説明

ポリエステル樹脂の製造方法

【課題】 溶融重縮合−固相重縮合によりイソソルバイドが共重合したポリエステル樹脂を製造する方法において、固相重縮合に際しての結晶化速度を速くする。
【解決手段】 溶融重縮合物を粒子化するまでの任意の段階で反応系に結晶化促進剤を添加して、昇温時結晶化温度が140〜180℃であり、降温時結晶化温度が190℃以下であるか又は存在しない粒子を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジオール成分の一部としてイソソルバイドを用いてポリエステル樹脂を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂は、機械的強度、化学的安定性、ガスバリヤー性、衛生性等に優れ、かつ比較的安価なので、種々の用途に広く用いられている。なかでも最近では各種の飲料用のボトルとしての需要が急増している。飲料用のボトルに要求される特性は、これに充填する飲料や充填方法により異なるが、多くの場合にヒートセットにより耐熱性を付与することが行われている。最近では果汁飲料などを高速で加熱殺菌充填するため、より耐熱性の高いボトルが求められている。この要求を満たすポリエステル樹脂として提案されているものの一つに、ジオール成分の一部としてイソソルバイド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)を共重合させることにより、ガラス転移点を高くしたポリエステル樹脂がある(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特許第3395972号公報
【特許文献2】特許第3399465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
イソソルバイドを共重合させたポリエステル樹脂は、ガラス転移温度は高いが結晶化速度が遅い。そのためボトル用ポリエステル樹脂の製造において、溶融重縮合で得られたプレポリマーを固相重縮合させるに際し、結晶化に時間を要し、生産性が低下するという問題がある。従って本発明は、イソソルバイドが共重合されているポリエステル樹脂を、生産性よく製造する方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を含むジカルボン酸成分と、イソソルバイドを含むジオール成分とを反応させてポリエステル前駆体を生成させる工程、このポリエステル前駆体を重縮合触媒の存在下に溶融重縮合させてプレポリマーを生成させる工程、このプレポリマーを粒状化させてプレポリマー粒子とする工程及びこのプレポリマー粒子を結晶化させたのち固相重縮合させる固相重縮合工程の各工程を含むポリエステル樹脂の製造方法において、プレポリマーを粒状化させる以前の任意の工程で反応系に結晶化促進剤を添加することにより、昇温時結晶化温度が140℃以上で180℃以下であり、かつ降温時結晶化温度が190℃以下であるか又は存在しないプレポリマー粒子を生成させ、これを固相重縮合に供することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、イソソルバイドが共重合されていてガラス転移温度が高いポリエステル樹脂を生産性よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において、生成するポリエステル樹脂の酸成分の主体をなすのは芳香族ジカルボン酸であり、通常は生成するポリエステル樹脂の酸成分の90モル%以上、特に95モル%以上が芳香族ジカルボン酸となるようにする。芳香族ジカルボン酸として好ましいのはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などである。なかでも好ましいのはテレフタル酸であり、通常はテレフタル酸がポリエステル樹脂の酸成分の90モル%以上、好ましくは95モル%以上を占めるようにする。テレフタル酸が97モル%以上を占
めるのが最も好ましい。生成するポリエステル樹脂は上記以外のジ
カルボン酸成分を含んでいてもよい。このようなカルボン酸としてはフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4′−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、及びコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α、ω−ウンデカジカルボン酸、α、ω−ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。酸成分は遊離酸として反応に用いてもよく、またジメチルエステル等のエステル形成性誘導体として反応に用いてもよい。なお、酸成分は通常は反応中に系外に逸失しないので、生成するポリエステルに所望の酸成分組成となるように反応系に供給すればよい。
【0007】
本発明においては、反応系に供給するジオール成分の一部としてイソソルバイドを用い、これを生成するポリエステル樹脂中に共重合させる。イソソルバイド(1,4:3,6−ジアンヒドロ−D−ソルビトール)は、例えばD−グルコースを水添したのち、酸触媒で脱水することにより製造される化合物である。イソソルバイドは、生成するポリエステル樹脂のジオール成分に占めるイソソルバイドの比率が通常は0.5モル%以上で20モル%以下となるように反応系に供給する。イソソルバイドはポリエステル樹脂の耐熱性を向上させる効果があるが、含有比率が小さすぎると所期の耐熱性の向上効果が発現しない。逆に含有比率が大きすぎると、ポリエステル樹脂でボトルを製造する際の生産性が低下し、かつボトルのガスバリヤー性も低下する。イソソルバイドは、生成するポリエステル樹脂のジオール成分に占めるイソソルバイドの比率が、2.0〜15モル%、特に4〜10モル%となるように反応系に供給するのが好ましい。
【0008】
