説明

ポリウレタンの製造方法及びそれから得られたポリウレタンの用途

【課題】 ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート化合物、及び鎖延長剤とからポリウレタンウレアを製造するに際し、粘着性が低く、剥離性が高いポリウレタン及びポリウレタンウレアを製造する方法を提供する。
【解決手段】 (a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、(b)ポリエーテルポリオール、(c)ポリイソシアネート化合物、及び(d)鎖延長剤、を用いてポリウレタンを製造するにあたり、非プロトン性極性溶媒の共存下において製造することを特徴とするポリウレタンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンの製造方法及びその製造方法から得られたポリウレタン並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン化合物及びポリウレタンウレア化合物は様々な分野で応用されている。ポリウレタン化合物は主としてポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール等のポリヒドロキシ化合物とイソシアネート化合物および必要により鎖延長剤、発泡剤、整泡剤等から製造され、ポリウレタン系弾性繊維や、ポリウレタンウレア系弾性繊維等の用途として用いられることが多い。特に、ポリウレタンウレア構造を持つ繊維は、ソフトセグメント成分としてポリエーテルポリオールを使用し、ハードセグメントとして凝集力の高いポリアミン化合物を使用しているため、弾性特性、伸長回復性に優れた性質を有している。しかし、これらポリウレタン系弾性繊維は繊維同士の粘着性が高いため紡出時の解舒性が悪く、また摩擦抵抗が大きいために糸が接触する紡糸機、整経機、編み機やガイドの加工工程にある機器で糸切れが発生してしまう。そのため加工工程で糸切れを起こすなどの問題を発生しやすい。そのため、加工工程の機器と糸との摩擦抵抗を低下させるため、油剤として固体の金属石鹸や油溶性高分子、高級脂肪酸、アミノ変性シリコーン等を添加する方法や、平滑剤としてタルク、シリカ、コロイダルアルミナや酸化チタン等分散させる方法、更にはシリコンジオールやシリコンジアミンをポリウレタン主鎖の一部に導入する方法等がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、この方法でも、十分な粘着防止効果が得られなかったり、平滑剤が紡糸機、整経機、編み機やガイドに重大な磨耗を生じさせたり、整経、編みたて工程に油剤成分によって抽出された繊維中のオリゴマーや、油剤中の固体または高粘度成分が固体またはペースト状になって分離したものが、多量に繊維に付着し、製品汚損や機械や器具の目詰まりを生じさせたりするという問題があり、課題の解決には至っていない。このため、このような油剤や平滑剤を使わずとも、粘着性を低下させ、紡出時の解舒性(またはポリウレタン同士の剥離性)が高く、高い剥離性を持つポリウレタンの製造方法が求められてきた。
【0004】
一方、ポリウレタンの原料に水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体を用いる例として、ポリオレフィン樹脂材料の接着性を向上させるためのウレタン系樹脂の改質剤としての用途(特許文献2)や、高分子ポリオールとして、ポリテトラメチレングリコールと混合してポリウレタンを製造し、ポリウレタン系弾性繊維の耐久性向上を図る検討がされてきた(特許文献3)。しかし特許文献3に記載の方法では、高分子ポリオールの疎水性が高すぎるため、ポリエーテルポリオールとの相溶性が悪く、ポリウレタン製造時にゲル化したり、糸やフィルム作成時に均一分散しないという問題があった。また、特許文献3に記載の方法で製造されたポリウレタンからなる繊維から作製された伸縮性布帛や水着は、耐塩素性、耐熱水性、耐光性等が優れていることが知られているが、水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体を原料として用いて、ポリウレタンの粘着性を低下させ、更にポリウレタンからなるフィルムや弾性繊維などの成形物の粘着性を低下させ、剥離性を向上させる目的に用いられたことはなかった。また、特許文献3に記載のポリウレタン系弾性繊維は、鎖延長剤として多価アルコールおよび多価アミン類が挙げられているものの、実質多価アルコールを鎖延長剤とした溶融紡糸法により得られる弾性繊維であり、この方法で多価アミン類を用いるいわゆるポリウレタンウレア構造物を得ようとすると、鎖延長反応時に容易にゲルや三次元架橋等の異常反応が生じて、均質な繊維やフィルムに成形しにくいといった問題があった。
【0005】
また、一方で、ポリウレタン弾性繊維の諸物性の改良を目的として、ポリウレタンの原料成分を改良する検討が成されてきた。例えばポリエステルポリオールを用いる例として、側鎖として炭化水素基を有する多価アルコールを必須成分とするグリコール構成成分とダイマー酸を必須成分とするカルボン酸構成成分から形成される疎水性のポリエステルポリオールが提案されている(特許文献4)。しかしながら、これらのポリエステルポリオールを用いた場合でも、未だ十分な剥離性を示すポリウレタンは得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−259577号 公報
【特許文献2】特開平6−158016 号 公報
【特許文献3】特開平11−131325号 公報
【特許文献4】特開2002−212273号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、本発明は、ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート化合物、及び鎖延長剤とからポリウレタンを製造するに際し、ポリウレタン弾性繊維やフィルム、及び衣料に等の高機能ポリウレタン用途に極めて有用であり、しかも、粘着性が低く、剥離性が高いポリウレタン及びポリウレタンウレアを製造する方法、更には、ポリウレタンウレアを製造するために有用な新規のポリエステルポリオールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリウレタンを製造するにあたり、ポリエーテルポリオールと分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、好ましくは、特定の構造と一定の酸素含有量を有するポリエステルポリオールを用いることにより、更に好ましくは該ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとを混合して、溶媒の共存下にポリイソシアネート化合物、及び鎖延長剤と反応させることにより、得られるポリウレタン及びポリウレタンウレアの粘着性が低減でき、剥離性および紡出時の解舒性が向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[29]に存する。
[1](a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、(b)ポリエーテルポリオール、(c)ポリイソシアネート化合物、及び(d)鎖延長剤の原料を付加重合反応させて、ポリウレタンを得るにあたり、(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体と(b)ポリエーテルポリ
オールの合計に対する(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ
炭化水素系重合体の割合が、0.01〜50.00重量%であって、アミド系溶媒、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる溶媒の共存下において反応させることを特徴とするポリウレタンの製造方法。
[2]前記(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体の数平均分子量が500〜5000であることを特徴とする[1]に記載のポリウレタンの製造方法。
[3]前記(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体の1分子あたりの平均水酸基数が1.5〜2.7であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリウレタンの製造方法。
[4]前記(c)ポリイソシアネート化合物が、芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
[5]前記(d)鎖延長剤が、ポリアミン化合物であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
[6]前記(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体の主骨格が水素添加ポリブタジエンであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
[7]前記(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体が、(A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体と、(B)エステル基含有化合物またはカルボキシ基含有化合物とから形成されるポリエステルポリオールであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
[8]前記ポリエステルポリオールが、前記(A)と前記(B)が少なくとも一つのエステル結合を形成し、かつ該ポリエステルポリオール中の酸素含有量が2.0質量%以上、13.5質量%以下であることを特徴とする[7]に記載のポリウレタンの製造方法。
[9]前記(B)がポリラクトンであることを特徴とする[7]又は[8]に記載のポリウレタンの製造方法。
[10]前記ポリエステルポリオールが、前記(A)と前記(B)で形成される、(B)
(A)(B)型のブロック共重合体であることを特徴とする[7]〜[9]のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
[11]前記(B)がジカルボン酸であることを特徴とする[7]又は[8]に記載のポリウレタンの製造方法。
[12]前記ジカルボン酸の炭素数が、2以上15以下であることを特徴とする[11]に記載のポリウレタンの製造方法。
[13]前記ポリエステルポリオールが、前記(A)と前記(B)で形成される、(AB)A型のブロック共重合体(ただし、nは1以上の整数)であることを特徴とする[10]または[11]に記載のポリウレタンの製造方法。
[14]前記[1]〜[13]のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法によって製造されたことを特徴とするポリウレタン。
[15](a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、(b)ポリエーテルポリオール、(c)ポリイソシアネート化合物、及び(d)鎖延長剤を含むポリウレタンであって、ポリウレタン中の(b)ポリエーテルポリオールが占める重量割合が54重量%〜99重量%であることを特徴とするポリウレタン。
[16]前記[14]又は[15]に記載のポリウレタンからなることを特徴とするポリウレタン成形体。
[17](a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、(b)ポリエーテルポリオール、(c)ポリイソシアネート化合物、及び(d)鎖延長剤を含むポリウレタンからなるポリウレタン成形体であって、該ポリウレタン成形体の表面の原子組成(酸素原子/炭素原子)が0.22以下であることを特徴とするポリウレタン成形体。
[18] 前記ポリウレタン成形体の表面の水接触角が80度以上であることを特徴とする[17]に記載のポリウレタン成形体。
[19] 前記[14]又は[15]に記載のポリウレタンからなることを特徴とするフィルム。
[20][14]又は[15]に記載のポリウレタンからなることを特徴とする繊維。
[21](A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体と、(B)エステル基含有化合物またはカルボキシ基含有化合物とから形成されるポリエステルポリオールであって、前記(A)と前記(B)が少なくとも一つのエステル結合を形成し、かつ前記ポリエステルポリオール中の酸素含有量が2.0質量%以上、13.5質量%以下であることを特徴とするポリエステルポリオール。
[22] 前記(B)がポリラクトンであることを特徴とする[21]に記載のポリエステルポリオール。
[23] 前記ポリエステルポリオールが、前記(A)と前記(B)で形成される、(B
)(A)(B)型のブロック共重合体であることを特徴とする[21]または[22]に記載のポリエステルポリオール。
[24] 前記(B)がジカルボン酸であることを特徴とする[21]に記載のポリエステルポリオール。
[25] 前記ジカルボン酸の炭素数が、2以上15以下であることを特徴とする[24]に記載のポリエステルポリオール。
[26] 前記ポリエステルポリオールが、前記(A)と前記(B)で形成される、(AB)A型のブロック共重合体(ただし、nは1以上の整数)であることを特徴とする[
