説明

ポリエチレンとポリ(ヒドロキシカルボン酸)の多層フィルム

ポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む第1層と、シングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて調製されたポリエチレンを50重量%以上含む第1層に隣接する第2層とを含む多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生可能資源から得られる材料を含む多層フィルムに関するものである。
本発明は特に、ポリ(乳酸)を含む層と、シングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンを含む層とを有する多層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、人工的な廃棄物が環境に与えるインパクトを人々が心配するようになってきている。従って、フィルム用に再生可能な資源からの新規な生物分解可能(好ましくはコンポスト(堆肥)化可能な)プラスチックを開発することが重要になっている。
【0003】
その特に重要な候補がポリ(ヒドロキシカルボン酸)、特に比較的商業的に大規模に入手可能なポリ乳酸(PLA)である。乳酸はトウモロコシのような植物およびサトウキビ、その他の砂糖−またはデンプン−生産植物から得られ、PLAは再生可能な材料から得られるだけでなく、簡単にコンポスト化できるため、従来は石油ベースの熱可塑性樹脂が使われていた用途でPLAを代替として使用することが重要になっている。
【0004】
しかし、PLA自体は従来のプラスチックと同じような有利な特性を有していない。特に、PLAは脆性があり、耐熱性、柔軟性が悪いという性能上の問題が有り、機械的強度が悪い。一方、ポリオレフィン、特にポリエチレンは非常に優れた機械的特性を有している。両者の特性を合わせるためにPLAとポリエチレンとを混合して少なくとも部分的に再生可能資源から得られる多層フィルムを得ようとする試みが行なわれたが、許容不可能な機械特性のままである。チーグラー−ナッタ触媒ポリエチレンのような従来のポリエチレンとPLA層とは両者の極性の違いから層間接着が不十分なフィルムにしかならないことが知られている。従来は相溶化剤を一つまたは複数の層で使用するか、層間に結合剤/相溶化剤層を挿入してPLAとポリエチレン層との間の接着性を高めている。しかし、それによって追加の工業的階段を必要とし、押出成形時に特定の条件を必要とする。さらに、相溶化剤を加えるとコストが高くなり、生成物の望ましい特性が変わる。すなわち、相溶化剤および副生成物の両方が所望最終製品の特性を変えてしまう。
【0005】
特許文献1(米国特許第2008/0026171号)にはポリオレフィンまたは押出可能な層と、エチレン酢酸ビニール(EVA)を含む第1層と、ポリ乳酸(PLA)を含む層とをこの順番で含む多層フィルムが開示されている。好ましい実施例の多層フィルムはポリオレフィン層、エチレン酢酸ビニール(EVA)を含む第1層、ポリ乳酸(PLA)を含むコア層、EVAを含む第2層およびシーラント層をこの順番で含む。多層フィルムを形成する方法および系も開示されている。EVA層をポリオレフィン層とPLA層との間の相溶化剤または結合層として用いている。
【特許文献1】米国特許第2008/0026171号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、結合剤/相溶化剤層を用いずに、また、結合剤/相溶化剤をフィルムの層間に用いずに、また、相溶化剤を層中に用いずに、ポリエチレンのフィルム層とポリ(ヒドロキシカルボン酸)層とを共押出することにある。
本発明の別の目的は、2つの層の間に優れた接着性を有するポリエチレンのフィルムとそれに隣接するポリ(ヒドロキシカルボン酸)の層とを含む多層フィルムを開発することにある。
本発明のさらに別の目的は、再生可能資源から得られる従来の樹脂より優れたまたは少なくとも同様の機械特性を有する、少なくとも部分的に再生可能資源から得られるフィルムを開発することにある。
本発明のさらに別の目的は、ガスバリヤ特性がポリエチレンフィルムより優れたフィルムを開発することにある。
本発明のさらに別の目的は、表面張力特性がポリエチレンフィルムより優れたフィルムを提供することにある。
本発明の上記目的の少なくとも一つは本発明によって達成できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む第1層と、シングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を用いて調製されたポリエチレンを含む第1層に隣接する第2層とを含む多層フィルムを提供する。
【0008】
本発明の多層フィルムは第1層と第2層とからなる2層フィルムであるのが好ましい。
第1層は少なくとも50重量%、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含み、および/または、第2層は50重量%以上、好ましくは少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%のシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンを含むのが有利である。
【0009】
本発明の別の実施例の第1層は主としてポリ(ヒドロキシカルボン酸)からなり、および/または、第2層は主としてシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンからなる。