イソソルバイド以外のジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール;及びキシリレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4′−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオールや2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)プロパンにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドが付加した化合物などが挙げられる。なかでも好ましいのはエチレングリコールであり、エチレングリコールは生成するポリエステル樹脂のジオール成分の80〜99.5モル%を占めるように反応系に供給するのが好ましい。生成するポリエステル樹脂のグリコール成分に占めるエチレングリコールの比率が85〜98モル%、特に90〜96モル%となるように反応系にエチレングリコールを供給するのが更に好ましい。なお、ポリエステル樹脂の製造に際しエチレングリコールをジオール成分として用いると、ジエチレングリコールが副生し、これがポリエステル樹脂中にジオール成分として含まれてくる場合がある。本発明の好ましい態様の一つでは、ジオール成分としてイソソルバイドとエチレングリコールを用い、ジオール成分がイソソルバイド、エチレングリコール及び副生したジエチレングリコールより成るポリエステルを生成させる。
【0009】
なお、本発明では本質的に上記したジカルボン酸成分とジオール成分を反応系に供給してポリエステル樹脂を生成させるが、他に少量であれば、グリコール酸、p−ヒドロキシ
安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;ステアリルアルコール、ヘネイコサノール、オクタコサノール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分;トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多官能成分などを反応系に供給してもよい。これらの成分は、生成するポリエステル樹脂において、酸成分及びアルコール成分の合計の0.5モル%以下、特に0.3モル%以下であるのが好ましい。
【0010】
本発明においては、先ず上記の芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を含むジカルボン酸成分と、イソソルバイドを含むジオール成分とを反応させてポリエステル前駆体を生成させる。この反応は常法に従って行えばよい。反応は無触媒でも行ない得るが、所望ならば常用のエステル化触媒やエステル交換触媒を用いてもよい。生成したポリエステル前駆体は、次いで重縮合触媒の存在下に溶融重縮合させて、溶融したプレポリマーを生成させる。この溶融重縮合も常法に従って行えばよい。重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、タングステン化合物など、重縮合触媒として知られている任意のものを用いることができる。通常はゲルマニウム化合物、アンチモン化合物及びチタン化合物より成る群から選ばれた金属化合物を用いる。好ましくは、これらの金属化合物に加えて、反応系にアルカリ金属及びアルカリ土類金属より成る群から選ばれた金属の化合物及びリン化合物を添加して、最終的に得られるポリエステル樹脂中のこれらの金属及びリンの濃度(重量ppm)が、下記の(I)〜(III)式を満足するようにする。これらの化合物の添加時期は、常法におけるように溶融重縮合反応の開始前であればよく、ポリエステル前駆体の反応系に添加してもよい。好ましくは、先ずリン化合物を添加し、次いでアルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物を添加し、最後にゲルマニウム、アンチモン、チタンなどの化合物を添加する。
【0011】
0.025≦T/20+G/280+S/250≦1 …(I)
0≦M≦(T/20+G/280+S/250)×40 …(II)
0.5≦P≦40 …(III)
(式中、Tはチタン、Gはゲルマニウム、Sはアンチモン、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属、Pはリンの、最終的に得られるポリエステル樹脂中における濃度(重量ppm)を示す。)
(I)式で規定する範囲の上限を超えるチタン等や、(II)式で規定する範囲の上限を超えるアルカリ金属等を含有するポリエステル樹脂は、着色する傾向があり、かつこれを成形して得られるボトルはアセトアルデヒド濃度が高くなる傾向がある。また、(I)式で規定する範囲の下限を下廻るチタン等の濃度では、重縮合反応速度が遅く、固有粘度の高いポリエステル樹脂を製造するのが困難である。リン濃度が(III)式の上限を超えると、重縮合反応速度が遅くて固有粘度の高いポリエステル樹脂が得難く、逆に下限未満ではポリエステル樹脂が着色しやすい。
【0012】
上記式の範囲内でも下記(IV)〜(VI)式を満足するのが更に好ましく、下記(VII〜IX)式を満足するのが最も好ましい。
0.05≦T/20+G/280+S/250≦0.75 …(IV)
0≦M≦(T/20+G/280+S/250)×30 …(V)
1≦P≦30 …(VI)
0.1≦T/20+G/280+S/250≦0.5 …(VII)
0≦M≦(T/20+G/280+S/250)×20 …(VIII)
2≦P≦20 …(IX)
なお、上記式を満足する範囲でも、最終的に得られるポリエステル樹脂中のゲルマニウ
ムは10ppm未満、アンチモンは50ppm未満であるのが好ましい。
【0013】
ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド等を用いるのが好ましく、なかでも二酸化ゲルマニウムが好ましい。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエチレングリコレート等を用いるのが好ましい。
【0014】
