説明

ポリウレタン樹脂

【課題】 鉛含有触媒を使用しなくても製造でき、成形時間が短く、耐水性、耐候性の良好なポリウレタン樹脂を得る。
【解決手段】 特定組成の高分子活性水素化合物(A1)、中分子活性水素化合物(A2)、および低分子活性水素化合物(A3)からなる活性水素成分(A)と脂肪族ポリイソシアネート(B)とが、3級アミン(C1)とジアルキル錫の有機酸塩(C2)からなり、鉛含量が5ppm以下であるウレタン化触媒(C)、ピペリジン系酸化防止剤(D1)とフェノール系酸化防止剤(D2)からなる酸化防止剤(D)、粒径0.1〜100ミクロンのカーボン粒子、および/または、該カーボン粒子のポリエーテル分散物からなるカーボンブラック(E)、並びに、必要により発泡剤(F)、および/または他の添加剤(G)の存在下、反応硬化されてなるポリウレタン樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタン樹脂に関する。さらに詳しくは、自動車用外装部品、特に一体成形窓用シールド材料に適したポリウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窓用シールド材料としては、例えば、特定の分子量のポリオール類、特定の架橋剤(特定の分子量のポリオールとグリセリンの混合物)を、鉛または錫等の有機酸塩の存在下、脂肪族系ポリイソシアネートと反応させる方法(特許文献1参照)等が知られている。
【特許文献1】特開平08−165323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、環境問題から環境負荷の大きな鉛を使用しない要望や、コストダウンの観点から成形時間を短縮して生産性向上する要望が高まってきた。しかしながら、上記公報記載の方法では、鉛系触媒を使用したり、鉛系触媒非使用の場合には成形時間が長くなったり、さらには耐水性、耐候性が不足する等の問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らはこれら問題点を解決するため鋭意検討した結果、特定の、活性水素化合物、ポリイソシアネートを用いることにより、鉛含有触媒を使用せずとも製造でき、成形時間が短く、耐水性、耐候性の良好なポリウレタン樹脂が得られることを見いだし、本発明に到達した。
【0005】
すなわち、本発明は、下記2発明である。
(I) 下記高分子活性水素化合物(A1)、中分子活性水素化合物(A2)、および低分子活性水素化合物(A3)からなる活性水素成分(A)と脂肪族ポリイソシアネート(B)とが、3級アミン(C1)とジアルキル錫の有機酸塩(C2)からなり、鉛含量が5ppm以下であるウレタン化触媒(C)、ピペリジン系酸化防止剤(D1)とフェノール系酸化防止剤(D2)からなる酸化防止剤(D)、粒径0.1〜100ミクロンのカーボン粒子、および/または、該カーボン粒子のポリエーテル分散物からなるカーボンブラック(E)、並びに、必要により発泡剤(F)、および/または他の添加剤(G)の存在下、反応硬化されてなるポリウレタン樹脂。
高分子活性水素化合物(A1):2〜4価、水酸基当量800〜5000、末端1級水酸基含有率70%以上のポリエーテルポリオール、および/または、2〜4価、アミノ基当量800〜5000の末端アミノ化ポリエーテル。
中分子活性水素化合物(A2):2〜4価、水酸基当量60〜300、末端1級水酸基含有率80%以上のポリエーテルポリオール、および/または、2〜4価、アミノ基当量60〜300の末端アミノ化ポリエーテル。
低分子活性水素化合物(A3):エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール;これらの多価アルコールまたはグリセリンのエチレンオキシド1モル付加物、プロピレンオキシド1モル付加物、および2分子間脱水物;トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールのグリシドール1モル付加物;並びにアルカノール基の炭素数が2〜3のモノ、ジ、およびトリアルカノールアミンから選ばれる1種以上の化合物。
(II) 上記(I)記載の、高分子活性水素化合物(A1)、中分子活性水素化合物(A2)、および低分子活性水素化合物(A3)からなり、(A1):(A2):(A3)の質量比が、(40〜96):(2〜35):(2〜25)であることを特徴とするポリウレタン樹脂製造用活性水素成分。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリエステル樹脂は、本発明の活性水素成分を用いて鉛含有触媒を使用しなくても製造でき、成形時間が短く、耐水性、耐候性が良好である。したがって、自動車の一体成形窓用シールド材料に極めて有用なポリエステル樹脂が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、高分子活性水素化合物(A1)は、2〜4価、水酸基当量800〜5000、末端1級水酸基含有率70%以上のポリエーテルポリオール、および/または、2〜4価、アミノ基当量800〜5000の末端アミノ化ポリエーテルである。
