説明

ポリアルジミン

【課題】本発明は、ポリアルジミンからなる潜在性硬化剤を提供する。
【解決手段】本発明は、脂肪族第一級アミノ基を有する少なくとも1種のポリアミン(A)および少なくとも1種のアルデヒド(B)から得ることのできるポリアルジミンに関する。前記ポリアルジミンは、その加水分解によって生じるアルデヒド(B)と同様、無臭である。本発明は、さらに、前記ポリアルジミンおよびアルデヒド(B)の製造方法、ならびにポリアルジミンの加水分解方法に関する。接着剤、シーラント、被覆剤または仕上げ材のような組成物における前記ポリアルジミンの使用を開示する。前記ポリアルジミンは、無臭であること、水との接触で急速に加水分解されること、その加水分解後に感知可能な臭気を発生しないこと、およびアミンに対して反応性のある成分を含む組成物中で水がなければ貯蔵に対して安定であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、革新的なポリアルジミンに関する。これらのポリアルジミンは、無臭であり、以下で第一級脂肪族ポリアミンとも称する、脂肪族第一級アミノ基を有するポリアミンから、および無臭のアルデヒドから得ることができる。ポリアルジミンを加水分解すると、前記のアルデヒドおよび前記のポリアミンが再生する。
【背景技術】
【0002】
アルジミンは、それ自体古くより知られている部類の化合物から得られる物質であり、例えば、R.W.Layer、Chem.Rev.、1963年、63巻、489〜510頁に記載されている。水と接触したアルジミンは加水分解を受け、対応するアルデヒドとアミンを生じることが知られている。水がなければ、アルドアミンは極めて安定な化合物である。この性質ゆえに、アルジミンは、例えばアミンもしくはアルデヒドを結合し、かつ/または保護するのに使用する。したがって、例えば米国特許第3,420,800号および米国特許第3,567,692号に記載されているように、アルジミンはポリウレタン化学において使用し、そこではイソシアナートとの組合せでアルジミンは安定で貯蔵可能な組成物を作る。このような組成物の中で、アルジミンは、水(例えば空気中の湿度の形態で)の存在下でアミンを放出し、そのアミンがイソシアナートと反応して架橋するに至らしめることができるので、「潜在性硬化剤」とも呼ばれる。
【0003】
アルデヒドは、一般に、極めて強烈な臭いを有する物質であり、実際このようなアルデヒドに身近で接触した人にとっては不快で、頭痛、吐き気、またはその他健康上の問題の引き金となる物質である。したがって、効果的な換気を確保することが常に必要であり、さもなければ呼吸防護具を着用しなければならないので、多くのアルデヒドおよびそれから誘導されるアルジミンは使用の可能性が極めて限られる。
【0004】
このような応用上の制約を避けるために、無臭であり、かつ加水分解されてやはり無臭のアルデヒドを放出するポリアルジミンが強く求められている。
【0005】
当業者にとって、用語「無臭」を定義することが困難であることは明らかである。本明細書および文献の中で、無臭とは、「嗅覚を有する人間にとって感知できないか、あるいは極めて僅かに感知できる(臭いを感じる)」ことを意味する。
【0006】
今日まで、ポリアルジミンおよび/またはその加水分解の過程で放出されるアルデヒドの臭気を減らすために種々の試みがなされて来た。
【0007】
米国特許第6,136,942号には、脂肪族ポリアミンの3-フェニルオキシベンズアルジミン、および類似化合物を含み、低臭気硬化を示すといわれる1成分ポリウレタンが記載されている。しかし、これらの硬化剤を採用した場合に放出される芳香族アルデヒドの臭気は、明らかに感知可能であり、多くの応用分野において耐え難いものである。
【0008】
米国特許第4,469,831号には、1成分ポリウレタン用硬化剤として脂肪族ポリアミンの2,2-ジメチル-3-(イソブチロキシ)プロパンアルジミンを使用することが記載されている。その主張によれば臭気のほとんどない組成物が得られる。しかし、記載のポリアルジミンを採用した場合に放出されるアルデヒドは、多くの応用分野で耐え難い長期に継続する刺激臭を発する。
【0009】
米国特許第4,853,454号には、とりわけ、脂肪族ポリアミンの置換2,2-ジメチルプロパンアルジミンを含む1成分ポリウレタン組成物が記載されている。記載のポリアルジミンを採用した場合に放出されるアルデヒドは、その蒸気圧が高いので、主張によれば組成物の臭気が非常に少なくなると言われる。しかし、記載のポリアルジミンを使用すると、ここでも同様に長期にわたって感知できる不快臭があり、これらの物質は臭いに敏感な応用分野にはやはり適さないことになる。
【0010】
米国特許第4,720,535号には、芳香族ポリアミンの置換2,2-ジメチルプロパンアルジミンを含む水分硬化ポリウレタン組成物が記載されている。記載のポリアルジミンを使用することは、使用する芳香族ポリアミンのために適当でない。一方で、芳香族ポリアミンは一般にその脂肪族対照物よりもより有毒であり、また他方で、芳香族ポリアミンのポリアルジミンは脂肪族ポリアミンのそれよりもアルジミン基の加水分解に対する反応性、およびほとんどの場合、アミンに対して反応性のある成分とのその後の反応に対する反応性が両方とも低い。さらに、芳香族ポリアミンは光の影響で変色することが知られている。さらに、記載された大部分のアルデヒドは、ここでも同様に、明らかに感知できるものから強いものまで臭気を発生する。
今日まで、無臭で、かつ加水分解で無臭のアルデヒドを放出する、脂肪族ポリアミンの利用可能なポリアルジミンはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,420,800号
【特許文献2】米国特許第3,567,692号
【特許文献3】米国特許第6,136,942号
【特許文献4】米国特許第4,469,831号
【特許文献5】米国特許第4,853,454号
【特許文献6】米国特許第4,720,535号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明が取り組む問題は、そのアルジミン基が水との接触で急速に加水分解し、かつ該加水分解の過程で放出されるアルデヒドが感知可能ないかなる臭気も生じさせない無臭のポリアルジミンを提供することである。ポリアルジミンおよびその加水分解生成物の双方とも、できる限り毒物学的に問題のないものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、前記の問題が、請求項1に記載のポリアルジミンによって解決できることが見出された。本発明のポリアルジミンは、脂肪族第一級アミノ基を有する少なくとも1種のポリアミン、および後で詳細に述べる式に従った少なくとも1種のアルデヒドから得ることができる。
