説明

ポリイミド系樹脂及び該ポリイミド系樹脂の製造方法並びに該ポリイミド系樹脂を用いた接着剤組成物、接着剤シート、印刷用インキ組成物及びプリント回路基板

【課題】 耐熱性と低温接着性及び絶縁信頼性を兼ね揃えた接着剤組成物、特にプリント回路板に有用な接着剤組成物及びそのシート、印刷用インキ、さらにはこれらを用いたプリント回路版を提供することにある。
【解決手段】末端にカルボキシル基または水酸基を有する脂肪族ポリエステル、ブタジエン系ゴム及びダイマー酸の群より選ばれた1種以上が共重合されたポリイミド系樹脂にラジカル重合性単量体がグラフト重合され、酸価が30〜300eq/10gであるポイリイミ
ド系樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なポリイミド系樹脂好ましくはポリアミドイミド樹脂、及び該ポリイミド系樹脂の製造方法並びに該ポリイミド系樹脂を用いた接着剤組成物、接着剤シート、印刷用インキ組成物及びプリント回路基板に関する。更に好ましくは低沸点溶剤に溶解するため作業性に優れる耐熱性接着剤組成物、接着剤シート、印刷用インキ組成物、及びこれらを用いたプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐熱性接着剤としてはポリイミド系樹脂やエポキシ樹脂等を主成分とする材料が用いられてきたが、これらの樹脂を用いるに於いていくつかの問題があった。
その一つに耐熱性と低温接着性の両立が困難であったことが挙げられる。即ち、従来、ポリイミド系接着剤は耐熱性に優れるが故に高温で接着させる強力な加熱設備が必要であり、一方、低温で接着できるエポキシ系接着剤は耐熱性に劣るという問題があった。
上記の低温接着性と耐熱性の両立についての具体的な方法がいくつか提案されている。例えば、耐熱性エポキシ樹脂、マレイミド樹脂を用いるなどの方法があるが、これらの樹脂はその硬化密度の高さから脆いため、用途が限られる。また、特許文献1には特定構造を有するポリエーテルイミドにエポキシ樹脂を配合させて低温接着性と耐熱性を両立させることが示されているが、その内容によれば接着時間を数分にしようとすれば200℃の接着温度が必要であり十分な低温接着性とは言い難い。また、ポリアミドイミド系の耐熱接着剤も提案されており、たとえば特許文献2、特許文献3にはアクリロニトリルーブタジエンが共重合されたポリアミドイミド及びこれを用いた半導体用接着剤が、また特許文献4、特許文献5にはダイマー酸が共重合されたポリアミドイミド及びこれを用いた半導体用接着剤が提案されているが、前者は低温接着性や耐ハンダ性は優れるが、高温高湿下で銅箔の回路部分がデンドライトを生成してマイグレーションを起こしやすいという欠点があり、後者は樹脂の柔軟性に欠けるため接着性が不足するなどの欠点があった。
更に、特許文献6にはポリアミドイミド樹脂にアクリルモノマーをグラフト重合させる発明が提案されているが、当該特許は水分散体を得るための内容であり、本発明の目的とするプリント基板用接着剤としては耐水性やこれに基づく絶縁信頼性の点で不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−99280
【特許文献2】特開平11―021455
【特許文献3】特開2001−011421
【特許文献4】特開平11―021454
【特許文献5】特開2001−011420
【特許文献6】特開2005−213397
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐熱性と低温接着性及び絶縁信頼性を兼ね揃えたポリイミド系樹脂、該樹脂を用いた接着剤組成物、特にプリント回路板に有用な接着剤組成物及びそのシート、印刷用インキ、さらにはこれらを用いたプリント回路基版を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、
(1)
末端にカルボキシル基または水酸基を有する脂肪族ポリエステル、ブタジエン系ゴム及びダイマー酸の群より選ばれた1種以上が共重合されたポリイミド系樹脂にラジカル重合性単量体がグラフト重合され、酸価が30〜300eq/10gであるポイリイミド系樹脂。
(2)
ポリイミド系樹脂がアミン成分として、イソホロン及び/またはジシクロヘキシルメタン
残基を有することを特徴とする(1)に記載のポリイミド系樹脂。
(3)
ポリイミド系樹脂が酸成分として、シクロヘキサン残基を有することを特徴とする(1)又は(2)に記載のポリイミド系樹脂。
(4)
全酸成分を100モル%とした場合に、重合性不飽和基含有ジカルボン酸を0.5〜20モル%共重合したポリイミド系樹脂とラジカル重合性単量体とを、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン、エタノール、ブタノール、トルエン及びキシレンの群より選ばれた1種以上の溶剤中で反応させることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリイミド系樹脂の製造方法。
(5)
(1)〜(3)のいずれかに記載のポリイミド系樹脂に多官能エポキシ、メラミン及びイソシアネート化合物の群より選ばれた1種以上が配合された接着剤組成物。
(6)
(5)に記載の接着剤組成物より得られる接着剤シート。
(7)
(1)〜(3)のいずれかに記載のポリイミド系樹脂に多官能エポキシ、メラミン及びイソシアネート化合物の群より選ばれた1種以上と、無機または有機微粒子とを混合した印刷用インキ組成物。
(8)
(5)に記載の接着剤組成物を用いたプリント回路基板。
に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリイミド系樹脂は、ラジカル重合性単量体てグラフト重合されており 、柔軟性、密着性、強靭性、自己架橋性、耐水性が付与でき、ポリイミド系樹脂本来の耐熱性や耐薬品性などの特徴も併せ持つことができる。
