説明

ポリイミド積層板の製造方法

【課題】改良されたポリイミド積層板、およびその製造方法を提供すること
【解決手段】開示されている方法は、均一に分布した熱伝導性フィラーを有するポリイミド膜を用意し、前記ポリイミド膜は、0.3 W/m℃を超える熱伝導率を有する。また、少なくとも一つの金属膜は、電気めっき、無電解めっき、蒸着、スパッタリング、又は積層により、前記ポリイミド膜の片側または両側に堆積され、それにより、所望のポリイミド積層板を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路板、およびその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、ポリイミド積層板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子通信機器の分野において、周知のプリント回路板(PCB)を上回るフレキシブル回路板(FCPs)の普及に従って、FCPsへの需要が急加している。さらに、軽量で、携帯し易いこともまた、エンドユーザーの製品への需要に合致しているため、FCPsの人気拡大に貢献している。
【0003】
フレキシブル回路板の積層板は、通常、プラスチック基板と、それに配置された複数の金属層とからなり、前記金属層ごとに、他の回路素子に接続する配線を含む。熱は、一般的には、典型的な金属膜の製造工程において生成され、正確に消散させなければ基板に溜まって、最終的には基板、特にフレキシブル基板を悪化させてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のことを考慮すると、この技術分野において、改良された熱伝導率を示し、希望するレベルの温度まで低下するため、製造工程中に形成された熱を改めて他の熱消散素子に導くことができる改良されたフレキシブル基板への需要が存在する。本発明の改良されたフレキシブル基板は、金属膜の製造工程に適用できる。
【0005】
上記に鑑みて、本発明の目的は、改良されたポリイミド積層板、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の態様において、本発明は、改良されているポリイミド積層板の製造方法を提供する。該方法は、ポリイミド膜の熱伝導率が0.3 W/m℃を超えるように、ポリイミドの固形分において約10〜90質量%を含有して均一に分布した熱伝導性フィラーを有するポリイミド膜を形成する工程と、ポリイミド膜の片側に少なくとも一つの金属層を形成する工程とを有する。
【0007】
前記少なくとも一つの金属層は、Pd、Cu、Ni、Fe、Alのいずれか又はそれらの組み合わせからなる。
【0008】
前記熱伝導性フィラーは、10 W/m℃を超える熱伝導率を有し、金属酸化物、金属窒化物、炭素、炭化ケイ素又はセラミック粉末のいずれかである。前記金属酸化物は、酸化アルミニウムであり、前記金属窒化物は、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、それらの焼結体、又はそれらの組み合わせである。
【0009】
前記少なくとも一つの金属層は、電気めっき、無電解めっき、スパッタ成膜、気相成膜、又は積層により形成できる。
【0010】
一実施形態において、無電解めっきにより形成されるPd層、および電気めっきにより形成されるCu層は、前記ポリイミド膜の片側に順次堆積される。
【0011】
別の実施形態において、それぞれスパッタ成膜により形成されるNi層とCu層、および電気めっきにより形成される別のCu層は、前記ポリイミド膜の片側に順次堆積される。
【0012】
更に別の実施形態において、気相成膜により形成されるNi層、および電気めっきにより形成されるCu層は、前記ポリイミド膜の片側に順次堆積される。
【0013】
更に別の実施形態において、Cu層は、前記ポリイミド膜の片側に積層される。
【0014】
前記開示されている方法の別の実施態様において、少なくとも一つの金属層は、前記ポリイミド膜の各側にそれぞれ堆積される。一実施形態において、無電解めっきにより形成されるPd層、および電気めっきにより形成されるCu層は、前記ポリイミド膜の各側にそれぞれ順次堆積される。別の実施形態において、それぞれスパッタ成膜により形成されるNi層とCu層、および電気めっきにより形成される別のCu層は、前記ポリイミド膜の各側にそれぞれ順次堆積される。更に別の実施形態において、気相成膜により形成されるNi層、および電気めっきにより形成されるCu層は、前記ポリイミド膜の各側に順次堆積される。更に別の実施形態において、Cu層は、前記ポリイミド膜の各側に積層される。
【0015】
本発明の第二の態様において、ポリイミド膜の片側又は両側に少なくとも一つの金属層を有するポリイミド積層板を提供する。前記ポリイミド膜は、0.3 W/m℃を超える熱伝導率を有する。
【0016】
