説明

ポリアルキル窒素又はリン含有フルオロアルキルスルホニルオニウム塩を含むミクロ構造

ミクロ構造化表面を含む光学フィルムなどのフィルムが記載される。ミクロ構造は、帯電防止剤として特定のポリアルキル窒素又はリン含有フルオロアルキルスルホニルオニウム塩を含む重合性樹脂組成物の反応生成物である。少なくとも2つの芳香環を含むジ(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも1つと、反応性希釈剤と、帯電防止剤として特定のポリアルキル窒素又はリン含有フルオロアルキルスルホニルオニウム塩と、を含む重合性樹脂もまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
米国特許出願公開第2005/0148725号に記載されているような特定のミクロ構造化光学製品は、一般に「輝度向上フィルム」と呼ばれる。輝度向上フィルムは、エレクトロルミネッセントパネル、ラップトップコンピュータディスプレイ、ワードプロセッサ、デスクトップモニタ、テレビ、ビデオカメラ、並びに自動車及び飛行機用ディスプレイに使用されるものなどを含む液晶ディスプレイ(LCD)のようなバックライト付きフラットパネルディスプレイの輝度を増大するため、多数の電子製品に利用される。
【0002】
輝度向上フィルムは、望ましくは、生じる輝度増加(すなわち、「ゲイン」)に関連する輝度向上フィルムの屈折率を包含する固有の光学的及び物理的特性を示す。輝度の向上は、ディスプレイを照明するのにより少ない出力を使用することによって電子製品がより効率的に作動することを可能にし、それによって電力消費を低減し、その構成要素により低い熱負荷が加わり、製品の寿命を延長する。
【0003】
輝度向上フィルムは、硬化又は重合化される高屈折率モノマーを含む重合性樹脂組成物から調製されてきた。多くの場合、ハロゲン化(例えば臭素化)モノマー又はオリゴマーを用いて、例えば1.56以上の屈折率を得る。高屈折率組成物を得るための別の方法は、高屈折率ナノ粒子を含む重合性組成物を用いることである。
【発明の概要】
【0004】
発明が解決しようとする課題
課題を解決するための手段
一実施形態では、以下の一般式を有する帯電防止剤を含む重合性樹脂組成物の反応生成物をミクロ構造が含む、重合化されたミクロ構造化表面を含む、輝度向上フィルムなどの、ミクロ構造化(例えば、光学)フィルムが、記載される。
【0005】
JH4−x A[SO
式中、
xは3〜4の範囲であり、
Rは独立してカテナリー酸素原子又は少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含むか又は含まないC〜C12アルキル基であり、
Jは窒素又はリンであり、
Aは窒素又は炭素であり、
は独立してフッ素化C〜Cアルキル基であり、
mは2〜3の範囲である。
【0006】
ミクロ構造は、典型的には、ミクロ構造とは異なる組成を有する(所望により下地処理された)ベースフィルム層(偏光フィルムなど)上に配置される。
【0007】
このような実施形態では、ミクロ構造は、ベースフィルム層に対して少なくとも90%のクロスハッチ付着性を呈する。
【0008】
別の実施形態では、少なくとも2つの芳香環を含むジ(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも1つと、反応性希釈剤と、一般式RJH4−x A[SOを有する帯電防止剤(上記)と、を含む重合性樹脂組成物が記載される。
【0009】
これらの実施形態の各々において、帯電防止剤は、約0.5重量%〜約15重量%の固体、好ましくは約3重量%〜約5重量%の固体、の範囲の量で存在し得る。更に、電荷減衰は、21.1℃(70°F)及び50%相対湿度で試験するとき、好ましくは1.5秒未満、より好ましくは0.5秒未満である。
【0010】
Rの炭素原子の合計は、少なくとも5、6、7又は8である。いくつかの実施形態では、xは4であり、Rの炭素原子の合計は少なくとも7である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRfは、CFである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRはメチルであり、他のR基は少なくとも2つの炭素原子を含む。他の実施形態では、xは3であり、各Rは少なくとも2つの炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、Jは窒素である。他の実施形態では、Jはリンであり、xは4である。
【0011】
一実施形態では、Rはヒドロキシル末端基を含む。重合性樹脂組成物は好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの混合物などの(例えば、モノ)カルボン酸を少なくとも1つ更に含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここでは、ミクロ構造化表面を含む(例えば、光学)フィルムが記載される。ミクロ構造は、帯電防止剤として特定のポリアルキル窒素又はリン含有フルオロアルキルスルホニルオニウム塩を含む重合性樹脂組成物の反応生成物を含む。
【0013】
用語「導電性」は多くの場合、産業において「静電気拡散性」を指すために使用されるが、これらの用語は同義ではない。具体的には、導電性材料は、1×10オーム/スクエア以下の表面抵抗率を有し、これに対して、帯電防止材料は典型的には、1×1012オーム/スクエア以下の表面抵抗率を有すると考えられる。本明細書に開示されているミクロ構造化(例えば、光学)フィルムは、少なくとも約1×10、1×10、1×10、1×1010オーム/スクエア又は1×1011オーム/スクエアの表面抵抗率を呈し、それでも帯電防止特性を維持することができる。
【0014】
本明細書に記載されている光学フィルムは典型的には、(例えば、予備成形された)光透過性ベース(例えば、フィルム)層及び光透過性の重合化されたミクロ構造化光学層から構成される。ベース層及び光学層は、同一物から形成することができるが、典型的には異なる高分子材料から形成される。
【0015】
米国特許第5,175,030号(Lu et al.)及び同第5,183,597号(Lu)に記載のように、ミクロ構造保有物品(例えば輝度向上フィルム)は、(a)重合性組成物を調製する工程と、(b)マスターのキャビティーを満たすのにかろうじて十分な量でマスターネガミクロ構造化成形表面上に重合性組成物を堆積させる工程と、(c)予備成形されたベース(PETフィルムなど)とマスター(少なくとも一方は可撓性である)との間で重合性組成物のビードを移動させることによりキャビティーを満たす工程と、(d)組成物を硬化させる工程と、を含む方法により作製可能である。マスターは、ニッケル、ニッケルメッキ銅、若しくは黄銅のような金属製であってよく、又は重合条件下で安定でありかつ好ましくはマスターから重合化材料をきれいに取り出すことができる表面エネルギーを有する熱可塑性材料であってもよい。
【0016】
有用なベース材料としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルローストリアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ナフタレンジカルボン酸系コポリマー又はブレンド、ポリシクロオレフィン、ポリイミド、及びガラスが挙げられる。任意に応じて、基部材料には、これらの物質の混合物又は組み合わせを含めることができる。更に、ベースは多層であってもよいし、又は連続相の中に懸濁又は分散した分散成分を含有してもよい。
【0017】
輝度向上フィルムなどのミクロ構造保有製品の場合、好ましいベース材料の例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネートが挙げられる。有用なPETフィルムの例としては、フォトグレードのポリエチレンテレフタレート及びMELINEX(商標)PET(DuPont Films(Wilmington,Del)から入手可能)が挙げられる。
【0018】
いくつかのベース材料は、光学的に活性であり得、及び偏光板として作用することができる。フィルムを通る光の偏光は、例えば通過光を選択的に吸収する、フィルム材料内二色偏光子の包含により実現され得る。光の偏光はまた、配列雲母チップのような無機材料を組み込むことによって、又は、連続フィルム中に分散している光変調液晶の液滴といった連続フィルム中に分散している不連続相によって実現させることができる。代替手段として、異なる材料のマイクロファイン層から偏光フィルムを調製することができる。フィルム内の材料は、例えば、フィルムの延伸、電場又は磁場の印加、及びコーティング技術のような方法を用いることによって、偏光配向に揃えることができる。
【0019】
