説明

ポリエステル製延伸発泡容器

【課題】不活性ガスを含浸させての加熱により形成された発泡層を有していながら、胴部表面での割れなどの成形不良が有効に防止されているポリエステル製延伸発泡容器を提供する。
【解決手段】不活性ガスを含浸させての加熱により発泡セルが分布している発泡層を有している胴部を備えたポリエステル製延伸発泡容器において、前記胴部の外表面には、発泡セルが存在していない表皮層が形成されており、該表皮層の表面は、赤外光とゲルマニウムプリズムとを用いた全反射吸収法により、該外表面に対して入射角45度で赤外光を照射したとき、下記式(1):
R=I1340/I1409 …(1)
式中、I1340は、波数が1340±2cm−1の領域のCHの縦揺れ振動モー
ドに対応するピークの吸光度を示し、
1409は、波数が1409±2cm−1の領域のレファレンスピークの吸
光度を示し、
で定義される吸光度比Rが1.30以下となる赤外吸収特性を示すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル製延伸発泡容器に関するものであり、より詳細には、マイクロセルラー技術を利用して発泡されているポリエステル製延伸発泡容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル容器は、透明性、耐熱性、ガス遮断性等の特性に優れており、種々の用途に広く使用されている。
【0003】
一方、近年では、資源の再利用が強く求められ、上記のようなポリエステル容器に関しても、使用済みの容器を回収し、リサイクル樹脂として種々の用途への再利用が図られている。ところで、包装容器内に収容される内容物については、光により変質しやすいもの、例えばある種の飲料、医薬品、化粧品などは、顔料等の着色剤を樹脂に配合した樹脂組成物を用いて成形された不透明容器に収容されて提供される。しかるに、資源の再利用の点からは、着色剤の配合は望ましくなく(リサイクル樹脂に透明性を確保することが困難となってしまう)、このため、透明容器の使用が要求されているのが現状であり、従って、光変質性の内容物の収容に適した不透明性容器についてもリサイクル適性の改善が必要である。
【0004】
着色剤を配合せずに遮光性(不透明性)を付与するためには、容器壁に気泡を存在させて発泡容器とすることが考えられ、このような発泡容器も種々提案されており、例えば、特許文献1には化学発泡剤を用いた発泡押出ブロー技術、特許文献2〜3には、ポリエステル樹脂に不活性ガスを含浸した後に加熱することにより発泡を行うマイクロセルラー技術を利用して得られる発泡成形品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−26137号
【特許文献2】特開2005−246822号
【特許文献3】特開2006−321887号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2〜3等で利用されているマイクロセルラー技術は、特許文献1で利用されている所謂化学発泡などと比較して極めて微細な発泡セルを形成することができるため、容器等の分野での実用化が期待されているものであるが、実用化にあたっては、未だ解決すべき課題が残されている。
【0007】
即ち、特許文献2〜3などで提案されている技術をポリエステル製延伸容器に適用する場合には、得られた発泡成形品(プリフォーム)を延伸成形することにより容器の形状に成形する。この延伸成形は、発泡成形品をポリエステルのガラス転移点(Tg)以上で熱結晶化温度未満の領域に加熱した状態での延伸操作により行われることとなるが、得られる延伸成形体の表面には、割れなどの成形不良が生じ易いという問題がある。特に、このような成形不良が容器の外面に生成していると、容器の商品価値が損なわれてしまい、販売に供することができなくなってしまう。
【0008】
また、上記のような延伸成形によって、発泡セルの大きさにバラツキを生じ、各種特性が不安定になるという問題もある。具体的には、発泡セルの大きさが均一でないため、延伸成形体の部位によって遮光性(光線透過率)が異なっていたり、或いは強度、気泡率などにもばらつきを生じてしまい、安定して一定の特性を有する延伸成形体を得ることが困難となっているのが実情である。
【0009】
従って、本発明の目的は、不活性ガスを含浸させての加熱により形成された発泡層を有していながら、胴部表面での割れなどの成形不良が有効に防止されているポリエステル製延伸発泡容器を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の発泡層において、微細かつ均一な大きさの発泡セルが分布しているポリエステル製延伸発泡容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、ポリエステル製延伸発泡容器における胴部表面での割れやブリスターなどの成形不良が生じる原因について検討を行った結果、発泡のためにポリエステル中に溶解した炭酸ガス等の不活性ガスが延伸成形に際して結晶化を促進し、この結晶化により、表面の割れが発生するという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明によれば、不活性ガスを含浸させての加熱により発泡セルが分布している発泡層を有している胴部を備えたポリエステル製延伸発泡容器において、
