説明

ポリイミド系材料、フィルム及び組成物、並びにその製造方法

【課題】本発明は、耐熱性を維持しつつ、耐水性に優れるポリイミド系材料を該ポリイミド系材料からなるフィルム及び組成物、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)下記(a−1)、(a−2)成分を含むジアミン化合物と(B)脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物を反応させて得られることを特徴とするポリアミック酸及び/又はポリイミド樹脂からなるポリイミド系材料、およびそれを含むフィルム及び組成物、並びにその製造方法である。
(a−1)アミン価により計算した数平均分子量500〜10,000のシリコーンジアミン 10〜60質量%
(a−2)脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物を30〜90質量%
(ただし、ジアミン化合物の全量を100質量%とする。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリイミド系材料、該材料を含む組成物、ならびに該材料からなるフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させてなる全芳香族ポリイミドは、分子の剛直性や、分子が共鳴安定化していること、強い化学結合を有することに起因して、優れた耐熱性、機械的特性、電気特性、耐酸化・加水分解性を有しており、電気、電池、自動車および航空宇宙産業などの分野において、フィルム、コーティング剤、成型部品、絶縁材料として幅広く使用されている。
しかし、例えばKapton(商品名、登録商標、東レ・デュポン社製)に代表される全芳香族ポリイミドフィルムは、フィルム状に成形するのに、高温での熱処理を要するなど、プロセス負荷が高いため成形性が低く、光学材料としての使用には制限があるという問題がある。具体的には、上記フィルムを形成するポリイミドは有機溶媒に対する溶解性が低く、ポリイミドをそのまま用いてフィルムを形成することができない。そのため、前記ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸の有機溶媒溶液を用い、基板への塗布などによりフィルム状の塗膜とした後、該塗膜を400℃程度の高温で熱処理することにより、塗膜中のポリアミック酸をイミド化し、ポリイミドからなるフィルムを得る必要がある。
このような問題を解決するために、非着色性や透明性向上させ有機溶媒に対する可溶性を付与して成形性を向上させてなるポリイミドが種々提案されている。例えば、特許文献1には、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物と脂環族ジアミンからなる全脂環族ポリイミド樹脂が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−15629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の全脂環族ポリイミドは、透明性に優れるもののイミド基濃度が高く吸水率が高いため、耐水性に劣るという問題がある。
そこで、本発明は、耐熱性を維持しつつ、耐水性に優れるポリイミド系材料を該ポリイミド系材料からなるフィルム及び組成物、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)特定数平均分子量のシリコーンジアミン、並びに脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物を特定割合で含むジアミン化合物と(B)脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られることを特徴とするポリアミック酸及び/又はポリイミド樹脂からなるポリイミド系材料と、本発明の上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1](A)下記(a−1)、(a−2)成分を含むジアミン化合物と(B)脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物
を反応させて得られることを特徴とするポリアミック酸及び/又はポリイミド樹脂からなるポリイミド系材料。
(a−1)アミン価により計算した数平均分子量500〜10,000のシリコーンジアミン 10〜60質量%
(a−2)脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物を30〜90質量%
(ただし、ジアミン化合物の全量を100質量%とする。)
[2] 上記シリコーンジアミンが下記式(1)で表される化合物である、上記[1]に記載のポリイミド系材料。
【0007】
【化1】

(式中、複数あるRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基、アルコキシ基を示し、複数あるRは、各々独立に、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、またはフェニレン基を示し、nは1〜100の整数を表す。)
[3] アミン価により計算したシリコーンジアミンの数平均分子量が3,000〜8,000である、上記[1]または[2]に記載のポリイミド系材料。
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリイミド系材料、及び有機溶媒を含有するポリイミド系樹脂組成物。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリイミド系材料からなるフィルム。
[6] 光学部材用である上記[5]に記載のフィルム。
[7] プリント配線用基板用である上記[5]に記載のフィルム。