一実施態様において、前記ポリイミド積層板は、ポリイミド膜の片側に堆積された少なくとも一つの金属層を有する。一実施形態において、前記ポリイミド積層板は、前記ポリイミド膜の片側に順次堆積されるPd層およびCu層を含む。別の実施形態において、前記ポリイミド積層板は、前記ポリイミド膜の片側に順次堆積されるNi層と、第一のCu層と、第二のCu層とを含む。更に別の実施形態において、前記ポリイミド積層板は、前記ポリイミド膜の片側に順次堆積されるNi層、およびCu層を含む。更に別の実施形態において、前記ポリイミド積層板は、前記ポリイミド膜の片側に積層されるCu層を含む。
【0017】
別の実施態様において、前記ポリイミド積層板は、前記ポリイミド膜の各側にそれぞれ堆積される少なくとも一つの金属層を有する。一実施形態において、前記ポリイミド積層板の各側は、前記ポリイミド膜に順次堆積されるPd層およびCu層を含む。別の実施形態において、前記ポリイミド積層板の各側は、前記ポリイミド膜に順次堆積されるNi層と、第一のCu層と、第二のCu層とを含む。更に別の実施形態において、前記ポリイミド積層板の各側は、前記ポリイミド膜に順次堆積されるNi層およびCu層を含む。更に別の実施形態において、前記ポリイミド積層板の各側は、前記ポリイミド膜に積層されるCu層を含む。
【0018】
本発明のこれらと他の特徴、態様、および利点は、以下の開示とクレームにより、更に分かりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付の図面は、本発明について更に一層の理解を提供するために含まれ、本明細書に組み入れられ、その一部を構成するものである。これらの図面は、本発明の実施形態を例証するものであり、本説明と共に、本発明の原理を説明する役目を果たす。
【図1】図1は、本発明の一実施態様によってポリイミド膜を製造するための装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好まれる実施態様が詳細にここで参照され、それらの例は、添付の図面に示される。可能である限り、同じ参照番号は、同じ又は類似の部品を述べるために図面および明細書に用いられる。
【0021】
本発明の実施態様は、ポリイミド積層板を製造する方法に適用されている。前記方法は、ポリイミド膜の熱伝導率が0.3 W/m℃を超えるように、ポリイミドの固形分において約10〜90質量%を含有して均一に分布した熱伝導性フィラーを有するポリイミド膜を形成する工程と、ポリイミド膜の片側に少なくとも一つの金属層を形成する工程とを含む。
【0022】
図1は、本発明の方法を行うための装置100を示す模式図である。ポリアミド酸溶液120は、装置100の反応器110の中に用意される。前記ポリアミド酸溶液120は、いずれかの好適な手順により製造でき、例えば、ポリアミド酸124を製造するための反応物の一つである芳香族ジアミンが、溶剤126に溶解された後、他の反応物である芳香族テトラカルボン酸二無水物、および熱伝導性フィラー122を添加する。前記混合物における両反応物である前記芳香族ジアミンおよび前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は、反応してポリアミド酸124を形成することができ、前記熱伝導性フィラー122は、前記ポリアミド酸124および前記溶剤126からなる前記混合物において均一に分布されている。
【0023】
ポリアミド酸溶液120又はポリアミド酸124を作る方法は、同出願人が2007年9月29日に出願し、2009年4月1日に公開された出願番号TW 200914502である台湾特許に開示されており、該発明は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0024】
前記開示されている方法に用いられる好適な芳香族ジアミンは、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−メチレンジアニリン、N,N’―ジフェニルエチレンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ナフタレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ビス(アミノプロピル)−ジメチルジフェニルジシロキサン、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されるものではない。前記開示されている方法に用いられる好適な芳香族テトラカルボン酸二無水物は、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボン酸フェニル)ジメチルシラン二無水物、1,3−ビス(3,4−フタル酸無水物)−テトラメチルジシロキサン、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されるものではない。
【0025】
前記芳香族ジアミンおよび前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は、約1.1:1から約0.9:1の間のモル比で用いることができる。
【0026】
本発明に用いられることができる好適な溶剤は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されるものではない。
