説明

ポリイソシアネート及び二液型コーティング剤

【課題】耐汚染性に十分優れる塗膜を形成することができるポリイソシアネート及び二液型コーティング剤を提供すること。
【解決手段】
含フッ素モノアルコールと脂肪族ジイソシアネートとの反応により得ることができ、アロファネート変性体及びイソシアヌレート変性体を含むポリイソシアネートであって、アロファネート変性体が、モノアロファネート体、ジアロファネート体及びトリアロファネート体を含有しており、モノアロファネート体100質量部に対するジアロファネート体の含有量が21〜80質量部及びトリアロファネート体の含有量が5〜60質量部である、ポリイソシアネート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート及び二液型コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族又は脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートを用いてなるウレタン系塗料は、耐候性、耐摩耗性に優れており、建築物、土木構築物等の屋外基材の塗装、自動車の補修、プラスチックの塗装等に使用されている。
【0003】
しかしながら、近年、これら塗装分野における要求特性は、一層厳しくなっており、耐汚染性の更なる向上が求められている。例えば、特許文献1では、含フッ素ポリイソシアネートを含有する被覆組成物を用いた表面エネルギーが低い塗膜の形成が検討されている。
【特許文献1】特開平10−176026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1で開示されている被覆組成物から形成した塗膜の耐汚染性は、要求を満足できるレベルにはまだ達していない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、耐汚染性に十分優れる塗膜を形成することができるポリイソシアネート及び二液型コーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、含フッ素モノアルコールと脂肪族ジイソシアネートとの反応により得ることができ、アロファネート変性体及びイソシアヌレート変性体を含むポリイソシアネートであって、アロファネート変性体が、モノアロファネート体、ジアロファネート体及びトリアロファネート体を含有しており、モノアロファネート体100質量部に対するジアロファネート体の含有量が21〜80質量部及びトリアロファネート体の含有量が5〜60質量部である、ポリイソシアネートを提供する。
【0007】
ここで、アロファネート変性体は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化1】

【0008】
式中、Rは脂肪族ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた基を示し、Rは含フッ素モノアルコールからヒドロキシル基を除いた基を示す。また、nはアロファネート基の繰り返し単位数を示し、1以上の整数であり、通常は主として1〜3程度の繰り返し単位数を有する。このように、アロファネート変性体は、モノアロファネート体の他に、ジアロファネート体以上のアロファネート体を含有する。
【0009】
一般に、アロファネート変性体は、粘度が比較的低く取り扱い性に優れるものの、イソシヌレート変性体に比べて耐汚染性に劣る傾向がある。本発明者らは、含フッ素モノアルコールと、脂肪族ジイソシアネートとの反応により得ることのできるポリイソシアネートに関して、鋭意検討を重ねた結果、アロファネート変性体中のモノアロファネート体、ジアロファネート体及びトリアロファネート体の比率を所定の範囲にすることで耐汚染性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
上記構成を備えることにより、本発明のポリイソシアネートは、耐汚染性が十分に向上した塗膜を形成することができる。
【0011】
また、本発明のポリイソシアネートは、全量基準で、イソシアヌレート変性体を7〜20モル%含むことが好ましい。これにより、耐汚染性により一層優れる塗膜を形成することができるだけでなく、耐候性も向上する。
【0012】
さらに、上記ポリイソシアネートは、25℃での粘度が160〜2000mPa・sであることが好ましい。このような粘度範囲とすることにより、本発明のポリイソシアネートを含む二液型コーティング剤を調整するときの取り扱い性に優れ、かつ、不揮発分含量を高くすることができる。
【0013】
本発明は、また、上記ポリイソシアネートを含む二液型コーティング剤を提供する。このようなコーティング剤は、本発明のポリイソシアネートを含むため、耐汚染性に十分優れる塗膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐汚染性に十分優れる塗膜を形成することができるポリイソシアネート及び二液型コーティング剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(ポリイソシアネート)