このため、コーテイング剤、塗料、接着剤、スクリーン印刷用インク等に利用された場合に、耐水性、耐薬品性、耐熱性や低温接着性、高温高湿下での耐マイグレーション性等の絶縁信頼性に優れた塗膜を形成させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は耐熱性及び低温接着性及び絶縁信頼性等に優れたポリイミド系樹脂及び該ポリイミド系樹脂の製造方法並びに該ポリイミド系樹脂を用いた接着剤組成物、接着剤シート、印刷インキ組成物及びプリント回路板に関する。
本発明に用いられるポリイミド系樹脂のうち、特に好ましいのはポリアミドイミド系樹脂であり、これらは酸クロリド法又はイソシアネート法等公知の方法で製造することができる。
【0008】
本発明のポリイミド系樹脂は、末端にカルボキシル基または水酸基を有する脂肪族ポリエステル、ブタジエン系ゴム及びダイマー酸の群より選ばれた1種以上が共重合されたポリイミド系樹脂にラジカル重合性単量体がグラフト重合され、酸価が30〜300eq/10g
であるポイリイミド系樹脂である。グラフト重合された後のポリイミド系樹脂の酸価は3
0〜300eq/10gであり、好ましくは110〜300eq/10g、より好ましくは120〜220eq/10gである。酸価が300を超えると耐マイグレーション性の点で望ましくなく、30未満では後に架橋剤を混合した場合に硬化が進まず耐半田性、耐マイグレーション性の点で望ましくない。
本発明のポリイミド系樹脂は酸成分の一部に末端がカルボキシル基または水酸基を有する脂肪族ポリエステル、ブタジエン系ゴム及びダイマー酸の群より選ばれた1種以上が共重合されたポリイミド系樹脂に、ラジカル重合性単量体がグラフト重合されたことにより、明確な理由は定かではないが、従来になく接着性が改善され、さらに酸価を上記範囲にすることで耐マイグレーション性が改善されることを見出した。上記ポリエステルやブタジエン系ゴム、ダイマー酸が共重合されていることによってラジカル重合性単量体がグラフト重合されるときにポリイミド系樹脂に相溶しやすく、所謂相溶化剤の役割を果たすものと考えられ、均一な膜形成が可能となる。
【0009】
本発明で用いられるブタジエン系ゴムは、例えば、末端が水酸基またはカルボキシル基のポリブタジエン、ポリアクリロニトリルーブタジエン、ポリスチレンーブタジエンなどであり、宇部興産のCTB、CTBNシリーズ等を好適に用いることができる。
脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸とジオールとから、また環状のラクトン類を開環重合して得られるものでもよい。脂肪族ジカルボン酸としては特に限定されず、具体的にはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げらる。またジオールとしても特に限定されず、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。さらに、環状のラクトン類を開環重合して得られるポリラクトンであってもよい。具体的には、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0010】
この場合、脂肪族ポリエステルやブタジエン系ゴムの数平均分子量は500以上が好ましく、より好ましくは1000以上である。これら分子量の上限は特に制限はないが、ポリイミド系樹脂との相溶性、反応性などから30000以下が好ましく、より好ましくは10000以下である。数平均分子量が500未満ではポリイミド系樹脂とグラフトポリマーとの相溶性が不十分で得られる膜の透明性が低下する傾向にあり、均一な膜の形成が困難となる恐れがある。
脂肪族ポリエステル、ブタジエン系ゴムやダイマー酸の共重合量はポリイミド系樹脂の構造、目的とする特性やグラフト重合するラジカル重合性単量体の種類や量によって選択されるが、通常ポリイミド系樹脂全体に対して1〜70重量%共重合されていることが好ましく、より好ましくは3〜30重量%である。1重量%未満では相溶性を向上させることが困難な傾向にあり、70重量%を超えると耐熱性や接着性が低下する傾向にある。
【0011】
本発明のポリイミド系樹脂の製造に用いられる酸性分としては、上記の脂肪族ポリエステルやブタジエン系ゴム、ダイマー酸以外にはトリメリット酸及びこれの無水物、塩化物が主体に用いられ、これら以外にはピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチテングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート等のテトラカルボン酸及びこれらの無水物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’’’’−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族、脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられ、これらの中では反応性、耐熱性、接着性などの点からトリメリット酸無水物が好ましく、その一部をジカルボキシポリ(アクリロニトリルーブタジエン)、ジカルボキシポリブタジエン、脂肪族ポリエステル等で置き換えることが望ましい。低沸点溶剤への溶解性向上、耐熱性の向上の観点から、酸成分としてシクロヘキサン残基を有することが好ましい。
【0012】
ポリイミド系樹脂の製造に用いられるジアミン(ジイソシアネート)としてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、イソホロンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、4,4’’’’−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメエタン、4,4’’’’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミン及びこれらのジイソシアネートが挙げられ、これらの中では溶解性、透明性の点から4,4’−ジアミノジフェニルメタン(ジイソシアネート)、イソホロンジアミン(ジイソシアネート)、4,4’’’’−ジシクロヘキシルメタンジアミン(ジイソシアネート)が好ましい。