24]または[25]に記載のポリエステルポリオール。
[27] 前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が、500以上5000以下であることを特徴とする[21]〜[26]のいずれかに記載のポリエステルポリオール。
[28] 前記(A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体が、水素添加ポリジエンポリオールであることを特徴とする[21]〜[27]のいずれかに記載のポリエステルポリオール。
[29]
前記[21]〜[28]のいずれかに記載されたポリエステルポリオールを構成する水酸基の少なくとも1つが、ウレタン結合を形成していることを特徴とする重合体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリエーテルポリオールとの一定の相溶性を維持しながらポリウレタンを製造することができ、得られるポリウレタンの粘着性を低減することができる。また、得られるポリウレタンを成形した場合は、成形体同士の剥離性を向上させることができる。ひいては、このポリウレタンからなる弾性繊維を使い、衣料などを成形する場合、油剤や平滑剤などの使用量の削減によるコスト削減、製品汚損や機械や器具の目詰まり頻度低減による操業安定性向上、摩擦抵抗の低減することで駆動電力削減等が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されない。以下、その詳細について説明する。
<ポリウレタン>
本発明のポリウレタンは、本発明の(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体を、(b)ポリエーテルポリオール、(c)ポリイソシアネート化合物、及び(d)鎖延長剤とともに使用することにより得られる。
【0012】
本発明におけるポリウレタンとは、(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、(b)ポリエーテルポリオール、(c)ポリイソシアネート化合物、及び(d)鎖延長剤を含むものである。また、ポリウレタン中の(b)ポリエーテルポリオールが占める重量割合としては、特に限定されないが、通常は、54〜99重量%であり、好ましくは、60〜90重量%であり、更に好ましくは、70〜85重量%である。この割合が大きくなるほど、得られるポリウレタンの柔軟性が向上する傾向にあり、一方で小さくなるほど、得られるポリウレタンの剥離性が向上する傾向にある。
【0013】
本発明のポリウレタン中には、本発明の(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、又は(b)ポリエーテルポリオールを構成する水酸基の少なくとも1つが、ウレタン結合を形成している重合体が含まれる。好ましくは下記の部分構造を有する重合体、すなわち本発明のa)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、又は(b)ポリエーテルポリオールを構成する2つ以上の水酸基がウレタン結合を形成した下記のような構造を重合鎖中に有する重合物である。
【0014】
【化1】

【0015】
(式(I)において、HO−X−OHは、本発明の(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、又は(b)ポリエーテルポリオールを表す。)
本発明のポリウレタン中の前記重合物の含有量や位置は特に制限されるものではなく、重合鎖中に上記構造を有する重合物であれば良い。上記構造を含む化合物としては、例えば、ポリウレタン樹脂やポリウレタンウレア樹脂やそれらのプレポリマーなどが挙げられる。
【0016】
また、本発明における、「(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、(b)ポリエーテルポリオール(c)ポリイソシアネート化合物、及び(d)鎖延長剤を含むポリウレタン」とは、ウレタン結合(-NHCOO−)を
主鎖の繰り返し単位中にもつ高分子化合物で、その主鎖の繰り返し構成単位が、(a)と(b)の両方の化合物由来であるものだけでなく、(a)由来のみである高分子化合物としてのポリウレタン、(b)由来のみである高分子化合物としてのポリウレタン、及びこれらが混在したものであってもよい。また、未反応の(a)、(b)、(c)、若しくは(d)と上記高分子化合物が混在したものであってもよい。
【0017】
本発明でいうポリウレタンとは、特に制限がない限りポリウレタン又はポリウレタンウレアを示し、この2種類の樹脂はほぼ同じ物性をとることが従来から知られている。一方、構造的特徴の違いとしては、ポリウレタンとは、鎖延長剤として短鎖ポリオールを使用し製造されるものであり、ポリウレタンウレアとは、鎖延長剤としてポリアミン化合物を使用し製造されるものである。
【0018】
各組成割合は、通常、ポリウレタンに対して、(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体と(b)ポリエーテルポリオールの水酸基の合計のモル数をA、(c)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数をB、(d)鎖延長剤の活性水素置換基(水酸基及びアミノ基)のモル数をCとした場合、A:Bが、通常1:10〜1:1の範囲、好ましくは1:5〜1:1.05、より好ましくは1:3〜1:1.1、更に好ましくは1:2.5〜1:1.2、特に好ましくは1:2〜1:1.2であり、かつ(B−A):Cが、通常1:0.1〜1:5、好ましくは1:0.8〜1:2、より好ましくは1:0.9〜1:1.5、更に好ましくは1:0.95〜1:1.2、特に好ましくは1:0.98〜1:1.1の範囲である。
【0019】
<(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体>
本発明における、分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体とは、代表的には、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエンのような炭化水素骨格を繰り返し単位とする重合体か、又は後述するポリエステルポリオールのことである。これらは、ポリエーテルポリオールと混合して使用し、それらを用いてポ
リウレタンを製造することにより、得られるポリウレタンの粘着性、ポリウレタン成形物の剥離性、紡出時の解舒性を改良することができる。
炭化水素骨格を繰り返し単位とする重合体とは、好ましくは、例えば、1,3−ブタジエンを、過酸化水素を重合開始剤としてラジカル重合させることによって、直接に、末端に水酸基を有する共役ジエン系重合体とするか、アニオン重合触媒を用いて末端にアルカリ金属が結合したリビングポリマーを製造し、次いでモノエポキシ化合物やホルムアルデヒド等を反応させることによって、末端に水酸基を有する共役ジエン系重合体とし、得られた共役ジエン系重合体を常法により水素添加したものが挙げられる。尚、その際、前記共役ジエンに、スチレン、アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等のビニルモノマーが30重量%以下の量で共重合されていてもよい。
【0020】
又、イソブチレン、或いは、イソブチレンと、イソプレン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエンとの重合体をオゾン等で酸化分解処理し、次いでリチウムアルミニウムハイドライド等で還元処理して、末端に水酸基を有するイソブチレン系重合体を得、得られた重合体を常法により水素添加したもの、及び、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンとジエン系化合物との共重合体を同様に酸化分解、還元処理し、水素添加したもの、等が挙げられる。
【0021】
本発明の分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体の中でも、好ましくは、主骨格が水素添加ポリブタジエン、水素添加ポリイソプレン、及びポリイソブチレンであるポリヒドロキシ炭化水素系重合体が好ましく、入手や取り扱いやすさから、主骨格が水素添加ポリブタジエンのものが更に好ましい。
本発明で使用する分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体の割合としては、分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体とポリエーテルポリオールの合計量に対して0.01重量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.03重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.07重量%以上、最も好ましくは0.1重量%である。この数値が大きくなるほど、得られるポリウレタン類樹脂の粘着性が低下する傾向にある。一方、上限は、50.00重量%以下が好ましい。より好ましくは30.00重量%以下であり、更に好ましくは25.00重量%以下、特に好ましくは、15.00重量%以下、最も好ましくは10.00重量%以下である。この値が小さくなるほど、得られるポリウレタン類樹脂の粘着性は低下するものの弾性特性や伸張回復性が向上する傾向にある。
【0022】
前記ポリヒドロキシ炭化水素系重合体は、その数平均分子量が500〜5000、好ましくは、700〜4000、更に好ましくは、900〜3500であり、常温で液状又はワックス状のものである。数平均分子量が高すぎると、ポリエーテルポリオールやプレポリマー、プレポリマー溶液の粘度が高くなりすぎて操作性や生産性が悪くなったり、得られるポリウレタン重合体の低温における物性が悪くなる傾向がある。低すぎると、得られるポリウレタン重合体が硬くなり十分な柔軟性が得られなかったり、強度や伸度などの弾性性能が十分でなかったり、伸長、回復を繰り返した際に過度の残留歪を残す傾向がある。また、ポリエステルポリオールとは、分子内に少なくとも2個以上のエステル結合と2個以上の水酸基を有するものであり、好ましくは、ポリエステルポリオール主鎖の両末端が水酸基であるものである。
【0023】
本発明のポリエステルポリオールは、後述する(A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体と、(B)エステル基含有化合物またはカルボキシ基含有化合物から形成されるポリエステルポリオールであり、具体的には(A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体が、(B)エステル基含有化合物またはカルボキシ基含有化合物と少なくとも一つのエステル結合を形成しているものである。
【0024】
本発明のポリエステルポリオール1分子中に含まれる、(A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体が形成するエステル結合の数は、通常1以上である。
具体的には、(A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体1分子が分子末端で複数のエステル結合を形成してもよいし、複数のポリヒドロキシ炭化水素重合体(A)がエステル結合を形成して、ポリエステルポリオール一分子中に含まれるエステル結合の合計数が2以上になっていてもよい。
【0025】
以下、本発明のポリエステルポリオールを構成する要件に分けて述べる。
<(A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体>
本発明における(A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体とは、炭化水素骨格を繰り返し単位とした重合体であり、かつ少なくとも2個の水酸基を前記重合体中に有するものである。
【0026】
前記炭化水素骨格を繰り返し単位とした重合体としては、特に制限されるものではなく、炭素と水素以外の元素以外の元素、例えば塩素、フッ素、臭素等のハロゲンを置換基として有する炭化水素を繰り返し単位とする重合体でもよいが、好ましくは、炭素と水素で形成される炭化水素を繰り返し単位とした重合体(以下、炭化水素重合体ということがある)であり、より好ましくは脂肪族炭化水素重合体である。
【0027】
本発明における炭化水素重合体としては、直鎖状炭化水素を繰り返し単位とする重合体、または分子内に側鎖を有する炭化水素を繰り返し単位とする重合体が挙げられる。
分子内に側鎖を有する炭化水素の含有量が多いと、炭化水素重合体の融点が下がり、取扱いがしやすくなることから、側鎖を有する炭化水素の含有量が多い炭化水素重合体が好ましい。
【0028】
前記炭化水素重合体は、1つの繰り返し単位による単独重合体であっても、2以上の繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
前記炭化水素の繰り返し単位の炭素数は特に制限されるものではないが、通常2以上、好ましくは3以上、通常9以下、好ましくは6以下である。
