説明

ポリエステルダイレクトブロー成型品

【課題】低い加工温度で成型することができ、製造コストを抑えることが可能であるのに加えて、成型性及び耐熱性にも優れるポリエステルダイレクトブロー成型品を提供する。
【解決手段】テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールを50モル%以上とするジオール成分とからなるポリエステルであって、融点が100〜150℃、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するポリエステル樹脂から成型されてなることを特徴とするポリエステルダイレクトブロー成型品。b/a≧0.05(mW/mg・℃)・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低融点にも関わらず結晶性に優れたポリエステル樹脂から成型されてなり、成型性、耐熱性に優れたポリエステルダイレクトブロー成型品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す)は、その機械的強度、化学的安定性、透明性、リサイクル性に優れており、また、軽量であり、安価であることからダイレクトブロー成型品として広く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、通常のPETは融点が255℃と高温であるため、ダイレクトブロー成型品として加工する際にも約300℃という高い加工温度が必要とされる。そのため、製造コストが高くなるという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献2に記載されているように、ダイレクトブロー成型に融点を低下させたイソフタル酸共重合PETを用いることが試みられた。しかしながら、イソフタル酸の共重合量が増加するにしたがい、共重合PETの融点を低下させることはできるが、非晶性となり、耐衝撃性等の機械的強度特性が低下するという問題があった。
【0005】
また、PETによるダイレクトブロー成型品は透明性が特徴の1つではあるが、イソフタル酸共重合PETは非晶性のものであるため、得られるダイレクトブロー成型品は透明性に劣るとともに、成型性、耐熱性、耐薬品性等にも劣るものであった。
【特許文献1】特開平10−152140
【特許文献2】特開平11−158260
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するものであって、低い加工温度で成型することができ、製造コストを抑えることが可能であるのに加えて、成型性及び耐熱性にも優れるポリエステルダイレクトブロー成型品を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールを50モル%以上とするジオール成分とからなるポリエステルであって、融点が100〜150℃、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するポリエステル樹脂から成型されてなることを特徴とするポリエステルダイレクトブロー成型品を要旨とするものである。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリエステルダイレクトブロー成型品は、低融点にもかかわらず結晶性に優れたポリエステル樹脂からなるものであるため、低温で成型性よく、成型加工を行うことができ、形態のばらつきのない成型品を得ることが可能であり(形態安定性に優れ)、耐熱性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、ダイレクトブロー成型とは、溶融可塑化した樹脂をダイオリフィスに通して押出して円筒状のパリソンを形成し、これを金型で挟んで内部に空気を吹き込む成型方法であり、本発明のダイレクトブロー成型品はこのような成型方法で得られたものである。
【0010】
本発明のポリエステルダイレクトブロー成型品は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールを50モル%以上とするジオール成分とからなるポリエステル樹脂からなるものである。
【0011】
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸(以下、TPAとする)が65モル%以上、中でも80モル%以上であることが好ましい。TPAが65モル%未満であると、ポリマーの融点が本発明の範囲外のものとなったり、結晶性が低下しやすくなるため好ましくない。
【0012】
なお、TPA以外の共重合成分としては、その効果を損なわない範囲であれば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ビフェニルジカルボン酸、などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0013】
ジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などを用いてもよい。
【0014】
また、ヒドロキシカルボン酸として、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などを用いてもよい。
【0015】
多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体として、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などを用いてもよい。
【0016】
ジオール成分としては、1,6−ヘキサンジオール(以下、HDとする)を50モル%以上とするものであり、他の成分としてはエチレングリコール(以下、EGとする)や1,4−ブタンジオール(以下、BDとする)を用いることが好ましい。ジオール成分において、HDは50モル%以上であり、中でも60〜95モル%であることが好ましい。HDが50モル%未満の場合、融点が150℃を超えるものとなる。
【0017】
ジオール成分として、HDとともにEGやBDを用いる際には、EGやBDをジオール成分において、1〜50モル%とすることが好ましく、中でも5〜40モル%とすることが好ましい。HDとEGを用いる場合、HDとBDを用いる場合、HDとEGとBDを用いる場合が挙げられる。HDとともにBDを用いると重合性が向上する傾向がある。
【0018】
さらに、ジオール成分には、HD、EGやBD以外の他の共重合成分として、その特性を損なわない範囲で、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコールなどに例示される芳香族グリコールを用いることができる。
【0019】
また、グリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどを用いることができる。
【0020】
さらに、環状エステルとして、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、β-メチル-β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどを用いることができる。