本発明はさらに、多層フィルムの製造方法と、この多層フィルムの包装材料としての使用にも関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記のように、本発明はポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む第1層と、シングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンを含む第1層に隣接する第2層とを含む多層フィルムに関するものである。
現在まで、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)とポリエチレンは剥離を避けるための相溶化剤または追加の結合層を使用せずに多層フィルムにすることは不可能であると考えられてきた。特に、これら2つの成分の極性の違いを考えると不可能であると考えられてきた。
【0011】
しかし、驚くことに、シングルサイト触媒を用いてポリエチレンを製造した場合にはそうでは無い、ということを本発明者は見出した。この場合には層が十分に相溶性を有し、容易に剥離せず、層間接着性は大幅に向上する。
【0012】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は再生可能な資源から誘導され且つ少なくとも一つのヒドロキシル基と少なくとも一つのカルボキシル基とを有するモノマーの任意のポリマーにすることができる。ヒドロキシカルボン酸モノマーは再生可能な資源、例えばトウモロコシおよびサトウキビ、その他の糖−または澱粉−生産植物から得るのが好ましい。本発明で使用するポリ(ヒドロキシカルボン酸)は再生可能な資源から得るのが好ましい。「ポリ(ヒドロキシカルボン酸)」という用語はホモ−およびコポリマーと、一種以上のポリマー混合物を意味する。
【0013】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は下記の式Iで表すことができる:
【化1】

【0014】
(ここで、
9は水素または1〜12個の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖のアルキル基であり、
10は任意成分で、1〜12個の炭素原子を有する分岐鎖または環式または直鎖のアルキレン基であり、
「r」は反復単位Rの数を表し、30〜15000の任意の整数である)
【0015】
上記モノマーの反復単位は、脂肪族でかつヒドロキシル残基とカルボキシル残基とを有する限り、特に制限されない。使用可能なモノマーの例としては乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸が挙げられ、それぞれ例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(4−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(4−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(5−ヒドロキシ吉草酸)およびポリ(6−ヒドロキシカプロン酸)が作られる。
【0016】
また、上記モノマーの反復単位はそれぞれの脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環式モノマーまたは環式ダイマーから得ることもできる。これらの例としてはラクチド、グリコリド、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0017】
ヒドロキシカルボン酸単位中の不斉炭素原子では、D体、L体および両方の混合物が使用できる。また、ラセミ混合物を使うこともできる。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は必要に応じて一種または複数のコモノマーをさらに含むことができる。このコモノマーは上記の式Iで定義されるヒドロキシカルボン酸から成る第2の異なるヒドロキシカルボン酸にすることができる。各ヒドロキシカルボン酸の重量百分率は特に制限されない。
【0018】
上記コモノマーは二塩基カルボン酸および二価アルコールから成ることもできる。これらは反応して、ヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸およびそのポリマーと反応可能な、式(II)に示す遊離ヒドロキシル末端基および遊離カルボン酸末端基を有する脂肪族エステル、オリゴエステルまたはポリエステルを形成する:
【化2】

【0019】
(ここで、
11およびR12は1〜12個の炭素原子を有する分岐鎖または直鎖のアルキレン基で、互いに同一でも、異なっていてもよく、
「t」は反復単位Tの数を表し、少なくとも1である任意の整数である)
【0020】
このコポリマーも本発明の範囲に含まれる。反復単位の数「r」(式I)および「t」(式II)の合計は30〜15000の任意の整数である。各モノマーすなわちヒドロキシカルボン酸モノマーおよび式IIの脂肪族エステル、オリゴエステルまたはポリエステルコモノマーの重量百分率は特に制限されない。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は少なくとも50重量%のカルボン酸モノマーと、最大で50重量%の脂肪族エステル、オリゴエステルまたはポリエステルコモノマーとを含むのが好ましい。
【0021】
