説明

ポリウレタンを含有するポリマー組成物

【課題】ポリウレタンを含有するポリマー組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1種のアクリルポリマーおよび少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンを含む組成物が提供され、ここで、前記アクリルポリマーは、前記アクリルポリマーの乾燥重量基準で5重量%以上の少なくとも1種のカルボキシル官能性モノマーの重合単位を含む。このようなポリマー組成物を製造する方法およびかかるポリマー組成物を用いて髪を処理する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
互いに異なる組成を有する複数のポリマーを含有するポリマー組成物を提供することがしばしば望ましい。例えば、少なくとも1種のポリウレタンおよび少なくとも1種のアクリルポリマーを含有するポリマー組成物を提供することが有用であることが多い。ポリウレタンは、例えば、ポリエステルなどの他のポリマーと異なる独自の性質を有する。スルホン化ポリウレタンはさらに水および他の水性液体媒体中で望ましい安定性を有するか、または水と望ましい混和性を有するか、あるいは両方を有する。物理的および化学的性質に加えて、スルホン化ポリウレタンは、他のスルホン化ポリマー、例えば、スルホン化ポリエステルポリマーと比較して、製造が比較的容易であり、費用がかからない。アクリルポリマーも独自の特性を提供する。カルボキシル官能性モノマー単位を含有するアクリルポリマーは、さらなる望ましい特性、例えば、水および他の水性液体媒体中の望ましい安定性、または水との望ましい混和性、あるいはその両方を有する。
【0002】
米国特許第6,093,384号はヘアケア組成物であって、ポリエステルタイプの既存のポリマー粒子の内部および/または部分的にその表面でのラジカルモノマーのフリーラジカル重合により得られる水性ポリマー分散物を含む組成物を記載している。
【特許文献1】米国特許第6,093,384号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スルホン化ポリウレタンを含有し、カルボキシル官能性モノマー単位を含むアクリルポリマーを含有する組成物を提供するのが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様において、少なくとも1種のアクリルポリマーおよび少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンを含むポリマー組成物が提供され、ここで、前記アクリルポリマーは、前記アクリルポリマーの乾燥重量基準で5重量%以上の少なくとも1種のカルボキシ官能性モノマーの重合単位を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本明細書において用いられ、FW Billmeyer,JR.によりTextbook of Polymer Science、第2版、1971において定義されるように、「ポリマー」とは、より小さな化学的繰り返し単位の反応生成物から構成される比較的大きな分子である。ポリマーは、直鎖、分枝鎖、星状、ループ状、超分岐、架橋、またはその組み合わせである構造を有することができ;ポリマーは1種類の繰り返し単位を有してもよいし(ホモポリマー)、あるいは1種類より多い繰り返し単位を有してもよい(コポリマー)。コポリマーは、ランダム、シークエンス、ブロック、他の配列、あるいはその任意の混合物又は組み合わせで配列された様々な種類の繰り返し単位を有することができる。
【0006】
本明細書において「重合」とは、モノマーを反応させてポリマーを形成することを意味する。
【0007】
重合は、任意の種類の重合法、例えば、フリーラジカル開始重合および縮合重合により行うことができる。フリーラジカル開始重合法のうち、重合法は、例えば、乳化重合、ミクロエマルジョン重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、あるいはその組み合わせであってよい。いくつかの場合において、水性乳化重合が行われ、生成物は水性ポリマーラテックスである。縮合重合法のうち、重合法は、例えば、溶液重合、塊状重合、連続相重合、またはその組み合わせでありうる。
【0008】
重合法は、モノマーが重合反応容器(すなわち、その中で重合が行われる容器)に添加される方法により独立して特徴づけることもできる。かかる添加法は、例えば、バッチ、半バッチ、ショット、漸次添加、またはその任意の組み合わせであってよい。
【0009】
ポリマー分子量は、標準的方法、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、ゲル透過クロマトグラフィーまたはGPCとも呼ばれる)または固有粘度により測定することができる。一般に、ポリマーは1000以上の重量平均分子量(Mw)を有する。ポリマーは非常に高いMwを有することができ;あるポリマーは1000000を超えるMwを有し;典型的なポリマーは1000000以下のMwを有する。あるポリマーは架橋し、架橋ポリマーは無限のMwを有すると考えられる。あるポリマーはMn(数平均分子量)により特徴づけられる。
【0010】
互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成しうる分子は、本明細書においては「モノマー」と呼ばれる。
【0011】
本発明において有用なモノマーの種類の一例は、例えば、エチレン性不飽和モノマー(すなわち、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するモノマー)である。典型的なエチレン性不飽和モノマーは、500未満の分子量を有する。このようなモノマーには、例えば、ビニルモノマーが含まれ、これは少なくとも1つのビニル基(すなわち、
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R、R、R、およびRは、独立して、水素、ハロゲン、脂肪族基(例えば、アルキル基)、置換脂肪族基、アリール基、置換アリール基、または別の置換または非置換有機基、あるいはその任意の組み合わせである))を有する分子である。幾つかの好適なビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、置換スチレン、ジエン、エチレン、エチレン誘導体、およびその混合物が挙げられる。エチレン誘導体は、例えば、以下のものの非置換または置換体を包含する:酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、ハロゲン化アルケン、およびその混合物。本明細書において用いられる場合、「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味し;「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し;「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。「置換された」とは、少なくとも1つの結合した化学基、例えば、アルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基、およびその組み合わせを有することを意味する。幾つかの実施態様において、置換モノマーは、例えば、1より多い炭素−炭素二重結合を有するモノマー、ヒドロキシル基を有するモノマー、他の官能基を有するモノマー、および官能基の組み合わせを有するモノマーを包含する。
【0014】
あるモノマーを単独または他のモノマーとともに重合することにより製造されるポリマーは、本明細書においては、モノマー単位としてのモノマーを包含すると言われる。
【0015】
幾つかの実施態様において、本発明は、1以上の連鎖移動剤の使用を含む。連鎖移動剤は、モノマーのラジカル重合の間の連鎖移動反応に関与できる化合物である。
【0016】
本明細書において用いられる場合、「アクリルモノマー」は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル、(メタ)アクリル酸のアミド、その置換体、およびその混合物から選択される任意のモノマーである。
【0017】
アクリルポリマーは、ポリマーの重量基準で50重量%以上のアクリルモノマーであるモノマー単位を有するポリマーである。あるアクリルポリマーは、ポリマーの重量基準で75重量%以上、または80重量%以上、または90重量%以上のアクリルモノマー単位を有する。幾つかの場合において、アクリルポリマーは、アクリルモノマー以外のビニルモノマーであるモノマーの共重合したモノマー単位を包含する。アクリル以外のビニルモノマーは、例えば、スチレン、置換スチレン、有機酸のビニルエステル、N−ビニル化合物、ジエン、マレイン酸、無水マレイン酸、他の不飽和ジカルボン酸またはその無水物、およびその混合物を包含する。
【0018】
本明細書において用いられる場合、「ポリウレタン」は、主鎖中に1分子あたり2以上のウレタン結合基を含有する物質である。ウレタン結合基は構造:
【0019】
【化2】

【0020】
