説明

ポリウレタン制振材料

【課題】耐水性及び耐湿熱性の問題が無く、且つ広い温度範囲で優れた制振性能を発揮するポリウレタン硬化物を提供すること。
【解決手段】(A)1,4結合率が50%以下であり分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマー及び(B)1,4結合率が60%以上であり分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマー、並びに(C)ポリイソシアネート化合物を含有する組成物、及び該組成物を硬化して得られる硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車・鉄道車両・航空機等の輸送機器、建造物などの天井や内壁、橋梁・道路などの防振・制振・遮音・吸音・防音材;家電・OA機器の制振・防音材;衝撃吸収材(特に建築分野の骨格構造形成材料の衝撃的な変位や振動を吸収する粘弾性ダンパーを構成する素材);免震材;CDプレーヤーなど振動に極めて弱い音響機器や精密機器の防振材などとして使用されるポリウレタン制振性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ウレタン系の制振性材料としては、エーテル系ポリオールやエステル系ポリオールを用いたもの(例えば、特許文献1参照)、分子末端に水酸基を含有するポリブタジエンもしくはポリイソプレン、ポリオキシプロピレングリコール及びイソシアネートを反応させて得たプレポリマーに、ヒマシ油等のポリオール化合物を添加し、触媒の存在下に硬化させて得られる、硬度と反発弾性率が低く、しかも耐水性に優れた硬化物(例えば、特許文献2参照)、ポリヒドロキシ飽和炭化水素系重合体及び水酸基含有化合物とイソシアネート化合物を反応させて得られる、−50〜120℃における最大損失正接が0.5以上の制振性材料(特許文献3参照)などが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−330451号公報
【特許文献2】特開昭57−080421号公報
【特許文献3】特開昭62−190215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のポリウレタン化合物では、耐水性及び耐湿熱性が低いという問題があった。特許文献2及び3に記載の発明では、かかる耐水性及び耐湿熱性の問題は無いが、幅広い温度範囲における制振性能という観点では満足のいくものではなく、さらなる改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記問題に着目して鋭意研究を重ねた結果、特定の1,4結合率の分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマーの組み合わせとポリイソシアネート化合物を含有する組成物を硬化して得られるポリウレタン硬化物(制振性材料)が、耐水性及び耐湿熱性の問題が無く、且つ広い温度範囲で優れた制振性能を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1](A)1,4結合率が50%以下であり分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマー及び(B)1,4結合率が60%以上であり分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマー、並びに(C)ポリイソシアネート化合物を含有する組成物、
[2]さらに、前記成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対してプロセスオイル0〜500質量部を含有する、前記[1]に記載の組成物、
[3]さらに、前記成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して瀝青物質0〜1000質量部を含有する、前記[1]又は[2]に記載の組成物、
[4]さらに充填剤を含有する、前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の組成物、
[5]成分(A)及び(B)における共役ジエン系ポリマーが、それぞれ、ブタジエン及び/又はイソプレンからなるポリマーあるいはその水素添加体である、前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の組成物、
[6]成分(A)と成分(B)の配合比が、(A):(B)=95:5〜5:95である、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の組成物、
[7]成分(C)が有するイソシアネート基(NCO)の数と、成分(A)及び(B)の水酸基(OH)の合計数の比(NCO/OH)が0.5〜2.5である、前記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の組成物、
[8]前記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の組成物を硬化して得られるポリウレタン硬化物、
[9]前記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の組成物を硬化して得られるポリウレタン制振性材料、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、構造上、耐水性・耐加水分解性・ゴム弾性に優れ、(1)tanδの極大値が1.0以上、且つ(2)低温(−40℃付近)から高温(100℃)の広い温度範囲に亘ってtanδが0.1以上であり、室温(約23℃)での制振性にも優れた、高い制振性能を保持する温度領域が広いポリウレタン硬化物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、(A)1,4結合率(1,4結合繰り返し単位含有率)が50%以下であり分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマー及び(B)1,4結合率が60%以上であり分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマー、並びに(C)ポリイソシアネート化合物を含有する組成物を硬化させることにより、ポリウレタン硬化物を得る。