前記胴部の外表面には、発泡セルが存在していない表皮層が形成されており、該表皮層の表面は、赤外光とゲルマニウムプリズムとを用いた全反射吸収法により、該外表面に対して入射角45度で赤外光を照射したとき、下記式(1):
R=I1340/I1409 …(1)
式中、I1340は、波数が1340±2cm−1の領域のCHの縦揺れ振動モー
ドに対応するピークの吸光度を示し、
1409は、波数が1409±2cm−1の領域のレファレンスピークの吸
光度を示し、
で定義される吸光度比Rが1.30以下となる赤外吸収特性を示すことを特徴とするポリエステル製延伸発泡容器が提供される。
【0012】
本発明のポリエステル製延伸発泡容器においては、
(1)前記発泡層に形成されている発泡セルは、胴部厚み方向での平均径が1乃至15μmで且つ標準偏差が10μm以下となるような粒度分布を有していること、
(2)前記胴部の厚み方向中心部分には、発泡セルが分布していない非発泡層が形成されていること、
(3)前記胴部は、500nmの波長の光に対して50%以下の光線透過率を有していること、
が好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリエステル製延伸発泡容器においては、胴部外表面に発泡セルが存在していない表皮層が形成されていると同時に、赤外光とゲルマニウム(Ge)プリズムとを用いての全反射法(入射角45度)により、胴部の外表面から反射光の赤外吸収スペクトルを解析したとき、吸光度比Rが1.30以下、好ましくは1.25以下であるという点に顕著な特徴を有している。
【0014】
即ち、Geプリズムを試料の表面(容器の胴部外表面)に押し当てて赤外光を全反射条件で入射すると、試料表面(即ち、プリズムと試料との境界)で赤外光が反射する際に、僅かではあるが赤外線が試料表面に浸透し(エバネッセンス光)、そこで吸収が起こる。従って、この反射光を解析することで試料表面の赤外吸収スペクトル情報を得ることができるのであり、ポリエステルでは、吸光度I1340のピーク強度は、その結晶化度が高いほど大きな値となり、一方、レファレンスピークの吸光度I1409は、ポリエステルの配向や結晶化度に依存しないことが知られている。
【0015】
しかるに、不活性ガスをポリエステルに含浸させ、これを加熱することにより発泡層が形成されている従来公知のポリエステル製延伸発泡容器では、表面に未発泡の表皮層を形成したとしても、延伸成形時に存在する不活性ガスの影響により、加熱に伴い表面の結晶化が促進されてしまい、この結果、上記の吸光度比R(I1340/I1409)が1.3よりも高い値となってしまい、延伸成形によって表面に割れ等が発生してしまう。これに対して、本発明においては、延伸成形に先立って不活性ガスの放出が行われ、これによって、延伸成形に際してのポリエステルの結晶化が効果的に抑制され、吸光度比R(I1340/I1409)が上記範囲のような低い値となり、この結果として、延伸成形時に発生する表面の割れ等の不都合が有効に防止されているのである。
【0016】
また、上記のような低い値に吸光度比Rが調整されている本発明のポリエステル製延伸発泡成形容器では、延伸成形されているにもかかわらず、発泡層中の発泡セルの大きさを均一にすることができ、例えば、発泡層の厚み方向での発泡セルの粒度分布を、セル平均径が1乃至15μmで且つその標準偏差が10μm以下となるような著しく微細で且つシャープなものとすることができ、発泡セルの大きさのバラツキを有効に抑制することができる。このため、本発明では、発泡セルに由来する各種特性、例えば、光透過率、気泡率、強度、ガス透過性などにバラツキがなく、安定した特性が得られ、表面割れの発生がないという利点に加えて、極めて高い商品価値を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の延伸発泡容器の製造プロセスの基本工程を示す図。
【図2】本発明の延伸発泡容器の製造過程で作製される発泡プリフォームにおける発泡領域の層構造の一例を示す図。
【図3】本発明の延伸発泡容器の代表例であるブローボトル及び該ボトルの製造過程で作製されるプリフォームを示す図。
【図4】吸光度比R(I1340/I1409)の測定原理を説明するための図。
【図5】全反射吸収法で得られる赤外吸収スペクトルの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<ポリエステル延伸発泡容器の製造>
前述した吸光度比R(I1340/I1409)を有する本発明のポリエステル製延伸発泡容器は、原料ポリエステルから形成され且つ発泡剤となる不活性ガスが含浸されているプリフォームを加熱して発泡させ、次いで該プリフォームを延伸成形することにより製造されるが、延伸成形に先立って、プリフォーム中に残存溶解している不活性ガスを放出しておくことが重要であり、これにより、延伸成形に際しての結晶化を抑制し、吸光度比Rを前述した1.3以下、特に1.25以下の範囲とし、延伸成形に際しての表面割れの発生を有効に防止することが可能となるわけである。