本発明のポリイソシアネートは、含フッ素モノアルコールと、脂肪族ジイソシアネートとの反応により得ることができ、アロファネート変性体及びイソシアヌレート変性体を含むものであり、アロファネート変性体は、モノアロファネート体、ジアロファネート体及びトリアロファネート体を含有している。
【0017】
ポリイソシアネートは、アロファネート化触媒の存在下、脂肪族ジイソシアネートと含フッ素モノアルコールとの反応により合成することができる。合成方法としては、例えば、特許第3511622号公報に記載の方法を用いることができる。
【0018】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
含フッ素モノアルコールは、分子中にフッ素原子及びヒドロキシル基を有する化合物である。含フッ素モノアルコールとして、具体的には、2,2−ジフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブタノール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘキサノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロオクタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロデカノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−ドコサデカフルオロドデカノール、3,3−ジフルオロプロパノール、3,3,4,4−テトラフルオロブタノール、3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロヘキサノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−イコサフルオロドデカノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14−テトラコサフルオロテトラデカノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール、1H,1H−パーフルオロ−1−ブタノール、1H,1H−パーフルオロ−1−ヘキサノール、1H,1H−パーフルオロ−1−オクタノール、1H,1H−パーフルオロ−1−デカノール、1H,1H−パーフルオロ−1−ドデカノール、3,3,3−トリフルオロプロパノール、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブタノール、2−(パーフルオロ−n−ブチル)エタノール、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エタノール、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エタノール、2−(パーフルオロ−n−デシル)エタノール、2−(パーフルオロ−n−ドデシル)エタノール、1H,1H−パーフルオロ−1−イソプロパノール、1H,1H−パーフルオロ−1−イソブタノール、1H,1H−パーフルオロ−1−イソヘキサノール、1H,1H−パーフルオロ−1−イソオクタノール、1H,1H−パーフルオロ−1−イソデカノール、1H,1H−パーフルオロ−1−イソドデカノール、2−(パーフルオロイソプロピル)エタノール、2−(パーフルオロ−2−メチルプロピル)エタノール、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エタノール、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エタノール、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エタノール、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エタノール、2−(パーフルオロ−11−メチルドデシル)エタノールを挙げることができる。本発明では、脂肪族ジイソシアネートとの反応性及び相溶性の観点から、2,2,2−トリフルオロエタノールを用いることが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
含フッ素モノアルコールの仕込み量は、脂肪族ジイソシアネートの仕込み量100質量部に対して、4〜24質量部であることが好ましく、5〜22質量部であることがより好ましく、8〜20質量部であることがさらに好ましい。含フッ素モノアルコールの仕込み量が4質量部未満では、耐汚染性が低下する傾向があり、24質量部を超えると、ポリイソシアネートの粘度が高くなり取り扱い難くなる傾向がある。
【0021】