【0009】
共役ジエン系ポリマーとは、分子末端に共役ジエン結合を有するモノマーの重合体であり、分子末端に共役ジエン結合を有するモノマーとしては、好ましくは炭素数4〜22のモノマー、より好ましくは炭素数4〜8のモノマーであり、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、エチレン、プロピレン、ブテン、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの共重合可能なモノマーを、本発明の硬化を損なわない範囲で前期モノマーと併せて使用してもよい。
【0010】
成分(A)である、1,4結合率が50%以下、好ましくは15〜50%である分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマーの製造方法としては、ジエンモノマーをアニオン重合させてリビングポリマーを製造し、さらにモノエポキシ化合物等を反応させる方法などが挙げられる。
成分(A)は市販されているものを使用してもよい。市販品としては、例えば「Krasol LBH−P2000」(成分;ポリブタジエンポリオール、数平均分子量2100、1,4結合率35%、Sartomer社製)、「Krasol LBH−P3000」(成分;ポリブタジエンポリオール、数平均分子量3000、1,4結合率35%、Sartomer社製)、「Krasol LBH−P5000」(成分;ポリブタジエンポリオール、数平均分子量4800、1,4結合率35%、Sartomer社製)、「Krasol HLBH−P2000」(成分;水添ポリブタジエンポリオール、数平均分子量2100、Sartomer社製)、「Krasol HLBH−P3000」(成分;水添ポリブタジエンポリオール、数平均分子量3000、Sartomer社製)などが挙げられる。
【0011】
成分(B)である、1,4結合率が60%以上、好ましくは70%以上である分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマーの製造方法としては、過酸化水素などの重合開始剤によりジエン系モノマーをラジカル重合する方法などが挙げられる。
成分(B)は市販されているものを使用してもよい。市販品としては、例えば「Poly bd R−45HT」(成分;ポリブタジエンポリオール、数平均分子量2800、1,4結合率80%、出光興産株式会社製)、「Poly bd R−15HT」(成分;ポリブタジエンポリオール、数平均分子量1200、1,4結合率80%、出光興産株式会社製)、「エポール」(登録商標、成分;水添ポリイソプレンポリオール、数平均分子量2500、1,4結合率80%、出光興産株式会社製)などが挙げられる。
【0012】
上記の分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマーの数平均分子量は、いずれも200〜20000であることが好ましく、500〜20000であることがより好ましく、500〜10000であることがさらに好ましく、1000〜5000であることが特に好ましい。このように、本発明ではジエン系ポリマーと記載しているが、実質上、オリゴマーでもよい。しかし、数平均分子量が500以上である方が、幅広い温度において、より高い制振性能を安定して得ることができる傾向にある。前記範囲内であれば適度な粘度となり、作業性が高く有利であり、また、本発明で得られる硬化物が硬くなり過ぎず、ゴム弾性を保持できる。
【0013】
上記の分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマーの末端水酸基数は、いずれも共役ジエン系ポリマー1分子当たり1.7〜4個であることが好ましく、1.8〜3個であることがより好ましく、1.9〜2.5個であることが特に好ましい。この範囲内であればベトツキも少なく、また、組成物がゲル化するなどの問題も生じず、さらに硬化後に適度な硬度の硬化物が得られる。なお、分子末端だけでなく、分子内部にも水酸基を有していてもよい。
【0014】
成分(A)と成分(B)の配合比は、好ましくは(A):(B)=95:5〜5:95、より好ましくは90:10〜40:60、特に好ましくは90:10〜60:40である。この範囲内であれば、tanδの極大値が1.0以上となり、且つ、−40℃付近〜100℃という広い温度範囲に亘ってtanδが0.15以上であり、室温付近(約15〜25℃)での制振性にも優れたポリウレタン硬化物(制振材料)が得られるため好ましい。
【0015】
本発明の組成物には、成分(A)及び(B)以外に、本発明の効果を損なわない範囲でポリオール化合物及び/又はポリアミン化合物を配合させてもよい。該ポリオール化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ひまし油、水素化ひまし油などが挙げられるが、特にこれらに制限されない。ポリアミン化合物としては、例えばヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンポリアミン等の脂肪族ポリアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ポリアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
