説明

ポリイソシアネート組成物、及び二液型ポリウレタン組成物

【課題】塗膜に良好な硬化性と伸展性という両立させる事が困難な特性を付与できるポリイソシアネート組成物、及び該ポリイソシアネート組成物を含有する硬化剤と、ポリオールを含有する主剤からなり、良好な乾燥性と耐擦り傷性を有する塗膜を形成できる二液型ポリウレタン組成物を提供する。
【解決手段】(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート、及び(B)2〜3価のアルコールとε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールから得られ、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有するポリイソシアネート組成物。
更に、前述のポリイソシアネート組成物からなる硬化剤、水酸基価が5〜200mgKOH/gであるポリオールを含有する主剤からなる二液型ポリウレタン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族、あるいは脂環式ジイソシアネートとポリエステル系ポリオールから得られるポリイソシアネート組成物、およびそのポリイソシアネート組成物を含有する硬化剤と、ポリオールを含有する主剤からなり、優れた伸展性、及び乾燥性を有する塗膜が得られる二液型ポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネート組成物を用いた塗料組成物は、外観、耐候性、耐久性が優れるために、建築、自動車、情報家電用等の塗料として広く用いられている。中でも、自動車や情報家電のトップコート用途のように、高品質な外観と優れた耐候性、耐久性が要求される用途では、緻密な架橋塗膜が形成でき、かつ仕上がり外観が良好である二液型ポリウレタン塗料が高く評価されている。
自動車用途や情報家電用途等には、高品質な外観と優れた耐候性、耐久性に加えてさらに、良好な伸展性と耐擦り傷性を持ちつつ、さらに高い硬度を持つ塗料組成物が望まれている。また、作業の効率化のため、乾燥性が速い塗膜も望まれている。従来は、このような塗料組成物を作製する場合、主剤には、比較的分子量の高いアクリルポリオールやポリエステルポリオールなどのポリオールを、硬化剤には、特許文献1に記載されている、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDI)などのジイソシアネートと多価アルコールを原料に用いてイソシアヌレート化する事により、官能基数を高くしたポリイソシアネート組成物や、特許文献2に記載されている、HDIとイソホロンジイソシアネート(以下、IPDI)と多価アルコールを原料に用いてイソシアヌレート化したポリイソシアネート組成物を用いる事により、塗膜に高い硬度を持たせる方法を用いていた。しかし、イソシアヌレート化反応は重合反応であるので、官能基を上げるために重合度を高めると、高分子量体が多数生成され、非常に高粘度化し、現場での作業性に悪影響を及ぼす。また、イソシアヌレート体は、塗膜を堅くするので柔軟性が落ち、温度変化による塗膜の伸縮に追随できず、塗膜が割れる場合があった。
【0003】
高官能なポリイソシアネート組成物を作製するもう1つの方法としては、HDIなどのジイソシアネートとアルコールを原料に用いて、アロファネート化する方法がある。アロファネート化反応は、ウレタン基にイソシアネート基を付加反応させる方法であり、アロファネート化反応の原料であるウレタン基が反応により次第に減少していくため、反応が自然に収束し、イソシアヌレート化反応のような高分子量化が起こりにくいので、比較的低粘度なポリイソシアネート組成物が得られる。アロファネート化反応を用いたイソシアネート組成物の製造方法について述べた文献として、特許文献3、4、5がある。これらの文献には、使用可能な原料アルコールの例として、脂肪族、脂環式のアルコールを挙げているが、アルコール種が塗膜の乾燥性や伸展性に及ぼす影響については何も記載されていない。
乾燥性を挙げる方法を述べた文献として、特許文献6がある。この文献では、ポリイソシアネート中に導入するポリオールの官能基数が4〜10の物を用い、硬化性を上げているが、伸展性についての記述は無い。
伸展性を付与する方法を述べた文献として、特許文献7がある。この文献では、ポリイソシアネート中に弾性成分を導入する方法を用いているが、塗膜の乾燥性についての記述は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−312969号公報
【特許文献2】国際公開第2005/082966号パンフレット
【特許文献3】特開平8−188566号公報
【特許文献4】特開平7−304724号公報
【特許文献5】国際公開第2002/32979号パンフレット
【特許文献6】特許第3497610号公報
【特許文献7】特公昭64−10023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の現状に鑑み、特定の構造を有し、優れた硬化性と伸展性という両立させる事が困難な特性を塗膜に付与できるポリイソシアネート組成物、およびそのポリイソシアネート組成物を含有する硬化剤とポリオールを含有する主剤からなり、耐候性、耐久性に優れ、かつ優れた耐擦り傷性と乾燥性を有する二液型ポリウレタン組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究した結果、原料に2〜3価のアルコールとε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールを用いた、アロファネート基を有するポリイソシアネート組成物、およびそのポリイソシアネート組成物を含有する硬化剤とポリオールを含有する主剤を用いる事で、上記目的を達成出来る事を見出し、これに基づき本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、下記の通りである。
1)(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート、及び(B)2〜3価のアルコールとε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールから得られ、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有するポリイソシアネート組成物。
