説明

ポリイミドフィルムおよびその製造方法

【課題】耐熱性、透明性や加熱前後での高い寸法安定性が求められる製品又は一部材を形成するためのフィルム材料として有用なポリイミドフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】ポリイミドフィルムをアニール処理する透明ポリイミドフィルムの製造方法であり、アニール処理することにより、線熱膨張係数が10ppm以下かつ、全光線透過率が80%以上であり、200℃で30分加熱前後の寸法変化率が±0.020%内の透明ポリイミドと成すことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性かつ高い寸法安定性を有し、耐熱性優れるポリイミドフィルムおよびその製造方法に関し、得られるポリイミドフィルムは特に、耐熱性と共に透明性かつ加熱前後での高い寸法安定性が要求される製品又は部材を形成するための材料(例えば、表示装置ガラス代替など)として好適に利用できる。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶や有機EL、電子ペーパー等のディスプレイや、太陽電池、タッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化が要求されるようになってきた。これらのデバイスにはガラス板上に様々な電子素子、例えば、薄型トランジスタや透明電極等が形成されているが、このガラス材料をフィルム材料に変えることにより、パネル自体のフレキシブル化、薄型化や軽量化が図れる。しかしながら電子素子の形成プロセスの高い温度に耐えられるフィルム材料がこれまで存在しなかった。
【0003】
ポリイミドは耐熱性と共に高い絶縁性能を有することから、半導体や電子部品への応用がなされてきた。電子部品では、単結晶シリコンや銅などの金属と積層される場合が多く、ポリイミドの線熱膨張係数を単結晶シリコンや金属並に小さくする試みは従来から行われてきた。
【0004】
また、フィルム表面に無機層などを形成する場合、無機層作成時にかかる温度によりフィルムの寸法により、積層した薄膜に亀裂が入るあるいは積層体が変形するなどの問題が生じることがある。このため、フィルムには加熱前後において高い寸法安定性が求められる。このような高い寸法安定性を得るため、フィルムをアニール処理してフィルムの残留歪みを取り除き加熱前後で寸法安定性を確保する方法がとられている(例えば特許文献1、2参照)が、透明であって更なる高い寸法安定性を有するプラスチックフィルムの開発が望まれている。
【0005】
以上のように、液晶や有機EL、電子ペーパー等のディスプレイや、太陽電池、タッチパネル等の部材に用いることのできる、透明無色で耐熱性を有し、しかも加熱前後で高い寸法安定性を有するプラスチックフィルムはこれまで存在せず、これら電子デバイスの耐破損性の向上、薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化を阻む要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−335877
【特許文献2】特開2004−122372
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐熱性、透明性、更には加熱前後で高い寸法安定性を有するポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の構成は以下のものである。
【0009】
1). 線熱膨張係数が10ppm以下かつ、全光線透過率が80%以上であり、200℃で30分加熱前後の寸法変化率が±0.020%内となるようにアニール処理を行うことを特徴とする透明ポリイミドフィルムの製造方法。
【0010】
2). アニール処理時のフィルムへかける張力が0〜8N/mかつ、アニール処理の時間が3〜35分かつ、アニール処理の温度が180〜330℃である、1)に記載の透明ポリイミドフィルムの製造方法。ただし、
アニール処理の温度が200〜250℃の場合、アニール時間は下記式(イ)である。
アニール時間(分)≧アニール温度×(−0.22)+59 (イ)
3). ポリアミド酸に脱水剤及びイミド化剤を混合した溶液を支持体上に流延することにより作成したフィルムをアニール処理することを特徴とする、1)または2)に記載の透明ポリイミドフィルムの製造方法。
【0011】
4). 脱水剤の量が脱水剤モル数/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01となるように用いることを特徴とする3)に記載の透明ポリイミドフィルムの製造方法。
【0012】
5). イミド化剤の量がイミド化剤/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01となるように用いることを特徴とする3)または4)に記載の透明ポリイミドフィルムの製造方法。
【0013】
6). 下記式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、1)乃至5)のいずれかに記載の方法で製造された透明ポリイミドフィルム。
【0014】
【化1】

【0015】
式中Rは下記一般式(2)から選択される4価の有機基を、また、Rは下記一般式(3)から選択される2価の有機基を示し、
【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
式中Rは、水素、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、炭素数1〜16のアルキル基を示す。
【0019】
7). Rが下記一般式(4)から選択される2価の有機基であることを特徴とする6)に記載の透明ポリイミドフィルム。
【0020】
【化4】

