説明

ポリウレタンフォームカーペット裏地用の触媒およびそれを使用して製造されるカーペット

【課題】ポリウレタン布帛裏地を製造するのに有用なポリウレタン配合物を提供すること。
【解決手段】ジアルキル錫スルフィド触媒を含む配合物を使用してポリウレタンフォーム裏地付き布帛、特にポリウレタン裏地付きカーペットを製造することができる。ジアルキル錫スルフィド触媒の使用によって、ゲル化から硬化までの時間を実質的に増加させることなく遅延ゲル化が可能となる。ゲル化が遅くなることよって、改良された取扱適性および裏地の品質が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遅効性触媒を含むポリウレタン配合物に関する。本発明は特にポリウレタン裏地付き布帛を製造するのに有用な遅効性触媒を含むポリウレタン配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
布帛製品製造分野において裏地としてポリウレタンを種々の形態で使用することが周知である。例えば、Jenkines等に付与された米国特許第4,296,159号には、タフティングまたは製織された製品の裏面にポリウレタンフォーム形成性組成物を適用することにより製造される単一の裏地を有するタフティングまたは製織された製品が開示されている。別の形態のポリウレタン裏地が、Mobley等に付与された米国特許第5,102,714号に開示されているが、ポリウレタン裏地は粘着接着剤である。例えば米国特許第4,853,280号に開示されているように、緩衝作用のある布帛裏地としてポリウレタンフォームを使用することも周知である。
【0003】
ポリウレタン裏地付き布帛、特にカーペットを製造するのに使用される装置は大規模かつ高価なものになりうる。従って、一般的にカーペット製造に使用されるポリウレタン配合物は、当該装置の内部適用条件および硬化条件の制約に適合するものに調製されねばならず、その逆であってはならない。例えば、当該カーペット裏地装置が1〜2分間の適用後硬化時間を可能にするものである場合には、3分間の硬化条件を有する配合物を使用することはできない。
【0004】
カーペット用途にポリウレタン裏地を使用することに関して1つの特に永続している問題は、ポリウレタン反応中の早期ゲル化に関する問題である。ポリウレタンは、細部で異なる種々の方法により製造される。しかしながら、基本的なウレタン形成反応は、活性水素含有化合物、往々にしてポリオール、すなわちジヒドロキシ−またはポリ−ヒドロキシ化合物とジイソシアネートまたはポリイソシアネートとの接触の結果として起こる。これらの出発物質の反応は通常触媒の存在を必要とする。この目的に適する多数の触媒が知られている。その中で、最も頻繁に使用されているものは、例えばトリエチレンジアミンおよびN−置換モルホリンのような第3級アミン;例えば錫(II)オクトエールのような有機酸の錫(II)塩;および水銀のような重金属である。
【0005】
第3級アミンと錫(II)塩の場合には、触媒は出発物質間の反応を即座にまたは殆ど即座に促進させ、そのため加工が反応の急速な開始を必要とする場合に、十分にその役割を果たす。しかしながらある目的に対して、反応を遅らせ、各成分の接触とゲル化の間の時間を長くし、それによってより高い加工寛容度を達成することが往々にして望ましい。このことは、いったんゲル化が始まると好ましくは反応が非常に急速に進行するポリウレタンカーペット裏地用途において特に望ましい。加工寛容度が高いほど、布帛裏地適用装置の内部制約に適合させるのに有用である。
【0006】
幾つかの触媒は、それらの使用を制約する特定の欠点を有する。アミンおよび錫塩は、出発物質間の接触に続いて加工にさらに時間を必要とする場合に早期硬化を引き起こしうる。そのようなことは、配合成分を混合し、次いでゲル化が望ましく起こる前に混合物を金型中にまたは基材上に注ぎ、分散させる、フォーム、エラストマー、コーティングおよび接着剤のような特定のポリウレタンを製造する際によくあることである。
【0007】
代わりに、重金属のようないわゆる「遅効性」触媒を使用することが往々にして望ましい。しかしながら、水銀、ビスマス、バリウムまたはカドミウムのような重金属を含有する触媒は、克服することが困難な毒性および環境上の安全性に関わる問題を呈する。これらの触媒も、いったんゲル化が始まると、布帛にポリウレタン裏地を適用する必要条件を満たす程度にカーペットを製造するのに十分に速い反応を引き起こすことができない。
【0008】