を有する。通常、ポリウレタンは少なくとも1種のポリオールの少なくとも1種のポリイソシアネートとの反応生成物である。ポリオールは1分子あたり2以上のヒドロキシル基を有する物質である。ポリイソシアネート1分子あたり2以上のイソシアネート基を有する物質である。あるポリウレタンは、少なくとも1種のポリオール、少なくとも1種のポリイソシアネート、および少なくとも1種のさらなる反応物質、例えば、ポリアミン、アミノアルコール、またはその混合物の反応生成物である。ポリアミンは1分子あたり2以上のアミン基を有する物質である。イソシアネート基がアミン基と反応する場合、尿素結合が形成される。あるポリウレタンはポリアミンを使用せずに製造される。アミノアルコールは少なくとも1個のアミノ基および少なくとも1個のヒドロキシル基を有する物質である。あるポリウレタンはアミノアルコールを使用せずに製造される。あるポリウレタンはポリアミンおよびアミノアルコールを使用せずに製造される。あるポリウレタンはポリイソシアネートおよびポリオール以外の任意の反応物質を使用せずに製造される。
【0021】
本明細書において用いられる場合、「ハイブリッドポリマー組成物」は、第一ポリマーの存在下での第二ポリマーの重合の結果得られる組成物であり、ここで、前記組成物は第一ポリマーおよび第二ポリマーの両方を含有し、これらは互いに完全または部分的に共有結合していても、していなくてもよい。ハイブリッドポリマー組成物は、例えば、第一ポリマーがポリウレタンであり、第二ポリマーがアクリルポリマーである組成物を包含する。ハイブリッドポリマー組成物は、もう一つ別の例として、第一ポリマーがアクリルポリマーであり、第二ポリマーがポリウレタンである組成物を包含する。あるハイブリッドポリマー組成物は3種以上のポリマーを有する。
【0022】
幾つかの実施態様において、本発明の組成物は、連続液状媒体をさらに含む。かかる実施態様の幾つかにおいて、アクリルポリマーおよびスルホン化ポリウレタンは連続液状媒体中に含まれる。物質は、連続液状媒体中に溶解されるか、または連続液状媒体中に分散されるか、またはその組み合わせであるならば、連続液状媒体中に「含まれる」。
【0023】
本明細書において用いられる場合、組成物は、組成物の重量基準で25重量%以上の水を含有しているならば「水性」である。ある水性組成物は、組成物の重量基準で40重量%以上;または50重量%以上の水を含有する。ある水性組成物において、水は連続媒体を形成し、1以上の他の物質が連続液状媒体中に溶解または分散される。水が連続液状媒体を形成する水性組成物において、水は、水と混和性の水以外の1以上の追加の液体と混合されてもよいし、あるいは混合されなくてもよい。ある連続液状媒体との水性組成物において、連続液状媒体は、連続液状媒体の重量基準で25重量%以上の水;あるいは50重量%以上の水;あるいは75重量%以上の水;あるいは90重量%以上の水を含有する。連続液状媒体の重量基準で25重量%以上の水を含有する連続液状媒体は、本明細書において水性媒体と呼ばれる。
【0024】
物質は、連続液状媒体全体にわたって分散する独立した粒子として存在する場合、本明細書において、物質が連続液状媒体中に「分散された」と言われる。独立した粒子は、固体、液体、気体、またはその組み合わせであってよい。分散物は、例えば、エマルジョン、ミニエマルジョン、ミクロエマルジョン、懸濁液、ラテックス、またはその組み合わせの形態であってよい。
【0025】
本明細書において用いられる場合、「Tg」は、示差走査熱量測定法により測定されるポリマーのガラス転移温度である。Tg測定は、吸収された非ポリマー物質(例えば、水または可塑剤)を有さないサンプルに関して行われる。あるポリマーはちょうど1つのTgを有する。あるポリマーは2以上のTgを有する。
【0026】
本明細書において、本発明の実行において用いられるいくつかの化合物は、ある成分の反応生成物として記載されている。特定の場合において特に記載しない限り、実際にある成分の反応により製造されるならば、かかる化合物は本発明の組成物における使用に関して想定されると理解すべきであり;同じ化合物は、異なる方法により製造されるものであっても、想定される。
【0027】
本明細書において用いられる場合、比が「X以上:1」であるといわれる場合、この比はY:1(ここで、YはX以上である)であることを意味する。同様に、比が「P以下:1」であると言われる場合、これは、この比がQ:1(ここで、QはP以下である)であることを意味する。
【0028】
本明細書において用いられる場合、スルホン化化合物は、1分子あたり1以上のスルホネート基を有する化合物である。スルホネート基は−SOである。スルホネート基を取り巻く環境に応じて、カチオンと溶媒和または配位できるか、またはその両方であるアニオンとして存在することができるか、あるいはスルホン酸基、すなわち−SOHとして存在することができる。スルホネート基は任意の手段により導入することができる。
【0029】
本発明の実行は、1以上のスルホン化ポリウレタンの使用を含む。スルホン化ポリウレタンは任意の方法により製造することができる。例えば、少なくとも1種のスルホン化ポリオールを少なくとも1種のポリイソシアネートおよび、任意に少なくとも1種の追加のポリオールと反応させることができる。もう一つ別の例として、少なくとも1種のアミノ−スルホン酸化合物を少なくとも1種のイソシアネート末端ポリウレタンと反応させることができ;かかるイソシアネート末端ポリウレタンはスルホネート基を有さないか、または1以上のスルホネート基を有することができる。
【0030】
スルホン化ポリウレタンを製造するためにスルホン化ポリオールが用いられる場合、有用な1種のスルホン化ポリオールは、例えば、スルホン化ポリエステルポリオールである。スルホン化ポリエステルポリオールは任意の方法により製造することができる。いくつかの好適なスルホン化ポリエステルポリオールは、例えば、米国特許第5,698,626号および第5,753,774号に記載されているものである。
【0031】
スルホン化ポリウレタンの製造において用いることができるポリイソシアネートは、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、およびその組み合わせを包含する。幾つかの実施態様は、1以上の次のポリイソシアネート:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−メチレンビスフェニルジイソシアネートまたは4,4’−MDIとも呼ばれる);2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−メチレンビスフェニルジイソシアネートまたは2,4’−MDIとも呼ばれる);ジイソシアナトトルエンの任意の異性体(TDI);ポリマーMDI;ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDIとも呼ばれる);1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDIとも呼ばれる);1−イソシアナト−3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートまたはIPDIとも呼ばれる);およびその混合物を使用する。幾つかの実施態様は、「純粋なMDI」(4,4’−MDIと2,4’−MDIとの混合物であって、4,4’−MDIと2,4’−MDIの比が約98/2(重量)である混合物)を使用する。幾つかの実施態様はIPDIを使用する。幾つかの実施態様は、IPDIを唯一のポリイソシアネートとして使用する。
【0032】
幾つかの適当なスルホン化ポリウレタンは、例えば、少なくとも1種のイソシアネート末端ポリウレタンと少なくとも1種のアミノ−スルホン酸化合物との反応生成物である。イソシアネート末端ポリウレタンは、モル基準で、少なくとも50%のポリウレタン分子が2以上のイソシアネート基を有するポリウレタンである。イソシアネート末端ポリウレタンは「プレポリマー」と呼ばれる場合もある。イソシアネート末端ポリウレタンを製造するための典型的な一方法は、モル過剰のジイソシアネートを用いてジオールをジイソシアネートと反応させることである。アミノ−スルホン酸化合物はアミン基(すなわち、−NH)およびスルホン酸基を有する化合物である。アミノ−スルホン酸化合物の一例は、2−((2−アミノエチル)アミノ)エタンスルホン酸である。アミノ−スルホン酸化合物のさらなる例は、エチレン性不飽和スルホン酸化合物と、アミン基および活性水素原子を有する第二の基を有する化合物との付加物である。エチレン性不飽和スルホン酸化合物の一例は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。活性水素原子を有する基は炭素マイケル付加反応において「ドナー」として作用することができる基である。活性水素原子を有する基の例は、アミン基およびヒドロキシル基である。アミン基および活性水素原子を有する第二の基を有する化合物は、例えば、ジアミン(すなわち、2個のアミン基を有する化合物)およびアミノアルコール(すなわち、アミン基およびヒドロキシル基を有する化合物)を包含する。アミノ−スルホン化合物は、例えば、活性水素原子を有する第2の基と不飽和スルホン酸化合物のエチレン性不飽和との間の炭素マイケル反応を行うことにより形成することができると考えられる。
【0033】
アミノ−スルホン酸化合物を用いてスルホン化ポリウレタンを製造するいくつかの方法が、米国特許第5,629,402号に記載されている。独立して、幾つかのスルホン化ポリウレタンが、例えば米国特許第6,517,821号に記載されている。
【0034】
スルホン化ポリウレタンは任意の方法を用いて製造することができる。幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンは有機溶媒中溶液において製造される。独立して、幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンは水性分散物または水性媒体中溶液の形態で使用される。スルホン化ポリウレタンが水性分散物の形態である実施態様においては、スルホン化ポリウレタンは任意の方法により水性媒体中に分散させることができる。かかる実施態様の幾つかにおいて、たとえば、スルホン化ポリウレタンは有機溶媒中で溶液重合し、次いて有機溶媒を除去し、次いでスルホン化ポリウレタンを水性媒体中に分散させることにより製造される。
