説明

ポリエステル複合繊維及び織編物

【課題】高いストレッチ性とソフトな風合いを付与するポリエステル複合繊維を提供し、また高いストレッチ性とソフトな風合いを有する織編物を提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートに5−ナトリウムスルホイソフタル酸1〜2モル%、アジピン酸6〜13モル%及びビスフェノールAのエチレンオキシド付加物1〜8モル%が共重合されたポリエステル(A)とエチレンテレフタレート単位が95モル%以上含まれるポリエステル(B)とが接合されてなるポリエステル複合繊維であり、またこのポリエステル複合繊維で織編物を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル複合繊維及びその複合繊維を含む織編物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、溶融粘度の異なる2種の熱可塑性ポリマーを同一吐出孔より溶融複合紡糸してサイドバイサイドの接合型の複合繊維とし、熱処理によりスパイラル状のクリンプを発現させてストレッチ繊維とすることはよく知られている。高いストレッチ性の複合繊維を得るためには、用いる2種の熱可塑性ポリマーの溶融粘度差を大きくすることが望ましく、高粘度成分として、共重合ポリエステルを用いることが提案されており、特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸、またはビスフェノールAのエチレンオキシド付加物を共重合させたポリエステルと、ポリエチレンテレフタレート主体のポリエステルとが接合された複合繊維が記載されている。
【0003】
しかしながら、イソフタル酸、或いはビスフェノールAのエチレンオキシド付加物といった共重合成分は、複合繊維を高捲縮にしてストレッチ性を高めるために共重合量を増やしていくと、得られる繊維の風合いが硬くなる、毛羽が発生し易くなるという問題がある。
【0004】
また、高粘度成分として、特許文献2には、ポリエチレンテレフタレートに5−ナトリウムスルホイソフタル酸及びアジピン酸を共重合させたポリエステル、特許文献3には、ポリエチレンテレフタレートに5−ナトリウムスルホイソフタル酸及びビスフェノールAのエチレンオキシド付加物を共重合させたポリエステルを用いることが提案されているが、いずれも毛羽を発生させることなく、高いストレッチ性の複合繊維を得ることは困難である。
【0005】
【特許文献1】特開平9−195126号公報
【特許文献2】特開平11−200155号公報
【特許文献2】特開2000−303261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術における問題点を解決するものであり、本発明の目的は、高いストレッチ性とソフトな風合いを織編物に付与するポリエステル複合繊維を提供することにあり、また高いストレッチ性とソフトな風合いを有する織編物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の要旨は、
以下の組成のポリエステル(A)とポリエステル(B)とが接合されてなるポリエステル複合繊維、にあり、また本発明の第2の要旨は、前記のポリエステル複合繊維を含んでなる織編物、にある。
ポリエステル(A):
ポリエチレンテレフタレートに5−ナトリウムスルホイソフタル酸1〜2モル%、アジピン酸6〜13モル%及びビスフェノールAのエチレンオキシド付加物1〜8モル%が共重合されたポリエステル
ポリエステル(B):
エチレンテレフタレート単位が95モル%以上含まれるポリエステル
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本発明のポリエステル複合繊維は、高い捲縮を発現するものであり、その発現した高い捲縮力により高いストレッチ性とソフトな風合いを織編物に付与し得るものであり、また、そのポリエステル複合繊維を含んでなる織編物は、高いストレッチ性とソフトな風合いを有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のポリエステル複合繊維を構成する一方の複合成分であるポリエステル(A)は、ポリエチレンテレフタレートに5−ナトリウムスルホイソフタル酸1〜2モル%、アジピン酸6〜13モル%及びビスフェノールAのエチレンオキシド付加物1〜8モル%が共重合されたポリエステルであることが必要である。
【0010】
ポリエステル(A)における5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合量が、1モル%未満では、十分なストレッチ性が得られず、2モル%を超えると、繊維の強伸度が低下し、延撚工程で毛羽が発生し易くなる。5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合によりストレッチ性が向上する理由については、極性を有するスルホン酸金属塩の相互作用により架橋点として作用し、ストレッチ性を向上させていると考えられる。
【0011】
ポリエステル(A)におけるアジピン酸の共重合量が、6モル%未満では、複合繊維での捲縮発現力が小さく、織編物でのストレッチ性が不十分となり易く、13モル%を超えると、ポリマーの結晶性の低下が大きくなり、延撚工程で毛羽が発生し易くなる。また、ポリエステル(A)におけるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物の共重合量が、1モル%未満では、複合繊維での捲縮発現力が小さく、織編物でのストレッチ性が不十分となり易く、8モル%を超えると、ポリマーの結晶性の低下が大きくなり、延撚工程で毛羽が発生し易くなる。
【0012】