チタン化合物としては、通常はテトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタネート類、酢酸チタン、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウム、シュウ酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、臭化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、六フッ化チタン酸アンモニウム、チタンアセチルアセトナート等が用いられるが、なかでもテトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウムなどを用いるのが好ましい。
【0015】
アルカリ金属やアルカリ土類金属化合物としては、通常はリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の酸化物、水酸化物、アルコキシド、酢酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物など、例えば酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムやこれらの水和物などが用いられる。アルカリ金属やアルカリ土類金属としてはエチレングリコールや水に可溶なものを用いるのが好ましく、なかでも酢酸マグネシウムやその水和物を用いるのが好ましい。
【0016】
リン化合物としては、正リン酸、ポリリン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(トリエチレングリコール)ホスフェート、エチルジエチルホスホノアセテート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート等の5価のリン化合物;亜リン酸、次亜リン酸、ジエチルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト等の3価のリン化合物などを用いればよい。なかでもトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、エチルアシッドホスフェートなどを用いるのが好ましい。
【0017】
本発明をその好ましい一態様であるテレフタル酸とエチレングリコール及びイソソルバイドから、イソソルバイドが共重合されたポリエチレンテレフタレートを製造する場合について説明すると、エステル化反応槽にテレフタル酸、エチレングリコール及びイソソルバイドを供給し、撹拌下にエステル化反応させてポリエステル前駆体を生成させる。反応は240〜280℃程度の温度で、かつ大気圧に対し0〜400kPa程度の加圧下で行うのが好ましい。生成したポリエステル前駆体を重縮合反応槽に移送し、前述の重縮合触媒の存在下、撹拌下に1〜20時間程度溶融重縮合させてプレポリマーを生成させる。反応は250〜290℃程度の温度で行い、圧力は常圧から漸次減圧して最終的に1333〜13.3Pa(絶対圧)程度の圧力とするのが好ましい。溶融重縮合で得られたプレポリマーは、多数のダイホールを有するダイからストランド状に押出し、水冷固化させたの
ちカッターで切断するストランドカット法や、プレポリマーをノズルから液滴状に流出させて冷却水中に落下させ、冷却固化する方法など任意の方法でプレポリマー粒子とする。また、アンダーウォーターカッティング法、すなわちダイホールから冷却液中にプレポリマーを直接押出し、ダイに対向して設けたカッターで直ちに切断して粒子化する方法を採用することもできる。この方法によるときは、冷却液の温度は100〜190℃、特に120〜170℃とするのが好ましく、また冷却液としてはエチレングリコールと水との混合液を用いるのが好ましい。また、この方法では、冷却液が高温であるため、粒子の冷却速度が遅く、冷却液中で粒子が相互に融着を起すことがあるので、カッターで生成させた粒子は、できるだけ速やかに、より低温の冷却液、好ましくは60℃以下の水中に投入して冷却するが好ましい。アンダーウォーターカッティング法は、固有粘度の比較的小さいプレポリマーの粒子化に好適である。
【0018】
溶融重縮合は、プレポリマーの固有粘度が0.15〜0.65dl/gとなるように行うのが好ましい。固有粘度が0.15dl/gより低いプレポリマーは、ストランドカッティング法及びアンダーウォーターカッティング法のいずれによっても粒子化が困難であり、かつ後続する固相重縮合に長時間を要する。また、固有粘度が0.65dl/gを超える固有粘度が大きいプレポリマーを生成させるには溶融重縮合に長時間を要し、溶融重縮合反応器の撹拌機を強力なものとする必要があるなど、反応装置の点からも不利である。プレポリマー粒子の平均粒重は0.5〜18mgが好ましい。平均粒重が0.5mgよりも小さいプレポリマー粒子は取扱いが困難である。逆に平均粒重が18mgを超える大きなプレポリマー粒子は固有重縮合の反応速度が遅いので、生産性が低下する。
【0019】
プレポリマー粒子は次いで固相重縮合させる。固相重縮合は常法により行えばよく、例えば窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、大気圧に対して100kPa以下、好ましくは20kPa以下の加圧下で5〜30時間程度、又は絶対圧で6.5〜0.013kPa、好ましくは1.3〜0.065kPaの圧力下で1〜20時間程度行えばよい。反応温度は190〜230℃であるが195〜225℃が好ましい。固相重縮合により固有粘度は上昇し、かつ環状三量体、アセトアルデヒド等の含有量は低下する。なお、固相重縮合に先立って、不活性ガス雰囲気下、又は水蒸気もしくは水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で、プレポリマー粒子を120〜200℃、好ましくは130〜190℃で、1分間〜4時間程度加熱することにより、プレポリマー粒子に結晶化処理を施すのが好ましい。この結晶化処理に引続き更に高温で熱処理しておくことにより、固相重縮合をより高温で行うことができる。固相重縮合は得られるポリエステル樹脂の固有粘度が0.73〜1.5dl/gとなるように行うのが好ましい。固有粘度が小さすぎるとこれを成形して得られるボトル等の機械的強度が低下する。逆に固有粘度が大きすぎるとボトル等に成形する際の生産性が低下する。固相重縮合は、得られるポリエステル樹脂の固有粘度が0.74〜1.2dl/g、特に0.75〜0.95dl/gとなるように行うのが好ましい。