【0035】
幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンは水性媒体を有する組成物中に存在する。スルホン化ポリウレタンは、水性媒体中に溶解させることができるか、または水性媒体中に独立した粒子として分散させることができるか、または溶解した分子および分散した粒子の混合物として存在できる。
【0036】
幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンは、水性媒体中に分散した粒子として存在する。かかる分散物の粒子サイズを、例えば、キャピラリー流体力学的分別(CHDF)により測定することができる。幾つかの実施態様において、メジアン粒子サイズは10nm以上、または20nm以上である。独立して、幾つかの実施態様において、メジアン粒子サイズは200nm以下、または100nm以下、または50nm以下である。独立して、幾つかの実施態様において、粒子サイズの分散は単峰型であり;すなわち、物質の量対粒子サイズの分布において、明らかな1つの主なピークがあり、存在する任意の他のピーク(もしあれば)は主なピークの高さの5%未満の高さを有する。
【0037】
スルホン化ポリウレタンの物理的形態と独立して、前記スルホン化ポリウレタンは分子量分析、例えば、GPCを用いて特徴づけることができる。GPCの使用は、通常、スルホン化ポリウレタンを溶解させる溶媒を特定し、これを溶離剤として使用することを含む。幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンは5000以上、または7500以上の重量平均分子量を有する。独立して、かかる具体例の幾つかにおいて、スルホン化ポリウレタンは200000以下、または100000以下、または50000以下の重量平均分子量を有する。
【0038】
スルホン化ポリウレタンのもう一つ別の独立した性質は、スルホネート基の量である。この量は「酸量」とも呼ばれる。この量は、100gのポリウレタン固形分あたりのスルホネート基のミリ当量の単位で記載される。幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンは100gのポリウレタン固形分あたりのミリ当量で、10以上;または20以上;または30以上;または40以上の量のスルホネート基を有する。独立して、幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンは、100gのポリウレタン固形分あたりのミリ当量で、150以下;または100以下;または80以下の量のスルホネート基を有する。
【0039】
本発明の実行は、少なくとも1種のアクリルポリマーの使用を含む。幾つかの実施態様において、アクリルポリマーは15℃以上;または25℃以上;または35℃以上;または45℃以上のTgで存在する。独立して、幾つかの実施態様において、110℃以下;または95℃以下;または80℃以下;または70℃以下のTgを有するアクリルポリマーが存在する。
【0040】
任意のアクリルモノマーまたはその混合物は、アクリルポリマー中に含まれるモノマー単位として好適である。幾つかの実施態様において、モノマーは1以上のアルキル(メタ)アクリレート(すなわち、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル)を含む。アルキル基は直鎖であっても、または分岐鎖であっても、または環状であっても、またはその組み合わせであってもよい。幾つかの実施態様において、アルキル基が1個の炭素原子、または2個の炭素原子、または3個の炭素原子、または4個の炭素原子、または5個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートが使用される。独立して、アルキル基が20個以下の炭素原子、または10個以下の炭素原子、または8個以下の炭素原子を有する少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートが使用される。
【0041】
幾つかの実施態様において、少なくとも1種のアルキルメタクリレートモノマーが使用される。一つの好適なアルキルメタクリレートモノマーはメチルメタクリレートである。アルキルメタクリレートモノマーが使用される場合、幾つかの実施態様において、アルキルメタクリレートモノマーの量は、アクリルポリマーの重量基準で、10重量%以上、または20重量%以上、または35重量%以上である。独立して、アルキルメタクリレートモノマーが使用される場合、幾つかの実施態様において、アルキルメタクリレートモノマーの量は、アクリルポリマーの重量基準で、80重量%以下、70重量%以下、または60重量%以下である。幾つかの実施態様において、アルキルメタクリレートのモノマー単位を有さないアクリルポリマーが使用される。
【0042】
独立して、幾つかの実施態様において、少なくとも1種のアルキルアクリレートモノマーが使用される。幾つかの好適なアルキルアクリレートモノマーは2個以上の炭素原子を有するアルキル基を有する。一つの好適なアルキルアクリレートモノマーはn−ブチルアクリレートである。アルキルアクリレートモノマーが使用される場合、幾つかの実施態様において、アルキルアクリレートモノマーの量は、アクリルポリマーの重量基準で、5重量%以上、または10重量%以上、または15重量%以上である。独立して、アルキルアクリレートモノマーが用いられる場合、幾つかの実施態様において、アルキルアクリレートモノマーの量は、アクリルポリマーの重量基準で、90重量%以下、または80重量%以下、または70重量%以下、または60重量%以下、または50重量%以下、または40重量%以下である。
【0043】
独立して、幾つかの実施態様において、少なくとも1種の置換アルキル(メタ)アクリレートモノマーが使用される。置換アルキル(メタ)アクリレートは(メタ)アクリル酸のアルキルエステルであって、アルキル基が少なくとも1つの置換基を有するものである。置換基は、炭素および水素以外の少なくとも1個の原子を有する任意の化学基である。一つの好適な置換基は、ヒドロキシル基である。幾つかの好適な置換アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびその混合物である。幾つかの実施態様において、少なくとも1種のヒドロキシアルキルメタクリレートモノマーが使用される。置換アルキル(メタ)アクリレートモノマーが使用される場合、幾つかの実施態様において、置換アルキル(メタ)アクリレートモノマーの量は、アクリルポリマーの重量基準で、2重量%以上、または5重量%以上、または8重量%以上である。独立して、置換アルキル(メタ)アクリレートモノマーが使用される場合、幾つかの実施態様において、置換アルキル(メタ)アクリレートモノマーの量は、アクリルポリマーの重量基準で50重量%以下、または30重量%以下、または20重量%以下である。
【0044】
本発明の実行は、少なくとも1種のカルボキシル官能性モノマーの使用を含む。カルボキシル官能性モノマーは、少なくとも1つのカルボン酸基または少なくとも1つの無水物基をも含有するエチレン性不飽和モノマーである。カルボキシル官能性モノマーは、1つまたは1より多い炭素−炭素二重結合を有し得る。独立して、カルボキシル官能性モノマーは1個のカルボン酸基または1個より多いカルボン酸基を有し得る。カルボン酸基(単数または複数)は中性カルボン酸基の形態、対応するアニオンの形態、無水物の形態、あるいはその任意の組み合わせまたは混合物の形態でありうる。いくつかのカルボキシル官能性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、置換(メタ)アクリル酸、カルボキシル官能性アルケン、およびその混合物が挙げられる。幾つかの実施態様において、カルボキシル官能性モノマーは、1以上のアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルイタコネート、モノメチルマレエート、モノブチルマレエート、無水マレイン酸、およびその混合物を包含する。幾つかの実施態様において、カルボキシル官能性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、またはその混合物を包含する。カルボキシル官能性モノマーの量は、アクリルポリマーの重量基準で5重量%以上、または7重量%以上、または10重量%以上である。独立して、カルボキシル官能性モノマーの量は、アクリルポリマーの重量基準で、30重量%以下、または25重量%以下、または20重量%以下である。
【0045】
幾つかの実施態様において、1以上の連鎖移動剤が使用される。幾つかの好適な連鎖移動剤は、例えば、ハロメタン類、ジスルフィド類、チオール類(メルカプタン類とも言う)、および金属錯体である。連鎖移動剤として、少なくとも1つの容易に除去可能な水素原子を有する様々な他の化合物も適している。好適な連鎖移動剤の混合物も好適である。幾つかの実施態様において、少なくとも1種のメルカプタンが使用される。幾つかの実施態様において、n−ドデシルメルカプタンが使用される。連鎖移動剤が使用される場合、幾つかの実施態様において、連鎖移動剤の量は、アクリルポリマーの重量基準で、0.02重量%以上、または0.05重量%以上、または0.1重量%以上、または0.3重量%以上、または0.8重量%以上である。独立して、連鎖移動剤が使用される場合、幾つかの実施態様において、連鎖移動剤の量は、アクリルポリマーの重量基準で、5重量%以下、2.5重量%以下、または1.5重量%以下である。