ポリエステル(A)には、ポリマーの結晶性を大きく変化させない範囲で、他のジカルボン酸成分或いはジオール成分が共重合されていてもよく、他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられ、他のジオール成分としては、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(β−オキシエトキシ)ベンゼン等が挙げられる。
【0013】
また、ポリエステル複合繊維を構成する他方の複合成分であるポリエステル(B)は、エチレンテレフタレート単位が95モル%以上含まれるポリエステルであることが必要である。ポリエステル(B)におけるエチレンテレフタレート単位が95モル%未満では、複合繊維での捲縮発現力が小さく、織編物でのストレッチ性が不十分となり易い。
【0014】
ポリエステル(B)には、また、ポリマーの結晶性を大きく変化させない範囲で、他のジカルボン酸成分或いはジオール成分が共重合されていてもよく、他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸等が挙げられ、他のジオール成分としては、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(β−オキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールAのビスグリコールエーテル等が挙げられる。
【0015】
さらに、本発明のポリエステル複合繊維を構成する複合成分のポリエステル(A)、ポリエステル(B)には、艶消剤、易滑剤、顔料等の添加剤が含まれていてもよい。
【0016】
本発明のポリエステル複合繊維は、製糸性の点から、ポリエステル(A)、ポリエステル(B)それぞれの固有粘度は、ポリエステル(A)とポリエステル(B)との固有粘度の差([η]−[η])が、次式を満足することが好ましい。
0.20>([η]−[η])>0.10
(但し、[η]、[η]は、それぞれポリエステル(A)単独、ポリエステル(B)単独での紡出時の固有粘度)
固有粘度の差([η]−[η])が0.10以下では、複合繊維を織編物としたときに、満足し得るストレッチ性が得られ難く、固有粘度の差([η]−[η])が0.20以上では、紡糸工程においてニーリングが発生し易く、糸切れが生じ易くなる。
【0017】
本発明のポリエステル複合繊維は、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とが、40/60〜60/40の複合比(重量)でサイドバイサイド型に接合された複合構造を有することが好ましい。
【0018】
また、本発明のポリエステル複合繊維は、強度が2cN/dtex以上、伸度が20%以上であることが好ましく、強度が2cN/dtex未満、或いは伸度が20%未満では、延撚工程で毛羽が発生し易くなる。かかる繊維物性を有する本発明のポリエステル複合繊維は、製糸された状態で、糸の長さ10000m当たり5ケ以下の毛羽頻度を有するものであることが好ましく、毛羽が5ケ/10000mを超えると、加工工程通過性、製織・製編工程通過性が著しく悪化し、歩留まりが低下し、また織編物としたときに織編物表面の毛羽により品位が劣るものとなる。
【0019】
本発明のポリエステル複合繊維を含んでなる織編物は、ポリエステル複合繊維に基づく高いストレッチ性を有するものである。本発明において、織編物のストレッチ性は、織物収縮率で評価し、本発明の織編物は、織物収縮率が50%以上となることが好ましく、織物収縮率が50%未満では、織編物でのストレッチ性が十分に発揮されない。
【0020】
次に、本発明のポリエステル複合繊維の製造方法について説明する。
本発明のポリエステル複合繊維の製造に用いる2種のポリエステル(A)、ポリエステル(B)は、それらの製造方法に特に限定はなく、エチレンフタレート単位を構成するテレフタル酸成分、共重合成分のジカルボン酸成分を酸或いはそのエステルとして用い、触媒等を用いる公知の製造方法によって製造することができる。
【0021】
ポリエステル(A)は、例えば、テレフタル酸ジメチルエステル(ジメチルテレフタレート)、エチレングリコール、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルエステル(5−ナトリウムスルホキシジメチルイソフタレテート)、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物を150〜220℃でエステル交換反応させた後、アジピン酸エチレングリコールエステル(ビス(2−ヒドロキシエチル)アジペート)を添加し、0.5kP以下の減圧下で重縮合させる方法により得られる。
【0022】
また、ポリエステル(B)は、テレフタル酸ジメチルエステルとエチレングリコールをエステル交換反応させた後、或いはテレフタル酸とエチレングリコールをエステル化反応させた後、その反応物を重縮合反応させる方法によって得られ、公知のポリエチレンテレフタレートが用いられる。
【0023】
複合紡糸に際し、用いるポリエステル(A)、ポリエステル(B)は、前述したように、それらの固有粘度の差([η]−[η])が、0.10を超え0.20未満となる関係にあることが好ましい。次いで、ポリエステル(A)とポリエステル(B)は、別々に溶融した後、2種の溶融流を接合させ、接合状態の複合流として紡糸口金の吐出孔より吐出し、接合型の複合繊維にする。
【0024】
複合紡糸に用いる紡糸口金は、図1に示すような、ポリエステル(A)の溶融流とポリエステル(B)の溶融流との合流点である各ポリマー導入孔が紡出孔内において紡糸口金の吐出面から2mm以内の位置にある紡糸口金であることが、織編物に高いストレッチ性を与える複合繊維を得るうえで好ましい。即ち、かかる紡糸口金によれば、繊維断面における2種の複合成分の界面を直線に近づけることができ、得られる複合繊維の捲縮発現力を大きくし、織編物に高いストレッチ性を与える。