【0013】
本発明のポリイミド系樹脂は前記酸成分、アミン(ジイソシアネート)成分以外にジオール成分を共重合することができる。ジオール成分としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、テトレメチレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルジオール、カーボネートジオール等が挙げられ、これらの中では上記に示したとおり相溶性、接着性の点からポリエステルジオール、特に脂肪族ポリエステルジオールが好ましい。
【0014】
本発明のポリイミド系樹脂にラジカル重合性単量体をグラフトさせるために、ポリイミド系樹脂中にラジカル重合性成分を共重合又は変成させることがグラフト効率を高める上で好ましい。これらの共重合単量体としては、フマル酸、マレイン酸等の重合性不飽和基含有ジカルボン酸が挙げられ、変成剤としてはアクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、イタコン酸、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、無水マレイン酸等が挙げられ、これらの中では共重合単量体としてはフマル酸が、変成剤としてはグリシジルメタクリレートが反応性等の点で好ましい。
【0015】
上記ラジカル重合性成分または変成剤の共重合量は全酸成分を100モル%とした場合、0.5〜20モル%共重合することが好ましく、より好ましくは3〜10モル%であり、さらに好ましくは4〜7モル%である。0.5モル%未満ではグラフト重合が十分になされない恐れがあり、ホモポリマーが生成しやすくなる傾向にある。また20モル%を超えるとポリイミド系樹脂の特性が十分発揮されない恐れがあり、グラフト重合時にゲル化しやすくなるなど好ましくない傾向にある。
【0016】
本発明のポリイミド系樹脂はN,N’’’’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルー2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶剤やイソホロン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン類、キシレンなどの芳香族炭化水素類の1種または2種以上の溶剤中、60℃〜200℃に加熱しながら攪拌することによって製造することができる。また、反応を促進するためにフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属類、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン等のアミン類やジブチル錫ジラウレート等の触媒を用いることができる。
【0017】
このようにして製造されたポリイミド系樹脂は、本発明の用途からガラス転移温度は50℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上であり、対数粘度は0.1dl/g以上が好ましく、より好ましくは0.2dl/g以上である。ガラス転移温度が50℃未満ではポリイミド系樹脂本来の耐熱性が悪くなり、対数粘度が0.1g/dl未満では塗膜が脆くなり実用的でなくなる恐れがある。
【0018】
次に、本発明のポリイミド系樹脂はラジカル重合性単量体でグラフト重合される。このグラフト重合は前記ポリイミド系樹脂の重合溶液中で行うことができるが、前記重合溶液を他の溶剤に変えて用いることもできる。前記ポリイミド系重合溶液を他の溶剤に変える場合、前記ポリイミド系樹脂重合溶液を水やアルコール等ポリイミド系樹脂と混和しない溶剤中に投入して固化させ、洗浄、乾燥した樹脂を他の溶剤に溶解して用いられる。これらの溶剤としてはメタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、カルビトール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類等の1種又は2種以上の混合溶剤を用いることができる。特に、γ―ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン、エタノール、ブタノール、トルエン及びキシレンの群より選ばれた1種以上の溶剤中で反応させることが好ましい。
【0019】
ポリイミド系樹脂にグラフトさせるラジカル重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、等のカルボキシル基含有単量体、アクリル酸、メタクリル酸のエステルとしてアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等、更にアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ジアセトンアクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルエーテル類、N−ビニルピロリドン、スチレン、α―メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン等を例示することができる。
また、これらの単官能不飽和単量体の一部を多官能不飽和単量体に置き換えることができる。例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0020】
上記のラジカル重合性単量体のうち、柔軟性、密着性、耐水性の観点から、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアルキル長の比較的長い
ものを用いることが好ましい。
【0021】
上記ラジカル重合性単量体は、ポリイミド系樹脂全体の酸価が30〜300eq/10gとな
るように、その種類を選択することが望ましい。
【0022】