【0046】
幾つかの実施態様において、アクリルポリマーは、アミドモノマーのモノマー単位をほとんどまたは全く含有しない。アミドモノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、他のアミドモノマー、およびその混合物が挙げられる。幾つかの実施態様において、アクリルポリマーは、アクリルポリマーの重量基準で1重量%以下のアミドモノマー単位を含有する。幾つかの実施態様において、アクリルポリマーはアミドモノマー単位を含有しない。
【0047】
アクリルポリマーは、任意の方法により形成することができる。幾つかの好適な方法は、例えば、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、およびその組み合わせを包含する。アクリルポリマーを形成するために使用される重合の一種は、例えば、フリーラジカル重合である。フリーラジカル重合を行う一方法は、例えば、水性乳化重合である。水性乳化重合の任意の方法を用いることができる。水性乳化重合は、モノマー、水溶性開始剤、および界面活性剤−官能性化合物を水の存在下で含む。
【0048】
幾つかの実施態様において、一般的な界面活性剤、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種の界面活性剤−官能性化合物が、水性乳化重合中に用いられる。幾つかの好適な一般的界面活性剤は、例えば、アルキルスルフェート、アルキルアリールスルフェート、アルキルまたはアリールポリオキシエチレン非イオン性界面活性剤、およびその混合物である。
【0049】
水性乳化重合は、任意の水溶性開始剤を用いて行うことができる。好適な開始剤としては、例えば、水溶性過酸化物、例えば、過硫酸ナトリウムまたはアンモニウムが挙げられる。好適な開始剤は、例えば、酸化剤(例えば、過硫酸塩または過酸化水素)を還元剤(例えば、重亜硫酸ナトリウムまたはイソアスコルビン酸)および/または多価金属イオンの存在下で含み、酸化/還元対を形成して、広範囲に及ぶ温度のうちの任意の温度でフリーラジカルを生成させる。
【0050】
幾つかの実施態様において、水性乳化重合は、少なくとも1種のモノマーエマルジョンを1つの容器中で形成し、次いで重合が行われる別の重合反応容器にモノマーエマルジョンを添加することを含む。かかる実施態様の幾つかにおいて、モノマーエマルジョンは、1以上のモノマー、界面活性剤−官能性化合物、および水を混合して、モノマーの分散液滴を形成することにより形成される。かかる実施態様において、モノマーエマルジョンの添加前、添加中、または添加後、あるいはその組み合わせで開始剤を重合反応容器に添加することができる。
【0051】
幾つかの実施態様において、ニートなモノマーが重合反応容器に添加される。ニートなモノマーは、モノマーまたはモノマーの混合物であり、これに他の成分(例えば、水または界面活性剤)が添加されないものである。独立して、1より多いモノマーが使用されるならば、モノマーは重合反応容器に1以上の混合物として、または独立した添加流れとして、またはその組み合わせとして添加することができる。このような実施態様の幾つかにおいて、重合プロセスにおいて用いられる少なくとも1種の水溶性開始剤の一部または全部を重合反応容器中に入れ、次いで、ニートなモノマーが重合反応容器に添加される時に重合が起こる。このような実施態様の幾つかにおいて、ニートなモノマーは徐々に重合反応容器に添加され、その間に、前記重合反応容器中で重合が起こる。
【0052】
本発明の実行の幾つかの実施態様において、水性乳化重合の結果得られるアクリルポリマーは、ラテックスの形態である。
【0053】
好適なアクリルポリマーは、一段ポリマーまたは多段ポリマーでありうる。本明細書において用いられる場合、「多段」ポリマーは1より多い重合段階で形成されるポリマーである。重合段階は、重合が行われ、次いで有効に終了するプロセスである。すなわち、重合段階の最後で、モノマーはほとんどまたは全く存在せず(すなわち、残存するモノマーの量は、重合段階により製造されるポリマーの重量基準で、10重量%以下、または5重量%以下、または2重量%以下である)、重合の速度は無視できるかまたは0である。多段重合プロセスにおいて、第一段階が終わった後、先の段階により製造されたポリマーの存在下で第二段階が行われる。任意に、1以上の追加の重合段階を第二段階後に行うことができ;各段階は、先の重合段階が有効に終了した後に行われる。
【0054】
多段アクリルポリマーを含む幾つかの実施態様において、第二段階中に製造されるアクリルポリマーの組成は、第一段階中に製造されるアクリルポリマーの組成と異なる。幾つかの実施態様において、第一段階において製造されるアクリルポリマーの一部または全部は、第一段階が行われた容器中に放置され、第二段階が同じ容器中で行われる。幾つかの実施態様において、第一段階において製造されたアクリルポリマーは除去され、水で希釈するか、または希釈せずに新しい容器中に入れられ、第二段階はこの新しい容器中で行われる。第二段階後、追加の段階を行っても、行わなくてもよい。
【0055】
幾つかの実施態様において、第一段は乳化重合プロセスであり、これによりアクリルポリマーラテックスが生成する。このような実施態様の幾つかにおいて、第二段が行われる場合、第二段において製造されるアクリルポリマーのほとんどまたはすべては、第一段において製造されたアクリルラテックス粒子上、中、またはアクリルラテックス粒子に付着して形成される。従って、結果は、粒子のほとんどまたはすべてのそれぞれが第一段からのアクリルポリマーおよび第二段からのアクリルポリマーを含有するラテックスである。その後の段階が行われるならば、幾つかの実施態様において、それぞれのその後の段階から得られるポリマーの一部または全部は、先の段階において形成された粒子上、中、または粒子に付着して形成される。
【0056】
多段アクリルポリマーを含む幾つかの実施態様において、段階の少なくとも1つは、軟質ポリマーであるアクリルポリマーを製造する。軟質ポリマーは40℃以下のTgを有するポリマーである。幾つかの実施態様において、−50℃以上;または−25℃以上;または0℃以上;または25℃以上のTgを有する軟質ポリマーが使用される。幾つかの実施態様において、1つだけのガラス転移温度を有する少なくとも1種の軟質ポリマーが使用される。
【0057】
多段アクリルポリマーを含む幾つかの実施態様において、少なくとも1つの段階は硬質ポリマーであるアクリルポリマーを製造する。硬質ポリマーは40℃より高いTgを有するポリマーである。幾つかの実施態様において、60℃以上;または80℃以上のTgを有する硬質ポリマーが使用される。独立して、幾つかの実施態様において、200℃以下;または150℃以下;または120℃以下のTgを有する硬質ポリマーが使用される。幾つかの実施態様において、1つだけのガラス転移温度を有する少なくとも1種の硬質ポリマーが使用される。
【0058】
多段アクリルポリマーを含む幾つかの実施態様において、少なくとも1つの段階は硬質ポリマーであるアクリルポリマーを製造し、少なくとも1つの段階は軟質ポリマーであるアクリルポリマーを製造する。このような実施態様の幾つかにおいて、硬質ポリマーのTgは軟質ポリマーのTgよりも少なくとも10℃高い。幾つかの実施態様において、硬質ポリマーのTgは軟質ポリマーのTgよりも少なくとも20℃高いか、または少なくとも30℃高いか、または少なくとも40℃高いか、または少なくとも50℃高い。独立して、このような実施態様のいくつかにおいて、少なくとも1種の硬質ポリマーおよび少なくとも1種の軟質ポリマーは、硬質ポリマーと軟質ポリマーの重量比が1.01:1〜100:1となるような量で使用される。幾つかの実施態様において、硬質ポリマーと軟質ポリマーの重量比は1.05以上:1;または1.1以上:1;または1.2以上:1;または1.3以上:1;または1.4以上:1である。幾つかの実施態様において、硬質ポリマーと軟質ポリマーの重量比は4以下:1;または3以下:1;または2以下:1;または1.6以下:1である。
【0059】
本発明の組成物は任意の方法により製造することができる。幾つかの実施態様において、例えば、少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンは少なくとも1種のアクリルポリマーと混合される。幾つかの実施態様において、アクリルポリマーの一部または全部はスルホン化ポリウレタンの存在下で製造される。幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンの全部または一部は、アクリルポリマーの全部または一部と同時に製造される。
【0060】
幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンの乾燥重量とアクリルポリマーの乾燥重量の比は、0.1以上:1;または0.2以上:1;または0.4以上:1である。独立して、幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンの乾燥重量とアクリルポリマーの乾燥重量の比は、3以下:1;または2以下:1;または1以下:1である。
【0061】