偏光フィルムの例としては、米国特許第5,825,543号及び同5,783,120号に記載のものが挙げられる。輝度上昇フィルムとの組み合わせによるこれらの偏光フィルムの使用は、米国特許第6,111,696号に記載されている。ベースとして使用できる偏光フィルムの別の例は、米国特許第5,882,774号に記載されたフィルムである。
【0020】
有用な基材としては、Vikuiti(商標)Dual Brightness Enhanced Film(DBEF)、Vikuiti(商標)Brightness Enhanced Film(BEF)、Vikuiti(商標)Diffuse Reflective Polarizer Film(DRPF)、Vikuiti(商標)Enhanced Specular Reflector(ESR)、及びVikuiti(商標)Advanced Polarizing Film(APF)として販売されている市販の光学フィルムが挙げられ、いずれも3M Companyから入手可能である。
【0021】
ベースへの光学層の付着を促進するために、ベースフィルム材料の1つ以上の表面に、所望により下地処理又は他の処理を施すことができる。ポリエステルベースフィルム層に特に好適なプライマーには、米国特許第5,427,835号に記載されているようなスルホポリエステルプライマーが挙げられる。プライマー層の厚さは、典型的には少なくとも20nmであり、一般的には、300nm以下から400nm以下である。
【0022】
光学層は、任意の多数の有用なパターンを有することができる。これらは、規則的又は不規則的なプリズムパターンを含み、それは環状プリズムパターン、キューブコーナーパターン又は任意のその他のレンズ状微細構造であり得る。有用なミクロ構造は、輝度向上フィルムとして使用するための完全内部反射フィルムとして作用できる定形プリズムパターンである。別の有用なミクロ構造は、反射フィルムとして使用するための再帰反射フィルム又は素子として作用できるコーナーキューブプリズムパターンである。別の有用なミクロ構造は、光学ディスプレイに使用するための光学回転フィルム又は素子として作用できるプリズムパターンである。
【0023】
重合化された微細構造化表面を有する1つの好ましい光学フィルムは、輝度向上フィルムである。輝度向上フィルムは、一般に、照明装置の軸上の輝き(本明細書で「輝度」と呼ばれる)を増強する。ミクロ構造のトポグラフィーは、フィルム表面上に複数のプリズムがあり、その結果フィルムを使用して反射及び屈折を通じて光を転送することができる。プリズムの高さは典型的には約1〜約75ミクロンである。ラップトップコンピューター、時計などに見られるような光学ディスプレイで使用した場合、微細構造化光学フィルムは、光学ディスプレイを貫通する法線軸から所望の角度で配設された1対の平面内に、ディスプレイから散逸する光を制限することにより、光学ディスプレイの輝度を増大させることが可能である。結果として、許容可能な範囲の外側でディスプレイを出るであろう光は、反射されてディスプレイへ戻り、そこでその一部が「再利用」され、ディスプレイから放出できる角度でミクロ構造フィルムに戻されることができる。この再利用は、ディスプレイに所望の輝度を提供するために必要な電力消費量を低減することができることから、有用である。
【0024】
輝度向上フィルムのミクロ構造化光学層は、一般に、フィルムの長さ又は幅に沿って伸びる複数の平行な長手方向隆起部を含む。これらの隆起部は、複数個のプリズム頂点から形成できる。それぞれのプリズムは、第1ファセット及び第2ファセットを有する。プリズムは、プリズムが形成されている第1表面及び実質的に平ら又は平面でありかつ第1表面に対向する第2表面を有するベースの上に形成されている。直角プリズムとは、頂角が典型的には約90°であることを意味する。しかし、この角度は70°〜120°の範囲の場合もあり、80°〜100°の範囲でもよい。これらの頂点は、先鋭形、丸形、又は平坦形若しくは切頭形とすることができる。例えば、隆起部は4〜7〜15マイクロメートルの範囲の半径に丸めることができる。プリズム頂点間の間隔(又はピッチ)は、5〜300マイクロメートルであることができる。プリズムは、米国特許第7,074,463号に記載のもののように種々のパターンに調製することができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
薄い輝度向上フィルムの場合、ピッチは、好ましくは10〜36マイクロメートル、より好ましくは18〜24マイクロメートルである。これは、好ましくは約5〜18マイクロメートル、より好ましくは約9〜12マイクロメートルのプリズム高さに相当する。プリズム面は同一である必要はなく、プリズムは互いに傾いていてもよい。光学物品の全厚とプリズム高さとの関係は、変化してよい。しかしながら、典型的には、明確なプリズム面を有する比較的薄い光学層を用いるのが望ましい。ほぼ20〜35マイクロメートル(1ミル)の厚みを備えた基材上の薄い輝度向上フィルムの場合、プリズム高さ対総厚みの比は通常、0.2〜0.4である。
【0026】
本明細書に記載のミクロ構造化物(例えば、輝度向上フィルム)は、重合化されたミクロ構造化表面(例えば、ミクロ構造化光学層)を含み、ここで、ミクロ構造は、帯電防止剤を含む重合性樹脂組成物の反応生成物を含む。
【0027】
種々の帯電防止剤が約2〜10秒での静電気減衰時間を提供できる(実施例に記載される試験方法に従って測定されるとき)が、特定の種類及び量の帯電防止剤のみが1.5秒未満の静電気減衰時間を提供できることが判明している。好ましい帯電防止剤は、0.5、0.4、0.3、0.2又は0.1秒以下の静電気減衰時間を提供する。
【0028】
ミクロ構造が、光透過性(例えば、ポリエステル)フィルムなどのベース層上に配置される実施形態の場合、帯電防止剤の種類及び量はまた、重合性樹脂中のその存在がベースフィルム層との重合化ミクロ構造の付着性を損なわないように、選択される。ミクロ構造は、ベースフィルム層に対して少なくとも80%、85%又は90%のクロスハッチ付着性を呈する(実施例に記載される試験方法に従って測定されるとき)。最も好ましい実施形態では、クロスハッチ付着性は、95〜100%である。
【0029】
帯電防止剤は、好ましくは以下の一般式を有するポリアルキル窒素又はリン含有フルオロアルキルスルホニルオニウム塩である。
【0030】
JH4−x A[SO
式中、
xは3〜4の範囲であり、
Rは独立してカテナリー酸素原子又はヒドロキシル末端基を含むか又は含まないC〜C12アルキル基であり、
Jは窒素又はリンであり、
Aは窒素原子又は炭素原子であり、
は独立してフッ素化C〜Cアルキル基であり、
mは2〜3の範囲である。
【0031】
R基中の炭素原子の合計は、一般的に少なくとも5である。いくつかの実施形態では、Rの炭素原子の合計は少なくとも6、7又は8である。
【0032】
Jがリンである実施形態では、Xは好ましくは4である。いくつかの実施形態では、xは3であり、各Rは少なくとも2つの炭素原子を含む。例えば、帯電防止剤は、(CNH N(SOCF、(CNH N(SO、(CNH N(SOCF)(SO)、(CNH C(SOCF、(CNH N(SO及びこれらに類するものを含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、xは4であり、Rの炭素原子の合計は少なくとも7又は8である。例えば、少なくとも1つのR基はメチルであることができ、他の3つのR基は少なくとも2つの炭素原子を含み、これは例えば、(CN(CH N(SOCF、(CN(CH N(SOCF及びこれらに類するものにより例示される。
【0034】
あるいは、4つのR基は全てエチル又はブチルであることができる。例えば、帯電防止剤は、(C N(SOCF、(C N(SOCF、(C C(SOCF及びこれらに類するものを含んでもよい。
【0035】
好ましくはRf基のうちの少なくとも1つ又は2つは、トリフルオロメチル又はトリフルオロエチルである。しかしながら、ぺルフルオロブチルなどのより高級なフルオロアルキル基もまた用いることができる。例えば、帯電防止剤は、(CNH N(SO、(C13 N(SO、(C1225)(CH N(SO及びこれらに類するものを含んでもよい。
【0036】
一般的に、イミド塩、すなわち、式中Qが窒素であるもの、は、メチドよりも好ましい。
【0037】
いくつかの実施形態では、Rは好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む。
【0038】
本明細書に記載のポリアルキル窒素又はリン含有フルオロアルキルスルホニルオニウム塩の種々の混合物もまた用いることができる。
【0039】