ポリオール化合物及び/又はポリアミン化合物を配合させる場合、それらの配合量は、成分(A)及び(B)の水酸基数の合計に対して、ポリオール化合物及びポリアミン化合物の活性水素数の合計が0.1倍以下となるようにすることが好ましく、0.05倍以下となるようにすることがより好ましい。
【0016】
成分(C)ポリイソシアネート化合物は、成分(A)や(B)の水酸基に対して反応し得るイソシアネート基を1分子に2つ以上有する化合物であれば特に制限はない。かかるポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;
キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の脂肪族−芳香族ポリイソシアネート(イソシアネート基が、脂肪族炭化水素を介して芳香族環と結合したポリイソシアネート、すなわち分子中に芳香族環と直接結合したイソシアネート基を有しないポリイソシアネート);
【0017】
ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0018】
その他、前記ポリイソシアネート化合物の環化三量体(イソシアヌレート変性体)、ビューレット変性体や、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリアルカジエンポリオール、ポリアルカジエンポリオールの水素化物、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、ヒマシ油系ポリオール等のポリオール化合物と前記ポリイソシアネート化合物との付加反応物等を用いることができる。
【0019】
さらに、これらポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、フェノール類、オキシム類、イミド類、メルカプタン類、アルコール類、ε−カプロラクタム、エチレンイミン、α−ピロリドン、マロン酸ジエチル、亜硫酸水素ナトリウム、ホウ酸等のブロック剤でブロックした、いわゆるブロックイソシアネート化合物を用いることもできる。
また、このようなポリイソシアネート化合物は市販されており、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、「ミリオネートMR」(成分;多官能型ジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業株式会社製)、「ミリオネートMTL」(成分;カルボジイミド化ジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業株式会社製)、「ディスモジュールW」(成分;水添ジフェニルメタンジイソシアネート、住友バイエルウレタン株式会社製)などが挙げられる。
成分(C)ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。かかる成分(C)の配合量は、成分(C)が有するイソシアネート基(NCO)の数と、成分(A)及び(B)の水酸基(OH)の合計数との関係が、NCO/OH=0.5〜2.5となることが好ましく、0.5〜1.5となることがより好ましく、0.7〜1.2となることが特に好ましい。但し、後述するプレポリマー法により本発明の組成物を調製する場合、プレポリマーを製造する段階ではNCO/OH=1.7〜25であることが好ましく、該プレポリマーから本発明の組成物を調製する段階において、前記範囲を好ましいものとして参照することができる。
【0020】
また、本発明の組成物には、硬化を促進させるため、触媒を配合してもよい。かかる触媒としては、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N,N’N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、N,N,N’N”N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)エチルピペラジン、ジアザビシクロウンデセン等の第三級アミン;該第三級アミンのカルボン酸塩;該第三級アミンのスタナスオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マーカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫マーカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸塩等の有機金属化合物等が挙げられる。
触媒を配合させる場合、その配合量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、0.01〜1質量部であることがより好ましく、0.01〜0.5質量部であることが特に好ましい。この範囲であれば、局所的な異常反応によるゲル化が起こりにくいため好ましい。
【0021】
さらに、本発明の組成物には、発明の効果を損なわない範囲で、「他の成分」として、無機充填剤・有機充填剤などの充填剤、瀝青物質、プロセスオイル、その他の添加剤を配合させてもよい。
【0022】
無機充填剤としては、例えばマイカ、亜鉛、アルミニウム、銅、ニッケル、ガラス球、ガラスフレーク、ガラス繊維、カーボンブラック(チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック)、炭素繊維、グラファイト、アスベスト、カオリンクレー、ロウ石クレー、タルク、カスミ石、クリオライト、ケイ灰石、ケイソウ土、スレート粉、ホワイティング、長石粉、マイカ、セッコウ、石英粉、微粉珪酸、アタバルジャイト、セリサイト、火山灰、蛭石、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、二酸化モリブデン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、ボロンナイトライト、二硫化モリブデン等が挙げられる。