【0019】
本発明において、原料ポリエステルとしては、不活性ガスの含浸が可能である限り特に制限されず、それ自体公知のポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0020】
また、本発明のポリエステル延伸発泡容器の製造プロセスは、具体的には、図1に示した工程にしたがって実施される。
【0021】
先ず、上述したポリエステルにより作製された非発泡プリフォーム1を用意し、この非発泡プリフォーム1を高圧下におき、不活性ガス(例えば炭酸ガスや窒素ガス)を含浸させ、不活性ガスを溶解させる(工程(a))。
【0022】
非発泡プリフォーム1は、押出し成形、射出成形、圧縮成形などの公知の成形手段により成形することができ、一般に、ボトル形状の容器を製造する場合には、試験管形状を有しており、カップ形状の容器を製造する場合には、板状形状や椀形状を有している。勿論、ガスバリア層などを備えた多層構造を有する容器を製造する場合には、この非発泡プリフォーム1は、共押出し、共射出などにより、それに対応する多層構造を有するように成形される。また、最終的に成形される容器が袋状のものである場合には、この非発泡プリフォーム1は、シート乃至フィルム形状であってよく、最終的に成形される容器の形状に応じて、任意の形状であってよい。
【0023】
かかる工程(a)における非発泡プリフォーム1への不活性ガスの含浸は、最終的に成形される容器の胴部での発泡層中に存在させる偏平状の発泡セルの個数に応じて、十分な量のガスを溶解させるように行われる。例えば、発泡セルの個数を多くして遮光性を高める場合には、ガスの含浸量を多くし、そうでない場合には、ガスの含浸量は少なく設定される。具体的には、非発泡プリフォーム1を加熱して高圧下での不活性ガスの含浸を行うこともできるし、非加熱下で行うこともできる。この場合、この温度が高いほど、ガスの溶解量は少ないが含浸速度は速く、温度が低いほどガスの溶解量は多いが、含浸には時間がかかることとなる。また、ガス溶解に伴いプリフォーム表面の結晶化度が高まり、後の発泡工程(工程(c))で表皮層7を形成することがあるが、不活性ガスの含浸温度が高いほどこの傾向が強まるので所望の発泡層構造となるよう適宜ガス含浸条件を調整する。
【0024】
尚、加熱下でガスの含浸を行う場合には、非発泡プリフォーム1の温度が原料ポリエステルの熱結晶化温度以上とならないように行うべきである。結晶化温度以上に加熱してしまうと、過度な結晶化が生じ、以下の発泡工程における発泡が制限されるばかりか、前述した吸光度比Rが所定の範囲となるように結晶化を抑制することが困難となるおそれがあるからである。
【0025】
また、不活性ガスが含浸された非発泡プリフォーム1は、原料ポリエステルを用いて非発泡プリフォームを成形する際、押出機や射出成形機などの溶融混練部に不活性ガスを高圧で供給して樹脂に含浸せしめ、この状態で成形を行うことによって得ることもできる。
【0026】
次いで、この非発泡プリフォーム1を、加熱発泡させるのであるが、この加熱発泡に先立って、不活性ガスの一部を放出する(工程(b))。即ち、この工程(b)では、不活性ガスが含浸された非発泡プリフォーム1を、冷却固化した状態で所定時間、常圧下(大気圧)に開放することにより、その表面から不活性ガスが放出され、これによって、不活性ガスが溶解していないかあるいは不活性ガス濃度が低くなった表層部3が形成されることとなる。常圧、常温下での不活性ガスの溶解度はほとんどゼロであるから、冷却固化されている非発泡プリフォーム1を常圧下に保持することにより、該プリフォーム1の表面から不活性ガスが徐々に放出され、上記のような表層部3が形成されることとなるわけである。以下の加熱発泡工程(c)により非発泡プリフォーム1の全体が発泡してしまうと、その表面に発泡による凹凸が形成されてしまい、平滑性が損なわれてしまうため、外観が損なわれたり、或いは印刷適正が低下してしまうなどの問題を生じるが、上記のようにして表層部3を形成しておくことにより、最終的に形成される容器の外表面(特に胴部表面)に、発泡セルが分布していない表皮層を形成することができ、発泡による表面平滑性の低下を回避することができる。
【0027】
尚、上記の表層部3の厚みは、冷却固化した状態での常圧下に開放する時間によって調整することができる。即ち、この開放時間が長いほど、表層部3の厚みが大となり、開放時間が短いほど、表層部3の厚みは薄くなる。但し、この開放時間をあまり長くすると、不活性ガスがほとんど放出されてしまい、遮光性等の目的とする特性を得るに足る数の発泡セルを形成することが困難となってしまうので注意を要する。
【0028】
