説明

ポリウレタン化合物、それを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及びその用途

【課題】光パターニングが可能でありながら、はんだ等の基板製造時、若しくは素子の発熱に耐えうる耐熱性、長期にわたる高い絶縁性の維持、メッキ処理等の化学的処理への耐性といったソルダーレジスト等の基本的な特性を損なうことなく、フレキシブル基板等の柔軟性や強靭性を高い次元で併せもつ材料が求められている。
【解決手段】一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ化合物、分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物を反応させ得られるエポキシカルボキシレート化合物、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物、特定のポリエステルジオール化合物とジイソシアネート化合物から得られるポリウレタン化合物が、上記の相反する性能を高い次元で兼ね備える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(i)に、アクリル酸等に代表される分子中に一個以上の重合可能なエチレン性不飽和基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)を反応させて得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(a)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)、特定のポリエステルジオール化合物(c)及び一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させて得られるポリウレタン化合物(A)、更に該ポリウレタン化合物(A)に多塩基酸無水物(e)を反応させて得られる酸変性型ポリウレタン化合物(B)に関する。
これらはいずれもカルボキシル基を有しているため、光パターニング、アルカリ水溶液による現像性を有しており、レジスト材料として好適な特性を有している。そして、高い耐熱性、硬化性、卓越した柔軟性、耐折性、長期にわたり絶縁性を保ち続ける絶縁信頼性等を高い次元でバランスよく有する硬化物を与えることが出来る材料である。
【0002】
更に、該ポリウレタン化合物(A)及び/又は該酸変性型ポリウレタン化合物(B)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、並びにその硬化物に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電子情報機器の小型化に伴い、回路基板として軽い・薄い・柔軟である等の特徴から、所謂フレキシブルプリント基板の使用が増大している。
フレキシブルプリント基板は文字通りにフレキシブルであるために、これに用いられる材料には、アルカリ現像による光パターニングの特性を有しながら、高い感度、密着性、耐傷性、高い機械的・熱的・電気的強度等の必要特性を持ちながら、フレキシブル基板に追従出来る高い柔軟性を有した強靭な皮膜形成能が要求される。
【0004】
一般的に優れた感度や硬化性、耐薬品性、耐熱性等の特性は、剛直な骨格を有する主鎖に、より多くの反応性基を導入し、高い架橋密度を付与することで達成される。通常のソルダーレジスト等の用途においては、このような樹脂が好適に用いられてきた。しかしながら、これではフレキシブル基板に求められるような柔軟性を付与することは出来ない。
【0005】
一方、柔軟性を付与するためには、柔軟な主鎖に反応性基を控えめに導入する、即ち、架橋密度を適度に低減することで達成されてきた。
このように、これらの特性はそれぞれ相反するものであり、フレキシブル基板等のソルダーレジスト材料にはこれらの特性を高い次元で融合する材料が求められるが、従来はエポキシアクリレート系材料が主に用いられてきた。しかしながら、この材料は耐薬品性、耐熱性等の特性には優れるものの、柔軟性は不十分であった。従って、フレキシブル基板に適用出来るような柔軟性を併せ持つ強靭な皮膜を得ることは困難であり、更なる皮膜形成材料が望まれていた。
【0006】
これらの問題を解決する試みとして、二官能の不飽和エポキシカルボキシレート化合物、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物、ジイソシアネート化合物を反応させ得られる反応性ウレタン化合物が特許文献1に記載されている。
【0007】
この反応性ウレタン化合物は、従来のエポキシアクリレート系材料と比較すれば良好な柔軟性と耐熱性を有するが、現在求められている更に高い柔軟性を発揮させることは出来ない。
【0008】
更に、一般的なウレタン化合物の柔軟性を向上させる手段であるその他のジオール化合物を単純に併用して反応性ウレタン化合物を構成する手段では、著しい耐熱性の低下が見られ、ソルダーレジスト等の用途に必要とされる耐熱性や硬化性が得られない。
【0009】
又、柔軟性の付与を目的として分子中に二個の水酸基を有するゴム化合物を添加する試みが行われている(特許文献2)。
これにより比較的良好な柔軟性を発揮させることが出来るが、該ゴム化合物が反応性ウレタン化合物との相溶性が悪く、充分な柔軟性を発揮させるための量のゴム化合物を用いると相分離状態となってしまう。その他の化合物を配合した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とする場合にも、相溶性の問題が生じてしまう。
【0010】
相溶性の問題を生じてしまうと、現像性への悪影響、具体的には現像しにくい、微細なパターニングを形成しにくい等を生じる。又、耐熱性についても満足のいく特性を発揮させることは難しくなる。
【0011】
このほか、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物、ポリエステル系若しくはポリカーボネート系ジオール、及び、ジイソシアネート化合物を反応させ得られる非反応性ウレタン化合物を用いる試みがある(特許文献3)。しかし、このウレタン化合物は活性エネルギー線に対する反応性を有していない。このため活性エネルギー線への反応性、即ち、光描画による微細なパターニング可能な樹脂組成物を得るためには、その他の反応性化合物を併用する必要があるが、活性エネルギー線との反応性と柔軟性、耐熱性等を高い次元で発揮させることは出来ていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−52925号公報
【特許文献2】特開2003−147043号公報
【特許文献3】特開2006−124681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明においては、光パターニングが可能でありながら、基板製造時のはんだ等の熱や基板に使用する素子の発熱に耐えうる耐熱性、長期にわたる高い絶縁性の維持という信頼性、メッキ処理等の化学的処理への耐薬品性といったソルダーレジスト等に求められる基本的な特性を損なうことなく、フレキシブル基板等に求められる柔軟性や強靭性を高い次元で併せもつ材料の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは前記の課題を解決するために、一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、分子中に一個以上のエチレン性不飽和基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物を反応させ得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物、ポリエステルジオール化合物、一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物を反応させて得られるポリウレタン化合物を見出した。更に、その酸変性型化合物、それらを含む樹脂組成物及びその硬化物を見出した。
【0015】
即ち、本発明は、一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(i)に、一分子中に一個以上のエチレン性不飽和基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)を反応させて得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(a)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)、ポリエステルジオール化合物(c)及び一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させ得られるポリウレタン化合物(A)に関する。
更に本発明は、ポリウレタン化合物(A)に多塩基酸無水物(e)を反応させて得られる酸変性型ポリウレタン化合物(B)に関する。
【0016】
更に本発明は、前記ポリウレタン化合物(A)及び/又は前記酸変性型ポリウレタン化合物(B)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
更に本発明は、前記ポリウレタン化合物(A)、前記酸変性型ポリウレタン化合物(B)以外の反応性化合物(C)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【0017】