【0014】
この種のポリアルジミンが、アミンと反応性のある成分を含む系のための硬化剤として十分に高い反応性を有することは、当業者にとって明白ではなく驚くべき事実である。当業者は、このようなポリアルジミンは、その疎水性構造により、アルジミン基の加水分解に必要な水に十分接近できず、その結果、その加水分解はもっぱら徐々にかつ不完全に進行すると予想するであろう。しかし、予想外に反し、このようなポリアルジミンは、水分との接触により急速かつ完全に加水分解する。これらの反応性は、例えば米国特許第4,469,831号に記載されているような実質上疎水性のより低いポリアルジミンのそれに匹敵する。
【0015】
ポリアルジミン用に使用するアルデヒドの調製は、容易に入手可能で安価な原料を使用し、長鎖脂肪酸がその例である低揮発性のカルボン酸をβ-ヒドロキシアルデヒド、特に3-ヒドロキシピバルアルデヒドでエステル化することによって驚くべき簡単さで達成される。驚くべきことに、この反応段階は無溶媒で実施できる。使用するカルボン酸に応じて、得られるアルデヒドは室温で固体または液体である。続いて、これらのアルデヒドをポリアミンと実際に反応させて、対応するポリアルジミンを得ることができる。すべての調製操作を無溶媒で実施できるので、蒸留による溶媒の除去は必要なく、それによって一方では調製操作が単純になり、他方では嫌な臭気を生じさせることもあるポリアルジミン中の溶媒の残留が防止される。
【0016】
結局、本発明のポリアルジミンは、アミンに対して反応性のある成分を含む湿度に反応性のある組成物中で使用するのに適していることが見出された。これらの組成物は水分なしでの貯蔵では安定である。
【0017】
本発明は、脂肪族第一級アミノ基を有する少なくとも1種のポリアミンAおよび少なくとも1種のアルデヒドBから得ることのできるポリアルジミンに関する。これらのポリアルジミンおよびその加水分解中に形成されるアルデヒドBも無臭である。さらに、これらのポリアルジミンおよびアルデヒドBの調製方法、ならびにポリアルジミンの加水分解方法を開示する。
【0018】
最後に、接着剤、シーラント、被覆剤または仕上げ材のような組成物におけるこれらポリアルジミンの使用ついて説明する。
【0019】
本発明のポリアルジミンは、それらが無臭であり、水との接触で急速に加水分解し、それらの加水分解中およびその後で、感知できる臭気をなんら発生することがなく、アミンに対して反応性のある成分を含む組成物中に水が存在しない貯蔵では安定である点で注目に値する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、脂肪族第一級アミノ基を有する少なくとも1種のポリアミンAおよび式(I)
【0021】
【化1】

【0022】
を有する少なくとも1種のアルデヒドBから得られるポリアルジミンに関するものであり、
式中、Y1およびY2は、一方では、互いに独立に、所望であれば各々置換されていてもよく、所望であれば各々へテロ原子を含んでいてもよく、所望であれば各々不飽和成分を含んでいてもよいアルキル、アリールまたはアリールアルキル基である。好ましくはY1=Y2=メチルである。
【0023】
他方、Y1およびY2は互いに結合して、5〜8個、好ましくは6個の原子からなる環の大きさを有し、所望であれば1個または2個の単独不飽和結合を含む炭素環または複素環を形成できる。
【0024】
基R1は、11〜30個の炭素原子を有し、ヘテロ原子をもたないかまたは少なくとも1個のヘテロ原子、特に少なくとも1個のエーテル状酸素をもつ直鎖または分枝状アルキル鎖、あるいは11〜30個の炭素原子を有する単独もしくは多重不飽和の直鎖もしくは分枝状炭化水素鎖、あるいは式(II)もしくは(III)
【0025】
【化2】

【0026】
の基を表す。
【0027】
式(II)および/または(III)で、R2は、2〜16個の炭素原子を有し、ヘテロ原子をもたないかまたは少なくとも1個のヘテロ原子、特に少なくとも1個のエーテル状酸素をもつ直鎖もしくは分枝もしくは環状アルキレン基、あるいは2〜16個の炭素原子を有する単独もしくは多重不飽和の直鎖もしくは分枝もしくは環状炭化水素鎖であり、R3は、1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝状アルキル鎖である。Y1およびY2はすでに述べた定義を有し、式中の点線は連結点を意味する。
「ポリアルジミン」または「ポリアミン」において「ポリ」とは、形式上2個以上の当該官能基を含んでいる分子を意味する。
本明細書で、用語「脂肪族第一級アミノ基を有するポリアミン」とは、脂肪族、シクロ脂肪族またはアリール脂肪族基に結合した2個以上のNH2基を形式上必ず含む化合物を指す。したがって、これらの化合物は、例えばアニリンまたは2-アミノピリジンのようにアミノ基が芳香族基に直接的に結合している芳香族アミンとは異なる。
【0028】
ポリアルジミンは、脂肪族第一級アミノ基を有する少なくとも1種のポリアミンA、および少なくとも1種のアルデヒドBから、水の脱離を伴う縮合反応によって調製できる。この種の縮合反応は、極めてよく知られており、例えばHouben-Weyl、「Methoden der organischen Chemie」Xl/2巻、73頁以降に記載されている。この反応で、アルデヒドBは、ポリアミンAの第一級アミノ基に対して化学量論量または化学量論量より過剰に使用する。
通常、このような縮合反応は、反応中に形成される水を共沸で除去することを可能にする溶媒の存在下に実施される。しかし、本発明のポリアルジミンを調製する場合には、溶媒を使用しない調製方法が好ましく、縮合中に形成される水は真空によって反応混合物から直接的に除去する。無溶媒調製では、調製した後に溶媒を蒸留で除去する必要がなくなり、それによって調製手順が簡単になる。さらに、この方法には、ポリアルジミンへの、少なくとも嫌な臭気を生じさせるかもしれない溶媒残留がない。
【0029】