【0007】
2)(イ)水酸基価が5〜200mgKOH/gであるポリオールを含有する主剤と、
(ロ)(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート、及び(B)2〜3価のアルコールとε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールから得られ、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有するポリイソシアネート組成物を含有する硬化剤からなる二液型ポリウレタン組成物。
3)上記2)に記載の二液型ポリウレタン組成物からなる、金属あるいは、プラスチック用の塗料組成物。
4)上記2)に記載の二液型ポリウレタン組成物からなる、自動車車体あるいは自動車用金属部品あるいは自動車用プラスチック部品あるいは情報家電製品用金属部品あるいは情報家電製品用プラスチック部品のトップクリアー用途である塗料組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリイソシアネート組成物は、優れた硬化性と伸展性という両立させる事が困難な特性を塗膜に付与でき、また該ポリイソシアネート組成物を硬化剤として用いた二液型ポリウレタン組成物から得られる塗膜は、耐候性、耐久性に優れ、良好な耐擦り傷性と乾燥性を持つという特長を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のポリイソシアネート組成物は、(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート、及び(B)2〜3価のアルコールとε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールから得られ、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有する。
【0010】
まず、(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートについて記載する。
脂肪族ジイソシアネートとは分子中に飽和脂肪族基を有する化合物である。一方、脂環式ジイソシアネートとは、分子中に環状脂肪族基を有する化合物である。脂肪族ジイソシアネートを用いると、得られるポリイソシアネート組成物が低粘度となるのでより好ましい。脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(ヘキサメチレンジイソシアネート 以下、HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)等が挙げられる。脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート 以下、IPDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン等が挙げられる。この中でもHDI、IPDI、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートは、工業的に入手し易いため好ましい。中でもHDIは耐候性と塗膜の柔軟性が非常に優れており最も好ましい。以下、脂肪族ジイソシアネートと脂環式ジイソシアネートを総称してジイソシアネートという。
【0011】
ポリイソシアネート組成物には、(B)2〜3価のアルコールとε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールを原料に用いる。ポリエステル系ポリオールの数平均分子量の上限は、好ましくは1800、より好ましくは1400、更に一層好ましくは1000である。数平均分子量が250〜2000であれば、塗膜の伸展性は十分でなおかつ塗液の粘度も高くなり過ぎない。ポリエステル系ポリオールは1種類でも2種類以上混合して用いても良い。また本発明で用いるポリエステル系ポリオールは、2〜3価のアルコールとε−カプロラクトンから誘導される。2〜3価のアルコールとしては、例えば、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸エステル、2−メチル−1,3プロパンジオール、2,3,5−トリメチルペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−プチレンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,1,7−トリメチロールヘプタン、1,2,7−トリメチロールヘプタン等が挙げられる。これらは1種類でも2種類以上混合して用いても良い。
【0012】
ポリイソシアネート組成物の粘度は、有機溶剤量や官能基数の面から、500〜15000mPa.sが好ましい。500mPa.s以上であれば、官能基数を十分多くする事が出来、15000mPa.s以下であれば有機溶剤量を少なく出来る。より好ましくは、600〜12000mPa.sであり、さらに好ましくは、700〜10000mPa.sである。粘度は、E型粘度計(株式会社トキメック社)を用いて25℃で測定した。
ポリイソシアネート組成物の数平均官能基数(以下、fn)は、硬化性、粘度の面から3.5〜7.0が好ましい。fnが3.5以上であれば、充分な硬化性が得られ、7.0以下であれば、粘度が高くなりすぎない。好ましくは、3.6〜6.9であり、より好ましくは、3.7〜6.8である。
ポリイソシアネート組成物のfnは、次の式から求めた。(ポリイソシアネート組成物のfn)=(数平均分子量)×NCO%/4200。
【0013】