[8] 上記[5]〜[7]のいずれかに記載のフィルムの製造方法であって、上記(A)シリコーンジアミンと上記(B)脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸及び/又はポリイミドと、有機溶媒とを含む溶液を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜から前記溶媒を蒸発させることにより除去してフィルムを得る工程とを含む、フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリアミック酸及び/又はポリイミド(以下、「ポリイミド等」ともいう。)からなるポリイミド系材料は、特定分子量のシリコーンジアミン、並びに脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物を特定割合で含むジアミン化合物と脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物とを反応させてなるため、耐熱性及び耐水性に優れたポリイミド系材料を該ポリイミド系材料からなるフィルム及び組成物を得ることができる。
また、本発明のポリイミド等は、有機溶媒に対して優れた溶解性を有しており、そのまま有機溶媒に溶解させて、フィルムを形成することができる。この場合、前記ポリイミド等を含む有機溶媒溶液を基板等に塗布して塗膜を形成した後、塗膜中の溶媒が蒸発する程度の温度で加熱すればよく、例えばポリアミック酸を含む有機溶媒溶液を用いて熱イミド化する場合のように400℃を超える高温で熱処理する必要がないため、プロセス負荷の低減を達成することができる。また、本発明のポリイミド等は、硬化させて溶媒を除去した際に、硬化物中の残留溶媒量を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリイミド系材料は、(A)特定分子量のシリコーンジアミン、並びに脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物を特定割合で含むジアミン化合物と(B)脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物を反応させて得られることを特徴とするポリアミック酸及び/又はポリイミド樹脂からなるポリイミド系材料を主体とするものである。
まず、本発明のジアミン化合物について説明する。
[(A)成分]
本発明において用いられるジアミン化合物は、下記(a−1)、(a−2)成分を含む。
(a−1)アミン価により計算した数平均分子量500〜10,000のシリコーンジアミン 10〜60質量%
(a−2)脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物を30〜90質量%
(ただし、ジアミン化合物の全量を100質量%とする。)
【0010】
本発明において用いられるジアミン化合物である(a−1)成分は、アミン価により計算した数平均分子量500〜10,000のシリコーンジアミンである。該シリコーンジアミンとしては下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0011】
【化2】

(式中、複数あるRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基、アルコキシ基を示し、Rは、各々独立に、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、またはフェニレン基を示し、nは1〜100の整数を表す。)
式中、Rとしては、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基、アルコキシ基が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、炭素数3〜10のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6〜12のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、アリルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
また、式中、R2としては、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、またはフェニレン基が挙げられる。炭素数2〜10のアルキレン基としては、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
上記シリコーンジアミンとしては、耐熱性(高ガラス転移温度)及び耐水性に優れたポリアミック酸及び/又はポリイミドを得る観点から数平均分子量が1,000〜9,000であることが好ましく、3,000〜8,000であることがより好ましい。
具体的には、両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(信越化学社製 X22−1660B(数平均分子量4,400),X22−9409(数平均分子量1,300))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(信越化学社製 X22−161A(数平均分子量1,600))、東レダウコーニング製 BY16−835U(数平均分子量900))などを挙げることができる。なお、ポリイミド等を合成する際、上記シリコーンジアミンは1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
本発明において用いられるジアミン化合物である(a−2)成分は、脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物である(ただし、(a−1)成分を除く。)。脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンの具体例としては、例えば 1,1−メタキシリレンジアミン、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン類;
1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’ジアミノシクロヘキシルメタンなどの脂環族ジアミン類;などを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのジアミン化合物の中でも、透明性に優れたポリアミック酸及び/又はポリイミドを得る観点から脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンが好ましく用いられ、耐熱性に優れたポリアミック酸及び/又はポリイミドを得る観点から脂環族ジアミンが特に好ましく用いられる。