本発明におけるポリヒドロキシ炭化水素重合体は、重合体の末端に官能基を導入しやすく、分子量を制御しやすいことから、好ましくはブタジエン、イソブチレン、イソプレン、クロロプレン等;の共役ジエン類を含む重合体であり、より好ましくは、水素添加ポリブタジエン、水素添加ポリイソプレン、及び水素添加ポリイソブチレン等;の共役ジエン類を単独重合させた後、水素添加した重合体(以下、水素添加ポリジエン)であり、更に好ましくは入手の容易さや取り扱い易さの面で、水素添加ポリブタジエンである。
【0029】
本発明におけるポリヒドロキシ炭化水素重合体は、少なくとも2個の水酸基を重合体中に有するものである。前記水酸基の数は、下記の酸素含有量を満たす範囲であれば通常制限されるものではないが、通常2個以上、6個以下であり、好ましくは、3個以下である。水酸基の位置は特に限定されないが、分子末端に水酸基があるものが好ましく、2個以上が分子末端にあるものがより好ましく、炭化水素重合体の主鎖の両末端にあるものが更に好ましい。
【0030】
本発明のポリエステルポリオールを構成するポリヒドロキシ炭化水素重合体(A)が少なくとも1つのエステル結合を形成してポリエステルポリオールの疎水性を調整することにより、飽和炭化水素重合体よりもポリエーテルポリオールとの相溶性が高いポリエステルポリオールを得ることができる。また、このようなポリエステルポリオールを使用して得られるポリウレタンは高い剥離性を示す。
【0031】
本発明におけるポリヒドロキシ炭化水素重合体の数平均分子量は、通常100以上、好
ましくは200以上、更に好ましくは300以上であり、通常5000以下、好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下である。前記下限値未満では、得られるポリウレタン重合体が硬くなり柔軟性の低下を引き起こしたり、強度や伸度などの弾性性能の低下を引き起こしたり、伸長、回復を繰り返した際に過度の残留歪を残すといった傾向がある。前記上限値超過では、ポリエーテルポリオールやプレポリマー、プレポリマー溶液の粘度が高くなりすぎて操作性や生産性が低下したり、得られるポリウレタン重合体の低温における物性が低下する傾向がある。
【0032】
本発明におけるポリヒドロキシ炭化水素重合体の性状は特に限定されるものではないが、通常、常温で液状又はワックス状のものである。
<(B)エステル基含有化合物>
本発明において用いられるエステル基含有化合物は、エステル基を有していれば特に限定されるものではなく、通常、エステル結合を介して繰り返し単位が重合している化合物が挙げられ、好ましくはラクトンを開環重合して得られるポリラクトンである。
【0033】
<ポリラクトン>
本発明におけるポリラクトンは、ラクトンを原料として、既知の重合反応を行うことにより得られる。
具体的に用いられるラクトンとしては、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、エナントラクトン等が挙げられ、これらは、単独で用いても二種以上混合して使用することもできる。これらのうち、好ましくは入手しやすく反応性が高いことから、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトンであり、より好ましくはε−カプロラクトンである。
【0034】
以下ポリヒドロキシ炭化水素重合体とエステル基含有化合物で形成されるポリエステルポリオールとして、ポリヒドロキシ炭化水素重合体とポリラクトンとで形成されるポリエステルポリオールを例として述べる。
<ポリヒドロキシ炭化水素重合体とポリラクトンで形成されるポリエステルポリオール>
本発明のポリエステルエステルポリオールのうち、好ましい態様の一つは、前記ポリヒドロキシ炭化水素重合体と、下記のポリラクトンの間に1つ以上のエステル基が形成され
、好ましくはポリヒドロキシ炭化水素重合体1分子が有する水酸基のうちの少なくとも1
つが、ポリラクトンとの間でエステル結合を形成し、合計として1分子中に複数のエステル結合を有するものであり、より好ましくはポリヒドロキシ炭化水素重合体1分子が有す
る末端水酸基のうちの少なくとも1つが、ポリラクトンとの間でエステル結合を形成し、合計として1分子中に複数のエステル結合を有するものである。
【0035】
前記のポリヒドロキシ炭化水素重合体とポリラクトンの共重合形式は特に限定されるものではないが、好ましくは(A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体部位と、(B)ポリラクトン部位とが、(B)(A)(B)型のブロック共重合体を構成するポリエステルポリオールである。(B)はラクトンの開環重合体であり、(A)と(B)はエステル結合を介して結合している。
【0036】
(A)または(B)の重合度は特に限定されるものではなく、ポリエステルポリオール中の酸素含有量および分子量が所望の値となるように、原料の分子量を考慮して決定すれば良い。
所望のポリウレタン樹脂の物性に応じて、前記の(A)または(B)の重合度を調節することにより、生成するポリエステルポリオールの分子量や酸素含有量を変化させること
が容易に可能である。製造方法は特に限定されるものではないが、一般に無溶媒下、テトライソプロピルチタネート又はテトラブチルチタネート等の触媒存在下に、ポリヒドロキシ炭化水素重合体とラクトンを所定比率で反応させることにより得ることができる。
【0037】
<(B)カルボキシ基含有化合物>
本発明において用いられるカルボキシ基含有化合物は、カルボキシ基を有していれば特に限定されるものではないが、通常、モノカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物、ヒドロキシ酸やアルコキシ酸等の置換カルボン酸化合物等が挙げられ、好ましくはジカルボン酸化合物である。
【0038】
<ジカルボン酸>
本発明において使用されるジカルボン酸化合物は、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸のいずれでもよいが、脂肪族ジカルボン酸としては、通常炭素数2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、通常16以下、好ましくは15以下、より好ましくは14以下のものが好ましい。具体的にはマロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナメチレンジカルボン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸、1,11−ウンデカメチレンジカルボン酸、1,12−ドデカメチレンジカルボン酸等が挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸としては、具体的にはオルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸もしくはフェナンスレンジカルボン酸等が挙げられる。これらは一種でも、二種以上の混合物として使用しても良い。またこれらジカルボン酸の無水物、アルキルエステルあるいは不飽和結合のハロゲン置換体等を使用することもできる。これらの中でも入手しやすく熱的安定性が高いことから、好ましくは脂肪族ジカルボン酸、より好ましくはマロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸であり、さらに好ましくはコハク酸、アジピン酸である。
以下ポリヒドロキシ炭化水素重合体とカルボキシ基含有化合物で形成されるポリエステルポリオールとして、ポリヒドロキシ炭化水素重合体とジカルボン酸とで形成されるものを例として述べる。
【0039】
<ポリヒドロキシ炭化水素重合体とジカルボン酸から形成されるポリエステルポリオール>
本発明におけるポリヒドロキシ炭化水素重合体とジカルボン酸から形成されるポリエステルポリオールは、通常、ポリヒドロキシ炭化水素重合体2分子が、各々有する少なくとも1つの水酸基と、ジカルボン酸1分子が含む2つのカルボキシ基の間でそれぞれエステル結合を形成するポリエステルポリオールである。
【0040】
好ましくは、ポリヒドロキシ炭化水素重合体(A)とジカルボン酸(B)から形成される、(AB)A型のポリエステルポリオールである。(A)と(B)はエステル結合を介して結合していれば良く、カルボン酸ジエステル等のカルボン酸誘導体から製造されても良い。
通常、nは1以上の整数であればよいが、更に好ましくは、前記n=1のときに相当する、ジカルボン酸の両末端にポリヒドロキシ炭化水素重合体が一分子ずつ結合したABA型のポリエステルポリオールである。
【0041】
一般に入手可能なポリヒドロキシ炭化水素重合体の分子量は最低でも1500以上と大きく、ジカルボン酸の両末端にポリヒドロキシ炭化水素重合体が反応してポリエステルポリオールが生成すると、分子量は3000以上になる。nの値が大きくなった際、ポリエステルポリオールの分子量が大きくなりすぎると、プレポリマーやプレポリマー溶液の粘度が高くなりすぎてポリウレタン製造時の操作性や生産性が低下したり、得られるポリウ
レタン重合体の低温における物性が低下する傾向があるためである。
【0042】
本発明のポリエステルポリオールは、分子内に、上記の構造以外の構造を有していてもよいが、好ましくは上記部位以外の他の構造を含まないポリエステルポリオールが好ましい。
なお、上記記載では、エステル結合を形成するための構成物として(A)および(B)を詳述したが、本発明のポリエステルポリオールはこれに限定されるものではなく、得られる分子構造が同じであれば、いかなる原料、反応方法によって得られるものであってもよい。
【0043】
<酸素含有量>
本発明のポリエステルポリオール中の酸素含有量とは、ポリエステルポリオール1分子中の酸素含有量をいい、通常、ポリエステルポリオール1分子の分子量に対する分子中に含まれる酸素原子の比率をいう。例えば、分子量2000のポリエステルポリオール中に10個の酸素原子が存在する場合、(10×16/2000)×100=8.0質量%となる。
【0044】
本発明のポリエステルポリオールの酸素含有量は2.0質量%以上であり、13.5質量%以下の範囲であり、好ましくは2.2質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、さらに好ましくは3.0質量%以上であり、好ましくは13質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは11.0質量%である。前記下限未満では、ポリエーテルポリオールとの相溶性や溶媒への溶解性が不十分であり、前記上限超過では得られるポリウレタン類樹脂の粘着性が増加するため好ましくない。
【0045】
本発明のポリエステルポリオール中の、ポリヒドロキシ炭化水素重合体の割合は、特に限定されるものではないが、通常、質量比として10.0質量%以上であり、好ましくは20.0質量%以上、より好ましくは30.0質量%以上、更に好ましくは40.0質量%以上、特に好ましくは45.0質量%である。本発明のポリエステルポリオール中のポリヒドロキシ炭化水素重合体の質量比が大きくなるほど、得られるポリウレタンの粘着性が低下する傾向にある。一方、上限は、特に限定されるものではないが、99.5質量%以下であり、好ましくは99.0質量以下であり、より好ましくは98.5質量%以下、更に好ましくは、98.2質量%以下、特に好ましくは98.0質量%以下である。前記質量比が小さくなるほど、ポリエーテルポリオールとの相溶性や極性溶媒への溶解性が向上する傾向にある。
【0046】
<ポリエステルポリオールの物性>
本発明のポリエステルポリオールの数平均分子量は、使用する(A)または(B)の種類や量により調整することができる。数平均分子量は通常500以上、好ましくは600以上、更に好ましくは800以上であり、通常10000以下、好ましくは7000以下、更に好ましくは5000以下である。数平均分子量とは、分子一個当たりの平均の分子量を示す。数平均分子量が前記上限を超過すると、プレポリマー、プレポリマー溶液の粘度が高くなりすぎて操作性や生産性が低下したり、得られるポリウレタン重合体の低温における物性が低下する傾向がある。前記下限未満では、得られるポリウレタン重合体が硬くなり十分な柔軟性が得られない場合があったり、強度や伸度などの弾性性能が十分でない場合があったり、伸長、回復を繰り返した際に過度の残留歪が残る傾向がある。
【0047】
<(b)ポリエーテルポリオール>
本発明におけるポリエーテルポリオールは、分子内の主骨格中に少なくとも1つ以上のエーテル結合を有するヒドロキシ化合物であって、主骨格中の繰り返し単位としては、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素のどちらでもよく、例えば、1,4−ブタンジオール単位、2−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,4−ブタンジオール単位、1,3−プロパンジオール単位、1,2−プロピレングリコール単位、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位、1, 2- エチレングリコール単位、1,6−ヘキサンジオール単位、1,7−ヘプタンジオール単位、1,8−オクタンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、1,10−デカンジオール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等が挙げられる。
【0048】