【0021】
そして、本発明におけるポリエステル樹脂の融点は、100〜150℃であり、中でも105〜140℃、さらには110〜130℃であることが好ましい。ポリエステル樹脂の融点が100℃未満であると、耐熱性が低くなり、さらには熱安定性が悪くなるため、操業性や生産性も低下する。一方、融点が150℃を超えると、成型加工において加工温度を高温とする必要がありコスト的に不利となる。
【0022】
本発明におけるポリエステル樹脂は、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有するものであり、中でも0.5〜3.0質量%含有することが好ましい。
【0023】
本発明におけるポリエステル樹脂は、前記したような共重合組成であることにより、結晶性を有しているものであるが、結晶核剤を含有することによって降温時の結晶化速度を向上させることができ、後述する(1)式を満足することができるものとなり、加工温度が低くても成型性に優れ、形態安定性よく、耐熱性に優れた成型品を得ることができるものである。
【0024】
結晶核剤の含有量が0.01質量%未満であると、降温時の結晶化速度を向上させることができず、本発明におけるポリエステル樹脂は後述する(1)式を満足することができない。一方、5.0質量%を超えると、結晶核剤の含有量が多くなりすぎ、成型加工時の操業性が悪化する。
【0025】
結晶核剤としては無機系微粒子が好ましく、中でもタルクなどの珪素酸化物を主成分とするものが好ましい。さらに、無機系微粒子として平均粒径3.0μm以下もしくは比表面積15m/g以上のものが好ましい。上記平均粒径もしくは比表面積を満足していない場合、結晶核としての機能に乏しく、ポリエステルの降温結晶性が不十分となり(1)式を満足することが困難となる。
【0026】
結晶核剤を添加する方法としては、粉体のまま、あるいはジオールスラリーの形態でポリエステルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。例えば、エステル化またはエステル交換反応時に添加してもよいし、重縮合反応の段階で添加してもよい。中でも、結晶核剤としての効果を良好なものとするには、エチレングリコール等のグリコールにスラリー状態あるいは溶解させた状態で添加することが好ましい。
【0027】
そして、本発明におけるポリエステル樹脂は、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線において、b/aが0.05(mW/mg・℃)以上であることが必要であり、0.06以上であることが好ましい。一方、b/aが大きいほど降温時の結晶性に優れるものとなるが、本発明で目的とする効果を奏するには、b/aを0.5以下とすることが好ましい。
【0028】
上記b/aは、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線より求められる。図1に示すように、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
【0029】
b/aは、降温時の結晶性を表す指標であり、b/aの値が高いと結晶化速度が速く、逆に0に近いほど、結晶化速度が遅いことを示している。b/aが0.05(mW/mg・℃)未満の場合、降温時の結晶化速度が遅いため、チップ化する際にローラやカッターへの巻き付きが生じたり、2つ以上のチップが溶着した連チップの発生が生じる。また、チップの貯蔵、運搬及び乾燥工程においてチップ同士の溶着や壁面への溶着が生じる。さらには、成型加工する際には結晶固化に時間を要するため、操業性が低下するという問題も生じる。
【0030】
なお、上記したように、b/aはポリエステルの共重合組成を特定のものとし、結晶核剤の含有量を上記範囲の量とすることにより、本発明で規定する範囲のものにすることができる。
【0031】
本発明におけるポリエステル樹脂の融点とDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線は、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(Diamond DSC)を用いて、窒素気流中、温度範囲−20℃〜250℃、昇温(降温)速度20℃/分で測定するものである。
【0032】
また、本発明におけるポリエステル樹脂は、極限粘度が0.8以上であることが好ましい。極限粘度が0.8未満のものでは、各種の物理的、機械的、化学的特性が劣るとともに、成型品の強度が劣るものとなる。一方、極限粘度が高すぎても溶融粘度が高くなることにより押出が困難になったり、成型加工の際に溶融粘度を下げるべく加工温度を上げると、ポリエステルの熱分解が顕著になり、成型が困難になることから、実用上1.5以下であることが好ましい。
【0033】
本発明におけるポリエステル樹脂中には、目的を損なわない範囲内で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
【0034】
次に、本発明のポリエステルダイレクトブロー成型品の製造方法について、一例を用いて説明する。
【0035】
本発明のポリエステルダイレクトブロー成型品を形成するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させ、重縮合反応を行うことにより本発明のポリエステル樹脂を製造することができる。
【0036】
具体的には、重縮合反応は通常 0.01〜10hPa程度の減圧下、220〜280℃の温度で所定の極限粘度のものが得られるまで行う。また、重縮合反応は、触媒存在下で行われるが、触媒としては従来一般に用いられているアンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マンガンおよびコバルト等の金属化合物のほか、スルホサリチル酸、o-スルホ安息香酸無水物等の有機スルホン酸化合物を用いることができる。
【0037】
結晶核剤や各種添加剤(本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる)は、粉体またはジオールスラリー等の形態で、ポリエステルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。例えば、エステル化またはエステル交換反応時に添加してもよいし、重縮合反応の段階で添加してもよい。そして、重縮合反応においてポリエステルが所定の極限粘度に到達したら、ストランド状に払い出して、冷却、カットすることによりチップ化する。
【0038】
そして、上記のようにして得られたポリエステル樹脂を用い、ホットパリソン法のうち、押出成型機で成型されたプリフォームが、まだ軟らかく可塑性を失わないうちにブロー成型を完了させてしまうダイレクトブロー成型法により製造する。シリンダー各部やノズル温度を170〜230℃、金型温度を20〜70℃とし、金型温度を調整して金型成型中にポリマーを結晶化させて成型品を得る。
【実施例】
【0039】
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
〔無機系微粒子〕
(a)平均粒径
島津社製粒度分布測定装置(SALD-2000)を用いて、エチレングリコール中の試料の平均粒径の値を測定した。