ポリエーテルポリオールとしては、2〜4個の活性水素を含有する化合物(多価アルコール、多価フェノール、アミン類、ポリカルボン酸、リン酸等)にアルキレンオキサイドが付加され、末端1級水酸基含有率が70%以上となった構造の化合物が挙げられる。末端1級水酸基含有率はNMR法(特開2000−344881号公報に記載の方法等)で測定することができる。
また、末端アミノ化ポリエーテルとしては、2〜4個の活性水素を含有する化合物(多価アルコール、多価フェノール、アミン類、ポリカルボン酸、リン酸等)にアルキレンオキサイドが付加された構造の化合物の末端水酸基を、特開平08−020643に記載のような方法等でアミノ基に置換した化合物などが挙げられる。
【0008】
中分子活性水素化合物(A2)は、2〜4価、水酸基当量60〜300、末端1級水酸基含有率80%以上のポリエーテルポリオール、および/または、2〜4価、アミノ基当量60〜300の末端アミノ化ポリエーテルである。
高分子活性水素化合物(A1)と同様に、ポリエーテルポリオールとしては、2〜4個の活性水素を含有する化合物(多価アルコール、多価フェノール、アミン類、ポリカルボン酸、リン酸等)にアルキレンオキサイドが付加され、末端1級水酸基含有率が80%以上となった構造の化合物が挙げられる。
また、末端アミノ化ポリエーテルとしては、2〜4個の活性水素を含有する化合物(多価アルコール、多価フェノール、アミン類、ポリカルボン酸、リン酸等)にアルキレンオキサイドが付加された構造の化合物の末端水酸基を、前記方法等でアミノ基に置換した化合物などが挙げられる。
【0009】
上記多価アルコールとしては、炭素数2〜20の2価アルコール(脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール;および脂環式ジオール、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのシクロアルキレングリコール)、炭素数3〜20の3価アルコール(脂肪族トリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオールなどのアルカントリオール);炭素数5〜20の4価アルコール(脂肪族ポリオール、例えば、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの、アルカンポリオールおよびそのもしくはアルカントリオールの分子内もしくは分子間脱水物)等が挙げられる。
【0010】
多価フェノールとしては、ピロガロール、ハイドロキノンおよびフロログルシン等の単環多価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、およびビスフェノールスルホン等のビスフェノール類;フェノールとホルムアルデヒドの縮合物(ノボラック);たとえば米国特許第3265641号明細書に記載のポリフェノール等が挙げられる。
【0011】
アミン類としては、炭素数1〜20の脂肪族アミン(例えば、モノメチルアミン、モノエチルアミン、n−ブチルアミン、オクチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミン等)、炭素数6〜20の芳香族アミン(例えば、アニリン、トルイジン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリンおよびジフェニルエーテルジアミン等)、炭素数4〜20の脂環式アミン(例えば、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミンおよびジシクロヘキシルメタンジアミン等)、および炭素数4〜20の複素環式ポリアミン(例えば、ピペラジンおよびアミノエチルピペラジン等)等が挙げられる。
【0012】
ポリカルボン酸としては、炭素数4〜18の脂肪族ポリカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸など)、炭素数8〜18の芳香族ポリカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)、およびこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
これらの活性水素含有化合物は2種以上を併用してもよい。これらの中で好ましくは多価アルコールである。
【0013】
上記活性水素含有化合物に付加させるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜8のものが好ましく、例えば、エチレンオキサイド(以下EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、1,2−、1,4−および2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドならびにこれらの2種以上の併用(ブロック及び/又はランダム付加)が挙げられる。好ましくは、POおよび/またはEOである。