ポリイミド系樹脂のグラフト重合体は、前記、ポリイミド系樹脂中の不飽和二重結合に、ラジカル重合性単量体をグラフト重合させることによって効率的に得られる。
本発明では、ポリイミド系樹脂を有機溶剤に溶解させた溶液に、ラジカル開始剤とラジカル重合性単量体及び必要によってはチオール化合物のような連鎖移動剤を加えて加熱、攪拌することで得られる。ラジカル開始剤とラジカル重合性単量体は同時に添加してグラフト重合を行っても良いし、別々に添加しても構わない。また、ラジカル重合性単量体は時間をかけて滴下しながら添加しても構わない。
【0023】
更に本発明の実施の態様を説明すると、本発明ではまず、ポリイミド系樹脂の重合溶液又は再溶解した溶液を調整する。この場合、使用する溶剤としてはポリイミド系樹脂を溶解できるものであれば特に制限はないが、沸点が低く乾燥しやすい溶剤が好ましく、固形分濃度は20〜70重量%が好ましい。該ポリイミド系樹脂溶液にラジカル重合開始剤とラジカル重合性単量体を加えて加熱、攪拌を行うことが好ましい。ラジカル重合性単量体の添加量は、全固形分中、5〜60重量%が好ましく、より好ましくは7〜45重量%であり、さらに好ましくは10〜40重量%である。
ラジカル重合性単量体の添加量が60重量%を超えると、ポリイミド系樹脂本来の耐熱性が損なわれ、5%重量未満では良好な接着性が得られにくくなる傾向にある。
【0024】
ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、通常知られた有機過酸化物や有機アゾ化合物が用いることができ、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、2,2’’’’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等を例示することができる。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性単量体に対して0.2%以上が好ましく、より好ましくは0.5%以上である。
【0025】
ポリイミド系樹脂溶液にラジカル重合開始剤とラジカル重合性単量体を含む溶液は通常、50〜120℃で攪拌しながらグラフト重合することができる。
本発明のポリイミド系樹脂グラフト重合体は、所望のポリイミド系樹脂−ラジカル重合性単量体混合物間のグラフト重合体の他に、ポリイミド系樹脂単体やグラフト重合されなかったラジカル重合性単量体自身の重合体も含まれるが、本発明の目的を達成することに支障がない範囲でこれらの非グラフト重合体が含まれるものも意味する。
【0026】
また、本発明のグラフト重合されたポリイミド系樹脂には必要に応じて難燃剤、顔料、染料、消泡剤、帯電防止剤やレベリング剤なども配合することができる。
【0027】
本発明のグラフト重合されたポリイミド系樹脂は、塗料、インキ、コーテイング剤、接着剤などのビヒクルとして、或いは、繊維、フィルム、紙などの加工剤として用いることができるが特に、プリント回路板用接着剤、接着シートとして有用である。
【0028】
また、本発明のグラフト重合されたポリイミド系樹脂はそのままでも使用できるが、架橋剤を配合することで更に高度の耐水性、密着性、耐熱性を付与することができる。
架橋剤としてはフェノールーホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂、多官能エポキシ樹脂、メラミンーホルムアルデヒド樹脂、多官能イソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0029】
本発明の接着剤組成物は、上記のようにして合成されたグラフト重合されたポリイミド系樹脂に、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物及びメラミン化合物からなる群より選ばれた1種以上の化合物を配合することで更に高度の耐水性、密着性、耐熱性をさらに付与することができる。
本発明のポリイミド系樹脂に組み合わせる多官能エポキシ化合物としては特に制限はなく、ビスフェノールAジグリシジルエーテル類、フェノールノボラック型エポキシ化合物、アミン型エポキシ化合物などが挙げられる。ポリイミド系樹脂との相溶性、架橋密度の観点から、フェノールノボラック型エポキシ化合物が特に好ましい。
また、多官能イソシアネート化合物としても制限はなく、トリメチロールプロパンへのトリレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体などが挙げられる。密着性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体が特に好ましい。
メラミン化合物としてはトリメチロールメラミンのメチルエーテル、ブチルエーテルなどが挙げられる。
これらの多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物等の架橋剤は、ポリイミド系樹脂100重量部に対して、3〜200重量部の範囲で配合することが好ましく、より好ましくは10〜100重量部の範囲で配合するのが好ましい。架橋剤の配合量が3重量部未満では加湿ハンダなどの耐熱性や耐薬品性が不足する場合があり、また200重量部を超えると膜が硬く、脆くなるため密着性が逆に低下する場合がある。
【0030】
また、これらの架橋剤には各々の硬化助剤や触媒として、例えばエポキシ化合物の場合には、多価カルボン酸やそれらの無水物、イミダゾール化合物、アミン系触媒を、イソシアネート化合物の場合にはジブチルスズジラウレートなどの金属化合物を、またメラミン化合物の場合にはp−トルエンスルホン酸などの触媒を用いることができる。
【0031】