重金属に頼らずに早期ゲル化を防止する1つの方法が、Haddickに付与された米国特許第3,661,885号に開示されている。この発明は、予め形成された錫(II)塩の錯体と有機錯化剤を使用することを伴う。しかしながらそのような化合物の使用は、問題がないわけではない。錫(II)塩/アミン錯体は、水の存在中で分解する傾向があり、その結果、触媒活性が低下する。さらに、最適な加工性および製品の品質を可能にするほど遅延が不十分である。従って、それらの適用性は幾分限定されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、当該技術分野において、遅効性触媒を含むポリウレタン配合物を使用してポリウレタン裏地付き布帛を製造することが望まれている。また、これらの触媒が、長い遅延と、それに続いてゲル化の開始後に速くかつ完全なポリウレタン反応を引き起こすことが望ましい。触媒として特に有毒な化合物の使用が回避されることも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一観点において、本発明は、ポリウレタン布帛裏地を製造するのに有用なポリウレタン配合物であって、(1)ポリイソシアネート、(2)活性水素含有化合物および(3)遅効性触媒を含むポリウレタン配合物を含み、前記遅効性触媒がジアルキル錫スルフィドであり、実質的に他のポリウレタン触媒を含まないポリウレタン配合物である。
【0011】
他の一観点において、本発明は、布帛およびそれに接着したポリウレタン裏地を含むポリウレタン裏地付き布帛であって、前記ポリウレタン裏地が、(1)ポリイソシアネート、(2)活性水素含有化合物および(3)遅効性触媒を含むポリウレタン配合物から製造されるものであって、前記遅効性触媒がジアルキル錫スルフィドであり、前記配合物が実質的に他のポリウレタン触媒を含まないものであるポリウレタン裏地付き布帛である。
【0012】
さらに別の一観点において、本発明は、ポリウレタン裏地付き布帛を製造する方法であって、(A)(1)ポリイソシアネート、(2)活性水素含有化合物および(3)遅効性触媒を含むポリウレタン配合物を混合する工程であって、前記遅効性触媒がジアルキル錫スルフィドであり、実質的に他のポリウレタン触媒を含まないポリウレタン配合物を混合する工程、および(B)布帛に前記ポリウレタン配合物を適用する工程を含むポリウレタン裏地付き布帛を製造する方法である。
【0013】
さらに別の一観点において、本発明は、(A)(1)ポリイソシアネート、(2)活性水素含有化合物、(3)遅効性触媒および(4)発泡剤を含むポリウレタン配合物を混合する工程であって、前記遅効性触媒がジアルキル錫スルフィドであり、実質的に他のポリウレタン触媒を含まないポリウレタン配合物を混合する工程、および(B)布帛に前記ポリウレタン配合物混合物を適用する工程を含む方法により製造される製品を含むポリウレタンフォームパッドである。
【0014】
一観点において、本発明はポリウレタン裏地付き布帛である。好ましくはこのポリウレタン裏地付き布帛は、少なくとも1層のポリウレタンフォーム層を有するカーペットまたはカーペットタイルである。一態様において、このポリウレタン裏地付き布帛は、パッドとカーペット織物が一つの製品に統合された一体型の気泡ポリウレタンフォームカーペットパッドである。カーペットへのポリウレタン層のこの適用は、例えばTurner等に付与された米国特許第4,853,054号(引用により本明細書に含めることにする)および米国特許第5,104,693号(これも引用により本明細書に含めることにする)に開示されている。
【0015】
他の一観点において、本発明はカーペットパッドである。ポリウレタンフォームが製織されたポリプロピレン基材に適用されることを除き、カーペットに対するのと同様な方法でカーペットパッドは製造される。ポリウレタンフォームが硬化した後、パッドをパッド付きカーペットを補うために使用するかまたは非パッド付きカーペット用の緩衝性裏地として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の触媒はジアルキル錫スルフィド触媒である。最も好ましくは、このジアルキル錫スルフィドはジブチル錫スルフィドであるが、他のアルキル基、例えばメチルおよびオクチルを使用することもできる。ジブチル錫スルフィドはなめらかな液体である。本発明の配合物と使用される場合には、ジブチル錫スルフィドは、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのようなカーペット裏地配合物と混和性の溶剤と共に使用されることが好ましい。