更に本発明は、皮膜形成用材料である前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
更に本発明は、電気的な絶縁を目的とする皮膜形成用材料である前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
更に本発明は、永久レジストに用いるための前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
更に本発明は、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリウレタン化合物、その酸変性型化合物、それらを含む特定の樹脂組成物及びその硬化物は、光パターニングが可能でありながら、基板製造時のはんだ等の熱や基板に使用する素子の発熱に耐えうる耐熱性、長期にわたる高い絶縁性の維持という信頼性、メッキ処理等の化学的処理への耐薬品性といったソルダーレジスト、カラーレジスト等に求められる基本的な特性を損なうことなく、フレキシブル基板等に求められる柔軟性や強靭性を高い次元で併せもつ材料であり、これは、フレキシブル性を求められる皮膜形成用材料、たとえばフレキシブル基板用のソルダーレジスト等に特に好適に用いることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の反応性ポリウレタン化合物(A)は、一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(i)に、一分子中に一個以上のエチレン性不飽和基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)を反応させて得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(a)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)、ポリエステルジオール化合物(c)及び一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させ得られる。
即ち、本発明のポリウレタン化合物(A)は二つの反応工程をもって製造される。まず、一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(i)と一分子中に一個以上のエチレン性不飽和基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)とを反応させて不飽和エポキシカルボキシレート化合物(a)を得る工程である。本発明ではこの工程をカルボキシレート化工程とする。
次いで、こうして得られた不飽和エポキシカルボキシレート化合物(a)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)、ポリエステルジオール化合物(c)及び一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させる工程である。本発明ではこの工程をウレタン化工程とする。
【0020】
カルボキシレート化工程で得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(a)は、一分子中にエチレン性不飽和基二個以上とエポキシ化合物(i)のエポキシ基に由来する二個の水酸基を有するカルボキシレート化合物である。
【0021】
続くウレタン化工程では、不飽和エポキシカルボキシレート化合物(a)の二個の水酸基とポリエステルジオール化合物(c)の二個の水酸基と一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(d)とを反応させポリウレタン化合物(A)を得る。
【0022】
本発明のポリウレタン化合物(A)の製造に使用される一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(i)としては、一分子中に二個のエポキシ基を有していれば特に限定されない。単官能エポキシ化合物ではウレタン化工程により得られるポリウレタン化合物(A)の分子量を調整することが出来ず、又、三官能以上のエポキシ化合物では多分岐構造となるため好適な硬化物の物性を得ることが困難である。
【0023】
該エポキシ化合物(i)としては、例えば、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Sジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル等のビスフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールグリシジルエーテル等のビフェニル系グリシジルエーテル類等の芳香族系ジグリシジルエーテル化合物;ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のアルキルジオールジグリシジルエーテル類、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノール−Aジグリシジルエーテル等のシクロアルキルジオールジグリシジルエーテル類等の飽和炭化水素系ジグリシジルエーテル化合物;3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学(株)製セロキサイド2021)、1,2,8,9−ジエポキシリモネン(ダイセル化学(株)製セロキサイド3000)等の所謂二官能脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
【0024】
これらのうち、芳香族系ジグリシジルエーテル化合物が良好な耐熱性を有しているために好適である。
【0025】
又、これらの一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(i)としては、水酸基を持たないものが好ましい。これは、エポキシカルボキシレート化工程で得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(a)が三官能以上のポリオール化合物となりポリウレタン化合物(A)の分子量の制御等が難しくなることに因る。
【0026】
本発明のポリウレタン化合物(A)の製造に使用される一分子中に一個以上のエチレン性不飽和基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)は、反応性ポリウレタン化合物(A)にエチレン性不飽和基を導入するとともに、エポキシ化合物(i)をイソシアネート基と反応可能なジオール化合物へ変換させる目的をもつ。該化合物(ii)のエチレン性不飽和基数は一個〜四個が好ましい。
【0027】
該化合物(ii)としては、例えば、(メタ)アクリル酸類やクロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは、飽和又は不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類を除く不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物が挙げられる。
該(メタ)アクリル酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、β−フルフリル(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物、(メタ)アクリル酸二量体、飽和又は不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体との当モル反応物である半エステル類、飽和又は不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられる。
【0028】
これらのうち、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの感度の点から(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物又は桂皮酸が好ましい。
【0029】
又、一分子中に一個以上のエチレン性不飽和基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)としては、化合物中に水酸基を持たないものが好ましい。
【0030】
カルボキシレート化工程においては、前記エポキシ化合物(i)1当量に対して化合物(ii)が90〜120当量%であることが好ましい。この範囲であれば比較的安定な条件での製造が可能である。これよりも化合物(ii)の仕込み量が多い場合には、カルボキシル基を持つ化合物(ii)が残存してしまうために好ましくない。又、少なすぎる場合には、未反応のエポキシ化合物(i)が残留してしまうため、樹脂の安定性に問題が生じる。
【0031】
カルボキシレート化工程は無溶剤若しくは溶剤で希釈して反応させることが出来る。溶剤を使用する場合には、カルボキシレート化反応に対してイナートな溶剤であれば特に限定されない。又、次工程であるウレタン化工程や必要に応じて用いられる後記の酸付加工程においてイナートな溶剤を用いることが好ましい。
【0032】