ポリアルジミンを調製するための、脂肪族第一級アミノ基を有する適当なポリアミンAは、例えばポリウレタンまたはエポキシ化学で使用するような通常のポリアミンである。挙げることのできる例としては、次のもの、すなわち、エチレンジアミン、1,2-および1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,2-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1.3-プロパンジアミン、1,3-および1,4-ブタンジアミン、1,3-および1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンおよびこれらの混合物、1,7-ヘプタンジアミン,1,8-オクタンジアミン、4-アミノメチル-1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、メチルビス(3-アミノプロピル)アミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD)、1,3-ジアミノペンタン(DAMP)、2,5-ジメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン類、1,2-、1,3-および1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジアミンまたはIPDA)、2-および4-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサンおよびその混合物、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-シクロヘキシルアミノ-3-アミノプロパン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDA、三井化学製)、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDA)、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3-および1,4-キシリレンジアミンなどのシクロ脂肪族ポリアミン類、ビス(2-アミノエチル)エーテル、4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン、4,9-ジオキサドデカン-1
,12-ジアミンおよびその高級オリゴマーなどのエーテル基を含む脂肪族ポリアミン類、例えばJeffamine(登録商標)(Huntsman Chemicals製造)の名称で入手できる理論上2個または3個のアミノ基を有するポリアルキレンポリアミン類、およびさらに前記ポリアミンの混合物が含まれる。
【0030】
好ましいポリアミンは、1,6-ヘキサメチレンジアミン、MPMD、DAMP、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、4-アミノメチル-1,8-オクタンジアミン、IPDA、1,3-および1,4-キシリレンジアミン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,2-、1,3-および1,4-ジアミノシクロヘキサン、理論上2個または3個のアミノ基を有するポリオキシアルキレンポリアミン類、特にJeffamine(登録商標)EDR-148、Jeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400およびJeffamine(登録商標)T-403、および、特に前記ポリアミン類の2個以上の混合物である。
【0031】
ポリアルジミンは、式(I)
【0032】
【化3】

【0033】
を有する少なくとも1種のアルデヒドBを用いて調製される。
【0034】
アルデヒドBの好ましい1つの調製方法では、出発化合物が式(IV)のβ-ヒドロキシアルデヒドであり、これは例えばホルムアルデヒド(またはパラホルムアルデヒドもしくは1,3,5-トリオキサンなど、ホルムアルデヒドのオリゴマー体)および式(V)のアルデヒドから、適合するならin situでの架橋アルドール付加で調製できる。
【0035】
【化4】

【0036】
式(IV)のβ-ヒドロキシアルデヒドをカルボン酸と反応させると対応するエステルが生じ、特に長鎖脂肪酸R1-COOHを用いると対応する脂肪酸エステルが生じ、および/またはジカルボン酸モノアルキルエステルHOOC-R2-COOR3を用いると式(III)に記載の基を有するアルデヒドBが生じ、および/またはジカルボン酸HOOC-R2-COOHを用いると式(II)に記載の基を有するこの場合ジアルデヒドであるアルデヒドBが生じる。式(II)および(III)およびR1、R2およびR3は既に説明した定義を有する。このエステル化は、溶媒を使用しないで、例えばHouben-Weyl、「Methoden der organischen Chemie」VIII巻、516〜528頁に記載されている周知の方法に従って実施できる。
通常、このようなエステル化反応は溶媒の存在下で実施され、溶媒は、反応を行った後に例えば蒸留によって、該当するならエステル化で反応しなかった過剰のアルコールと共に再び除去される。しかし、アルデヒドBを調製するための1つの好ましい方法の場合、溶媒をまったく使用しない。その場合には、式(IV)に記載のβ-ヒドロキシアルデヒドを、溶媒を使用することなく、カルボン酸またはカルボン酸混合物と直接反応させ、エステル化の間に形成される水を真空下で除去する。エステル化に使用するカルボン酸は、実質的に無臭であり、ポリアルジミン中にその痕跡量が存在してもはやはり同様に嫌な臭気を発生しない。この理由、および無溶媒調製であるため、調製に続く、例えば精留または結晶化など費用が嵩み厄介な方法によるアルデヒドの精製を省くことが可能であり、その結果、調製手順が非常に簡単になる。
もちろん、溶媒を用いるエステル化も可能であるが、それに続く費用が嵩み厄介な溶媒の分離を必要とし、さもないと溶媒残留のためポリアルジミンを無臭の状態で調製できないので好ましくない。
【0037】
ジカルボン酸を使用する場合、例えば最初に若干のカルボン酸基が式(IV)に記載のβ-ヒドロキシアルデヒドでエステル化され、続いて残りのカルボン酸基がアルキルアルコール(R3-OH)でエステル化されると、式(II)に記載の基を有するアルデヒドBと式(III)に記載の基を有するアルデヒドBとの混合物が得られる。この種の混合物は、ポリアルジミンの調製に直接使用できる。
【0038】