【0025】
吐出孔より吐出した糸条は、未延伸糸として巻き取った後、未延伸糸を延伸して延伸糸としてもよいし、また吐出した糸条を、巻き取ることなく、延伸して延伸糸としてもよい。延伸に際しては、延伸速度を1200〜3000m/分、延伸倍率を未延伸糸の最大延伸倍率の0.65〜0.85倍の条件を採ることが好ましい。
【0026】
本発明のポリエステル複合繊維は、パーンから解舒することにより緊張−緩和が起こり、複合構造における複合成分のポリエステル(A)とポリエステル(B)との塑性変形、弾性変形の差により高い捲縮を発現する。さらに本発明のポリエステル複合繊維は、熱水で処理すると、ポリエステル(A)とポリエステル(B)との収縮差が加わることによりさらに高い捲宿を発現する。従い、本発明のポリエステル複合繊維を含んでなる織編物は、極めて高いストレッチ性を有するものとなる。
【0027】
本発明の織編物は、本発明のポリエステル複合繊維のみで構成されていてもよいし、他の繊維を含んで構成されていてもよいが、高いストレッチ性を得るためには、本発明のポリエステル複合繊維が10質量%以上含まれることが好ましい。本発明の織編物は、ストレッチ性が求められる構造であれば、その組織、製織・製編方法には特に制限がない。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例中での各評価は以下の方法に拠った。
【0029】
(ポリマーの融点(mp))
示差走査型熱量計(セイコー電子工業社製、DSC220)を用い、昇温速度10℃/分で測定した。
【0030】
(ポリマーの固有粘度([η]))
ポリマー0.25gを粉砕し、フェノール/テトラクロルエタン(50/50)の混合溶剤50mlに溶解し、25℃に温調し自動粘度計(サン電子工業社製、AVL−4型)にて測定した。なお、計算式は以下のとおりである。
[η]=[(1+1.04ηSP1/2−1]/0.26
【0031】
(繊維の強度、伸度)
強伸度特性測定器(島津製作所社製、オートグラフSD−100−C)を用い、試長200m、引張速度200m/分で応力伸長曲線を測定し、繊維の破断点での強度および伸度を求めた。
【0032】
(毛羽発生頻度)
製糸によって得られた糸を100m/分の速度で解舒しつつ、フライカウンター(東レインダストリー社製、DT−104)にて糸に含まれる毛羽(単糸破断)を検出し、糸の長さ10000m(10km)当たりの毛羽数を計測した。毛羽数(ケ/10km)が5未満であれば良好、5以上であれば不良と評価される。
【0033】
(織物収縮率)
サンプル原糸を撚係数K=10000(T=K×D−1/2、T:1m当たりの撚数、D:糸の繊度(dtex))の条件で撚糸し、温度70℃、湿度90%の条件下で40分間セットした。この糸を緯糸として、打ち込み本数(本/cm)=311.1×D−1/2で、経糸には56dtex/18フィラメントを用い、経糸密度39.6本/cmに設定し、製織した。得られた織物の緯糸方向に長さ1mの間隔で印を付け(L0)、緯糸と平行に10cm幅のサンプル布を切り出し、130℃の熱水中で30分間熱水処理した。このサンプル布を、風乾後、片端を固定して垂直に垂らし、下方の他端にD×0.45gの荷重をかけ、先に付けた印の間隔(L1)を測定し、次式にて織物収縮率を算出した。
織物収縮率(%)=[(L0−L1)/L0]×100
【0034】
(実施例1)
ジメチルテレフタレート(以下、DMT)3990g、エチレングリコール(以下、EG)2892g、5−ナトリウムスルホキシジメチルイソフタレート(以下、DMS)103g、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(以下、BPE)308g、酢酸マグネシウム5を加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、ビス(2−ヒドロキシエチル)アジペート(以下、BHEA)545g、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2g、水酸化ナトリウム1gを前記反応物に加え、過剰のEGを反応系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で270℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A1)を得た。なお、表1には、共重合成分であるDMS、BHEA、BPEの使用量から、ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)に対するDMS、BHEA、BPEの共重合量をモル%で示した。
【0035】
また、ポリエステル(B)として、テレフタル酸とEGを4kPaの加圧下で260℃にてエステル化反応を行い、次いでトリエチルフォスフェイト、三酸化アンチモンを前記反応物に加え、0.5kPa以下の減圧下で285℃にて重縮合反応を行うことによって得たPETを用いた。
【0036】
次いで、ポリエステル(A1)を250℃、ポリエステル(B)を285℃でそれぞれ溶融した後、275℃の紡糸頭に導き、図1に示すような、吐出孔内において各ポリマーの導入孔が紡糸口金の吐出面から0.8mmの位置にあり、孔径が0.6mmの円形の吐出孔を12個有する紡糸口金から吐出させて、2つのポリマー流がポリマー比率(重量)が50/50のサイドバイサイドに接合された接合型複合流として複合紡糸し、紡糸速度2100m/分で巻き取り未延伸糸を得た。紡糸後の各複合成分のポリマーの固有粘度[η]については、各成分の単独ポリマーの紡出糸を別々にサンプリングしたもので測定し、表1に示した。
【0037】