また、これらジアミン化合物は市販品をそのまま使用してもよいし、市販品を再還元してから使用してもよい。
【0013】
上記シリコーンジアミンは、全ジアミン化合物の全量を100質量%とした場合に、20〜50質量%含むことが好ましく、25〜50質量%含むことがより好ましく、30〜50質量%含むことがさらに好ましい。
また、上記脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物は、全ジアミン化合物の全量を100質量%とした場合に、40〜80質量%含むことが好ましく、45〜75質量%含むことがより好ましく、50〜70質量%含むことがさらに好ましい。
【0014】
次に、上記ジアミン化合物と反応して本発明のポリイミド系材料を与えるためのアシル化合物((B)成分)について説明する。
[(B)成分]
本発明のアシル化合物は、脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物である。
ここで、反応性誘導体とは、脂肪族テトラカルボン酸二無水物または脂環族テトラカルボン酸二無水物に変化しうる化合物であり、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物または脂環族テトラカルボン酸二無水物の当該無水物に代えて2つのカルボキシル基を有する化合物、これら2つのカルボキシル基の中の片方または両方がエステル化されたエステル化物である化合物、またはこれら2つのカルボキシル基の中の片方または両方がクロル化された酸クロライド等が好適に用いられる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペンタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ヘプタンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0015】
脂環式テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1−cis−2−cis−3−trans−4−trans−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
上記アシル化合物としては、耐熱性に特に優れたポリイミド等を得る観点から脂環式テトラカルボン酸二無水物またはこの反応性誘導体を用いることが好ましい。
なお、ポリイミド等を合成する際、上記アシル化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
次に、本発明のポリイミド系材料の製造方法、およびフィルムの製造方法について説明する。
本発明のポリイミド系材料の製造方法は、上記(A)成分と上記(B)成分とを反応させて、ポリアミック酸と有機溶媒とを含む溶液を調製する工程(a)と、前記ポリアミック酸の少なくとも一部を、イミド化する工程(b)とを含む。
また、本発明のフィルムの製造方法は、上記(A)成分と上記(B)成分とを反応させて得られるポリアミック酸及び/又はポリイミドと、有機溶媒とを含む溶液を、支持基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜から前記溶媒を蒸発させることにより除去してフィルムを得る工程とを含むものである。
本発明のフィルムの製造方法は、ポリアミック酸及び/又はポリイミドと有機溶媒とを含む溶液を調製する前工程を含むことができる。この場合、本発明のフィルムの製造方法は、上記(A)成分と上記(B)成分とを反応させて、ポリアミック酸及び/又はポリイミドと有機溶媒とを含む溶液を調製する工程(例えば、上記工程(a)及び(b))と、前記ポリアミック酸及び/又はポリイミドと有機溶媒とを含む溶液を支持基板上に塗布して塗膜を形成する工程(工程(c))と、該塗膜から前記有機溶媒を蒸発させることにより除去してフィルムを得る工程(工程(d))と、を含む。
【0017】
[工程(a)]
工程(a)は、上記(A)成分と上記(B)成分とを反応させて、ポリアミック酸と有機溶媒とを含む溶液を調製する工程である。
具体的には、少なくとも1種の(A)ジアミン化合物を有機溶媒に溶解した後、得られた溶液に、少なくとも1種の(B)アシル化合物を添加し、0〜100℃の温度で、1〜60時間撹拌する方法が挙げられる。
上記有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等の非プロトン系極性溶媒;クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒;等が挙げられる。中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
これらの溶媒は一種単独で、あるいは2種以上混合して使用することができる。
なお、反応液中の(A)ジアミン化合物と(B)アシル化合物の合計量は、反応液全量の5〜30質量%であることが好ましい。
【0018】
ここで、(B)アシル化合物と(A)ジアミン化合物との割合は、(A)成分のアミノ基又はイソシアナート基1当量に対して、(B)成分の酸無水物基が0.8〜1.2当量となる割合が好ましく、1.0〜1.1当量となる割合がより好ましい。該値が0.8当量未満、若しくは1.2当量を超えると、分子量が低くなり、フィルムを形成することが困難なことがある。
【0019】
上記の方法で得られるポリアミック酸及び/又はポリイミドの末端は、主としてカルボン酸無水物となる。ポリマーの末端基は、処理せずにそのままの状態でフィルム化することができる。また、アニリン誘導体に代表される単官能の芳香族アミンの添加により、イミド化処理することができる。
なお、ポリアミック酸とは、酸無水物基とアミノ基とが反応して生じる、−CO−NH−、及び、−CO−OHを含む構造を有する酸、または、その誘導体(具体的には、例えば、−CO−NH−、及び、−CO−OR(ただし、Rはアルキル基等である。)を含む構造を有するもの)をいう。ポリアミック酸は、加熱等によって、−CO−NH−のHと、−CO−OHのOHとが脱水して、環状の化学構造(−CO−N−CO−)を有するポリイミドとなる。
【0020】
[工程(b)]
次いで、得られたポリアミック酸を、脱水閉環することによりイミド化するが、この方法としては、脱水剤を用いる方法(化学イミド化)や、160℃〜350℃(溶液では160〜220℃、キャストフィルムでは300℃以上での処理が一般的)で熱処理する方法(熱イミド化)が挙げられる。