本発明のポリイミド系樹脂及びこれらに多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物等の架橋剤を配合した組成物を接着剤やコーテイング剤として用いる場合、難燃性を付与するために有機または無機のリン化合物を配合することができる。リン化合物としては特に制限はなく、赤燐、各種燐酸ナトリウム、燐酸マグネシウム、燐酸カルシウムなどの無機燐酸塩、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、リン酸エステル縮合物などの燐酸エステルやホスファゼン化合物などが挙げられ、特に、耐湿性の観点からホスファゼン化合物が特に好ましい。接着剤組成物固形分に対して、リン含有量が1重量%以上3重量以下となるように、リン化合物を添加することができる。1重量未満では難燃性の効果が得られにくい傾向にあり、3重量%を超えると過剰なだけでなく、樹脂の密着性、耐湿性が落ちる傾向にある。
【0032】
本発明のポリイミド系樹脂及び多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物等の架橋剤を配合した組成物の用途は特に制限されないが、最も有用な用途は、プリント回路板関連用接着剤、接着剤シート、回路保護の絶縁インキである。具体的にはポリイミドフィルムやポリエステルフィルム、ガラスーエポキシシート、フェノール樹脂シート等の絶縁基材に銅箔やアルミ箔等を張り合わせる接着剤、カバーレイフィルム用接着剤、カバーレイと同様、回路を保護する絶縁インキ、回路基板の一部を補強板で強化する場合の接着剤、回路基板に直接半導体チップを搭載する場合の接着剤等が挙げられる。
【0033】
本発明の耐熱性接着剤組成物には、本発明の内容を損なわない範囲で無機、有機の顔料、染料、帯電防止剤、レベリング剤、リン化合物以外の難燃剤としてシリコーン化合物、水酸化アルミニウム、尿素化合物など及びポリイミド系以外の樹脂、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等を適宜配合することができる。
【0034】
本発明の耐熱性接着剤の使用方法の一つとして、ポリイミド系樹脂溶液に架橋剤や添加剤などを配合した溶液を被着体に塗布、乾燥後もう一方の被着体と重ね合わせて加熱ロール又はヒートプレスにより圧着させ、必要により加熱硬化処理を行うことが挙げられる。
この場合、接着剤層中に溶剤が残ると接着加工時に発砲したり、耐熱性そのものが低下して好ましくない結果になる。上記、ポリイミド系樹脂の製造で示したように、高沸点の重合溶剤をアルコール、芳香族炭化水素、エーテル、ケトン等の低沸点溶剤に置き換えたものを使用するのが好ましい。
【0035】
<印刷用インキ組成物>
本発明のポリイミド系樹脂を印刷用インキ組成物として用いる場合は、ポリイミド系樹脂及び架橋剤の混合溶液に、酸化ケイ素や硫酸カルシウムなどの無機粒子及び/又は各種有機の微粒子をポリイミド系樹脂及び前記架橋剤の混合溶液に対して0.5〜10重量%配合分散させることが好ましく、より好ましくは1〜5重量%配合分散させ、BH型粘度計の回転数4rpm/20rpm、25℃での粘度比で表すチキソ指数が1.2以上3.0以下にして、好ましくはシリコーン系またはアクリル系の消泡剤やレベリング剤をポリイミド系樹脂溶液及び前記架橋剤の混合に対して0.5〜5重量%配合して用いることができる。
【0036】
<接着剤シート>
接着剤シートとは、本発明の接着剤組成物を接着剤層とし、かつ少なくとも1層以上の剥離可能な保護フィルムを有する構成のものをいう。例えば、保護フィルム層/接着剤層の
2層構成、あるいは、保護フィルム層/接着剤層/保護フィルムの3層構成がこれに該当する。ここでいう保護フィルム層とは、接着剤層の形態を損なうことなく剥離できれば特に限定されないが、ポリプロピレンフィルムやポリエステルフィルム、シリコーンやワックス処理したポリエステルフィルムや紙等が挙げられる。また、金属、セラミックス等用いることが可能であり、表面の絶縁性、耐環境性の目的で保護のみならず、放熱、電磁シールド、補強、識別などの新たな機能を付与できる利点がある。
本発明の耐熱性接着剤組成物溶液をポリプロピレンフィルムやポリエステルフィルム、シリコーンやワックス処理したポリエステルフィルムや紙等の離型基材に塗布、乾燥して、好ましくは上記のカバーレイフィルムと同様な方法で半硬化した状態の接着剤フィルムやシートを2種類の被着体に挟み込み、加熱ロールやヒートプレスで加熱圧着、必要により硬化させることが挙げられる。
この場合も塗布法と同様、残溶剤のないシートを得るには低沸点溶剤に溶解したものを使用するのが好ましい。
接着剤シートの厚さは、用途に応じて適宜選択すればよいが、シートの製造のしやすさや接着の作業性の点から、5μm以上であるのが好ましく、10μm以上であるのがより好ましい。また、シートの製造のしやすさや製造コストの点から、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0037】
<プリント回路基板>
本発明の接着剤組成物は、プリント回路基板のために接着剤として用いることができる。具体的には、ポリイミドフィルムやポリエステルフィルム、ガラスーエポキシシート、フェノール樹脂シートの絶縁基材に銅箔やアルミ箔等を張り合わせる接着剤、カバーレイフィルム用接着剤、回路基板の一部を補強板で強化する場合の接着剤、回路基板に直接半導体チップを搭載する場合の接着剤などが挙げられる。
銅箔には、プリント回路基板に従来用いられている圧延銅箔、電解銅箔を用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
尚、実施例中の測定値は以下の方法で測定した値である。
1.ガラス転移温度
接着剤溶液をポリプロピレンフィルムに乾燥膜厚が約30μmとなるように塗布、乾燥した後ポリプロピレンフィルムから剥離したフィルムをアイテ計測制御(株)社製動的粘弾性測定装置を用い、110Hz周波数で測定を行い、貯蔵弾性率の変曲点から求めた。
・ 対数粘度
乾燥ポリマー0.5gを100mlのNMPに溶解した溶液を30℃でウベローデ粘度管を用いて測定した。
・ 酸価
ポリマー0.4gをDMF20mlに溶解した溶液に、チモールフタレイン試液2 〜3滴、及びナトリウムメトキシド0.568gをメタノール100mlに溶解させた溶液を滴下し、色の変化から
滴定して求めた。
【0039】
<ポリアミドイミド樹脂Aの合成>