数平均分子量は、ゲル濾過クロマトグラフィー(以下、GPC。使用機器:HLC−8120(東ソー株式会社製)、使用カラム:TSK GEL SuperH1000、TSK GEL SuperH2000、TSK GEL SuperH3000(何れも東ソー株式会社製)、試料濃度:5wt/vol%、キャリア:THF、検出方法:示差屈折計、流出量0.6ml/min.、カラム温度30℃)を用いて測定した。GPCの検量線は、分子量50000〜2050のポリスチレン(ジーエルサイエンス株式会社製PSS−06(Mw50000)、BK13007(Mp=20000、Mw/Mn=1.03)、PSS−08(Mw=9000)、PSS−09(Mw=4000)、5040−35125(Mp=2050、Mw/Mn=1.05)と、HDI系ポリイソシアネート組成物(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ株式会社製)のイソシアヌレート体の3量体〜7量体(イソシアヌレート3量体分子量=504、イソシアヌレート5量体分子量=840、イソシアヌレート7量体分子量=1176)及びHDI(分子量=168)を標準として作成した。なお、本発明の、ポリイソシアネート組成物、ポリオール組成物等の数平均分子量は、全て上記の方法で求めた。
【0014】
ポリイソシアネート組成物のNCO%は、固形分100%において、塗膜にした際の性能の面から、3.0%〜25.0%が好ましい。3.0%以上であれば塗膜にした際の性能は良好で、25.0%以下であれば架橋密度が高くなりすぎず、割れにくい塗膜を形成する。より好ましくは、3.2%〜24.0%であり、さらに好ましくは3.4%〜23.0%である。NCO%は、イソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって求めた。
ポリイソシアネート組成物は、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有する。実質的にとは、アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比が91/9〜100/0である事を指す。好ましくは93/7〜100/0であり、より好ましくは95/5〜100/0であり、更に一層好ましくは97/3〜100/0である。アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比が91/9〜100/0の範囲であれば、ポリイソシアネート組成物の粘度が高くならず、伸展性に優れた塗膜を形成出来るのは驚くべき事である。
【0015】
なお、アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比は、1H−NMRにより求めることができる。HDIおよびそれから得られるイソシアネートプレポリマーを原料として用いたポリイソシアネート組成物を1H−NMRで測定する方法の一例を以下に示す。
1H−NMRの測定方法例:ポリイソシアネート組成物を重水素クロロホルムに10質量%の濃度で溶解する(ポリイソシアネート組成物に対して0.03質量%テトラメチルシランを添加)。化学シフト基準は、テトラメチルシランの水素のシグナルを0ppmとした。1H−NMRにて測定し、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素に結合した水素原子(アロファネート基1molに対して、1molの水素原子)のシグナルと、3.85ppm付近のイソシアヌレート基に隣接したメチレン基の水素原子(イソシアヌレート基1モルに対して、6molの水素原子)のシグナルの面積比を測定する。
アロファネート基/イソシアヌレート基=(8.5ppm付近のシグナル面積)/(3.85ppm付近のシグナル面積/6)
【0016】
また、ウレトジオン体は、熱などにより解離してHDIを生成し易いため、含有量を削減することが好ましい。ウレトジオン体の含有量は、ポリイソシアネート組成物に対して好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に一層好ましくは5質量%以下である。ウレトジオン体の含有量の測定は、ゲル濾過クロマトグラフィー(以下、GPC)の分子量336程度のピークの面積の割合を示差屈折計で測定することで求めることができる。336程度のピーク付近に測定の障害となるようなピークがある場合は、FT−IRを用いて、1770cm−1程度のウレトジオン基のピークの高さと、1720cm−1程度のアロファネート基のピークの高さの比を、内部標準を用いて定量する方法によっても求めることができる。
【0017】
ビウレット体、その他のジイソシアネート重合体は、塗膜の耐候性等に悪影響を及ぼす可能性があるため、含有量が多くなるのは好ましくない。本発明のポリイソシアネート組成物にビウレット体、その他のジイソシアネート重合体が含まれる量の範囲としては、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に一層好ましくは3質量%以下が適当である。
ウレタン体は、基材との密着性を向上させる場合があるが、多すぎると数平均官能基数が少なくなり架橋性が低下する場合がある。本発明で用いるポリイソシアネート組成物に、ウレタン体が含まれる量の範囲としては、アロファネート基とイソシアヌレート基のモル数の合計に対するウレタン基のモル%で表され、好ましくは10モル%未満、より好ましくは8モル%以下、更に一層好ましくは6モル%以下が適当である。ウレタン基のモル%は、1H−NMRを用いて求めることができる。前記の方法で、アロファネート基とイソシアヌレート基の合計のモル数を測定し、更に、4〜5ppm付近のウレタン基の窒素に結合した水素原子(ウレタン基1molに対して、1molの水素原子)のシグナルの面積から、ウレタン基のモル数を測定することによって、ウレタン基のモル%を測定することができる。
【0018】
以下、ポリイソシアネート組成物の製造方法について説明する。ポリイソシアネート組成物は、ジイソシアネートとポリエステル系ポリオールをウレタン化反応させる事により出来る化合物をアロファネート化反応することによって得ることができる。
ジイソシアネートとポリエステル系ポリオールのイソシアネート基と水酸基のモル比は、6/1〜100/1、好ましくは8/1〜80/1、より好ましくは10/1〜60/1が適当である。6/1以上にイソシアネート基が過剰であれば、低粘度のポリイソシアネート組成物を製造することができる。100/1以上に水酸基が存在すれば、生産効率を保つことができる。
【0019】