ポリアルキル窒素又はリン含有フルオロアルキルスルホニルオニウム塩の全濃度は、重合化ミクロ構造の、好ましくは約0.5又は1重量%、いくつかの実施形態では好ましくは2又は3重量%であり、一般的に約10、11、12、13、14又は15重量%以下である。約3重量%〜約5重量%の濃度は、好ましい静電気減衰特性、すなわち、0.5、0.4、0.3、0.2又は0.1秒未満の静電気減衰を提供することが分かっている。下地処理されていない偏光ベース層が用いられているときなどのいくつかの実施形態では、少なくとも80又は90%のクロスハッチ付着性を得るために、典型的には、10重量%未満のポリアルキル窒素又はリン含有フルオロアルキルスルホニルオニウム塩を用いることが好ましい。
【0040】
本明細書に記載のポリアルキル窒素又はリン含有フルオロアルキルスルホニルオニウム塩は市販されており、又は当該技術分野に記載されているように、既知の技術により合成することができる。例えば、米国特許第6,924,329号、同第6,784,237号、同第6,740,413号、同第6,706,920号、同第6,592,988号、同第6,372,829号及び米国特許出願公開第US2003/114560号などの種々の特許及び特許出願がポリアルキル窒素又はリン含有フルオロアルキルスルホニルイミド及び/又はメチドのオニウム塩の合成を記載している。
【0041】
ポリアルキル窒素又はリン含有フルオロアルキルスルホニルオニウム塩は、当該技術分野において既知であるように、ミクロ構造を形成するのに好適な種々の重合性樹脂組成物と組み合わせることができる。
【0042】
ポリアルキル窒素又はリン含有フルオロアルキルスルホニルオニウム帯電防止剤の塩は、ミクロ構造を形成するためにバルク重合性樹脂組成物と帯電防止剤の塩を組み合わせるのに先立って、カルボン酸と組み合わせてもよい。代表的な例には、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの混合物が挙げられる。種々のジカルボン酸もまた好適であると推察される。ジカルボン酸は、好ましくは分子量が比較的低い。ジカルボン酸は直鎖又は分枝鎖であってよい。カルボン酸基の間に6個までの炭素原子を有するジカルボン酸が好ましい。これらには、例えばマレイン酸、コハク酸、スベリン酸、フタル酸、及びイタコン酸が挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、重合性樹脂組成物は、表面修飾無機ナノ粒子を含む。このような実施形態においては、「重合性組成物」は、全組成物、すなわち有機成分及び表面修飾無機ナノ粒子を指す。
【0044】
有機成分並びに重合性組成物は、好ましくは実質的に溶媒を含まない。「実質的に溶媒を含まない」は、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、及び0.5重量%未満の非重合性(例えば有機)溶媒を有する重合性組成物を指す。溶媒濃度は、ガスクロマトグラフィー(ASTM D5403にて記載の通り)などの既知の方法によって決定することができる。0.5重量%未満の溶媒濃度が好ましい。
【0045】
有機成分の構成成分は、好ましくは、重合性樹脂組成物が低粘度を有するように選択される。いくつかの実施形態では、有機成分の粘度は、コーティング温度において、1000cps未満であり、典型的には900cps未満である。有機成分の粘度は、コーティング温度において800cps未満、700cps未満、600cps未満、又は500cps未満であってよい。本明細書で使用するとき、粘度は(1000sec−1までの剪断速度で)、動的応力レオメーター(Dynamic Stress Rheometer)を使用して、25mm平行プレートで測定される。更に、有機成分の粘度は典型的にはコーティング温度において少なくとも10cps、より典型的には少なくとも50cpsである。
【0046】
コーティング温度は典型的には、周囲温度(25℃(77°F))〜82℃(180°F)の範囲である。コーティング温度は、77℃(170°F)未満、71℃(160°F)未満、66℃(150°F)未満、60℃(140°F)未満、54℃(130°F)未満、又は49℃(120°F)未満であってもよい。有機成分は、重合性組成物の融点がコーティング温度よりも低いという条件で、固体であってよく又は固体成分を含むことができる。本明細書に記載の有機成分は、好ましくは周囲温度で液体である。
【0047】
有機成分は、少なくとも1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.60又は1.61の屈折率を有する。高屈折率ナノ粒子を含む重合性組成物は、1.70程度の屈折率を有することができる(例えば、少なくとも1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68又は1.69)。可視光線スペクトルにおける高透過性もまた典型的には好ましい。
【0048】
重合性組成物は、好ましくは5分未満の時間スケールでエネルギー硬化可能である(例えば、75マイクロメートルの厚さを有する輝度向上フィルムの場合)。重合性組成物は、好ましくは一般的に45℃を超えるガラス転移温度を提供するように十分に架橋される。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)、変調DSC、又は動的機械測定等の当該技術分野で既知の方法によって測定することができる。重合性組成物は、従来のフリーラジカル重合法によって重合化することができる。
【0049】
重合性樹脂組成物は、様々な芳香族モノマー及び/又はオリゴマーを含むことができる。重合性樹脂組成物は、好ましくは、少なくとも2つの芳香環を含むジ(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを少なくとも1つ含む。このようなジ(メタ)アクリレートモノマーは典型的には、少なくとも350g/モル、400g/モル又は450g/モルの分子量を有する。
【0050】
少なくとも2つの重合性(メタ)アクリレート基を有する芳香族モノマー又はオリゴマーは、合成されてもよく、又は、購入されてもよい。芳香族モノマー又はオリゴマーは典型的には、特定構造の主要部、すなわち、少なくとも60〜70重量%を含有する。他の反応生成物もこのようなモノマーの合成の副生成物として典型的に存在することは、一般的に認識される。
【0051】
いくつかの実施形態では、重合性組成物は、次の一般的構造を有する主要部を含む少なくとも1つの芳香族(所望により臭素化される)二官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む。
【0052】
【化1】

【0053】
式中、Zは、独立して−C(CH−、−CH−、−C(O)−、−S−、−S(O)−、又は−S(O)−であり、各Qは、独立してO又はSであり、Lは、連結基である。Lは、独立して、分岐又は直鎖のC〜C12アルキル基を含んでもよく、nは、0〜10の範囲である。Lは、好ましくは、分岐又は直鎖のC〜Cアルキル基を含む。より好ましくは、Lは、C又はCであり、nは、0、1、2又は3である。アルキル連結基の炭素鎖は、1つ以上のヒドロキシ基で置換されていてもよい。例えば、Lは、−CHCH(OH)CH−であってもよい。典型的には、連結基は同一である。R1は、独立して、水素又はメチルである。
【0054】
いくつかの実施形態では、芳香族モノマーは、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、すなわち、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸の反応生成物である。ビスフェノールAジグリシジルエーテルは一般に、より幅広く利用可能ではあるが、ビスフェノールFジグリシジルエーテルなどのその他のビスフェノールジグリシジルエーテルもまた用いることができると考えられている。例えば、ジ(メタ)アクリレートモノマーは、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応生成物であることができる。このようなモノマーは、UCB Corporation(Smyrna,GA)から「RDX−51027」の商標名で入手することができる。この物質は、2−プロペン酸、(1−メチルエチリデン)ビス[(2,6−ジブロモ−4,1−フェニレン)オキシ(2−ヒドロキシ−3,1−プロパンジイル)]エステルの主要部を含む。
【0055】
1つの例示的なビスフェノール−Aエトキシル化ジアクリレートモノマーは、Sartomerから商標名「SR602」で市販されている(20℃において610cpsの粘度及び2℃のTgを有すると報告されている)。別の例示的なビスフェノール−Aエトキシル化ジアクリレートモノマーは、Sartomerから商標名「SR601」で市販されている(20℃において、1080cpsの粘度及び60℃のTgを有すると報告されている)。
【0056】