【0020】
本発明では、溶融重縮合で得られたプレポリマーを粒子化させるに先立って、反応系に結晶化促進剤を添加する。結晶化促進剤は、昇温時結晶化温度が140℃以上で180℃以下であり、かつ降温時結晶化温度が190℃以下であるか又は存在しないプレポリマー粒子が生成するように添加する。結晶化促進剤を含有させることにより結晶化温度をこのように制御すると、固相重縮合に際してプレポリマー粒子の結晶化が著しく促進される。結晶化促進剤は、昇温時結晶化温度が150℃以上で175℃以下であり、かつ降温時結晶化温度が180℃以下であるか又は存在しないプレポリマー粒子が生成するように添加するのが好ましい。
【0021】
結晶化促進剤は、プレポリマーを粒子化する前の任意の時点で反応系に添加すればよい。例えば結晶化促進剤はポリエステル前駆体を生成させる時点で反応系に添加してもよく
、またポリエステル前駆体を溶融重縮合に移送する時点で添加してもよい。更には結晶化促進剤の均一分散が確保できるならば、溶融重縮合中ないしは溶融重縮合後に添加してもよい。
【0022】
結晶化促進剤としては、オリゴマー粒子の結晶化温度を前述のように制御できるものであればよい。その代表的なものとしては赤外線吸収剤、色剤及び結晶核剤が挙げられる。
赤外線吸収剤としては、例えばカーボンブラック、グラファイト、フラーレン、四三酸化鉄などが用いられる。これらは微粒子状で用いるのが好ましい。また、これらは通常はオリゴマー粒子中の濃度が1〜100重量ppmとなるように添加するが、2〜50ppm、特に3〜35ppmとなるように添加するのが好ましい。
【0023】
色剤としては有機顔料、例えばPolysynthren Blue RBL(クラリアント社製)やSandplast Red G(クラリアント社製)などを用いることができる。有機顔料は通常はオリゴマー粒子中に0.1〜20重量ppmとなるように添加するが、0.2〜15ppm、特に0.5〜10ppmとなるように添加するのが好ましい。これらの有機顔料は溶融プレポリマーに溶解するが、若し溶解しないものを用いる場合には赤外線吸収剤と同じく微粒子状で用いるのが好ましい。有機顔料の添加は、最終的に得られるポリエステル樹脂の色調を良好にすることができるという副次的効果もある。すなわちイソソルバイドを共重合したポリエステル樹脂は色調が劣ることがあるが、有機顔料の添加により、ハンターの色差式の明度指数L、色座標a、bの値を容易に
L値:70以上で90以下、好ましくは72以上で88以下、更に好ましくは75以上で85以下
a値:−3以上で3以下、好ましくは−2以上で2以下、更に好ましくは−1以上で1以下
b値:−3以上で3以下、好ましくは−2以上で2以下、更に好ましくは−1以上で1以下
とすることができる。
【0024】
結晶核剤としてはポリエステル樹脂とは異種の結晶性熱可塑性樹脂及び層状粘土鉱物が用いられる。結晶性熱可塑性樹脂としてはポリオレフィン樹脂やポリアミド樹脂を用いるのが好ましく、これらはオリゴマー粒子中に通常は1000重量ppm以下となるように添加するが100ppm以下、特に10ppm以下となるように添加するのが好ましい。なお、添加量があまりに少ないと所期の効果が発現しないので、0.1ppb以上となるように添加する。通常は0.5ppb以上、特に1ppb以上となるように添加する。なお、これらの樹脂も溶融プレポリマーに溶解する。
【0025】
ポリオレフィン樹脂としては、例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、これらのα−オレフィンと炭素数2〜20程度の他のα−オレフィン、更には酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、塩化ビニル、スチレン等のビニル化合物との共重合体などが用いられる。例えば低密度〜高密度のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、及び、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂等を用いればよい。
【0026】
ポリアミド樹脂としては、ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム
、エナントラクタム、ω−ラウリルラクタム等のラクタム類の重合体、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノ酸類の重合体、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,5−ヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,11−ウンデカジアミン、1,12−ドデカンジアミン、α、ω−ジアミノポリプロピレングリコール等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン類と、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸類との重縮合体、又はそれらの共重合体等が用いられる。例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/12、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等を用いればよい。
【0027】
層状粘土鉱物としてはモンモリロナイト、カオリナイト、ハロイサイト、バーミキュライト、雲母鉱物などを用いるのが好ましい。これらは通常、オリゴマー粒子中に0.001〜10重量%となるように添加する。添加量が少なすぎると最終的に得られたポリエステル樹脂をボトルに成形したときにガスバリヤー性が劣る傾向がある。逆に添加量が多すぎるとボトルに成形するときの流動性が悪くなり、ボトルの外観が不良となり易い。層状粘土鉱物の添加量はオリゴマー粒子中に0.01〜5重量%、特に0.1〜3重量%となるように添加するのが好ましい。また層状粘土鉱物の粒径は小さいほど好ましく、通常は500nm以下のものを用いる。粒径が大きいとポリエステル樹脂を成形して得られるボトルの透明性が低下する傾向がある。粒径が300nm以下、特に100nm以下であれば更に好ましい。なお、粒径を10nm以下にすることは通常は困難である。