また、図1の例では、非発泡プリフォーム1の両面(外表面側及び内表面側)に表層部3が形成されているが、外表面側にのみ表層部3を形成することもでき、これにより、外表面にのみ発泡セルが分布していない表皮層を有する延伸発泡容器を得ることができる。例えば、試験管形状の非発泡プリフォーム1の口部を閉じた状態で常圧下に開放したり、或いは板形状の非発泡プリフォーム1の内面側を適当な支持部材に密着させ、外表面のみを常圧の雰囲気に曝すことにより、外表面側にのみ表層部3が形成され、従って、外表面側にのみ表皮層を有する延伸発泡容器を得ることができる。
【0029】
次いで、上記のような表層部3が形成された非発泡プリフォーム1を、オイルバスや赤外線ヒータなどを用いて加熱することにより発泡成形を行う(工程(c))。この加熱により、不活性ガスが残存している非発泡プリフォーム1の内部において発泡を生じ、発泡セルAが分布した発泡層5を有する発泡プリフォーム10が得られる。この場合において、非発泡プリフォーム1の表層部3では不活性ガスが存在していないかまたはその濃度が低い為に、加熱しても発泡しないかよほど注意深く観察しないと気泡が確認できない程度の実質的に発泡していない状態となり、発泡プリフォーム10中に発泡セルAが存在していない未発泡領域としてそのまま残り、表皮層7が形成されることとなる。
【0030】
発泡のための加熱の温度は、非発泡プリフォーム1を形成しているポリエステルのガラス転移点以上であり、このような加熱により、樹脂中に溶解している不活性ガスの内部エネルギー(自由エネルギー)の急激な変化がもたらされ、相分離が引き起こされ、気泡として樹脂体と分離するため発泡が生じることとなる。尚、この加熱温度は、当然、発泡プリフォーム10の変形を防止するために、融点以下、好ましくは200℃以下とするのがよい。この加熱温度が高すぎると、加熱後急激に発泡するためセル径の制御が難しくなり、外観も悪化し、さらには結晶化が進み二次成形性が低下する問題が発生し、さらには、吸光度比Rが所定の範囲となるように結晶化を抑制することが困難となる。
【0031】
上記のようにして発泡プリフォーム10中に形成される発泡セルA(以下、球状発泡セルと呼ぶことがある)は実質的に球形状であり、等方に分布している。このため、この段階では、遮光性は発現しているが、発泡層5の厚み方向に対して、オーバーラップしている発泡セルAの個数が少ない部分も存在し、従って、発泡プリフォーム10における発泡部位によって、この発泡層5を透過する光の散乱や多重反射の度合いにバラツキを生じ、遮光性の均一性が低い。しかるに、このような不都合は、後述する延伸成形によって、発泡プリフォーム10中の発泡セルAを偏平状に引き伸ばすことにより、常に一定数以上の発泡セルを厚み方向でオーバーラップさせることができ、遮光性の均一性を確保することができる。
【0032】
また、発泡層5における球状発泡セルAのセル密度(表皮層7を除く領域での密度)は、前述した不活性ガスの溶解量に依存し、この溶解量が多いほど、セル密度を高くし、また球状発泡セルの径を小さくすることができ、溶解量が少ないほど、セル密度は小さく、発泡セルAの径は大きくなる。また、球状発泡セルAの径は、上記の加熱時間により調整することができ、例えば、発泡のための加熱時間が長いほど、球状発泡セルAの径は大きく、加熱時間が短いほど、球状発泡セルAは小径となる。本発明においては、一般に、後述する500nmの波長の光に対する透過率が50%以下となるように上記の条件が調整されるが、後述する延伸成形により、この透過率を15%以下、特に10%以下、さらには5%以下として著しく高い遮光性を付与するためには、例えば、発泡層5における球状発泡セルAのセル密度が10乃至1010cells/cm程度とし、平均径が3乃至50μm程度となるように設定することが、安定して高い遮光性を付与する上で好適である。
【0033】
また、この発泡工程(c)において、発泡のための加熱を非発泡プリフォーム1の内面側から行う場合には、球状発泡セルAは、内面側から順次形成される。従って、これを利用して、前述した不活性ガスの放出(工程(b))を行わずに、外面側に球状発泡セルAが存在しない表皮層7を形成することができる。即ち、非発泡プリフォーム1の厚みの全体にわたって球状発泡セルAが形成されるまえの段階で、加熱を停止すれば、外面側のみに表皮層7を有する発泡プリフォーム10を得ることができる。
【0034】
また、図1(c)に示されている発泡プリフォーム1は、発泡セルAが分布していない2つの表皮層7,7の間に発泡層5が存在する3層構造を有しているが、図2に示されているように、中心部に発泡セルAが分布していない芯層9を有する層構造、即ち、表皮層7/発泡層5/芯層9/発泡層5/表皮層7の5層構造とすることもできる。
【0035】
例えば、前述した不活性ガスの含浸工程(a)において、非発泡プリフォーム1の壁の中心部分にまでガスが浸透する前に、高圧の雰囲気を常圧に戻して含浸処理を停止すれば、上記のような5層構造を形成することができる。即ち、非発泡プリフォーム1の壁の中心部分には、発泡源となる不活性ガスが存在していないため、前述した不活性ガスの放出工程(b)及び発泡工程(c)を行うことにより、壁の中心部に球状発泡セルAが存在していない芯層9が形成され、外面側及び内面側のそれぞれに形成された表皮層7と芯層9との間に球状発泡セルAが分布した発泡層5が存在する5層構造が形成される。特に、このような発泡セルが存在していない芯層9の形成は、発泡による強度低下を抑制する上で好適である。