幾つかの実施態様において、少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンはアクリルポリマーの不在下で製造され、少なくとも1種のアクリルポリマーはスルホン化ポリウレタンの不在下で製造され、次いでスルホン化ポリウレタンはアクリルポリマーと混合される。このような実施態様の幾つかにおいて、スルホン化ポリウレタンは水性分散物の形態である。独立して、このような実施態様の幾つかにおいて、アクリルポリマーは水性ラテックスである。スルホン化ポリウレタンのかかる水性分散物が、かかる水性ラテックスアクリルポリマーと混合される実施態様も想定される。このようなスルホン化ポリウレタンが水性分散物として製造され、このようなアクリルポリマーが水性ラテックスとして製造され、次いで、水と水以外の水混和性液体の混合物において溶液が形成され、ここで、溶液は、前記アクリルポリマーおよび前記スルホン化ポリウレタンを含有する実施態様もさらに想定される。
【0062】
幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンはニート形態、溶液の形態、分散物の形態、またはその組み合わせである。幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンの形態と独立して、アクリルポリマーはニート形態、溶液の形態、分散物の形態、またはその組み合わせである。
【0063】
幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンは水性分散物の形態において使用される。このような具体例の幾つかにおいて、アクリルポリマーの一部または全部は、スルホン化ポリウレタンの水性分散物の粒子の一部または全部がさらにアクリルポリマーを含有するような形態において存在する。粒子の一部または全部がスルホン化ポリウレタンおよびアクリルポリマーの両方を含有する水性分散物を含有する実施態様において、このような実施態様のいくつかにおいて、スルホン化ポリウレタンを含有する粒子中にないアクリルポリマーも存在し;このようなアクリルポリマーは、例えば、溶液中、水性分散物中他の粒子中、またはその組み合わせで存在しうる。独立して、一部の粒子がスルホン化ポリウレタンおよびアクリルポリマーの両方を含有する水性分散物を含有する実施態様において、このような実施態様のいくつかにおいて、スルホン化ポリウレタンを含有するが、アクリルポリマーを含有しないか、または溶液中スルホン化ポリウレタンを含有するか、またはその組み合わせを含有する粒子も存在する。
【0064】
本発明の幾つかの実施態様において、少なくとも1種のアクリルポリマーが少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンの少なくとも1種の水性分散物の存在下で形成される。アクリルポリマーは任意の方法により形成することができる。使用される特定の重合法に関係なく、少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンの少なくとも1種の水性分散物の存在下でのアクリルポリマーの形成の結果得られる組成物はハイブリッドポリマー組成物である。幾つかの実施態様において、水性分散物の形態における少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンの存在下で、水性乳化重合を用いて少なくとも1種のアクリルポリマーが形成される。任意の水性乳化重合法を使用できる。
【0065】
幾つかの実施態様において、少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンは水性乳化重合の間、界面活性剤−官能性化合物として機能することが想定される。幾つかの実施態様において、アクリルポリマーの水性乳化重合を少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンの分散物の存在下で行い、スルホン化ポリウレタン以外のアニオン性界面活性剤はアクリルポリマーの重合中に存在しない。幾つかの実施態様において、アクリルポリマーの水性乳化重合は、少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンの分散物の存在下で行われ、アクリルポリマーの重合中に非イオン性界面活性剤は存在しない。幾つかの実施態様において、アクリルポリマーの水性乳化重合は少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンの分散物の存在下で行われ、アクリルポリマーの重合中、スルホン化ポリウレタン以外の界面活性剤−官能性化合物は存在しない。
【0066】
幾つかの実施態様において、1以上のスルホン化ポリウレタン以外の界面活性剤−官能性化合物なしに、少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンの水性分散物を重合反応容器中に少なくとも1種の水溶性開始剤とともに入れ、次いで、モノマーを重合反応容器に添加すると重合が起こる。かかる実施態様のいくつかにおいて、モノマーを徐々に重合反応容器に添加し、その間に、重合反応容器中で重合が起こる。
【0067】
幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタンは水性分散物の形態で存在する。かかる実施態様の幾つかにおいて、カルボキシル基を水性分散物に、カルボキシル官能性モノマーとして、またはアクリルポリマーのモノマー単位に結合したカルボキシル基としてのいずれかで添加する。このようなカルボキシル基を添加する場合、カルボキシル基が中性形態(すなわち、プロトン化形態)のままであり、一方、スルホネート基はアニオン性形態のままであるのが望ましい場合がある。すなわち、スルホン化ポリウレタンはカルボキシル基よりも強力な酸であるのが望ましい場合がある。
【0068】
酸の強度の一つの有用な基準は、酸解離定数であり、これはpKaにより特徴づけられる。より強い酸はより低いpKa値を有する。
【0069】
幾つかの実施態様において、例えば、スルホン化ポリウレタンはカルボキシル基のpKa値よりも低いpKa値を有する。このような実施態様のいくつかにおいて、水性媒体のpHは、スルホン化ポリウレタンのpKaよりも高く、カルボキシル基のpKa値よりも低く調節される。このような手順は、例えば、アクリルモノマーの乳化重合をスルホン化ポリウレタンの存在下で行う場合に有用である。
【0070】
スルホン化ポリウレタンのpKa値(または、1種より多いスルホン化ポリウレタンが使用される場合、その最高のpKa値)を、カルボキシル官能性モノマーの、またはカルボキシル官能性モノマーのモノマー単位を含有するアクリルポリマーのpKa値(または、1種より多いカルボキシル官能性モノマーまたはアクリルポリマーが使用されるならば、その最低のpKa値)から引くことにより計算される差である「デルタ−pKa」を特徴づけることが有用である場合がある。幾つかの実施態様において、デルタ−pKaは1単位以上;または2単位以上;または3単位以上;または4単位以上である。
【0071】
少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンの水性分散物の存在下での乳化重合により形成されるアクリルポリマーを含む幾つかの実施態様において、アクリルポリマーの乳化重合の最後で、組成物はゲルをほとんどまたは全く含有しない。
【0072】
ゲルはアクリルポリマーの乳化重合中に生じるか、またはアクリルポリマーの乳化重合の完了の30分以内に生じる固体物質である。ゲルは、ラテックス粒子よりもずっと大きな粒子から構成される。ゲル粒子は、1マイクロメートル以上;または5マイクロメートル以上;または25マイクロメートル以上;または100マイクロメートル以上である。ゲル粒子は、浮くか、分散したままであるか、容器の底部に沈殿するか、またはその任意の組み合わせでありうる。ゲルは、濾過により、例えば、開口サイズが減少する一連のスクリーン(例えば、20メッシュ番号のスクリーン、続いて100メッシュ番号のスクリーン、続いて325メッシュ番号のスクリーン)に組成物を通すことにより組成物から除去できる。ゲルの量は、全組成物1リットル(または1クォート)あたりのゲルのグラム数により特徴づけられる。幾つかの実施態様において、ゲルの量は1.06グラム/リットル(1グラム/クォート)以下;または0.53グラム/リットル(0.5グラム/クォート)以下;または0.2グラム/クォート以下である。幾つかの実施態様において、ゲルは検出されない。
【0073】
幾つかの実施態様において、本発明の組成物は、少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンの少なくとも1つの分散物の存在下でのアクリルポリマーの重合を含む方法により製造される。このような実施態様の幾つかにおいて、結果として得られるアクリルポリマーはラテックスの形態である。幾つかの実施態様において、ラテックスは、それぞれがアクリルポリマーおよびスルホン化ポリウレタンを含有する粒子を含有し、かかる粒子は、本明細書において「ハイブリッドラテックス」粒子と呼ばれる。このような実施態様の幾つかにおいて、一部のアクリルポリマー粒子はおそらくはスルホン化ポリウレタンなしで存在することができ、独立して、一部のスルホン化ポリウレタンは、おそらくはアクリルポリマーを含有する粒子の部分以外の組成物のどこかに存在し得る。アクリルポリマーラテックス粒子の一部または全部がスルホン化ポリウレタンを含有する実施態様において、スルホン化ポリウレタンは粒子の内部、粒子の表面上、またはその組み合わせで存在し得る。独立して、アクリルポリマーラテックス粒子の一部または全部がスルホン化ポリウレタンを含有する実施態様において、アクリルポリマーラテックス粒子中のスルホン化ポリウレタンの一部または全部はアクリルポリマーと共有結合しうるか、またはアクリルポリマーラテックス粒子中のスルホン化ポリウレタンの一部または全部はアクリルポリマーと共有結合しないでアクリルポリマーラテックス粒子中に存在しうるか、またはアクリルポリマーラテックス粒子中のスルホン化ポリウレタンの一部はアクリルポリマーと結合することができ、一方、アクリルラテックス粒子中のスルホン化ポリウレタンの一部はアクリルポリマーと共有結合しない。