【0028】
本発明で製造されたポリエステル樹脂は、射出成形によりプリフォームとし、次いで延伸ブロー成形してボトルを製造するのに好適である。また押出成形によりパリソンとし、次いでブロー成形してボトルを製造するのに用いるのにも適している。ボトル以外にも、押出成形してシートとし、これを熱成形して種々の容器を製造したり、二軸延伸してフィルムを製造するのに用いることもできる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例に本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例における物性測定等は下記により行った。
<固有粘度>
凍結粉砕した試料0.5gを、フェノール/テトラクロロエタンの1:1(重量比)混合溶媒に溶解し、濃度が0.1g/dl、0.2g/dl、0.5g/dl及び1.0g/dlの溶液を調製した。溶解は試料がプレポリマーの場合には110℃×30分間、固相重縮合物の場合は120℃×30分間で行った。ウベローデ型粘度計を用いて、30℃で各溶液について混合溶媒に対する相対粘度(ηrel)を測定した。これから(ηrel−1)で定義される比粘度(ηsp)を求め、濃度に対する比粘度の比(ηsp/c)をグラフ上にプロットし、濃度(c)を0に外挿したときの比(ηsp/c)を固有粘度[η](dl/g)とした。
【0030】
<色調>
試料を内径36mm、深さ15mmの円筒状の粉体測色用セルにすりきりに充填し、測色色差計(日本電色工業社製、ND−300A)を用いて、JIS Z8730の参考1
に記載されているLab表色系におけるハンターの色差式の色座標L、a及びbを反射法で測定した。測定はセルを90度づつ回転させて4箇所で測定し、その単純平均値をもって測定値とした。
【0031】
<プレポリマー粒子の粒重>
プレポリマー粒子を約20粒ランダムに取出し、この重量(w)と個数(N)とから算出した。
粒重=(W/N)(mg)
<融点(Tm)、ガラス転移点(Tg)、昇温時結晶化温度(Tc1)、降温時結晶化温度(Tc2)>
真空乾燥機で40℃×3日間乾燥させた試料から約10mgを採取してその重量を精秤した。これをアルミニウム製オープンパン及びパンカバー(常圧タイプ、セイコー電子社製、P/N SSC000E030及びP/N SSC000E032)に封入し、示差走査熱量計(セイコー社製、DSC220C)を用いて、窒素気流下、20℃から285℃まで20℃/分の速度で昇温させた。この昇温過程において、最初にベースラインが階段状に変化する箇所でDSC曲線が最大傾斜を示す温度をガラス転移温度(Tg)とし、発熱ピークが極大値を示す温度を昇温時結晶化温度(Tc1)とした。また、引続く昇温過程において最後に観察される吸熱ピークが頂点を示す温度を融点(Tm)とした。285℃で5分間溶融状態に保持した後、10℃/分の速度で20℃まで降温させ、その途中で発熱ピークが極大値を示す温度を降温時結晶化温度(Tc2)とした。
【0032】
<触媒含有量>
試料2.5gを硫酸存在下に常法により分解・灰化した。完全に分解後、蒸留水を加えて正確に50mlとした。この溶液についてプラズマ発光分光分析法により各触媒元素を定量した。
<樹脂のモノマー組成>
試料を重水素化トリフルオロ酢酸に溶解させて3重量%溶液とした。この溶液について、核磁気共鳴装置(日本電子社製、JNM−EX270型)を用いて1H−NMRを測定し、各ピークを帰属させ、その積分比からテレフタル酸、テレフタル酸以外のジカルボン酸、エチレングリコール、イソソルバイド及びこれら以外のジオールの割合を求めた。
【0033】
<プリフォームのアセトアルデヒド含有量>
プリフォームの胴部を約4mm角の大きさに破砕した。これから5.0gを精秤し、純水10mlと共に窒素シール下に内容積50mlのミクロボンベに封入した。160℃に2時間保持したのち、水中のアセトアルデヒドをイソブチルアルデヒドを内部標準としてガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC−14A)で定量した。
【0034】
<プリフォームの外観>
プリフォームの外観を目視で評価し、結果を下記の基準で表示した。
◎:透明性が良好で、明度が高く、色調が中間的である。
○:透明性が良好で、色調が中間的である。
×:白化が著しく、透明性が低いか、又は黄変が著しい。
【0035】
<ボトルの外観>
ボトルの外観を目視で評価し、かつ胴部の切断片についてその肉厚分布を求め、結果を下記の基準で表示した。
◎:透明性、明度、色調がいずれも良好であり、胴部の肉厚分布も均一である。
○:透明性、色調が良好で、胴部の肉厚分布が均一である。
△:透明性または明度が若干損われるが許容し得る程度であり、胴部の肉厚分布は均
一である。
×:白化又は黄変が著しいか、又は胴部の肉厚分布が不均一である。
【0036】
<プリフォームの最適加熱時間>
石英ヒーターを備えた赤外線照射炉内で、加熱時間を60〜100秒の間で5秒づつ変化させながらプリフォームを加熱し、延伸ブロー成形を行うのに最適な加熱時間を求めた。
【0037】
<ボトル口栓部変形>
延伸ブローで得られたボトルに、93℃の熱水を2.5L/分の速度で充填し、1分間放置したのちキャッパー(#501−1 ヘッドキャッパー、((株)柴崎製作所製)を用いて、15.5kg−cmのトルク設定値でボトルにポリプロピレン製のキャップをした。この時点で口栓部の変形が著しく、キャップをするのが困難なものは評価を×とした。引続きボトルを1分間倒置したのち冷水中で急冷し、口栓部の変形状態を観察した(変形は主に天面部の内側への湾曲となって現れる)。評価は変形が認められないものを◎、若干の変形は認められるものの、実用上許容しうるものは○とした。
【0038】
<ボトル胴部収縮>
延伸ブローで得られたボトルに93℃の熱水を2.5L/分の速度で充填し、室温で30分間放置した。熱水充填前後の内容量から下記により容積収縮率を求め、結果を下記の基準で表示した。