代わりに、又はそれに加えて、有機成分は、1つ以上の(メタ)アクリレート化芳香族エポキシオリゴマーを含んでよい。種々の(メタ)アクリル化芳香族エポキシオリゴマーが市販されている。例えば、(メタ)アクリレート化芳香族エポキシ(変性エポキシアクリレートとして記載される)は、Sartomer(Exton,PA)から「CN118」及び「CN115」の商標名で入手可能である。(メタ)アクリレート化芳香族エポキシオリゴマー(エポキシアクリレートオリゴマーとして記載される)は、Sartomerから「CN2204」の商標名で入手可能である。更に、(メタ)アクリレート化芳香族エポキシオリゴマー(40%トリメチロールプロパントリアクリレートとブレンドしたエポキシノボラックアクリレートとして記載される)は、Sartomerから、「CN112C60」の商標名で入手可能である。1つの例示的な芳香族エポキシアクリレートは、Sartomerから「CN 120」の商標名で市販されている(供給元によって、1.5556の屈折率、65℃にて2150の粘度、及び60℃のTgを有すると報告されている)。
【0057】
いくつかの実施形態では、重合性樹脂組成物は、次の一般的構造を有する主要部を含む二官能性ビフェニル(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも1つ含む。
【0058】
【化2】

【0059】
式中、各R1は独立してH又はメチルであり、
各R2は独立してBrであり、
mは0〜4の範囲であり、
各Qは独立してO又はSであり、
nは0〜10の範囲であり、
Lは1つ以上のヒドロキシル基により所望により置換されたC2〜C12アルキル基であり、
zは芳香環であり、及び
tは独立して0又は1である。
【0060】
いくつかの実施形態では、Qは、好ましくはOである。更に、nは典型的には0、1又は2である。Lは、典型的には、C又はCである。あるいは、Lは、典型的には、ヒドロキシル置換されたC又はCである。いくつかの実施形態では、zは、好ましくはフェニル基に縮合し、それによってビナフチル(binapthyl)コア構造体を形成する。
【0061】
好ましくは、−Q[L−O]n C(O)C(R1)=CH基の少なくとも1つは、オルト位又はメタ位にて置換されている。より好ましくは、ビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーは、モノマーが25℃で液体であるように、十分な量のオルト及び/又はメタ(メタ)アクリレート置換基を含む。いくつかの実施形態では、置換基を含有するそれぞれの(メタ)アクリレート基は、オルト位又はメタ位にて芳香環基に結合している。ビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーが過半量(すなわち、ビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーの置換基の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%又は95%)のオルト(メタ)アクリレート置換基を含むことが好ましい。いくつかの実施形態では、置換基を含有する各(メタ)アクリレート基は、オルト位又はメタ位にて芳香環基に結合している。メタ及び特にパラ置換基の数が増えると共に、有機成分の粘度も同様に増大し得る。更に、パラ−ビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーは、室温で固体であり、フェノキシエチルアクリレート及びテトラヒドロフルフリルアクリレート中においてさえ、わずかな溶解度(すなわち、10%未満)である。
【0062】
このようなビフェニルモノマーは特許出願第60/893953号(2007年3月9日出願)にて、更に詳細に記載されている。その他のビフェニルジ(メタ)アクリレートモノマーは、文献に記載されている。
【0063】
重合性樹脂組成物は、所望により、1つ以上の(例えば、単官能性)(メタ)アクリレート希釈剤を含んでもよい。(メタ)アクリレート希釈剤の総量は、重合性組成物の少なくとも5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、又は25重量%であることができる。(メタ)アクリレート希釈剤の総量は、典型的には40重量%以下であり、より典型的には約35重量%以下である。
【0064】
いくつかの実施形態では、多官能性(メタ)アクリレート架橋剤は、希釈剤として使用されてもよい。例えば、SartomerからSR 268の商標名で市販されるものなどのテトラエチレングリコールジアクリレートは、好適な希釈剤であることが判明している。その他の好適な多官能性希釈剤としては、SR351、つまりトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)が挙げられる。
【0065】
1つ以上の芳香族(例えば、単官能性)(メタ)アクリレートモノマーが希釈剤として使用されるとき、かかる希釈剤は、同時に重合性樹脂組成物の屈折率を上昇させることができる。好適な芳香族単官能性(メタ)アクリレートモノマーは、典型的には少なくとも1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、又は1.58の屈折率を有する。
【0066】
芳香族(例えば単官能性)(メタ)アクリレートモノマーは、典型的には、フェニル、クミル、ビフェニル、又はナフチル(napthyl)基を含む。
【0067】
好適なモノマーとしては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、2−ナフチルチオエチルアクリレート、1−ナフチルチオエチルアクリレート、ナフチルオキシエチルアクリレート、2−ナフチルオキシエチルアクリレート、フェノキシ−2−メチルエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、及びフェニルアクリレートが挙げられる。
【0068】
フェノキシエチルアクリレートとしては、Sartomerからの商標名「SR339」、Eternal Chemical Co.Ltd.からの商標名「Etermer 210」、及びToagosei Co.Ltdからの商標名「TO−1166」、を含む、複数の供給元から市販されている。フェニルチオエチルアクリレート(PTEA)もまた、Cognisから市販されている。これらのモノマーの構造は、次に示す通りである。
【0069】
【化3】

【0070】
いくつかの実施形態では、重合性組成物は、1つ以上の単官能性ビフェニルモノマーを含む。
【0071】
多官能ビフェニルモノマーは、末端ビフェニル基(ここで、2つのフェニル基は融合しておらず、結合によって繋がっている)又は連結基(例えばQ)で繋がれた2つの芳香族基を含む末端基を含む。例えば、連結基がメタンであるとき、末端基はビフェニルメタン基である。あるいは、連結基が−(C(CH−である場合、末端基は4−クミルフェニルである。単官能ビフェニルモノマーは、好ましくは(例えば紫外線)放射への曝露によって重合可能である1つのエチレン性不飽和基も含む。単官能性ビフェニルモノマーは、好ましくは1つの(メタ)アクリレート基又は1つのチオ(メタ)アクリレート基を含む。アクリレート官能基が一般的に好ましい。いくつかの態様において、ビフェニル基は、エチレン性不飽和(例えば、(メタ)アクリレート)基に直接結合する。この種類の例示的なモノマーは、2−フェニル−フェニルアクリレートである。ビフェニルモノ(メタ)アクリレート又はビフェニルチオ(メタ)アクリレートモノマーは、任意選択的に1つ以上のヒドロキシル基で置換された(例えば1〜5個の炭素の)アルキル基を更に含んでよい。この種類の代表的な種は、2−フェニル−2−フェノキシエチルアクリレートである。
【0072】
一実施形態では、次の一般式を有する単官能性ビフェニル(メタ)アクリレートモノマーが用いられる。
【0073】
【化4】

【0074】
式中、R1はH又はCHであり、
QはO又はSであり、
nは0〜10の範囲(例えば、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である)であり、
Lは好ましくは、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基(すなわち、メチル、エチル、プロピル、ブチル又はペンチル)であって所望によりヒドロキシで置換される。
【0075】
別の実施形態では、単官能性ビフェニル(メタ)アクリレートモノマーは次の一般式の構造を有する。
【0076】
【化5】

【0077】
式中、R1はH又はCHであり、
QはO又はSであり、
Zは−(C(CH−、−CH、−C(O)−、−S(O)−及び−S(O)−から選択され、
nは0〜10の範囲(例えば、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である)であり、