アロファネート化触媒としては、例えば、カルボン酸のジルコニウム塩を用いることができる。上記カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸等の飽和単環カルボン酸、ビシクロ(4.4.0)デカン−2−カルボン酸等の飽和複環カルボン酸、ナフテン酸等の上述したカルボン酸の混合物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸等の不飽和脂肪族カルボン酸、ジフェニル酢酸等の芳香脂肪族カルボン酸、安息香酸、トルイル酸等の芳香族カルボン酸等のモノカルボン酸類、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸類が挙げられる。これらのカルボン酸ジルコニウム塩は、1種を単独で又は2種以上を併用することでき、炭素数10以下のモノカルボン酸ジルコニウム塩を用いることがより好ましい。
【0022】
アロファネート化触媒の使用量は、その種類により異なるが、含フッ素モノアルコール及び脂肪族ジイソシアネートの総量100質量部に対して、0.005〜10質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部であることがより好ましい。触媒量が0.005質量部未満では、反応に長時間を要する傾向がある。一方、触媒使用量が10質量部を超えると、反応の制御がし難くなる傾向がある。
【0023】
本発明のポリイソシアネートは、例えば、以下のようにして合成することができる。まず、含フッ素モノアルコール及び脂肪族ジイソシアネートを混合し、20〜100℃でウレタン化反応させた後、アロファネート化触媒の存在下、70〜150℃でアロファネート化反応を行う。アロファネート化反応時間は、触媒の種類や添加量、反応温度により異なるが、通常10時間以内であり、好ましくは1〜5時間である。次に、所定のイソシアネート(NCO)含量(質量%)に達したことを確認し、反応停止剤を添加して、アロファネート化反応を停止し、遊離の脂肪族ジイソシアネートを除去する。
【0024】
反応停止剤としては、例えば、リン酸、塩酸等の無機酸、スルホン酸基、スルファミン酸基等を有する有機酸及びこれらのエステル類、アシルハライドを用いることができる。反応停止剤の添加量は、その種類や触媒の種類により異なるが、アロファノート化触媒に対し、0.5〜2当量であることが好ましく、0.8〜1.5当量であることがより好ましい。反応停止剤が0.5当量未満では、得られるポリイソシアネートの貯蔵安定性が低下しやすく、2当量を超えると、得られるポリイソシアネートが着色する場合がある。
【0025】
なお、上記反応には、必要に応じて有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドが挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
アロファネート化反応後のポリイソシアネート組成物中には、遊離の脂肪族ジイソシアネートが存在している。この遊離の脂肪族ジイソシアネートは、臭気や経時変化した場合の濁りの原因となるため、1質量%以下となるまで未反応の脂肪族ジイソシアネートを除去することが好ましい。なお、遊離の脂肪族ジイソシアネート含有量は、ガスクロマトグラフィーを測定することで確認できる。
【0027】
遊離の脂肪族ジイソシアネートを除去する方法としては、蒸留、再沈、抽出等の公知の方法が挙げられ、蒸留法、特に薄膜蒸留法は、溶剤を用いる必要がないため好ましい。また、薄膜蒸留の条件としては、圧力0.1kPa以下、温度100〜170℃であることが好ましく、0.05kPa以下、120〜160℃であることがより好ましい。
【0028】
このようにして、得られるポリイソシアネートは、モノアロファネート体100質量部に対して、ジアロファネート体21〜80質量部及びトリアロファネート体5〜60質量部含有する。ジアロファネート体の含有量は、モノアロファネート体100質量部に対して、25〜75質量部であることが好ましく、35〜75質量部であることがより好ましい。ジアロファネート体の含有量が21質量部未満では、耐汚染性が低下する傾向があり、80質量部を超えると、ポリイソシアネートの粘度が高くなり取り扱い難くなる傾向がある。
【0029】
また、トリアロファネート体の含有量は、モノアロファネート体100質量部に対して、7〜50質量部であることが好ましく、10〜50質量部であることがより好ましい。トリアロファネート体の含有量が5質量部未満では、耐汚染性が低下する傾向があり、60質量部を超えると、ポリイソシアネートの粘度が高くなり取り扱い難くなる傾向がある。
【0030】
アロファネート変性体中のモノアロファネート体、ジアロファネート体及びトリアロファネート体の含有割合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定におけるスペクトルのピーク面積から算出することができる。上記含有割合は、含フッ素モノアルコールと脂肪族ジイソシアネートとの配合比及び合成条件(温度、時間等)を適宜調整することにより、目的の範囲に設定することができる。