【0017】
本発明の触媒を使用する利点は、本発明の触媒が、遅延ゲル化を提供するが、ゲル化の開始によって急速に硬化することである。その結果、反応混合物は粘度が低く、そのため混合物は布帛基材上を良好に流れることができる。反応混合物の粘度が低いことによって、ポンプの磨損および破壊が起こりにくい。本発明に見出される改良点には、高製造速度、および適用パドル内でゲルが形成されるために不良品が少ない点である。
【0018】
本発明の触媒の他の利点は、本発明の触媒がポリオールと混合される場合に加水分解安定でありうることである。幾つかの慣用的な触媒は、ポリオールまたはポリオールおよび充填剤と混合される場合に、それらの物質により吸着または吸収された水のために加水分解しうる。本発明の触媒は、同様な湿潤ポリオール条件に暴露される場合に、有機酸錫(II)塩または有機酸錫(IV)塩および錫(IV)メルカプチド触媒よりも安定である。
【0019】
本発明のポリウレタンフォームは、本発明のジアルキル錫スルフィド以外の触媒の実質的に不在下でも好ましく製造される。本発明のポリウレタンフォーム配合物は好ましくは当該配合中に他の触媒を含まない。除外されないものは若干の触媒作用を有する充填剤である。この除外はむしろ、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、N−ココモルホリン、1−メチル−4−ジメチルアミノエチルピペラジン、3−メトキシ−N−ジメチルプロピルアミン、N,N−ジエチル−3−ジエチルアミノプロピルアミンおよびジメチルベンジルアミンのような第3級アミン触媒;ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートおよびオクタン酸第一錫のような有機錫触媒;ならびに脂肪族および芳香族第3級アミン化合物、有機金属化合物、カルボン酸アルカリ金属塩、フェノールアルカリ金属塩および対称トリアジン誘導体のアルカリ金属塩のような慣用的なポリウレタン触媒におよぶ。好ましくは本発明の配合物は、他の触媒に対するジアルキル錫スルフィドの重量比が4:1以上、好ましくは10:1以上、最も好ましくは0となる量で存在する他の触媒を含み、本発明の配合物中に他の触媒が存在しないことが最も好ましい。
【0020】
本発明のフォーム配合物はポリオール成分を含む。このフォーム配合物のポリオール成分は、カーペット用途に使用されるフォームの厳しい物理的特性条件および取扱条件に耐えることができるフォームを製造するのに使用できるいかなるポリオールまたはポリオール混合物であってもよい。例えば、ポリオール成分は、好ましくは、混合物の一部としてC3−C8アルキレンオキシドに基づくポリオールであって、1000〜5000の当量および当該ポリオールの15〜30重量%を構成する内部ポリ(エチレンオキシド)ブロックもしくは末端エチレンオキシドキャップを有するポリオールを含むポリオール混合物であるか、またはポリオールもしくはその混合物が1.8〜2.2の平均官能価を有するそのようなポリオールの混合物であることができる。ポリオール混合物の他の部分は、分子当たり2個の活性水素含有基を有する低当量化合物を少量含むことが好ましい。
【0021】
本発明の他の例は、Jenkinesに付与された米国特許第5,104,693号により開示されたもののような配合物から製造されるポリウレタンフォームである。この種の配合物において、ポリオール成分は、平均当量1,000〜5,000のイソシアネート反応性物質の少なくとも1種であることができる。ポリイソシアネートは、90〜130のイソシアネートインデックスを提供する程度の量のポリイソシアネートであり、当該ポリイソシアネートの少なくとも30重量%が化学量論的に過剰量のMDIまたはMDI誘導体と当量500〜5,000のイソシアネート反応性有機ポリマーとの反応生成物である軟質セグメントプレポリマーであり、このプレポリマーは10〜30重量%のイソシアネート基含有率を有する。
【0022】
本発明のフォームは、発泡剤および場合に応じて充填剤を使用して製造される。発泡剤は、好ましくは空気であるが、二酸化炭素および窒素のような他の気体を使用することもできる。発泡剤は好ましくは起泡により当該ポリマー中に導入される。発泡機は、混合物を攪拌しながらその混合物中に空気を注入する装置である。本発明のフォーム配合物中に含められる場合には、充填剤は酸化アルミニウム三水和物(アルミナ)、炭酸カルシウム、硫酸バリウムまたはそれらの混合物であることができる。他の充填剤を使用することもできる。
