説明

ポリイミド及び樹脂組成物

【課題】透明性に優れたポリイミド及びそれを用いた寸法安定性に優れた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】大気下、300℃15分加熱処理後において、波長400nmにおける透過率が80%以上であるポリイミド。芳香環を有するジアミン(芳香族ジアミン)と、芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物(芳香族テトラカルボン酸二無水物)とを反応させて得られる前記のポリイミド。溶剤可溶性を有する前記のポリイミド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド及びそれを用いた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料用途において、電子機器の小型化や高機能化、軽量化に伴い、使用する材料にも薄型化、軽量化が求められている。例えば、液晶ディスプレイ基板等に用いられているガラス基板は400〜1000μm程度の厚みがあるが、薄膜化すると割れやすく、取扱い性に劣る(特許文献1参照)。
【0003】
透明性を有するフィルムとしてはポリメチルメタクリレート等が例示できるが、液晶ディスプレイの製造工程における透明電極の形成の際、耐熱性が不十分であり、プロセス温度の低温化が必要であった(特許文献2参照)。
【0004】
耐熱性を有するフィルムとしてはポリイミドやポリアミドイミドは耐熱性や寸法安定性に優れた材料であるが、着色しているため、光学用途には不適であった。また、ポリイミドは溶剤可溶性が低く、ポリイミド前躯体であるポリアミド酸溶液を用いてフィルム化した後、350〜500℃の高温でアミド酸部分を閉環してイミド基を形成する必要があり、寸法安定性に劣る(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−207212号公報
【特許文献2】特開平5−186535号公報
【特許文献3】特公平5−60565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イミド化合物として例えばポリイミド樹脂は一般的に有機溶剤に不溶であるため、溶剤可溶性を有するポリアミック酸をフィルム化した後、加熱することで溶剤除去とイミド閉環を行う。しかし、ポリアミック酸からポリイミド樹脂を得るためには、反応率の観点から、高温、長時間の加熱処理が必要であり、低温硬化が求められる分野に適用することが出来ず、改良の余地があった。
【0007】
また、溶剤可溶性ポリイミドとした場合、溶剤可溶性とするために柔軟な骨格の導入が必要であり、耐熱性が低下したり、線熱膨張係数が増加する傾向がある。
【0008】
さらに、芳香族ポリイミドは、一般的に茶色く着色しているものが多く、光学特性に劣るため、改良の余地があった。
【0009】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、透明性に優れたポリイミド及びそれを用いた寸法安定性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の通りである。
(1) 大気下、300℃15分加熱処理後において、波長400nmにおける透過率が80%以上であるポリイミド。
(2) 芳香環を有するジアミン(芳香族ジアミン)と、芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物(芳香族テトラカルボン酸二無水物)とを反応させて得られる(1)記載のポリイミド。
(3) 溶剤可溶性を有する(2)に記載のポリイミド。
(4) (1)〜(3)いずれかに記載のポリイミドを含む樹脂組成物。
【0011】
上記溶剤可溶性ポリイミドは、芳香環を有するジアミン(芳香族ジアミン)と、芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物(芳香族テトラカルボン酸二無水物)との反応により得られ、ポリイミドが溶剤可溶性を有すると、樹脂組成物とした場合に混合し易くなったり、分散性も向上するため、樹脂組成物が均一になるため、フィルム化する際に良好な塗膜が得られやすくなる。
【0012】
芳香環を有するジアミン(芳香族ジアミン)と、芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物(芳香族テトラカルボン酸二無水物)がいずれも溶剤可溶性を有していると、閉環型ポリイミドが溶剤可溶性を有しやすいため、好適である。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明によれば、溶剤可溶性ポリイミドは、大気下、300℃15分加熱後の波長400nmにおける透過率が80%以上であり、透明性に優れ、透明性が求められる分野に適用可能である。
【0014】
また、溶剤可溶性ポリイミドは、イミド基が既に閉環されているので、イミド基閉環時に生じる水による硬化収縮がないため、寸法安定性に優れる材料(樹脂組成物)を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明のポリイミドは、大気下、300℃15分加熱処理後において、波長400nmにおける透過率が80%以上である。より好ましくは透過率が90%以上で、特に好ましくは95%以上である。透過率が80%未満の場合は、透明性が劣るおそれがある。
また本発明のポリイミドは、芳香環を有するジアミン(芳香族ジアミン)と、芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物(芳香族テトラカルボン酸二無水物)との反応により得られるものであることが好ましい。さらに、本発明のポリイミドは、溶剤可溶性であることが好ましい。以下、本発明のポリイミドは、溶剤可溶性ポリイミドとも表す。
【0016】