【0074】
ハイブリッドラテックス粒子を含む実施態様において、ラテックスの固形分(パーセント)を特徴づけるのが有用である場合がある。組成物の当初の部分を提供し、この当初の部分を完全に蒸発させ(すなわち、25℃、相対湿度0%の空気と平衡に達する)、蒸発しなかった物質を秤量することにより、組成物の固形分(パーセント)を測定する。組成物の当初の部分の合計重量のパーセンテージとしての蒸発しなかった物質の重量が固形分(パーセント)である。
【0075】
ハイブリッドラテックス粒子を含むいくつかの実施態様において、ラテックスの固形分(%)は、5%以上;または10%以上;または20%以上;または25%以上である。独立して、いくつかの実施態様において、ラテックスの固形分(%)は60%以下;または50%以下;または45%以下である。
【0076】
ハイブリッドラテックス粒子を含む幾つかの実施態様において、水性媒体の組成は、水性媒体の重量基準で、75%重量以上の水;または85重量%以上の水;または90重量%以上の水;または95重量%以上の水;または98重量%以上の水である。
【0077】
ハイブリッドラテックス粒子を含むいくつかの実施態様において、粒子サイズの分布はCHDFにより研究することができる。このような実施態様のいくつかにおいて、平均粒子サイズは25nm以上、または40nm以上、または50nm以上である。独立して、このような実施態様の幾つかにおいて、平均粒子サイズは300nm以下、または200nm以下、または100nm以下である。独立して、このような実施態様の幾つかにおいて、ポリマーラテックスの粒子サイズ分布は単峰型である。
【0078】
ハイブリッドポリマーラテックス粒子を含むいくつかの実施態様において、ハイブリッドポリマーは1000以上、または2000以上の、または5000以上の重量平均分子量を有する。独立して、このような実施態様の幾つかにおいて、ハイブリッドポリマーは200000以下、または100000以下、または75000以下の重量平均分子量を有する。
【0079】
連続液状媒体を含む幾つかの実施態様において、連続液状媒体は、水または水および水以外の水混和性液体の混合物である。ある好適な水混和性液体は、例えば、アルキルアルコールであり、アルキル基は直鎖または分岐であり、独立して、アルキル基は1〜6個の炭素原子を有する。好適なアルコールの一例はエタノールである。幾つかの実施態様において、連続液状媒体は、連続液状媒体の重量基準で80重量%以下;または75重量%以下;または60重量%以下;または30重量%以下;または19重量%以下;または5重量%以下;または1重量%以下の水を有する。独立して、幾つかの実施態様において、連続液状媒体は、連続液状媒体の重量基準で0.01重量%以上、または1重量%以上;10重量%以上;または20重量%以上;または40重量%以上の水を有する。連続液状媒体が、連続液状媒体の重量基準で99重量%以上の水を有する実施態様も想定される。独立して、連続液状媒体が、連続液状媒体の重量基準で0.1重量%以下の水を有する実施態様もさらに想定される。幾つかの実施態様において、水を含有しない連続液状媒体が使用される。
【0080】
連続液状媒体の重量基準で5重量%以下の水を含有する連続液状媒体を含む実施態様において、連続液状媒体は水以外の1以上の液体を含有し、これらの液体のそれぞれは、互いに独立して、水混和性であっても、水混和性でなくてもよい。
【0081】
水以外の水混和性液体が用いられる実施態様において、水混和性液体は、例えば、美容上許容される液体でありうる。「美容上許容される」とは、本明細書においては、人体と接触するのに適した物質を意味する。
【0082】
幾つかの実施態様は、水および水以外の水混和性液体の混合物である連続液状媒体中の本発明の組成物を有する配合物を含み、ここにおいて、配合物は比較的低パーセントの固形分を有する。このような実施態様において、連続液状媒体中の水の量は、例えば、連続液状媒体の重量基準で、60重量%以下;または50重量%以下;または45重量%以下でありうる。独立して、連続液状媒体中の水の量は、例えば、連続液状媒体の重量基準で、25重量%以上;または30重量%以上;または35重量%以上でありうる。独立して、このような配合物の固形分(%)は、例えば、0.5重量%以上;または1重量%以上;または2重量%以上;または4重量%以上でありうる。独立して、このような配合物の固形分(%)は、例えば、15重量%以下;10重量%以下;または8重量%以下;または6重量%以下でありうる。
【0083】
幾つかの実施態様において、本発明の組成物は次のようにして製造され、使用される。これらの特定の実施態様において、スルホン化ポリウレタンの水性分散物が提供される。次に、少なくとも1種のカルボキシル官能性モノマーのモノマー単位を含むアクリルポリマーをスルホン化ポリウレタンの存在下での乳化重合により製造して、ハイブリッド粒子のラテックス粒子を製造する。結果として得られるラテックスは本発明の一つの実施態様であると見なされる。このようなラテックスは、所望により、本明細書において前述のような、比較的低パーセント固形分を有し、水および水以外の少なくとも1種の水混和性液体の両方を含有する連続液状媒体を有する配合物中に組み入れることができる。このような配合物の幾つかにおいて、アクリルポリマーの一部または全部を連続液状媒体中に溶解させることが想定される。独立して、このような配合物の幾つかにおいて、スルホン化ポリウレタンの一部または全部を連続液状媒体中に溶解させることが想定される。
【0084】
独立して、連続液状媒体を含むいくつかの実施態様において、連続液状媒体は、連続液状媒体の重量基準で19重量%以下の水を含有する。このような実施態様の幾つかにおいて、水の量は、連続液状媒体の重量基準で、15重量%以下;または5重量%以下;または1重量%以下;または0.1重量%以下;またはゼロである。このような具体例は任意の方法により製造することができる。一方法は、例えば、まず本明細書において前述のハイブリッド粒子のラテックスを製造することである。次に、ハイブリッド粒子のこのようなラテックスを水以外の液体と混合し、混合物中の水の一部または全部を除去することができる。別法として、ハイブリッド粒子のこのようなラテックスを乾燥または他の単離法であって、水の一部または全部をハイブリッド粒子から除去する単離法に付すことができ、次いでハイブリッド粒子を水以外の液体と混合することができる。
【0085】
アクリルポリマーおよびスルホン化ポリウレタンが連続液状媒体中に含まれる本発明の実施態様のうち、幾つかの実施態様において、組成物は貯蔵期間にわたって安定であることが想定される。これは、貯蔵期間後に、組成物が顕著な量の固体物質の分離、液体相の相分離、不安定の他の兆候、またはその任意の組み合わせを示さないことを意味する。幾つかの実施態様において、本発明の組成物は、10分以上;または1時間以上;または1日以上、または4日以上;30日以上の貯蔵期間にわたって安定である。独立して、幾つかの実施態様において、本発明の組成物は、25℃;または45℃;または60℃で貯蔵期間にわたって安定である。
【0086】
固体物質は、幾つかの場合において、貯蔵の間に、沈むか、または浮くかのいずれかにより、本発明の組成物から分離する。固体物質を集め、乾燥し、秤量することができる。固体物質を、例えば、ゲルの回収について本明細書において前述のものと同じ方法により、濾過、遠心分離、またはその任意の組み合わせにより集めることができる。分離した固体物質の重量を組成物中の固体物質の合計重量と比較することができる。幾つかの実施態様において、分離した固体物質の重量は、組成物中の固体物質の合計重量と比較できる。幾つかの実施態様において、分離した固体物質の重量は、組成物中の固体物質の合計重量のパーセンテージとして、10重量%以下;または5重量%以下;または1重量%以下;または0.5重量%以下;またはゼロである。
【0087】
本発明の組成物が連続液状媒体を含む幾つかの実施態様において、組成物は貯蔵中に2以上の液体相に分離し得る。幾つかの実施態様において、相分離は起こらない。相分離が起こるならば、相分離の量は、組成物を垂直円筒容器中に入れ、分離した相により形成される層を観察することにより評価することができる。相分離したサンプルの有用な特性は、例えば、組成物の合計垂直サイズおよび最も薄い層の厚さ(すなわち、最小の相分離液体相の垂直サイズ)である。いくつかの実施態様において、組成物の合計垂直サイズと最小相分離液体相の垂直サイズの比は、5以上:1;または10以上:1;または20以上:1;または50以上:1;または100以上:1である。
【0088】
本発明の幾つかの実施態様において、ハイブリッド粒子のラテックスは本明細書において前述されたように製造され、前記ラテックスは貯蔵期間にわたって安定である。
【0089】
幾つかの実施態様において、本発明の組成物はヘアスタイリング組成物において用いられる。本明細書において用いられる場合、「ヘアスタイリング組成物」なる用語は、髪を特定の形状または配置に保持するために髪に用いられるポンプまたはエアロゾルヘアスプレー、スタイリングジェル、スタイリンググレーズ、フォームスプレー、スタイリングクリーム、スタイリングワックス、スタイリングローション、リキッドフォーム、スプレージェル、ポマード、ブロードライローション、カールアクチベーター、またはムースを意味する。幾つかの実施態様において、本発明におけるヘアスタイリング組成物はヘアスプレーである。「髪」なる用語は、天然の人間の髪、動物の毛、人工毛、および髪を含有するウィッグまたはヘアピースを意味する。