ウレタン化反応とアロファネート化反応の順番としては、製造する際の容易性を考慮すると、ジイソシアネートとポリエステル系ポリオールのウレタン化反応と一緒に、または必用に応じてウレタン化反応を行った後に、アロファネート化反応する方法がより好ましい。
アロファネート化反応は、公知のアロファネート化触媒を用いて行う事が出来る。好ましい触媒の例は、鉛を含む化合物、亜鉛を含む化合物、スズを含む化合物、ジルコニウムを含む化合物、ビスマスを含む化合物、リチウムを含む化合物である。これらの化合物の一種、または二種以上を用いる事ができる。
【0020】
これらの触媒の中で、更に好ましいのは亜鉛を含む化合物、鉛を含む化合物、スズを含む化合物、ジルコニウムを含む化合物、より好ましいのは、ジルコニウムを含む化合物である。ジルコニウムを含む化合物の例としては、ナフテン酸ジルコニル、2−エチルヘキサン酸ジルコニルがある。これらは、比較的安価で、工業的に入手しやすく、かつアロファネート化反応の選択率が高く、さらに安全性が高いために特に好ましい。
本発明において、アロファネート化触媒の添加方法は限定されない。例えば、ウレタン基を含有する化合物の製造の前、即ちジイソシアネートとアルコールの反応に先だって添加しても良いし、ジイソシアネートとアルコールの反応中に添加しても良く、ウレタン基含有化合物製造の後に添加しても良い。
また、添加の方法として、所要量のアロファネート化触媒を一括して添加しても良いし、何回かに分割して添加しても良い。または、一定の添加速度で連続的に添加する方法も採用できる。
【0021】
アロファネート化反応は、一般に20〜200℃の温度で行われる。好ましくは、30〜180℃であり、より好ましくは60〜160℃である。20℃以上であれば、副反応を起こさずに、適当な反応速度でアロファネート化反応を進行させることができる。200℃以下であれば、副反応や着色を起こさないことが可能となる。
ポリイソシアネート組成物を製造する際のアロファネート化反応においては、ウレタン基からアロファネート基への変換率は、出来るだけ高くすることが好ましい。好ましくは変換率91%以上で、より好ましくは92%以上である。ウレタン基からアロファネート基へ変換する事により、比較的粘度を低く維持したままイソシアネート基のfnを高くする事が可能となる。
ウレタン化反応やアロファネート化反応は、無溶媒中で進行するが、必要に応じて酢酸ブチル、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤等のイソシアネート基との反応性を有していない有機溶剤を溶媒として使用する事ができる。
反応の過程は、反応混合物のNCO%を測定するか、屈折率を測定する事により追跡できる。
【0022】
アロファネート化反応は、室温に冷却するか、反応停止剤を添加することにより停止できるが、アロファネート化触媒を用いる場合、反応停止剤を添加することによって停止させる方が、ポリイソシアネート組成物の安定性が良くなるため好ましい。反応停止剤を添加する量は、アロファネート化触媒に対して、0.2〜100倍のモル量、好ましくは0.5〜50倍のモル量、より好ましくは1.0〜20倍のモル量である。0.2倍以上であれば、触媒を完全に失活させることが可能となる。100倍以下の場合に、濁りがないポリイソシアネート組成物を得ることが可能となる。反応停止剤としては、アロファネート化触媒を失活させるものであれば何を使っても良い。反応停止剤の例としては、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸などのリン酸酸性を示す化合物、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸のモノアルキルあるいはジアルキルエステル、モノクロロ酢酸などのハロゲン化酢酸、塩化ベンゾイル、スルホン酸エステル、硫酸、硫酸エステル、イオン交換樹脂、キレート剤等が挙げられる。工業的にみた場合、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸、およびリン酸モノアルキルエステルや、リン酸ジアルキルエステルは、ステンレスを腐食し難いので、好ましい。リン酸モノエステルや、リン酸ジエステルとして、例えば、リン酸モノエチルエステルや、リン酸ジエチルエステル、リン酸モノブチルエステルやリン酸ジブチルエステル、リン酸モノ(2−エチルヘキシル)エステルや、リン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステルなどが挙げられる。
【0023】
更に、水を実質的に含有しないリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸は停止剤としてより好ましい。水を含有しない状態で用いた場合は、停止剤と触媒の反応生成物が、析出しやすくなるため、ポリイソシアネート組成物中に停止剤と触媒の反応生成物が残留しにくくなるという効果がある。更に、水を含有しない状態で用いると、水とイソシアネートの反応生成物がポリイソシアネート組成物中に混入しないために、ポリイソシアネート組成物の粘度上昇がなく、また有機溶剤に対する希釈性を低下することもないという効果もある。なお、本発明でいう実質的に水を含有しないとは、上記の効果が発現される程度であれば水を含んでも良いと言うことであり、その目安を言えば、停止剤に対して5.0質量%未満、好ましくは2.0質量%未満、更に好ましくは0.50質量%未満である。
【0024】
また、アロファネート化触媒を用いた場合の別の好ましい停止方法としては、触媒を吸着剤により吸着させて、反応を停止する方法がある。また、吸着剤と上記の反応停止剤を組み合わせて停止する事も好ましい方法である。吸着剤の例として、シリカゲルや活性炭や活性アルミナが挙げられる。吸着剤を添加する量は、反応で使用するジイソシアネートに対して、0.05〜10質量%の添加量が好ましい。
反応終了後、ポリイソシアネート組成物は、未反応のジイソシアネートや溶媒から分離する方が好ましい。未反応のジイソシアネートや溶媒を分離する方法として、例えば、薄膜蒸留法や溶剤抽出法が挙げられる。
本発明における反応は、一つの反応器で、ウレタン化反応、アロファネート化反応を行うことができる。また、二つの反応器を連結し、ウレタン化反応の工程とアロファネート化反応の工程を分けて実施することも出来る。あるいは数基の反応器を縦に並べて配置する事により、連続的に実施する事も可能である。