冷却器、窒素導入管、攪拌機を備えたフラスコに、トリメリット酸無水物(TMA)0.9モル、フマル酸0.05モル、ジカルボキシポリ(アクリロニトリルーブタジエン)(宇部興産製CTBN1300×13)0.05モル、ジフェニルメタンー4,4’―ジイソシアネート(MDI)1モル、フッ化カリウム0.02モルを固形分濃度が30%となるようにN−メチルー2−ピロリドン(NMP)と共に仕込み、100℃で2時間、180℃で5時間反応させた後、80℃まで冷却した。得られたポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.55dl/g、ガラス転移温度は205℃であった。
冷却器と撹拌機を備えたフラスコにこのポリアミドイミド樹脂溶液100gを仕込み、80℃に加温、撹拌しながら、アクリル酸エチル10g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.6g、1−オクタンチオールエステル化物0.06gをNMP12gに溶解した溶液を60分かけて滴下しながら加えグラフと重合反応を行った。酸価は126eq/10gであった。
【0040】
<ポリアミドイミド樹脂Bの合成>
前記と同じ装置を用いて、TMA0.4モル、1,4シクロヘキサンジカルボン酸0.4モル、フマル酸0.05モル、ダイマー酸0.15モル、フッ化カリウム0.02モル、IPDI1.02モルを固形分濃度が50%となるようにγ―ブチロラクトンと共に仕込み、180℃で3時間反応させた後、冷却しながらNMPを加え固形分濃度が20%となるように希釈した。この溶液を水中に投入して白色固形樹脂を得た。このポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.53dl/g、ガラス転移温度は215℃であった。更に、この固形樹脂を固形分が20%となるようにトルエンとエタノールの等量混合溶剤に溶解した溶液100gにアクリル酸ブチル6.7g、AIBN0.4g、1−オクタンチオールエステル0.04gとエタノールとトルエンの等量混合溶剤8gの混合溶液を70℃に加温、撹拌しながら60分かけて滴下してアクリルグフトPAIを作成した。酸価は161eq/10gであった。
【0041】
<ポリアミドイミド樹脂Cの合成>
前記と同じ装置を用いて、TMA0.85モル、マレイン酸0.05モル、ポリカプロラクトン(ダイセル社製プラクセル220)0.1モル、とMDI0.525モル、2,4−トリレンジイソシアネート0.525モル、フッ化カリウム0.02モルを固形分濃度が50%となるようにシクロペンタノンと共に仕込み110℃で5時間反応させた後、冷却しながら固形分濃度が30%となるようにシクロペンタノンで希釈した。このポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.35dl/g、ガラス転移温度は135℃であった。
このポリアミドイミド樹脂溶液を用いて、ポリアミドイミド樹脂Aと同じ条件でアクリル酸エチルをグラフト重合した。酸価は218eq/10gであった。
【0042】
<ポリアミドイミド樹脂Dの合成>
前記と同じ装置を用いて、TMA0.65モル、バイロン220(東洋紡績(株)製 分子量2000のポリエステルジオール)0.3モル、フマル酸0.05モルとIPDI1.02モル、フッ化カリウム0.02モルを固形分濃度が50%となるようにγ−ブチロラクトンと共に仕込み、180℃で5時間反応させた後、冷却しながら固形分濃度が25%となるようにNMPで希釈した。この溶液を水中に投入して白色固形樹脂を得た。このポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.38dl/g、ガラス転移温度は125℃であった。更にこの固形樹脂を固形分濃度が25%となるようにテトラヒドロフランに溶解した。
この樹脂溶液100gを65℃に加温、撹拌して、ブチルアクリレート8.3g、AIBN0.5g、1−オクタンチオールエステル0.05gを10gのテトラヒドロフランに溶解した溶液を60分かけて滴下反応させた。酸価は205eq/10gであった。
【0043】
<ポリアミドイミド樹脂Fの合成>
前記と同じ装置を用いて、TMA1モル、ジフェニルメタンー4,4’−ジイソシアネート1モルを固形分濃度が20%となるようにNMPと共に仕込み、120℃で1時間、180℃で3時間反応させた。得られたポリマーの対数粘度は0.80dl/gであった。酸価は98eq/10gであった。
【0044】
<ポリアミドイミド樹脂Gの合成>
前記と同じ装置を用いて、TMA1モル、IPDI1モル、フッ化カリウム0.02モルを固形分濃度が50%となるようにγ―ブチロラクトンと共に仕込み、180℃で5時間反応させた後、冷却しながら固形分濃度が20%となるようにNMPで希釈した。この溶液を水中に投入して白色固体樹脂を得た。このポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.28dl/g、ガラス転移温度は290℃であった。この白色固形樹脂を固形分濃度が25%となるようにテトラヒドロフランに溶解した。酸価は308eq/10gであった。
【0045】
<ポリアミドイミド樹脂Iの合成>
前記と同じ装置を用いて、TMA0.9モル、フマル酸0.1モル、IPDI1.02モルを固形分濃度が50%となるようにγーブチロラクトンと共に仕込み、180℃で5時
間反応させた後、冷却しながらシクロヘキサノンで固形分濃度が25%となるように希釈した。得られたポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.35dl/g、ガラス転移温度は277℃であった。このポリアミドイミド樹脂溶液250gを60℃にしてアクリル酸、10.67g、エチルアクリレート6g、アゾビスイソブチロラクトン1gと1−オクタンチオールエステル化合物0.3gをシクロヘキサノン20gに溶解した溶液を0.2ml/分の速度で滴下、グラフト反応を行った。酸価は2780eq/10gであった。
【0046】
<ポリアミドイミド樹脂Xの合成>