【0031】
なお、ポリイソシアネートは、アロファネート基を有するアロファネート変性体を主として含むが、反応条件を調製することにより、イソシヌレート基を有するイソシヌレート変性体を含むことができる。本発明のポリイソシアネートにおけるアロファネート基とイソシアヌレート基とのモル比は、99:1〜70:30の範囲で調製可能である。イソシアヌレート変性体の含有量は、ポリイソシアネート全量基準で、6〜25モル%であることが好ましく、7〜22モル%であることがより好ましい。イソシアヌレート変性体が6モル%未満では、耐候性が低下する傾向にあり、25モル%を超えるとポリイソシアネートの粘度が増加し取り扱い難くなる傾向がある。なお、上記モル比は、ポリイソシアネートのH−NMRを測定することで算出することができる。
【0032】
ポリイソシアネートの粘度としては、25℃で160〜2000mPa・sであることが好ましく、190〜2000mPa・s以下であることがより好ましく、230〜1700mPa・s以下であることがさらに好ましい。ポリイソシアネートの粘度が、2000mPa・sを超えると、二液型コーティング剤を調整したときの粘度が高くなり、取り扱い難くなる傾向がある。一方、粘度が160mPa・s未満では、モノアロファネート成分が多くなる傾向があるため、耐汚染性が低下する傾向にある。また、イソシアヌレート成分が少なくなる傾向があるため、塗膜物性の低下が起こる傾向がある。
【0033】
(二液型コーティング剤)
本発明の二液型コーティング剤は、上記ポリイソシアネートを含む硬化剤と、活性水素含有樹脂を含む主剤とをから構成される。
【0034】
活性水素含有樹脂としては、活性水素を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂及びポリエステル変性アクリル樹脂が挙げられる。この中でも、耐汚染性をより向上できる観点から、活性水素含有樹脂としては、アクリル樹脂及びフッ素樹脂が好ましい。なお、活性水素を含む基としては、例えば、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基が挙げられ、ヒドロキシル基が好ましい。活性水素含有樹脂としては、ポリオールであることが好ましい。
【0035】
本発明の二液型コーティング剤において、ポリイソシアネートの含有量は、活性水素含有樹脂100質量部に対して、1〜150質量部であることが好ましく、1〜130質量部であることがより好ましく、1〜100質量部であることがさらに好ましい。
【0036】
二液型コーティング剤は、必要に応じて、有機溶媒を含むことができる。有機溶媒としては、例えば、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ミネラルスピリット、テレビン油、High Aromatic White Spirit(以下、「HAWS」と表記する)(シェルケミカルズジャパン製、商品名)、Low Aromatic White Spirit(以下、「LAWS」と表記する)(シェルケミカルズジャパン製、商品名)、エッソナフサNo.6(エクソンモービル社製、商品名)、ペガゾール3040(エクソンモービル社製、商品名)、Aソルベント(新日本石油社製、商品名)、クレンゾル(新日本石油社製、商品名)、ミネラルスピリットA(新日本石油社製、商品名)、ハイアロム2S(新日本石油社製、商品名)、ソルベッソ100(エクソンモービル社製、商品名)、ソルベッソ150(エクソンモービル社製、商品名)、スワゾール100(丸善石油化学社製、商品名)、スワゾール200(丸善石油化学社製、商品名)、スワゾール1000(丸善石油化学社製、商品名)、スワゾール1500(丸善石油化学社製、商品名)、スワゾール1800(丸善石油化学社製、商品名)、出光イプゾール100(出光興産社製、商品名)、出光イプゾール150(出光興産社製、商品名)、ペガゾールARO−80(エクソンモービル社製、商品名)、ペガゾールR−100(エクソンモービル社製、商品名)、昭石特ハイゾール(シェルケミカルズジャパン製、商品名)、日石ハイゾール(新日本石油社製、商品名)が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
上記二液型コーティング剤は、一般の塗料に使用可能な各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、触媒、硬化促進剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、界面活性剤が挙げられる。
【0038】
また、本発明の二液型コーティング剤の塗布方法としては、例えば、ハケ塗り、ローラー塗り、吹きつけ塗装等の方法を用いることができる。また、乾式建材に塗装を行う場合は、フローコーター又はロールコーターにより工場等でプレコートすることも可能である。