【0025】
次に、本発明の主剤ついて詳細に記載する。
本発明の主剤は、水酸基価が5〜200mgKOH/gのポリオールを含有する。
ポリオールの水酸基価は、5〜200mgKOH/gである。水酸基価の下限は、好ましくは10mgKOH/g、より好ましくは15mgKOH/g、より一層好ましくは20mgKOH/gである。上限は、好ましくは160mgKOH/g、より好ましくは120mgKOH/g、より一層好ましくは80mgKOH/gである。水酸基価が5〜200mgKOH/gであれば、柔軟で、かつ強靱な塗膜を得ることができる二液型ポリウレタン組成物を得ることができる。
【0026】
主剤で用いるポリオールとしては、例えばアクリルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィン系ポリオール類、含ケイ素系ポリオール類、含フッ素ポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、エポキシ樹脂類、及びアルキドポリオール類等の中の1種類またはその混合物などが挙げられる。また、ポリオールには、アクリルポリオールやポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールなどを、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートあるいはこれらから得られるポリイソシアネート組成物で変成した、ウレタン変成アクリルポリオールやウレタン変成ポリエステルポリオールやウレタン変成ポリエーテルポリオールなどを用いることもできる。
【0027】
ポリオールは公知の技術で製造することができるが、以下、代表的なアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールの製造方法について述べる。
アクリルポリオールの製造方法としては、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーと、これに共重合可能な他のモノマーを共重合させることによって得ることができる。例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の活性水素を有するアクリル酸エステル類、またはメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を有するメタクリル酸エステル類、またはグリセリンやトリメチロールプロパンなどのトリオールのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオール類と上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類とのモノエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸などの一塩基酸との付加物、あるいは上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類の活性水素にε−カプロラクタム、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合させることにより得られる付加物の群から選ばれた単独または混合物を必須成分として、必要に応じてアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、またはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド類、またはビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー類、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリルニトリル、フマル酸ジブチル等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独、又は混合物を、常法により共重合させて得ることができる。例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物などのラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合することによって得ることができる。
【0028】
ポリエステルポリオールの製造方法としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸の単独または混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等の多価アルコールの単独または混合物とを公知の縮合反応を行うことによって得ることができる。例えば、上記の成分を一緒にし、そして約160〜220℃で加熱することによって行うことができる。更に、例えばε−カプロラクトンなどのラクトン類を多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。
【0029】
ポリエーテルポリオールの製造方法としては、多価アルコール、多価フェノール、ポリアミン、アルカノールアミンなど、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、エチレンジアミンなどのジアミンの単独または混合物に、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒、金属ポルフィリン、複合金属シアン化合物錯体、金属と3座配位以上のキレート化剤との錯体、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体などの複合金属錯体を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの単独または混合物を付加して得られる。
【0030】
以下、本発明の二液型ポリウレタン組成物について記載する。