【0021】
式中Rは、水素、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、炭素数1〜16のアルキル基を示す。
【0022】
8). Rがハロゲン、もしくは、ハロゲン化アルキルであることを特徴とする6)または7)に記載の透明ポリイミドフィルム。
【0023】
9). Rがトリフルオロメチル基であることを特徴とする6)乃至8)のいずれかに記載の透明ポリイミドフィルム。
【0024】
10). 式(1)で表される繰り返し単位として、Rの構造が下記一般式(5)から選択される4価の有機基であることを特徴とする6)乃至9)のいずれかに記載の透明ポリイミドフィルム。
【0025】
【化5】

【発明の効果】
【0026】
本発明によれば耐熱性、透明性に加えて寸法安定性に優れたポリイミドフィルムが得られるため、耐熱性、透明性、寸法安定性が有効とされる分野・製品に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下において本発明を詳しく説明する。
本発明はフィルムのTD、MD方向共に線熱膨張係数が10ppm以下かつ、全光線透過率が80%以上であり、200℃で30分加熱前後での寸法変化率がフィルムのTD、MD方向共に−0.020%〜+0.020%の範囲すなわち±0.020%内であるポリイミドフィルムおよびその製造方法に係るものである。本願発明の方法によれば、寸法変化率は±0.018%内、さらには±0.015%内、±0.013%内となすことも可能であり、好ましい態様である。寸法変化率がこの範囲内にあることにより無機膜を積層した場合、無機膜にクラックが入ったり、フィルム全体がカールする場合が少なくなるので好ましい。
【0028】
本発明で製造されるポリイミドフィルムは、一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリイミドフィルムが用いられる。一般式(1)中のRは一般式(2)から選ばれる構造を有する4価の有機基である。
【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
その具体例としては、後述する各酸二無水物成分に対応する4価の有機基、すなわち、酸二無水物成分からポリイミド鎖の形成に関与する酸無水物基を取り除いた構造が挙げられる。一般式(2)から選ばれる4価の有機基を有する酸二無水物は2種以上を併用して用いることができる。一般式(2)にあげる4価の有機基のうち、特に一般式(5)に示すベンゼンもしくはビフェニルが好ましい。
【0032】
【化8】

【0033】
ベンゼンもしくはビフェニルを有する具体的化合物としてはそれぞれ、ピロメリット酸二無水物、および、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をあげることができるが、中でも3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0034】
本願発明のポリイミドフィルムは酸成分全部が一般式(2)から選ばれる構造を有する酸二無水物を用いて製造されるのが好ましいが、上記一般式(2)から選ばれる構造のみならず、1種以上の一般式(2)から選ばれる構造を有さない酸二無水物を併用して用いることができる。
一般式(2)から選ばれる構造を有さない併用可能な他の酸二無水物は酸二無水物全体の70モル%、好ましくは50モル%、さらには25モル%を超えない範囲で用いても良い。酸二無水物を2種以上用いる場合、それらは、規則的に配列されていてもよいし、ランダムにポリイミド中に存在していてもよい。
【0035】
併用可能な他の酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス[(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、1,4−ビス[(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、4,4’−ビス[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−[4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルプロパン二無水物、2,2−ビス{4−[3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0036】
一方、式(1)中のRは2価の有機基で一般式(3)から選ばれる構造を有するものである。具体的には一般式(3)から選ばれる構造を有するジアミンを用いて式(1)の構造を有するポリイミドを得ることが出来る。これらジアミンは2種以上を併用して用いることができる一般。式(3)にあげる有機基のうち、好ましくは、一般式(4)に示すベンゼンもしくはビフェニルである。
【0037】
【化9】