【0023】
上記ポリイソシアネート、充填剤およびポリオールは本発明の配合物中に含めることができる有用な材料の例であるが、他の材料を使用することもできる。本発明の配合物のポリイソシアネート成分は、有機ポリイソシアネート、改質ポリイソシアネート、イソシアネートに基づくプレポリマー、およびそれらの混合物から都合良く選ぶことができる。これらは、脂肪族および脂環式イソシアネートを含むことができるが、芳香族および特に多価芳香族イソシアネートが好ましい。好ましいポリイソシアネートは、2,4−および2,6−トルエンジイソシアネートおよび対応する異性体の混合物;4,4’−、2,4’−および2,2’−ジフェニル−メタンジイソシアネートおよび対応する異性体の混合物;4,4’−、2,4’−および2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニルポリメチレンイソシアネートPMDIの混合物;ならびにPMDIとトルエンジイソシアネートの混合物である。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート;1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−1−3−イソシアナトメチルシクロヘキサン;2,4−および2,6−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネートならびに対応する異性体の混合物;4,4’−、2,2’−および2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ならびに対応する異性体の混合物のような脂肪族および脂環式イソシアネート化合物も本発明のポリウレタンを製造するのに有用である。
【0024】
いわゆる改質多価イソシアネート、すなわち上記ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートの化学反応により得られる生成物も本発明の配合物のポリイソシアネート成分として都合良く使用される。例として、ポリイソシアネート含有エステル、尿素、ビウレット、アロファネート、好ましくはカルボジイミドおよび/またはウレトンイミン;イソシアヌレートおよび/またはウレタン基含有ジイソシアネートまたはポリイソシアネートがある。カルボジイミド基、ウレトンイミン基および/またはイソシアヌレート環を含有し、10〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%のイソシアネート基(NCO)含有率(42/ポリイソシアネート分子量)を有する液体ポリイソシアネートを使用することもできる。これらには、例えば、4,4’−、2,4’−および/または2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび対応する異性体混合物、2,4−および/または2,6−トルエンジイソシアネートおよび対応する異性体の混合物;ジフェニルメタンジイソシアネートとPMDIの混合物ならびにトルエンジイソシアネートとPMDIおよび/またはジフェニルメタンジイソシアネートの混合物に基づくポリイソシアネートが含まれる。
【0025】
本発明に有用な適切なプレポリマーは、5〜40重量%、より好ましくは15〜30重量%のNCO含有率を有するプレポリマーである。これらのプレポリマーは、ジ−および/またはポリ−イソシアネートと低分子量ジオール、トリオール等の物質との反応により生成するものであるが、ジ−およびトリ−アミンならびにジ−およびトリ−チオールのような多価活性水素化合物を使用して調製することもできる。個々の例は、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートと例えば分子量800以下の低分子量ジオール、トリオール、オキシアルキレングリコール、ジオキシアルキレングリコールまたはポリオキシアルキレングリコールとの反応により得られるウレタン基を含有する芳香族ポリイソシアネート、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%のNCO含有率を有する芳香族ポリイソシアネートである。これらのポリオールは、ジ−および/またはポリオキシアルキレングリコールとして個々にまたは混合物で使用することができる。例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールおよびポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコールを使用することができる。