無機充填剤を配合させる場合、その配合量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対して、400質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。この範囲であれば、ポリウレタン硬化物のゴム弾性を保持しながら制振性能(Tanδ)を向上させることができる。
【0023】
有機充填剤としては、例えばゴム粉末、セルロース、リグニン、キチン質、皮革粉、ヤシ殻、木粉;木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維;ナイロン、ポリエステル、ビニロン、アセテート、アクリル等の合成繊維;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂粉末や顆粒等を挙げることができる。
有機充填剤を配合させる場合、その配合量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対して、300質量部以下であることが好ましく、30〜250質量部であることがより好ましく、50〜200質量部であることが特に好ましい。この範囲であれば、ポリウレタン硬化物のゴム弾性を保持しながら制振性能(Tanδ)を向上させることができる。
【0024】
瀝青物質としては、例えば天然アスファルト;ストレートアスファルト、セミブロンアスファルト、ブローンアスファルトなどの石油アスファルト;石油ピッチ;石炭タール;石炭ピッチ等が挙げられる。
瀝青物質を配合させる場合、その配合量は、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対して、1000質量部以下であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましく、50〜200質量部であることが特に好ましい。この範囲であれば、ポリウレタン硬化物のゴム弾性を保持しながら、広い温度範囲において、より安定した制振性能(Tanδ)を付与することができる。
【0025】
プロセスオイルとしては、例えば(i)パラフィン系原油を常圧蒸留することにより得られる重油留分を減圧蒸留し、さらに、水素化改質、脱ロウ処理等で精製することにより得られるパラフィン系プロセスオイル、(ii)ナフテン系原油を減圧蒸留後、溶剤抽出、水添仕上げ、あるいは、硫酸洗浄、白土処理することにより得られるナフテン系プロセスオイル、(iii)パラフィン系原油やナフテン系原油を減圧蒸留後、溶剤抽出により、エキストラクトとして得られるアロマ系プロセスオイル、(iv)ポリ塩化ビニル樹脂用に用いられる可塑剤が挙げられる。
可塑剤としては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジドデシルフタレート、ジイソクミルフタレート、ジノニルフタレート、炭素数6〜12のアルキルフフタレート等のフタル酸エステル類;トリオクチルトリメリテート、トリ正オクチル正デシルトリメリテート等のトリメリット酸類;ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジヘキシルアゼレート、ジイソオクチルアゼレート、トリエチルシトレート、アセチル・トリエチル・シトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリオクチルシトレート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、メチル・アセチルリシノレート、ブチル・アセチルリシノレート等の脂肪酸エステル類;トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等の正リン酸エステル類などが挙げられる。また、その他にも、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、エポキシブチルステアレート、エポキシオクチルステアレート、ジオクチルテレフタレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられる。
【0026】
プロセスオイルを配合させる場合、その配合量は、柔軟性、加工性、機械的強度及び硬度等の観点から、成分(A)及び(B)の合計100質量部に対して、500質量部以下であることが好ましく、50〜300質量部であることがより好ましく、50〜200質量部であることがより好ましい。
【0027】
その他の添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線老化防止剤、静電防止剤などの安定剤;顔料・染料などの着色剤;難燃剤;抗菌剤;ステアリン酸などの離型剤;ロジン誘導体などの粘着付与剤;「レオストマー(登録商標)B」(理研テクノス株式会社製)などの接着性エラストマー等を挙げることができる。
【0028】
本発明の組成物は、公知の方法であるワンショット法又はプレポリマー法により得ることができる。該組成物の調製にあたっては、混合装置又は混練装置等を用い、必要に応じて活性水素を有さない溶媒(例えばケトン類、エステル類、炭化水素化合物など。)の存在下、好ましくは0〜120℃、より好ましくは15〜100℃で、0.5秒〜8時間程度、好ましくは1秒〜5時間撹拌混合する。
以下に、ワンショット法及びプレポリマー法による組成物の調製方法ついて簡単に説明するが、特に以下の方法に制限されるわけではない。
【0029】
<ワンショット法>
成分(A)及び(B)並びに必要に応じてポリオール化合物及び/又はポリアミン化合物及び前記した「他の成分」を混合し、該混合物にポリイソシアネート化合物及び必要に応じて触媒を添加して本発明の組成物を得、所定温度及び所定時間混合することにより、本発明の制振性のポリウレタン硬化物を得ることができる。