溶剤を使用する場合、その使用量としては得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分含有率が99〜30重量%、より好ましくは99〜45重量%となるように用いればよい。反応に使用する化合物が高粘度である場合は粘度が抑えられ、好適に反応が進行する。
【0033】
該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素溶剤、それらの混合物である石油エーテル、ホワイトガソリン、ソルベントナフサ等が挙げられる。又、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤を使用してもよい。
【0034】
該エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のアルキルアセテート類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート等のモノ若しくはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、グルタル酸ジメチル等のグルタル酸ジアルキル、コハク酸ジメチル等のコハク酸ジアルキル、アジピン酸ジメチル等のアジピン酸ジアルキル等のポリカルボン酸ジアルキルエステル類等が挙げられる。
【0035】
該エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0036】
該ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0037】
このほかにも、反応にイナートであれば、後記の反応性化合物(C)等を溶剤として単独又は混合して使用してもよい。この場合、硬化型組成物としてそのまま使用することも出来る。
【0038】
カルボキシレート化工程においては、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましい。該触媒を使用する場合、その使用量は、反応物、即ち前記エポキシ化合物(i)、化合物(ii)及び、溶剤を使用する場合は溶剤を加えた総量に対して0.1〜10重量%程度である。その際の反応温度は60〜150℃、反応時間は好ましくは5〜60時間である。
該触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等の一般の塩基性触媒等が挙げられる。
【0039】
又、熱重合禁止剤を使用してもよく、該熱重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン等を使用するのが好ましい。
【0040】
カルボキシレート化工程は、適宜サンプリングしながらサンプルの酸価が5mg・KOH/g以下、好ましくは2mg・KOH/g以下となった時点を終点とする。
【0041】
次にウレタン化工程について詳述する。
本発明のポリウレタン化合物(A)の製造に使用される一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)は、該ポリウレタン化合物(A)にカルボキシル基を導入し、光パターニングに必要なアルカリ水溶液可溶性とする。該化合物(b)中のカルボキシル基数としては一個〜四個が好ましい。
【0042】
該化合物(b)としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール吉草酸等が好ましく、中でも原材料の入手を考慮してジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が特に好ましい。
【0043】
本発明のポリウレタン化合物(A)の製造にポリエステルジオール化合物(c)を用いることで、感度、耐熱性、耐薬品性等と柔軟性を高い次元で融合させることが出来る。
該ポリエステルジオール化合物(c)は、一分子中に二個の水酸基を有し、更に主骨格中にエステル結合を有することを特徴とする。
【0044】
該ポリエステルジオール化合物(c)としては、例えば、ジオール化合物とジカルボン酸類をエステル結合でつないだジオールジカルボン酸エステルジオール類、環状エステル類をジオール化合物で開環重合して得られるポリラクトンジオール類、アルキルカーボネートとジオール化合物との反応等により得られるカーボネート結合を有するポリカーボネートジオール類、更にこれらを複合的に組み合わせたポリエステルジオール類等が挙げられる。これらのジオール化合物は前記の不飽和エポキシカルボキシレート化合物(a)や化合物(b)以外の水酸基二個を有する化合物であれば特に限定されない。
【0045】
ジオール化合物とジカルボン酸化合物をエステル結合でつないだジオールジカルボン酸エステルジオール類としては、例えば、エチレングリコールアジピン酸エステルジオール、プロピレングリコールアジピン酸エステルジオール、ブチレングリコールアジピン酸エステルジオール、ネオペンチルグリコールアジピン酸エステルジオール、メチルぺンタンジオールアジピン酸エステルジオール、ヘキサンジオールアジピン酸エステルジオール、エチレングリコールセバシン酸エステルジオール、ヘキサンジオールドデカン二酸エステルジオール、エチレングリコールフタル酸エステルジオール、エチレングリコールアゼライン酸エステルジオール等が挙げられる。
【0046】
環状エステル類を開環重合して得られるポリラクトンジオール化合物としては、例えば、ポリブチロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0047】
ポリカーボネートジオール化合物としては、例えば、ポリプロピレンカーボネートジオール、ポリブチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリオクタメチレンカーボネートジオール、ポリノナンジオールカーボネートジオール、ポリシクロヘキサンカーボネートジオール、ポリシクロヘキサンジメタノールカーボネートジオール等が挙げられる。
【0048】
これらの内、ポリエステルジオール化合物(c)としては、特にポリカプロラクトンジオール類、ポリカーボネートジオール類が好適な硬化物物性を示すことから好ましい。特に、ポリカーボネートジオール類は強靭な硬化膜を与えるポリウレタン化合物(A)を誘導できるので更に好ましい。
【0049】
ポリエステルジオール化合物(c)の好適な分子量範囲としては250〜5000の範囲が好ましく、更に好ましくは650〜3000である。この範囲よりも分子量が小さい場合、柔軟性の付与効果が低く、この範囲よりも大きい場合、耐熱性の低下が大きくなる。
【0050】
本発明のポリウレタン化合物(A)の製造に使用される一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(d)は、不飽和エポキシカルボキシレート化合物(a)、化合物(b)、ポリエステルジオール化合物(c)の水酸基とのウレタン化工程に使用され、該ポリウレタン化合物(A)に好適な柔軟性を与える。
【0051】
該化合物(d)としては、例えば、脂肪族直鎖状ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類、芳香族系イソシアネート類等が挙げられる。
【0052】
脂肪族直鎖状ジイソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0053】
脂環式ジイソシアネート類としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
芳香族系ジイソシアネート類としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビスフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0055】
これらのうち、柔軟性を高める場合には脂肪族あるいは脂環式ジイソシアネートが好ましく、脂肪族直鎖状ジイソシアネート類が特に好ましい。
【0056】
ウレタン化工程は、不飽和エポキシカルボキシレート化合物(a)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)、ポリエステルジオール化合物(c)の混合物と、一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(d)とを混合して行う。
【0057】
ポリウレタン化合物(A)の製造では、(不飽和カルボキシレート化合物(a)のモル数+化合物(b)のモル数+ポリエステルジオール化合物(c)のモル数)÷(イソシアネート化合物(d)のモル数)で示される値、即ち、反応系中の水酸基とイソシアネート基の比が1.05〜2の範囲が好ましく、1.15〜1.6の範囲が特に好ましい。即ち、ポリウレタン化合物(A)の保存安定性の点から、ウレタン化工程では少なくともイソシアネート基よりも水酸基が多くなるように仕込み、イソシアネート基が最終的に残留しないようにする。
更に、この範囲よりも大きい場合、得られるポリウレタン化合物(A)の分子量が小さくなりすぎ強靭な硬化物を得ることが難しくなりやすく、小さすぎる場合、得られるポリウレタン化合物(A)の分子量が大きくなりすぎて現像性等に悪影響が出る場合がある。
【0058】
本発明のポリウレタン化合物(A)の製造において、カルボキシレート化合物(a)の重量、化合物(b)の重量、ポリエステルジオール化合物(c)の重量、化合物(d)の重量の好ましい重量比は全体重量を100部とした場合、カルボキシレート化合物(a)は5〜65重量部、化合物(b)は5〜25重量部、ポリエステルジオール化合物(c)は0.5〜60重量部、化合物(d)は20〜40重量部である。この範囲において、光パターニング、アルカリ水溶液による現像性を有しており、レジスト材料として好適な特性を有するポリウレタン化合物(A)が得られ、高い耐熱性、耐薬品性、卓越した柔軟性を特に高い次元でバランスよく有する硬化物を得ることが出来る。