得られた未延伸糸を、82℃の熱ローラーを介して未延伸糸の最大延伸倍率の70%の倍率で延伸するとともに、145℃の熱板に接触させて熱処理して、400m/分で巻き取り、56dtex/12フィラメント(以下、f)の延伸糸を得た。得られた延伸糸は、表1に示すような繊維物性を有し、毛羽の発生が認められず、また、この延伸糸よりなる織物は、表1に示すような収縮率を有し非常に高いストレッチ性を有するものであった。
【0038】
(実施例2)
DMT4009g、EG2857g、DMS83g、BPE309g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、BHEA546g、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2g、水酸化ナトリウム1gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で270℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A2)を得た。なお表1に、DMS、BHEA、BPEの使用量から、PETに対するDMS、BHEA、BPEの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A2)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸は、表1に示すような繊維物性を有し、毛羽の発生が認められず、また、この延伸糸よりなる織物は、表1に示すような収縮率を有し非常に高いストレッチ性を有するものであった。
【0039】
(実施例3)
DMT3893g、EG2764g、DMS101g、BPE451g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、BHEA532g、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2g、水酸化ナトリウム1gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で270℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A3)を得た。なお表1に、DMS、BHEA、BPEの使用量から、PETに対するDMS、BHEA、BPEの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A3)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸は、表1に示すような繊維物性を有し、毛羽の発生が認められず、また、この延伸糸よりなる織物は、表1に示すような収縮率を有し非常に高いストレッチ性を有するものであった。
【0040】
(実施例4)
DMT3962g、EG2903g、DMS105g、BPE157g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、BHEA665g、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2g、水酸化ナトリウム1gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で270℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A4)を得た。なお表1に、DMS、BHEA、BPEの使用量から、PETに対するDMS、BHEA、BPEの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A4)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸は、表1に示すような繊維物性を有し、毛羽の発生が認められず、また、この延伸糸よりなる織物は、表1に示すような収縮率を有し非常に高いストレッチ性を有するものであった。
【0041】
(比較例1)
DMT4211g、EG2597g、DMS98g、BPE877g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2g、水酸化ナトリウム1gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で270℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A5)を得た。なお表1に、DMS、BPEの使用量から、PETに対するDMS、BPEの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A5)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸には、表1に示すように毛羽の発生が認められた。
【0042】
(比較例2)
DMT4444g、EG2953g、DMS107g、BPE318g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2g、水酸化ナトリウム1gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で270℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A6)を得た。なお表1に、DMS、BPEの使用量から、PETに対するDMS、BPEの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A6)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。この延伸糸よりなる織物は、表1に示すような収縮率でストレッチ性が不十分であった。
【0043】
(比較例3)