1級水酸基含有率を70%以上あるいは80%以上に高める方法としては、例えば、ポリエーテルポリオールの末端にEOを付加し、その付加モル数を高める方法、特開2000−344881号公報に記載のホウ素またはアルミ含有触媒の存在下にPOを付加する方法が挙げられる。
【0014】
高分子活性水素化合物(A1)の水酸基当量(56100/水酸基価、水酸基1個あたりの分子量に相当)またはアミノ基当量(56100/1,2級アミン価、1,2級アミノ基1個あたりの分子量に相当)は、通常800〜5000、好ましくは900〜4000、さらに好ましくは1000〜3000である。(A1)の価数は、通常2〜4、好ましくは2.5〜4、さらに好ましくは2.8〜3.8である。(A1)がポリエーテルポリオールである場合、末端1級水酸基含有率は、通常70%以上、好ましくは74%以上、さらに好ましくは78%以上である。
水酸基当量、および/または、アミノ基当量が、800未満であると得られるポリウレタンが硬くなりすぎ、5000を超えると引張強さや伸びが小さくなる。価数が2未満であると耐候性が悪くなり、4を超えると伸びが小さくなる。ポリエーテルポリオールである場合、末端1級水酸基含有率が70%未満であると、硬化時間が長くなってしまう。
【0015】
中分子活性水素化合物(A2)の水酸基当量またはアミノ基当量は、通常60〜300、好ましくは62〜200、さらに好ましくは65〜150である。(A2)の価数は、通常2〜4、好ましくは2.5〜4、さらに好ましくは2.8〜3.8である。(A2)がポリエーテルポリオールである場合、末端1級水酸基含有率は、通常80%以上、好ましくは81%以上、さらに好ましくは82%以上である。
水酸基当量、および/または、アミノ基当量が、300を超えると硬度が低くなったり、引張強さが小さくなったり、耐水性が悪くなる。価数が2未満であると硬化時間が長くなったり、耐候性、耐水性が悪くなり、4を超えると伸びが小さくなる。ポリエーテルポリオールである場合、末端1級水酸基含有率が80%未満であると、硬化時間が長くなってしまう。
【0016】
低分子活性水素化合物(A3)はエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール;これらの多価アルコールまたはグリセリンのエチレンオキシド1モル付加物、プロピレンオキシド1モル付加物、および2分子間脱水物;トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールのグリシドール1モル付加物;並びにアルカノール基の炭素数が2〜3のモノ、ジ、およびトリアルカノールアミンから選ばれる1種以上の化合物である。これらのうち好ましいものはエチレングリコール、グリセリンのエチレンオキシド1モル付加物、グリセリンのエチレンオキシド1モル付加物およびエタノールアミン類である。
(A3)以外の低分子活性水素化合物を使用した場合、ウレタン化反応時の硬化性、ポリウレタン樹脂の耐侯性、耐水性が悪くなってしまう。
【0017】
高分子活性水素化合物(A1):中分子活性水素化合物(A2):低分子活性水素化合物(A3)の質量比を(40〜96):(2〜35):(2〜25)とすると、硬化時間が短く、且つ、耐候性、耐水性がより良好になり、好ましい。さらに好ましくは(48〜91):(5〜32):(4〜20)、特に好ましくは(53〜87):(8〜30):(5〜17)である。
活性水素成分(A)は、(A1)〜(A3)のみからなるのが好ましいが、ポリウレタン化時の成形性やポリウレタン樹脂の物性に悪影響しない程度に、(A1)、(A2)、(A3)以外の活性水素化合物を含んでいてもよい。他の活性水素化合物としては、(A1)と(A2)以外のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
(A)100質量部中の、(A1)、(A2)、(A3)以外の活性水素化合物の量は、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。
【0018】
本発明に用いる脂肪族ポリイソシアネート(B)としては、ポリウレタンに通常使用できるものが用いられる。例えば、炭素数2〜18の脂肪族イソシアネート[ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等];炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート[イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート等];
前記脂肪族イソシアネートの変性物[イソシアヌレート変性物、ビューレット変性物およびウレタン変性物等];およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。これらのうち好ましいものは、イソホロンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性物であり、さらに好ましくはこれらの併用(イソホロンジイソシアネート/イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性物=80/20〜20/80、質量比)である。