【0059】
この好適な範囲は、組み合わされるポリエステルジオール化合物(c)の種類によりやや異なる。
例えば、柔軟性が比較的良好なポリカプロラクトンジオール類の場合は、カルボキシレート化合物(a)を多く、一方、ポリエステルジオール化合物(c)を少なくした方が好適な上記バランスが発揮されやすい。即ち、カルボキシレート化合物(a)が38〜60重量部、より好ましくは45〜55重量部、化合物(b)が5〜25重量部、より好ましくは10〜20重量部、ポリエステルジオール化合物(c)が0.5〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部、化合物(d)が20〜40重量部、より好ましくは25〜30重量部である。
【0060】
又、比較的剛直なポリカーボネートジオール類の場合は、カルボキシレート化合物(a)を少なく、一方、ポリエステルジオール化合物(c)を多くした方が好適な上記バランスが発揮されやすい。即ち、カルボキシレート化合物(a)が15〜60重量部、より好ましくは20〜45重量部、化合物(b)が5〜25重量部、より好ましくは10〜20重量部、ポリエステルジオール化合物(c)が3〜55重量部、より好ましくは10〜40重量部、化合物(d)が20〜40重量部、より好ましくは20〜30重量部である。
【0061】
ウレタン化工程は無溶剤若しくは溶剤で希釈して反応させることが出来る。溶剤を使用する場合には、ウレタン化反応に対してイナートな溶剤であれば特に限定されない。
【0062】
溶剤を使用する場合、その使用量は得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分含有率が99〜30重量%、よりこのましくは90〜45重量%となるように用いればよい。双方の工程でイナートであることを条件に、前記カルボキシレート化工程で使用した溶剤をそのまま用いることも可能である。
【0063】
該溶剤としては、例えば、前記カルボキシレート化工程に例示した溶剤と同様のものが挙げられる。又、反応にイナートであれば、後記の反応性化合物(C)等を溶剤として単独又は混合して使用してもよい。この場合、硬化型組成物としてそのまま使用することも出来る。
【0064】
ウレタン化工程は熱重合禁止剤等を使用してもよく、前記カルボキシレート化工程において例示した化合物と同様の化合物を使用することが出来る。
【0065】
ウレタン化工程は実質的に無触媒で反応させることも出来るが、反応を促進させるために触媒を使用することも出来る。触媒を使用する場合、その使用量は反応物の総量に対して0.01〜1重量%程度である。該触媒としては一般の塩基性触媒、例えば、エチルヘキサン酸スズ等のルイス塩基触媒が挙げられる。
【0066】
ウレタン化工程の反応温度は40〜150℃、反応時間は好ましくは5〜60時間である。
【0067】
ウレタン化工程の反応はイソシアネート基がほぼ残留していないことをもって反応終点とする。反応の終点決定は、赤外吸収スペクトル測定法によりイソシアネート基由来の2250cm−1近辺のピークの観測若しくはJIS K1556:1968等に示される滴定法により行う。
【0068】
こうして得られた本発明のカルボキシレート化合物(A)の好ましい分子量範囲は、GPCにおけるポリスチレン換算重量平均分子量が1000〜30000の範囲、より好ましくは3000〜20000の範囲である。この分子量よりも小さい場合には硬化物の強靭性が充分に発揮されなかったり、又、これよりも大きすぎる場合には粘度が高くなり塗工等が困難となるばかりではなく現像性も低下しやすい。
【0069】
又、本発明には、必要に応じて反応性ポリウレタン化合物(A)に多塩基酸無水物(e)を反応させて得られる酸変性型ポリウレタン化合物(B)も含まれる。これにより、アルカリ現像に必要な酸価を、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)だけではなく、求められる樹脂の特性に応じて適宜付加することが可能となる。
【0070】
本発明ではこの反応工程を酸付加工程とする。
次に、酸付加工程について詳細に説明する。酸付加工程は、前記ウレタン化反応後に残存した水酸基に多塩基酸無水物(e)を反応させ、エステル結合を介してカルボキシル基を導入する工程である。従って、ウレタン化工程終了後に残存した水酸基の当量以上に酸付加させることは出来ない。
【0071】
該多塩基酸無水物(e)としては、例えば、一分子中に環状酸無水物構造を有する化合物が挙げられ、アルカリ水溶液現像性、耐熱性、加水分解耐性等から無水コハク酸(SA)、無水フタル酸(PAH)、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、無水イタコン酸、3−メチル−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸又は無水マレイン酸等が好ましい。
【0072】
酸付加工程は、前記ポリウレタン化合物(A)に多塩基酸無水物(e)を加えることにより行う。該多塩基酸無水物(e)の使用量は、ポリウレタン化合物(A)の設定値、即ち、化合物(b)に由来する酸価、残留する水酸基量、ポリウレタン化合物(A)に必要とされる酸価に基づき適宜変更すればよい。
【0073】
本発明のポリウレタン化合物(A)及び/又は酸変性型ポリウレタン化合物(B)をアルカリ現像型のレジストとして用いる場合、最終的に得られるポリウレタン化合物の固形分酸価(JIS K5601−2−1:1999に準拠)を30〜120mg・KOH/g、より好ましくは40〜105mg・KOH/gとするのが好ましい。固形分酸価がこの範囲である場合、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物はアルカリ水溶液による良好な現像性を示す。即ち、活性エネルギー線非照射部の良好な溶解性と活性エネルギー線照射部の不溶解性のバランスを発揮させることが出来る。
【0074】
酸付加工程は反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、その使用量は反応物の総量に対して0.1〜10重量%程度である。その際の反応温度は60〜150℃、反応時間は好ましくは5〜60時間である。
該触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0075】
酸付加工程は無溶剤若しくは溶剤で希釈して反応させることが出来る。溶剤を使用する場合、該溶剤としては酸付加反応においてイナートな溶剤であれば特に限定はない。又、前工程であるウレタン化工程で溶剤を用いて製造した場合には、両反応にイナートであれば溶剤を除くことなく酸付加反応を行えばよい。
【0076】
該溶剤の使用量は、得られる樹脂の粘度や使途により適宜調整されるべきものであるが、好ましくは固形分含有率が90〜30重量%、より好ましくは80〜50重量%になるように用いればよい。
該溶剤としては、前記カルボキシレート化反応やウレタン化工程において例示した溶剤と同様のものを使用すればよい。
【0077】
又、反応にイナートであれば、後記の反応性化合物(C)等を溶剤として単独又は混合して使用してもよい。この場合、硬化型組成物としてそのまま使用することも出来る。
【0078】
酸付加工程は熱重合禁止剤等を使用してもよく、前記カルボキシレート化工程及び前記ウレタン化工程において例示した化合物と同様の化合物を使用することが出来る。
【0079】
酸付加工程の反応は適宜サンプリングしながら、反応物の酸価が設定した酸価のプラスマイナス10%の範囲になった点をもって終点とする。
【0080】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物はポリウレタン化合物(A)及び/又は酸変性型ポリウレタン化合物(B)を含む。更に成分(A)、成分(B)以外の反応性化合物(C)を含む樹脂組成物が好ましい。
【0081】
該反応性化合物(C)としては、ラジカル反応型のアクリレート類、カチオン反応型のエポキシ化合物類、その双方に感応するビニル化合物類等の化合物が挙げられる。
【0082】
ラジカル反応型のアクリレート類としては、単官能(メタ)アクリレート類、多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0083】
該単官能(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノメチルエーテル、フェニルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0084】