式IIに示す脂肪族ポリエステル単位で使用可能な二価アルコールおよび二塩基酸は特に制限されない。使用可能な二価アルコールの例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、イソソルビド、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
脂肪族二塩基酸には琥珀酸、蓚酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3−ジメチルペンタン二酸、環式ジカルボン酸、例えばシクロヘキサンジカルボン酸およびこれらの混合物が含まれる。また、ヒドロキシカルボン酸コポリマー中の二塩基酸残基は対応するジアシルクロライドまたは脂肪族二塩基酸のジエステルから誘導することもできる。
【0023】
二価アルコールまたは二塩基酸中の不斉炭素原子はD体、L体、両者の混合物が使用できる。これらのラセミ混合物を使用することもできる。
【0024】
コポリマーは交互コポリマー、周期コポリマー、ランダムコポリマー、統計的コポリマーまたはブロックコポリマーにすることができる。
【0025】
重合はヒドロキシカルボン酸を重合する任意の公知方法に従って実行できる。ヒドロキシカルボン酸およびその環式ダイマーの重合はそれぞれ重縮合または開環重合によって実行できる。
【0026】
ヒドロキシカルボン酸の共重合は公知の任意の方法で実行できる。コモノマーと共重合する前に、ヒドロキシカルボン酸を別途重合するか、両者を同時に重合することができる。
【0027】
一般に、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)はホモポリマーまたはコポリマー(上記のように第2の異なるヒドロキシカルボン酸との共重合または脂肪族エステルまたはポリエステルとの共重合)にすることができ、また、分枝剤を含んでいてもよい。このポリ(ヒドロキシカルボン酸)は分岐構造、星型構造または三次元網状構造を有することもできる。少なくとも3つのヒドロキシル基および/または少なくとも3つのカルボキシル基を有する限り、分枝剤は特に制限されない。分枝剤は重合中に加えることができる。その例にはポリマー、例えば多糖、特にセルロース、澱粉、アミロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサンおよびこれらの誘導体が挙げられる。他の例は脂肪族多価アルコールで、例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、キシリトール、イノシトール等である。分岐剤のさらに他の例には脂肪族多塩基酸である。この酸にはシクロヘキサンヘキサカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、1,3,5−ペンタン−トリカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸等が含まれる。
【0028】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の全分子量は最終樹脂組成物の所望の機械特性および熱特性に依存するが、5,000〜1,000,000g/モル、好ましくは10,000〜500,000g/モル、より好ましくは35,000〜200,000g/モルであるのが好ましい。ポリマーの最も好ましい全分子量は50,000〜150,000g/モルである。
【0029】
分子量分布は一般にモノモダル(monomodal、単峰)である。しかし、重量平均分子量および/またはタイプが異なる2種以上のポリ(ヒドロキシカルボン酸)の混合物の場合、分子量分布はマルチモダル(multimodal、多峰)、例えばビモダル(双峰)またはトリモダル(三峰)でもよい。
【0030】
入手の容易性、透明性、再生可能性およびコンポスト化可能性(compostability)の見地から、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)はポリ(乳酸)(PLA)が好ましい。このポリ(乳酸)は乳酸またはラクチド、好ましくはラクチドから直接得られるホモポリマーであるのが好ましい。
【0031】
すなわち、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は生物分解性であり、さらにコンポスト化可能であるもの、例えば、PLAを選択するのが好ましい。
【0032】
ポリエチレン
本発明で使用するポリエチレンはシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を使用して製造する。
「ポリエチレン」という用語はホモポリマーおよびα−オレフィンコモノマーとのコポリマーを含む。この「ポリエチレン」という用語には下記に定義の2種以上のポリエチレンの混合物も含まれる。
【0033】
ポリエチレンがコポリマーの場合、コモノマーは任意のα-オレフィン、すなわち2〜12個の炭素原子を有する任意の1−アルキレン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテンおよび1−ヘキセンにすることができる。コポリマーは交替コポリマー、周期コポリマー、ランダムコポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマーにすることができる。
本発明の樹脂組成物で使用するポリエチレンはエチレンのホモポリマーまたはそれとブテンまたはヘキセンとのコポリマーであるのが好ましい。