前記と同じ装置を用いて、TMA0.87モル、フマル酸0.05モル、ジカルボキシポリ(アクリロニトリルーブタジエン)(宇部興産製CTBN1300×13)が0.03モル、ジメチロールブタン酸0.05モル、ジフェニルメタンー4,4’―ジイソシアネート(MDI)1モルを固形分濃度が50%となるようにN,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)と共に仕込み、60℃で2時間反応させた後、130℃で6時間更に反応させた。その後、固形分濃度が30%となるようにDMAcで希釈を行った。得られたポリアミドイミド樹脂の対数粘度は0.58dl/g、ガラス転移温度は220℃であった。このポリアミドイミド樹脂を用いてポリアミドイミド樹脂Aと同じ条件でアクリル酸エチルをグラフト重合させた。酸価は290eq/106gであった。
【0047】
<ポリアミドイミド樹脂Yの合成>
前記と同じ装置を用いて、TMA0.93モル、フマル酸0.05モル、ジカルボキシポリ(アクリロニトリルーブタジエン)(宇部興産製CTBN1300×13)が0.02モル、ジフェニルメタンー4,4’―ジイソシアネート(MDI)1.02モルを固形分濃度が30%となるようにDMAcと共に仕込み、100℃で2時間、150℃で5時間反応させた。得られたポリアミドイミド樹脂の対数粘度は1.15dl/g、ガラス転移温度は235℃であった。このポリアミドイミド樹脂を用いてポリアミドイミド樹脂Aと同じ条件でアクリル酸エチルをグラフト重合させた。酸価は34eq/106gであった。
【0048】
<接着剤組成物の製造例―1>
上記で製造したポリアミドイミド樹脂B,D溶液100gにフェノールノボラック型エポキシ化合物(ジャパンエポキシ製エピコート152)を3g配合して接着剤組成物b,dとした。
【0049】
<接着剤組成物の製造例−2>
ポリアミドイミド樹脂B溶液100gに3官能イソシアネート化合物コロネートEH(日本ポリウレタン製)3g配合して接着剤組成物b’とした。
【0050】
<接着シートの製造例>
上記接着剤組成物b,dを50μmのポリプロピレンフィルムに塗布して、60℃で5分、130℃で10分乾燥した後剥離して膜厚20μmの接着シートb’’,d’’を得た。
【0051】
<実施例1〜3:ラミネーション例−1>
接着剤組成物b,d,b’を12.5μmのポリイミドフィルムに間隙100μmで塗布、60℃で5分、130℃で10分乾燥した後接着剤面に1/2oz電解銅箔を重ね合わせて180℃のロールラミネーターで張り合わせた後、ロールに巻いた状態で220℃の窒素ガスオーブン中に10時間放置してフレキシブル銅張り積層板を得た。
このサンプルを東洋ボールドウイン社製テンシロンで、ポリイミドフィルムと電解銅箔との剥離強度を測定した。
同じサンプルを290℃の半田浴に30秒フロートさせたときの状態を観察し、半田耐熱性の評価を行った。判定は以下のとおりとした。
○:フクレや剥離が見られない。
×:フクレや剥離が発生した。
【0052】
<実施例4,5:ラミネーション例−2>
接着剤組成物bを用いて作成した銅張り積層板のポリイミドフィルム面に接着シートb’’,d’’各々を介して0.3mmのアルミ板製補強板を重ね合わせて、170℃のヒートプレスを用い、20kgf/cmの圧力で20分間圧着した。その後同じ温度で加圧下、1時間熱処理を行った。
このサンプルを東洋ボールドウイン社製テンシロンで、アルミ板製補強板とポリイミドフィルムとの剥離強度を測定した。
同じサンプルを290℃の半田浴に30秒フロートさせたときの状態を観察し、半田耐熱性の評価を行った。判定は以下のとおりとした。
○:フクレや剥離が見られない。
×:フクレや剥離が発生した。
【0053】
<実施例6,7:ラミネーション例−3>
東洋紡製銅張積層板バイロフレックスを用いて、ライン/スペースが70μm/70μmのマイグレーションテスト用回路板に接着剤組成物b,dを約20μmとなるように塗布、60℃で5分、130℃で10分乾燥後更に150℃で1時間加熱、硬化させた。これを80℃、85%RHの環境で電極間に10Vの電圧をかけ、100時間放置後の絶縁性を評価した。
○:線間絶縁抵抗値が1E+08Ω以上
×:線間絶縁抵抗値が1E+08Ω以下
同じサンプルを290℃の半田浴に30秒フロートさせたときの状態を観察した。判定は以下のとおりとした。
○:フクレや剥離が見られない。
×:フクレや剥離が発生した。
【0054】
<印刷インキの製造例>
ポリアミドイミド樹脂A,C、Iそれそれ100gに酸化ケイ素3g、エピコート152を3g、フローレンAC300を0.3gを加えて、3本ロールミルで2回混練を行い、SRIa、SRIcとSRIiを作成した。
【0055】
<実施例8,9:印刷例>
実施例6,7に用いたマイグレーションテスト用回路版の回路面に、それぞれSRIa, SRIc
を印刷インキとして、125メッシュのスクリーンを用いて印刷を行い、130℃で15分乾燥後、180℃で1時間熱処理を行った。
これを80℃、85%RHの環境で電極間に10Vの電圧をかけ、100時間放置後の絶縁性を評価した。
○:線間絶縁抵抗値が1E+08Ω以上
×:線間絶縁抵抗値が1E+08Ω以下
同じサンプルを290℃の半田浴に30秒フロートさせたときの状態を観察した。判定は以下のとおりとした。
○:フクレや剥離が見られない。
×:フクレや剥離が発生した。
【0056】
<実施例10,11>
ポリアミドイミド樹脂XとYを用い、接着剤組成物製造例―1と同じ方法で接着剤組成物xとyを作成し、実施例1と同じ方法でフレキシブル銅張り積層版を得た。
このサンプルを東洋ボールドウイン社製テンシロンで、ポリイミドフィルムと電解銅箔との剥離強度を測定した。
同じサンプルを290℃の半田浴に30秒フロートさせたときの状態を観察し、半田耐熱性の評価を行った。判定は以下のとおりとした。
○:フクレや剥離が見られない。
×:フクレや剥離が発生した。
【0057】
<実施例12,13>
東洋紡製銅張積層板バイロフレックスを用いて、ライン/スペースが70μm/70μmのマイグレーションテスト用回路板に接着剤組成物x,yを約20μmとなるように塗布、60℃で5分、130℃で10分乾燥後更に150℃で1時間加熱、硬化させた。これを80℃、85%RHの環境で電極間に10Vの電圧をかけ、100時間放置後の絶縁性を評価した。