【0026】
本発明において特に有用なものは、(i)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物から得られる8〜40重量%のNCO含有率を有し、カルボジイミド基および/またはウレタン基を含有するポリイソシアネート;(ii)好ましくは2〜4の官能価および800〜15,000の分子量を有するポリオキシアルキレンポリオールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物との反応により調製されるNCO基を含有するプレポリマーであって、当該プレポリマーの重量に基づいて20〜35重量%NCO含有率を有するプレポリマー、および(i)と(ii)の混合物;並びに、(iii)2,4−および2,6−トルエン−ジイソシアネートおよび対応する異性体の混合物である。その形態のうちどのような形態をとっていてもよいPMDIを使用することもでき、PMDIを使用することが好ましい。この場合には、PMDIは好ましくは125〜300、より好ましくは130〜175の間の当量と2以上の平均官能価を有する。2.5〜3.5の平均官能価がより好ましい。ポリイソシアネート成分の粘度は好ましくは25〜5,000センチポアズ(cps)(0.025〜5Pa・s)であるが、加工の容易さのために25℃で100〜1,000cps(0.1〜1cps)の粘度が好ましい。別のポリイソシアネート成分が選ばれる場合にも同様な粘度が好ましい。本発明の配合物のポリイソシアネート成分は、MDI、PMDI、およびMDIプレポリマー、PMDIプレポリマー、改質MDIおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0027】
本発明に有用な多価活性水素含有物質には、上述のもの以外の物質も含まれる。ポリウレタンの製造に通常使用されている活性水素含有化合物は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物である。このような化合物を本明細書においてポリオールと呼ぶ。適切なポリオールの代表例は周知であり、High Polymers, 第XVI巻、SaundersおよびFrischによる“Polyurethanes, Chemistry and Technology”Interscience Publishers, New York, 第I巻、第32〜42および44〜54頁(1962)ならびに第II巻、第5〜6および198〜199頁(1964);K.J. Saunders, ChapmanおよびHallによるOrganic Polymer Chemistry, London, 第323〜325頁(1973);およびJ.M. Buret編集によるDevelopments in Polyurethanes, 第I巻、Applied Science Publishers, 第1〜76頁(1978)のような出版物に記載されている。しかしながら、いかなる活性水素含有化合物を本発明に使用することができる。そのような物質の例には単独または混合物の形態にある下記化合物:(a)ポリヒドロキシアルカンのアルキレンオキシドアダクト;(b)非還元糖および糖誘導体のアルキレンオキシドアダクト;(c)リン酸およびポリリン酸のアルキレンオキシドアダクト;および(d)ポリフェノールのアルキレンオキシドアダクトの種類から選ばれるものが含まれる。これらの種類のポリオールを「ベースポリオール(base polyol)」と呼ぶ。本発明において有用なポリヒドロキシアルカンのアルキレンオキシドアダクトの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、グリセロール、1,2,4−トリヒドロキシブタン、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ポリカプロラクトン、キシリトール、アラビトール、ソルビトールおよびマンニトールのアダクトである。ポリヒドロキシアルカンのアルキレンオキシドアダクトとして本発明において好ましいものはトリヒドロキシアルカンのエチレンオキシドアダクトである。他の有用なアダクトには、エチレンジアミン、グリセリン、アンモニア、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、フルクトース、およびスクロースが含まれる。