【0090】
本発明の組成物がエアロゾルスプレー中で用いられる実施態様において、適当なエアロゾルプロペラントも用いられる。いくつかの適当なプロペラントは、たとえば、4個以下の炭素原子を有するアルカン、2個の炭素原子を有するフッ素化炭化水素、ジメチルエーテル、25℃、エアロゾル缶中で通常見られる圧力で気体状である他の化合物、およびその混合物である。幾つかの適当なプロペラントは、例えば、n−ブタン、イソブタン、プロパン、ジメチルエーテル、1,1−ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン、およびその混合物である。
【0091】
本発明のポリマー組成物が、ヘアスタイリング組成物の一部として使用される幾つかの実施態様において、これは25℃で液体であり、容易に注ぐことができるか、またはスプレーできる。このようなヘアスタイリング組成物の連続媒体は本明細書において連続液状媒体であると考えられる。
【0092】
独立して、本発明のポリマー組成物が、25℃で自分自身の重さで容易に流動しないが、25℃で手で容易に塗布できるヘアスタイリング組成物の一部として使用される実施態様も想定される。このようなヘアスタイリング組成物の数例は、スタイリングジェル、あるスタイリングクリーム、およびムースである。このようなヘアスタイリング組成物の連続媒体も本明細書において連続液状媒体であると見なされる。
【0093】
本発明のポリマー組成物がヘアスタイリング組成物の一部として用いられる実施態様のうち、幾つかの実施態様において、ヘアスタイリング組成物は、美容上許容される流体媒体である連続液状媒体を有する。水または他の溶媒は単独または混合物において、ヘアスタイリング組成物の連続液状媒体として用いることができる。幾つかの実施態様において、連続液状媒体は水および水以外の水混和性液体の混合物であり;このような混合物は、本明細書において前述された任意の組成を有することができる。例えば、本発明の幾つかのヘアスタイリング組成物は、連続液状媒体の重量基準で50重量%〜65重量%の水である連続液状媒体を有する。独立して、本発明の幾つかのヘアスタイリング組成物は、水およびエタノールの混合物である連続液状媒体を有する。
【0094】
独立して、幾つかの実施態様において、本発明のポリマー組成物は、ヘアスタイリング組成物の一部として使用され、前記ヘアスタイリング組成物は美容上許容される流体媒体である連続液状媒体を有し、前記流体媒体は、流体媒体の重量基準で、19重量%以下;または15重量%以下;または5重量%以下;または1重量%以下;または0.1重量%以下;またはゼロの量で水を含有する。
【0095】
独立して、ヘアスタイリング組成物は前記固形分値(%)のいずれかを有し得る。例えば、本発明のあるヘアスタイリング組成物は0.1重量%以上;または0.5重量%以上;または2重量%以上;または4重量%以上の固形分(%)を有する。独立して、本発明のあるヘアスタイリング組成物は10%以下、または6%以下の固形分(%)を有する。
【0096】
本発明のポリマーがヘアスタイリング組成物の一部として用いられる実施態様において、ポリマー組成物は分散形態において存在するか、溶解した形態において存在するか、またはその組み合わせとして存在しうる。
【0097】
本発明の組成物がヘアスタイリング組成物の一部として使用される実施態様において、ヘアスタイリング組成物は任意に1以上の次の追加の成分:香料、ヘアスタイリング組成物それ自体または毛髪繊維を着色できる染料、保存料、金属イオン封鎖剤、増粘剤、シリコーン、柔軟剤、フォーム相乗剤、フォーム安定剤、日焼け止め、しゃく解剤、コンディショニング剤、光沢剤、タンパク質、薬草、植物、中和剤、可塑剤、ならびにアニオン性、非イオン性、カチオン性、または両性界面活性剤、あるいはその組み合わせ:を含有することができる。ポリマー組成物が形成された後に、かかる追加の成分のいずれか1つ、または任意の組み合わせをヘアスタイリング組成物に添加することが想定される。
【0098】
幾つかの実施態様において、スルホン化ポリウレタン以外の界面活性剤の不在下でアクリルポリマーが形成され、次いでアクリルポリマー、スルホン化ポリウレタンを含有し、スルホン化ポリウレタン以外の界面活性剤を含有しないヘアスタイリング組成物が形成される。このようなヘアスタイリング組成物は、通常の界面活性剤を含有するヘアスタイリング組成物よりも優れた利点(例えば、金属容器を腐蝕させる傾向が低いこと、および泡を形成する傾向が低いことなど)を有することが想定される。
【0099】
ヘアスタイリング組成物における使用に加えて、本発明の組成物は、ヘアケア、スキンケア、化粧品、または他の関連する用途において有用な他の組成物における使用についても想定される。例えば、本発明の組成物は、ヘアマスク、ヘアコンディショナー、シャンプー、マスカラ、ボディーウォッシュ、スキンマスク、スキンローション、カラー化粧品、化粧品、口紅、または他の関連する用途の1以上における使用についても想定される。
【0100】
幾つかの実施態様において、本発明の組成物は、少量のスルホン化ポリエステルポリマーを含有するか、またはスルホン化ポリエステルポリマーを含有しない。本明細書において用いられる場合、ポリエステルポリマーは5000以上のMwを有するポリマーであって、ポリマー主鎖中に複数のエステル結合基を有し、ウレタン結合基を有さないポリマーである。エステル結合基は:
【0101】
【化3】

【0102】
である。ポリマーがエステル結合基およびウレタン結合基を有するならば、このポリマーはポリウレタンであり、ポリエステルポリマーでないと見なされる。
【0103】
本明細書において用いられる場合、「少量」のポリエステルポリマーとは、ポリエステルポリマーの乾燥重量とスルホン化ポリウレタンの乾燥重量の比が0.1以下:1;または0.05以下:1;または0.01以下:1であることを意味する。
【0104】
幾つかの実施態様において、本発明の組成物は、少量のスルホン化ポリエステルポリマーを含有し、少量の非スルホン化ポリエステルポリマーを含有する。幾つかの実施態様において、本発明の組成物はスルホン化ポリエステルポリマーを含有せず、かつ非スルホン化ポリエステルポリマーを含有しない。独立して、幾つかの実施態様において、本発明の組成物は、スルホン化されているか、スルホン化されていないかにかかわらず、2000以上のMwを有するポリエステルポリマーを含有しない。
【0105】
本明細書および請求の範囲の目的に関して、本明細書において記載される範囲および比の値は組み合わせ可能であると理解すべきである。例えば、60〜120および80〜110の範囲が特定のパラメータについて記載されている場合、60〜110および80〜120の範囲も想定される。さらに、独立して、特定のパラメータが好適な最小値1、2、および3を有すると開示されているならば、またこのパラメータが好適な最大値9および10を有すると開示されているならば、次の範囲はすべて想定される:1〜9、1〜10、2〜9、2〜10、3〜9および3〜10。
【実施例】
【0106】
以下の実施例において用いられる成分の幾つかは以下の通りである。
【0107】
【表1】

【0108】
実施例1
スルホン化ポリウレタン分散物の合成
オーバーヘッドスターラー、還流凝縮器、窒素アダプター、添加漏斗および熱電対を装備されたリアクターに、15.75グラムのポリエチレングリコール(Mn=1500g/モル)、43.82グラムのSS55−225−130、9.59グラムの2−メチル−1,3−プロパンジオール、および112グラムの無水メチルエチルケトンを添加した。混合物を70℃に加熱し、次いで46.68グラムのイソホロンジイソシアネートおよび1滴(すなわち、目薬の容器から1滴)のジブチルスズジラウレートを添加した。結果として得られた混合物を還流条件下、4時間加熱した。メチルエチルケトンの除去および水中での分散により、結果として得られたポリウレタンプレポリマーを水性分散物に変換した。水性スルホン化ポリウレタン分散物は、15%の固形分および49meq/100g乾燥ポリマーの理論的スルホン酸ナトリウム含量を有していた。
【0109】
実施例2
スルホン化ポリウレタン分散物の合成
オーバーヘッドスターラー、還流凝縮器、窒素アダプター、添加漏斗および熱電対を装備されたリアクターに、31.5グラムのポリエチレングリコール(Mn=1500g/モル)、43.82グラムのSS55−225−130、8.54グラムの2−メチル−1,3−プロパンジオール、および112グラムの無水メチルエチルケトンを添加した。混合物を70℃に加熱し、次いで46.68グラムのイソホロンジイソシアネートおよび1滴のジブチルスズジラウレートを添加した。結果として得られた混合物を実施例1においてと同様に加熱し、水中に分散させた。水性スルホン化ポリウレタン分散物は、16%の固形分および44meq/100g乾燥ポリマーの理論的スルホン酸ナトリウム含量を有していた。
【0110】
実施例3
スルホン化ポリウレタン分散物の合成
オーバーヘッドスターラー、還流凝縮器、窒素アダプター、添加漏斗および熱電対を装備されたリアクターに、15.75グラムのポリエチレングリコール(Mn=1500g/モル)、87.78グラムのSS55−225−130、2.28グラムの2−メチル−1,3−プロパンジオール、および112グラムの無水メチルエチルケトンを添加した。混合物を70℃に加熱し、次いで46.68グラムのイソホロンジイソシアネートおよび1滴のジブチルスズジラウレートを添加した。結果として得られた混合物を実施例1においてと同様に加熱し、水中に分散させた。水性スルホン化ポリウレタン分散物は、19%の固形分および75meq/100g乾燥ポリマーの理論的スルホン酸ナトリウム含量を有していた。