【0027】
本発明の方法に用いられることができる熱伝導性フィラーは、10 W/m℃を超える熱伝導率を有する無機材料であり、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの金属窒化物、それらの焼結体またはそれらの組み合わせ、炭素、カーボンブラック、グラファイトまたはカーボンナノチューブなどの炭素材料、炭化ケイ素、セラミック粉末またはそれらの組み合わせのいずれかであってよい。一実施形態において、酸化アルミニウムは前記熱伝導性フィラーである。前記熱伝導性フィラーは、前記ポリイミドまたは前記ポリアミド酸の固形分における約10〜90質量%の量で用いられ、例えば、前記ポリイミドの10、20、30、40、50、60、70、80、または90質量%で用いられる。
【0028】
このように用意された前記ポリアミド酸溶液120は、その後の使用まで、貯蔵器130に選択的に保存することができる。前記ポリイミド膜を製造する工程において、一定量の前記ポリアミド酸溶液120が、前記貯蔵器130から輸送ヘッド140に連続的に輸送されると同時に、鋼帯150は、駆動手段170により膜製造装置160の入口162を介して連続的に供給され、前記ポリイミド膜を製造するように、前記輸送ヘッド140から前記鋼帯150に輸送された前記の定量の前記ポリアミド酸溶液120を運搬するためのキャリアーの役目を果たす。前記駆動手段は、ホイール172および支持筒174を含む。
【0029】
前記輸送ヘッド140は、ブレードコーティング、スロットコーティング、または押出コーティングに好適なヘッドであってよい。前記ポリアミド酸溶液120は、重量または圧力により駆動でき、前記ヘッド140から前記駆動手段170により駆動させて回転している前記鋼帯150の表面に、定量で、且つ連続的に輸送される。前記ヘッド140は、様々な厚さの前記ポリアミド酸溶液120が前記鋼帯150の表面に担持された後に、様々な厚さのポリイミド膜を形成できるように、回転している前記鋼帯150の表面から約60〜1500μmである距離dを隔てて設けられる。前記距離d、または前記ポリアミド酸溶液120を輸送するための前記圧力を制御することにより、様々な厚さのポリアミド酸溶液120を形成する目的が容易に達成できる。
【0030】
前記鋼帯150の表面に担持されている前記ポリアミド酸溶液120は、その後に、ポリイミド膜を形成するために加熱される。操作上、前記ポリアミド酸溶液を担持している前記鋼帯150が前記駆動手段170により駆動されて加熱装置180に通すことにより、前記ポリアミド酸溶液は80〜400℃に加熱されてポリイミド膜190を形成し、前記ポリイミド膜190は、その後に、出口164から出す。
【0031】
出された前記ポリイミド膜190は、所望の前記ポリイミド積層板を製造するための金属化工程に用いることができる。
【0032】
前記金属化工程は、上記に述べた方法により製造された前記ポリイミド膜190の片側または両側において行うことができる。電気めっき、無電解めっき、スパッタ成膜、気相成膜または積層におけるいずれかの方法により、少なくとも一つの金属層が前記ポリイミド膜190の片側または両側に堆積されるが、それらの方法に限定されない。各金属層の厚さは、意図する用途の仕様により調節でき、本技術分野における通常の知識を有する者のいずれかが、各金属層を堆積するための最適な条件を過度の実験なしに決めるように、前記工程のパラメーターを調節できる。
【0033】
前記金属化工程に用いられる好適な金属は、Pd、Cu、Al、Ni、Fe、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されるものではない。
【0034】
一実施態様において、前記金属化工程は、前記ポリイミド膜190の片側のみに行われる。一実施形態において、無電解めっきにより形成されるPd層、および電気めっきにより形成されるCu層は、前記ポリイミド膜の片側に順次堆積される。別の実施形態において、それぞれスパッタ成膜により形成されるNi層とCu層、および電気めっきにより形成される別のCu層は、前記ポリイミド膜の片側に順次堆積される。更に別の実施形態において、気相成膜により形成されるNi層、および電気めっきにより形成されるCu層は、前記ポリイミド膜の片側に順次堆積される。更に別の実施形態において、Cu層は、前記ポリイミド膜の片側に積層される。
【0035】
前記開示されている方法の別の実施態様において、前記金属化工程は、前記ポリイミド膜190の両側に行われ、つまり、少なくとも一つの金属層は、前記ポリイミド膜の各側にそれぞれ堆積される。一実施形態において、前記ポリイミド膜の各側は、無電解めっきにより形成されるPd層、および電気めっきにより形成されるCu層を順次含む。別の実施形態において、前記ポリイミド膜の各側は、それぞれスパッタ成膜により形成されるNi層とCu層、および電気めっきにより形成される別のCu層を順次含む。更に別の実施形態において、前記ポリイミド膜の各側は、気相成膜により形成されるNi層、および電気めっきにより形成されるCu層を次に含む。更に別の実施形態において、Cu層は、前記ポリイミド膜の各側に積層される。