化学イミド化における脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等の酸無水物、もしくは相当する酸クロライド類、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等が挙げられる。なお、化学イミド化の際には、60〜120℃の温度で加熱することが好ましい。
熱イミド化の場合には、脱水反応で生じる水を系外に除去しながら行うことが好ましい。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いて水を共沸除去することができる。
また、イミド化の際には、必要に応じて、ピリジン、イソキノリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、1−メチルピペリジン、1−メチルピペラジン等の塩基触媒を用いることができる。上記脱水剤又は塩基触媒は、アシル化合物1モルに対し、それぞれ0.1〜8モルの範囲で用いることが好ましい。
イミド化の方法としては、より低温での加熱によってイミド化を行うことができることなどから、化学イミド化が好ましい。
なお、イミド化は、ポリアミック酸の少なくとも一部、好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは85モル%以上をイミド化するように行われる。
得られたポリアミック酸及び/又はポリイミドと有機溶媒とを含む溶液は、そのまま使用することもできるが、ポリイミド等を固体分として単離した後、有機溶媒に再溶解して用いることもできる。なお、再溶解する有機溶媒としては、上記有機溶媒と同様のものが挙げられる。ポリイミド等を単離する方法としては、ポリイミド等及び有機溶媒を含む溶液を、メタノール、イソプロピルエーテル等のポリイミドに対する貧溶媒に投じてポリイミド等を沈殿させ、濾過・洗浄・乾燥等によりポリイミド等を固体分として分離する方法が挙げられる。このような操作をすることにより、イミド化の際に使用した脱水触媒(イミド化触媒)の除去も図ることができる。
【0021】
本発明においては、ポリアミック酸とポリイミドの合計100モル%中、ポリイミドの割合は、85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。ポリイミドの割合が80モル%未満であると、フィルムの吸水率が高くなったり、耐久性が低下することがある。
得られたポリアミック酸及び/又はポリイミドは、ポリスチレン換算の重量平均分子量が40,000〜300,000、好ましくは60,000〜200,000である。
また、得られたポリアミック酸及び/又はポリイミドは、イミド化率が100モル%であると仮定した場合に、イミド基濃度が2.0〜4.5mmol/gであることが好ましく、2.5〜4.0mmol/gであることがより好ましく、3.0〜3.6mmol/gであることがさらに好ましい。得られたポリアミック酸及び/又はポリイミドが上記イミド基濃度を満たすことにより、低吸水性に特に優れたポリイミドフィルムを得ることができる。
【0022】
[工程(c)]
工程(c)は、ポリアミック酸及び/又はポリイミドと有機溶媒とを含む溶液を支持基板上に塗布して塗膜を形成する工程である。
上記支持基板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、SUS板等が挙げられる。
ポリイミド等及び有機溶媒を含む溶液を支持基板上に塗布する方法としては、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、ドクターブレードを用いる方法等を使用することができる。
塗膜の厚さは、特に限定されないが、例えば1〜250μmである。
【0023】
[工程(d)]
工程(d)は、上記塗膜から前記有機溶媒を蒸発させることにより除去し、フィルムを得る工程である。
具体的には、塗膜を加熱することにより、該塗膜中の有機溶媒を蒸発させて除去する。
上記加熱の条件は、有機溶媒が蒸発すればよく特に限定されないが、例えば60〜250℃で1〜5時間である。なお、加熱は二段階で行ってもよい。例えば、100℃で30分加熱した後、150℃で1時間加熱するなどである。また、必要に応じて、窒素雰囲気下、もしくは減圧下にて乾燥を行ってもよい。
本工程では、有機溶媒を除去することができればよく、イミド化を行う必要がないため、従来技術に比して低温でフィルムを得ることができる。そのため、光学部材を形成する他の部材が耐熱性の低いものであっても、該部材に直接上記ポリイミド等及び有機溶媒を含む溶液を塗布して、有機溶媒を蒸発除去することにより、フィルムを形成することができる。
得られたフィルムは、支持基板から剥離して、あるいは剥離せずにそのまま用いることができる。
【0024】
本発明のフィルムにおいては、ポリアミック酸とポリイミドの合計100モル%中、ポリイミドの割合は、85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。ポリイミドの割合が85モル%未満であると、フィルムの吸水率が高くなったり、耐久性が低下することがある。
本発明のフィルムは、厚みが1〜250μm、好ましくは5〜200μmである。また、本発明のフィルムを基材として使用する場合には、厚みが10〜150μmであることが特に好ましい。
本発明のフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が、200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。このようなガラス転移温度を有することにより、優れた耐熱性を得ることができる。