また耐侯性に悪影響を及ぼさない程度〔好ましくは(B)に対し15質量%以下、特に10質量%以下〕に、芳香族ポリイソシアネート[2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗製MDI)、並びに2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)等]を併用してもよい。
【0019】
本発明に用いる触媒(C)は、3級アミン(C1)とジアルキル錫の有機酸塩(C2)からなり、且つ鉛含量が5ppm以下(実質的に使用しない)である。
3級アミン(C1)としては、例えばトリエチレンジアミン、N−エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、N、N、N’、N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン−7、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル(カルボン酸塩)等、ならびにこれらの2種以上の併用が挙げられる。好ましくは、トリエチレンジアミンおよび/または1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン−7である。
ジアルキル錫の有機酸塩(C2)としては、ジラウリル酸ジブチル第二スズ、ジオクチル酸ジブチル第二スズ等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
これら触媒の使用量は、(A)100質量部当たり、好ましくは、3級アミン(C1)が0.1〜5質量部、ジアルキル錫の有機酸塩(C2)が0.01〜3質量部、さらに好ましくは、3級アミン(C1)が0.3〜3.5質量部、ジアルキル錫の有機酸塩(C2)が0.05〜2質量部である。これら触媒の使用比率(質量比)は、(C1)/(C2)が、好ましくは20/80〜99.9/0.1、さらに好ましくは40/60〜99/1、特に好ましくは60/40〜90/10である。
また(C)として、(C1)、(C2)以外に、鉛系以外の、チタン系、およびビスマス系金属触媒等の触媒を、(C)中に、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下併用することもできる。
【0020】
本発明に用いる酸化防止剤(D)としては、ピペリジン系酸化防止剤(D1)およびフェノール系酸化防止剤(D2)を併用する。
ピペリジン系酸化防止剤(D1)としては、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(テトラメチルピペリジル)セバケート等、具体例として旭電化工業(株)製ADK STAB LA−77、ADK STAB LA−57、ADK ST
AB LA−67、ADK STAB LA−68、ADK STAB LA−94、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製Tinuvin 765、Tinuvin 144
、Tinuvin 622等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤(D2)としては、トリエチレングリコールビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−フェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等、具体例として旭電化工業(株)製ADK STAB AO−30、ADK STAB AO−40、ADK STAB AO−60、ADK STAB AO−20、住友化学工業(株)製Sumilizer BBM−S、Sumilizer GA−80、Sumilizer BHT、Sumilizer BP−76、Sumilizer BP−101等が挙げられる。
これら酸化防止剤(D)の使用量は(A)100質量部当たり、好ましくは、ピペリジン系酸化防止剤(D1)が0.1〜2質量部、フェノール系酸化防止剤(D2)が0.1〜2質量部、さらに好ましくは、ピペリジン系酸化防止剤(D1)が0.3〜1.5質量部、フェノール系酸化防止剤(D2)が0.3〜1.5質量部、特に好ましくはピペリジン系酸化防止剤(D1)が0.5〜1.2質量部、フェノール系酸化防止剤(D2)が0.5〜1.2質量部である。これら酸化防止剤の使用比率(質量比)は、(D1)/(D2)が、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは80/20〜20/80、特に好ましくは70/30〜30/70である。
【0021】
本発明に用いるカーボンブラック(E)としては、メジアン径0.1ミクロン〜100ミクロンのカーボン粒子、および/または、該カーボン粒子のポリエーテル(ポリプロピレングリコール等)に分散物からなるカーボンブラック(例、富士色素(株)製、フジVLブ
ラック等)が挙げられる。