【0039】
【数1】

◎:容積収縮率 1%以下
○:容積収縮率 1〜3%
×:容積収縮率 3%より大
<酸素透過率>
延伸ブローで得られたボトルの胴部を切出し、23℃、相対湿度100%の条件下で、酸素透過率測定装置(OX−TRAN 2/20、Modern Controls社製)を用いて酸素ガス透過率(C.C・mm/m2.day.atm)を求めた。
【0040】
実施例1
<溶融重縮合>
テレフタル酸40kg、エチレングリコール19.8kg及びイソソルバイド2.29kgを混合してスラリーとした。攪拌機及び留出管が付設されており、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約50kg及びイソソルバイド2.39kgが仕込まれていて、窒素雰囲気下にあり温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されているエステル化反応槽に、上記のスラリーを4時間かけて供給した。供給終了後、1時間かけて内温を265℃まで上昇させた。この間、留出管からは副生した水とエチレングリコールを留出させた。
【0041】
攪拌機及び減圧装置を備えた重縮合槽に、上記で得られたエステル化反応生成物50kgを移送した。次いでこの重縮合槽に、エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和塩、及びテトラ−n−ブトキシチタンを、それぞれエチレングリコール溶液として5分間隔で順次添加した。添加量は、生成するポリエステル樹脂中のリン原子、マグネシウム原子及びチタン原子の濃度がいずれも4ppmとなる量である。引続きポリエチレン(日本ポリケム社製、UE320)を、生成するポリエステル中の濃度が40ppbとな
るように添加した。添加終了後、系内を2時間30分かけて265℃から280℃まで昇温し、かつ同時に圧力を1時間で常圧から400Paに低下させ、以後はこの温度、圧力を保持して生成するプレポリマーの固有粘度が約0.55dl/gとなるまで溶融重縮合させた。生成したプレポリマーは重縮合槽の底部に設けた抜出し口からストランド状に抜出し、水冷したのちカッターで切断して、約40kgのプレポリマー粒子(平均粒重15mg)を製造した。このものの固有粘度、昇温時結晶化温度(Tc1)、降温時結晶化温度(Tc2)、融点(Tm)及びガラス転移点を表−1に示す。
【0042】
<固相重縮合>
上記で得られたプレポリマー粒子を、撹拌結晶化機(Bepex社式)を用いて、入口温度30℃、出口温度160℃、滞留時間5分間の条件で結晶化させた。内部における平均温度上昇速度は26℃/分である。結晶化処理を経たプレポリマー粒子は静置固相重合塔に仕込み、20L/kg・hrの窒素流通下、約140℃で3時間乾燥したのち205℃で15時間固相重縮合させた。このものの固有粘度、触媒含有量、モノマー組成及び色調L、a、b値を表−1に示す。
【0043】
<プリフォーム成形>
上記で得られたポリエステル樹脂を、真空乾燥機で130℃×10時間乾燥したのち、射出成形機(日精樹脂工業社製「PE−80S」)を用いて、外径約29mm、高さ約165mm、平均肉厚約3.7mm、重量約60gの試験管状のプリフォームに成形した。成形条件は、シリンダー温度280℃、背圧5×105Pa、射出率45cc/秒、保圧力30×105Pa、金型温度20℃、成形サイクル約40秒である。このものの外観、アセトアルデヒド含有量及び最適加熱時間を表−1に示す。
【0044】
<延伸ブロー成形>
上記で得られたプリフォームを石英ヒーターを備えた赤外線照射炉内で最適加熱時間となるように保持した。これを室温で25秒間保持したのち、98℃に設定したブロー金型内に装入し、延伸ロッドで高さ方向に延伸しながら、ブロー圧力7×105Paで1秒間、更に30×105Paで40秒間ブロー成形して、外径約95mm、高さ約305mm、胴部平均肉厚約0.37mm、重量約60g、内容積約1.5リットルのボトルを得た。このボトルの外観、口栓部変形、胴部収縮及び酸素透過率を表−1に示す。
【0045】
実施例2
実施例1において、ポリエチレンの代わりに市販の四三酸化鉄(BET平均粒径0.17μm)を生成するポリエステル中の濃度が24ppmとなるように添加した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
実施例3
実施例1において、ポリエチレンの代わりに青色顔料(クラリアント社製 Polysynthren Blue RBL)及び赤色顔料(クラリアント社製 Sandplast Red G)をエチレングリコールスラリーとして、生成するポリエステル樹脂中の濃度がそれぞれ3ppmとなるように添加した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0046】
実施例4
実施例1において、ポリエチレンの代わりに層状粘土鉱物であるモンモリロナイト(クニミネ工業社製 クニピアF)をエチレングリコールスラリーとして、生成するポリエステル樹脂中の濃度が1重量%となるように添加した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0047】
実施例5
実施例1において、ポリエチレンを生成するポリエステル樹脂中の濃度が40ppbとなるように添加したのち、四三酸化鉄(戸田工業社製 HR−370H)を生成するポリエステル樹脂中の濃度が16ppmとなるように添加し、更に青色顔料(クラリアント社製 Polysynthren Blue RBL)、赤色顔料(クラリアント社製 Sandplast Red G)、及びモンモリロナイト(クニミネ工業社製 クニピアF)を、生成するポリエステル樹脂中の濃度がそれぞれ3ppm、3ppm及び1重量%となるように、いずれもエチレングリコールスラリーとして添加した以外は、実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0048】
実施例6