DMT4325g、EG2860g、BPE887g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で270℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A7)を得た。なお表1に、BPEの使用量から、PETに対するBPEの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A7)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸には、表1に示すように毛羽の発生が認められた。
【0044】
(比較例4)
DMT4198g、EG3115g、DMS109g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、BHEA574g、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2g、水酸化ナトリウム1gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で270℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A8)を得た。なお表1に、DMS、BHEAの使用量から、PETに対するDMS、BHEAの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A8)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。この延伸糸よりなる織物は、表1に示すような収縮率でストレッチ性が不十分であった。
【0045】
(比較例5)
DMT4054g、EG2868g、DMS35g、BPE310g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、BHEA548g、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2g、水酸化ナトリウム0.3gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で270℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A9)を得た。なお表1に、DMS、BHEA、BPEの使用量から、PETに対するDMS、BHEA、BPEの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A9)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸は、表1に示すような繊維物性を有し、また、この延伸糸よりなる織物は、表1に示すような収縮率でストレッチ性が不十分であった。
【0046】
(比較例6)
DMT3925g、EG2838g、DMS171g、BPE307g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、BHEA543g、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2g、水酸化ナトリウム1.5gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で270℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A10)を得た。なお、表1に、DMS、BHEA、BPEの使用量から、PETに対するDMS、BHEA、BPEの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A10)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸は、表1に示すような繊維物性を有し、毛羽の発生が著しく、解舒が不良で、織物にすることできなかった。
【0047】
(比較例7)
DMT4444g、EG2953g、DMS107g、BPE318g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、BHEA169g、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2g、水酸化ナトリウム1gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で270℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A11)を得た。なお、表1に、DMS、BHEA、BPEの使用量から、PETに対するDMS、BHEA、BPEの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A11)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。この延伸糸よりなる織物は、表1に示すような収縮率でストレッチ性が不十分であった。
【0048】
(比較例8)
DMT3387g、EG2720g、DMS99g、BPE295g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、BHEA1044g、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2g、水酸化ナトリウム1gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で270℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A12)を得た。なお、表1に、DMS、BHEA、BPEの使用量から、PETに対するDMS、BHEA、BPEの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A12)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸は、表1に示すような繊維物性を有し、毛羽の発生が著しく、解舒が不良で、織物にすることできなかった。