これらカーボンブラック(E)の使用量は、(A)100質量部当たり、好ましくは0.1〜15質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部、特に好ましくは1.0〜8質量部である。
【0022】
必要により用いられる発泡剤(F)としては、水、炭酸ガス、HFC−365mfc、HFC−245fa、シクロペンタン、イソペンタン、n−ペンタン、シクロブタン、n−ブタン等が挙げられる。
これら発泡剤(F)の使用量は、(A)100質量部当たり、好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以下である。
【0023】
必要により用いられる他の添加剤(G)としては、無機塩(炭酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維など)、ウィスカー(チタン酸カリウムウィスカーなど)のような充填材;難燃剤〔リン酸エステル類、ハロゲン化リン酸エステル類(例えばクロロアルキルフォスフェート)など〕;金属キレート化剤(重金属不活性化剤)[ヒドラジド系、アミド系等];過酸化物分解剤[リン系、硫黄系];熱安定剤(塩酸補足剤)[金属石鹸(カルシウム系、亜鉛系)];整泡剤[ジメチルポリシロキサン系整泡剤(東レダウコーニングシリコーン株式会社社製「SH−200オイル」等)]が挙げられる。
これらの他の添加剤の使用量は、(A)100質量部に対して、それぞれが好ましくは10質量部以下である。また、(G)の合計使用量は、(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下である。
【0024】
イソシアネートのNCO基に由来する樹脂中のN原子含量を2.8〜4.6質量%とすると、耐候性、耐水性が良好となり好ましい。さらに好ましくは3.0〜4.4、特に好ましくは3.1〜4.3質量%である。
イソシアネートのNCO基に由来する樹脂中のN原子含量は、原料使用比率から求められる計算値である。
【0025】
A硬度を80〜100、D硬度を20〜65とすると、自動車外装材料として適当な硬さであり、且つ、耐候性、耐水性が良好となり好ましい。さらに好ましくはA硬度85〜99、D硬度25〜60、特に好ましくはA硬度87〜98、D硬度28〜58である。
【0026】
厚み3mmで成形された樹脂を10g切り出し、40℃の温水に240時間浸漬した場合の、樹脂からの溶出量を0.005質量%以下とすると、耐水試験後の試験片の表面性の変化が小さく、長期に渡って屋外で使用する自動車外装材料として好ましい。
【0027】
120℃、200時間耐熱試験後の引張強さの保持率を、好ましくは80%以上、さらに好ましくは82%とすると、耐熱試験後の物性変化が小さく、長期に渡って屋外で使用する自動車外装材料として好ましい。
【0028】
ポリウレタン製造に際してのイソシアネート指数[(NCO基/活性水素原子含有基)の当量比×100]は、好ましくは70〜150、さらに好ましくは80〜130、特に好ましくは90〜120、最も好ましくは95〜110である。
【0029】
本発明におけるポリウレタン樹脂の製造法の一例を示せば、下記の通りである。まず、(A)、(C)、(D)、(E)、および必要により(F)および/または(G)を所定量混合する。次いで、ポリウレタン低圧もしくは高圧注入発泡機または撹拌機を使用して、この混合物(活性水素成分)と脂肪族ポリイソシアネート(B)とをそれぞれ液温が15〜60℃で急速混合し、型(密閉系型枠、金属製または樹脂製、15〜125℃)中に注入し、ウレタン化反応を行わせ、所定時間(0.2分〜5分)硬化後、型から取り出し、ポリウレタンを得ることができる。あらかじめガラスまたは鉄板を設置した密閉系型枠内で反応硬化させると一体成形窓用ポリウレタンを得ることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は質量基準である。
【0031】
実施例1〜9および比較例1〜9
表1〜2に示した配合処方に従って、ポリウレタン樹脂を成形した。
高圧発泡機(PEC社製mini−RIM機)を用いて表1〜2に示すポリオール成分とイソシアネート成分を混合し、200×200×3mmの密閉モールドおよびガラス一体成形の密閉テストモールドに注入成形した。このとき各成分の液温は40℃、型温は95℃であった。ポリウレタン樹脂の硬化性と得られたポリウレタン樹脂の物性を表1〜2に示す。
【0032】
<使用原料の記号の説明>
・高分子活性水素化合物(A1)
(A1−1):グリセリンのPO−EOブロック付加物(水酸基当量2000、数平均分子量6000、1級OH化率88%)
(A1−2):ペンタエリスリトールのPO−EOブロック付加物(水酸基当量1750、数平均分子量7000、1級OH化率80%)
(A1−3):グリセリンのPO−EOブロック付加物の末端アミノ化物(アミノ基当量2000、数平均分子量6000)
・高分子活性水素化合物のうち(A1)以外のもの(a1)
(a1−1):グリセリンのPO付加物(水酸基当量1000、数平均分子量3000、1級OH化率2%)
・中分子活性水素化合物(A2)
(A2−1):グリセリンのEO付加物(水酸基当量67、数平均分子量200、1級OH化率88%)
