190】
この重合体溶液のろ液のうち微量を採取して、メタノールに注いで重合体を沈殿させ、ろ過により沈殿物を分別した後、この沈殿物を乾燥させた。また、この固体についてGPCで求めたMnは12,800、Mwは30,000であった。一方、残りの重合体溶液のろ液を、濃塩酸10vol%を含むメタノール6Lに注ぎ、重合体を沈殿させた。次に、ろ過により沈殿物を分別した後、得られた固体を乾燥させて、目的の重合体(式(30−8))80.2gを得た。
【0191】
【化45】

【0192】
撹拌羽根、温度計、Dean−stark管、還流冷却管および窒素導入管を取り付け
た500mLの3口フラスコに、得られた式(30−8)で表される重合体(Mn:12800)69.1g(5.4mmol)、Bis−AF20.2g(60mmol)、2,6−DBN1.65g(9.6mmol)、炭酸カリウム11.7g(78mmol)、DMAc300mLおよびトルエン150mLを加えた。反応液を加熱撹拌し、2時間還流させ、Dean−stark管から反応によって生成した水と、トルエン約300m
Lを除去した。反応溶液を50℃まで冷却した後、PFBP15.0g(45mmol)を加え、2時間重合した。DMAc900mLを加えて反応溶液を希釈後、不溶の塩をろ過によって除去した。ろ液をメタノール7.5Lに注ぎ、重合体を沈殿させた。これをろ過、乾燥し、目的の共重合体(式(30−9))98gを得た。
【0193】
【化46】

【0194】
得られた式(30−9)で表される共重合体15.2gをDMAc250mLに添加し、100℃に加熱しながら攪拌し溶解させた。次に、水素化リチウム1.06g(133mmol)を加え、2時間攪拌した後、ブタンスルトン18.1g(133mmol)を加え、8時間反応させた。次いで、反応液中の不溶物をろ過した後、ろ液を1N塩酸に注いで重合体を沈殿させた。沈殿させた重合体を1N塩酸で洗浄した後、蒸留水でpHが中性になるまで洗浄した。この重合体を75℃で乾燥させて、粉末状の重合体18.2gを得た。得られた重合体のMwは140,000であった。得られた重合体は下記式(30−10)で表されるスルホン化ポリアリーレンと推定される。このポリマーのイオン交換容量は1.83meq/gであった。
【0195】
【化47】

【0196】
〔実施例10〕
実施例9において、2,5−ジクロロ−4’−(テトラヒドロ−2−ピラニルオキシ)ベンゾフェノンを2,5−ジクロロ−2’,4’−ジ(テトラヒドロ−2−ピラニルオキシ)ベンゾフェノン135.4g(300mmol)に変更し、得られた重合体(Mn:11,200)47.0g(4.2mmol)を用いたこと以外は、実施例9と同様にして式(30−11)で表される共重合体を合成した。
【0197】
【化48】

【0198】
さらに、得られた式(30−11)で表される共重合体15.2g、水素化リチウム2
.16g(266mmol)、ブタンスルトン36.2g(266mmol)を用いたこと以外は、実施例9と同様の方法で合成を行った。得られた共重合体(式(30−12))のMwは135,000であった。このポリマーのイオン交換容量は2.25meq/gであった。
【0199】
【化49】

【0200】
〔比較例1〕
実施例1において、式(30−1)で表されるポリマーの使用量を93.0g(7.5mmol)、2,6−DBNの使用量を9.0g(52.2mmol)、PFBPの使用量を0.1g(0.3mmol)、臭化リチウムの使用量を71.8g(827mmol)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、Mwが138,000のスルホン化ポリマーを得た。このポリマーのイオン交換容量は2.68meq/gであった。
【0201】
〔比較例2〕
実施例7において、式(30−5)で表されるポリマーの使用量を90.4g(6.6mmol)、2,6−DBNの使用量を9.1g(53.1mmol)、PFBPのし容量を0.1g(0.3mmol)に変更したこと以外は、実施例7と同様の方法で合成を行い、Mwが183,000のスルホン化ポリマーを得た。このポリマーのイオン交換容量は2.65meq/gであった。
【0202】
〔比較例3〕
実施例9において、(30−8)で表されるポリマーの使用量を115.2g(9mmol)、2,6−DBNの使用量を8.72g(5.1mmol)、PFBPの使用量を0.1g(0.3mmol)に変更したこと以外は、実施例9と同様の方法で合成を行い、Mwが143,000のスルホン化ポリマーを得た。このポリマーのイオン交換容量は2.25meq/gであった。
【0203】
〔評価結果〕
実施例1〜10および比較例1〜3でそれぞれ得られたスルホン化ポリマーの特性を表1に示す。
【0204】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位と、
下記一般式(2−1)または(2−2)で表される構成単位と、
下記一般式(3)で表される構成単位と
を含有することを特徴とするポリアリーレン系共重合体。
【化1】

[式(1)中、Yは、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、
−(CF2i−(iは1〜10の整数である)および−C(CF32−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、
Zは、独立に単結合、または、−O−、−S−、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)および−C(CH32−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、
Arは、−SO3H、−O−(CR2eSO3Hまたは−S−(CR2eSO3Hで表され
る置換基を有する芳香族基を示し、
Rは、独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、および、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、eは1〜20の整数を示し、
mは0〜10の整数を示し、m’は0〜10の整数を示し、m''は1〜100の整数を示し、kは1〜4の整数を示す。]
【化2】

[式(2−1)および(2−2)中、Xは2価の基または単結合を示し、R11〜R13は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を示し、pは1〜4の整数を示し、qは1〜4の整数を示す。]
【化3】