式(IV)に記載のβ-ヒドロキシアルデヒドを得るために、ホルムアルデヒドと反応させる式(V)に記載の好ましいアルデヒドは、次のもの、すなわち、イソブチルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、2-エチルカプロアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,2,3,6-テトラヒドロベンズアルデヒド、2-メチル-3-フェニルプロピオンアルデヒド、2-フェニルプロピオンアルデヒドおよびジフェニルアセトアルデヒドである。イソブチルアルデヒドが特に好ましい。
【0039】
式(IV)に記載の好ましいβ-ヒドロキシアルデヒドは、ホルムアルデヒドと、好ましいとして前に詳記した式(V)に記載のアルデヒドとの反応から得られる生成物である。3-ヒドロキシピバルアルデヒドが特に好ましい。
【0040】
式(IV)に記載のβ-ヒドロキシアルデヒドとのエステル化に適したカルボン酸としては、次のもの、すなわち、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リオール酸、リノレン酸、エラエオステアリン酸、アラキドン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、3,6,9-トリオキサウンデカンジオン酸およびポリエチレングリコールの類似誘導体、脱水素リシノール酸、さらに例えばナタネ油、ヒマワリ油、アマニ油、オリーブ油、ココナツ油、アブラヤシ核油、およびアブラヤシ油などの天然油脂の工業的鹸化から得られる脂肪酸を挙げることができる。
【0041】
好ましいのは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸およびセバシン酸、ならびにこれらの酸を含む脂肪酸の工業的混合物である。
【0042】
脂肪族第一級アミノ基を有する少なくとも1種のポリアミンAを少なくとも1種のアルデヒドBと反応させると、例えば図式(VI)および(VII)のポリアルジミン、
【0043】
【化5】

【0044】
(式中、nは2、3または4であり、Qは脂肪族第一級アミノ基を有するポリアミンAの中から第一級アミノ基のすべてを除いた後の基を表す)、および
【0045】
【化6】

【0046】
(式中、mは0〜10の整数であり、Qは同一分子中で同一または異なっており、それぞれの場合に脂肪族第一級アミノ基を含むポリアミンAの中から第一級アミノ基のすべてを除いた後の基を表す)が生じる。式(VI)および(VII)中の基Y1、Y2、R1およびR2は既に述べた定義を有する。
【0047】
ポリアルジミンを調製するのに式(II)に記載の基を有するジアルデヒドBを使用する場合は、有利には、式(VII)のポリアルジミンに対してmの平均値が1〜10の範囲となるような比率で、ジアルデヒドBをモノアルデヒドとの混合物の状態で使用するか、あるいは、ポリアルジミンを調製した場合にアミノ基に対し過剰のアルデヒド基が存在するようにジアルデヒドBを調節し、アルデヒドの過剰は、式(VII)のポリアルジミンに対してmの平均値がやはり1〜10の範囲となるように選択される。どちらの方法でも、容易に扱える粘度を有するオリゴマー性ポリアルジミンが得られる。
【0048】
ポリアルジミンとしては、ポリアルジミンの混合物を使用することも可能であり、特に第一級脂肪族アミノ基を有する種々のポリアミンAを採用し、異なるまたは同一のアルデヒドBと反応させて調製される種々のポリアルジミンの混合物を含み、特に異なる数の第一級脂肪族アミノ基を有するポリアミンを採用して調製される、すなわちm値の異なるポリアルジミンの混合物が含まれる。
【0049】
本発明のポリアルジミンは無臭である。ポリアルジミンは、単独で、あるいは例えばイソシアナートなど、アミンと反応性する成分と組み合わせた状態で貯蔵しても、水がなければ安定である。水と接触すると、急速な加水分解が起こり、その過程で脂肪族ポリアミンおよびアルデヒドが遊離する。この場合、水は、液状またはガス状凝集状態でポリアルジミンと接触させることができる。したがって、このような加水分解工程では、例えば大気中水分の形態での水が、ポリアルジミンに対してまたはポリアルジミン含有組成物に対して作用できる。このような接触のさらに進んだ例が、水または水含有成分または水放出成分を混合することによる組込みである。
アミンに対して反応性のある成分と加水分解に付されるポリアルジミンとの反応は、必ずしもポリアミンの段階を経由して行われる必要はない。反応は、ポリアルジミンからポリアミンへの加水分解中の中間体とでも当然可能である。例えば、加水分解途中のポリアルジミンがヘミアミナール(hemiaminal)の形態で、アミンに対して反応性のある成分と直接反応することが考えられる。
【0050】
本発明のポリアルジミンは、特にポリアミンの供給源として使用する。この種のポリアルジミンは、例えば、イソシアナート基を含む化合物などのアミンに対して反応性のある成分を含む組成物中で使用できる。水との接触によりポリアミンが放出され、このポリアミンはアミンに対して反応性のある前記成分と前に述べたように反応して、例えばそれらを架橋する。
【0051】
本発明のポリアルジミンは、接着剤、シーラント、被覆剤、発泡剤、塗料および床仕上げ材中で使用するための硬化剤として特に適している。
【0052】
ポリアルジミンは、1成分系における水分反応性潜在性硬化剤として、および2成分系における硬化反応の前に起こらなければならない大気中の水分によるその加水分解の活性化が長い処理時間(ポットライフ)を可能にする反応遅延化作用を有する硬化剤として、イソシアナート基を含む組成物に対して特に適している。
【0053】
本発明のポリアルジミンは、特にその塗布前、塗布中、塗布後における製品によるいかなる臭気汚染も許されない応用分野において有利に使用する。本発明のポリアルジミンを、臭気がそれほど重要な要素にならない場所でも使用できるのは当然である。
【実施例】
【0054】
パーセントの数字は、特記しない限りすべて重量パーセントを意味する。
【0055】
使用したポリアミン
アルファ、オメガ-ポリオキシプロピレンジアミン(Jeffamine(登録商標)D-230、Huntsman):第一級アミン総含有量=97%、アミン含有量=8.22ミリモルNH2/g。
1,3-キシリレンジアミン(MXDA、三菱ガス化学):MXDA含有量=99%、アミン含有量=14.56ミリモルHN2/g。
1,6-ヘキサメチレンジアミン(HDA):HDA含有量=99.0%、アミン含有量=17.21ミリモルNH2/g。