【0038】
【化10】

【0039】
一般式(3)中のRは、水素、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、炭素数1〜16のアルキル基を示す一価の有機基である。得られるポリイミドの透明性、耐熱性、及び寸法安定性から、ハロゲンやハロゲン化アルキルなどの電子吸引基が好ましく、ハロゲンやハロゲン化アルキルのハロゲンとしてはフッ素が好ましく、中でもフッ素原子もしくはトリフルオロメチル基、特にはトリフルオロメチル基が好ましい。
【0040】
として最も好ましくは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基が挙げられる。
【0041】
本願発明のポリイミドフィルムにはジアミン成分として全部が一般式(3)から選ばれる構造を有するジアミンを用いるのが好ましいが、一般式(3)から選ばれる構造を有するジアミンと他のジアミンを1種以上併用して用いることができる。併用可能な他のジアミンとしては、ポリイミドの透明性を確保できる範囲内で目的の物性に応じて、ジアミン全体の70モル%、好ましくは50モル%、さらには25モル%を超えない範囲で用いてもかまわない。また、2種以上のジアミンを用いる場合それらは、規則的に配列されていてもよいし、ランダムにポリイミド中に存在していてもよい。
【0042】
一般式(3)から選ばれる構造を有するジアミンと併用可能な他のジアミンとして、例えば、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンが挙げられる。
【0043】
ジアミン成分としては、ハロゲン化アルキル鎖特にはトリフルオロメチル基を有するものが好ましい。
【0044】
具体的に特に好ましく用いられるジアミン成分としては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンが好ましい。また、テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、が挙げられ、中でも3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0045】
本発明のポリイミドを製造する方法としては、酸二無水物とジアミンから前駆体であるポリアミド酸を合成し、これに脱水剤やイミド化剤を添加してポリイミドフィルムを得る手法である。ポリアミド酸の状態で成形し、その後、脱水剤やイミド化剤を用いずに加熱によりイミド化を行う手法では、得られるフィルムの線膨張が悪く、目的には適さない。
【0046】
イミド化剤としては、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、複素環式第三級アミン等の第三級アミンが好適に用いられる。中でも、β−ピコリン、イソキノリン、3,5−ジエチルピリジンのいずれかを使用することが好ましい。これら触媒は、単独で、あるいは混合して使用するのが好ましい。
【0047】
脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、およびフタル酸無水物などの芳香族酸無水物などが挙げられる。これら脱水剤は、単独で、あるいは混合して使用することが好ましい。中でもコスト、入手のし易さ、溶解性などの点から脂肪族酸無水物が好ましい。
【0048】
脱水剤およびイミド化剤の添加量については、脱水剤モル数/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01が好ましく、イミド化剤/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01が好ましい。更に好ましくは、脱水剤モル数/ポリアミド酸中アミド基モル数=5〜0.5が好ましく、イミド化剤/ポリアミド酸中アミド基モル数=5〜0.5が好ましい。
【0049】
脱水剤とイミド化剤は直接ポリアミド酸に混ぜ込むことが好ましい。ポリアミド酸フィルムを脱水剤やイミド化剤の溶液に浸漬する方法では、フィルム全体に脱水剤やイミド化剤が浸透するのに時間がかかり、表面と深部でのイミド化率が異なり不均一なフィルムになりやすく、本願発明にかかるポリイミドフィルムが得難くなる。
【0050】
本発明にかかるポリイミドフィルムの製造法で得られるポリイミドフィルムの線熱膨張係数は10ppm以下であるが、ポリアミド酸合成時に用いる酸二無水物やジアミン成分の特定、脱水剤やイミド化剤の用い方によっては、8ppm以下、さらには5ppm以下と成すことも可能である。線膨張係数が大きい場合、積層した無機膜との線膨張係数の差が大きくなり、温度や変形などわずかな刺激で破壊される可能性がある。
【0051】
本発明にかかるポリイミドフィルムの製造法で得られるポリイミドフィルムの全光線透過率は80%以上であるが、フィルム製造時の焼成条件の最適化により82%以上、さらには84%以上のフィルムも得ることが可能である。全光線透過率が低いと、フィルムの透明性が損なわれる可能性がある。光線透過率はポリイミドフィルムの厚さが概ね5〜200μmの範囲で保持することが可能である。
【0052】
ポリイミドフィルムのアニール処理は、フィルム作成直後に行っても、作成したフィルムの温度が室温まで低下した後、再加熱することにより行ってもよい。好ましくは室温まで低下した後再加熱することにより行うことが好ましい。
得られたポリイミドフィルムのアニール処理温度は180〜320℃で行うことが好ましく、200〜300℃がさらに好ましい。
【0053】
処理温度が低い場合、フィルムの残留歪みが十分に除去できない可能性がある。また、処理温度が高すぎる場合、フィルムの黄変やフィルムの結晶化に伴う白濁による透明性の悪化やフィルムの変形による平坦性の悪化の可能性がある。
【0054】
得られたポリイミドフィルムのアニール処理時にフィルムにかける張力は0〜8N/mであることが好ましく、0〜6N/mがより好ましく、0〜5.5N/mがさらに好ましい。アニール時にフィルムにかける張力がこれよりも大きいとフィルムに歪みが発生し、寸法安定性が悪化する可能性がある。
【0055】
得られたポリイミドフィルムのアニール処理時間は3〜35分で行うことが好ましい。アニール処理時間が短いとフィルムの残留歪みが十分に除去されない可能性がある。また、アニール処理時間が長いとフィルムに熱がかかりすぎ、フィルムが変形してしまう可能性がある。