溶剤可溶性ポリイミドは、通常、芳香環を有するジアミン(芳香族ジアミン)と、芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物(芳香族テトラカルボン酸二無水物)を溶剤中で反応させ、ポリアミック酸とした後に、アミック酸部位を脱水閉環することにより得られる。テトラカルボン酸二無水物はジアミン1モルに対し、1.0〜2.0モル添加することが好ましい。
【0017】
上述したジアミンとテトラカルボン酸二無水物を溶剤中で反応させる温度としては、0〜80℃が好ましく、40〜60℃がさらに好ましい。
【0018】
また、得られた(ポリ)アミック酸をイミド閉環させるには、イミド閉環時に生成する水を除去する必要がある。イミド閉環時に生成する水の除去法としては、無水酢酸の添加や、水と共沸可能な溶剤としてトルエンやキシレン等を用いて除去する手法、窒素気流による蒸気除去等が例示できる。
【0019】
しかしながら、無水酢酸を用いる手法であると、酢酸が生成するため、特に絶縁材料として電子材料用途に用いる場合、イオン性不純物となるため、接続信頼性が低下する恐れがあり、十分に除去する必要がある。
【0020】
上述した(ポリ)アミック酸をイミド閉環する際の温度としては、手法によっても異なるが、80〜210℃が好ましく、130〜200℃がさらに好ましい。このような反応温度とすることで、良好な反応速度が得られ、効率よく(ポリ)イミド樹脂を得ることが可能となる。また、上記反応に際して特に触媒等を添加する必要は無いが、イミダゾールやトリアルキルアミン等の3級アミンを触媒として用いてもよい。これらの触媒を用いることで、より効率よく(ポリ)イミド樹脂を生成させることが可能となる。この場合、上記よりも低い反応温度としても十分に反応が生じることから、高温条件に起因して生じる副反応等も大幅に抑制することが可能となる。
【0021】
上述したテトラカルボン酸二無水物は、芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物を含む組合せであれば特に限定されるものではなく、例えば、4,4’−ビフタル酸無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−スルホニルジフタル酸二無水物、1−トリフルオロメチル−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、フエナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフエン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−(2,2,2)−オクト(7)−エン2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−(4,4’イソプロピリデンジフェノキシ)−ビス(フタル酸無水物)、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物)スルホン等が挙げられ、これらは、単独で又は複数種類組み合わせて用いることが出来る。
【0022】
上述したジアミンは、芳香環を有するジアミン(芳香族ジアミン)を含む組合せであれば特に限定されるものではなく、例えば、芳香族ジアミンとして3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニル−ビフェニル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチル−5,5’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジ(トリフルオロメチル)−5,5’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−2−メチル−5ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノ安息香酸、5,5’−メチレンビスアントラニル酸等が挙げられ、単独で又は複数種類組み合わせて用いることが出来る。
【0023】
溶剤可溶性ポリイミドは、溶剤に5質量%以上溶解すればよく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコ−ルモノメチルエ−テル、メタノ−ル、エタノ−ル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ガンマブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられ、1種または2種以上を混合して使用できる。さらに、溶剤は、反応溶媒と同一であることが本発明の溶剤可溶性ポリイミド樹脂を製造する上で好ましく、トルエンやγ−ブチロラクトンが特に好ましい。
【0024】
また、本発明の樹脂組成物は、前記のポリイミド(溶剤可溶性ポリイミド)を含むものである。溶剤可溶性ポリイミドは単一でも使用可能だが、樹脂組成物として好適な実施形態は、溶剤可溶性ポリイミドに加え、エラストマ、硬化促進剤、希釈剤、必要に応じて架橋剤、粒子、難燃剤、増感剤を更に含んでもよい。
【0025】
希釈剤を用いることより、他の成分が溶解又は分散された状態とすることができ、作業上、有利となる傾向にある。希釈剤は組成物を溶解または分散させるものなら特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ガンマブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等を例示でき、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0026】
また、本発明は、透明性を有する溶剤可溶性ポリイミドであり、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤等を含む樹脂組成物とすることで、熱や光により硬化させることが可能であり、樹脂組成物とすることで広範な用途に適用可能とすることが出来る。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
合成例1