本発明のフィルムは、吸水率が、3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明のフィルムは、発光ダイオード周辺材料、太陽電池周辺材料、フラットディスプレー周辺材料、電子回路周辺材料に使用することができる。具体的には、耐熱透明フィルム、導電性透明フィルム等の光学部材に使用することができる。また、電子回路周辺材料としては、プリント配線基板用基板として使用することもでき、フレキシブルプリント配線用基板、リジットプリント配線用基板、光電子プリント配線用基板、COF(Chip on Film)用基板、TAB(Tape Automated Bonding)用基板を挙げることができる。プリント配線用基板として用いる場合には、例えば、配線用の銅層を設けることもできる。本発明のフィルムに銅層を設ける方法としては、ラミネート法、メタライジング法等を挙げることができる。ラミネート法の場合には、例えば、本発明のフィルムに銅箔を熱プレスすることで銅層が設けられたプリント配線用基板を製造することができる。メタライジング法の場合には、例えば、本発明のフィルムの金属との親和性を発現させるために表面改質を行った後に、蒸着法またはスパッタリング法によって、ポリイミドと結合するNi系の金属層と湿式電気めっきに必要なシード層を形成する。そして、湿式めっき法により所定の膜厚の銅層を設けることで、銅層が設けられたプリント配線用基板を製造することができる。
【0026】
また、工程(a)、(b)により得られた、ポリイミド等及び有機溶媒を含むポリイミド系溶液は、ポリイミド系樹脂組成物として、発光ダイオード周辺材料、太陽電池周辺材料、フラットディスプレー周辺材料、電子回路周辺材料等に用いることもできる。具体的には、封止剤、レンズ材、プリント配線基板形成用材料等に用いることができる。例えば、プリント配線基板形成用材料として用いる場合には、キャスティング法によりプリント配線用基板を製造することができる。具体的には、銅箔の上に前記ポリイミド系樹脂組成物を塗布した後に、熱処理することで、銅層が設けられたプリント配線用基板を製造することができる。
なお、前記ポリイミド系樹脂組成物には、共溶媒として、沸点が150℃以下の有機溶媒を使用することができる。該有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
これらの溶媒は一種単独で、あるいは2種以上混合して使用することができる。
なお、ポリイミド系樹脂組成物中のポリアミック酸及び/又はポリイミドの濃度は、反応液全量の5〜30質量%であることが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン5.46g(26.0mmol)と両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(信越化学製,X22−1660B,数平均分子量4,400)3.53g(0.8mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物6.00g(26.8mmol)を室温で加え、そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン2.6ml、無水酢酸7.3mlを加え、75℃で4時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量13.0g、収率92.6質量%)。
次いで、得られたポリマーをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に再溶解し、20質量%の樹脂溶液を得た。該樹脂溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基板上にドクターブレード(100μmギャップ)を用いて塗布し、100℃で30分、ついで150℃で60分乾燥してフィルムとした後、PET基板より剥離した。その後、フィルムをさらに150℃、減圧下で3時間乾燥して、膜厚20μmのフィルムを得た。
上記ポリマーについて、IR(KBr法)により構造分析を行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1776cm−1および1704cm−1であった。
また、上記ポリマーについて、下記の方法により、重量平均分子量、ガラス転移温度、イミド化率、イミド基濃度(イミド化率が100モル%であると仮定した場合の理論値)を求めた。
また、得られたフィルムについて、吸水率を下記の方法により測定した。
結果を表1に示す。
【0028】
(1)重量平均分子量
重量平均分子量は、TOSOH製HLC−8020型GPC装置を使用して測定した。溶媒には、臭化リチウム及び燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用い、測定温度40℃にて、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
(2)ガラス転移温度(Tg)
Rigaku社製8230型DSC測定装置を用いて、昇温速度を20℃/minとして測定した。
(3)イミド化率(閉環率)
ポリイミドの閉環率は、1H−NMRを使用して測定した。溶媒にはd−DMSOを用いた。未閉環のアミド基のN−Hのプロトンのピーク積分値と、脂環族ジアミン由来の−CH−(メチレン基)のプロトンのピーク積分値、または芳香族ジアミン由来の芳香環プロトンのピーク積分値の比率から算出した。
(4)イミド基濃度
イミド化率が100モル%であると仮定すると、得られたポリマー中の繰り返し単位の分子量は、(アシル化合物の分子量)+(ジアミンの分子量)−2HOで求められる。この繰り返し単位1つあたり、2つのイミド基を含むため、イミド基濃度(イミド化率が100モル%であると仮定した場合の理論値)は、下記式により求めた。
[イミド基濃度](単位:mmol/g)=2/{(アシル化合物の分子量)+(ジアミンの分子量)−2HO}×1000
(5)吸水率
得られたフィルムを3cm×4cmの大きさに3枚切り出し、減圧乾燥下180℃で8時間乾燥させた。フィルムの質量を測定した後、蒸留水に25℃で24時間フィルムを浸漬させた。浸漬後フィルム表面の水滴をふき取り、浸漬前後の質量変化から吸水率を算出した。
(6)残存溶媒量
得られたポリマーをTHF(テトラヒドロフラン)に再溶解し、20質量%の樹脂溶液を得た。該樹脂溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基板上にドクターブレード(250μmギャップ)を用いて塗布し、70℃で30分、ついで150℃で60分乾燥してフィルムとした後、PET基板より剥離した。その後、フィルムをさらに180℃、減圧下で1時間乾燥して、膜厚50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムをd−DMSOに溶解させ1H−NMRを使用して測定した。ポリマー骨格のプロトンのピーク積分値とTHFのプロトンのピーク積分値から残存溶媒量(単位:wt/wt %)を算出した。