【0056】
アニール処理温度が180〜240℃の場合はアニール処理時間が15〜35分で行うことが好ましく、18〜32がさらに好ましく、18〜25分が特に好ましい。
ただし、240℃以下で行う場合は下記式(イ)を満たすことが好ましい。この式の範囲外にあると、アニール処理時間が短すぎるため、フィルムの残留歪みを取り除くことができない場合がある。なお、式(イ)中のアニール温度とは、摂氏で示したアニール温度の絶対値のことである。
【0057】
アニール時間(分)≧アニール温度×(−0.22)+59 式(イ)
アニール処理温度が240〜320℃の場合はアニール処理時間が3〜15分が好ましく3〜10分がさらに好ましく、3〜6分が特に好ましい。
これら条件を採用することにより、アニール後のフィルムの寸法変化率を低下させることが可能となるので好ましい。
【0058】
次に、本発明に係るポリイミドを合成する手法をこれより具体的に例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
酸成分として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、アミン成分として2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを用いてポリイミドを合成する例を述べる。先ず、2、2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを溶解させたジメチルアセトアミドを攪拌しつつ、等モルの3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を徐々に加えてポリアミド酸を得ることができる。混合する際の温度は発熱に注意すれば室温でも良いが、10℃以下、さらには5℃以下で行うことができる。また攪拌時間としては10時間以上、さらには20時間以上で行うことができる。得られたポリアミド酸を0℃以下の低温にした後、イミド化剤、脱水剤、ジメチルアセトアミド溶液を加えて激しく攪拌することで得ることができる。
【0060】
以上のようにして得られたポリアミド酸は、ガラス、フィルム、ベルトなどの基板上に塗布、乾燥し、塗膜を成形させ、加熱することでフィルム状のポリイミドが得ることができる。
【0061】
基板上に塗布等を行うにあたって、ポリアミド酸は真空下もしくは遠心沈殿機等を用いて脱泡しておくことが好ましい。加熱に際しては、一般式(4)で示された構造を有するジアミンを用いたポリアミド酸を用いた場合、中でもRが水素、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、炭素数1〜16のアルキル基の場合、さらにはRがハロゲン、もしくは、ハロゲン化アルキルである場合、特にはRがトリフルオロメチル基であるジアミン成分を用いた場合、例えば300℃〜400℃、さらには320〜400℃、特には350〜400℃の範囲で加熱することでフィルム状のポリイミドが得ることができる。加熱温度が400℃を超える場合、フィルム内で分子の再配列がおこり結晶化が加速され、フィルムの透明性が確保できなくなる場合があるので避けることが好ましい。
【0062】
本発明のポリイミドフィルムは、特に透明性や寸法安定性を有することを特徴とするが、耐熱性、絶縁性等その他の特性についても良好である。
【0063】
例えば、ガラス転移温度は、耐熱性の観点からは高ければ高いほど良いが、示差走査熱量測定装置において、昇温速度10℃/minの条件で測定したときのガラス転移温度が、200℃以上、更には300℃以上(すなわち、200℃まで、あるいは300℃までには明確なTgが観測されない)のポリイミドフィルムを得ることが可能である。
【0064】
本発明に係るポリイミドフィルムは、一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを、フィルム組成物の固形分全体に対し、通常、40〜99.9重量%の範囲内で含有させて成すことが可能であるが、55〜99.9重量の範囲内で含有させて成すことが好ましく、ポリイミドフィルムのポリマー成分の全体が一般式(1)で示される構造を有していることがさらに好ましい。
【0065】
また、その他の任意成分の配合割合は、ポリイミドフィルム組成物の固形分全体に対し、0.1重量%〜60重量%の範囲が好ましい。少ないと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、多いと、樹脂組成物の特性が最終生成物に反映されにくい。なお、ポリイミドフィルム組成物の固形分とは溶剤以外の全成分である。
【0066】
本発明に係るポリイミドフィルムは、その表面に金属酸化物や透明電極等の各種無機薄膜を形成して用いることも可能である。これら無機薄膜の製膜方法は特に限定されるものではなく、例えばCVD法、スパッタリング法や真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法であっても良い。
【0067】
本発明に係るポリイミドフィルムは、耐熱性、絶縁性等のポリイミド本来の特性に加えて、低線熱膨張性・透明性を有することから、これらの特性が有効とされる分野・製品、例えば、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー、半導体部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料を形成するのに適している。具体的には、本発明のポリイミドフィルムをいわゆる光学フィルムとして用い、偏向子と組み合わせて偏光板として用いることができる。
【0068】
また、液晶セルの少なくとも一方の表面に本発明のポリイミドフィルムあるいは本発明のポリイミドフィルムを用いた偏光板からなる光学部材を設け、液晶パネルとしても用いることができる。さらには、当該液晶パネルを用いた液晶表示装置としても用いることができる。
【実施例】
【0069】
[線熱膨張係数(CTE)の評価]
熱機械的分析装置(セイコーインスツルメント社製、商品名:TMA120C)により窒素気流下、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分、フィルムサイズ10mmx3mm、フィルムの長手方向の片端に引っ張り荷重6gをかけて測定を行った。なお、CTE値は100〜200℃の2ndスキャンの値とした。