二液型ポリウレタン組成物は、(イ)水酸基価が5〜200mgKOH/gであるポリオールを含有する主剤と、(ロ) (A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート、及び(B)2〜3価のアルコールとε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールから得られ、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有するポリイソシアネート組成物を含有する硬化剤、からなる。
【0031】
二液型ポリウレタン組成物における(イ)主剤と、(ロ)硬化剤の混合比は、イソシアネート基/水酸基のモル比で、0.1〜5.0の範囲が好ましい。モル比の下限は、より好ましくは、0.3、より一層好ましくは0.4、最も好ましくは0.5である。モル比の上限は、より好ましくは、4.0、より一層好ましくは3.0、最も好ましくは2.0である。0.1〜5.0の範囲の場合、強靭な塗膜を形成することができる。
二液型ポリウレタン組成物には、目的及び用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、着色顔料、染料、塗膜の付着性向上のためのシランカップリング剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、光安定剤、つや消し剤、塗膜表面親水化剤、触媒、乾燥性改良剤、レベリング剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を混合して使用することもできる。
【0032】
着色顔料、染料としては、耐候性の良いカーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエロー等の有機顔料、染料等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられ、アデカスタブLA62、アデカスタブLA67(商品名、アデカアーガス化学社製、商品名)、チヌビン292、チヌビン144、チヌビン123、チヌビン440(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、サノールLS765(商品名、三共ライフテック株式会社製)等が挙げられる。
つや消し剤としては、超微粉合成シリカ等が挙げられ、つや消し剤を使用した場合、優雅な半光沢、つや消し仕上げの塗膜を形成できる。
塗膜表面親水剤としては、シリケート化合物が好ましい。シリケート化合物を含有する事によって、二液型ポリウレタン組成物を用いて塗膜を作製した場合に、塗膜表面を親水性にし、耐雨筋汚染性が発現する。シリケート化合物は、水酸基と反応するため、予め混合する場合には(ロ)硬化剤に添加するのが好ましい。あるいは、(イ)主剤と(ロ)硬化剤を混合する際に、同時に混合しても良い。
【0034】
シリケート化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、テトラフェノキシシラン、およびこれらの縮合物等があげられる。このなかで、テトラメトキシシランの縮合物、テトラエトキシシランの縮合物は、塗膜を作製した場合、塗膜表面が親水性になり易く、好ましい。
硬化促進用の触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等のジアルキルスズジカルボキシレートや、ジブチルスズオキサイド等のスズオキサイド化合物、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩等の金属カルボン酸塩、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’−エンドエチレンピペラジン、及びN,N’−ジメチルピペラジンのような3級アミン類等が挙げられる。
乾燥性改良剤としては、CAB(セルロースアセテートブトレート)、NC(ニトロセルロース)等が挙げられる。
【0035】
二液型ポリウレタン組成物は、(イ)主剤と、(ロ)硬化剤を塗装現場で混合して使用する二液型の塗料であるが、必要に応じて添加剤を混合することができる。
その混合順序は特に限定されず、使用例を以下に挙げる。
・添加剤を予め混合した主剤に、塗装現場にて硬化剤を混合する使用方法、
・塗装現場にて主剤および硬化剤を混合し、次いで更に添加剤を混合する使用方法、
・添加剤を予め混合した主剤に、塗装現場にて予め添加剤を混合した硬化剤を混合する使用方法。
二液型ポリウレタン組成物を用いて塗装する方法としては、スプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコーター、フローコーター等の任意の方法を適用できる。
【0036】
本発明の二液型ポリウレタン組成物を用いた塗料組成物は、特定の構造を有した高官能なポリイソシアネート組成物と、主剤ポリオールを用いており、得られた塗膜は、良好な
従って、本発明の二液型ポリウレタン組成物を用いた塗料組成物は、自動車用途や情報家電用途、パソコンや携帯電話等の情報機器用途に用いることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明のポリイソシアネート組成物の合成方法、並びに本発明の二液型ポリウレタン組成物についての実施例を記載する。
アロファネート基のモル分率は、1H−NMR(Bruker社製FT−NMR DPX−400)を用いて、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素原子上の水素のシグナルと、3.8ppm付近のイソシアヌレート基のイソシアヌレート環の窒素原子の隣のメチレン基の水素のシグナルの面積から求めた。
NCO%は、イソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって求めた。
粘度は、E型粘度計(株式会社トキメック社製)を用いて25℃で測定した。
標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下の通り。
100r.p.m. (128mPa.s未満の場合)
50r.p.m. (128mPa.s〜256mPa.sの場合)
20r.p.m. (256mPa.s〜640mPa.sの場合)
10r.p.m. (640mPa.s〜1280mPa.sの場合)