該多官能(メタ)アクリレート類としては、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アジピン酸エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールエチレンオキシドジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールエチレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパントリ(メタ)アクリレート若しくはそのエチレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート若しくはそのエチレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート若しくはそのエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート若しくはそのエチレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0085】
カチオン反応型のエポキシ化合物類としては、エポキシ化合物(i)を含めエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリジジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノール−Aジグリジジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ユニオン・カーバイド社製「サイラキュアUVR−6110」等)、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキシド(ユニオン・カーバイド社製「ELR−4206」等)、リモネンジオキシド(ダイセル化学工業社製「セロキサイド3000」等)、アリルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(ユニオン・カーバイド社製「サイラキュアUVR−6128」等)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン等が挙げられる。
【0086】
該ビニル化合物類としては、ビニルエーテル類、スチレン類、その他のビニル化合物等が挙げられる。
該ビニルエーテル類としては、例えば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
該スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。
その他のビニル化合物としては、例えば、トリアリルイソイシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0087】
更に、反応性化合物(C)には、活性エネルギー線に感応可能な官能基とウレタン結合を同一分子内に併せ持ちポリウレタン化合物(A)、酸変性型ポリウレタン化合物(B)を除くその他のウレタンアクリレート、同様に活性エネルギー線に感応可能な官能基とエステル結合を同一分子内に併せ持つポリエステルアクリレート、エポキシ化合物から誘導され活性エネルギー線に感応可能な官能基を同一分子内に併せ持つエポキシアクリレート、これらの結合が複合的に用いられているオリゴマー等を使用してもよい。
【0088】
これらの内、反応性化合物(C)としてはラジカル硬化型であるアクリレート類が好ましい。カチオン反応型の場合、カルボン酸とエポキシ基が反応してしまうため用時調製用の2液混合型にする必要が生じる。
【0089】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、用途に応じて適宜その他の成分を加えてもよい。
【0090】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、該組成物中にポリウレタン化合物(A)及び/又は酸付加型ポリウレタン化合物(B)を97〜5重量%、好ましくは87〜10重量%、成分(A)、成分(B)以外の反応性化合物(C)を3〜95重量%、好ましくは3〜90重量%含む。各種用途に適合させる目的で、必要に応じてその他の成分を75重量%程度を上限に含んでいてもよい。
その他の成分としては、光重合開始剤、その他の添加剤、顔料材料、又、塗工適性付与等を目的に粘度調整のため添加される揮発性溶剤等が挙げられる。
【0091】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含有していてもよい光重合開始剤としてはラジカル型光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤等が挙げられる。
ラジカル型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類等が挙げられる。
【0092】
カチオン系光重合開始剤としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のホスホニウム塩、その他のハロゲン化物、トリアジン系開始剤、ボーレート系開始剤、その他の光酸発生剤等が挙げられる。
【0093】
ルイス酸のジアゾニウム塩としては、例えば、p−メトキシフェニルジアゾニウムフルオロホスホネート、N,N−ジエチルアミノフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスホネート(三新化学工業社製サンエイドSI−60L/SI−80L/SI−100L等)等が挙げられる。
ルイス酸のヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
ルイス酸のスルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート(Union Carbide社製Cyracure UVI−6990等)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Union Carbide社製Cyracure UVI−6974等)等が挙げられる。
ルイス酸のホスホニウム塩としては、例えば、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0094】
その他のハロゲン化物としては、例えば、2,2,2−トリクロロ−[1−4’−(ジメチルエチル)フェニル]エタノン(AKZO社製Trigonal PI等)、2,2−ジクロロ−1−(4−フェノキシフェニル)エタノン(Sandoz社製Sandray 1000等)、α,α,α−トリブロモメチルフェニルスルホン(製鉄化学社製BMPS等)等が挙げられる。
トリアジン系開始剤としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4’−メトキシフェニル)トリアジン(Panchim社製Triazine A等)、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4’−メトキシスチリル)トリアジン(Panchim社製Triazine PMS等)、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニルトリアジン(Panchim社製Triazine PP等)、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4’−メトキシナフチル)トリアジン(Panchim社製Triazine B等)、2−[2’−(5’’−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製等)、2−(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
【0095】
ボーレート系開始剤としては、例えば、NK−3876、NK−3881等(いずれも日本感光色素製)が挙げられる。
その他の光酸発生剤等としては、例えば、9−フェニルアクリジン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール(黒金化成社製ビイミダゾール等)、2,2−アゾビス(2−アミノ−プロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬社製V50等)、2,2−アゾビス[2−(イミダソリン−2イル)プロパン]ジヒドロクロリド(和光純薬社製VA044等)、[イータ−5−2−4−(シクロペンタデシル)(1,2,3,4,5,6,イータ)−(メチルエチル)ベンゼン]鉄(II)ヘキサフルオロホスホネート(Ciba Geigy社製Irgacure 261等)、ビス(イータ−5−シクロペンタジエニル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピリジン−1−イル)フェニル]チタニウム(Ciba Geigy社製CGI−784等)等が挙げられる。
【0096】
更に、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の熱に感応する過酸化物系ラジカル型開始剤等を併せて用いてもよい。又、ラジカル系とカチオン系の双方の開始剤を併せて用いてもよく、各開始剤から1種類を単独で用いても2種類以上を併せて用いてもよい。
【0097】
これらのうち、本発明のウレタン化合物の特性を考慮すれば、ラジカル型光重合開始剤が特に好ましい。
【0098】
更に、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、適宜用途に応じて硬化剤を含有していてもよい。該硬化剤は、特に電気絶縁性を目的とする材料において、含有される酸性基との反応により強固な硬化膜を得るために使用される。
【0099】