【0070】
[ガラス転移温度の評価]
島津製作所製DSC−50(島津熱流束示差走査熱量計)により、昇温速度10℃/minで測定してポリマーのTg(ガラス転位温度)を求めた。
【0071】
[光線透過率の評価]
日本電色工業株式会社製ヘイズメーター1001DPを用いて実施した。測定は三回行い平均値をフィルムの測定値とした。
【0072】
[アニール処理]
フィルムのTD方向を固定し、フィルムのMD方向に均一に荷重がかかるように反対側におもりをぶら下げることにより張力をかけて熱風オーブンで所定温度、所定時間加熱を行った。張力をかけない場合は、フィルムをフッ素樹脂製シートの上に乗せ、風上側になる辺だけを全般にわたって幅5mmで固定することにより行った。
【0073】
[寸法変化率測定]
アニール処理したフィルムの温度が室温に戻ってから、試験形状として縦100mm、横100mm、膜厚約50μmのフィルムを切り出し、23℃、55%の恒温恒湿室に24時間静置させた後、ミッツ(株)製プリント基板加熱システムにより試験片の略中央部に縦80mm間隔、横80mm間隔に穴を開け、(株)ミツトヨ製測定顕微鏡MF−A1720Hにより穴間隔を測定した。穴間隔を測定したフィルムの風上側辺を全般にわたって幅5mmで固定して熱風オーブンで200℃、30分間加熱して、23℃、55%の恒温恒湿室に24時間静置させた後、再び穴間隔を測定した。加熱前後の寸法変化により、フィルムの寸法変化率を算出した。
【0074】
(前駆体溶液の合成例)
2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン 218g(680mmol)を3000mlの3つ口フラスコに投入し、1670gの脱水されたジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させ窒素気流下、氷浴で冷却しながら撹拌した。そこへ、上記3,3’,4,4’-BPDA200g(680mmol)を添加し、添加終了後、40時間撹拌し、粘稠液体(前駆体溶液)を得た。
【0075】
(フィルム作成)
前駆体溶液の合成例で得られたポリアミド酸溶液である前駆体溶液に、無水酢酸/β−ピコリン/DMAc(重量比35/7/8)からなる混合溶液をポリアミド酸溶液に対して重量比35%添加し、連続的にミキサーで撹拌しTダイから押出してステンレス製のエンドレスベルト上に流延した。この樹脂膜を110℃×360秒加熱した後、エンドレスベルトから自己支持性のゲル膜を引き剥がしてテンタークリップに固定し、雰囲気温度150〜380℃の連続焼成炉で20分間段階的に乾燥・イミド化させ、厚み50μmのポリイミドフィルムを得た。ガラス転移温度の測定を行った結果、400℃までに明確なTgは観測されなかった。また、全光線透過率は85%、100〜200℃でのCTE値はMD方向2.1ppm/K、TD方向3.8ppm/Kであった。
【0076】
(実施例1)
得られたフィルムに張力をかけずに200℃で30分間アニール処理した後、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0077】
(実施例2)
得られたフィルムに張力をかけずに200℃で20分間アニール処理した後、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0078】
(実施例3)
得られたフィルムに張力を5N/mかけて250℃で4分間アニール処理した後、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0079】
(実施例4)
得られたフィルムに張力を5N/mかけて250℃で8分間アニール処理した後、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0080】
(実施例5)
得られたフィルムに張力をかけずに300℃で4分間アニール処理した後、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0081】
(実施例6)
得られたフィルムに張力を2.5N/mかけて300℃で4分間アニール処理した後、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0082】
(実施例7)
得られたフィルムに張力を5N/mかけて300℃で4分間アニール処理した後、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0083】
(実施例8)
得られたフィルムに張力を5N/mかけて300℃で8分間アニール処理した後、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0084】
(比較例1)
得られたフィルムをアニール処理することなく、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0085】
(比較例2)
得られたフィルムに張力をかけずに200℃で10分間アニール処理した後、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0086】
(比較例3)
得られたフィルムに張力を5N/mかけて300℃で2分間アニール処理した後、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0087】
(比較例4)
得られたフィルムに張力を10N/mかけて300℃で4分間アニール処理した後、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0088】
(比較例5)
得られたフィルムに張力を15N/mかけて200℃で30分間アニール処理した後、寸法変化率を測定した。得られた結果を表1にまとめる。
【0089】
(比較例6)
得られたフィルムに張力をかけずに350℃で30分間アニール処理した。しかし、フィルムは変形・白濁しており寸法を測定することができなかった。
【0090】
比較例6以外の、実施例1〜8および比較例1〜5で得られたフィルムにおいて、ガラス転移温度、全光線透過率、CTE値は当初のフィルムと変化が無かった。
【0091】
【表1】