エチレンはシングルサイト触媒の存在下で低圧重合される。触媒はメタロセン触媒であるのが好ましい。必要に応じて同じまたは異なるタイプの一つまたは複数の触媒を一つの反応装置で同時に使うか、2つの並列反応装置、互いに直列に連結された2つの反応装置で使用してマルチモダル(多峰)や分子量分布が広いポリマーを得ることができる。
【0034】
低圧重合したポリエチレンは長鎖分岐の濃縮が低く、分子間力が強く、引張強度が高い。低圧重合エチレンは直鎖低密度(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)に大きく分類でき、密度は主として加えるコモノマーの相対量で制御でき、加えるコモノマーの量を多くすると短鎖分枝度が高くなり、密度が低下する。コモノマーはプロピレン、1-ブテン、または1-ヘキセンにするのが好ましい。コモノマーは、1-ブテンまたは1-ヘキセンにするのがさらに好ましい。
【0035】
ポリエチレン全体の特性は使用した方法およびシングルサイト触媒のタイプに依存する。シングルサイト触媒は例えばメタロセン触媒または拘束幾何(constrained geometry)触媒である。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)はチーグラー−ナッタ触媒またはクロム触媒ポリエチレンよりも、シングルサイト触媒ポリエチレン、特にメタロセン−触媒ポリエチレンとより良く混合するということが確認されている。少なくとも一つの層がシングルサイト触媒ポリエチレン、例えばメタロセン触媒ポリエチレンを含み、少なくとも一つの隣接する層がポリ(ヒドロキシカルボン酸)、例えばPLAを含む多層フィルムは良好な相溶性および接着性を有する。従って、これらの層は互いに容易には剥離しない。エチレン重合に適したメタロセン触媒の例にはインデニルリガンド、特にテトラヒドロインデニルリガンドを有するメタロセンが含まれる。
【0036】
本発明で用いるメタロセン触媒ポリエチレンは下記の一般式の一つのメタロセンを用いて製造するのが好ましい:
R(IND)2MQZ-2 式(I)
R(THI)2MQZ-2 式(II)
(ここで、
INDは置換されていてもよいインデニル基であり、
THIは置換されていてもよいテトラ水素化インデニル基であり、
Rは置換または未置換C1−C4アルキリデン基、ジアルキルゲルマニウム、ジアルキル珪素、ジアリール珪素、ジ−アルコキシシラン、ジフェノキシシラン、または、アルキルホスフィンまたはアミン基であり(2つのテトラ水素化インデニル基をブリッジする)、
Qはヒドロカルビル基、例えばアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、または1〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル基、1〜20の炭素原子またはハロゲンを有するヒドロカルボキシ基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
MはIVb、VbまたはVIb族の遷移金属であり、
Zは遷移金属の結合価である)
【0037】
THIは未置換テトラ水素化インデニル基であるのが好ましい。
INDは未置換インデニル基であるのが好ましい。
MはIVb族の遷移金属であるのが好ましく、Mはジルコニウムであるのがさらに好ましい。
Qは1〜4個の炭素原子またはハロゲンを有するアルキル基であるのが好ましく、Qはメチルまたは塩素であるのがさらに好ましい。
Rは置換または未置換C1−C4アルキリデン基であるのが好ましく、エチリデンまたはイソプロピリデンであるのがさらに好ましい。
【0038】
適した例にはブリッジしたビス(テトラヒドロインデニル)ジクロニウムジクロライド、例えばエチレンビス(テトラヒドロキシインデニル)ジルコニウムジクロライド、ブリッジしたビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、例えばエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、および、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドおよびこれの混合物が含まれる。
【0039】
他のポリエチレンと比較して、シングルサイト触媒ポリエチレン、特にメタロセン触媒ポリエチレンは分子量分布の幅がはるかに狭い。分子量分布は6以下、好ましくは4以下、さらに好ましくは3.5以下、最も好ましくは3以下であるのが好ましい。
【0040】
驚くべきことに、分子量分布の幅が狭いと、同じように分子量分布の幅が狭いポリ(ヒドロキシカルボン酸)と相溶性になる。理論に拘束されるものではないが、シングルサイト触媒ポリエチレン、特にメタロセン触媒ポリエチレンの分子構造がポリ(ヒドロキシカルボン酸)との相溶性を誘発すると考えられる。コモノマーが存在する場合、それはポリエチレン骨格に沿って極めて規則的に入り、コモノマーすなわち短鎖分岐の分布が極めて規則的になる。ポリエチレン中でのこの効果(短鎖分岐の分布が非常に狭い(SCBD)として公知)はシングルサイト触媒ポリエチレン、特にメタロセン触媒ポリエチレンに特有な効果である。狭いSCBDの結果、溶融物からの結晶化中に非常に小さい結晶子が材料全体で形成され、優れた光学透明性を与える。これに対してチーグラー−ナッタおよびクロム触媒ポリエチレンではコモノマーの分布は悪く、極めてランダムに入る。従って、結晶化時に異なる寸法の結晶が広い幅で分布し、ヘイズ値が高くなる。
【0041】
