説明

ポリウレタンフォーム層の剥離方法

【課題】本発明は、ポリウレタンフォームローラからポリウレタンフォーム層を、膨潤させ芯金から取り除くことが出来、その芯金に剥離跡などの傷を生じさせないポリウレタンフォーム層の剥離方法の提供を目的とする。
【解決手段】芯金と該芯金の外周に配されたポリウレタンフォーム層を有するポリウレタンフォームローラから該ポリウレタンフォーム層を剥離する剥離方法において、少なくとも以下に示す成分(A)を発泡硬化させてなる該ポリウレタンフォーム層を、30℃以上100℃以下の水(H2O)に浸漬し、膨潤させ芯金から取り除く工程を有してなる、ポリウレタンフォーム層を剥離する剥離方法。成分(A):エチレンオキシドを5質量%以上70質量%以下含有するポリエーテルポリオール

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ及び複写機等の電子写真方式を採用した画像形成装置等に用いられるポリウレタンフォームローラのポリウレタンフォーム層を剥離する剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンタ等のOA機器に用いられる現像、帯電、転写部材は、金属製の芯金上にゴムや樹脂で出来た弾性体を設けた構成であるものが一般的である。OA機器に用いられる芯金は、一般的には、振れや外径が高精度に加工されているばかりでなく、その材質としても、鉄材の表面にニッケルメッキ等のメッキ処理を施したものやSUS材等が使用されており、高価なものとなっている。これら芯金を再利用する技術が着目されている。
【0003】
OA機器に用いられるポリウレタンフォームローラ用芯金の再生は、ローラからポリウレタンフォーム層を剥して芯金を露出し、その芯金の表面に新たにポリウレタン層を設けることで実現される。
【0004】
まず、ポリウレタンフォーム層を溶剤により膨潤させ芯金から剥離する方法が挙げられるが、溶剤の使用は環境上好ましくない。環境保護の見地から、溶剤を使用しないポリウレタンフォーム層の剥離方法が求められている。
【0005】
芯金の再生方法として、例えば、芯金の外周に形成された1層又はそれ以上の被覆層における全層又は外側の一部の層を切削、研磨等により除去し、その部分に再度、被覆層を形成する方法(特許文献1、2参照)等が挙げられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1、2の方法では、切削、研磨等の際に、芯金の表面又は残された被覆層の表面に傷が生じ、被覆層を再度形成しても、その傷が被覆層の表面に現れ、画像不具合の原因となる。しかも、切削、研磨等の際に、切削紛、研磨紛等が発生して表面に付着するため、洗浄工程が別途必要となる。
【特許文献1】特開平8−171264号公報
【特許文献2】特開2000−291637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ポリウレタンフォームローラからポリウレタンフォーム層を、膨潤させ芯金から取り除くことが出来、その芯金に剥離跡などの傷を生じさせない従来に比べより簡便なポリウレタンフォーム層の剥離方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための、本発明は、以下の通りである。
(1)芯金と該芯金の外周に配されたポリウレタンフォーム層とを有するポリウレタンフォームローラから該ポリウレタンフォーム層を剥離する剥離方法において、
少なくとも以下に示す成分(A)を発泡硬化させてなる該ポリウレタンフォーム層を、30℃以上100℃以下の水(H2O)に浸漬し、膨潤させ芯金から取り除く工程を有してなる、ポリウレタンフォーム層を剥離する剥離方法。
【0009】
成分(A):エチレンオキシドを5質量%以上70質量%以下含有するポリエーテルポリオール
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリウレタンフォームローラからポリウレタンフォーム層を、煩雑な工程を要することなく取り除くことが出来、その芯金に剥離跡などの傷を生じさせないポリウレタンフォーム層の剥離方法を提供出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、ポリウレタンフォームローラは、プリンタ、ファクシミリ及び複写機等の電子写真方式を採用した画像形成装置等に用いられる現像部材、帯電部材、転写部材、クリーニング部材、除電部材等のOAローラであってもよい。
【0012】
図1は、本発明のポリウレタンフォームローラ1の概略図である。本発明では、芯金2からポリウレタンフォームローラ層3を取り除くことを目的とする。
【0013】
図2は、本発明のポリウレタンフォームローラのポリウレタンフォーム層を膨潤させるための30℃以上100℃以下の水5を入れた容器4である。
【0014】
[ポリウレタンフォーム層の膨潤処理]
本発明により、ポリウレタンフォームローラを、30℃以上100℃以下の水(H2O)に1分以上浸漬させ、膨潤したポリウレタンフォーム層を芯金から取り除くことが出来る。前記水がポリウレタンフォーム層を膨潤させ、当初の密着面におけるポリウレタンフォーム層側の体積が増えるため、芯金側と密着していたポリウレタンフォームの部位間が広がり、密着力が維持できなくなるからである。従って、ポリウレタンフォームが、より膨潤し易い性質であれば、本願の趣旨はよりよく達成される事になる。
【0015】
なお、水の温度は30℃以上100℃以下であることが必要である。水の温度が30℃未満であると、水がポリウレタンフォーム層へ浸透するまでに時間を要する。また、100℃を超えると、特別な装置が必要でコストアップにつながる。
【0016】
30℃以上100℃以下の水に浸漬させる時間は、1分以上であることが好ましい。浸漬時間が1分未満であると、水がポリウレタンフォーム層へ十分浸透せず膨潤し難い。なお、製造上のコストを考慮すれば、次工程に支障を起こさない程度の時間に制限される事は自明であり、浸漬時間の上限は製造工程に依存するものである事は言うまでも無い。