該硬化剤としては反応性化合物(C)以外のエポキシ化合物が挙げられ、中でも一分子中に二個以上のエポキシ基を含むエポキシ化合物が好ましい。これは、単官能エポキシ化合物を用いるよりも、より強固な硬化物を得ることが出来るためである。又、これらエポキシ化合物のエポキシ当量は150〜450g/eq、更に好ましくは180〜350g/eqの範囲であることが好ましい。これよりエポキシ当量が小さい場合には得られる硬化物が脆弱となりやすく、又、これより大きい場合には架橋部位が減るために得られる硬化物は軟弱となりやすい。
【0100】
該エポキシ化合物は、硬化物の使用目的や要求される特性により任意に選ばれるものであり、公知一般のエポキシ化合物が任意に使用可能である。
【0101】
単官能エポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0102】
分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−Aノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、グリオキサール型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0103】
該フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−770(DIC(株)製)、D.E.N438(ダウ・ケミカル社製)、jER154(ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN−201、RE−306(いずれも日本化薬(株)製)等が挙げられる。
該クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−695(DIC(株)製)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S(いずれも日本化薬(株)製)、UVR−6650(ユニオンカーバイド社製)、ESCN−195(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0104】
該トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、EPPN−503、EPPN−502H、EPPN−501H(いずれも日本化薬(株)製)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社製)、jER E1032H60(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
該ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンEXA−7200(DIC(株)製)、TACTIX−556(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0105】
該ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、jER828、jER1001(いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、UVR−6410(ユニオンカーバイド社製)、D.E.R−331(ダウ・ケミカル社製)、YD−8125(東都化成(株)製)、NER−1202、NER−1302(いずれも日本化薬(株)製)等のビスフェノール−A型エポキシ樹脂、UVR−6490(ユニオンカーバイド社製)、YDF−8170(東都化成(株)製)、NER−7403、NER−7604(いずれも日本化薬(株)製)等のビスフェノール−F型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0106】
該ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、NC−3000、NC−3000−H、NC−3000−L(いずれも日本化薬(株)製)等のビフェノール型エポキシ樹脂、YX−4000(ジャパンエポキシレジン(株)製)のビキシレノール型エポキシ樹脂、YL−6121(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
該ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロンN−880(DIC(株)製)、jER E157S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
【0107】
該ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えば、NC−7000(日本化薬(株)製)、EXA−4750(DIC(株)製)等が挙げられる。
該グリオキサール型エポキシ樹脂としては、例えば、GTR−1800(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
該脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、EHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
該複素環式エポキシ樹脂としては、例えば、TEPIC(日産化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0108】
中でも、フレキシブル性の点において、ビフェノール型エポキシ樹脂が特に有効で、例えば、NC−3000、NC−3000−H、NC−3000−L等がもっとも好ましい。
【0109】
該エポキシ化合物を含有する場合、その好適な配合量としては、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分の5〜80重量%程度、より好ましくは10〜70重量%程度である。この量よりも配合量が少ない場合は得られる硬化物が軟弱となりやすく、又、多すぎる場合は下記エポキシ硬化剤とのバランスの問題から硬化性等に悪影響を生じる場合がある。
【0110】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含有していてもよいその他の添加剤としては、例えば、メラミン等の熱硬化触媒、アエロジル等のチキソトロピー付与剤、シリコーン系やフッ素系のレベリング剤や消泡剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤、安定剤、酸化防止剤、又、難燃性を付与するための難燃剤等が挙げられる。
特に、電気的な絶縁を目的とする皮膜形成用材料として用いる場合には、難燃剤と併用することが好ましい。好ましい難燃剤としては、公知一般のものが使用でき、臭素化エポキシ樹脂、ブロモジフェニルエーテル等のハロゲン系難燃剤、ホスファゼン樹脂、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル樹脂、ジヒドロ―9−オキサ―ホスファフェナントレン―10―オキシド誘導体等の有機リン系難燃剤、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物系難燃剤、赤リン、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤が好適に用いられる。
【0111】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含有していてもよい顔料材料としては、着色を目的とする着色顔料と着色を目的としない体質顔料が挙げられる。
該着色顔料としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系等の有機顔料、カーボンブラック等、酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
該体質顔料としては、例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー等が挙げられる。
【0112】
更に、活性エネルギー線に反応性を示さない樹脂類(所謂イナートポリマー)を含有していてもよい。該樹脂類としては、例えば、前記硬化剤としてのエポキシ樹脂を除くその他のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ケトンホルムアルデヒド樹脂、クレゾール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン樹脂、グアナミン樹脂、天然及び合成ゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、これらの変性物を本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含有していてもよい。これらは該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に40重量%までの範囲において用いることが好ましい。
【0113】
特に、前記ポリウレタン化合物(A)及び/又は酸付加型ポリウレタン化合物(B)をソルダーレジスト用途に用いる場合にはエポキシ樹脂の併用が好適である。活性エネルギー線によって硬化させた後も残留するカルボキシル基を更にカルボキシレート化することで、強固な架橋構造を形成させ、その硬化物を耐水性や加水分解性に優れたものとする。