(b)比表面積
BET法により測定した。
〔ポリエステル樹脂〕
(c)極限粘度〔η〕
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(d)融点、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線
前記の方法により測定した。
(e)ポリマー組成
ポリエステルを重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(f)成型品評価
〔成型性〕
得られたダイレクトブロー成型品10個の形状を目視にて判断し、以下の3段階で評価した。
10個すべてが良品であった場合を○、10個中7〜9個が良品であった場合を△、10個中良品が6個以下であった場合を×とした。
〔ホットフィル〕
得られたダイレクトブロー成型品(ボトル)に80℃の温水を充填して栓をして、室温まで放冷した後、ボトルの変形を目視にて判断し、以下の3段階で評価した。
変形していない場合を○、胴部リブが若干変形し、底部変形がない場合を△、胴部リブ、底部いずれも変形している場合を×とした。
【0040】
実施例1
エステル化反応缶に、TPAとEG(モル比 1/1.6) のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%の反応物を得た。この反応物40kgを重縮合反応缶に移送し、HD28kgを重縮合反応缶に投入し、温度240℃、常圧下で1時間攪拌した。
次に、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m/gのタルクを10質量%含有するEGスラリーを8.0kg、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートを4質量%含有するEG液を1.0kg、これらを重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、70分後に1.2hPa以下にした。この条件下で撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化した。
そして、日本製鋼所製ダイレクトブロー成型機「電動式小型中空成型機JEB-7/P50/WS60S」を用い、170℃〜230℃の溶融押出条件で、ダイス出口の樹脂温度を190℃としてパリソンを押出機より200mmの長さで押し出して、金型温度を20〜70℃としボトル形状にダイレクトブロー成型し、ダイレクトブロー成型品を得た。
【0041】
実施例2
エステル化反応缶に、TPA30kg、HD27kg、BD5kgを供給し、エステル化反応触媒としてヒドロキシモノブチルスズオキサイドを0.01kg、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m/gのタルクを0.4kg(ポリマーに対して1質量%)添加し、温度230℃、圧力0.2MPaの条件で3時間撹拌しエステル化反応を行った後、重縮合反応缶に移送した。そして、艶消し剤として酸化チタンを34質量%含有するBDスラリーを0.5kgと、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートを4質量%含有するBD液を1.0kgとを重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、70分後に1.2hPa以下にした。この条件下で撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化し、ポリエステル樹脂を得た。
そして、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成型し、ダイレクトブロー成型品を得た。
【0042】
比較例1
HDの投入量を変更し、表1に示すポリマー組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得、ダイレクトブロー成型品を得た。
【0043】
実施例3、比較例2〜3
HDの投入量とBDの投入量を変更し、表1に示すポリマー組成となるようにしたこと以外は実施例2と同様にしてポリエステル樹脂を得、ダイレクトブロー成型品を得た。
【0044】
比較例4
TPAとEGの反応物の投入量を24.1kgとし、イソフタル酸(IPA)を13.3kg、EGを16.0kg投入し、HDを投入しなかったこと以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を得、ダイレクトブロー成型品を得た。
【0045】
比較例5
IPAを投入し、表1に示すポリマー組成となるようにしたこと以外は実施例2と同様にしてポリエステル樹脂を得、ダイレクトブロー成型品を得た。
【0046】
実施例1〜3、比較例1〜5で得られたポリエステル樹脂の特性値及び成型品の評価結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1から明らかなように、実施例1〜3では、ポリエステル樹脂が100〜150℃の融点を有しているのに加え、重合性に優れ、(1)式を満足するものであり、結晶性に優れていたので、成型性よくポリエステルダイレクトブロー成型品を得ることができた。そして得られた成型品はホットフィルによる80℃での耐熱性にも優れていた。
一方、比較例1〜3ではポリエステル樹脂はHDが50モル%未満であったため、融点が150℃を超えるものであり、190℃での成型は不可能であった。比較例4、5ではポリエステル樹脂は、TPAが少なく、IPAの共重合量が多かったため、融点がDSCでは確認できず、結晶性も有しておらず、ダイレクトブロー成型時の成型性は悪く、得られた成型品は耐熱性に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明におけるポリエステル樹脂のDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線の一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールを50モル%以上とするジオール成分とからなるポリエステルであって、融点が100〜150℃、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するポリエステル樹脂から成型されてなることを特徴とするポリエステルダイレクトブロー成型品。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。


【図1】
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【公開番号】特開2009−179654(P2009−179654A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17682(P2008−17682)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000228073)日本エステル株式会社 (273)
【Fターム(参考)】