この中でも、ポリエーテルポリオールを構成するポリオール単位のうち、ポリテトラメチレンエーテルグリコールや、ポリトリメチレンエーテルグリコール・BR>A1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの共重合ポリエーテルポリオール(例えば、保土ヶ谷化学社製「PTG−L1000」、「PTG−L2000」、「PTG−L3500」等)、あるいはネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの共重合ポリエーテルグリコール等が好ましい。
【0049】
<(c)ポリイソシアネート化合物>
本発明において用いられるポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−MDI、パラフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4′−ジイソシアート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
本発明においては、特に反応性の高い芳香族ポリイソシアネートが好ましく、特にトリレンジイソシアネート(TDI) 、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましい。又、ポリイソシアネートのNCO基の一部をウレタン、ウレア、ビュレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミド等に変成した物であっても良く、さらに多核体には前記以外の異性体を含有している物も含まれる。
【0050】
これらのポリイソシアネート化合物の使用量は、(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体と(b)ポリエーテルポリオールの水酸基の合計、並びに鎖延長剤の水酸基及びアミノ基を合計した1当量に対し、通常、0.1当量〜5当量、好ましくは0.8当量〜2当量、より好ましくは0.9当量〜1.5当量、さらに好ましくは0.95当量〜1.2当量、最も好ましくは0.98当量〜1.1当量である。
【0051】
ポリイソシアネートの使用量が多すぎると、未反応のイソシアネート基が好ましくない反応をおこし、所望の物性が得られにくくなる傾向があり、少なすぎると、ポリウレタン
及びポリウレタンウレアの分子量が十分に大きくならず、所望の性能が発現されない傾
向がある。
<(d)鎖延長剤>
本発明でいう鎖延長剤は、主として、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物、2個以上のアミノ基を有する化合物、水に分類される。この中でも、ポリウレタン用途には短鎖ポリオール、具体的には2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を、ポリウレタンウ
レア用途には、ポリアミン化合物、具体的には2個以上アミノ基を有する化合物が好ましい。この中で水については反応を安定に行うために、できるだけ低減することが好ましい。
又、本発明のポリウレタン樹脂は、鎖延長剤として、分子量(数平均分子量)が500以下の化合物を併用すると、ポリウレタンエラストマーのゴム弾性が向上する為に、物性上さらに好ましい。
【0052】
2個以上のヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香環を有するグリコール等が挙げられる。
【0053】
2個以上のアミノ基を有する化合物としては、例えば、2,4−もしくは2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4′−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,3−ジアミノペンタン、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4′−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。これらの鎖延長剤は単独使用でも2種以上の併用でも良い。これらの中でも本発明において好ましいのは、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンであり、この中でもエチレンジアミン、プロピレンジアミンがより好ましい。
【0054】
これらの鎖延長剤の使用量は、特に限定されないが、(a)及び(b)の合計の水酸基当量からポリイソシアネート化合物の当量を引いた当量を1とした場合、通常0.1当量以上、5.0当量以下である。好ましくは0.8当量以上、2.0当量以下、更に好ましくは0.9当量以上、1.5当量以下である。使用量が多すぎると、得られたポリウレタン及びポリウレタンウレアが硬くなりすぎて所望の特性が得られなかったり、溶媒にとけにくく加工が困難になる傾向があり、少なすぎると、軟らかすぎて十分な強度や弾性回復性能や弾性保持性能が得られなかったり、高温特性が悪くなる傾向がある。
【0055】
本発明において対象とするポリウレタン及びポリウレタンウレアをポリウレタン弾性繊維や合成皮革等の高性能ポリウレタンエラストマー用途に用いる場合は、原料の組み合わせとして以下の例が挙げられる。
又、ポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することができる。これらの鎖停止剤としては、水酸基を有するエタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール、アミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の脂肪族モノアミンが例示される。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0056】
<その他の添加剤>
さらに本発明のポリウレタンには上記以外に必要に応じて他の添加剤を加えてもよい。これらの添加剤としては「CYANOX1790」(CYANAMID社製)、「IRGANOX245」、「IRGANOX1010」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「Sumilizer GA−80」(住友化学社製)、あるいは2,6
−ジブチル−4−メチルフェノール(BHT)等の酸化防止剤、「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「SANOL LS−2626」、「SANOL LS−765」(以上、三共社製)等の光安定剤、「TINUVIN328」、「TINUVIN234」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)等の紫外線吸収剤、ジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体等のシリコン化合物、赤燐、有機燐化合物、燐及びハロゲン含有有機化合物、臭素あるいは塩素含有有機化合物、ポリ燐酸アンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤、二酸化チタン等の顔料、染料、カーボンブラック等の着色剤、カルボジイミド化合物等の加水分解防止剤、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン、白土等のフィラー、滑剤、油剤、界面活性剤、その他の無機増量剤、有機溶媒等が挙げられる。
【0057】
<ポリウレタンの製造方法>
本発明のポリエステルポリオール、及びポリウレタンの製造方法について、以下詳述する。
<ポリエステルポリオールの製造方法>
本発明のポリエステルポリオールは、ポリヒドロキシ炭化水素重合体を用いて製造する。ポリヒドロキシ炭化水素重合体は、それ自体既知の化合物であり、通常用いられる方法に準じて製造することができる。またこれらの市販の化合物を用いて使用することもできる。代表的には、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン、好ましくは1,3−ブタジエンを、過酸化水素を重合開始剤としてラジカル重合させることによって、直接に、末端に水酸基を有する共役ジエン重合体とするか、アニオン重合触媒を用いて末端にアルカリ金属が結合したリビングポリマーを製造し、次いでモノエポキシ化合物やホルムアルデヒド等を反応させることによって、末端に水酸基を有する共役ジエン重合体とし、得られた共役ジエン系重合体を常法により水素添加したものが挙げられる。尚、その際、前記共役ジエンに、スチレン、アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等のビニルモノマーが30質量%以下の量で共重合されていてもよい。
【0058】
又、イソブチレンの、又は、イソブチレンと、イソプレン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエンとの、重合体をオゾン等で酸化分解処理し、次いでリチウムアルミニウムハイドライド等で還元処理して、末端に水酸基を有するイソブチレン系重合体を得、得られた重合体を常法により水素添加したもの、及び、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンとジエン系化合物との共重合体を同様に酸化分解、還元処理し、水素添加したもの、等が挙げられる。
【0059】
本発明のポリエステルポリオールの製造は、従来公知のエステル化技術を採用することができる。例えば、常圧下にポリオールとラクトンまたはジカルボン酸を反応させる方法、減圧下でエステル化する方法、トルエンのような不活性溶剤存在下にエステル化を行った後に縮合水または縮合アルコールと溶剤とを共沸させて反応系外に除去する方法などがある。
【0060】
エステル化の反応温度は通常100〜250℃の範囲である。好ましくは120〜240℃、さらに好ましくは140〜230℃、特に好ましくは150〜220℃の範囲である。反応温度が低すぎるとエステル化反応が十分進行せず、高すぎると生成物の着色が大きくなる可能性がある。
反応は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。反応圧力は任意であり、目的に応じて常圧または減圧下で実施することができる。ポリオールとジカルボン酸またはジカルボン酸エステルのような反応では、反応中に水やアルコールが生成してくるので、反応系からのそれらの脱離を促進するため、反応系に不活性ガスを流通させても良い。
【0061】
<触媒>
前記エステル化反応の形式は特に制限されるものではなく、触媒の存在しない系でエステル化反応を行うことも可能ではあるが、通常は、エステル化反応を円滑に進行させるために、無機酸または有機酸類;Li,Na,K,Rb,Ca,Mg,Sr,Zn,Al,
Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Pb,Sn,SbもしくはPbなどの金属の塩化物、酸化物、水酸化物または酢酸、シュウ酸、オクチル酸、ラウリル酸もしくはナフテン酸などの脂肪酸塩類;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキサイド、イソプロピルチタネートもしくはn−ブチルチタネートなどのアルコール類;ナトリウムフェノラートなどのフェノール類;あるいはAl,Ti,Zn,Sn,ZrもしくはPbなどの金属のその他の有機金属化合物などの如き、通常のエステル化用およびエステル交換用に使用されているすべての触媒を用いて行うことができる。入手が容易で毒性も低くエステル化反応に幅広く使用されていることから、イソプロピルチタネートもしくはn−ブチルチタネートなどのチタン系触媒が最も好ましい。その際の触媒の使用量は前記ポリエステルジオール調製用諸原料総量に対して0.00001〜5.0質量%が好ましく、0.0001〜2.0質量%がさらに好ましく、0.001〜1.0質量%が最も好ましい。この量が少なすぎるとポリエステルポリオール形成に極めて長い時間を要するようになり、生成物が着色しやすくなる。一方、触媒使用量が多すぎるとポリウレタン化反応に対する過剰な反応促進作用を示す可能性がある。
【0062】
前記エステル化反応は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。反応圧力は任意であり、目的に応じて常圧または減圧下で実施することができる。ポリオールとジカルボン酸またはジカルボン酸エステルのような反応では、反応中に水やアルコールが生成してくるので、反応系からのそれらの脱離を促進するため、反応系に不活性ガスを流通させても良い。
【0063】
前記エステル化反応時間は触媒の使用量、反応温度、反応させる基質、生成するポリエステルポリオールに所望の物性などにより異なるが、下限は通常0.5時間、好ましくは1時間、上限は通常30時間、好ましくは20時間である。
前記エステル化反応時に触媒を使用した場合、得られたポリエステルポリオール生成物中には、反応に使用した(チタン系)触媒が残留する。前記触媒の除去には通常繁雑な工程を伴うので、生成したポリエステルポリオールは、一般に(チタン系)触媒を分離することなく、そのままポリウレタンの製造に使用することが多い。
【0064】