【0114】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含有していてもよい揮発性溶剤は、使用目的に応じて粘度を調整する目的で、該樹脂組成物中に50重量%、更に好ましくは35重量%までの範囲において添加すればよい。
【0115】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は活性エネルギー線によって容易に硬化する。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明の好適な用途を考慮すれば、これらのうち、紫外線、レーザー光線、可視光線又は電子線が好ましい。
【0116】
本発明には、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を基材表面の被覆を目的とする皮膜形成用材料として使用することも含まれる。即ち、例えば、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、オフセットインキ等のインキ材料、ハードコート、トップコート、オーバープリントニス、クリヤコート等の塗工材料、ラミネート用や光ディスク用等の接着剤や粘着剤等の接着材料、ソルダーレジスト、エッチングレジスト、マイクロマシン用レジスト等のレジスト材料等がこれに該当する。
更には、皮膜形成用材料を一時的に剥離性基材に塗工しフイルム化した後、本来目的とする基材に貼合し皮膜を形成させる、所謂ドライフイルムも皮膜形成用材料に該当する。
【0117】
本発明には電気的な絶縁を目的とする皮膜形成用材料としての前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の使用も含まれる。即ち、回路基板用ソルダーレジスト材料、絶縁モールディング材料、層間絶縁材料、半導体保護膜材料、配線被覆材料等の電気的な絶縁性が求められる材料がこれに該当する。
【0118】
本発明には、基材上に該組成物の皮膜層を形成させ、その後、紫外線等の活性エネルギー線を部分的に照射し、照射部、未照射部の物性的な差異を利用して描画しようとする活性エネルギー線感応型のレジスト材料としての前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の使用も含まれる。即ち、照射部又は未照射部を何らかの方法、例えば、溶剤等やアルカリ溶液等で溶解させる等して除去し、描画を行うことを目的として用いる。
【0119】
本発明には永久レジストに用いる前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物も含まれる。永久レジストとは上記レジスト材料のうち、描画を行った後に剥離することを前提に使用されるものではなく、その基材となるものの実使用時まで剥離せずにその目的と機能を維持し続けるものである。
【0120】
本発明のレジスト用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、パターニングが必要な種々の材料に適応出来、中でも特に、ソルダーレジスト材料やビルドアップ工法用の層間絶縁材等に有用であり、更に光導波路としてプリント配線板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光基材等にも利用可能である。
【0121】
又、柔軟でありながらも強靭な硬化物を得ることが出来る特性を生かして、柔軟性を必要とされるフレキシブル基板用絶縁材料用途に使用すると本発明の効果を最大限発揮させることが出来、好適な用途である。
【0122】
皮膜形成の方法としては特に制限はないが、グラビア等の凹版印刷方式、フレキソ等の凸版印刷方式、シルクスクリーン等の孔版印刷方式、オフセット等の平版印刷方式、ロールコーター、ナイフコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スピンコーター等の各種塗工方式が任意に採用出来る。
【0123】
本発明には前記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し硬化させて得られるその硬化物も含まれる。
【実施例】
【0124】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。又、実施例中、特に断りがない限り部は重量部を示す。
【0125】
軟化点、エポキシ当量は以下の条件で測定した。
1)エポキシ当量(WPE):JIS K 7236:2001に準じた方法で測定した。
2)全塩素:JIS K 7243−3:2005に準じた方法で測定した。
3)酸価:JIS K 0070:1992に準じた方法で測定した。
4)GPCの測定条件は以下の通りである。
機種:TOSOH HLC−8220GPC
カラム:TSKGEL Super HZM−N
溶離液:THF(テトラヒドロフラン);0.35ml/分、温度40℃
検出器:示差屈折計
分子量標準:ポリスチレン
【0126】
合成例1:カルボキシレート化合物(a)の調製(カルボキシレート化工程)
ビスフェノール−A型のエポキシ樹脂(i)として、RE−310S(WPE=184g/eq、日本化薬(株)製)を1840g、一分子中に一個以上のエチレン性不飽和基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)としてアクリル酸(略称AA、Mw=72)を720g、触媒としてトリフェニルホスフィン30g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート(略称PGMAc)を固形分含有率が80%となるように加え、100℃で24時間反応させカルボキシレート化合物溶液を得た。
【0127】
固形分換算の酸価が1.8mg・KOH/gとなった時点で反応を終了した。この酸価測定は、反応溶液で測定し固形分としての酸価に換算した。又、エポキシ価を測定したところ13kg/eqであり、充分にエポキシ基が反応していることも併せて確認した。
【0128】
実施例1:ポリウレタン化合物(A)の調製(ウレタン化工程)
反応槽に合成例1で得られたカルボキシレート化合物(a)溶液を表1中記載量(記載値は固形分換算値)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)として、ジメチロールプロピオン酸を表1中記載量、ポリエステルジオール化合物(c)として、表1中記載のポリエステルジオールを表1中記載量、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(略称PGMAc)をポリウレタン化合物(A)として固形分含有率が50%になるように100g加えて撹拌溶解した。更に、触媒としてオクタン酸スズを0.5g、熱重合禁止剤としてハイドロキノンを0.1g添加し、100℃に加熱した。その後に表1記載量の一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(d)としてヘキサメチレンジイソシアネートを滴下漏斗を用いて加え反応させた。滴下終了後、10時間反応を継続して、赤外線吸収スペクトルにてイソシアネート基に由来する吸収ピークがないことを確認しポリウレタン化合物(A)を得た。その結果を併せて表1に示す。
なお、実施例1−23以降はイソシアネート(d)をヘキサメチレンジイソシアネートから変更しポリウレタン化合物(A)を調製した。実施例1−23ではトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、実施例1−24ではイソホロンジイソシアネート、実施例1−25ではトリレンジイソシアネートを用いた。
【0129】
比較例1:比較用ポリウレタン化合物の調製
合成例1にて調製したカルボキシレート化合物(a)を用いて、実施例1と同様に表1中の種々のウレタン化合物を調製した。その結果を表1に示す。
【0130】
[表1]実施例1、比較例1(反応性ポリウレタン化合物(A)の調製)

【0131】
表中略語:
(a+b+c)/d:反応系中に含まれる水酸基の総モル数とイソシアネートの総モル数の比
AV:固形分酸価(mg・KOH/g):測定は溶液として測定を行い固形分での値に換算した。
Mw:ゲル透過クロマトグラフを用いて測定した重量平均分子量(ポリスチレン標準換算値)
PCL500:ポリカプロラクトンジオール(プラクセル205、ダイセル化学(株)製)平均分子量500
PCL1000:ポリカプロラクトンジオール(プラクセル210、ダイセル化学(株)製)平均分子量1000
PCL2000:ポリカプロラクトンジオール(プラクセル220、ダイセル化学(株)製)平均分子量2000
PCL4000:ポリカプロラクトンジオール(プラクセル240、ダイセル化学(株)製)平均分子量4000
【0132】
PBA1000:ポリブタンジオールアジピン酸エステルジオール(ポリライトOD−X−240、DIC(株)製)平均分子量1000
PCB1000:ポリヘキサンジオールカーボネートジオール(プラクセルCD CD210、ダイセル化学(株)製)平均分子量1000
PCC1000:ポリシクロヘキサンジオールカーボネートジオール(エタナコールUC−100、宇部興産(株)製)平均分子量1000
PCB2000:ポリヘキサンジオールカーボネートジオール(プラクセルCD CD220、ダイセル化学(株)製)平均分子量2000
PBD1000:ポリブタジエンジオール(ニッソーPB G−1000、日本曹達(株)製)平均分子量1000