【0111】
比較例C4
カルボキシル化ポリウレタン分散物の合成
オーバーヘッドスターラー、還流凝縮器、窒素アダプター、添加漏斗および熱電対を装備されたリアクターに、11.72グラムのポリエチレングリコール(Mn=1500g/モル)、120グラムのFormez(商標)8066−72、26.64グラムの2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)および160グラムの無水メチルエチルケトンを添加した。混合物を70℃に加熱し、次いで66.69グラムのイソホロンジイソシアネートおよび1滴のジブチルスズジラウレートを添加した。結果として得られた混合物を実施例1においてと同様に加熱し、水中に分散させた。水性カルボキシル化ポリウレタン分散物は、31%の固形分および88.3meq/100g乾燥ポリマーの理論的カルボン酸塩含量を有していた。
【0112】
実施例5
スルホン化ポリウレタン/アクリレートハイブリッド分散物の合成
リアクターに277.2グラムの実施例1から得たスルホン化ポリウレタンの分散物を添加した。別に、17.4グラムのBA、32.71グラムのMMA、6.96グラムのHEMA、12.53グラムのMAAおよび0.7グラムのn−DDMを混合することによりモノマー混合物を調製した。0.28グラムの過硫酸アンモニウムを7.36グラムの水中に溶解させることにより開始剤溶液を調製した。窒素をオンにし、リアクターおよび内容物は85℃で、リアクター温度を85℃に維持しながら、モノマー混合物および開始剤溶液を60分にわたって供給した。モノマー混合物および開始剤供給が完了した後、反応混合物を硫酸第一鉄、t−ブチルヒドロパーオキシド、過硫酸アンモニウム、D−イソアスコルビン酸の組み合わせで「チェイス」して、残存するモノマー量を減少させた。反応混合物を次いで室温に冷却し、濾過した。スルホン化ポリウレタン/アクリレートハイブリッド分散物は28.3%の固形分、pH3.9、および1つのピークおよび71nmでメジアン値の粒子分布を有していた。
【0113】
実施例6
スルホン化ポリウレタン/アクリレートハイブリッドの合成
実施例2から得たポリマー分散物を使用した以外は実施例5に記載されたようにして、スルホン化ポリウレタン/アクリレートハイブリッド分散物を製造した。結果として得られた分散物は29.1%の固形分、pH4.1、および1つのピーク、80nmでメジアン粒子サイズの粒子分布を有していた。
【0114】
実施例7
スルホン化ポリウレタン/アクリレートハイブリッドの合成
実施例3のポリマー分散物を使用した以外は実施例5に記載されるようにしてスルホン化ポリウレタン/アクリレートハイブリッド分散物を製造した。結果として得られた分散物は、固形分31.9%、pH4.6、1つのピークおよびメジアン粒子サイズ71nmの粒子分布を有していた。
【0115】
比較例C8
カルボキシル化ポリウレタン/アクリレートハイブリッドの合成(アクリルコポリマー中カルボキシルモノマーを含まない)
212グラムのSancure(商標)2104および100グラムの水をリアクターに添加した。別に、9グラムのBA、14.1グラムのMMA、6.9グラムのHEMA、および0.15グラムのn−DDMを混合することにより、モノマー混合物を調製した。0.12グラムの過硫酸アンモニウムを50グラムの水中に溶解させることにより開始剤溶液を調製した。窒素をオンにし、リアクターおよび内容物が85℃で、リアクター温度を85℃に維持しながら、モノマー混合物および開始剤溶液を60分にわたって供給した。モノマー混合物および開始剤供給が完了した後、反応混合物を硫酸第一鉄、t−ブチルヒドロパーオキシド、過硫酸アンモニウム、D−イソアスコルビン酸の組み合わせで「チェイス」して、残存するモノマー量を減少させた。反応混合物を次いで室温に冷却し、濾過した。カルボキシル化ポリウレタン/アクリレートハイブリッド分散物は23%の固形分、pH7.4を有していた。分散物はポリマー製造の間、安定であり、1日後に相分離しはじめた。
【0116】
比較例C9
カルボキシル化ポリウレタン/アクリレートハイブリッドの合成
212グラムのSancure2104および100グラムの水をリアクターに添加した。別に、9グラムのBA、14.1グラムのMMA、5.4グラムのHEMA、2グラムのMAA、および0.15グラムのn−DDMを混合することによりモノマー混合物を調製した。0.12グラムの過硫酸アンモニウムを50グラムの水中に溶解することにより開始剤溶液を調製した。窒素をオンにし、リアクターおよび内容物が85℃で、リアクター温度を85℃に維持しながら、モノマー混合物および開始剤溶液を60分にわたって供給した。モノマー混合物供給後5分未満で、ゲルがリアクター中で形成された。
【0117】
比較例C10
カルボキシル化ポリウレタン/アクリレートハイブリッドの合成
比較例C4から得たポリマー分散物を用いて実施例5の手順に従って、カルボキシル化ポリウレタン/アクリレートハイブリッド(アクリレートコポリマー中メタクリル酸を含む)を製造する試みをした。モノマー混合物供給後5分未満で、ゲルがリアクター中で形成された。
【0118】
実施例11
ポリウレタンの特性
ポリウレタンを次のようにして評価した:
酸量:100グラムのポリマー乾燥重量あたりの酸基のミリ当量数(サンプルによって、カルボン酸またはスルホン酸のいずれか)
PS:粒子サイズ、CHDFにより測定されたメジアン値(ナノメートル)
溶液:ポリウレタンをエタノールおよび水中に溶解させて、55重量部のエタノール、40重量部の水、および5重量部のポリウレタン固形分の溶液を得た。次いで、眼で見た溶液の外観を記録した。
フィルム:前記溶液をAMP−95でpH7.0に調節し、次いで室温(25℃)で蒸発させた。結果として得られたフィルムを眼および手により次のようにして評価した:
脆性:フィルムを指で曲げようとすると容易に破損する。
柔軟:指でかなりの圧力を加えることにより、破損することなくフィルムを曲げることが可能である。
非常に柔軟:指で軽く圧力を加えるだけでフィルムを曲げることが可能である。
非粘着性:フィルムは感触がなめらかである。
若干粘着性;フィルムは若干感触が粘着性である。
粘着性:フィルムは感触がかなり粘着性である。
Mw:GPCにより測定された重量平均分子量
ゲル:分散物を100メッシュスクリーンを通して濾過した。ゲルを集め、乾燥し、ポリマー分散物1クォートあたりのグラムとして記載した。
【0119】
【表2】

【0120】
実施例12
アクリルポリマーおよびスルホン化ポリウレタンのハイブリッドポリマーの性質
【0121】
【表3】

【0122】
同じハイブリッドポリマーのさらなる性質を次のように評価した。
【0123】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のアクリルポリマーおよび少なくとも1種のスルホン化ポリウレタンを含むポリマー組成物であって、前記アクリルポリマーが前記アクリルポリマーの乾燥重量基準で5重量%以上の少なくとも1種のカルボキシル官能性モノマーのモノマー単位を含むポリマー組成物。
【請求項2】
前記アクリルポリマーが、前記アクリルポリマーの乾燥重量基準で10重量%以上の少なくとも1種の酸官能性モノマーのモノマー単位を含む請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項3】
連続流体媒体をさらに含む請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記連続流体媒体が、前記連続流体媒体の重量基準で、0重量%〜19重量%の水、および81重量%〜100重量%の水以外の少なくとも1種の液体を含む請求項3記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記連続流体媒体が、前記連続流体媒体の重量基準で20重量%〜80重量%の水、および20重量%〜80重量%の水以外の少なくとも1種の水混和性液体を含む請求項3記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記連続流体媒体が水を含み、かつ前記スルホン化ポリウレタンの少なくとも1種が水性分散物の形態である請求項3記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記アクリルポリマーが、水性分散物の形態の前記スルホン化ポリウレタンの存在下で形成される請求項6記載のポリマー組成物。
【請求項8】
水性分散物の形態の前記スルホン化ポリウレタンの粒子の一部または全部が、前記アクリルポリマーの一部または全部をさらに含む請求項6記載のポリマー組成物。
【請求項9】
毛髪を処理する方法であって、前記毛髪を請求項3記載の組成物と接触させることを含む方法。
【請求項10】
請求項3記載の組成物を製造する方法であって、
(a)少なくとも1種のアクリルモノマーを前記スルホン化ポリウレタンに添加し、および
(b)前記スルホン化ポリウレタンの存在下で、前記アクリルモノマーを重合させることにより前記アクリルポリマーを形成すること:を含む方法。

【公開番号】特開2008−88429(P2008−88429A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−232417(P2007−232417)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】