1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD、デュポン):MPMD含有量=98.5%、アミン含有量=17.11ミリモルNH2/g。
【0056】
使用したポリオール
Acclaim(登録商標)4200N(バイエル):理論上2個のOH官能基を有し、平均分子量が約4000、OH価が約28mgKOH/g、不飽和度が約0.005ミリ当量/gである直鎖ポリプロピレンオキシドポリオール。
Caradol(登録商標)MD34-02(シェル):理論上3個のOH官能基を有し、平均分子量が約4900、OH価が約35mgKOH/g、不飽和度が約0.08ミリ当量/gであり、末端がエチレンオキシドである非直鎖ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドポリオール。
【0057】
試験法の説明
赤外スペクトルは、Perkin-Elmer社のFT-IR装置1600(ZnSe結晶を用いた水平状ATR測定装置)で測定し、試料は希釈せずフィルム状に取り付けた。吸収バンドは波数(cm-1)で示す。
【0058】
粘度は、Haake社のコーン/プレート粘度計(PK100/VT-500)により20℃で測定した。
【0059】
皮膜形成時間(粘着性がなくなるまでの時間、「タックフリー時間」)は、23℃、相対湿度50%で測定した。
【0060】
引張強度および破断伸びは、DIN EN53504に従って、23℃、相対湿度50%で7日間硬化させたフィルムについて測定した(引張り速度:200mm/分)。
【0061】
気泡の形成は、力学試験に使用するフィルム(膜厚2mm)を硬化する(23℃、相対湿度50%で7日間)過程で発生する気泡の量に基づいて定性的に評価した。
【0062】
アルデヒドまたはポリアルジミンまたは組成物の臭気は、それぞれ、フィルムとして塗布された材料面から10cmの距離で室温での鼻による臭気捕集によって評価した。組成物については、1回目は直前に塗布した材料について、2回目は23℃、相対湿度50%で硬化させた材料について塗布7日後に評価を実施した。
【0063】
ポリアルジミンの加水分解は、各ポリアルジミン10mlに、アルジミン基に対して化学量論量の0.1N HClを添加し、しばらく混合することによって実施した。1時間後、加水分解に付したポリアルジミンの臭気を、フィルムとして塗布した材料面から10cmの距離で室温での鼻による臭気捕集によって評価した。
【0064】
ポリアルジミンの調製
ポリアルジミンPA1〜PA7は、アルデヒドA1〜A6を用いて調製した。該アルデヒドの調製を以下に記載する。
【0065】
(実施例1)
アルデヒドA1
還流冷却器、温度計および分水器(ディーンスターク)を付した丸底フラスコにホルムアルデヒド(37%水溶液、メタノール不含有)40.5g、イソブチルアルデヒド36.0g、ラウリン酸100.0g、および4-トルエンスルホン酸1.0gを仕込み、窒素雰囲気下に置いた。混合物を激しく攪拌しながら90℃の油浴中で、還流速度がかなり低下するまで加熱した。この時点で浴温を120℃まで上昇させ、混合物を一定温度まで還流沸騰させた。次いで、還流冷却を切り替え、油浴を140℃まで上昇させると、この時点で水が分離し始めた。2時間後に浴温を170℃まで上昇させ、装置を水流ポンプによる真空下で90分間排気した。分水器中に全部で約35mlの留出物が集まった。反応混合物を室温まで冷却し、窒素雰囲気下に貯蔵した。得られた生成物である明橙色で粘度の低い無臭オイルは、質量分析法によりラウリン酸2,2-ジメチル-3-オキソプロピルと同定された。収量140g。
IR:2954、2923、2853、2707(CHO)、1733(C=O)、1466、1418、1402、1375、1248、1234、1157、1112、1023、998、938、892、774、722。
【0066】
(実施例2)
アルデヒドA2
アルデヒドA1で説明したと同様、ホルムアルデヒド(37%水溶液、メタノール不含有)42.8g、イソブチルアルデヒド38.0g、ステアリン酸150.0g、および4-トルエンスルホン酸1.0gを、約37mlの水を分離しながら反応させた。得られた生成物である、明橙色の室温で固体である無臭の材料は、質量分析法によりステアリン酸2,2-ジメチル-3-オキソプロピルと同定された。収量192g。
IR:2955、2915、2849、2712(CHO)、1732(C=O)、1468、1416、1378、1311、1293、1273、1255、1235、1215、1193、1166、1104、1018、988、940、892、810、777、720。
【0067】
(実施例3)
アルデヒドA3
還流冷却器、温度計および分水器(ディーンスターク)を付した丸底フラスコにパラホルムアルデヒド11.0g、2-メチルバレルアルデヒド40.0g、ラウリン酸64.0g、および4-トルエンスルホン酸0.5gを仕込み、窒素雰囲気下に置いた。混合物を激しく攪拌しながら100℃の油浴中で、還流速度がかなり低下するまで加熱した。次いで、還流冷却を切り替え、浴温を130℃まで上昇させると、この時点で水が分離し始めた。30分後に浴温を170℃まで上昇させ、装置を水流ポンプによる真空下で90分間排気した。分水器中に全部で約14mlの留出物が集まった。続いて反応混合物を高真空下で精留した。得られた生成物である、無色で粘度の低い無臭オイル(沸点、0.1ミリバールで143℃)は、質量分析法によりラウリン酸2-メチル-2-プロピル-3-オキソプロピルと同定された。収量70.0g。
IR:2956、2923、2852、2706(CHO)、1734(C=O)、1466、1417、1398、1378、1347、1233、1156、1112、1074、1011、975、934、919、885、856、777、739、722。
【0068】
(実施例4)
アルデヒド混合物A4
アルデヒドA1で説明したと同様、ホルムアルデヒド(37%水溶液、メタノール不含有)60.2g、イソブチルアルデヒド53.5g、セバシン酸100.0g、および4-トルエンスルホン酸1.0gを、約52mlの水を分離しながら反応させた。得られた反応混合物を100℃まで冷却し、n-ブタノール19.0gと混合して100℃で30分間攪拌し、次いで浴温を140℃まで上昇させると再び水が分離し始めた。1時間後、浴温を170℃まで上昇させ、装置を水流ポンプによる真空下で90分間排気した。分水器中に全部で約57ml(52ml+5ml)の留出物が集まった。得られた生成物である、明橙色の無臭オイルは、セバシン酸ビス(2,2-ジメチル-3-オキソプロピル)、セバシン酸ブチル(2,2-ジメチル-3-オキソプロピル)およびセバシン酸ジブチルからなっていた(GC-MSで同定)。収量168g。