Lは、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基(すなわち、メチル、エチル、ブチル又はペンチル)であって所望によりヒドロキシで置換される。
【0078】
Toagosei Co.Ltd.(Japan)より市販されているいくつかの特定のモノマーとして、例えば商標名「TO−2344」で入手可能な2−フェニル−フェニルアクリレート、商標名「TO−2345」で入手可能な4−(−2−フェニル−2−プロピル)フェニルアクリレート、及び商標名「TO−1463」で入手可能な2−フェニル−2−フェノキシエチルアクリレートが挙げられる。
【0079】
芳香族単官能性(メタ)アクリレートモノマーの各種組み合わせを用いることができる。例えば、フェニル基を含む(メタ)アクリレートモノマーを、ビフェニル基を含む1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーと組み合わせて用いてよい。更に、2つの異なったビフェニル(メタ)アクリレート単官能性モノマーを用いてもよい。
【0080】
重合性樹脂は、各種他(例えば非ハロゲン化)エチレン系不飽和モノマーを35重量%まで含んでもよい。例えば、構造体(例えば、プリズム)が、予備成形されたポリカーボネート高分子フィルム上でキャストされ、光硬化された場合、重合性樹脂組成物は、1つ以上のN,N−二置換(メタ)アクリルアミドモノマーを含んでもよい。これらとしては、N−アルキルアクリルアミド及びN,N−ジアルキルアクリルアミド、特にC1〜4アルキル基を含有するものが挙げられる。例には、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、及びN−ビニルカプロラクタムがある。
【0081】
重合性樹脂組成物は、少なくとも3つの(メタ)アクリレート基を含む非芳香族架橋剤を20重量%以下で任意的に含んでもよい。好適な架橋剤としては、例えばペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタクリレート)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、及びジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。架橋剤の任意の1つ又は組み合わせを用いてもよい。メタクリレート基は、アクリレート基より反応性でない傾向があるため、架橋剤は好ましくはメタクリレート官能基を含まない。
【0082】
様々な架橋剤が市販されている。例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)は、Sartomer Company(Exton,PA)から「SR444」の商標名で、Osaka Organic Chemical Industry,Ltd.(Osaka,Japan)から「Viscoat No.300」の商標名で、Toagosei Co.Ltd(Tokyo,Japan)から「Aronix M−305」の商標名で、及びEternal Chemical Co.,Ltd.(Kaohsiung,Taiwan)から「Etermer 235」の商標名で市販されている。トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)は、Sartomer Companyから「SR351」の商標名にて市販されている。TMPTAは、「Aronix M−309」の商標名で、Toagosei Co.Ltd.からも入手可能である。更に、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート及びエトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリレートは、Sartomerからそれぞれ商標名「SR454」及び「SR494」のもとに市販されている。
【0083】
いくつかの実施形態では、光学フィルムの重合化されたミクロ構造化表面及び重合性樹脂組成物が、実質的に臭素を含まない(すなわち、1重量%未満で含有する)ことが好ましい。その他の実施形態では、臭素と塩素とを組み合わせた総量は1重量%未満である。いくつかの態様では、重合化されたミクロ構造化表面又は光学フィルム及び重合性樹脂組成物は、実質的にハロゲン化されていない(すなわち、合計で1重量%未満の臭素、塩素、フッ素及びヨウ素を含有する)。
【0084】
UV硬化性の重合性組成物は、少なくとも1つの光反応開始剤を含む。1つの光反応開始剤又は光反応開始剤のブレンドを、本発明の輝度向上フィルムに用いてよい。一般的には、光反応開始剤は、(例えば、樹脂の加工温度で)少なくとも部分的に可溶性であり、重合化後に実質的に無色である。UV光源に曝露後、光反応開始剤が実質的に無色であるならば、光反応開始剤が有色(例えば黄色)であってもよい。
【0085】
好適な光反応開始剤には、モノアシルホスフィンオキシド及びビスアシルホスフィンオキシドが挙げられる。市販のモノ又はビスアシルホスフィンオキシド光反応開始剤としては、「Lucirin TPO」という商標名でBASF(Charlotte,NC)から市販されている2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(trimethylbenzoybiphenylphosphine oxide)、更に「Lucirin TPO−L」という商標名でBASFから市販されているエチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、及び「Irgacure 819」という商標名でCiba Specialty Chemicalsから市販されているビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドが挙げられる。その他の好適な光反応開始剤としては、Ciba Specialty Chemicalsから「Darocur 1173」の商標名で市販されている2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、並びにCiba Specialty Chemicalsから、「Darocur 4265」、「Irgacure 651」「Irgacure 1800」、「Irgacure 369」、「Irgacure 1700」、及び「Irgacure 907」の商標名にて市販されているその他の光反応開始剤が挙げられる。
【0086】
光反応開始剤は、約0.1重量%〜約10重量%の濃度で使用できる。より好ましくは、光反応開始剤は約0.5〜約5重量%の濃度で使用される。5重量%を超える量は、輝度向上フィルムの黄変を引き起こす傾向の観点から一般的に不利である。その他の光反応開始剤類及び光反応開始剤も、当業者によって決定されるように、好適に用いられてもよい。
【0087】
フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤のような界面活性剤は、表面張力を低減するため、濡れを改良するため、より平滑なコーティングを可能にするため、及びコーティングの欠陥を減少させるため等の目的で、重合性組成物に任意選択的に包含させることができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、重合性組成物は無機ナノ粒子を更に含む。
【0089】
表面修飾(例えば、コロイド状)ナノ粒子は、物品又は光学素子の耐久性及び/又は屈折率を向上させるのに有効な量で重合化構造体中に存在することができる。いくつかの実施形態では、表面修飾無機ナノ粒子の総量は、少なくとも10重量%、20重量%、30重量%又は40重量%の量で、重合性樹脂又は光学物品中に存在することができる。重合性樹脂組成物がミクロ構造フィルムの流延及び硬化プロセスで使用するのに好適な粘度を有するため、その濃度は、典型的には70重量%未満であり、より典型的には60重量%未満である。
【0090】
このような粒子の寸法は、有意な可視光線の散乱を避けるように選択される。光学又は材料特性を最適化するため及び全組成物コストを低下させるために、複数の種類の無機酸化物粒子の混合物を用いることが望ましい場合がある。表面修飾コロイド状ナノ粒子は、1nm、5nm又は10nm超の(例えば、非会合性)一次粒径又は会合粒径を有する酸化物粒子であることができる。一次又は会合粒径は、一般的に100nm、75nm、又は50nm未満である。典型的には、一次又は会合粒径は40nm、30nm、又は20nm未満である。ナノ粒子は非会合性であることが好ましい。それらの測定は、透過型電子顕微鏡法(TEM)に基づいてよい。ナノ粒子としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、これらの混合物、又はこれらの混合酸化物のような金属酸化物が挙げられる。表面修飾コロイドナノ粒子は、実質的に完全に凝縮可能である。