【0036】
また、発泡工程(c)においては、発泡のための加熱を、熱風の吹き付けなどによって非発泡プリフォーム1の両面(外面側と内面側)から行うことができるが、このような場合、表層部3を除く内部全体に球状発泡セルAが形成される前の段階で加熱を停止することにより、中心部分に球状発泡セルAが形成されていない芯層9を形成することができ、このような方法によっても、図2に示すような5層構造を有する発泡プリフォーム10を形成することができる。
【0037】
さらに、上記の発泡工程(c)において、非発泡プリフォーム1の一部分を選択的に加熱することにより、壁の内部に発泡セルが存在している発泡領域と発泡セルが存在していない非発泡領域とを有する発泡プリフォーム10を得ることができる。例えば、オイルバスや赤外線ヒータなどを用いて加熱する際、容器形成用プリフォームの容器首部に相当する部分を加熱せず、容器の胴部や底部に相当する部分を選択的に加熱することにより、胴部及び底部に相当する部分が発泡領域となっており、首部に相当する部分が非発泡領域となっている容器用発泡プリフォーム10を得ることができる。
【0038】
本発明においては、上記の発泡工程(c)の後、ガス放出工程(d)において、発泡プリフォーム10に残存する不活性ガスを放出する。即ち、発泡工程(c)による加熱発泡が行われた後、直ちに延伸成形を行わず、一旦、発泡プリフォーム10を冷却固化状態に復帰させ、この状態で大気圧下に保持し、前述した工程(b)と同様にして不活性ガスを放出するわけである。上記のようにして得られた発泡プリフォーム10中の発泡セルA中には不活性ガスが包蔵されており、これをそのまま延伸成形した場合には、延伸成形に際しての加熱によって、残存する不活性ガスの影響により表皮層7での結晶化が促進され、従って、前述した吸光度比R(I1340/I1409)が所定の範囲よりも高い値となり、外表面に割れが発生したり、包蔵されているガスが不必要に多い場合にはブリスター(膨れ)不良などの発生頻度が著しく増大してしまう。また、延伸成形での加熱によって再び発泡が生じ、発泡セルAの成長や新たな発泡セルAの生成などが生じてしまうが、本発明では、延伸成形に先立って残存するガスを放出しておくことにより、延伸成形時の発泡を確実に防止することができることとなる。
【0039】
上記の説明から理解されるように、かかるガス放出工程(d)では、発泡プリフォーム10中の発泡セルAを成長させることなく、残存するガスを次の延伸成形工程(e)でセルが過度に成長しない程度にまで放出することが必要であり、このために、発泡プリフォーム10が冷却固化した状態で、大気圧下に長時間保持せしめる。具体的な条件は、発泡プリフォーム10の大きさ(特に発泡領域の大きさ)やガス含浸量などによっても異なり、一概に規定することはできないが、一般に40℃以下の温度で、1日間以上、特に3乃至7日間程度、大気圧下に保持しておけばよい。
【0040】
本発明では、ガス放出を行った後に、発泡プリフォーム10を延伸成形工程(e)に供することにより目的とするポリエステル製延伸発泡容器20が得られる。この延伸成形は、それ自体公知の方法で行われ、樹脂のガラス転移温度(Tg)以上、結晶化温度未満の温度にプリフォームを加熱してのブロー成形或いはプラグアシスト成形に代表される真空成形などによって延伸され、これにより、球状の発泡セルAが偏平形状に変形した発泡セルBが分布した発泡層25が器壁、特に胴部に形成されている容器を得ることができる。また、延伸成形温度は、結晶化温度未満に設定することが絶対的条件であるが、結晶化を抑制して吸光度比R(I1340/I1409)を所定の値に抑制するためには、延伸成形温度は可及的に低いことが望ましく、例えば120℃以下の温度とすることが好適である。
【0041】
即ち、上記の延伸発泡容器20の発泡領域は、発泡プリフォーム10の発泡領域に対応した層構造を有しており、例えば図1では、発泡セルBが存在していない表皮層27と内部に発泡セルBが分布した発泡層25を有する3層構造が示されている。従って、図2に示す5層構造の発泡プリフォーム10を延伸成形したときには、発泡層25の中心部に発泡セルBが分布していない芯層を有する5層構造の延伸発泡成形体が得られることとなる。
【0042】
延伸は、例えば最大延伸方向に沿った断面での発泡セルBの厚みtや長径Lが適当な範囲となるように、発泡プリフォーム10中の球状発泡セルAの径やセル密度などに応じて、適度な延伸倍率で行われ、これにより、発泡層35の全体にわたって、多数の発泡セルBが厚み方向でオーバーラップするようになり、従って、発泡層5が形成されている領域全体にわたってもれなく高い遮光性が発現することとなる。例えば、軸方向(高さ方向)及び周方向の二軸方向に延伸されるブロー成形では、通常、この方向での延伸倍率が2乃至4倍程度となるように延伸され、軸方向のみについて一軸方向に延伸が行われるプラグアシスト成形などでは、この方向での延伸が最大延伸方向となり、上記と同様の延伸倍率で延伸が行われることが好適である。