<プレポリマー法>
まず、成分(A)、(B)、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物とを反応させてプレポリマーを得る。次いで、得られたプレポリマーと硬化剤を含む残りの成分全てを混合して本発明の組成物を得、所定温度及び所定時間混合することにより、本発明の制振性のポリウレタン硬化物を得ることができる。
【0030】
こうして得られるポリウレタン硬化物は、Tanδの極大値が1.0以上となり、成分の配合比を制御することにより、極大値を2.0程度、さらには3以上とすることもでき、また、室温でのTanδを0.12以上、さらには0.2以上とすることができ、加えて、−40〜100℃の範囲に亘ってTanδを0.1以上、さらには0.2以上とすることもできる。そのため、該ポリウレタン硬化物は制振性材料(ポリウレタン制振性材料と称する)として利用され、例えば自動車・鉄道車両・航空機等の輸送機器、建造物などの天井や内壁、橋梁・道路などの防振・制振・遮音・吸音・防音材;家電・OA機器の制振・防音材;衝撃吸収材(特に建築分野の骨格構造形成材料の衝撃的な変位や振動を吸収する粘弾性ダンパーを構成する素材);免震材;CDプレーヤーなど振動に極めて弱い音響機器や精密機器の防振材などとして使用される。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例にて行なう動的粘弾性測定は、以下の条件にて実施した。
[動的粘弾性測定]
以下の装置及び条件にて、JIS K7244−4:1999動的機械特性の試験方法、第4部:引張振動−非共振法に準拠して実施した。
装置:「DMS6100粘弾性測定装置」
(EXSTAR6000シリーズ、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)
試験片形状:長さ20mm、幅4mm、厚さ2mm
条件:周波数1Hz、昇温速度2℃/分
【0032】
<実施例1>
成分(A)として「Krasol LBH−P3000」(成分;ポリブタジエンポリオール、数平均分子量3000、1,4結合率35%、分子中の平均水酸基数2.0、Sartomer社製)75質量部及び成分(B)として「Poly bd R−45HT」(成分;ポリブタジエンンポリオール、数平均分子量2800、1,4結合率80%、分子中の平均水酸基数2.3、出光興産株式会社製)25質量部を、成分(C)として「ミリオネートMTL」(成分;カルボジイミド化ジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業株式会社製)9.8質量部(NCO/OH=1.05相当)と攪拌混合し、次いで、ジブチル錫ジラウレート(共同薬品株式会社製)0.05質量部を添加し、厚さ2mmの金型にて10MPa及び120℃にて1時間で硬化させた後、70℃15時間キュアーした。こうして得られた硬化物から試験片(20.0mm×4.2mm×2.0mm)を切り出し、動的粘弾性測定により、内部損失(Tanδ)を測定した。結果を表1及び図1に示す。
【0033】
<実施例2>
実施例1において、成分(A)〜(C)に、さらに「ダイアナプロセスオイルAC−12」(芳香族系プロセスオイル、出光興産株式会社製)100質量部を加えて攪拌混合したこと以外は実施例1と同様に実験及び測定を行なった。結果を表1及び図2に示す。
【0034】
<実施例3>
実施例1において、成分(A)〜(C)に、さらに「クライトマイカ200−D」(成分;マイカ、株式会社クラレトレーディング製)25質量部を加えて攪拌混合したこと以外は実施例1と同様に実験及び測定を行なった。結果を表1に示す。
【0035】
<実施例4>
実施例1において、成分(A)〜(C)に、さらに「A−80」(成分;アスファルト、出光興産株式会社製)100質量部を加えて攪拌混合したこと以外は実施例1と同様に実験及び測定を行なった。結果を表1及び図3に示す。
【0036】
<実施例5>
実施例1において、成分(A)を「Krasol HLBH−P3000」(成分;水添ポリブタジエンポリオール、数平均分子量3000、分子中の平均水酸基数2.0)75質量部に、成分(B)を「エポール」(登録商標、成分;水添ポリイソプレンポリオール、数平均分子量2500、1,4結合率80%、分子中の平均水酸基数2.3、出光興産株式会社製)25質量部に、そして成分(C)を「ディスモジュールW」(成分;水添ジフェニルメタンジイソシアネート、住友バイエルウレタン株式会社製)に変更し、さらに「DS−128」(成分;ポリアルファオレフィン、INEOS社製)
100質量部を加えて攪拌混合したこと以外は実施例1と同様に実験及び測定を行なった。結果を表1に示す。
【0037】
<実施例6>
実施例1において、成分(A)を50質量部及び成分(B)を50質量部に変更した以外は実施例1と同様に実験及び測定を行なった。結果を表1及び図4に示す。
【0038】
<実施例7>
実施例1において、成分(A)を25質量部及び成分(B)を75質量部に変更した以外は実施例1と同様に実験及び測定を行なった。結果を表1及び図5に示す。
【0039】
<実施例8>
実施例1において、成分(A)〜(C)に、さらに「ダイアナプロセスオイルNS−90」(ナフテン系プロセスオイル、出光興産株式会社製)100質量部を加えて攪拌混合したこと以外は実施例1と同様に実験及び測定を行なった。結果を表1及び図6に示す。
【0040】
<実施例9>
実施例1において、成分(A)〜(C)に、さらにジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)(大八化学工業株式会社製)100質量部を加えて攪拌混合したこと以外は実施例1と同様に実験及び測定を行なった。結果を表1及び図7に示す。
【0041】
<実施例10>