特定の理論に拘束されるものではないが、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の分子構造はシングルサイト触媒(特にメタロセン-触媒)ポリエチレンの分子構造に類似するため、すなわち、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)は狭い分子量分布であるため、他のポリエチレンよりも、シングルサイト触媒ポリエチレン、特にメタロセン触媒ポリエチレンにより良く相溶すると考えられる。
【0042】
多層フィルムの一つまたは複数の層には添加剤を加えることができる。この添加剤は当業者に公知で、例えば抗酸化剤、例えばチバ(Ciba)社から入手可能なイルガノックス(IRGANOX、登録商標)1010またはイルガノックス(IRGANOX、登録商標)1076のようなヒンダードフェノール樹脂、亜リン酸エステル、例えばチバ(Ciba)社から入手可能なイルガノックス(IRGANOX、登録商標)168、抗クリング剤、粘着付与剤、例えばポリブテン、テルペン樹脂、脂肪族および芳香族炭化水素樹脂、アルカリ金属およびステラリン酸グリセロールおよび水素化ロジン;紫外線安定剤;熱安定剤;ブロッキングおよびスリップ防止剤;離型剤;帯電防止剤;防曇剤;顔料;着色剤;カーボンブラック;染料;ワックス;シリカ;充填剤;タルク、抗酸化剤;過酸化物;グラフト化剤;滑剤;清澄剤;核剤などがある。
【0043】
多層フィルム
少なくとも下記の層を有する多層フィルムを当業者に周知な任意の方法で調製できる:
(1)ポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む第1層、
(2)シングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて調製したポリエチレンを含む第1層に隣接する少なくとも第2層。
多層フィルムは各層の樹脂または樹脂ブレンドを共押出しし、押出時に互いに接着して多層フィルムにするのが好ましい。共押出しは当業者に周知な方法である。
【0044】
本発明の第1層と第2層を詳細に説明したが、多層フィルムは2層から最大で8層を含む多層フィルムにできる。すなわち、多層フィルムは2、3、4、5、6,7または8層を含むことができ、これらの一層または複数の層は同じ組成にすることができる。多層は2層フィルムすなわち第1層と第2層のみからなるのが好ましい。
【0045】
ポリエチレンの層の存在と再生可能資源からの材料のポリ(ヒドロキシカルボン酸)の存在とによって機械的特性が向上し、2つの層は相溶性になり、互いに良く接着した高品質の多層フィルムが得られる。
【0046】
第1層は少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、さらに好ましくは少なくとも80重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含み、および/または、第2層は50重量%以上、好ましくは少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%のシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて調製されたポリエチレンを含むのが有利である。
【0047】
各層は上記樹脂とその他の適切なポリマー樹脂とのブレンドを含むこともできる。例えば、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む第1層はポリ(ヒドロキシカルボン酸)と一つまたは複数の適切なポリマーとを含む樹脂ブレンドから作ることができる。この適切なポリマーは例えばポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、例えば高圧重合低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または高密度ポリエチレン(HDPE)から選択される。シングルサイト触媒、好ましくはメタロセンを用いて製造したポリエチレンを含む第2隣接層は上記ポリエチレンと一つまたは複数の適切なポリマー樹脂とのブレンドにすることができる。この適切なポリマーは例えばポリプロピレン、ポリスチレン、上記と異なるポリエチレン、例えば高圧重合低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または高密度ポリエチレン(HDPE)から選択される。
【0048】
本発明の別の実施例では、第1層は主としてポリ(ヒドロキシカルボン酸)からなり、および/または、第2層は主としてシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンからなる。
さらに別の実施例では、第1層と第2層は同じである。すなわち両方の層が同量のポリ(ヒドロキシカルボン酸)およびシングルサイト触媒を用いて製造したポリエチレンを含む。
【0049】
多層フィルムは1〜99重量%、好ましくは5、10、20、25、30、40または45重量%から50、60、70、75、80または90重量%までのポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む。多層フィルムは40〜60重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含むのが最も好ましい。従って、多層フィルムは1〜99重量%、好ましくは5、10、20、25、30、40または45重量%から50、60、70、75、80または90重量%までのポリエチレンを含む。多層フィルムは40〜60重量%のシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を用いて調製したポリエチレンを含むのが最も好ましい。多層フィルムは主として、約50重量%のシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を用いて調製したポリエチレンと、約50重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)とからなるのが最も好ましい。