【0043】
尚、上述した方法によって延伸発泡容器を製造するにあたっては、不活性ガスの溶解量が増大するにしたがい、樹脂のガラス転移点は直線的或いは指数関数的に減少する。また、ガスの溶解によって樹脂の粘弾性も変化し、例えばガス溶解量の増大によって樹脂の粘度が低下する。従って、このような不活性ガスの溶解量を考慮して、各種条件を設定すべきである。
【0044】
本発明において、上記のようにして製造される延伸発泡容器では、延伸成形時での発泡セルAの成長や新たな発泡セルの生成が有効に抑制されているため、偏平状の発泡セルBの大きさはかなり均一であり、最大延伸方向に沿った断面を顕微鏡観察して発泡セルBの厚みtを測定すると、その標準偏差は極めて小さく、著しくシャープな粒度分布を示す。例えば、後述する延伸成形容器では、高い遮光性と安定した特性を確保するために、上記厚みtの平均が1乃至15μmとなるように各種条件を設定することが好ましく、この場合の標準偏差は、10μm以下、特に5μm以下となる。また発泡セルの厚みtは大きなものでも30μm以下と従来の方法に比べて微細なものとなっている。従って、本発明方法で得られる延伸発泡容器は、これを量産したとき、各種の物性のバラツキが極めて小さく、工業的に極めて有用である。
【0045】
上述した方法により製造される本発明のポリエステル製延伸発泡容器は、先にも述べたように、ボトル、カップ或いはパウチ(袋状容器)の形態を取り得るが、パウチの場合には、上記のようにして得られる延伸発泡シートフィルム乃至シートを、常法にしたがってヒートシールによって貼り合せて袋状の容器の形態とすればよい。
【0046】
<延伸発泡成形容器>
本発明のポリエステル製延伸発泡容器は、特にボトルとして極めて有用である。このようなボトルを例にとって本発明の容器を説明すると、かかる容器は、図3に示されているように、前述した不活性ガスの含浸及び加熱発泡を行って、試験管形状の容器用発泡プリフォーム50を形成し、このプリフォーム50から残存するガスを放出せしめた後、延伸成形を行ってブローボトル60として得られる。
【0047】
上記の発泡プリフォーム50は、首部51、胴部53及び底部55とからなっており、首部51には、螺子部51a及びサポートリング51bが形成されており、サポートリング51bより下の部分が胴部53となっている。
【0048】
上記のプリフォーム50では、発泡に際しての選択的部分加熱によって胴部53及び底部55が、前述した球形状発泡セルAが分布している発泡領域となっており、首部51が発泡セルが存在していない非発泡領域となっている。即ち、このプリフォーム50では、胴部53及び底部55が発泡により不透明に形成されており、発泡領域での外表面には、発泡層を有していない表皮層(図3において省略)が形成されている。
【0049】
従って、上記のようなプリフォーム50からガスを完全に放出した後に延伸成形(ブロー成形)することにより得られる発泡ブローボトル60では、螺子部61a及びサポートリング61bを備えた首部61(前記プリフォーム50の首部51に対応)と、多数の偏平状発泡セルBが分布しており且つ膨張している胴部63及び底部65を有している。
【0050】
このような発泡ブローボトル60の首部61は、発泡セルBが形成されていないため、高い透明性を示すばかりか、キャップとの螺子係合に際しての破損や変形が防止され、高い密封性を示す。
【0051】
また、発泡領域となっている胴部63及び底部65は、延伸方向に引き伸ばされた形状の発泡セルBを有しているため、高い遮光性を示し、例えば波長500nmの可視光線に対しての光線透過率が50%以下であるが、各種条件を調整して、胴部53及び底部65において、発泡セルBの平均長径L(最大延伸方向に沿った長さ)を400μm以下、特に200μm以下とし、且つ厚みtを前述した1乃至15μmの範囲として、厚み方向に重なり合って存在している発泡セルBの個数が17個以上、好ましくは30個以上、最も好適には50個以上に設定されていることが好適であり、これにより、光の散乱及び多重反射が増幅され、上記可視光線に対しての光線透過率が15%以下、特に10%以下、最も好適には5%以下となり、紙容器にも匹敵する高い遮光性が付与される。
【0052】
さらに、この発泡領域では、前述した表皮層/発泡層/芯層/発泡層/表皮層の5層構造に設定されていることが好ましく、これにより、発泡領域(胴部63及び底部65)での表面平滑性を確保することができ、特に胴部63での印刷適正を良好なものとし、外観特性の優れた商品価値の高いものとすることができ、さらには、芯層の形成により、発泡によるガスバリア性の低下や強度低下を有効に回避することができる。特に、遮光性を損なうことなく高いガスバリア性を維持せしめるためには、胴部63の厚みの5乃至25%が発泡層となっており、残りの部分が芯層及び表皮層となっていることが好適である。
【0053】