【0049】
(比較例9)
テレフタル酸とEGを4kPaの加圧下で260℃にてエステル化反応を行い、次いで得られたエステル化物4254gを加熱溶融した後にイソフタル酸(以下、IPA)891g、EG632gのスラリーを添加し、さらに40分間エステル化反応を行い、その後、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト0.7g、三酸化アンチモン2gを前記反応物に加え、0.5kPa以下の減圧下で280℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A13)を得た。なお、表1に、IPAの使用量から、PETに対するIPAの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A13)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸は、表1に示すような繊維物性を有し、多数の毛羽を有し、また、この延伸糸よりなる織物は、表1に示すような収縮率でストレッチ性が不十分であった。
【0050】
(比較例10)
DMT4095g、ジメチルイソフタレート(以下、DMI)507g、EG3379g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、BHEA612g、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト2.4g、三酸化アンチモン2gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で280℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A14)を得た。なお、表1に、DMI、BHEAの使用量から、PETに対するDMI、BHEAの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A14)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸は、表1に示すような繊維物性を有し、多数の毛羽を有し、また、この延伸糸よりなる織物は、表1に示すような収縮率でストレッチ性が極めて不十分であった。
【0051】
(比較例11)
DMT4399g、DMI478g、BPE327g、EG3054g、酢酸マグネシウム5gを加熱し、150〜220℃でエステル交換反応を行い、次いで、酸化チタン23g、トリエチルフォスフェイト3.8g、三酸化アンチモン2gを前記反応物に加え、過剰のEGを系外に留去させた後、徐々に減圧し、0.5kPa以下の減圧下で280℃にて重縮合反応を行い、ポリエステル(A15)を得た。なお、表1に、DMI、BPEの使用量から、PETに対するDMI、BPEの共重合量をモル%で示した。次いで、ポリエステル(A15)と実施例1におけるポリエステル(B)とを用い、実施例1と同様にして、複合紡糸し、延伸して56dtex/12fの延伸糸を得た。得られた延伸糸は、表1に示すような繊維物性を有し、毛羽の発生が認められ、また、この延伸糸よりなる織物は、表1に示すような収縮率でストレッチ性が不十分であった。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のポリエステル複合繊維は、高い捲縮力の発現により織編物に高いストレッチ性とソフトな風合いを与えることにより、織編物の素材として有用なるものであり、また、本発明の織編物は、高いストレッチ性を有し、ストレッチ性が求められる衣服全体のみでなく、衣服のストレッチ性が求められる部分にも適用され、衣服の素材として好適なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のポリエステル複合繊維の製造に使用する紡糸口金の一例の概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1 吐出孔
2 ポリマーA導入孔
3 ポリマーB導入孔
4 口金吐出面からポリマー導入孔までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の組成のポリエステル(A)とポリエステル(B)とが接合されてなるポリエステル複合繊維。
ポリエステル(A):
ポリエチレンテレフタレートに5−ナトリウムスルホイソフタル酸1〜2モル%、アジピン酸6〜13モル%及びビスフェノールAのエチレンオキシド付加物1〜8モル%が共重合されたポリエステル
ポリエステル(B):
エチレンテレフタレート単位が95モル%以上含まれるポリエステル
【請求項2】
強度が2cN/dtex以上、伸度が20%以上である請求項1に記載のポリエステル複合繊維。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリエステル複合繊維を含んでなる織編物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−102789(P2009−102789A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32711(P2008−32711)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Fターム(参考)】