【0050】
本発明の好ましい実施例では、多層フィルムは、シングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を用いて調製したポリエチレンを含む層をポリ(ヒドロキシカルボン酸)に、またはその逆に接着する相溶化剤/結合剤を必要としない。また、個々の層はポリエチレンをポリ(ヒドロキシカルボン酸)と相溶化する相溶化剤も含まない。
【0051】
本発明の第1層および第2層以外の層を含めた、多層フィルムの全ての層は、化学組成、密度、メルトインデックス、厚さをフィルムの所望の最終特性およびその用途に応じて同一または個別に変えることができる。各層はポリ(ヒドロキシカルボン酸)、例えばPLA、および/またはポリエチレン、例えば、高圧重合低密度ポリエチレン(LDPE)、LLDPE、MDPEまたはHDPE、例えばシングルサイト触媒、特にメタロセン触媒を用いて製造したもの、および/またはポリスチレンおよび/またはポリプロピレンを含む樹脂を含むことができる。さらに、多層フィルムの各層の粘度が適当にマッチしていなければならないということは当業者には理解できよう。
【0052】
別の実施例では、多層フィルムはサンドイッチ構造A/B/Aを有する3つの層からなる。層Aはポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む層であり、層Bはシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて調製したポリエチレンを含む。特に外側層Aは少なくとも50重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含むのが好ましく、コア層Bは少なくとも50重量%のシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造したポリエチレンを含むのが好ましい。
【0053】
さらに別の実施例では、多層フィルムはサンドイッチ構造B/A/Bを有する3つの層からなる。ここで、外側層Bは少なくとも50重量%のシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて調製したポリエチレンを含むのが好ましく、コア層Aは少なくとも50重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含むのが好ましい。
【0054】
フィルムの各層の厚さおよびフィルム全体の厚さは特に制限されず、フィルムの所望性質に従って決定できる。各層の厚さは、多層フィルムの最終用途に応じて、好ましくは約1〜750μm、さらに好ましくは1〜500μm、最も好ましくは約1〜100μmである。例えば、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む層は、より高いバリヤ特性が要求される用途ではより厚くする必要がある。シングルサイト触媒、好ましくはメタロセンを用いて調製したポリエチレンを含む層は、所望の機械的特性および物理的特性を得るためにより厚くまたはより薄くする必要がある。各層の厚さを調節して所望の結果を得ることができる。
【0055】
多層フィルムの全体の厚さは1〜1000μm、さらに好ましくは1〜500μmであり、さらに好ましくは1〜300μmである。多層フィルムは10〜150μmの厚さであるのが最も好ましい。
【0056】
本発明の多層フィルムはキャストまたはブローフィルムを作る周知の任意の共押出方法によって成形できる。一般に用いられているブローまたはチルローラー法が適している。例えば、各層の樹脂を溶融状態でフラットダイから共押出し、冷却して多層フィルムにする。あるいは、各層の樹脂を環形ダイから溶融状態で管状ダイから押出し、ブローアップし、冷却してフィルムにし、軸方向にスリットし、平らな多層フィルムにすることができる。
【0057】
本発明の一実施例では、以下のような商用のパイロットスケールのキャストフィルムライン製造機を使用して多層キャストフィルムを製造することもできる。すなわち、各ポリマーまたはポリマー混合物のペレットを約150℃〜290℃、好ましくは約220℃〜約270℃の温度に溶融する。この特定の温度は特定の樹脂の溶融粘度がマッチするように選択する。多層キャストフィルムの場合は、2種以上の溶融物を共押出アダプターに送り、このアダプターが2種以上の溶融物を多層フィルムに入れる。ダイのギャップは一般に250〜750マイクロメートル、好ましくは約600マイクロメートルである。その後、原料を最終ゲージ厚さにする。20μmフィルムの場合、材料の延伸比は好ましくは15:1〜25:1、さらに好ましくは約21:1である。ダイの開口を出た溶融物を35℃以下、好ましくは約32℃に維持された第1チルローラーにピンチするために真空ボックスまたはエアーナイフを使用することができる。得られたポリマーフィルムを巻き取り機で回収する。フィルムの厚さはゲージモニターによってモニターでき、フィルムはトリマーによって端を整えることができる。必要な場合には、一つまたは複数の任意選択トリーターを用いてフィルムを表面処理する。このようなチルローラーキャスティング法および装置は当技術分野で公知であり、例えば下記文献に記載されている。