PBH1000:水添ポリブタジエンジオール(ニッソーPB GI−1000、日本曹達(株)製)平均分子量1000
PEG1000:ポリエチレングリコール(PEG#1000、日油(株)製)平均分子量1000
PBG1000:ポリブチレングリコール(PTMG1000、三菱化学(株)製)平均分子量1000
【0133】
実施例2:酸変性型ポリウレタン化合物(B)の調製(酸付加工程)
反応槽に、実施例1にて得られたポリウレタン化合物(A)のPGMAc溶液を表2中記載量、更に、酸無水物(d)として表2中記載の酸無水物を表2中記載量(固形分酸価として90mg・KOH/gとなる計算値)加えた。更に溶剤として最終的な固形分含有率が50%となるように、即ち、酸無水物と同重量のPGMAcを加えた。触媒としてトリエチルアミンを0.2g加えて撹拌し溶解させた。
【0134】
溶解後、撹拌しながら100℃に加熱し50時間反応させ、酸変性型反応性ポリウレタン化合物(B)を得た。反応終了後、酸価の測定を実施し反応の完了を確認した。その結果を表2に示す。
【0135】
比較例2:比較用酸付加型ウレタン化合物の調製
比較例1にて調製したその他反応性ウレタン化合物を用いて、実施例2と同様にウレタン化工程に付し、ウレタン化合物を調製した。その結果を表2に示す。
【0136】
[表2]実施例2、比較例2(酸変性型反応性ポリウレタン化合物(B)の調製)

【0137】
実施例3:ポリウレタン化合物(A)、酸変性型ポリウレタンアクリレート(B)の特性評価(フレキシブル基板用ソルダーレジスト組成物としての適性評価)
実施例1で得られたポリウレタン化合物(A)又は実施例2で得られた酸変性型ポリウレタン化合物(B)を54.4g、反応性化合物(C)としてHX−220(商品名:日本化薬(株)製ジアクリレート単量体)3.5g、光重合開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャリチィーケミカルズ製)を4.7g及びカヤキュアーDETX−S(日本化薬(株)製)を0.5g、硬化成分としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:EPPN−201、日本化薬(株)製)を14.8g、熱硬化触媒としてメラミンを1.0g及び濃度調整溶媒としてジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートを5g加え、均一に分散させレジスト樹脂組成物を得た。
【0138】
得られた組成物を、シルクスクリーン法を用いて各種試験パターンを成型した銅ラミネートポリイミドフイルム(銅回路厚さ12ミクロン、ポリイミドフイルム厚25ミクロン)上に乾燥時の膜厚が凡そ20ミクロンになるよう調整し塗工した。塗工後、温度70℃の熱風乾燥炉を通過させ溶剤を揮発させた。
【0139】
次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスク又は感度を見積もるためのコダック製ステップタブレットNo.2を通して500mJ/cmの紫外線を照射した。その後、1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。更に、基板を水洗乾燥した後、150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させフレキシブル基板を得た。
このフレキシブル基板をもって各種評価を実施した。その結果を表3に示す。
【0140】
比較例3:比較用樹脂組成物のレジスト適性評価
比較例1又は比較例2で得られたポリウレタン化合物又は酸変性型ポリウレタン化合物を、実施例3のポリウレタン化合物(A)又は酸変性型ポリウレタン化合物(B)の替わりに用いて同様に試験を行った。評価方法、評価基準も同様に行った。
その結果を表3に示す。
【0141】
評価項目のそれぞれの項目について詳述する。
【0142】
感度評価(表中略称:感度)
感度は、ステップタブレットを透過した露光部に、何段目の濃度部分までが60秒現像時に残存したかで判定した。段数(値)が大きいほうがタブレットの濃部であるので高感度と判定される(単位:段)。
【0143】
現像性評価(表中略称:現像性)
現像性は、パターンマスクを透過した露光部を現像する際に、パターン形状部が完全に現像されるまでの時間、所謂ブレイクタイムをもって現像性の評価とした(単位:秒)。好適なブレイクタイムは20〜50秒程度である。
【0144】
硬化性評価(表中略称:硬化性)
硬化性評価は、150℃加熱終了後の硬化膜の鉛筆硬度をもって示した。評価方法は、JIS K5600−5−4:1999に準拠した。
【0145】
耐折性評価(表中略称:耐折性)
JIS C−5016 8.7:1994に準拠し試験を実施した。レジストの硬化膜を形成したパターンフイルムを耐折性試験機によって繰り返しの折り曲げを行った。評価は回路が断線するまでの折り曲げ回数をもっておこなった。
評価は各試料につき6枚ずつ用意しその平均値で表した。
折り曲げ試験荷重:4.9N
折り曲げ曲率:0.38R、0.254mm
折り曲げ速さ:175回/分
評価基準:断線までの繰り返し回数が多い方が優れた耐折性を有していると判断する。
【0146】
はんだ耐熱性評価(表中略称:耐熱性)
JIS C−5016 10.3:1994に準拠し試験を実施した。レジストの硬化膜を形成したパターンフイルムを用い、加熱した半田浴に三回繰り返し浸漬した。浸漬後、フレキシブル基板を碁盤目剥離試験を行い剥離具合を評価した。
はんだ浴温度:260℃
一回の浸漬時間:60秒
評価基準:全碁盤目数(100)を分母にし、残った升目の数を分子に示した。例を下記に示す。
100/100 剥離なし
50/100 半分剥離した
0/100 すべて剥離した
【0147】
絶縁信頼性評価(表中略称:信頼性)
ライン/スペース比が100ミクロン/100ミクロンのくし型パターンフイルムに、100Vの電圧を印加し、120℃、相対湿度85%の恒温槽に入れて抵抗値が10メガオームを下回るまでの時間を計測した。
評価基準:
時間が長い方が優れた絶縁信頼性を有していると判断する。
【0148】
[表3] 実施例3、比較例3:フレキシブル基板用レジスト適性評価

【0149】
上記の結果をまとめると、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含有されるポリエステルジオールを用いたポりウレタン化合物又はその酸変性型ポリウレタン化合物によって、感度、現像性、硬化性、耐折性、耐熱性、絶縁信頼性といった、それぞれ相反する特性を高い次元でバランスよく有する該樹脂組成物を得ることが出来た。
この特性を鑑み、本発明の(酸変性型)ポリウレタン化合物及びそれを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、フレキシブル基板用ソルダーレジストとして特に好適に使用することが出来ることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明のポリウレタン化合物、それを含む組成物及びその硬化物は、それぞれ相反する特性である感度、現像性、硬化性、耐折性、耐熱性、絶縁信頼性について高い次元でバランスよく有する材料であり、フレキシブル基板用レジスト材料、フレキシブルディスプレー用のカラーレジスト、スペーサーレジスト等のレジスト材料として好適に使用出来るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一分子中に二個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(i)に、一分子中に一個以上のエチレン性不飽和基と一個のカルボキシル基を併せ持つ化合物(ii)を反応させて得られる不飽和エポキシカルボキシレート化合物(a)、一分子中に二個の水酸基と一個以上のカルボキシル基を併せ持つ化合物(b)、ポリエステルジオール化合物(c)及び一分子中に二個のイソシアネート基を有する化合物(d)を反応させて得られるポリウレタン化合物(A)。
【請求項2】
ポリウレタン化合物(A)に多塩基酸無水物(e)を反応させて得られる酸変性型ポリウレタン化合物(B)。
【請求項3】
請求項1記載のポリウレタン化合物(A)及び/又は請求項2記載の酸変性型ポリウレタン化合物(B)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
更にポリウレタン化合物(A)、酸変性型ポリウレタン化合物(B)以外の反応性化合物(C)を含む請求項3記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
皮膜形成用材料である請求項3又は4に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
電気的な絶縁を目的とする皮膜形成用材料である請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
永久レジストに用いるための請求項3〜6のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物。

【公開番号】特開2011−140624(P2011−140624A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170233(P2010−170233)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】