【実施例】
【0036】
実施例 ポリイミド積層板の製造
1.ポリイミド膜の調製
表1に示すような好適な量のp−フェニレンジアミンおよびジアミノジフェニルエーテルを、N−メチルピロリドンに添加した後、酸化アルミニウムを添加し、次いで、前記混合物を連続的に1時間撹拌した。1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、前記溶液にゆっくりと加え、その混合物は前記ポリアミド酸溶液を形成するように6時間撹拌した。次に、前記ポリアミド酸溶液を、図1で表すように、前記装置100の前記鋼帯150の表面に定量且つ連続的に輸送し、厚さが約25μmであるポリイミド膜を形成するように、窒素雰囲気の中に約80〜400℃の温度で加熱した。次いで、前記ポリイミド膜を、室温に戻してから、前記鋼帯150から取り出した。実施例1および2のポリイミド膜は、ポリアミド酸の固形分の約19.23質量%および19.85質量%であり、実施例1および2のポリイミド膜の熱伝導率、吸水性、および電気的特性を表2に示す。
【0037】
比較例1および2
熱伝導性フィラーが分布されていないポリイミド膜は、酸化アルミニウムを除き、上記に述べた工程によって表1に示す成分を用いることにより製造した。比較例1および2のポリイミド膜は、ポリアミド酸の固形分の約19.23質量%および19.85質量%であり、比較例1および2のポリイミド膜の熱伝導率、吸水性、および電気的特性を表2に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
表1および2から、前記ポリアミド酸溶液に酸化アルミニウムなどの熱伝導性フィラーの添加により、得られたポリイミド膜の熱伝導率が約0.17 W/m℃から約0.5または0.6 W/m℃に増加することは明白である。つまり、前記ポリイミド膜の熱伝導率は、熱伝導性フィラーの含有で増加した。
【0041】
更に、前記ポリイミド膜の吸水性が、膜に酸化アルミニウムを含有することで減少し、それによって、高周波回路基板の仕様を満たすより良い誘電性を膜に与えた。
【0042】
前記ポリイミド膜の電気的特性について、酸化アルミニウムを添加するか否かにかかわらず、結果が同様であり、バルク抵抗および表面抵抗は、それぞれ1013Ωおよび1013Ωcmであった。更に、破壊電圧も約2KVの程度に維持した。
【0043】
2.ポリイミド積層板の準備
2.1 電気めっきによる実施例1または2のポリイミド膜への金属層の形成
実施例1または2のポリイミド膜を、まず、過マンガン酸イオンを含有する洗浄剤により洗浄し、次に、還元剤により洗浄した。次いで、洗浄された実施例1または2のポリイミド膜を、四価金属イオンを含有するポリエチレンイミダゾールなどの高分子電解質を含有する予備液に浸漬した。
【0044】
実施例1または2のポリイミド膜を、初めに、貴金属イオン含有ゲルと還元剤とを含有する電解質に浸漬することにより、貴金属(Pdなど)層でめっきした。前記貴金属イオン含有ゲルは、パラジウムイオンを含有するゲルである。前記還元剤は、アスコルビン酸、ビフェニル、ヒドロキシルアミンまたはそれらの誘導体、あるいはホルムアルデヒドであってもよい。前記実施例1または2のポリイミド膜を、貴金属イオン含有ゲルを含む電解セルに置き、次に、無電解めっきを始めるように還元剤を注いだ後、薄いPd層が実施例1または2のポリイミド膜の各側に形成された。
【0045】
次いで、各側にそれぞれ形成した薄いPd層を有するこのポリイミド膜は、各側に薄いCu層をめっきするために、めっきセルに置いた。或いは、薄い銅層を、前記ポリイミド膜の片側のみに電気めっきしてもよい。銅めっき用の電解質は、硫酸銅またはピロリン酸銅であり、該電解液を、めっき中に穏やかに撹拌した。めっきしたCu層は、約50μmの厚さを有していた。工業用のめっき液は通常、レベリング剤、光沢増強剤、または同類のものを含み、それらが前記ポリイミド膜に損害を与えるので、本発明に用いることができない点に留意すべきである。
【0046】
銅めっきが完了した後、それにより得られたポリイミド積層板に、所望の回路パターンを形成するようにエッチング工程を施し、その後、前記回路パターンを酸化から保護するように前記回路パターンのトップに、最後のAu層が形成した。
【0047】
2.2 スパッタ成膜および電気めっきによる実施例1または2のポリイミド膜における金属層の形成
実施例1または2のポリイミド膜を、コロナ放電またはプラズマエッチングにより、真空チャンバーにおいて予備洗浄した。次いで、厚さが約50Åから500Åまでの範囲に制御される薄いNi層を、前記ポリイミド膜の片側または両側においてスパッタ成膜した後、その上にCu層をスパッタ成膜した。前記Cu層は、前記ポリイミド膜の片側または両側において形成できる。
【0048】
次に、別のCu層を、上記の2.1に述べた手順によって電気めっきした。同様に、Cu層を、厚さが約50μmであるように前記ポリイミド膜の片側または両側において電気めっきしてもよい。続いて、それにより形成されたポリイミド積層板に、上記の2.1に述べた工程により、所望の回路パターンおよび最も外部のAu層を形成した。