(A2−2):トリメチロールプロパンのEO付加物(水酸基当量100、数平均分子量300、1級OH化率100%)
(A2−3):ペンタエリスリトールのEO付加物(水酸基当量75、数平均分子量300、1級OH化率100%)
(A2−4):グリセリンのPO付加物の末端アミノ化物(アミノ基当量133、数平均分子量400)
・中分子活性水素化合物のうち(A2)以外のもの(a2)
(a2−1):グリセリンのPO付加物(水酸基当量83、数平均分子量250、1級OH化率10%)
(a2−2):ソルビトールのEO付加物(水酸基当量100、数平均分子量600、1級OH化率90%)
(a2−3):ペンタエリスリトールのPO付加物(水酸基当量83、数平均分子量330、1級OH化率30%)
・低分子活性水素化合物(A3)
(A3−1):エチレングリコール
(A3−2):グリセリンの1モルEO付加物(水酸基当量45、数平均分子量136、1級OH化率78%)
(A3−3):トリエタノールアミン
・低分子活性水素化合物のうち(A3)以外のもの(a3)
(a3−1):グリセリン
【0033】
・脂肪族ポリイソシアネート(B)
(B−1):「VESTANAT IPDI」イソホロンジイソシアネート〔ダイセルヒュルス(株)製〕
(B−2):「VESTANAT T−1890」イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性物〔ダイセルヒュルス(株)製〕
【0034】
・3級アミン(C1)
(C1−1):「DBU」1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン−7〔サンアプロ(株)製〕
(C1−2):「DABCO」トリエチレンジアミン〔三共エアプロダクツ(株)製〕
(C1−3):トリエチルアミン
・ジアルキル錫の有機酸塩(C2)
(C2−1):「ネオスタンU−100」ジブチル錫ジラウレート〔日東化成(株)製〕
・触媒のうち(C1)(C2)以外のもの(c)
(c−1):「ニッカオクチックス鉛」オクチル酸鉛〔日本化学産業(株)製〕
【0035】
・ピペリジン系酸化防止剤(D1)
(D1−1):「チヌビン144」2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔日本チバガイギー(株)製〕
(D1−2):「ADK STAB LA−77」ビス(テトラメチルピペリジル)セバケート〔旭電化工業(株)製〕
・フェノール系酸化防止剤(D2)
(D2−1):「イルガノックス245」トリエチレングリコールビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−フェニル)プロピオネート〔チバ・スペシャリティ・ケミカル(株)製〕
・カーボンブラック(E)
(E−1):「フジVLブラック」黒トナー〔富士色素(株)製〕
・他の添加剤(G)
(G−1):「SH−200オイル」ジメチルポリシロキサン〔東レダウコーニングシリコーン(株)製〕
【0036】
試験例
(1):ガラス一体成形の密閉テストモールドにて、変形、表層剥離、破れ等の不良なく脱型できる注入からの最短時間を測定した。単位は分。
(2):イソシアネートのNCO基に由来する樹脂中のN原子含量。単位は質量%。
(3):ポリウレタン樹脂の密度を示す。単位はkg/m3。
(4):ポリウレタン樹脂のA硬度を示す。JIS K 7125(1986)に準拠。
(5):ポリウレタン樹脂のD硬度を示す。JIS K 7125(1986)に準拠。
(6):ポリウレタン樹脂の引張強さを示す。単位はMPa。JIS K 6301(1995)に準拠。
(7):ポリウレタン樹脂の伸びを示す。単位は%。JIS K 6301(1995)に準拠。
(8):耐熱試験後のポリウレタン樹脂の引張強さの初期値に対する保持率を示す。単位は%。耐熱試験条件、120℃×200時間。
(9):耐熱試験後のポリウレタン樹脂の伸びの初期値に対する保持率を示す。単位は%。耐熱試験条件、120℃×200時間。
(10):耐候性試験前後の△E(色差)を示す。JIS D−0205(1970)に準拠。色差計ND−540DE(日本電色工業(株)製)。耐候性試験条件、ブラックパネル温度83℃、噴水時間60分中12分、暴露時間1000時間。
(11):耐候性試験後の光沢の初期値に対する保持率を示す。単位は%。JIS D−0205(1970)に準拠。光沢計UGV−5K(スガ試験機)。耐候性試験条件、ブラックパネル温度83℃、噴水時間60分中12分、暴露時間1000時間。