窒素下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミンとして3,3’−ジアミノジフェニルスルホン60.5mmol、溶媒としてγ−ブチロラクトン156gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物60.0mmol、ジカルボン酸無水物として無水フタル酸1.0mmolを加え、温度を50℃に昇温させて30分撹拌した。
【0028】
撹拌終了後、温度を180℃に昇温して9時間反応させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の留出が見られなくなっていることを確認したら、室温(25℃)まで冷却し、合成例1の溶剤可溶性ポリイミドのγ−ブチロラクトン溶液を得た。
【0029】
合成例2
窒素下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミンとして3,3’−ジアミノジフェニルスルホン60.5mmol、溶媒としてγ−ブチロラクトン156gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物60.0mmolを加え、温度を50℃に昇温させて30分撹拌した。
【0030】
撹拌終了後、温度を180℃に昇温して9時間反応させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の留出が見られなくなっていることを確認したら、室温(25℃)まで冷却し、合成例2の溶剤可溶性ポリイミドのγ−ブチロラクトン溶液を得た。
【0031】
合成例3
ジアミンを4,4’−ジアミノジフェニルスルホンに変えた以外は合成例1と同様にして行い、合成例3の溶剤可溶性ポリイミドのγ−ブチロラクトン溶液を得た。
【0032】
比較合成例1
窒素下、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた300mLのセパラブルフラスコに、ジアミンとして2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン52.5mmol、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン218gを加えた。さらにテトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物52.5mmolを加え、温度を50℃に昇温させて30分撹拌した。
【0033】
撹拌終了後、温度を180℃に昇温して2時間反応させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の留出が見られなくなっていることを確認したら、室温(25℃)まで冷却し、比較合成例1の溶剤可溶性ポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液を得た。
【0034】
比較合成例2
ウルテム(GE社製、可溶性ポリイミド)30gをN−メチル−2−ピロリドン70gに溶解して比較合成例2の溶剤可溶性ポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液を得た。
【0035】
(実施例1〜9、比較例1〜4)
「ポリイミド塗膜の作製」
実施例1〜9として、合成例1〜3の可溶性ポリイミド溶液をS1111(松浪硝子工業株式会社製)に均一に塗布し、大気下、130℃、15分乾燥させ、ポリイミド塗膜を作製した。さらに230℃、15分処理した後、300℃、15分加熱処理した。作製したポリイミド塗膜の膜厚を表1に示した。
比較例1〜4として、比較合成例1〜2の可溶性ポリイミド溶液をポリエチレンテレフタレートに均一に塗布し、大気下、130℃、15分乾燥させ、ポリイミド塗膜を作製した。さらにポリエチレンテレフタレートを剥離し、230℃、15分処理した後、300℃、15分加熱処理した。作製したポリイミド塗膜の膜厚を表1に示した。
【0036】
[透過率の測定]
作製したポリイミド塗膜を、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 U−2900)を用いて、1100〜190nmの透過率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示した通り、実施例1〜9は、波長400nmにおける透過率が80%以上であり、大気下、300℃15分加熱後でも高透明性を有することがわかる。一方、比較例1〜4は、波長400nmにおける透過率が80%より低かった。
【0039】
以上示した通り、本発明の透明性を有するポリイミドは、大気下、300℃15分加熱後の波長400nmにおける透過率が80%以上であり、有機溶剤に対する溶剤可溶性を有する。また、イミド基がすでに閉環しているため低温での成膜が可能であり、寸法安定性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気下、300℃15分加熱処理後において、波長400nmにおける透過率が80%以上であるポリイミド。
【請求項2】
芳香環を有するジアミン(芳香族ジアミン)と、芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物(芳香族テトラカルボン酸二無水物)とを反応させて得られる請求項1記載のポリイミド。
【請求項3】
溶剤可溶性を有する請求項2に記載のポリイミド。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のポリイミドを含む樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−140563(P2011−140563A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2009(P2010−2009)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】