【0039】
塗布される基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、磁器タイル、金属、ガラス、木材、プラスチックが挙げられる。
【0040】
上記二液型コーティング剤は、基材に直接塗布してもよく、目止め、電着や下塗り(プライマー塗布)、中塗り(着色等)、基材が金属の場合はリン酸鉄処理又はリン酸亜鉛処理等の表面処理が施された基材上に塗布してもよい。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
[ポリイソシアネートの合成]
(合成例1)
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管を備えた1Lの四つ口フラスコにヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、商品名「HDI」、イソシアネート含量:49.9%)950g及び2,2,2−トリフルオロエタノール50gを入れ、攪拌しながら60℃に加熱したあと、この溶液中にアロファネート化触媒としてオクチル酸ジルコニール(第一稀元素化学工業社製)0.2gを加え、110℃で反応後、所定のイソシアネート(NCO)含量(%)に達したことを確認して、反応停止剤であるリン酸エステル「JP−508」(城北化学社製、商品名)0.3gを加え、50℃で1時間撹拌し反応を停止させた。反応終了後、得られた反応液を140℃、0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、NCO含量18.4%、25℃での粘度190mPa・s、未反応の遊離ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「F−HDI」と表記する)含量0.1%であるポリイソシアネートを得た。これを「S−1」とした。
【0044】
(合成例2〜12)
HDI及び2,2,2−トリフルオロエタノールの配合比を表2に示すとおりに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、「S−2」〜「S−12」のポリイソシアネートをそれぞれ合成した。
【0045】
(合成例13、14)
2,2,2−トリフルオロエタノールに代えてエタノールを表2に示す配合比で使用した以外は、合成例1と同様の操作を行い、「S−13」及び「S−14」のポリイソシアネートをそれぞれ合成した。
【0046】
<粘度測定>
合成例1〜14で得られたポリイソシアネートをそれぞれ200mLの瓶に入れ、液温25℃に調整した後、B型粘度計にて粘度を測定した。
【0047】
<GPC測定>
合成例1〜14で得られたポリイソシアネートのGPCを東ソー社製、商品名「HLC−8220」を用い、下記条件で測定した。次いで、GPC測定結果から、モノアロファネート体、ジアロファネート体、トリアロファネート体の含有割合を算出した。
(測定条件)
検出器:屈折率(RI)検出器
カラム:TSKgel G3000HXL、G2500HXL、G1000XL
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:40℃
流速:1.0mL/分
検量線:表1に示す東ソー社製標準ポリスチレンを使用
溶液濃度:サンプル0.05g/THF10g
【0048】
【表1】

【0049】
<NMR測定>
合成例1〜14で得られたポリイソシアネートのH−NMRを日本電子社製、商品名「ECX400M」を用い、下記条件で測定した。ポリイソシアネートにおけるアロファネート変性体とイソシヌレート変性体とのモル比は、8.55ppm付近のアロファネート基の窒素原子に隣接した水素のシグナルと、3.85ppm付近のイソシアヌレート基の窒素原子に隣接したメチレン基に結合した水素のシグナルとの面積比から算出した。結果を表2に示す。
(測定条件)
測定溶媒:重水素化クロロホルム、
試料濃度:0.2g/1mL
磁場:400MHz(9.389T)
測定温度:25℃
積算回数:16回
緩和時間:5秒
化学シフト基準:重水素クロロホルムの水素シグナルを7.24ppmとする。
【0050】
【表2】

【0051】
[二液型コーティング剤の調整]
(実施例1〜9)
表3に示す組成(質量部)で、主剤であるアクリルポリオール「アクリディックHU−596」(大日本インキ化学工業社製、商品名、水酸基価:30mgKOH/g、不揮発分:50質量%)、白色顔料である酸化チタン「CR−90」(石原産業社製、商品名)及び有機溶剤「ソルベッソ100」(エクソン化学社製、商品名)を混合した溶液に、硬化剤として合成例1〜9で得られたポリイソシアネートを表3に示す割合(単位:質量部)で混合し、二液型コーティング剤を調製した。
【0052】
(比較例1〜5)