上述した容器は、発泡セルBの大きさ、特に厚みtが微細であり、しかもその標準偏差が極めて小さく、10μm以下、特に5μm以下であるため、各種物性が安定しており、多数の容器を製造した場合において、その遮光性、強度、ガスバリア性等の特性のバラツキが少ない。
【0054】
また、本発明のポリエステル製延伸発泡容器の最大の特徴は、少なくとも胴部の外表面に発泡セルの存在していない未発泡の表皮層が存在しており、表面の平滑性に優れていると同時に、この胴部外表面(即ち、表皮層の表面)の吸光度比R(I1340/I1409)が1.3以下、好ましくは1.25以下となっている点にある。
【0055】
この吸光度比Rは、図4に示されているように、例えばボトルの胴部63から切り出された試料片の表面(外表面)に、Geプリズムを押し当てて赤外光を全反射条件で45度の入射角で入射させ、その反射光から得られる図5に示されるような赤外吸収スペクトルの波数が1340±2cm−1の領域のCHの縦揺れ振動モードに対応するピークの吸光度I1340(結晶化されているほど大きな値となる)、波数が1409±2cm−1の領域のレファレンスピークの吸光度I1409(結晶化の影響を受けない)の比として算出される。即ち、プリズムを介して試料の外表面に入射した赤外光は、外表面層の表面で反射する際に僅かに外表面から内部に浸透するが、この外表面には、発泡セルが存在していない未発泡の表皮層となっている。従って、この反射光の赤外吸収スペクトルは、発泡セルによる散乱の影響を受けず、上記の吸光度比Rを算出することにより結晶化の程度を認識することができることとなる。
【0056】
即ち、前述した方法で得られる本発明の延伸発泡容器では、不活性ガスの含浸を利用して発泡層が形成されているものの、延伸に先立って、含浸した不活性ガスが効果的に放出されているため、延伸に際しての不活性ガスによる結晶化促進が有効に抑制され、この結果、上記の吸光度比Rが従来公知の延伸発泡容器と比較してかなり低い値に抑制されているわけである。
【0057】
このように、本発明の延伸発泡容器では、少なくとも胴部外表面層の結晶化が有効に抑制されているため、延伸成形に際して、その表面が成形型に沿ってスムーズに流動することとなり、延伸成形時の表面割れなどの発生が有効に防止されているのである。
【0058】
尚、上述した図3に示されているボトル60では、発泡プリフォーム50を製造する際の部分加熱によって、胴部63のみを発泡領域として、首部61と共に底部65も非発泡領域とすることができる。特に、ボトル60の底部には、袴部材を設けて正立安定性を高めることがあり、このような場合には、底部65を非発泡領域(透明領域)としても、袴部材により遮光性を付与することができるので格別の問題は生じない。
【0059】
さらに、上述したボトル60に代表される延伸発泡容器においては、発泡領域の大きさなどを適宜調整して、発泡セルBの存在割合を示す気泡率を20%以下とすることが好ましい。即ち、使用済みの容器を分別回収して樹脂の再利用を図る場合、比重差によって、PET製容器と他の樹脂材料とが分けられるが、気泡率を上記範囲に設定しておくことにより、比重差による分別を有効に行うことができるからである。
【0060】
また、図3では、延伸発泡容器の例としてボトルを示したが、本発明はボトルに限定されるものではなく、カップ状の容器或いは発泡シートを貼り合せた袋状容器にも適用されることは先にも述べた通りである。
【実施例】
【0061】
本発明を次の実験例で説明する。
(実施例1)
市販のボトル用PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)を用いて、射出成形により試験管形状で胴部肉厚約3mmの500mlボトル用プリフォーム(長さ99mm、胴部直径30mm)を作成した。このプリフォームを30℃の耐圧容器内に設置し、圧力15MPaの二酸化炭素ガス雰囲気下で1時間保持して二酸化炭素ガスの含浸を行った。その後大気圧まで減圧し圧力容器内からプリフォームを取り出した。次いで直ちにプリフォーム全体を90℃の湯中に10秒間浸漬して発泡させた後、冷水で冷却して内外面に表皮層(非発泡)とその夫々の内側に発泡層、さらにその内側に基体層(非発泡)からなる5層構造の発泡プリフォームを得た。
【0062】
このようにして得られた発泡プリフォームを室温、大気雰囲気下で1週間保持した後、延伸ブロー成形機内で赤外線ヒータにより約105℃まで加熱し、ブロー成型して内容量500mlのボトル(長さ208mm、胴部直径65mm、胴部肉厚0.3mm)に成形した。延伸ブロー成形は通常のプリフォームとほぼ同等の条件で成形可能であり、形状の異方性や肉厚ムラがなく成形性は良好だった。得られた発泡PETボトルは扁平気泡の存在によりパール光沢を有し、外観良好であった。
【0063】
ボトル胴部外表面の吸光度比Rを、フーリエ変換赤外分光光度計(FTS7000e、Varian社製)および、Geプリズムを用いた1回反射ATR(シルバーゲート、システムズエンジニアリング社製)を用いて以下の条件で測定を行い、その最大値を評価した。
入射角;45度
測定面積;約0.385mm
分解能;4cm−1
測定波数範囲;700〜4000cm−1
積算回数;64回
【0064】