【非特許文献1】ウイリー(Wiley) 包装技術百科辞典、第2版、A.L.BodyおよびK.S.March編、John WileyおよびSons,Inc.,New York(1997)
【0058】
チルローラーキャスティングは一つの例であり、その他のキャスティングの形態も使用できる。
【0059】
他の例としての多層ブローフィルムを下記のように製造できる。多層フィルムを、例えば、共押出フィードブロックおよびダイ組立体を用いるブローフィルムラインを用いて製造して、互いに溶着した組成の異なる2つ以上の層を有するフィルムを作ることができる。ダイはダイギャップが1.0〜2.0mm、好ましくは1.2mmで、ダイ直径が1〜100mm、好ましくは50mmで、長さ/直径比が25である。ブローアップ比(BUR)は1.0〜10.0、好ましくは1.0〜5.0、最も好ましくは1.3〜3.5にすることができる。次いで、フィルムを共押出しフィードブロックおよびダイ組立体を用いてフィルムを押出しして、例えばフィルム表面上に空気を吹き付けて冷却する。工業的プロセスではダイからのフィルムを円柱形フィルムに延伸し、冷却し、つぶし、必要に応じて補助処理プロセス、例えば、スリッティング、処理、シーリングまたは印刷を行う。最終多層フィルムはローラーに巻き取って、次の処理および加工へ送ることができる。
【0060】
本発明のさらに別の実施例では、ポリマーがダイを出た時に、基材の原料を高温溶融ポリマーと接触させる押出しコーティングで多層フィルムを作ることもできる。ポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む樹脂またはポリエチレンを含む樹脂を基材の原料、すなわち、コーティングが施される初期層として使用できる。例えば、既に形成されたポリエチレン含有フィルムを、ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、例えばポリ(乳酸)で、後者をダイに通して押し出して(逆の場合も同じ)押出被覆できる。押出被覆は、押出材料の基材への接着性を高めるために、キャストフィルムより高温で処理するのが好ましい。その他の押出被覆方法も当業者に公知である。
変形例では、多層フィルムは管状水冷押出法を用いて得られる。
【0061】
フィルムの使用
本発明のポリマーから作られたフィルムには多くの用途がある。このフィルムは周知の方法、例えば切断法、スリッティング法および/または巻戻し法を用いて他の形、例えばテープにすることができる。ストレッチフィルム、シーリングフィルムまたは延伸フィルムとして有用である。
【0062】
本発明フィルムは、クリング(cling)フィルム、ストレッチフィルム、収縮フィルム、バッグ、ラミネーションフィルム、ライナー、おしめフィルム、キャンディ包装材または当業者に明らかなその他の種々の適切な最終用途で使用できるということは明らかである。本発明フィルムは包装材料、例えば各種製品を束ねるまたはユニット化する用途、可撓性食品包装、冷凍食品の包装、バッグ、例えばゴミ袋、ビンライナー、工業的ライナー、買い物サック、野菜袋、表面保護コーティングの用途(延伸有り無し)、例えば製造中または運送中の表面の一時的保護で使用できる。
【0063】
本発明のフィルムはその中のポリ(ヒドロキシカルボン酸)の含有量によっては部分的にコンポスト化が可能である。
コンポスト化はEN規格13432:2000で定義される。包装材料が生物分解性であるためには下記のライフ・サイクル(寿命)を有しなければならない:
(1)原料が生産ラインを離れた瞬間である時間t0から開始する、貯蔵および/または使用の時間、
(2)例えばエステル結合が加水分解されて実質的に化学的に崩壊し始める時間から開始する、ポリマーの壊変時間、
(3)部分的に加水分解されたポリマーがバクテリアおよび微生物の作用で生物分解されて、生物劣化する時間、
【0064】
「分解可能」、「生物分解性」および「コンポスト化可能」という用語はしばしば同じ意味で使用されるが、これらを区別することが重要である。さらに、「コンポスト化可能なプラスチック」には「利用可能なプログラムの一部として堆肥化現場で、既存のコンポスト化可能な材料、例えばセルロースに匹敵する速度で生物分解できる、プラスチックが視覚的に区別できなくなり、二酸化炭素、水、無機化合物およびバイオマスまで分解され、有毒残留物を残さない」(ASTMの定義)ことが必要である。一方、「分解可能なプラスチック」は単に化学的に変化するだけのもので、微生物によって生物分解することは条件でない。従って、分解可能なプラスチックが必ずしも生物分解性であるわけではなく、生物分解性プラスチックが必ずしもコンポスト化可能であるというわけでもない(すなわち、分解が遅く、および/または、有毒残留物を残す)。
【0065】
特に、コンポスト化可能性に関するEN規格13432:2000では下記の主たる特徴が定義されている:
(1)原料を篩分けして生物分解された寸法を求めて、分解度を決定する。コンポスト化可能とみなされるためには2mm以上の大きさのものが原料の10重量%以下でなければならない。
(2)プラスチックを一定時間、生物分解して生じる二酸化炭素の量を測定することによって生物分解性を決定する。コンポスト化可能とみなされるためには90日以内に90%が生物分解されなければならない。