【0092】
表1の結果より、本発明のポリイミドフィルムは、耐熱性・透明性が良好で、且つ加熱前後で高い寸法安定性を有するフィルムである為、これらの特性が有効とされる分野・製品、例えば、無機薄膜や無機微細構造物を表面に有するフィルム部材、例えば、シリコン、もしくは金属酸化物、もしくは有機物から形成される薄膜トランジスター用フィルム、カラーフィルターフィルム、透明電極付きフィルム、ガスバリアフィルム、無機ガラスもしくは有機ガラスを積層したフィルムなどに適応できる。これらの部材は、例えば、液晶ディスプレイ用フィルム、有機EL等フィルム、電子ペーパー用フィルム、太陽電池用フィルム、タッチパネル用フィルムなどに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線熱膨張係数が10ppm以下かつ、全光線透過率が80%以上であり、200℃で30分加熱前後の寸法変化率が±0.020%内となるようにアニール処理を行うことを特徴とする透明ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
アニール処理時のフィルムへかける張力が0〜8N/mかつ、アニール処理の時間が3〜35分かつ、アニール処理の温度が180〜330℃である、請求項1に記載の透明ポリイミドフィルムの製造方法。ただし、
アニール処理の温度が200〜250℃の場合、アニール時間は下記式(イ)である。
アニール時間(分)≧アニール温度×(−0.22)+59 (イ)
【請求項3】
ポリアミド酸に脱水剤及びイミド化剤を混合した溶液を支持体上に流延することにより作成したフィルムをアニール処理することを特徴とする、請求項1または2に記載の透明ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
脱水剤の量が脱水剤モル数/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01となるように用いることを特徴とする請求項3に記載の透明ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項5】
イミド化剤の量がイミド化剤/ポリアミド酸中アミド基モル数=10〜0.01となるように用いることを特徴とする請求項3または4に記載の透明ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項6】
下記式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法で製造された透明ポリイミドフィルム。
【化1】

式中Rは下記一般式(2)から選択される4価の有機基を、また、Rは下記一般式(3)から選択される2価の有機基を示し、
【化2】

【化3】

式中Rは、水素、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、炭素数1〜16のアルキル基を示す。
【請求項7】
が下記一般式(4)から選択される2価の有機基であることを特徴とする請求項6に記載の透明ポリイミドフィルム。
【化4】

式中Rは、水素、ハロゲン、ハロゲン化アルキル、炭素数1〜16のアルキル基を示す。
【請求項8】
がハロゲン、もしくは、ハロゲン化アルキルであることを特徴とする請求項6または7に記載の透明ポリイミドフィルム。
【請求項9】
がトリフルオロメチル基であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の透明ポリイミドフィルム。
【請求項10】
式(1)で表される繰り返し単位として、Rの構造が下記一般式(5)から選択される4価の有機基であることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の透明ポリイミドフィルム。
【化5】


【公開番号】特開2013−40301(P2013−40301A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179188(P2011−179188)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】