実施例2において、「ダイアナプロセスオイルAC−12」(芳香族系オイル、出光興産株式会社製)の添加量を50質量部としたこと以外は実施例2と同様に実験及び測定を行なった。結果を表1及び図8に示す。
【0042】
<実施例11>
実施例2において、「ダイアナプロセスオイルAC−12」(芳香族系オイル、出光興産株式会社製)の添加量を150質量部としたこと以外は実施例2と同様に実験及び測定を行なった。結果を表1及び図9に示す。
【0043】
<比較例1>
実施例1において、成分(A)を0質量部及び成分(B)を100質量部に変更した以外は実施例1と同様に実験及び測定を行なった。結果を表1及び図10に示す。
【0044】
<比較例2>
実施例1において、成分(A)を100質量部及び成分(B)を0質量部に変更した以外は実施例1と同様に実験を行なった。しかし、組成物が液状のままであり、硬化物を得ることができなかった。
【0045】
<比較例3>
実施例5において、成分(A)を0質量部及び成分(B)を100質量部に変更した以外は実施例5と同様に実験及び測定を行なった。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1及び図1〜9より、本発明のポリウレタン硬化物(制振性材料)は、Tanδの極大値が1.0以上であり、かつ、−40℃付近から100℃という幅広い温度領域においてTanδが0.1以上であり、安定して高い制振性能を有しているといえる。また、室温(約23℃)での制振性にも優れており、利用価値は高い。特に実施例2、5、8〜11で得られたポリウレタン硬化物は、非常に高い制振性能を有することが示された。一方、表1及び図10より、成分(A)及び成分(B)のうちのいずれか一方のみしか配合せずに得られたポリウレタン硬化物では、Tanδの極大値が1.0未満、かつ、−40℃から100℃の範囲では、Tanδが0.1未満となる領域が存在しており、本発明のポリウレタン硬化物のような幅広い温度領域において安定して高い制振性能を維持することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のポリウレタン硬化物(制振性材料)は、自動車・鉄道車両・航空機等の輸送機器、建造物などの天井や内壁、橋梁・道路などの防振・制振・遮音・吸音・防音材;家電・OA機器の制振・防音材;衝撃吸収材(特に建築分野の骨格構造形成材料の衝撃的な変位や振動を吸収する粘弾性ダンパーを構成する素材);免震材;CDプレーヤーなど振動に極めて弱い音響機器や精密機器の防振材などとして幅広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1における動的粘弾性測定結果である。
【図2】実施例2における動的粘弾性測定結果である。
【図3】実施例4における動的粘弾性測定結果である。
【図4】実施例6における動的粘弾性測定結果である。
【図5】実施例7における動的粘弾性測定結果である。
【図6】実施例8における動的粘弾性測定結果である。
【図7】実施例9における動的粘弾性測定結果である。
【図8】実施例10における動的粘弾性測定結果である。
【図9】実施例11における動的粘弾性測定結果である。
【図10】比較例1における動的粘弾性測定結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1,4結合率が50%以下であり分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマー及び(B)1,4結合率が60%以上であり分子末端に水酸基を有する共役ジエン系ポリマー、並びに(C)ポリイソシアネート化合物を含有する組成物。
【請求項2】
さらに、前記成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対してプロセスオイル0〜500質量部を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、前記成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して瀝青物質0〜1000質量部を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに充填剤を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
成分(A)及び(B)における共役ジエン系ポリマーが、それぞれ、ブタジエン及び/又はイソプレンからなるポリマーあるいはその水素添加体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
成分(A)と成分(B)の配合比が、(A):(B)=95:5〜5:95である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
成分(C)が有するイソシアネート基(NCO)の数と、成分(A)及び(B)の水酸基(OH)の合計数の比(NCO/OH)が0.5〜2.5である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物を硬化して得られるポリウレタン硬化物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物を硬化して得られるポリウレタン制振性材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−102566(P2009−102566A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277381(P2007−277381)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(301020167)出光サートマー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】