【0017】
[ポリウレタンフォーム層の除去処理]
本発明により、膨潤したポリウレタンフォーム層を人的、若しくは機械的に取り除くことが出来る。ポリウレタンフォーム層は十分に膨潤しているため、さほど力を必要としない。また、超音波等の振動を追加で付与しても差し支えない。前記超音波等の振動を付与することで、膨潤浸透、剥離の効率を向上出来る場合がある。本願の剥離方法以降の処理工程は必要に応じて設ければよい。たとえば、本願の膨潤剥離工程に続き、まだ除去しきれていないポリウレタンフォームの残分をブラシで、芯金表面を傷つけないようにこすり取り、清浄水で汚れを落として乾燥させる、といった工程を行うことができる。
【0018】
[ポリウレタンフォームローラ]
本発明のポリウレタンフォームローラは、少なくとも円柱状の芯金と、芯金の両端部を除いて芯金の周りに設けられたポリウレタンフォーム層を備える。該ポリウレタンフォーム層は、必要に応じてその表面に内部から連通したセル開口部を備えたスキン層を有しても良い。
【0019】
本発明の芯金は、外径2mm以上10mm以下であることが好ましい。該芯金の材質は特に限定されないが、例えば硫黄快削鋼などの鋼材にニッケルなどのメッキを施した金属部材、アルミニウム、ステンレス鋼、マグネシウム合金などの金属部材が挙げられる。
【0020】
本発明のポリウレタンフォーム層は、エチレンオキシドを5質量%以上70質量%以下含有するポリエーテルポリオール(以下、成分(A)とも記載する)を少なくとも一種以上用いて形成される。すなわち、エチレンオキシドが5質量%以上70質量%以下であると、ポリウレタンフォーム層が水を吸収し膨潤し易いため、ポリウレタン層の剥離に有効である。また、エチレンオキシドが5質量%未満であると、水の十分な膨潤を得られないため、ポリウレタンフォーム層の剥離には不向きであるばかりでなく、反応性が低く金型成形に適さない。また、エチレンオキシドが70質量%を超えると、材料が高粘度になるため作業性が低下する。該ポリエーテルポリオールは、一種又は二種以上を組み合せて用いても良い。また、予めポリイソシアネートと重合させたプレポリマーとして用いても差し支えない。
【0021】
また、ポリイソシアネートとしては特に制限は無く、従来公知の各種ポリイソシアネートの中から、適宜選択して使用することが出来る。例えば2、4−および2、6−トリレンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、およびカーボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等が、単独で、又は二種以上を組み合せて用いても良い。なお、該ポリイソシアネートを公知の活性水素化合物の1種または2種以上と反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーも、ポリイソシアネートとして使用することもできる。
【0022】
ポリウレタン原料のNCOインデックスは60以上、120以下であることが好ましく、70以上、110以下であることがより好ましい。なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数をイソシアネート基と反応する活性水素の総数で除したものに100を乗じた値とする。即ち、イソシアネート基と反応する活性水素数とポリイソシアネート中のイソシアネート基が化学量論的に等しい場合にそのNCOインデックスは100となる。
【0023】
触媒としては特に制限は無く、従来公知の各種触媒の中から適宜選択して使用することが出来る。トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノ)エチルエーテル等、従来公知の触媒が使用できる。
【0024】
整泡剤としては特に制限は無く、従来公知の各種整泡剤の中から適宜選択して使用することが出来る。例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のSRX−274C、L−5309、L−520等のシリコーン系界面活性剤が使用できる。
【0025】
その他の材料や添加剤は特に限定されない。
【0026】
本発明のポリウレタンフォームローラの成形方法は、例えば以下の方法が挙げられる。まず、ポリウレタンフォームローラ成形用金型に離型剤を均一塗布し、芯金を予め成形金型内部に設置し60℃に温調した。前記ポリエーテルポリオールとその他材料を混合し、前記成形用金型に注入し反応硬化させることにより、ポリウレタンフォームローラを成形することが出来る。
【0027】
接着剤やホットメルトシートなどの公知の接着剤を使用すると、ポリウレタンフォーム層を芯金から取り除く際に、上手く取り除けない場合がある。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0029】
表1、及び表2に示す組成で、ポリエーテルポリオール、ポリイソシアネートを使用し、整泡剤SRX274C(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製シリコーン整泡剤)1質量部、触媒としてTOYOCAT−ET(東ソー株式会社製第三級アミン触媒)0.1質量部、TOYOCAT−L33(東ソー株式会社製第三級アミン触媒)0.4質量部、発泡剤として水2.0質量部を、NCOインデックスが95となるように25℃で混合攪拌し、この混合物を、直径5mm、長さ290mmの金属製シャフトを挿入した内径16mmのパイプ状金型に、フォームの密度が0.10g/cm3になるように注入し、60℃のオーブン中に20分間加熱することにより発泡硬化させ、脱型してポリウレタンフォームローラを作製した。その後、所定温度の水に所定時間浸漬させ、膨潤したポリウレタンフォーム層の剥離を試みた。
【0030】
【表1】