【0091】
完全凝縮ナノ粒子(シリカを例外として)の結晶化度(単離金属酸化物粒子として測定した場合)は、典型的には55%を超え、好ましくは60%を超え、より好ましくは70%を超える。例えば、結晶化度は、約86%までの範囲内又はそれ以上にすることができる。結晶化度は、X線回折法によって割り出すことができる。凝縮結晶性(例えばジルコニア)のナノ粒子は屈折率が高いが、非晶質ナノ粒子は典型的には屈折率がより低い。
【0092】
ジルコニア及びチタニアナノ粒子は、5〜50nm、又は5〜15nm、又は8nm〜12nmの粒径を有することができる。ジルコニアナノ粒子は、耐久性物品又は光学素子中に10〜70重量%、又は30〜60重量%の量で存在できる。本発明の組成物及び物品に使用されるジルコニアは、Nalco Chemical Co.から商標名「Nalco OOSSOO8」で、及びBuhler AG Uzwil,Switzerlandから商標名「Buhler zirconia Z−WO sol」で入手可能である。
【0093】
ジルコニア粒子は、米国特許第7,241,437号に記載されているような水熱技術を使用して調製することができる。ナノ粒子は、表面修飾されている。表面修飾は、無機酸化物(例えば、ジルコニア)粒子に表面修飾剤を付着させて、表面特性を修飾することを伴う。無機粒子の表面修飾の全体的な目標は、均質な構成成分を持つ、好ましくは高輝度のフィルムに調製可能な(例えばキャスト及び硬化プロセスを使用して)低粘度を持つ樹脂を提供することである。
【0094】
ナノ粒子は、しばしば、有機マトリックス材料との相溶性を改良するために表面修飾される。表面修飾されたナノ粒子は、しばしば、有機マトリックス材料中で非会合、非粒塊、又はこれらの組み合わせの状態である。得られるこれらの表面修飾されたナノ粒子を含有する光管理フィルム(light management films)は高い光学的透明性及び低いくもりを有する傾向がある。ジルコニアのような、高屈折率の表面修飾されたナノ粒子の添加は、輝度向上フィルムのゲインを、重合化された有機材料のみを含有するフィルムと比べて増大することができる。
【0095】
モノカルボン酸表面処理剤は、好ましくは相溶化基を含む。モノカルボン酸は式A−Bにより表され得、式中、A基は(ジルコニア又はチタニア)ナノ粒子の表面に付着可能な(例えば、モノカルボン酸)基であり、Bは様々な異なる官能性を含む相溶化基である。カルボン酸基は、吸着及び/又はイオン結合の形成によって表面に付着できる。相溶化基Bは、一般的に、それが(例えば輝度向上)光学物品の重合性樹脂と相溶するように選択される。相溶化基Bは、反応性又は非反応性であることができ、極性又は非極性であることができる。
【0096】
ジルコニア粒子に非極性の性質を付与することができる相溶化基Bとしては、例えば、直鎖又は分枝鎖の芳香族又は脂肪族炭化水素が挙げられる。カルボン酸官能性を有する非極性修飾剤の代表的な例には、オクタン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0097】
相溶化基Bは、所望により、それが(例えば輝度向上)光学物品の有機マトリックスと共重合可能なように、反応性であってもよい。例えば、(メタ)アクリレート相溶化基のようなフリーラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート官能性有機モノマーと共重合して、良好な均質の輝度向上物品を生成できる。
【0098】
好適な表面修飾は、米国特許出願公開第2007/0112097号及び米国特許出願第60/891812号(2007年2月27日出願)に記載されている。
【0099】
表面修飾された粒子は、種々の方法で硬化性(すなわち、重合性)樹脂組成物の中に組み込むことができる。好ましい態様においては、溶媒交換手順が利用され、樹脂を表面修飾されたゾルに添加してから水及び共溶媒(使用する場合)を蒸発により除去することにより、粒子を重合性樹脂中に分散された状態にする。蒸発工程は、例えば、蒸留、回転蒸発、又はオーブン乾燥により達成可能である。別の態様では、表面修飾された粒子を水不混和性溶媒中に抽出した後、それが望ましい場合には溶媒交換を行うことができる。あるいは、表面修飾されたナノ粒子を重合性樹脂に組み込む別の方法は、修飾粒子を乾燥して粉末にした後、粒子が分散された樹脂材料を添加することを伴う。この方法における乾燥工程は、例えば、オーブン乾燥又は噴霧乾燥のような、その系に適した従来の方法によって達成することができる。
【0100】
このような光再利用効果の一般的測定は、光学フィルムのゲインを測定することである。本明細書で使用するとき、「相対ゲイン」は、光学フィルム(又は光学フィルムアセンブリ)をライトボックスの最上部に置いて、実施例にて記載した試験方法による測定で、ライトボックスの最上部に光学フィルムが存在しない場合に測定された軸上輝度に対する軸上輝度として定義される。本定義は、次の関係によって要約することができる。
【0101】
【数1】

【0102】
次に定義する用語については、別の定義が「特許請求の範囲」中、あるいは本明細書中のいずれかの場所で与えられない限り、これらの定義が適用されるものとする。
【0103】
用語「ミクロ構造」は、本明細書では米国特許第4,576,850号に定義及び説明されたように使用される。それゆえ、それは、ミクロ構造を有する物品の予め定められた所望の利用目的又は機能を叙述する又は特徴づける表面の構成を意味する。その物品の表面における突出部及びくぼみのような不連続は、中心線の上の表面輪郭により包囲された面積の合計が線の下の面積の合計と等しくなるように、ミクロ構造を通って引かれた平均中心線から輪郭が偏差すると考えられ、その線は物品の呼称面(nominal surface)(ミクロ構造を有する)に本質的に平行である。例えば、1〜30cmの表面の代表的な特性長を通って、光学又は電子顕微鏡により測定したとき、その偏位の高さは典型的には、約±0.005〜±750マイクロメートルである。その平均中心線は、平面、凹面、凸面、非球面又はこれらの組み合わせであってもよい。その偏位が低いオーダー、例えば、±0.005、±0.1、又は好ましくは、±0.05マイクロメートルであり、その偏位がまれにしか又はほとんど発生しない物品、すなわち、表面にいかなる有意な不連続もない物品は、微細構造保有表面が本質的に「平坦」又は「平滑な」表面であるものであり、そのような物品は、眼用レンズのような、例えば精密光学素子又は精密光学インタフェースを有する素子として有用である。その偏位が低いオーダーであり頻繁に発生する物品としては、反射防止ミクロ構造を有するものが挙げられる。前述の偏位が大きく、例えば、±0.1〜±750マイクロメートルであり、同一又は異なり及びランダム又は規則的に隔置され又は連続している複数の実用的な不連続部を含む微細構造に寄与し得る物品は、逆反射コーナーキューブシーティング、線形フレネルレンズ、ビデオディスク及び輝度向上フィルムなどの物品である。ミクロ構造を有する表面は、その低いオーダー及び高いオーダーの両方の実用的不連続を含有できる。ミクロ構造を有する表面は、その量又は種類がその物品の予め定められた所望の利用を有意に妨害するか又は悪影響を及ぼすものでない限り、外来の又は非実用的な不連続を含有してよい。
【0104】
「屈折率」とは、材料(例えば、モノマー)の絶対屈折率を意味し、自由空間中の電磁放射線の速度とその材料中の電磁放射線の速度との比を意味する。屈折率は既知の方法を使用して測定でき、かつ一般に、Abbe屈折計又はBausch and Lomb Refractometer(カタログ番号33.46.10)(例えば、Fisher Instruments(Pittsburgh,PA)から市販されている)を使用して可視光領域内にて測定することができる。測定された屈折率は、計器に依存してある程度変動しうることは一般的に認識されている。
【0105】
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物の両方を意味する。
【0106】
用語「ナノ粒子」は、本明細書において、約100nm未満の直径を有する粒子(一次粒子又は会合一次粒子)を意味するように定義される。
【0107】
「表面修飾されたコロイド状ナノ粒子」は、ナノ粒子が安定な分散を提供するように各々修飾された表面を有するナノ粒子を指す。
【0108】
本明細書で「安定な分散」は、周囲条件−例えば、室温(約20〜22℃)、大気圧、及び、過剰な電磁力がない−下で、ある時間、例えば約24時間放置された後に、コロイド状ナノ粒子が疑集しない分散として定義される。
【0109】