(3)重金属濃度が基準の限界値以下か否かと、コンポストを異なる濃度で土と混合し、対照コンポストと比較する植物成長テストを行って生態毒性を決定する。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
PLAテラマック(Terramac、登録商標)6201を、種々のポリエチレン樹脂、メタロセン触媒ポリエチレン(mPE)、エチレン酢酸ビニルポリマー(EVA)、高圧重合低密度ポリエチレン(LDPE)と一緒に共押出ブローフィルム押出機、すなわち、コリン(Collin)のブローフィルム押出機で、12kg/時の流量、比率25%−50%−25%、長さ/直径比=25、ダイ直径=50mm、ダイギャップ=1.2mm、ブローレシオ(BUR)=1.3〜3.5で共押出し、3層フィルム「A」(本発明による)、「B」および「C」(比較例)をそれぞれ作った。PLAの層をポリエチレンフィルムの両側に押し出して、2つのPLA層の間にポリエチレンベースの層を入れたPLA/PE/PLA層を含む多層フィルムを形成する。
各成分の特性は[表1]に示してある。
【0067】
【表1】

【0068】
ポリエチレンおよびPLAの密度はASTM規格D1505で測定した。ポリエチレンの溶融指数MI2はASTM規格D1238(すなわち2.16kgの荷重下、190℃)で測定した。PLAは、233ppm水の存在下および1000ppm水の存在下で実行した以外は、同じ基準で測定した。
PLAおよびポリエチレンのMWおよびMWDはGPCを使用して求めた。PLAはクロロホルムに溶かし、25℃で測定した。
ポリエチレンのCH3およびC49の短鎖分岐指数はNMRを使用して求めた。
メタロセン触媒ポリエチレンのヘキセンコモノマー重量百分率はNMRを使用して決定した。
【0069】
全てのフィルムの厚さは100μmにした。フィルム「A」、「B」、「C」の測定特性は[表2]に示した。PLA層とmPE層は相溶性があり、メタロセン触媒ポリエチレンは高圧重合LDPEおよびEVAよりPLAとの相溶性がはるかに高いことが分かる。すなわち、mPE層からPLA層をはがす、すなわち、剥離には、それぞれフィルムBおよびC中のEVAまたはLDPE層からの剥離よりもっと大きな力が必要である。
PLAのポリエチレンへの接着性は、ポリエチレン、例えばEVAまたはLDPEの代わりにメタロセン触媒ポリエチレンを用いることによって大きく向上する。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む第1層と、シングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンを50重量%以上含む第1層に隣接する第2層とを含む多層フィルム。
【請求項2】
第1層が少なくとも50重量%のポリ(ヒドロキシカルボン酸)を含む請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
第2層が少なくとも75重量%のシングルサイト触媒、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンを含む請求項1または2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
ポリエチレン樹脂の分子量分布が3.5以下、好ましくは3.0以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
ポリエチレンがブリッジしたビス(テトラヒドロインデニル)ジクロニウムジクロライドメタロセン触媒、好ましくはエチレンビス(テトラヒドロキシインデニル)ジルコニウムジクロライドを用いて製造されたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
ポリ(ヒドロキシカルボン酸)がポリ(乳酸)である請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項7】
ポリ(乳酸)がコポリマーで、そのコモノマーが下記(1)および(2)の一つまたは複数から選択される請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層フィルム:
(1)乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、例えばグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、
(2)二価アルコールと二塩基カルボン酸との脂肪族ポリエステル。
【請求項8】
第1層と第2層とを共押出しして多層フィルムを形成する段階を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層フィルムの包装材料としての使用。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層フィルムの、クリング(cling)フィルム、ストレッチフィルム、収縮フィルム、バッグ、ラミネーションフィルム、ライナーおよびおしめフィルムとしての使用。

【公表番号】特表2012−513316(P2012−513316A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541516(P2011−541516)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067796
【国際公開番号】WO2010/072783
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】