【0031】
1)三井化学ポリウレタン(株)製ポリエーテルポリオール、重量平均分子量3100、エチレンオキシドを20質量%末端に付加。(OH価=54mgKOH/g)
2)三井化学ポリウレタン(株)製ポリエーテルポリオール、重量平均分子量3800、エチレンオキシドを7質量%末端に付加。(OH価=45mgKOH/g)
3)三井化学ポリウレタン(株)製ポリエーテルポリオール、重量平均分子量6000、エチレンオキシドを15質量%末端に付加。(OH価=28mgKOH/g)
4)三井化学ポリウレタン(株)製ポリエーテルポリオール、重量平均分子量7000、エチレンオキシドを15質量%末端に付加。(OH価=24mgKOH/g)
5)三井化学ポリウレタン(株)製ポリエーテルポリオール、重量平均分子量3500、エチレンオキシドを70質量%末端に付加。(OH価=55mgKOH/g)
6)三井化学ポリウレタン(株)製ポリエーテルポリオール、重量平均分子量5000、エチレンオキシドを無付加。(OH価=34mgKOH/g)
7)三井化学ポリウレタン(株)製ポリイソシアネート、TDI/MDI=80/20。(NCO=45%)
8)三井化学ポリウレタン(株)製ポリイソシアネート、TDI/MDI=50/50。(NCO=40%)
9)総ポリオール中のエチレンオキシドの割合。2種以上の混合物については、比率により算出。
10)ポリウレタンフォーム層を膨潤させるための水の温度。
11)ポリウレタンフォーム層を浸漬させる時間。
12)ポリウレタンフォームローラを所定の水に所定時間浸漬させた後のポリウレタンフォーム層の膨潤度合いを示したもので、以下の式に従って計算した。
【0032】
【数1】

【0033】
なお、測定ポイントは、ポリウレタンフォームローラの軸方向3箇所測定し、その平均値を求めた。膨潤率は1%以上が好ましく、3%以上がさらに好ましい。○:膨潤率が3%以上、△:膨潤率が1%以上3%未満、×:膨潤率が1%未満。
13)ポリウレタンフォーム層の除去。○:芯金にフォームが残らない、×:芯金にフォームが残る。
14)ポリウレタンフォーム層の膨潤率、及び除去の総合評価。○:両方に優れるもの、×何れか一方に問題のあるもの。
【0034】
【表2】

【0035】
表1、2に見られるように、実施例1〜7では、所定のポリエーテルポリオールを使用して成形し、所定の温度の水を使用することにより、効率的なポリウレタンフォーム層の剥離が可能である。これに対し、比較例1〜4では、所定のポリエーテルポリオールを使用して成形していない、所定温度の水を使用していないため、ポリウレタンフォーム層の十分な膨潤が得られずポリウレタンフォーム層の剥離に適さない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ポリウレタンフォームローラの概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明のポリウレタンフォーム層を膨潤させる水、及び容器を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1.ポリウレタンフォームローラ
2.芯金
3.ポリウレタンフォーム層(表面層)
4.水容器
5.水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と該芯金の外周に配されたポリウレタンフォーム層とを有するポリウレタンフォームローラから該ポリウレタンフォーム層を剥離する剥離方法において、
少なくとも以下に示す成分(A)を発泡硬化させてなる該ポリウレタンフォーム層を、30℃以上100℃以下の水(H2O)に浸漬し、膨潤させ芯金から取り除く工程を有してなる、ポリウレタンフォーム層を剥離する剥離方法。
成分(A):エチレンオキシドを5質量%以上70質量%以下含有するポリエーテルポリオール

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−298924(P2009−298924A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155201(P2008−155201)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】