[実施例2]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン5.15g(24.5mmol)と両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(信越化学製,X22−1660B,数平均分子量4,400)2.19g(0.5mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物7.65g(25.0mmol)を室温で加え、添加後に15分間120℃で攪拌し析出した塩を溶解させた。そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン2.5ml、無水酢酸6.9mlを加え、75℃で4時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量13.1g、収率93.1質量%)。
次いで、得られたポリマーに対して実施例1と同様に処理して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1774cm−1および1701cm−1であった。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン6.13g(29.1mmol)と信越化学製ジアミノシリコーンX22−1660B(数平均分子量4,400)2.62g(0.6mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に1−cis−2−cis−3−trans−4−trans−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物6.25g(29.7mmol)を室温で加え、添加後に15分間120℃で攪拌し析出した塩を溶解させた。そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン2.9ml、無水酢酸8.3mlを加え、75℃で4時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量12.7g、収率91.5質量%)。
次いで、得られたポリマーに対して実施例1と同様に処理して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1772cm−1および1703cm−1であった。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン5.25g(25.0mmol)と両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(信越化学製,X22−9409,数平均分子量1,300)1.71g(1.3mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物8.05g(26.3mmol)を室温で加え、添加後に15分間120℃で攪拌し析出した塩を溶解させた。そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン2.5ml、無水酢酸7.0mlを加え、75℃で4時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量13.0g、収率92.6質量%)。
次いで、得られたポリマーに対して実施例1と同様に処理して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1773cm−1および1702cm−1であった。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン5.11g(24.3mmol)と両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(信越化学製,X22−161A,数平均分子量1,600)2.05g(1.3mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物7.84g(25.6mmol)を室温で加え、添加後に15分間120℃で攪拌し析出した塩を溶解させた。そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン2.4ml、無水酢酸6.9mlを加え、75℃で4時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量13.1g、収率93.3質量%)。
次いで、得られたポリマーに対して実施例1と同様に処理して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1772cm−1および1702cm−1であった。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0029】
[比較例1]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン7.26g(34.5mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物7.74g(34.5mmol)を室温で加え、添加後に15分間120℃で攪拌し析出した塩を溶解させた。そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン3.5ml、無水酢酸9.8mlを加え、75℃で3時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量12.8g、収率93.1質量%)。
次いで、得られたポリマーに対して実施例1と同様に処理して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1775cm−1および1705cm−1であった。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0030】
[比較例2]