ただし、触媒の含有量が多い場合やポリウレタン用途によってはポリエステルポリオール中のチタン触媒を失活させておくことが好ましい。ポリエステルポリオール中のチタン系触媒の失活方法としては、例えば、(1)ポリエステルポリオールを加熱下に水と接触させる方法;(2)ポリエステルポリオールをリン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステルなどのリン化合物で処理する方法などを挙げることができる。そして、水と接触させる前記(1)の方法による場合は、例えば、ポリエステルポリオールに水を1質
量%以上添加して、70〜150℃、好ましくは90〜130℃の温度で1〜3時間程度加熱すれば良い。その際の加熱による失活処理は常圧下で行っても加圧下で行っても良く、失活処理後に系を減圧にすると、失活に用いた水分をポリエステルポリオールから円滑に除去することができる。
【0065】
<ポリウレタンの製造方法>
本発明において、ポリウレタンを製造するには、(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、(b)ポリエーテルポリオール、(c)ポリイソシアネート化合物、及び(d)鎖延長剤を主に製造用原料として用いる。
上記ポリウレタンを製造するには一般的に、溶媒共存下でポリウレタンを製造することができる。本発明では、好ましくは、非プロトン性極性溶媒の共存下にポリウレタンを製造する。
尚、各化合物の使用量は特に制限がない限り、上記記載の量を使用すればよい。以下に非プロトン性極性溶媒の共存下における製造方法の一例を示すが、非プロトン性極性溶媒の共存下であれば特に制限されない。
【0066】
本発明における非プロトン性極性溶媒は、特に限定されないが、溶解性の観点から、非プロトン性極性溶媒の中でも、アミド系溶媒、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる溶媒が好ましく用いられる。アミド系溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、及びそれらの2種以上の混合物であり、ジメチルホルムアミド、又はジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0067】
製造方法の一例としては、(a)、(b)、(c)及び(d)を一緒に反応させる方法(一段法)や、まず(a)と(b)を混合して、その混合物と(c)を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと(d)を反応させる方法(二段法)、(b)と(c)を反応させた後(a)を混合し(d)と反応させる方法、(b)(c)(d)を反応させた後(a)を混合する方法が挙げられる。この中でも二段法は、ポリエーテルポリオールをあらかじめ1当量以上のポリイソシアネートと反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する両末端イソシアネートで封止された中間体を調製する工程を経るものである。プレポリマーをいったん調製した後に鎖延長剤と反応させることにより、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすく、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離がしっかりとなされやすく、エラストマーとしての性能を出しやすい特徴がある。特に鎖延長剤がジアミンの場合には、ポリエーテルポリオールの水酸基と比較して、イソシアネート基との反応速度が大きく異なるため、二段法(プレポリマー法)でポリウレタンウレア化を実施することがより好ましい。
【0068】
<一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、(a)、(b)、(c)及び(d)を一緒に仕込むことで反応を行う方法である。各化合物の使用量は、上記記載の量を使用すればよい。
【0069】
反応は通常、各成分を0〜250℃で反応させるが、この温度は溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低い為に生産性が悪く、又、高すぎると副反応やポリウレタン樹脂の分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下脱泡しながら行ってもよい。 又、反応は必
要に応じて、触媒、安定剤等を添加することもできる。触媒としては例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等があり、安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ・ベ−タナフチルフェニレンジ
アミン、トリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
【0070】
<二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、あらかじめポリイソシアネート成分とポリオール成分とを、通常、反応当量比=1.0〜10.00で反応したプレポリマーを製造し、次いでこれにポリイソシアネート成分又は多価アルコール、アミン化合物等の活性水素化合物成分を加える二段階反応させることもできる。特にポリオール成分に対して当量以上のポリイソシアネート化合物を反応させて両末端NCOプレポリマーをつくり、続いて鎖延長剤である短鎖ジオールやジアミンを作用させてポリウレタンを得る方法が有用である。
【0071】
本発明では、二段法は溶媒共存下で実施することができるが、非プロトン性溶媒共存下で行うことが好ましく、具体的に、アミド系溶媒やN−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホキシド溶媒、及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
本発明では、これら溶媒の中でも、ポリウレタンを製造する場合は溶解性の観点から、非プロトン性極性溶媒が好ましい。更に、非プロトン性極性溶媒の中でも、アミド系溶媒やN−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホキシドがこのましく、アミド系溶媒として具体例を挙げると、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドがより好ましく、N,N−ジメチルホルムアミド、又はN,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0072】
プレポリマーを合成する場合、(1) まず溶媒を用いないで直接ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオールを反応させてプレポリマーを合成しそのまま使用してもよいし、(2)(1)の方法でプレポリマーを合成しその後に溶媒に溶かして使用してもよいし、(3) はじめから溶媒を用いてポリイソシアネートとポリエーテルグリコールを反応させてもよい。(1) の場合には、本発明では、鎖延長剤と作用させるにあたり、鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤を導入するなどの方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることが重要である。
【0073】
NCO/活性水素基(ポリオール)の反応当量比は、下限が、通常1、好ましくは1.05であり、上限が、通常10、好ましくは5、より好ましくは3の範囲である。この比が小さすぎると、得られるプレポリマーの分子量が大きくなりすぎ、後述するハードセグメントの量が低くなることで十分な伸縮性が得られなくなる傾向にあり、大きすぎると後述するハードセグメントの量が高くなることで十分な柔軟性が得られなくなる傾向にある。
【0074】
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるNCO基の当量に対して、下限が、通常0.1、好ましくは0.8であり、上限が、通常5.0、好ましくは2.0の範囲である。
又、反応時に一官能性の有機アミンやアルコールを共存させてもよい。
鎖延長反応は通常、各成分を0〜250℃で反応させるが、この温度は溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低い為に生産性が悪く、また高すぎると副反応やポリウレタン樹脂の分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下脱泡しながら行ってもよい。
【0075】
又、反応は必要に応じて、触媒、安定剤等を添加することもできる。触媒としては例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等があり、安定剤としては例えば2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ・ベ−タナフチルフェニレンジアミン、トリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。しかしなが
ら、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施することが好ましい。
【0076】
<ポリウレタンの物性>
上記の製造方法で得られるポリウレタンは、溶媒存在下で反応を行っているため、溶液に溶解した状態で得られるのが一般的であるが、物性値としては溶液状態でも固体状態でも特に制限がない限り、状態に制限されない。
ポリウレタンの重量平均分子量は、用途により異なるが、ポリウレタン重合溶液として、通常1万〜100万、好ましくは5万〜50万、より好ましくは10万〜40万、特に好ましくは10万〜30万である。分子量分布としてはMw/Mn=1.5〜3.5、好ましくは1.7〜3、より好ましくは1.8〜3である。 繊維、フィルム、透湿性樹脂成形体としては、ポリウレタンの重量平均分子量は、通常1万〜100万、好ましくは5万〜50万、より好ましくは10万〜40万、特に好ましくは15万〜40万である。分子量分布としてはMw/Mn=1.5〜3.5、好ましくは1.7〜3、より好ましくは1.8〜3である。
【0077】
又、上記の製造方法で得られるポリウレタンは、ハードセグメントの量を、ポリウレタン重合体の全重量に対して、1〜20重量%含有することが好ましく、より好ましくは3〜15重量%であり、更に好ましくは、4〜12重量%であり、特に好ましくは、5〜10重量%である。このハードセグメント量が多すぎると、得られるポリウレタン重合物が十分な柔軟性や弾性性能を示さなくなったり、溶媒を使用する場合は溶けにくくなり加工が難しくなったりする傾向がある。少なすぎると、ウレタン重合物が柔らかすぎて加工が難しくなったり、十分な強度や弾性性能が得られなくなる傾向がある。
【0078】
尚、本発明でいう、ハードセグメントとは、P.J.Flory、Journal of American Chemical Society,58,1877〜1885(1936)をもとに、全体重量に対する、イソシアネートとアミン結合部の重量を、下記式で算出したものである。
ハードセグメント(%)=[(R−1)(Mdi+Mda) /{Mp +R・Mdi+(R−1)・Mda}]×100
ここで、
R=イソシアネートのモル数/(ポリエーテルポリオールの水酸基のモル数+分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体の水酸基のモル数)

Mdi=ジイソシアネートの数平均分子量
Mda=鎖延長剤の数平均分子量
Mp =ポリエーテルポリオールの数平均分子量と分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体の数平均分子量の平均分子量
本発明で得られるポリウレタン溶液は、ゲル化が進行しにくく、粘度の経時変化が小さいなど保存安定性がよく、又、チクソトロピー性も小さいため、フィルム、糸等に加工するためにも都合がよい。ポリウレタン溶液のポリウレタン濃度は、溶媒に溶解した溶液の全重量に対して、通常1〜99重量%、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。ポリウレタンの量が少なすぎると、大量の溶媒を除去することが必要になり生産性が低くなる傾向があり、多すぎると、溶液の粘度が高すぎて操作性や加工性が悪くなる傾向がある。
ポリウレタン溶液は、特に指定はされないが、長期にわたり保存する場合は常温、またはそれ以下の温度で窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で保存することが好ましい。
【0079】
<ポリウレタン成形体・用途>
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液を得たのち、それ
らを成形することで、ポリウレタン成形体を得ることができる。
本発明のポリウレタン成形体は、上記のポリウレタン、又は上記の製法により得られたポリウレタンからなる成形体であればよく、特に限定されないが、通常、(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、(b)ポリエーテルポリオール、(c)ポリイソシアネート化合物、及び(d)鎖延長剤を含むポリウレタンからなるポリウレタン成形体であって、該ポリウレタン成形体の表面の原子組成(酸素原子/炭素原子)が0.22以下であることを特徴とするポリウレタン成形体である。 ポリウレタン成形体の表面の原子組成(酸素原子/炭素原子)とは、具体的に、例えば、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)またはXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)により成形体表面を測定したときの、酸素原子の炭素原子に対する相対存在比を示す。