5r.p.m. (1280mPa.s〜2560mPa.sの場合)
2.5r.p.m. (2560mPa.s〜5120mPa.sの場合)
1r.p.m. (5120mPa.s〜10240mPa.sの場合)
0.5r.p.m. (10240mPa.s〜20480mPa.sの場合)
【0038】
ゲル分率は、塗膜約0.1gをアセトン中に20℃で24時間浸漬し、塗膜取り出し後、80℃1時間乾燥した塗膜の質量から求めた。
塗膜の伸度は、温度23℃、湿度50%RHの条件で、引張り試験機(島津製作所製、AGS 500G)を用いて、引張り速度20mm/分、掴み間隔20mmで測定した。
耐擦り傷性試験は、ラビングテスター(太平理化工業社製)を用いて以下の方法で行った。予め塗面の20°光沢を測定した。クレンザー(商品名マルゼンクレンザー、株式会社マルゼンクレンザー製)と水を3:2で混合し、研磨剤とした。研磨剤をラビングテスターのスポンジに約1g付着させ、200gの荷重をかけ試験板の塗膜を往復20回こすりつけた。その後、塗面を流水で洗浄し、自然乾燥後、その塗面の20°光沢を測定した。次式によって20°光沢保持率を計算し、その値を耐擦り傷性の評価値とする。
20°光沢保持率=(試験後の20°光沢/試験前の20°光沢)×100
【0039】
[合成例1]
撹拌器、温度計、冷却管を取り付けた四ッ口フラスコの内部を窒素置換し、HDI1200gと、3価アルコールとε−カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール「プラクセル305」(ダイセル化学社の商品名 数平均分子量500)130gを仕込み、撹拌下130℃で1時間ウレタン化反応を行った。その後、アロファネート化触媒として2−エチルヘキサン酸ジルコニルの20%オクタノール溶液を0.42g加えた。反応液の屈折率の上昇が0.0052となった時点で、ピロリン酸の固形分10%2−エチル−1−ヘキサノール溶液(太平化学産業製、商品名「リン酸(105%)」を2−エチル−1−ヘキサノールで希釈したもの)を3.9g加え、反応を停止した。
反応液を濾過後、流下式薄膜蒸留装置を用いて、1回目160℃(27Pa)、2回目150℃(13Pa)で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収量300g、粘度8000mPa.s、NCO含有率15.0%、fn=6.0であった。NMRを測定した所、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は97/3であった。得られたポリイソシアネート組成物をS−1とする。
【0040】
[合成例2]
合成例1と同様の装置に、HDI1000gと、3価アルコールとε−カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール「プラクセル308」(ダイセル化学社の商品名 数平均分子量800)170gを仕込み、撹拌下90℃で1時間ウレタン化反応を行った。130℃に昇温後、アロファネート化触媒として2−エチルヘキサン酸ジルコニルの20%ミネラルスピリット溶液を0.36g加えた。反応液の屈折率の上昇が0.0043となった時点で、ピロリン酸の固形分10%2−エチル−1−ヘキサノール溶液(太平化学産業製、商品名「リン酸(105%)」を2−エチル−1−ヘキサノールで希釈したもの)の3.7gを加え、反応を停止した。
反応液の濾過後、合成例1と同様の方法で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収量290g、粘度6000mPa.s、NCO含有率13.3%、fn=5.8であった。NMRを測定したところ、アロファネート/イソシアヌレートのモル比は97/3であった。得られたポリイソシアネート組成物をS−2とする。
【0041】
[合成例3]
合成例1と同様の装置に、HDI600gと、トリメチロールプロパン(数平均分子量134)16gを仕込み、撹拌下90℃で1時間ウレタン化反応を行った。130℃に昇温後、アロファネート化触媒として2−エチルヘキサン酸ジルコニルの20%ミネラルスピリット溶液を0.21g加えた。反応液の屈折率の上昇が0.0050となった時点で、リン酸2−エチルヘキシルエステル(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−508」)を0.12g加え、反応を停止した。
反応液の濾過後、合成例1と同様の方法で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収量120g、粘度7200mPa.s、NCO含有率22.8%、fn=6.0であった。NMRを測定したところ、アロファネート/イソシアヌレートのモル比は97/3であった。得られたポリイソシアネート組成物をP−1とする。
【0042】
[合成例4]
合成例1と同様の装置に、HDI600gと、3価アルコールとε−カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール「プラクセル303」(ダイセル化学社の商品名 数平均分子量300)30gを仕込み、撹拌下90℃で1時間ウレタン化反応を行った。60℃に降温後、イソシアヌレート化触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエートを0.10g加えた。転化率が54%となった時点で、リン酸を0.21g加え、反応を停止した。
反応液の濾過後、合成例1と同様の方法で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収量320g、粘度10000mPa.s、NCO含有率19.2%、fn=5.4であった。NMRを測定したところ、アロファネート/イソシアヌレートのモル比は28/72であった。得られたポリイソシアネート組成物をP−2とする。
【0043】
[合成例5]
合成例1と同様の装置に、HDI1000gと、3価アルコールとε−カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール「プラクセル308」(ダイセル化学社の商品名 数平均分子量800)200gを仕込み、撹拌下100℃で1時間ウレタン化反応を行った。