IR:2933、2855、2708(CHO)、1731(C=O)、1465、1369、1240、1161、1099、1026、937、893、774、726。
【0069】
(実施例5)
アルデヒド混合物A5
アルデヒドA1で説明したと同様、パラホルムアルデヒド22.3g、イソブチルアルデヒド53.5g、ラウリン酸49.5g、セバシン酸50.0g、および4-トルエンスルホン酸1.0gを、14ml弱の水を分離しながら反応させた。得られた生成物である、明橙色の無臭オイルは、ラウリン酸2,2-ジメチル-3-オキソプロピル、セバシン酸ビス(2,2-ジメチル-3-オキソプロピル)の混合物からなっていた(GC-MSで同定)。収量161g。
【0070】
(実施例6)
アルデヒドA6
温度計および分水器(ディーンスターク)を付した丸底フラスコに3-ヒドロキシピバルアルデヒド(二量体)51.0g、ラウリン酸100.0g、および4-トルエンスルホン酸1.0gを仕込み、窒素雰囲気下に置いた。混合物を激しく攪拌しながら油浴中で140℃まで加熱すると、水が分離し始めた。2時間後に浴温を170℃まで上昇させ、装置を水流ポンプによる真空下で90分間排気した。分水器中に全部で9ml強の留出物が集まった。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、窒素雰囲気下に保存した。得られた生成物である、明橙色で粘度の低い無臭オイルは、質量分析法によりラウリン酸2,2-ジメチル-3-オキソプロピルと同定され、実施例1で得られたアルデヒドA1と相違はなかった。収量141g。
【0071】
(実施例7)
ポリアルジミンPA1
丸底フラスコに140.0gのアルデヒドA1を仕込み、窒素雰囲気下に置き、水浴でフラスコを冷却した。激しい攪拌と連続冷却を続けながら、滴下ロートから48.6gのJeffamine(登録商標)D230を混合物の温度が40℃を越えて上昇しないようなゆっくりした速度で添加した。その後、揮発性成分を水流ポンプによる真空下に80℃で完全に留去した。室温で液体である得られた反応生成物は、完全に無臭であり、アミン含有量として測定して2.17ミリモルNH2/gのアルジミン含有量、および20℃で700mPa・sの粘度を有していた。
IR:2956、2923、2853、1738(C=O)、1667(C=N)、1466、1375、1344、1250、1236、1155、1109、1023、1006、932、873、722。
【0072】
(実施例8)
ポリアルジミンPA2
PA1で説明したと同様、192.0gのアルデヒドA2を57.0gのJeffamine(登録商標)D-230と反応させた。水流ポンプによる真空下に80℃で揮発性成分を除去すると、完全に無臭で、アミン含有量として測定して1.93ミリモルNH2/gのアルジミン含有量を有する、粘稠度が室温でクリーム状の反応生成物が生じた。
IR:2956、2919、2851、1739(C=O)、1667(C=N)、1467、1396、1375、1247、1157、1111、1021、1003、932、873、721。
【0073】
(実施例9)
ポリアルジミンPA3
PA1で説明したと同様、30.0gのアルデヒドA3を7.6gのHDAと反応させた。水流ポンプによる真空下に80℃で揮発性成分を除去すると、完全に無臭で、アミン含有量として測定して2.72ミリモルNH2/gのアルジミン含有量を有する、室温で液体である無色の反応生成物が生じた。
IR:2955、2922、2852、1737(C=O)、1667(C=N)、1466、1419、1376、1343、1233、1162、1112、1070、1021、1008、939、885、863、740、722。
【0074】
(実施例10)
ポリアルジミンPA4
PA1で説明したと同様、168.0gのアルデヒド混合物A4を72.0gのJeffamine(登録商標)D-230と反応させた。水流ポンプによる真空下に80℃で揮発性成分を除去すると、完全に無臭で、アミン含有量として測定して2.49ミリモルNH2/gのアルジミン含有量、および20℃で6700mPa・sの粘度を有する、室温で液体である反応生成物が生じた。
IR:2964、2928、2855、1734(C=O)、1667(C=N)、1458、1374、1243、1160、1106、1020、934、874、726。
【0075】
(実施例11)
ポリアルジミンPA5
PA1で説明したと同様、140.0gのアルデヒド混合物A1を26.0gのMXDAと反応させた。水流ポンプによる真空下に80℃で揮発性成分を除去すると、完全に無臭で、アミン含有量として測定して2.33ミリモルNH2/gのアルジミン含有量を有する、室温で液体である反応生成物が生じた。
IR:2954、2922、2853、1737(C=O)、1668(C=N)、1608、1466、1395、1374、1367、1302、1249、1232、1158、1113、1020、1006、920、781、744、722、701。
【0076】
(実施例12)
ポリアルジミンPA6
PA1で説明したと同様、161.0gのアルデヒド混合物A5を33.0gのMPMDと反応させた。水流ポンプによる真空下に80℃で揮発性成分を除去すると、完全に無臭で、アミン含有量として測定して3.05ミリモルNH2/gのアルジミン含有量、および20℃で13000mPa・sの粘度を有する、室温で液体である反応生成物が生じた。
【0077】
(実施例13)
ポリアルジミンPA7
PA1で説明したと同様、141.0gのアルデヒド混合物A6を23.2gのHDAと反応させた。水流ポンプによる真空下に80℃で揮発性成分を除去すると、完全に無臭で、アミン含有量として測定して2.50ミリモルNH2/gのアルジミン含有量を有する、室温で液体である反応生成物が生じた。
IR:2954、2923、2853、1737(C=O)、1669(C=N)、1466、1395、1374、1248、1230、1157、1112、1020、1004、933、722。
【0078】
(実施例14)
ポリアルジミンPA8(比較)
丸底フラスコに100.0gのJeffamine(登録商標)D-230を仕込んだ。効果的な冷却と激しい攪拌を続けながら、滴下ロートから75.0gのイソブチルアルデヒドを添加した。12時間攪拌した後、揮発性成分を留去した。得られた反応生成物は、室温で液体であり、極めて強いアルデヒド臭を有し、アミン含有量として測定して5.66ミリモルNH2/gのアルジミン含有量を有していた。