【0080】
本発明のポリウレタン成形体の表面の原子組成(酸素原子/炭素原子)の値として、好ましくは0.20以下、更に好ましくは、0.16以下、である。この値が、小さくなるほど、得られる成形体の粘着性が低減され、剥離性が良好となる傾向にある。また、好ましくは0.00以上、更に好ましくは0.05以上である。この値が大きくなるほど、得られる成形体同士を重ねた際のパッキング性が高くなる傾向にあり、例えば成形体が糸である場合、巻き取った糸が解れて型崩れを起こし難くなる。
また、本発明のポリウレタン成形体として、上記の表面の原子組成(酸素原子/炭素原子)が0.22以下であることに加えて、表面の水接触角が80度以上であることが好ましい。
【0081】
この表面の水接触角とは、成形体表面に数μlの水滴を落とし、この液滴の接線と成形体表面のなす内角を10秒以内に測定して得る。本発明のポリウレタン成形体の表面の水接触角の値としては、80度以上であり、好ましくは、83以上、更に好ましくは、86以上、である。この値が大きくなるほど、得られる成形体の粘着性が低減され、剥離性が良好となる傾向にある。また、好ましくは180度以下、更に好ましくは150度以下である。この値が小さくなるほど、得られる成形体同士を重ねた際のパッキング性が高くなる傾向にあり、例えば成形体が糸である場合、巻き取った糸が解れて型崩れを起こし難くなる。
また、本発明のポリウレタン、ウレタンプレポリマー溶液、及びポリウレタン成形体は多様な特性を発現することから、様々な用途に使用することができる。例えば、フォーム、エラストマー、塗料、繊維、接着剤、床材、シーラント、医用材料、人工皮革等に広く用いることができる。
【0082】
本発明で製造されるポリウレタン、ポリウレタンウレア、及びそのウレタンプレポリマー溶液は、注型ポリウレタンエラストマーに使用できる。例として、圧延ロール、製紙ロール、事務機器、プレテンションロール等のロール類、フォークリフト、自動車車両ニュートラム、台車、運搬車等のソリッドタイヤ、キャスター等、工業製品として、コンベアベルトアイドラー、ガイドロール、プーリー、鋼管ライニング、鉱石用ラバースクリーン、ギア類、コネクションリング、ライナー、ポンプのインペラー、サイクロンコーン、サイクロンライナー等がある。又、OA機器のベルト、紙送りロール、複写用クリーニングブレード、スノープラウ、歯付ベルト、サーフローラー等にも適用される。
【0083】
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、熱可塑性エラストマーとしての用途にも適用される。例えば、食品、医療分野で用いる空圧機器、塗装装置、分析機器、理化学機器、定量ポンプ、水処理機器、産業用ロボット等におけるチューブやホース類、スパイラルチューブ、消防ホース等として使用できる。又、丸ベルト、Vバルト、平ベルト等のベルトとして、各種伝動機構、紡績機械、荷造り機器、印刷機械等に用いられる。又、履物のヒールトップや靴底、カップリング、パッキング、ポールジョイント、ブッシュ、歯車、ロール等の機器部品、スポーツ用品、レジャー用品、時計のベルト等が例示できる。さらに自動車部品としては、オイルストッパー、ギアボックス、スペーサー、シャーシー部品、内装品、タイヤチェーン代替品等が挙げられる。又、キーボードフィルム、自動車用フィルム等のフィルム、カールコード、ケーブルシース、ベロー、搬送ベルト、フレキシブルコンテナー、バインダー、合成皮革、ディピンイング製品、接着剤等が例示できる。
【0084】
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、溶剤系二液型塗料としての用途にも適用可能であり、楽器、仏壇、家具、化粧合板、スポーツ用品等の木材製品に適用できる。又、タールエポキシウレタンとして自動車補修用にも使用できる。
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、湿気硬化型の一液型塗料、ブロックイソシアネート系溶媒塗料、アルキド樹脂塗料、ウレタン変性合成樹脂塗料、紫外線硬化型塗料等の成分として使用可能であり、例えば、プラスチックバンパー用塗料、ストリッパブルペイント、磁気テープ用コーティング剤、床タイル、床材、紙、木目印刷フィルム等のオーバープリントワニス、木材用ワニス、高加工用コイルコート、光ファイバー保護コーティング、ソルダーレジスト、金属印刷用トップコート、蒸着用ベースコート、食品缶用ホワイトコート等として適用できる。
【0085】
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、接着剤として、食品包装、靴、履物、磁気テープバインダー、化粧紙、木材、構造部材等に適用され、又、低温用接着剤、ホットメルトの成分としても用いることができる。
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、バインダーとして、磁気記録媒体、インキ、鋳物、焼成煉瓦、グラフト材、マイクロカプセル、粒状肥料、粒状農薬、ポリマーセメントモルタル、レジンモルタル、ゴムチップバインダー、再生フォーム、ガラス繊維サイジング等に使用可能である。
【0086】
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、繊維加工剤の成分として、防縮加工、防皺加工、撥水加工等に使用できる。
本発明で製造されるポリウレタン、ポリウレタンウレア、及びそのウレタプレポリマー溶液は、シーラント・コーキングとして、コンクリート打ち壁、誘発目地、サッシ周り、壁式PC目地、ALC目地、ボード類目地、複合ガラス用シーラント、断熱サッシシーラント、自動車用シーラント等に使用できる。
【0087】
本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液は、医療材料としての使用が可能であり、血液適合材料として、チューブ、カテーテル、人工心臓、人工血管、人工弁等、又、使い捨て素材としてカテーテル、チューブ、バッグ、手術用手袋、人工腎臓ポッティング材料等に使用できる。
本発明で製造されるポリウレタン、ポリウレタンウレア、及びそのウレタンプレポリマー溶液は、末端を変性させた後にUV硬化型塗料、電子線硬化型塗料、フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物、光硬化型の光ファイバー被覆材組成物等の原料として用いることができる。
【0088】
特に、フィルムや繊維に用いられるのが本発明で製造されるポリウレタンの弾性性能や透湿性の特徴を生かす上で好ましく、これらの具体的用途としては、医療、衛生材料、人工皮革、及び衣類用の弾性繊維に用いることが好ましい。
以上、本発明で製造されるポリウレタン及びそのウレタンプレポリマー溶液を用いた用途例を述べたが、本発明はこれらの用途に限定されるものではない。
以下にフィルムと繊維の製造方法を記載するが、特に製法が制限される訳ではない。
【0089】
<フィルムの製造方法>
フィルムの製造方法は特に限定はなく、公知の方法が使用できる。例えば、フィルムの製造方法として、支持体や離形材にポリウレタン樹脂溶液を塗布し、凝固浴中で溶媒その他の可溶性物質を抽出する湿式製膜法と、支持体や離形材にポリウレタン樹脂溶液を塗布し、加熱あるいは減圧等により溶媒を乾燥させる乾式製膜法が挙げられる。乾燥製膜する際に用いる支持体は特に限定されないが、ポリエチレンやポリプロピレンフィルム、ガラス、金属、剥離材を塗布した紙はあるいは布等が用いられる。塗布の方式は特に限定されないが、ナイフコーター、ロールコーター、スピンコーター、グラビアコーター等の公知のいずれでもよい。乾燥温度は乾燥機の能力によって任意に設定できるが、乾燥不十分、あるいは急激な脱溶媒が起こらない温度範囲を選ぶことが必要である。好ましくは室温〜300℃、より好ましくは60℃〜200℃の範囲である。
【0090】
<フィルムの物性>
本発明のフィルムの厚さは、通常、10〜1000μm、好ましくは10〜500μm、より好ましくは10〜100μmである。フィルムの厚さが厚すぎると、十分な透湿性が得られない傾向があり、又、薄過ぎると、ピンホールができやすかったり、フィルムがブロッキングしやすく取り扱いにくくなる傾向がある。又、このフィルムは、医療用粘着フィルムや衛生材料、包装材、装飾用フィルム、その他透湿性素材等に好ましく用いることができる。又、フィルムは布や不織布等の支持体に塗布したものでもよい。この場合は10μmよりもさらに薄くてもかまわない。
【0091】
破断伸度は、通常100%以上、好ましくは200%以上、より好ましくは300%以上、更に好ましくは500%以上である。 破断強度は、通常5MPa以上、好ましくは
10MPa以上、より好ましくは20MPa以上、更に好ましくは30MPa以上である。
23℃における300%伸長―収縮繰り返し試験において、1回目の伸長時の150%伸長における応力に対する1回目の収縮時の150%伸長における応力の比で捉える弾性保持率(Hr1/H1)は、通常10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上である。同じく5回目の伸長時の150%伸長における応力に対する5回目の収縮時の150%伸長における応力の比で捉える弾性保持率(Hr5/H5)は、通常30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは85%以上である。
【0092】
又、23℃における300%伸長―収縮繰り返し試験において、1回目の伸長時の150%伸長における応力に対する2回目の伸長時の150%伸長における応力の比で捉える弾性保持率(H2/H1)は、通常20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上である。
又、23℃における300%伸張―収縮繰り返し試験での2回目の残留歪は、通常40%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下である。又、5回目における残留歪は、通常50%以下、好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下である。
尚、ポリウレタンフィルムと糸の物性は非常に良い相関があり、フィルムの試験等で得られた物性値は、糸(繊維)においても同様の傾向を示す。
【0093】
<ポリウレタン繊維の用途>
本発明のポリウレタンを用いた繊維は、更に用途を具体的に挙げると、レッグ、パンティー・ストッキング、おむつカバー、紙おむつ、スポーツ用衣類、下着、靴下、ファッション性に優れたストレッチ性の衣類、水着、レオタード等の用途に好ましく用いられる。これは、伸張回復性、弾性、耐加水分解性、耐光性、耐酸化性、耐油性、加工性等に優れているからである。
【実施例】
【0094】
以下に本発明の実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例における分析、測定は、以下の方法に拠った。
<ポリヒドロキシ炭化水素系重合体、及びポリエーテルポリオールの数平均分子量>
本発明で用いる、ポリヒドロキシ炭化水素系重合体及びポリエーテルポリオールの数平均分子量はJIS K 1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法より求めた。
【0095】
<ポリウレタン及びポリウレタンウレアの分子量>
得られたポリウレタン又はポリウレタンウレアの分子量は、ポリウレタン又はポリウレタンウレアのジメチルアセトアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」(カラム:TskgelGMH−XL(2本)〕を用い、標準ポリスチ
レン換算での数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0096】
<はく離試験方法>
得られたフィルムを2枚重ね合わせ、試験片打ち抜き機にて試料長4cm(各々1.5cm長の引張試験機固定時の初期試験長部分と2.5cmの重ね部分を含む)、幅1cmのフィルムを得た。試験片はフィルム重ね合わせ部分を200g/cmの圧力を印加した状態で温度25℃、相対湿度50%の条件下で10分間放置した後、引張試験機(FU
DOH製「レオメーターNRM−2003J」)を用いて被験フィルムを300mm/分の
速度で引っ張ることによってT型剥離強度を測定した。
【0097】
<フィルム物性>
ポリウレタン又はポリウレタンウレア試験片は幅10mm、長さ100mm、厚み約50μmの短冊状とし、JIS K6301に準じ、引張試験機〔オリエンテック社製、製品名「テンシロンUTM−III −100」〕を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃(相対湿度55%)での引張破断強度、引張破断伸度、100%伸長時と300%伸長時の強度を測定した。
<表面原子組成>
表面原子組成は、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)測定により求めた。測定は、アルバック−ファイ株式会社ESCA装置「PHI Model 5800」を用いて実施した。測定条件は、以下の通りである。