[式(3)中、R21〜R23は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示す。]
【請求項2】
下記一般式(4−1)または(4−2)で表される構成単位をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレン系共重合体。
【化4】

[式(4−1)および(4−2)中、R31〜R38は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、
Jは、アルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO−および−SO2−からなる群より選ばれる少なく
とも1種の基を示す。]
【請求項3】
スルホン酸基を0.5〜3.0meq/g含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリアリーレン系共重合体。
【請求項4】
フッ素原子を6重量%以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。
【請求項5】
下記一般式(5−1)または(5−2)で表される化合物と、
下記一般式(6−1)または(6−2)で表される化合物と、
下記一般式(7)で表される化合物と、
下記一般式(8−1)または(8−2)で表される化合物と
を反応させることを特徴とするポリアリーレン系共重合体の製造方法。
【化5】

【化6】

[式(5−1)および(5−2)中、R21〜R28は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、
Yは、それぞれ独立に−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、
−(CF2i−(iは1〜10の整数である)および−C(CF32−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、
Zは、独立に単結合、または、−O−、−S−、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)および−C(CH32−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、
mは0〜10の整数を示し、m’は0〜10の整数を示し、m”は1〜100の整数を示し、kは1〜4の整数を示し、
aは炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはアルカリ金属原子を示し、
Ar’は−SO3b、−O−(CR2eSO3bまたは−S−(CR2eSO3bで表される置換基を有する芳香族基を示し、
bは炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはアルカリ金属原子を示し、
Rは、独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、および、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、eは1〜20の整数を示し、
VおよびV’は、それぞれ独立にフッ素原子または塩素原子を示す。]
【化7】

[式(6−1)および(6−2)中、Xは2価の基または単結合を示し、R11〜R13は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を示し、pは1〜4の整数を示し、qは1〜4の整数を示す。]
【化8】

[式(7)中、R21〜R23は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、
VおよびV’は、それぞれ独立にフッ素原子または塩素原子を示す。]
【化9】

[式(8−1)および(8−2)中、R31〜R38は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、
Jは、アルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO−および−SO2−からなる群より選ばれる少なく
とも1種の基を示す。]
【請求項6】
下記一般式(5−3)または(5−4)で表される化合物と、
下記一般式(6−1)または(6−2)で表される化合物と、
下記一般式(7)で表される化合物と、
下記一般式(8−1)または(8−2)で表される化合物と
を反応させて得られたポリアリーレン系共重合体をスルホン化することを特徴とするポリアリーレン系共重合体の製造方法。
【化10】

【化11】

[式(5−3)および(5−4)中、R21〜R28は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、
Yは、それぞれ独立に−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、
−(CF2i−(iは1〜10の整数である)および−C(CF32−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、
Zは、独立に単結合、または、−O−、−S−、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)および−C(CH32−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、
mは0〜10の整数を示し、m’は0〜10の整数を示し、m”は1〜100の整数を示し、
Ar''は、置換基を有しない芳香族基を示し、
VおよびV’は、それぞれ独立にフッ素原子または塩素原子を示す。]
【化12】

[式(6−1)および(6−2)中、Xは2価の基または単結合を示し、R11〜R13は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を示し、pは1〜4の整数を示し、qは1〜4の整数を示す。]
【化13】

[式(7)中、R21〜R23は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、
VおよびV’は、それぞれ独立にフッ素原子または塩素原子を示す。]
【化14】

[式(8−1)および(8−2)中、R31〜R38は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、
Jは、アルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO−および−SO2−からなる群より選ばれる少なく
とも1種の基を示す。]
【請求項7】
下記一般式(5−5)または(5−6)で表される化合物と、
下記一般式(6−1)または(6−2)で表される化合物と、
下記一般式(7)で表される化合物と、
下記一般式(8−1)または(8−2)で表される化合物と
を反応させて得られた官能基を有するポリアリーレン系共重合体に、
下記一般式(9−1)または(9−2)で表される化合物を反応させることを特徴とするポリアリーレン系共重合体の製造方法。
【化15】

【化16】

[式(5−5)および(5−6)中、R21〜R28は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、
Yは、それぞれ独立に−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、
−(CF2i−(iは1〜10の整数である)および−C(CF32−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、
Zは、独立に、単結合、または、−O−、−S−、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)および−C(CH32−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、
mは0〜10の整数を示し、m’は0〜10の整数を示し、m”は1〜100の整数を示し、
Ar'''は−OMまたは−SMで表される置換基を有する芳香族基を示し、
Mは水素原子またはアルカリ金属原子を示し、
VおよびV’は、それぞれ独立にフッ素原子または塩素原子を示す。]
【化17】

[式(6−1)および(6−2)中、Xは2価の基または単結合を示し、R11〜R13は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を示し、pは1〜4の整数を示し、qは1〜4の整数を示す。]
【化18】

[式(7)中、R21〜R23は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基、アリール基およびニトリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、
VおよびV’は、それぞれ独立にフッ素原子または塩素原子を示す。]
【化19】

[式(8−1)および(8−2)中、R31〜R38は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基、アリル基およびアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、
Jは、アルキレン基、フッ素置換アルキレン基、アリール置換アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、フルオレニリデン基、−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−COO−、−SO−および−SO2−からなる群より選ばれる少なく
とも1種の基を示す。]
【化20】

[式(9−1)および(9−2)中、Rは、独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、および、一部もしくはすべてがハロゲン化されたハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子または基を示し、eは1〜20の整数を示し、Lは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示し、Mは水素原子またはアルカリ金属原子を示す。]
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリアリーレン系重合体を含有することを特徴とするプロトン伝導膜。

【公開番号】特開2006−342243(P2006−342243A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168659(P2005−168659)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】