また、ボトル胴部断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ延伸方向に長く伸びた扁平形状セルが確認された。市販の画像解析式粒度分布測定ソフト(Mountec社製Mac−View)を用いて、ボトル外面側発泡層における胴部厚み方向でのセル径(セル短径)の平均値、標準偏差、最大値を評価した。さらに、分光光度計を用いて光波長500nmにおける全光線透過率を評価した。結果、表1のとおり吸光度比Rが1.3以下に抑えられて外観良好であり、均一で微細なセルからなる発泡層を有し、可視光バリア性能、容器特性に優れた発泡ボトルであった。
【0065】
(実施例2)
ガス含浸時間を2時間とした以外は実施例1と同様にして発泡ボトルを成形した。実施例1と同様に成形性良好、外観良好であり、表1に示すように吸光度比Rが低い値であり、均一で微細なセルからなる発泡層を有し、可視光バリア性能、容器特性に優れた発泡ボトルであった。
【0066】
(実施例3)
ガス含浸時間を4時間とした以外は実施例1と同様にして発泡ボトルを成形した。実施例1と同様に成形性良好、外観良好であり、表1に示すように吸光度比Rが低い値であり、均一で微細なセルからなる発泡層を有し、可視光バリア性能、容器特性に優れた発泡ボトルであった。
【0067】
(実施例4)
ガスを含浸させたプリフォームの首下外面のみを湯中に浸漬し発泡させた以外は実施例2と同様にしてボトルを成形した。得られたボトルは口部が非発泡で透明性と強度が保たれており、シール性も確保されていたが、発泡層が片面にのみ形成されているため可視光バリア性能は、62.0%と低かった。吸光度比Rは表1に示すように低い値であり、成形性良好、外観良好で容器特性に優れた発泡ボトルあった。
【0068】
(比較例1)
実施例2と同様にプリフォームに二酸化炭素を含浸させた後、実施例のようには加熱発泡工程を行わずに直ちに延伸ブロー成形した以外は実施例2と同様にして発泡ボトルを成形した。延伸ブロー成形機内でのプリフォーム加熱工程においてブリスター不良や、延伸成形工程時にバースト不良や表皮割れの不良が発生した。
得られた発泡ボトルの外表面の吸光度比Rは表1に示すとおり、1.3を超えており、表皮割れによる外観不良があった。また、得られた発泡ボトルの断面を観察したところ、表1に示すように実施例と比較して大きなセルが存在し、セル短径のばらつきが大きく(標準偏差が大きい)、可視光バリア性能は50.2%であった。
【0069】
(比較例2)
ガス含浸時間を4時間とした以外は比較例1と同様にして発泡ボトルを成形した。延伸ブロー成形機内でのプリフォーム加熱工程においてブリスター不良が多数発生し、延伸成型時にバースト不良によりボトルを適切に成形できなかった。
得られたボトルの外表面の吸光度比Rは表1に示すとおり、1.3を超えており、表皮割れのためにボトルの外観が著しく劣っており、セル短径の測定は行えなかった。光バリア性能は55.6%と低かった。
【0070】
【表1】

【符号の説明】
【0071】
1:非発泡プリフォーム
10:発泡プリフォーム
20:延伸発泡容器
50:延伸発泡ボトル用プリフォーム
60:延伸発泡ボトル
A:球状発泡セル
B:偏平状発泡セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスを含浸させての加熱により発泡セルが分布している発泡層を有している胴部を備えたポリエステル製延伸発泡容器において、
前記胴部の外表面には、発泡セルが存在していない表皮層が形成されており、該表皮層の表面は、赤外光とゲルマニウムプリズムとを用いた全反射吸収法により、該外表面に対して入射角45度で赤外光を照射したとき、下記式(1):
R=I1340/I1409 …(1)
式中、I1340は、波数が1340±2cm−1の領域のCHの縦揺れ振動モー
ドに対応するピークの吸光度を示し、
1409は、波数が1409±2cm−1の領域のレファレンスピークの吸
光度を示し、
で定義される吸光度比Rが1.30以下となる赤外吸収特性を示すことを特徴とするポリエステル製延伸発泡容器。
【請求項2】
前記発泡層に形成されている発泡セルは、胴部厚み方向での平均径が1乃至15μmで且つ標準偏差が10μm以下となるような粒度分布を有している請求項1に記載のポリエステル製延伸発泡容器。
【請求項3】
前記胴部の厚み方向中心部分には、発泡セルが分布していない非発泡層が形成されている請求項1または2に記載のポリエステル製延伸発泡容器。
【請求項4】
前記胴部は、500nmの波長の光に対して50%以下の光線透過率を有している請求項1乃至3の何れかに記載のポリエステル製延伸発泡容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−241475(P2010−241475A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93669(P2009−93669)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】