・励起X線:monochromatic AlKα線(1486.6eV)
・X線出力:(フィラメント)14kV、350W(7mm)
・中和銃:使用(帯電防止のため)
・インプットレンズ設定(Lens Area Mode):Minimum Area Mode
・分析モード(LENS MODE):5(最小領域モード)
・アパーチャー番号:5
・放出角(試料法線から検出器中心軸が成す角度):45度
・PassEnergy:23.5eV
・チャージシフト補正:C-H結合炭素のC1sピークの結合エネルギーを285.0eVに合わせるように行った。
【0098】
酸素原子の炭素原子に対する相対存在比については、以下の式で算出した。
表面原子組成(相対存在比 O/C)=(酸素O1sのピーク面積/酸素O1sピークのピーク補正相対感度係数)/(炭素C1sのピーク面積/炭素C1sピークのピーク補正相対感度係数)
尚、酸素O1s及び炭素C1s各ピークの面積は装置付属のMultiPak Ver.8.2Cソフトを使用しSavitzky−Golayアルゴリズムを用いたスムージング処理(9ポイント)を行いshirley法のバックグラウンド曲線を使って求めた。相対存在比算出に用いた酸素O1s及び炭素C1sピーク結合エネルギー及びMultiPak Ver.8.2Cソフトで用いられているそれぞれの補正相対感度係数は次の通りである。
・O1s:結合エネルギー=532.5eV付近、
・補正相対感度係数=13.118
・C1s:結合エネルギー=285.0eV付近、
・補正相対感度係数=5.220
炭素C1sのピーク面積については、280eV及び290.5eV付近の極小値をshirleyで結んで得られる面積と、290.5eV及び293eV付近の極小値をshirleyで結んで得られるベンゼン環のshake up由来のピーク(291〜293eV付近)の面積を足したものを用いた。
【0099】
<水接触角>
協和界面科学株式会社製の自動接触角計DM―300を用い、ポリウレタンフィルム表面に1.5〜2.0μLの水滴を落とし、5秒後に水滴の接線と成形体表面のなす内角を測定した。フィルムの場所を変えて同じ操作を5回繰り返し、得られた5点の値の平均値を水接触角とした。
【0100】
<実施例1>
容量が1Lのフラスコにあらかじめ40℃に加温したポリテトラメチレンエーテルグリコール(水酸基価より算出した数平均分子量1968、三菱化学社製)142.5重量部と、三菱化学社製の水素化ポリブタジエンポリオール(商品名「ポリテールHA」数平均分子量:2187、1分子当たりの水酸基の平均結合数:1.8)7.5重量部を加え混合
し、この混合物をポリウレタン製造用の原料とした。この混合物に対するポリテールHAの割合は5重量%であった。その後、40℃に加温した4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記することがある。)31重量部を加えた。このときの、NCO/活性水素基(ポリエーテルポリオールと鎖延長剤)の反応当量比は1.6であった。そして、このフラスコを45℃のオイルバスにセットし、窒素雰囲気下にて碇型攪拌翼で攪拌しつつ、1時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃
にて3時間保持した。残存NCO基を過剰量のジブチルアミンと反応させその後残存ジブ
チルアミンを塩酸により逆滴定することによりNCOの反応率が99%を越えていることを確認した後に、オイルバスを取り去り、フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAC」と略記することがある。関東化学社製)271部を加え、室温にて攪拌し溶解させることでポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。
【0101】
上記ポリウレタンプレポリマー溶液380重量部を10℃に冷却し保持しておき、一方で、鎖延長剤として用いるエチレンジアミン(EDA)/ジエチルアミン(DEA)=89/11(モル比)=1.72/0.27(重量比)の0.6%DMAC溶液を調製した。この0.6%DMAC溶液に10℃に冷却し保持した上記ポリウレタンプレポリマー溶液を高速に攪拌しながら添加してポリマー濃度20%のポリウレタンウレアDMAC溶液を得た。
【0102】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、GPCで重量平均分子量及び分子量分布の測定を実施したところ、重量平均分子量17.2万、分子量分布は2.4であった。また、得られたポリウレタン中の(b)ポリテトラメチレンエーテルグリコールの割合は78重量%であった。
こうして得られたポリウレタンウレア溶液をガラス板上にキャストし、60℃にて乾燥させて厚さ約50μmの無色透明なフィルムを得た。フィルムの厚みは厚み測定器によって測定した。
【0103】
このフィルムのはく離試験を行ったところ、はく離に必要な応力は5.7g/cmであり、はく離性は良好であった。また、得られた弾性フィルムは表1に示す通りの特性であった。また、このフィルムの表面原子組成は0.089、水接触角は90度であった。結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1において、ポリウレタン製造用原料のポリテトラメチレンエーテルグリコール(水酸基価より算出した数平均分子量1968、三菱化学社製)148.5重量部と、「ポリテールHA」(数平均分子量:2187、1分子当たりの水酸基の平均結合数:1.8 )1.5重量部を加え混合し(この混合物中におけるポリテールHAの割合は1重量%)、及びエチレンジアミン/ジエチルアミン=1.81/0.28(重量比)とした以外は実施例1と同様にしてプレポリマー及びポリウレタンウレア溶液を得た。
【0104】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、GPCで重量平均分子量及び分子量分布の測定を実施したところ、重量平均分子量20.2万、分子量分布は2.5であった。また、得られたポリウレタン中の(b)ポリテトラメチレンエーテルグリコールの割合は81重量%であった。
このポリウレタンウレア溶液から厚さ約50μmの無色透明なポリウレタンウレアフィルムを得た。
【0105】
このフィルムのはく離試験を行ったところ、はく離に必要な応力は5.7g/cmであり、はく離性は良好であった。また、得られた弾性フィルムは表1に示す通りの特性であった。また、このフィルムの表面原子組成は0.119、水接触角は89度であった。結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例2において、ポリウレタン製造用原料のポリテトラメチレンエーテルグリコール(水酸基価より算出した数平均分子量1968、三菱化学社製)149.85重量部と、「ポリテールHA」(数平均分子量:2187、1分子当たりの水酸基の平均結合数:1.8 )0.15重量部を加え混合し(この混合物中におけるポリテールHAの割合は0.1重量%)とした以外は同様にしてプレポリマー及びポリウレタンウレア溶液を得た。
【0106】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、GPCで重量平均分子量及び分子量分布の測定を実施したところ、重量平均分子量19.8万、分子量分布は2.4であった。また、得られたポリウレタン中の(b)ポリテトラメチレンエーテルグリコールの割合は82重量%であった。
このポリウレタンウレア溶液から厚さ約50μmの無色透明なポリウレタンウレアフィルムを得た。
【0107】
このフィルムのはく離試験を行ったところ、はく離に必要な応力は33g/cmであり、はく離性は良好であった。また、得られた弾性フィルムは表1に示す通りの特性であった。また、このフィルムの表面原子組成は0.194であった。結果を表1に示す。
<実施例4>
実施例1において、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(水酸基価より算出した数平均分子量1968、三菱化学社製)105重量部と、「ポリテールHA」(数平均分子量:2187、1分子当たりの水酸基の平均結合数:1.8 )45重量部を加え混合し(この混合物中におけるポリテールHAの割合は30重量%)、とした以外は同様にしてプレポリマー及びポリウレタンウレア溶液を得た。
【0108】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、GPCで重量平均分子量及び分子量分布の測定を実施したところ、重量平均分子量19.8万、分子量分布は2.4であった。また、得られたポリウレタン中の(b)ポリテトラメチレンエーテルグリコールの割合は57重量%であった。
このポリウレタンウレア溶液から厚さ約50μmの若干白濁したポリウレタンウレアフィルムを得た。
【0109】
このフィルムのはく離試験を行ったところ、はく離に必要な応力は33g/cmであり、はく離性は良好であった。また、得られた弾性フィルムは表1に示す通りの特性であった。
<比較例1>
実施例1において、「ポリテールHA」を使用せずに、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(水酸基価より算出した数平均分子量1968、三菱化学社製)150重量部をポリウレタン製造用の原料とした以外は同様にしてプレポリマー及びポリウレタンウレア溶液を得た。
【0110】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、GPCで重量平均分子量及び分子量分布の測定を実施したところ、重量平均分子量19.1万、分子量分布は2.6であった。また、得られたポリウレタン中の(b)ポリテトラメチレンエーテルグリコールの割合は78重量%であった。
このポリウレタンウレア溶液から厚さ約50μmの無色透明なポリウレタンウレアフィルムを得た。
【0111】
このフィルムのはく離試験を行ったところ、はく離に必要な応力は50g/cmであり、はく離時に初期試験長に対して12%のフィルムの延伸が見られた。また、得られた弾性フィルムは表1に示す通りの特性であった。また、このフィルムの表面原子組成は0.239、水接触角は76度であった。結果を表1に示す。
【0112】
【表1】

<実施例5>
[ポリエステルポリオールの製造]
撹拌子を備えた100mL四つ口丸底フラスコに1.2mgのテトラブチルオルトチタネート(東京化成社)、30g(20.0mmol)の水添ポリブタジエンポリオールGI−1000(日本曹達社、分子量1500)、10g(87.6mmol)のε-カプロラクトン (Across社)を測り取った。還流管および窒素導入管を取り付け、反応容器をオイルバスに浸して30分で190℃まで昇温し、190℃で7h反応させてポリエステルポリオール1とした。表2にこのポリエステルポリオール1の理論分子量、理論酸素含有量も併せて示す。
[ポリウレタンウレアの製造]
容量が1Lのフラスコにあらかじめ40℃に加温したポリテトラメチレンエーテルグリコール(水酸基価より算出した数平均分子量1955、三菱化学社製)123.9重量部と、上記で合成したポリエステルポリオール1を6.52重量部加えて混合し、この混合物をポリウレタン製造用の原料とした。この混合物に対するポリエステルポリオール1の割合は5重量%であった。その後、40℃に加温した4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記することがある。)26.8重量部を加えた。このときの、NCO/活性水素基(ポリエーテルポリオールと鎖延長剤)の反応当量比は1.6であった。そして、このフラスコを45℃のオイルバスにセットし、窒素雰囲気下にて碇型攪拌翼で攪拌しつつ、1時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃にて3時間保持した。残存NCO基を過剰量のジブチルアミンと反応させその後残存ジブチルアミンを塩酸により逆滴定することによりNCOの反応率が99%を越えていることを確認した後に、オイルバスを取り去り、フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAC」と略記することがある。関東化学社製)236部を加え、室温にて攪拌し溶解させることでポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。
【0113】
上記ポリウレタンプレポリマー溶液を10℃に冷却し保持しておき、一方で、鎖延長剤として用いるエチレンジアミン(EDA)/ジエチルアミン(DEA)=89/11(モル比)=1.66/0.24(重量比)の0.5%DMAC溶液を調製した。この0.5%DMAC溶液に10℃に冷却し保持した上記ポリウレタンプレポリマー溶液を高速に攪拌しながら添加してポリマー濃度20%のポリウレタンウレアDMAC溶液を得た。
【0114】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、GPCで重量平均分子量及び分子量分布の測定を実施したところ、重量平均分子量21.9万、分子量分布は2.7であった。また、得られたポリウレタン中の(b)ポリテトラメチレンエーテルグリコールの割合は78重量%であった。
こうして得られたポリウレタンウレア溶液をガラス板上にキャストし、60℃にて乾燥させて厚さ約50μmの無色透明なフィルムを得た。フィルムの厚みは厚み測定器によって測定した。