【0079】
(実施例15)
ポリアルジミンPA9(比較)
丸底フラスコに62.0gのJeffamine(登録商標)D-230を仕込んだ。効果的な冷却と激しい攪拌をしながら、滴下ロートから89.5gの2,2-ジメチル-3-イソブチロキシプロパナールを添加した。10分間攪拌した後、揮発性成分を留去した。得られた反応生成物は、室温で液体であり、極めて強いアルデヒド臭を有し、アミン含有量として測定して3.58ミリモルNH2/gのアルジミン含有量を有していた。
【0080】
(実施例16)
ポリアルジミンPA10(比較)
PA9で説明したと同様、45.0gのMXDAを115.0gの2,2-ジメチル-3-イソブチロキシプロパナールと反応させた。得られた反応生成物は、室温で液体であり、極めて強いアルデヒド臭気を有し、アミン含有量として測定して4.43ミリモルNH2/gのアルジミン含有量を有していた。
【0081】
結果:ポリアルジミンの性質
表1に、1つは、調製した生成物の臭い(「調製後の臭気」)、もう1つは、加水分解の過程での臭い、換言すれば各アルデヒドの放出(「加水分解後の臭気」)について、記載したポリアルジミンの何らかの臭気がどの程度強く感知されるかを示す。
【0082】
【表1】

【0083】
本発明のポリアルジミンPA1〜PA7は、加水分解の前または後のいずれでも臭気がない。これとは対照的に、比較のポリアルジミンPA8〜PA10は、イソブチルアルデヒドを放出するPA8のみならず、双方とも米国特許第4,469,831号に従って調製され、2,2-ジメチル-3-イソブチロプロパナールを放出するPA9およびPA10も、すべて強いあるいは極めて強い臭いがあった。
【0084】
ポリアルジミンの使用例
本発明のポリアルジミンを使用できる可能性のある例には、以下、イソシアナート基を含有する組成物中での使用が含まれる。
【0085】
組成物Z1〜Z11は、その調製を以下に記載するポリウレタンプレポリマーPP1およびPP2を用いて調製した。
【0086】
ポリウレタンプレポリマーPP1
259gのポリオールAcclaim(登録商標)4200N、517gのポリオールCaradol(登録商標)MD34-02、124gの4,4'-メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI、Desmodur(登録商標)44MCL、バイエル社)および100gのフタル酸ジイソデシルを、周知の方法により80℃で反応させ、末端がNCOのポリウレタンプレポリマーを得た。反応生成物は、滴定で測定してポリウレタンプレポリマーを基準にして2.30%の遊離イソシアナート基含有量、および20℃で56Pa・sの粘度を有していた。
【0087】
ポリウレタンプレポリマーPP2
845gのポリオールAcclaim(登録商標)4200N、115gの4,4'-メチレンジフェニルジイソシアナート(MDI、Desmodur(登録商標)44MCL、バイエル社)を周知の方法により80℃で反応させ、末端がNCOのポリウレタンプレポリマーを得た。反応生成物は、滴定で測定して1.96%の遊離イソシアナート基含有量、および20℃で37Pa・sの粘度を有していた。
【0088】
(実施例17)
PU組成物Z1〜Z7
表2に記載したポリウレタンプレポリマーおよびポリアルジミンを所定のNH2/NCO比(すなわち、ポリウレタンプレポリマー中のイソシアナート基1当量に対するアルジミン基の当量数)で均一に混合した。各混合物に安息香酸(200mg/ポリウレタンプレポリマー100g)を添加し、この混合物を再び均一に攪拌して、直ちに気密管に分注し、60℃で15時間貯蔵した。次いで、各混合物の一部をPTFEで被覆した金属薄板に注ぎ(膜厚約2mm)、23℃、相対湿度50%で7日間硬化させ、その後、完全硬化フィルムの力学的特性を測定した。残りの管内容物は、貯蔵前および60℃で7日間貯蔵後の粘度を測定することによる、貯蔵安定性の判定に使用した。試験結果を表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
表2の結果は、本発明のポリアルジミンPA1〜PA7を含む組成物Z1〜Z7は、貯蔵に関してすべて安定であり、良好な反応性(皮膜形成時間)を有し、気泡なしで硬化する。硬化状態で、これらの組成物は、良好な力学的特性を有し、塗布中やその後でも嫌な臭いを発しないことを示している。
【0091】
(実施例18)
PU組成物Z8〜Z11(比較)
実施例18(比較)は、従来技術に従って調製したポリアルジミンPA8〜PA10を使用すること以外は、実施例17と同様の方法で実施した。試験結果を表3に示す。
【0092】
【表3】

【0093】
表3の結果は、ポリアルジミンPA8を含むポリウレタン組成物Z8は貯蔵に関して安定でないことを示している。この混合物は最初の粘度測定の前でさえゲル化した。しかも、塗布時にZ8は非常に強い臭気を有していた。
米国特許第4,469,831号に従って調合されたポリウレタン組成物Z9およびZ10は、良好な貯蔵安定性と反応性を有し、硬化状態では良好な力学的特性を有していたが、加水分解の過程で放出されるアルデヒドが多くの応用分野で許容できない強く長期にわたって継続する臭気を生じさせた。
潜在性硬化剤を含まないポリウレタン組成物Z11は、確かに無臭であり、しかも貯蔵に関して安定でもあるが、反応性が低く(極めて長い皮膜形成時間)、かつ硬化には多数の気泡形成が伴い、その結果、硬化組成物の実際の力学的特性を測定することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンと反応性のある成分を含む系のための潜在性硬化剤であって、
前記潜在性硬化剤がポリアルジミンからなり、
前記ポリアルジミンが、2個以上の脂肪族第一級アミノ基を有する少なくとも1種のポリアミンA、および式
【化1】

(式中、
Y1およびY2は、互いに独立に、所望ならいずれの場合も置換されていてもよく、所望ならいずれの場合もヘテロ原子を含んでいてもよく、所望ならいずれの場合も不飽和成分を含んでいてもよいアルキル、アリールまたはアリールアルキル基であるか、あるいは
Y1およびY2は、互いに連結して、5〜8個の原子からなる環の大きさを有し、所望なら1個または2個の単独不飽和結合を含む炭素環または複素環を形成し、かつ