テレフタル酸40kg、エチレングリコール18.9kg及びイソソルバイド5.41gを混合してスラリーとした。撹拌機及び留出管が付設されており、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約50kg及びイソソルバイド4.5kgが仕込まれていて、窒素雰囲気下にあり、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されているエステル化反応槽に、上記のスラリーを4時間かけて供給した。供給終了後、1時間かけて内温を265℃まで上昇させた。この間、留出管からは副生した水とエチレングリコールを留出させた。
【0049】
攪拌機及び減圧装置を備えた重縮合槽に上記で得られたエステル化反応生成物50kgを移送した。次いでこの重縮合槽に、エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和塩、及びテトラ−n−ブトキシチタンを、それぞれエチレングリコール溶液として5分間隔で順次添加した。添加量は、生成するポリエステル樹脂中のリン原子、マグネシウム原子及びチタン原子の濃度が、いずれも8ppmとなる量である。引続きポリエチレン(日本ポリケム社製 UE320)を生成するポリエステル樹脂中の濃度が100ppbとなるように添加し、次いで四三酸化鉄(戸田工業社製、HR−370H)を生成するポリエステル樹脂中の濃度が16ppmとなるように添加した。更に青色顔料(クラリアント社製 Polysynthren Blue RBL)及び赤色顔料(クラリアント社製 Sandplast Red G)を生成するポリエステル樹脂中の濃度がいずれも5ppmとなるように添加し、次いでモンモリロナイト(クニミネ工業社製、クニピアF)を生成するポリエステル樹脂中の濃度が1重量%となるように添加した。以後は実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0050】
実施例7
攪拌機及び留出管を備えた反応器に、ジメチルテレフタレート46.7kg、エチレングリコール32.0kg及びイソソルバイド4.22kgを仕込んだ。これに酢酸マンガン4水塩、酢酸コバルト4水塩及び三酸化アンチモンを、生成するポリエステル樹脂中の濃度がマンガン原子が83ppm、コバルト原子が63ppm、アンチモン原子が368ppmとなるように添加した。反応器内を窒素で置換したのち、常圧下で内温を1時間かけて150℃まで、次いで更に2時間かけて250℃まで上昇させ、この温度に保持してメタノールを留出させつつエステル交換反応させた。メタノールが留出しなくなった時点で、反応液を攪拌機及び減圧装置を備えた重縮合槽に移送した。この重縮合槽にポリリン酸のエチレングリコール溶液(濃度10重量%)を、生成するポリエステル樹脂中のリン濃度が78ppmとなるように添加し、更にポリエチレン(日本ポリケム社製、UE320)を生成するポリエステル樹脂中の濃度が40ppbとなるように添加した。昇温しながら徐々に減圧にし、2時間かけて285℃、100Paに到達させ、以後はこの条件下で固有粘度が0.50dl/gとなるまで重縮合反応させた。生成した重縮合物を槽の底部に設けた抜出し口からストランド状に抜出し、水冷したのちカッターで切断して約40kgのプレポリマー粒子(平均粒重15mg)を製造した。以後は実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0051】
比較例1
実施例1において、ポリエチレンを添加しない以外は実施例1と同様に行った。しかし得られたプレポリマー粒子は固相重縮合に際しての結晶化処理で粒子同士が融着を起こしたので、ボトルの成形は行わなかった。
比較例2
実施例7において、ポリエチレンを添加しない以外は実施例7と同様に行った。しかし、この場合も得られたプレポリマーは固相重縮合に際しての結晶化処理で粒子同士が融着を起こしたので、ボトルの成形は行わなかった。
【0052】
比較例3
実施例7において、ポリエチレンを添加しない以外は実施例1と同様にしてプレポリマー粒子を製造した。このプレポリマー粒子をタンブルドライヤー(tumbledryer)に入れて、窒素流通下で4時間かけて115℃に昇温し、次いでこの温度に6時間保持して結晶化処理を行った。結晶化処理を経たプレポリマー粒子を静置固相重合塔に入れ、20L/kg・hrの窒素流通下、約140℃で3時間乾燥し、次いで205℃で15時間固相重合した。結果を表−1に示す。結晶化処理では粒子同士の融着は生じなかったが、処理に長時間を要したためか得られたポリエステル樹脂に黄変が認められた。
【0053】
比較例4
テレフタル酸40kgとエチレングリコール21.0kgを混合してスラリーとした。攪拌機及び留出管が付設されており、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約50kgが仕込まれていて、窒素雰囲気下にあり、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されているエステル化反応槽に、上記のスラリーを4時間かけて供給した。供給終了後、1時間かけて内温を265℃まで上昇させた。この間、留出管からは副生した水とエチレングリコールを留出させた。
【0054】
攪拌機及び減圧装置を備えた重縮合槽に上記で得られたエステル化反応生成物50kgを移送した。次いでこの重縮合槽に、エチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液及び二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液を、生成するポリエステル中のリン原子の濃度が45ppm、ゲルマニウム原子の濃度が106ppmとなるように、5分間隔で順次添加した。系内を1時間かけて常圧から400Paに減圧し、同時に温度は2時間30分かけて265℃から280℃に昇温させた。以後はこの温度、圧力条件下で生成するプレポリマーの固有粘度が0.58dl/gとなるまで重縮合反応させた。生成した重縮合反応物は槽の底部に設けた抜出し口からストランド状に抜出し、水冷したのちカッターで切断して約40kgのプレポリマー粒子(平均粒重15mg)を製造した。以後は実施例1と同様に行った。結果を表−1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を含むジカルボン酸成分と、イソソルバイドを含むジオール成分とを反応させてポリエステル前駆体を生成させる工程、このポリエステル前駆体を重縮合触媒の存在下に溶融重縮合させてプレポリマーを生成させる工程、このプレポリマーを粒状化させてプレポリマー粒子とする工程、及びこのプレポリマー粒子を結晶化させたのち固相重縮合させる固相重縮合工程の各工程を含むポリエステル樹脂の製造方法において、プレポリマーを粒状化させる以前の任意の工程で反応系に結晶化促進剤を添加することにより、昇温時結晶化温度が140℃以上で180℃以下であり、かつ降温時結晶化温度が190℃以下であるか又は存在しないプレポリマー粒子を生成させ、これを固相重縮合に供することを特徴とする方法。