【0115】
このフィルムの剥離試験を行ったところ、剥離に必要な応力は4.4g/cmであり、剥離性は良好であった。また、得られた弾性フィルムは表3に示す通りの特性であった。また、このフィルムの表面原子組成は0.097、水接触角は95度であった。結果を表3に示す。
<実施例6>
[ポリエステルポリオールの製造]
GI−1000の代わりに60g(28.6mmol)のGI−2000(日本曹達社、分子量2100)を使用し、テトラブチルオルトチタネート使用量を3.6mg、ε-カプロラクトン 使用量を12g(105mmol)にした以外は実施例5と全く同様にしてポリエステルポリオール2を製造した。表2に、このポリエステルポリオール2の理論分子量、理論酸素含有量も併せて示す。
[ポリウレタンウレアの製造]
表3に示したポリウレタン製造の原料仕込量で、実施例5と同様にしてポリウレタンウレア溶液とフィルムを得た。このフィルムの剥離試験を行ったところ、剥離に必要な応力は6.7g/cmであり、剥離性は良好であった。また、得られた弾性フィルムは表3に示す通りの特性であった。また、このフィルムの表面原子組成は0.094、水接触角は94度であった。結果を表3に示す。
【0116】
<実施例7>
[ポリエステルポリオールの製造]
51.3g(24.4mmol)のGI−2000、2.5mgのテトラブチルオルトチタネート、22g(193mmol)のε-カプロラクトンを使用した以外は実施例6
と全く同様にしてポリエステルポリオール3を製造した。表2に、このポリエステルポリオール3の理論分子量、理論酸素含有量も併せて示す。
[ポリウレタンウレアの製造]
表3に示したポリウレタン製造時の原料仕込み量で、実施例5と同様にしてポリウレタンウレア溶液とフィルムを得た。このフィルムの剥離試験を行ったところ、剥離に必要な応力は3.6g/cmであり、剥離性は良好であった。また、得られた弾性フィルムは表3に示す通りの特性であった。また、このフィルムの表面原子組成は0.100、水接触角は95度であった。結果を表3に示す。
【0117】
<実施例8>
[ポリエステルポリオールの製造]
GI−1000の代わりに60g(27.9mmol)の水添ポリイソプレンポリオールであるエポール(出光興産、分子量1800)を使用し、テトラブチルオルトチタネー
ト使用量を3.6mg、ε-カプロラクトン 使用量を10g(87.6mmol)にした以外は実施例5と全く同様にしてポリエステルポリオール4を製造した。表2に、このポリエステルポリオール4の理論分子量、理論酸素含有量も併せて示す。
【0118】
[ポリウレタンウレアの製造]
表3に示したポリウレタン製造時の原料仕込み量で、実施例5と同様にしてポリウレタンウレア溶液とフィルムを得た。このフィルムの剥離試験を行ったところ、剥離に必要な応力は4.5g/cmであり、剥離性は良好であった。また、得られた弾性フィルムは表3に示す通りの特性であった。また、このフィルムの表面原子組成は0.154、水接触角は88度であった。結果を表3に示す。
【0119】
<実施例9>
[ポリエステルポリオールの製造]
撹拌子を備えた100mL四つ口丸底フラスコに4.2mgのテトラブチルオルトチタネート(東京化成社)、66.0g(44.0mmol)の水添ポリブタジエンポリオールGI−1000(日本曹達社、分子量1500)、3.8g(22.0mmol)のアジピン酸ジメチル (東京化成社)を測り取った。還流管および窒素導入管を取り付け、反応容器をオイルバスに浸して30分で190℃まで昇温し、190℃で7h反応させてポリエステルポリオール5とした。反応中、留出部をテープヒーターで120℃に加温し、反応により生成したメタノールを窒素に同伴させて留去した。表2に、このポリエステルポリオール5の理論分子量、理論酸素含有量も併せて示す。
【0120】
[ポリウレタンウレアの製造]
表3に示したポリウレタン製造時の原料仕込み量で、実施例5と同様にしてポリウレタンウレア溶液とフィルムを得た。このフィルムの剥離試験を行ったところ、剥離に必要な応力は10.8g/cmであり、剥離性は良好であった。また、得られた弾性フィルムは表3に示す通りの特性であった。また、このフィルムの表面原子組成は0.072、水接触角は96度であった。結果を表3に示す。
【0121】
<実施例10>
[ポリエステルポリオールの製造]
アジピン酸ジメチルの代わりに3.09g(21.1mmol)のコハク酸ジメチル(東京化成社)を使用し、GI−1000使用量を63.4g(42.3mmol)、テトラブチルオルトチタネート使用量を2.2mgにした以外は実施例9と全く同様にしてポリエステルポリオール6を製造した。表2に、このポリエステルポリオール6の理論分子量、理論酸素含有量も併せて示す。
【0122】
[ポリウレタンウレアの製造]
表3に示したポリウレタン製造時の原料仕込み量で、実施例5と同様にしてポリウレタンウレア溶液とフィルムを得た。このフィルムの剥離試験を行ったところ、剥離に必要な応力は13.0g/cmであり、剥離性は良好であった。また、得られた弾性フィルムは表3に示す通りの特性であった。また、このフィルムの表面原子組成は0.083、水接触角は98度であった。結果を表3に示す。
【0123】
<比較例2>
[ポリウレタンウレアの製造]
表3に示したポリウレタン製造時の原料仕込み量で、実施例5と同様にしてポリエステルポリオールを含有しないポリウレタンウレア溶液とフィルムを得た。このフィルムの剥離試験を行ったところ、剥離に必要な応力は66.3g/cmであり、剥離性が悪かった。また、得られた弾性フィルムは表3に示す通りの特性であった。また、このフィルムの表面原子組成は0.239、水接触角は76度であった。結果を表3に示す。
【0124】
【表2】

【0125】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、(b)ポリエーテルポリオール、(c)ポリイソシアネート化合物、及び(d)鎖延長剤の原料を付加重合反応させて、ポリウレタンを得るにあたり、(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体と(b)ポリエーテルポリオー
ルの合計に対する(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化
水素系重合体の割合が、0.01〜50.00重量%であって、アミド系溶媒、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる溶媒の共存下において反応させることを特徴とするポリウレタンの製造方法。
【請求項2】
前記(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体の数平均分子量が500〜5000であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項3】
前記(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体の1分子あたりの平均水酸基数が1.5〜2.7であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項4】
前記(c)ポリイソシアネート化合物が、芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項5】
前記(d)鎖延長剤が、ポリアミン化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項6】
前記(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体の主骨格が水素添加ポリブタジエンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項7】
前記(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体が、(A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体と、(B)エステル基含有化合物またはカルボキシ基含有化合物とから形成されるポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項8】
前記ポリエステルポリオールが、前記(A)と前記(B)が少なくとも一つのエステル結合を形成し、かつ該ポリエステルポリオール中の酸素含有量が2.0質量%以上、13.5質量%以下であることを特徴とする請求項7に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項9】
前記(B)がポリラクトンであることを特徴とする請求項7又は8に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項10】
前記ポリエステルポリオールが、前記(A)と前記(B)で形成される、(B)(A)
(B)型のブロック共重合体であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項11】
前記(B)がジカルボン酸であることを特徴とする請求項7又は8に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項12】
前記ジカルボン酸の炭素数が、2以上15以下であることを特徴とする請求項11に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項13】
前記ポリエステルポリオールが、前記(A)と前記(B)で形成される、(AB)A型(ただし、nは1以上の整数)のブロック共重合体である請求項10または11に記載
のポリウレタンの製造方法。
【請求項14】
前記請求項1〜13のいずれかに記載のポリウレタンの製造方法によって製造されたことを特徴とするポリウレタン。
【請求項15】
(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、(b)ポリエーテルポリオール、(c)ポリイソシアネート化合物、及び(d)鎖延長剤を含むポリウレタンであって、ポリウレタン中の(b)ポリエーテルポリオールが占める重量割合が54重量%〜99重量%であることを特徴とするポリウレタン。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のポリウレタンからなることを特徴とするポリウレタン成形体。
【請求項17】
(a)分子末端に少なくとも1個の水酸基を有するポリヒドロキシ炭化水素系重合体、(b)ポリエーテルポリオール、(c)ポリイソシアネート化合物、及び(d)鎖延長剤を含むポリウレタンからなるポリウレタン成形体であって、該ポリウレタン成形体の表面の原子組成(酸素原子/炭素原子)が0.22以下であることを特徴とするポリウレタン成形体。
【請求項18】
前記ポリウレタン成形体の表面の水接触角が80度以上であることを特徴とする請求項17に記載のポリウレタン成形体。
【請求項19】
請求項14又は15に記載のポリウレタンからなることを特徴とするフィルム。
【請求項20】
請求項14又は15に記載のポリウレタンからなることを特徴とする繊維。
【請求項21】
(A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体と、(B)エステル基含有化合物またはカルボキシ基含有化合物とから形成されるポリエステルポリオールであって、前記(A)と前記(B)が少なくとも一つのエステル結合を形成し、かつ前記ポリエステルポリオール中の酸素含有量が2.0質量%以上、13.5質量%以下であることを特徴とするポリエステルポリオール。
【請求項22】
前記(B)がポリラクトンであることを特徴とする請求項21に記載のポリエステルポリオール。
【請求項23】
前記ポリエステルポリオールが、前記(A)と前記(B)で形成される、(B)(A)
(B)型のブロック共重合体であることを特徴とする請求項21または22に記載のポリエステルポリオール。
【請求項24】
前記(B)がジカルボン酸であることを特徴とする請求項21に記載のポリエステルポリオール。
【請求項25】
前記ジカルボン酸の炭素数が、2以上15以下であることを特徴とする請求項24記載のポリエステルポリオール。
【請求項26】
前記ポリエステルポリオールが、前記(A)と前記(B)で形成される、(AB)A型のブロック共重合体(ただし、nは1以上の整数)であることを特徴とする請求項24
または25に記載のポリエステルポリオール。
【請求項27】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が、500以上5000以下であることを特徴とする請求項21〜26のいずれかに記載のポリエステルポリオール。
【請求項28】
前記(A)ポリヒドロキシ炭化水素重合体が、水素添加ポリジエンポリオールであることを特徴とする請求項21〜27のいずれか1項に記載のポリエステルポリオール。
【請求項29】
請求項21〜28のいずれか1項に記載されたポリエステルポリオールを構成する水酸基の少なくとも1つが、ウレタン結合を形成していることを特徴とする重合体。

【公開番号】特開2011−46912(P2011−46912A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270485(P2009−270485)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】