【0028】
ポリ(オキシプロピレン)グリコール、トリオール、テトロールおよびヘキソールならびにエチレンオキシドによりキャップされたこれらのいずれも好ましい。これらのポリオールには、ポリ(オキシプロピレンオキシエチレン)ポリオールも含まれる。オキシエチレン含有率は、全ポリオール重量の80重量%以下、より好ましくは40重量%以下を構成するものであることが好ましい。エチレンオキシドを使用する場合に、エチレンオキシドを、例えば内部ブロック、末端ブロックもしくはランダムに分布するブロックまたはこれらの組み合わせとしていかなる態様でも当該ポリマー鎖に沿って導入することができる。
【0029】
ポリアミン、アミンを末端基とするポリオール、ポリメルカプタンおよび他のイソシアネート反応性化合物も本発明に適する。本発明に使用するのにポリイソシアネート重付加活性水素含有化合物(PIPA)が特に好ましい。PIPA化合物は典型的には、TDIトリエタノールアミンの反応生成物である。PIPA化合物を調製する方法は、例えば、Rowlandsに付与された米国特許第4,374,209号に見出すことができる。
【0030】
ポリオールの他の好ましい種類は「コポリマーポリオール」であり、これはアクリロニトリル−スチレンコポリマーのような安定に分散したポリマーを含有するベースポリオールである。これらのコポリマーポリオールの製造は、アゾビスイソブチロニトリルのような触媒;コポリマーポリオール安定剤;およびイソプロパノールのような連鎖移動剤等の種々の他の物質を含む反応混合物から行うことができる。
【0031】
ポリイソシアネートを除く全ての成分をプレミックスして「B」成分を形成することが往々にして好ましい。ポリイソシアネートと前記B成分とを混合し、次いで、例えばOAKES FROTHER**OAKES FROTHERはE.T. Oakes Corporationの商標である)を使用して発泡剤ガスをブレンドする。この組成物は、硬化度が著しく高くなる前に、層を適用し、そして層の厚さを調整するドクターナイフ、エアーナイフまたは押出機のような装置を使用して布帛または他の基材に適用される。代わりに、成形ポリウレタンを、移動ベルトを使用してポリウレタンを層状に成形し、ポリウレタンを部分硬化させ、次いで二重ベルトラミネーターのような装置を使用してポリウレタンを布帛に結合させることによって適用することができる。フォーム層の適用後、赤外線オーブン、裸火強制通風対流インピンジメントオーブン、加熱プレート等により加熱することによって硬化する。
【0032】
本発明に有用な布帛には、ブロード織カーペット、自動車内用カーペット、自動車装備品および自動車トランク内張り用布帛が含まれる。さらに、本発明に有用な布帛には、合成プレイング面(synthetic playing surface)、製織された高分子スクリム、製織されていない高分子スクリム、壁装材、板状重合体および椅子張り(furniture cover)が含まれる。本発明の一つの好ましい態様は、Wing等に付与された米国特許第4,657,790号に開示されているもののような、本発明の触媒をカーペットタイル製造方法に導入することによって製造されるカーペットタイルである。引用により前記Wing等に付与された米国特許第4,657,790号を本明細書に含めることにする。
【0033】
カーペットに加え、椅子張りおよび壁装材を製造するのに使用することができる。
【0034】
本発明を説明するために以下の実施例を示す。この実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、そのように解釈されるべきである。他に記載がないかぎり、量は重量部または重量%であらわされている。
【実施例】
【0035】
実施例1
下記表1の配合に従って、
a.表示量のポリオールを適切な大きさの容器の中に入れ、次いで2インチ(5.08cm)OAKES FROTHER*および3フィート(0.9144m)ベルト付きパロット塗布機を使用して混合した;
b.高剪断攪拌しながら表示量のD−70*炭酸カルシウム充填剤(*D−70はGeorgis Marble Companyの商標である)をポリオールに添加した;
c.攪拌しながら表示量のH−36U*水和アルミナ(*H−36UはSolem Industriesの商標である)をポリオールに添加した;
d.攪拌しながら表示量のシリコーン界面活性剤をポリオールに添加した;
e.凝集性の充填剤粒子を完全に分散させてばらばらにするために、摂氏50度(50℃)の温度に達するまでポリオール/充填剤配合物を高剪断攪拌した;