R1は、11〜30個の炭素原子を有し、ヘテロ原子を含まないか、または少なくとも1個のヘテロ原子を含む直鎖もしくは分枝状アルキル鎖、または11〜30個の炭素原子を有する単独もしくは多重不飽和の直鎖もしくは分枝状炭化水素鎖、
あるいは
【化2】

あるいは
【化3】

を表し、式中、
R2は、2〜16個の炭素原子を有し、ヘテロ原子を含まないか、または少なくとも1個のヘテロ原子を含む直鎖もしくは分枝もしくは環状アルキレン鎖であり、
R3は、1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝状アルキル鎖である)
の少なくとも1種のアルデヒドB
から、ポリアミンAの脂肪族第一級アミノ基と、アルデヒドBのアルデヒド基とを縮合反応させることによって得ることでき、かつ、
アルデヒドB のR1が式(II)の基を表す場合には、ポリアミンAとアルデヒドBとから誘導される繰り返し単位の数の平均値が1〜10であるオリゴマー性ポリアルジミンである、潜在性硬化剤
【請求項2】
脂肪族第一級アミノ基を有する前記ポリアミンAが、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD)、1,3-ジアミノペンタン(DAMP)、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、4-アミノメチル-1,8-オクタンジアミン、1,3-および1,4-キシリレンジアミン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,2-、1,3-および1,4-ジアミノシクロヘキサン、2個または3個のアミノ基を有するポリオキシアルキレンポリアミン、およびさらに前記ポリアミンの2個以上の混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の潜在性硬化剤
【請求項3】
前記ポリアルジミンを調製するのに使用する前記アルデヒドBが、β-ヒドロキシアルデヒドとカルボン酸との溶媒を使用しないエステル化反応によって得ることが可能であり、該β-ヒドロキシアルデヒドがホルムアルデヒド、および/またはパラホルムアルデヒドから、およびもう1つのアルデヒドから、適合するならin situで調製され、このもう1つのアルデヒドがイソブチルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、2-エチルカプロアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,2,3,6-テトラヒドロベンズアルデヒド、2-メチル-3-フェニルプロピオンアルデヒド、2-フェニルプロピオンアルデヒドおよびジフェニルアセトアルデヒドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の潜在性硬化剤
【請求項4】
前記アルデヒドBを調製するのに使用するカルボン酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸およびセバシン酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の潜在性硬化剤
【請求項5】
ポリアルジミンを調製するのに、前記アルデヒドBを前記ポリアミンAの第一級アミノ基に対して化学量論量または化学量論量より過剰に使用することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の潜在性硬化剤
【請求項6】
Y1=Y2=メチルであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の潜在性硬化剤
【請求項7】
アルデヒドBを、脂肪族第一級アミノ基を有するポリアミンAと反応させることを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の潜在性硬化剤を調製する方法。
【請求項8】
カルボン酸およびβ-ヒドロキシアルデヒドから、溶媒を使用しないでアルデヒドBを調製する段階をさらに含み、該β-ヒドロキシアルデヒドがホルムアルデヒドおよび/またはパラホルムアルデヒドもしくはホルムアルデヒドのオリゴマー体から、およびもう1つのアルデヒドから、適合するならin situで調製される、請求項7に記載の潜在性硬化剤の調製方法。
【請求項9】
カルボン酸および3-ヒドロキシピバルアルデヒドから、溶媒を使用しないでアルデヒドBを調製する段階をさらに含み、該3-ヒドロキシピバルアルデヒドがホルムアルデヒドおよび/またはパラホルムアルデヒドから、およびイソブチルアルデヒドから、適合するならin situで調製される、請求項7に記載の潜在性硬化剤の調製方法。
【請求項10】
ポリアルジミンおよび/またはアルデヒドを調製する過程で溶媒を使用しないことを特徴とする、請求項7、8または9に記載の潜在性硬化剤の調製方法。
【請求項11】
アミンに対して反応性のある成分を含有する組成物における請求項1から6のいずれか一項に記載の潜在性硬化剤の使用。
【請求項12】
アミンに対して反応性のある成分がイソシアナート基であることを特徴とする、請求項11に記載の潜在性硬化剤の使用。
【請求項13】
前記組成物を接着剤、シーラント、被覆剤または仕上げ材として使用することを特徴とする、請求項11または12に記載の潜在性硬化剤の使用。
【請求項14】
請求項1から6のいずれか一項に記載の潜在性硬化剤を、ガス状凝集状態の水と接触させて、アルデヒドBを放出させることを特徴とする、加水分解法。
【請求項15】
請求項1から6のいずれか一項に記載の潜在性硬化剤を、水を含有する成分または水を放出する成分の形態の水と接触させて、アルデヒドBを放出させることを特徴とする、加水分解法。
【請求項16】
アミンに対して反応性のある成分を含む組成物中に潜在性硬化剤が存在する、請求項14または15に記載の加水分解法。

【公開番号】特開2009−235420(P2009−235420A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171356(P2009−171356)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【分割の表示】特願2004−525285(P2004−525285)の分割
【原出願日】平成15年7月23日(2003.7.23)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】