比較例1と同様に1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の代わりに3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物8.89g(29.0mmol)を用い、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、N−メチルピペリジン、及び無水酢酸の各々の配合量を、6.11g(29.0mmol)、2.9ml、及び8.2mlに変更したこと以外は実施例1と同様にして、白色粉末からなるポリマー(収量13.2g、収率94.6質量%)及びフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を比較例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1773cm−1および1701cm−1であった。
また、得られたポリマー及びフィルムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。
【0031】
[比較例3]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン7.50g(35.7mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に1−cis−2−cis−3−trans−4−trans−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物7.50g(35.7mmol)を室温で加え、添加後に15分間120℃で攪拌し析出した塩を溶解させた。そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン2.5ml、無水酢酸6.8mlを加え、75℃で3時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量12.8g、収率93.5質量%)。
次いで、得られたポリマーに対して実施例1と同様に処理して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1773cm−1および1704cm−1であった(図5参照)。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0032】
[比較例4]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン3.44g(16.3mmol)と両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(信越化学製,PAME,数平均分子量260)4.25g(16.3mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物7.32g(32.7mmol)を室温で加え、添加後に15分間120℃で攪拌し析出した塩を溶解させた。そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン1.6ml、無水酢酸4.6mlを加え、75℃で4時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量12.5g、収率90.4質量%)。
次いで、得られたポリマーに対して実施例1と同様に処理して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1777cm−1および1708cm−1であった。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(a−1)、(a−2)成分を含むジアミン化合物と(B)脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物
を反応させて得られることを特徴とするポリアミック酸及び/又はポリイミド樹脂からなるポリイミド系材料。
(a−1)アミン価により計算した数平均分子量500〜10,000のシリコーンジアミン 10〜60質量%
(a−2)脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンから選ばれる少なくとも一種の化合物を30〜90質量%
(ただし、ジアミン化合物の全量を100質量%とする。)
【請求項2】
上記シリコーンジアミンが下記式(1)で表される化合物である、請求項1に記載のポリイミド系材料。
【化1】

(式中、複数あるRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基、アルコキシ基を示し、複数あるRは、各々独立に、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、またはフェニレン基を示し、nは1〜100の整数を表す。)
【請求項3】
アミン価により計算したシリコーンジアミンの数平均分子量が3,000〜8,000である、請求項1または2に記載のポリイミド系材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド系材料、及び有機溶媒を含有するポリイミド系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド系材料からなるフィルム。
【請求項6】
光学部材用である請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
プリント配線用基板用である請求項5に記載のフィルム。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法であって、上記(A)シリコーンジアミンと上記(B)脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸及び/又はポリイミドと、有機溶媒とを含む溶液を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜から前記溶媒を蒸発させることにより除去してフィルムを得る工程とを含む、フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2010−254947(P2010−254947A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224205(P2009−224205)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】