(12):耐水試験後のサンプルからの溶出率(サンプル質量に対する溶出物量の比率)を示す。単位は%。耐水試験条件、厚み3mmで成形されたポリウレタン樹脂10g、40℃の温水に240時間浸漬後、ロータリーエバポレーターで水を乾燥させ、溶出量を測定した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表1と表2から明らかなように、本発明のポリウレタン樹脂は、比較的短時間での成形が可能で優れた成形性を有し、かつ耐候性、耐水性の優れた成形品を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のポリウレタンは、環境負荷の大きな鉛系触媒を実質的に使用しなくても製造でき、耐水性、耐候性に優れ、かつ短時間脱型が可能であるため、自動車用外装部品、特に一体成形窓用シールド材料等に幅広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記高分子活性水素化合物(A1)、中分子活性水素化合物(A2)、および低分子活性水素化合物(A3)からなる活性水素成分(A)と脂肪族ポリイソシアネート(B)とが、3級アミン(C1)とジアルキル錫の有機酸塩(C2)からなり、鉛含量が5ppm以下であるウレタン化触媒(C)、ピペリジン系酸化防止剤(D1)とフェノール系酸化防止剤(D2)からなる酸化防止剤(D)、粒径0.1〜100ミクロンのカーボン粒子、および/または、該カーボン粒子のポリエーテル分散物からなるカーボンブラック(E)、並びに、必要により発泡剤(F)、および/または他の添加剤(G)の存在下、反応硬化されてなるポリウレタン樹脂。
高分子活性水素化合物(A1):2〜4価、水酸基当量800〜5000、末端1級水酸基含有率70%以上のポリエーテルポリオール、および/または、2〜4価、アミノ基当量800〜5000の末端アミノ化ポリエーテル。
中分子活性水素化合物(A2):2〜4価、水酸基当量60〜300、末端1級水酸基含有率80%以上のポリエーテルポリオール、および/または、2〜4価、アミノ基当量60〜300の末端アミノ化ポリエーテル。
低分子活性水素化合物(A3):エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール;これらの多価アルコールまたはグリセリンのエチレンオキシド1モル付加物、プロピレンオキシド1モル付加物、および2分子間脱水物;トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールのグリシドール1モル付加物;並びにアルカノール基の炭素数が2〜3のモノ、ジ、およびトリアルカノールアミンから選ばれる1種以上の化合物。
【請求項2】
(A1):(A2):(A3)の質量比が、(40〜96):(2〜35):(2〜25)である請求項1記載のポリウレタン樹脂。
【請求項3】
(B)のNCO基に由来するN原子含量が2.8〜4.6質量%である請求項1または2記載のポリウレタン樹脂。
【請求項4】
A硬度が80〜100であり、D硬度が20〜65である請求項1〜3のいずれか記載のポリウレタン樹脂。
【請求項5】
厚み3mmで硬化された樹脂10gを40℃の温水中に240時間浸漬した際の、樹脂からの溶出量が0.005質量%以下である請求項1〜4のいずれか記載のポリウレタン樹脂。
【請求項6】
120℃、200時間保存後の引張強さの保持率が80%以上である請求項1〜5のいずれか記載のポリウレタン樹脂。
【請求項7】
ガラスまたは鉄板を設置した密閉系型枠内で反応硬化されてなり、自動車の一体成形窓用である請求項1〜6のいずれか記載のポリウレタン樹脂。
【請求項8】
下記高分子活性水素化合物(A1)、中分子活性水素化合物(A2)、および低分子活性水素化合物(A3)からなり、(A1):(A2):(A3)の質量比が、(40〜96):(2〜35):(2〜25)であることを特徴とするポリウレタン樹脂製造用活性水素成分。
高分子活性水素化合物(A1):2〜4価、水酸基当量800〜5000、末端1級水酸基含有率70%以上のポリエーテルポリオール、および/または、2〜4価、アミノ基当量800〜5000の末端アミノ化ポリエーテル。
中分子活性水素化合物(A2):2〜4価、水酸基当量60〜300、末端1級水酸基含有率80%以上のポリエーテルポリオール、および/または、2〜4価、アミノ基当量60〜300の末端アミノ化ポリエーテル。
低分子活性水素化合物(A3):エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール;これらの多価アルコールまたはグリセリンのエチレンオキシド1モル付加物、プロピレンオキシド1モル付加物、および2分子間脱水物;トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールのグリシドール1モル付加物;並びにアルカノール基の炭素数が2〜3のモノ、ジ、およびトリアルカノールアミンから選ばれる1種以上の化合物。
【請求項9】
さらに、ピペリジン系酸化防止剤(D1)とフェノール系酸化防止剤(D2)からなる酸化防止剤(D)、並びに、粒径0.1〜100ミクロンのカーボン粒子、および/または、該カーボン粒子のポリエーテル分散物からなるカーボンブラック(E)から選ばれる1種以上を含有する請求項8記載のポリウレタン樹脂製造用活性水素成分。

【公開番号】特開2006−70118(P2006−70118A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253658(P2004−253658)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】