【請求項2】
テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を主体とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主体としかつイソソルバイドを含むジオール成分とを反応させてポリエステル前駆体を生成させる工程、このポリエステル前駆体を重縮合触媒の存在下に溶融重縮合させてプレポリマーを生成させる工程、このプレポリマーを粒状化させてプレポリマー粒子とする工程、及びこのプレポリマー粒子を結晶化させたのち固相重縮合させる固相重縮合工程の各工程を含む、ジカルボン酸成分の95モル%以上がテレフタル酸であり、ジオール成分の80モル%以上で99.5モル%以下がエチレングリコールであり、かつ0.5モル%以上で20モル%以下がイソソルバイドであるポリエステル樹脂の製造方法において、プレポリマーを粒状化させる以前の任意の工程で反応系に結晶化促進剤を添加することにより、昇温時結晶化温度が140℃以上で180℃以下であり、かつ降温時結晶化温度が190℃以下であるか又は存在しないプレポリマー粒子を生成させ、これを固相重縮合に供することを特徴とする方法。
【請求項3】
ポリエステル樹脂のジオール成分の85〜98モル%がエチレングリコールであり、かつ2.0〜15モル%がイソソルバイドであることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分の97モル%以上がテレフタル酸であり、ジオール成分の90〜96モル%がエチレングリコールであり、かつ4.0〜10モル%がイソソルバイドであることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
昇温時結晶化温度が150℃以上で175℃以下であり、かつ降温時結晶化温度が180℃以下であるか又は存在しないプレポリマー粒子を生成させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
結晶化促進剤が、赤外線吸収剤、色剤又は結晶核剤であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
結晶化促進剤として、カーボンブラック、フラーレン及び四三酸化鉄より成る群から選ばれた赤外線吸収剤を、生成するポリエステル樹脂中の濃度が1ppm以上で100ppm以下となるように添加することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
結晶化促進剤として有機色剤を、生成するポリエステル樹脂の明度指数L及び色座標a、bの値が下記の範囲となるように添加することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
L値:70以上で90以下
a値:−3以上で3以下
b値:−3以上で3以下
【請求項9】
結晶化促進剤として、結晶性熱可塑性樹脂及び層状粘土鉱物よりなる群から選ばれた結晶核剤を添加することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
結晶化促進剤として、ポリオレフィン及びポリアミドよりなる群から選ばれた結晶核剤を、生成するポリエステル樹脂中の濃度が1000ppm以下となるように添加することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
結晶化促進剤として、モンモリロナイト、カオリナイト、ハロイサイト、バーミキュライト及び雲母鉱物より成る群から選ばれた結晶核剤を添加することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
溶融重縮合により固有粘度が0.15dl/g以上で、0.65dl/g以下のプレポリマーを生成させ、これを平均粒重が0.5mg以上で18mg以下となるように粒状化させることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
固相重縮合を、生成するポリエステル樹脂の固有粘度が0.73dl/g以上で1.5dl/g以下となるように行うことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
重縮合触媒として、ゲルマニウム、アンチモン及びチタンよりなる群から選ばれた金属の化合物、アルカリ金属及びアルカリ土類金属よりなる群から選ばれた金属の化合物、並びにリン化合物を、生成するポリエステル樹脂が下記式を満足するように反応系に存在させることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の方法。
0.025≦T/20+G/280+S/250≦1
0≦M≦(T/20+G/280+S/250)×40
0.5≦P≦40
(式中、Tはチタン元素、Gはゲルマニウム元素、Sはアンチモン元素、Pはリン元素、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の濃度(重量ppm)を示す。)

【公開番号】特開2006−70184(P2006−70184A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256072(P2004−256072)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】