○:線間絶縁抵抗値が1E+08Ω以上
×:線間絶縁抵抗値が1E+08Ω以下
同じサンプルを290℃の半田浴に30秒フロートさせたときの状態を観察した。判定は以下のとおりとした。
○:フクレや剥離が見られない。
×:フクレや剥離が発生した。
【0058】
<比較例1,2>
ポリアミドイミド樹脂F溶液100gにエピコート152を3g配合して製造した接着剤組成物f及びそのシートf’’を用いてラミネーションー1(銅張り積層板の製造)及びラミネーションー2(補強板貼り合わせ)を行い、それぞれ実施例1,4と同様に接着強度、半田耐熱性を評価した。
【0059】
<比較例3,4>
ポリアミドイミド樹脂G溶液100gにエピコート152を3g配合した接着剤組成物g及びそのシートg’’を用いてラミネーションー1(銅張り積層板の製造)及びラミネーションー2(補強板張り合わせ)を行い、それぞれ実施例1,4と同様に接着強度、半田耐熱性を評価した。
【0060】
<比較例5,6>
ポリアミドイミド樹脂Aの製造においてMDIの仕込みを0.9モルにした以外はポリアミドイミド樹脂Aと同じ方法でポリアミドイミド樹脂Hを製造した。得られた樹脂の対数粘度は0.08dl/gであった。この樹脂は分子量が低く、フィルムを形成しないためガラス転移温度や引っ張り弾性率は測定できなかった。(組成が同じポリアミドイミド樹脂Bに近いと予想される)この樹脂の30%溶液100部にエピコート152を3部配合した接着剤組成物hを用いて銅張り積層板の製造を行い、実施例1と同様に接着強度、半田耐熱性を評価した。
【0061】
<比較例7>
ポリアミドイミド樹脂Iを用いて実施例8と同じ方法でソルダーレジストインキを作成し、同じ条件でスクリーン印刷を行い、半田耐熱性、耐マイグレーション性について評価した。
【0062】
<比較例8>
東洋紡製銅張積層板バイロフレックスを用いて、ライン/スペースが70μm/70μmのマイグレーションテスト用回路板に接着剤組成物gを約20μmとなるように塗布、60℃で5分、130℃で10分乾燥後更に150℃で1時間加熱、硬化させた。これを80℃、85%RHの環境で電極間に10Vの電圧をかけ、100時間放置後の絶縁性を評価した。
○:線間絶縁抵抗値が1E+08Ω以上
×:線間絶縁抵抗値が1E+08Ω以下
同じサンプルを290℃の半田浴に30秒フロートさせたときの状態を観察した。判定は以下のとおりとした。
○:フクレや剥離が見られない。
×:フクレや剥離が発生した。
【0063】
上記例の結果をまとめて表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
・ * 硬化剤 Ep152:エピコート152(フェノールノボラック型エポキシ)
C−EH:コロネートEH(ヘキサメチレンジイソシアネート環状3量体)
・ ** 接着強度A:銅箔/ポリイミド間接着力
・ *** 接着強度B:ポリイミド/アルミ板間接着力
【0066】
実施例の結果からも明らかなように本発明によれば、金属やポリイミドフィルムへの接着性と耐半田性及び高温高湿下での耐マイグーション特性に優れた、特に回路基板に有用な接着剤組成物及び接着シートならびにこれらを用いたプリント回路基板を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、金属やポリイミドフィルムへの接着性と耐半田性及び高温高湿下での耐マイグーション特性に優れた、特に回路基板に有用な接着剤組成物及び接着シートならびにこれらを用いたプリント回路基板を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端にカルボキシル基または水酸基を有する脂肪族ポリエステル、ブタジエン系ゴム及びダイマー酸の群より選ばれた1種以上が共重合されたポリイミド系樹脂にラジカル重合性単量体がグラフト重合され、酸価が30〜300eq/10gであるポイリイミド系樹脂。
【請求項2】
ポリイミド系樹脂がアミン成分として、イソホロン及び/またはジシクロヘキシルメタン
残基を有することを特徴とする請求項1に記載のポリイミド系樹脂。
【請求項3】
ポリイミド系樹脂が酸成分として、シクロヘキサン残基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリイミド系樹脂。
【請求項4】
全酸成分を100モル%とした場合に、重合性不飽和基含有ジカルボン酸を0.5〜20モル%共重合したポリイミド系樹脂とラジカル重合性単量体とを、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン、エタノール、ブタノール、トルエン及びキシレンの群より選ばれた1種以上の溶剤中で反応させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド系樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド系樹脂に多官能エポキシ、メラミン及びイソシアネート化合物の群より選ばれた1種以上が配合された接着剤組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の接着剤組成物より得られる接着剤シート。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド系樹脂に多官能エポキシ、メラミン及びイソシアネート化合物の群より選ばれた1種以上と、無機または有機微粒子とを混合した印刷用インキ組成物。
【請求項8】
請求項5に記載の接着剤組成物を用いたプリント回路基板。

【公開番号】特開2010−155975(P2010−155975A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258776(P2009−258776)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】