端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数(例えば1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5)が含まれる。
【0110】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「化合物」を含有する組成物の言及は、二種以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、用語「又は」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、一般的に「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0111】
特に指示がない限り、明細書及び添付特許請求の範囲に使用される成分の量、性質の測定等を表す全ての数は、全ての例において、「約」という用語により修飾されることを理解されたい。
【0112】
本発明は、本明細書中に記載する特定の実施例に限定されると考えるべきではなく、更に適切に言えば添付の特許請求の範囲の中で適正に述べるものが本発明の全態様を包含すると理解されるべきである。本明細書を検討すると、様々な修正形態、等価の方法、及び本発明を適用できる非常に多くの構造が、本発明についての当業者には容易に明らかなはずである。
【実施例】
【0113】
試験方法
クロスハッチ付着性
試験方法ASTM D3359に従い、クロスハッチ試験及び3M 610セロハン(登録商標)接着テープを使用して、ベースDBEFフィルムに対するミクロ構造化樹脂層の付着性を測定した。
【0114】
付着性は0〜5のスケールで評価され、ここで、0は100%コーティングが除去されたことを意味し、一方、5は0%コーティングが除去されたことを意味する(したがって、「4」は約80%定着又は20%除去に等価である)。
【0115】
表面抵抗は、PRF−911コンセントリック・リング固定治具を備えたProStat(Bensenville,IL)PRS−801抵抗システムを使用して測定した。オームでの表面抵抗は、機器に同梱されている説明書に従って測定値に10を乗じることによってオーム/スクエアに変換した。
【0116】
静電荷減衰時間は、Electro−Tech Systems,Inc.モデル406C静電気減衰計を用いて測定した。この計器は、サンプルを5kVまで帯電させ、そして、静電荷がその初期値の10%まで減衰するのに要する時間を測定する。いくつかの絶縁サンプルは、5kVまで完全に帯電せず、これはデータ表にWNCと注記されている。
【0117】
ブルーミング試験
清浄で下地処理されていないPETシートに対して微細複製表面を配置することにより、帯電防止剤が表面に移動し他のフィルムに移転する傾向を評価した。次に、0.16cm(1/16”)の間隔で離して保持された0.32cm(1/8”)のガラスシートの間にこの積層体を配置した。次に、65℃において95%の相対湿度で72時間にわたってチャンバにこれらのパネルを定置した。次に、このポリエステルを脱色及び帯電防止添加剤の移転の証拠について視覚的に点検した。「P」は合格評価を又は移転が観察されなかったことを示し、一方、「NP」は残留物がPET上に堆積したことを示す。
【0118】
帯電防止剤
一般的化学名称(商標名、供給元)
1.トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(3M Company(St.Paul,MN)から商標名「L−19055」で入手可能)、
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(3M Companyから商標名「HQ−115」で入手可能)、
2.N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(3’−ドデシルオキシ−2’−ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウムメトサルフェート(Cytec Industriesから商標名「Cyastat 609」で入手可能、
3.塩化コリンは、Aldrich Chemical Co.から入手した。
【0119】
4.N,N−ジエチルアミノエチルアクリレートQ−塩、メトサルフェート(50%水溶液)をMonomer−Polymer & Dajac Labs,Inc、カタログ番号8592から購入した。
【0120】
表1〜3に記載の他の帯電防止剤は、先に引用した特許及び特許出願に記載のように合成した。
【0121】
2つの異なるべース層フィルム基材を実施例に使用した。第1基材は、3M Companyから商標名「Vikuiti(商標)DBEF II」として市販されている輝度向上フィルムと同一のベース層フィルム基材である(すなわち、下地処理されていない)多層光学フィルムであった。
【0122】
第2基材は、米国特許第6,352,761号の実施例11に従って調製された多層反射性偏光光学フィルムであった。第2基材を、約250nmの硬化プライマー厚さで米国特許出願公開第61/040737号(2008年3月31日出願)に記載されているようにCymel 327メラミン/ホルムアルデヒド樹脂により架橋されたスルホン化ポリエステル樹脂でコーティングした。
【0123】
重合性樹脂は、25重量%のフェノキシエチルアクリレート及び75重量%のビスフェノールAエポキシアクリレート(CN120)から構成され、0.5重量%のDarocur 1173及び0.5重量%のTPOを光反応開始剤として含有する。重合性樹脂は、琥珀色ねじ蓋式バイアル瓶中で2gの塩と18gの樹脂とを混合し、バイアル瓶を封止し、炉内において90℃で数分間にわたって混合物を加熱して、塩を溶解させることにより、表1〜3に示されている塩を使用して修飾される。塩化コリンを除く全ての塩が容易に溶解して、室温に冷却後、透明な修飾された樹脂を生じた。
【0124】
以下の手順を使用して、樹脂を各基材に適用した。
【0125】
1)60℃にて1時間、液化するまで樹脂を加熱する。
【0126】
2)ホットプレート上にて71℃(160°F)で1分間、平坦なBEF工具を加熱して、コーティングされる基材フィルムと接触させる。
【0127】
3)Catena 35貼合せ機を71℃(160°F)に加熱し、速度を88.9cm/分(35インチ/分)に設定する。
【0128】
4)樹脂のビーズラインを工具に適用する。
【0129】
5)ハンドローラーを使用して、工具に対して基材フィルムを静かに置き、ロールして所定の位置に貼り付ける。
【0130】
6)プライム化されていない大きなPETフィルム2枚の間に、工具及びフィルムサンプルを挟み込み、貼合せ機のロールを保護する。
【0131】
7)最高設定で貼合せ機の中にサンプルを通す。これにより、0.010mm(0.4mil)の呼び樹脂フィルム厚さを生じる。
【0132】
8)サンプルをUV処理装置(Dバルブを装着し、100%の出力及び9.14m/分(30フィート/分)のラインスピードにて窒素パージ下で稼動する、UV Fusion Lighthammer)に通す。
【0133】
9)工具から、フィルムサンプルをゆっくりと取り外す。
【0134】
全てのサンプルは、工具から容易に剥離した。
【0135】
一定温度/湿度チャンバにて一晩21.1℃(70°F)/50% RHで、積層体を一晩調湿させておき、その後、表面抵抗率、静電気減衰時間及びクロスハッチ付着性の測定にかけた。結果を下記の表1〜3に示す。静電気減衰測定に関しては、サンプルは、ミクロ構造化プリズム列が試験電極に垂直又は平行に位置するように、配向させた。
【0136】
【表1】

【0137】
L−19055を含有する積層体を周囲実験室雰囲気にて22%RHで一晩静置させておいた。静電荷減衰を再測定したところ、有意に変化しなかったことが判明したが、これは、この静電防止システムが低周囲湿度においてさえも良好に作動できることを示す。
【0138】
(実施例2〜6)
表2〜3に示している修飾された樹脂処方を使用して、実施例1の手順を繰り返した。DBEF IIを基材として使用し、温度を68℃に制御した。一定温度/湿度チャンバにて21.1℃(70°F)/50%RHで一晩静置した後に、積層体を静電荷減衰時間の測定にかけた。結果を表2〜3に示す。
【0139】
【表2】

【0140】
L−19055は、試験された種々の塩の中で特性の最良の組み合わせと、重合性樹脂中で低濃度(<5重量%)における最良の帯電防止性能を示す。また、この実施例で使用されたより高いプロセス温度は、DBEF II基材への硬化樹脂の付着を得るために必要であった。60℃では、樹脂付着性は乏しかった。
【0141】
電荷減衰とクロスハッチ付着性との好適な組み合わせを提供した他の帯電防止剤は、以下のように示される。
【0142】
【表3】

【0143】
対イオン見出し:
デブチルイミド=−N(SO