表4に示す組成(質量部)で、「アクリディックHU−596」、「CR−90」及び「ソルベッソ100」を混合した溶液に、硬化剤として合成例10〜14で得られたポリイソシアネートを表4に示す割合(単位:質量部)で混合し、二液型コーティング剤を調製した。なお、合成例12で得られたポリイソシアネートを使用した比較例3では、調整した二液型コーティング剤の粘度が高すぎるため評価を行うことができなかった。
【0053】
<塗膜の形成>
得られた二液型コーティング剤をメチルエチルケトンで脱脂した厚さ0.8mmの鋼板(JIS G3141、日本テストパネル工業社製、商品名「SPCC−SB」、PF−1077処理)にアプリケーターを用い100μmの厚みで塗布した。塗布後、20℃、65%RHの環境で7日間養生し、乾燥膜厚40〜50μmの塗膜を形成した。
【0054】
<各種評価>
上述のようにして作製した塗膜を以下の方法で評価した。実施例1〜9の評価結果を表3に、比較例10〜14の評価結果を表4にそれぞれ示す。
【0055】
(耐屈曲性)
円筒形マンドレルにより折り曲げられた場合の塗膜の割れ及び/又は鋼板からの剥がれの有無を、直径2mmの円筒形マンドレルを使用し、JIS K−5600−5−1の耐屈曲性試験に準拠して評価した。塗膜の割れ、剥がれが生じないものを合格とした。
【0056】
(耐カッピング性)
押し込みによって、部分変形を受けた場合の塗膜の割れ及び/又は鋼板からの剥がれの有無を、押し込み器を使用し、JIS K−5600−5−2の耐カッピング試験に準拠して評価した。押し込み器によって、塗膜の割れ、剥がれが生じる押し込み深さ(mm)を耐カッピング性とした。耐カッピング性は、塗膜の基材追従性及び柔軟性を示す値であり、上記押し込み深さの数値が大きいほど追従性及び柔軟性が高いといえる。
【0057】
(耐おもり落下性)
おもり落下によって、変形を受けた場合の塗膜の割れ及び/又は鋼板からの剥がれの有無を、直径10.3mm、質量1.0kgのおもりを使用し、JIS K−5600−5−3の耐おもり落下試験に準拠して評価した。塗膜の割れ、剥がれが生じる最低の落下高さを耐おもり落下性とした。
【0058】
(密着性)
塗膜の密着性は、直角の格子パターンが塗膜に切り込まれ、素地まで貫通するときの素地からの剥離に対して塗膜の耐性を評価するJIS K−5600−5−6の付着性試験(クロスカット法)に準拠して評価した。その結果を表2、3に示す。表中の「0」は、カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれが無いことを意味する。
【0059】
(塗膜硬度の測定)
塗膜表面の硬度は、JIS K−5600−5−4の引っかき硬度試験(鉛筆法)に準拠して測定し、塗膜表面にキズ跡が生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を塗膜硬度とした。
【0060】
(耐汚染性)
塗膜の耐汚染性は、水性黒インクを塗膜表面に滴下し、温度20℃、湿度65%RH下で1日静置し、水洗した後の塗膜表面を目視にて観察することで評価した。表中の耐汚染性に関する表記は以下に示すとおりである。
◎:汚れがほとんどない
○:わずかに汚れが残る
△:汚れが少し目立つ
×:汚れがかなり目立つ
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
表3及び4の結果から、実施例1〜9で作製した塗膜は、耐屈曲性、耐カッピング性、耐おもり落下性及び密着性のいずれも良好であり、十分に高い機械強度を有しており、かつ、比較例1〜5で作製した塗膜に比べ、耐汚染性に十分に優れていることがわかる。このことから、本発明のポリイソシアネートを含む二液型コーティング剤を用い形成した塗膜は、耐汚染性が十分に高いことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素モノアルコールと脂肪族ジイソシアネートとの反応により得ることができ、アロファネート変性体及びイソシアヌレート変性体を含むポリイソシアネートであって、
前記アロファネート変性体が、モノアロファネート体、ジアロファネート体及びトリアロファネート体を含有しており、
前記モノアロファネート体100質量部に対する前記ジアロファネート体の含有量が21〜80質量部及び前記トリアロファネート体の含有量が5〜60質量部である、ポリイソシアネート。
【請求項2】
全量基準で、前記イソシアヌレート変性体を6〜25モル%含む、請求項1記載のポリイソシアネート。
【請求項3】
25℃での粘度が160〜2000mPa・sである、請求項1又は2記載のポリイソシアネート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリイソシアネートを含む、二液型コーティング剤。

【公開番号】特開2009−227927(P2009−227927A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78216(P2008−78216)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】