反応液の濾過後、合成例1と同様の方法で未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、収量320g、粘度6000mPa.s、NCO含有率9.0%、fn=3.0であった。NMRを測定したところ、アロファネート体は検出されなかった。得られたポリイソシアネート組成物をP−3とする。
【0044】
[合成例6]
ポリイソシアネート組成物S−1を60gと、デュラネートTMTPA−100(旭化成ケミカルズ株式会社製、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、NCO含有率23.0%)440gをブレンドし、ポリイソシアネート組成物を得た。
得られたポリイソシアネート組成物は透明の液体であり、粘度6500mPa.s、NCO含有率16.0%、fn=3.7であった。NMRを測定したところ、アロファネート/イソシアヌレートのモル比は85/15であった。得られたポリイソシアネート組成物をP−4とする。
【0045】
[実施例1〜2、比較例1〜4]
二液型ポリウレタン組成物を以下のようにして作製した。
主剤として、アクリルポリオール(nuplex社の商品名「SETALUX1767」、樹脂分濃度65%、水酸基価150mg/樹脂g)と、硬化剤として、ポリイソシアネート組成物S−1〜S−2、P−1〜P−4を用い、イソシアネート基/水酸基のモル比が1/1となるように調整した。溶剤として、ウレタンシンナー(トルエン(和光純薬工業株式会社製):酢酸ブチル(和光純薬工業株式会社製):酢酸エチル(和光純薬工業株式会社製):キシレン(和光純薬工業株式会社製):プロピレングリコールメチルエーテルAC(ゴードー溶剤株式会社製)=30:30:20:15:5の重量比で混合)を用いて、固形分が50%になるように調整した。
【0046】
硬化性の指標として、塗膜の硬化初期のゲル分率の測定を行った。バーコーダーにて、ポリプロピレン板に、膜厚が約50ミクロンになるように塗布した後、23℃で1日乾燥した場合のゲル分率を測定した。この結果を表1に示す。なお、表1では80%以上を○、80%未満を×という記号で示す。
乾燥性の指標として、塗膜のガーゼ乾燥性の測定を行った。バーコーダーにて、ガラス板に、膜厚が約50ミクロンになるように塗布した後、23℃で16時間乾燥を行った。その塗膜上に日本局方ガーゼを5枚重ね、その上に100gの分銅を60秒間置いた。その後、分銅とガーゼを取り除き、塗膜上に残ったガーゼ跡を観察する。跡無しの場合を○、跡が僅かに残る場合を△、跡がはっきり残る場合を×とした。
【0047】
塗膜の伸度の指標として、バーコーダーにて、ポリプロピレン板に、膜厚が約50ミクロンになるように塗布した後、23℃50%RH条件下で14日間硬化させ塗膜を用いて引張り試験を行った。結果を表1に示す。なお、表1では、塗膜伸度50%以上を○、50〜30%を△、30%以下を×表す。
擦り傷性の指標として、塗膜の擦り傷性試験を行った。バーコーダーにて、白塗装したアルミ板に、膜厚が約50ミクロンになるように塗布した後、23℃14日乾燥した後、擦り傷性の試験を行った。この結果を表1に示す。なお、光沢保持率が、80%以上を○、80〜70%を△、70%未満を×とした。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のポリイソシアネート組成物は、官能基数が高く、かつ柔軟な構造を有するので、塗膜に優れた硬化性と伸展性という両立させる事が困難な特性を付与する事が出来る。従って、本発明のポリイソシアネート組成物からなる硬化剤と、ポリオールからなる主剤とを組み合わせた二液型ポリウレタン組成物からなる塗膜は、耐候性、耐久性に優れ、更に良好な乾燥性、良好な耐擦り傷性を持つという特徴を有している。
従って、本発明のポリイソシアネート組成物を硬化剤として用いた本発明の二液型ポリウレタン組成物は、塗料、インキ、接着剤、インキ、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック材料の原料として使用することができる。中でも、建築用塗料、重防食用塗料、自動車用塗料、情報家電用塗料、パソコンや携帯電話等の情報機器用塗料に用いることができる。特に、自動車用塗料や情報家電用塗料に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート、及び(B)2〜3価のアルコールとε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールから得られ、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有するポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
(イ)水酸基価が5〜200mgKOH/gであるポリオールを含有する主剤と、
(ロ)(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート、及び(B)2〜3価のアルコールとε−カプロラクトンから誘導される数平均分子量が250〜2000のポリエステル系ポリオールから得られ、実質的にイソシアヌレート基を含まず、アロファネート基を含有するポリイソシアネート組成物を含有する硬化剤、
からなる二液型ポリウレタン組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の二液型ポリウレタン組成物からなる、金属あるいは、プラスチック用の塗料組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の二液型ポリウレタン組成物からなる、自動車車体あるいは自動車用金属部品あるいは自動車用プラスチック部品あるいは情報家電製品用金属部品あるいは情報家電製品用プラスチック部品のトップクリアー用途である塗料組成物。

【公開番号】特開2011−105886(P2011−105886A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264306(P2009−264306)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】