f.ポリオール/充填剤配合物を20℃に冷却した;
g.表示量のイソシアネート成分をポリオール/充填剤配合物に添加し、次いで2つを完全に混合した;
h.表示量のポリウレタン触媒を攪拌しながら反応混合物に添加した;
h.反応混合物に空気を計量供給し、次いで密度が約0.66g/ccになるまで泡立てた;
i.TEFLON(登録商標)*およびガラス繊維ベルト上を運ばれてゆく不織フリースにフォームを適用し、次いで、予め適用されたポリウレタンプレコート層を有するタフテッドカーペットに結合させた;
j.加熱プレートおよび対流オーブンにより最終硬化を達成した。
【0036】
得られたカーペットはカーペット面、ポリウレタンプレコート、ポリウレタンクッションおよび不織フリースからなる複合体であった。このカーペットは、従来の方法に比して低い背圧を用いて製造されるものであって、改良された流展性および低い気泡粘度を有し、早期ゲル化を起こさなかった。物理的特性を下記表2に示す。
【0037】
実施例2
本発明のポリウレタンフォームを製造し、物理的特性を試験した。配合成分は下記表1に示す通りであり、TEFLON(登録商標)およびガラス繊維にフォームを直接適用し、硬化させ、次いで物理的試験のために除去したことを除き、これらは実施例1におけるように混合した。物理的特性を下記表2に示す。
【0038】
比較例3
慣用的なポリウレタン触媒を使用したことを除き、実質的に実施例2におけるようにポリウレタンフォームを製造し、次いで試験した。配合成分を表1に示し、物理的特性を下記表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン布帛裏地を製造するのに有用なポリウレタン配合物であって、
(1)ポリイソシアネート、
(2)活性水素含有化合物、および
(3)遅効性触媒、
を含み、前記遅効性触媒がジアルキル錫スルフィドであり、実質的に他のポリウレタン触媒を含まないポリウレタン配合物。
【請求項2】
触媒がジブチル錫スルフィドである請求項1記載のポリウレタン配合物。
【請求項3】
布帛およびそれに接着したポリウレタン裏地を含むポリウレタン裏地付き布帛であって、前記ポリウレタン裏地が、
(1)ポリイソシアネート、
(2)活性水素含有化合物、および
(3)遅効性触媒、
を含むポリウレタン配合物から製造されるものであって、前記遅効性触媒がジアルキル錫スルフィドであり、前記配合物が実質的に他のポリウレタン触媒を含まないものであるポリウレタン裏地付き布帛。
【請求項4】
ジアルキル錫スルフィドがジブチル錫スルフィドである請求項3記載のポリウレタン裏地付き布帛。
【請求項5】
布帛がフォーム裏地およびポリウレタンプレコート層を含む請求項4記載のポリウレタン裏地付き布帛。
【請求項6】
ポリウレタン裏地付き布帛を製造する方法であって、
(A)(1)ポリイソシアネート、
(2)活性水素含有化合物、および
(3)遅効性触媒、
を含むポリウレタン配合物を混合する工程であって、前記遅効性触媒がジアルキル錫スルフィドであり、実質的に他のポリウレタン触媒を含まないポリウレタン配合物を混合する工程;および
(B)布帛に前記ポリウレタン配合物を適用する工程;
を含む方法。
【請求項7】
ジアルキル錫スルフィドがジブチル錫スルフィドである請求項6記載の方法。
【請求項8】
ポリウレタン配合物が発泡機により混合される請求項7記載の方法。
【請求項9】
(A)(1)ポリイソシアネート、
(2)活性水素含有化合物、および
(3)遅効性触媒、
を含むポリウレタン配合物を混合する工程であって、前記遅効性触媒がジアルキル錫スルフィドであり、実質的に他のポリウレタン触媒を含まないポリウレタン配合物を混合する工程;および
(B)基材に前記ポリウレタン配合物を適用する工程;
を含む方法により製造される製品を含むポリウレタンフォームパッド。
【請求項10】
ジアルキル錫スルフィドがジブチル錫スルフィドである請求項9記載の方法。

【公開番号】特開2006−233416(P2006−233416A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−109082(P2006−109082)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【分割の表示】特願平8−526862の分割
【原出願日】平成8年2月14日(1996.2.14)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】