【0049】
2.3 気相成膜による実施例1または2のポリイミド膜における金属層の形成
Ni層を、気相成膜により、実施例1または2の前記ポリイミド膜の片側または両側において形成した。Ni層の厚さは、500Å未満であり、50Åから300Åまでが好ましい。また、Niの代わりにFeまたはAlを用いてもよい。
【0050】
次いで、Cu層を、上記の2.1に述べた工程によって電気めっきした。同様に、Cu層を、前記ポリイミド膜の片側または両側において電気めっきしてもよい。続いて、それにより形成されたポリイミド積層板に、酸化から前記回路パターンを保護するために、所望の回路パターンおよび最も外部のAu層を形成するようにエッチングを施した。
【0051】
2.4 積層による実施例1または2のポリイミド膜における金属層の形成
実施例1または2のポリイミド膜は、周知の積層の手順によって、Cu層により積層した。Cu層は、電気めっきまたは圧延により形成でき、約5μmから50μmまで、より好ましくは5μmから35μmまでの厚さ、および滑らかな表面を有する。Cu層は、Al層またはFe層に代えてもよい。それにより形成されたポリイミド積層板は、その後の使用まで巻き物の形式で保存することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、改良されたポリイミド積層板の製造方法を提供する。前記ポリイミド積層板は、均一に分布した熱伝導性フィラーを有するポリイミド膜と、前記ポリイミド膜の片側または両側に形成される少なくとも一つの金属層とを含む。前記ポリイミド膜において均一に分布した前記熱伝導性フィラーは、良い熱伝導率を膜に与えることにより、次のいずれかの工程の間に産生した過剰熱が前記ポリイミド膜に蓄積することを防ぐことができ、それによって、膜の変形を防ぐことができる。よって、本発明のポリイミド積層板は、半導体応用におけるフレキシブル基板として使用するのに好適である。
【0053】
前述の本発明の様々な実施態様の記述は、例示および説明を目的として提示した。それは完全であること、または、本発明を開示した実施形態にだけ限定することを意図するものではない。数多くの修正または変更が上記教示に照らして可能である。論じた実施形態は、本発明の原理の最適な例示、およびその実用的な用途を提供して、当業者が、本発明を、意図する特定の用途に適した様々な実施形態で、また様々な修正を伴って利用できるように選択し、記述した。全てのかかる修正および変更は、適正、適法、且つ公正に与えられた範囲に従って解釈した添付の特許請求の範囲により決定される本発明の範囲内にある。
【符号の説明】
【0054】
100 装置
110 反応器
120 ポリアミド酸溶液
122 熱伝導性フィラー
124 ポリアミド酸
126 溶剤
130 貯蔵器
140 輸送ヘッド
150 鋼帯
160 膜製造装置
162 入口
164 出口
170 駆動手段
172 ホイール
174 支持筒
180 加熱装置
190 ポリイミド膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド膜の熱伝導率が0.3 W/m℃を超えるように、ポリイミドの固形分において約10〜90質量%を含有し均一に分布した熱伝導性フィラーを有するポリイミド膜を形成する工程と、
ポリイミド膜の一方の側に少なくとも一つの金属層を形成する工程と、
を含むポリイミド積層板を製造する方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つの金属層が、Pd、Cu、Al、Fe、Ni、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つの金属層が、電気めっき、無電解めっき、スパッタ成膜、気相成膜、又は積層により、前記ポリイミド膜の片側に形成される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリイミド膜の他方の側に少なくとも一つの金属層を形成する工程を更に含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱伝導性フィラーは、10 W/m℃を超える熱伝導率を有し、金属酸化物、金属窒化物、炭素、炭化ケイ素(SiC)またはセラミック粉末のいずれかである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項3または4に記載の方法で製造されたポリイミド積層板。

【図1】
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【公開番号】特開2010−137571(P2010−137571A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−279534(P2009−279534)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(508015829)達勝科技股▲ふん▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】