イミド=−N(SOCF
メチルブチルイミド=−N(SOCF)(SO
BETI=−N(SO
メチド=−C(SOCF
N,N−ジエチルアミノエチルアクリレートQ塩、メトサルフェート(50%水溶液)(Monomer−Polymer & Dajac Labs,Inc、カタログ番号8592から購入)の10gの部分を、HQ115(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、3M Companyから入手)の80重量%水溶液6.0gとねじ蓋式バイアル瓶中で混合した。&このわずかに不透明な混合物を100mLのジクロロメタンで抽出し、次に、有機層を分離し、脱イオン水の50mLの部分2つで洗浄した。溶媒を除去し、ロータリーエバポレーター上で乾燥したところ、4.2gの淡い琥珀色の、わずかに不透明な液体が残った。プロトン及びフッ素NMRによる生成物の分析は、それが、およそ86.6重量%のヒドロキシエチルジエチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドと、2.6重量%のヒドロキシエチルジエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)と、2.2重量%のアクリル酸と、6.2重量%のメタクリル酸とから構成され、残りは未同定の不純物であることを示した。この帯電防止剤を使用して、表4の実施例18Aのための輝度向上フィルムを調製した。
【0144】
表4の実施例19Aは、トリエチルアンモニウムビス(ペルフルオロエタンスルホニル)イミド、(CNH N(SOを帯電防止剤として用い、米国特許6,372,829号の実施例1の例1に記載のように調製した。
【0145】
どちらの場合も、これらの帯電防止剤組成物を、前述した重合性樹脂組成物と以下の表4に示す濃度で組み合わせた。次に、この樹脂組成物を基材として「Vikuiti(商標)DBEF II」を使用して先述したように輝度向上フィルムに調製した。試験結果は以下の通りであった。
【0146】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合化されたミクロ構造化表面を含む、輝度向上フィルムであって、前記ミクロ構造は一般式
JH4−x A[SO
を有する帯電防止剤を含む重合性樹脂組成物の反応生成物を含み、式中、
xは3〜4の範囲であり、
Rは独立してカテナリー酸素原子又は少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含むか又は含まないC〜C12アルキル基であり、
Jは窒素又はリンであり、
Aは窒素又は炭素であり、
は独立してフッ素化C〜Cアルキル基であり、
mは2〜3の範囲である、輝度向上フィルム。
【請求項2】
前記帯電防止剤が約0.5重量%〜約15重量%固体の範囲の量で存在する、請求項1に記載の輝度向上フィルム。
【請求項3】
前記帯電防止剤が約3重量%〜約5重量%固体の範囲の量で存在する、請求項1に記載の輝度向上フィルム。
【請求項4】
21.1℃(70°F)及び50%の相対湿度で試験されたときに電荷減衰が1.5秒未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項5】
21.1℃(70°F)及び50%の相対湿度で試験されたときに電荷減衰が約0.5秒未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項6】
前記ミクロ構造が、前記ミクロ構造とは異なる組成を有するベースフィルム層に配置される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項7】
前記ベースフィルム層がプライマーを更に含む、請求項6に記載の輝度向上フィルム。
【請求項8】
前記ベースフィルム層がポリエステルを含む、請求項6又は7に記載の輝度向上フィルム。
【請求項9】
前記ベースフィルム層が偏光フィルムである、請求項8に記載の輝度向上フィルム。
【請求項10】
前記プライマーがスルホン化ポリエステルを含む、請求項8又は9に記載の輝度向上フィルム。
【請求項11】
前記ミクロ構造が、前記ベースフィルム層に対して少なくとも90%のクロスハッチ付着性を呈する、請求項6〜10のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項12】
Rの炭素原子の合計が少なくとも5である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項13】
xが4であり、Rの炭素原子の合計が少なくとも7である、請求項12に記載の輝度向上フィルム。
【請求項14】
少なくとも1つのRfがCFである、請求項12又は13に記載の輝度向上フィルム。
【請求項15】
少なくとも1つのRがメチルであり、他のR基が少なくとも2つの炭素原子を含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項16】
前記帯電防止剤が、(CN(CH N(SOCF、(CN(CH N(SOCF及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の輝度向上フィルム。
【請求項17】
xが3であり、各Rが少なくとも2つの炭素原子を含む、請求項12に記載の輝度向上フィルム。
【請求項18】
前記帯電防止剤が、(CNH N(SOCF、(CNH N(SO、(CNH N(SOCF)(SO)、(CNH C(SOCF、(CNH N(SO及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載の輝度向上フィルム。
【請求項19】
xが4であり、Rの炭素原子の合計が少なくとも8である、請求項12に記載の輝度向上フィルム。
【請求項20】
前記帯電防止剤が、(C N(SOCF、(C N(SOCF、(C C(SOCF、(C13 N(SO、(C1225)(CH N(SO及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の輝度向上フィルム。
【請求項21】
Jが窒素である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項22】
Jがリンであり、xが4である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項23】
Rが少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項24】
重合性樹脂組成物が少なくとも1つのカルボン酸を更に含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
【請求項25】
重合性樹脂が少なくとも1つのモノカルボン酸を含む、請求項24に記載の輝度向上フィルム。
【請求項26】
前記モノカルボン酸が、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項25に記載の輝度向上フィルム。
【請求項27】
少なくとも2つの芳香環を含むジ(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも1つと、反応性希釈剤と、一般式
JH4−x A[SO
(式中、
xは3〜4の範囲であり、
Rは独立してカテナリー酸素原子又は少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含むか又は含まないC〜C12アルキル基であり、
Jは窒素又はリンであり、
Aは窒素原子又は炭素原子であり、
は独立してフッ素化C〜Cアルキル基であり、
mは2〜3の範囲である)を有する帯電防止剤と、を含む重合性樹脂。
【請求項28】
重合化されたミクロ構造化表面を含む、ミクロ構造化フィルム物品であって、前記ミクロ構造は一般式
JH4−x A[SO
(式中、
xは3〜4の範囲であり、
Rは独立してカテナリー酸素原子又はヒドロキシル末端基を含むか又は含まないC〜C12アルキル基であり、
Jは窒素又はリンであり、
Aは窒素原子又は炭素原子であり、
は独立してフッ素化C〜Cアルキル基であり、
mは2〜3の範囲である)を有する帯電防止剤を含む重合性樹脂組成物の反応生成物を含む、ミクロ構造化フィルム物品。

【公表番号】特表2011−526307(P2011−526307A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512501(P2011−512501)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/043401
【国際公開番号】WO2009/148765
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】