説明

ポリエーテルスルホンからなる分離膜、その製造方法および製膜原液

【課題】
高強度、高透水性、高阻止性能および優れた耐汚濁性を有するポリエーテルスルホンからなる製膜原液、分離膜、その分離膜の製造方法を提供する。
【解決手段】
ポリエーテルスルホンと、熱誘起相分離用の溶媒とを含有する製膜原液であって、その溶媒として、3−ピリジンメタノール、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ベンジルピペリジン、リン酸トリメチル、1,3−ジオキソラン−2−オンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルスルホンからなる分離膜、製造方法および製膜原液に関し、更に詳細には、飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野、医療分野、食品工業分野などに適したポリエーテルスルホンからなる分離膜、その製造方法および製膜原液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分離膜は、飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野において、従来の砂濾過、凝集沈殿過程の代替として、水中の不純物の除去に用いられるようになってきている。また、食品工業分野においては、発酵に用いた酵母の分離除去や液体の濃縮を目的として、分離膜が用いられている。
【0003】
このように多様に用いられる分離膜は、水処理分野においては大量の水を処理する必要があるため、透水性能の向上が求められている。また、分離膜の洗浄には殺菌剤、酸、アルカリ、塩素、界面活性剤などが使用されるため、耐薬品性能が求められている。更に、病原性微生物等の混入を防ぐため、分離膜には原水が処理水に混入しないよう十分な分離特性と高い物理的強度が要求されている。このように、分離膜には、優れた分離特性、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐汚濁性および透過性能が求められている。
【0004】
このような要求を満たすために、化学的強度(耐薬品性)と物理的強度を併せ持つポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いた分離膜が使用されるようになってきている(例えば、特許文献1)。しかし、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いた分離膜は、ハロゲン分子を含有するため、焼却処分する場合に内分泌撹乱物質を発生するという問題がある。また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は疎水性が高いため、汚濁物質が強固に付着するという問題点もある。更に、ポリフッ化ビニリデン系以外の樹脂、例えばセルロース系樹脂を用いた場合には、膜の耐薬品性や物理的強度が低いという問題がある。
【0005】
上記従来の技術の問題点を解決するために、耐薬品性および機械的強度に優れたポリエーテルスルホンを用いて分離膜を製造することが検討されている。しかしながら、緻密な細孔を均一に形成させることができる熱誘起相分離法(TIPS法)をポリエーテルスルホンに対して適用し得る溶媒は知られていないため、従来の技術では、非溶媒相分離法(NIPS法)によらなければポリエーテルスルホンを製膜することはできない。
【0006】
しかし、非溶媒分離法により製造されるポリエーテルスルホンの分離膜には、粗大孔(マクロボイド)の発生が見られ、均一な細孔構造が得られないため、膜の強度が低くなってしまう。そのため、実用的な分離膜を得るには様々な工夫が必要であり、制御方法および品質管理を困難にしている。
【特許文献1】特開2005−146230号公報(請求項4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みて為されたものであり、耐薬品性、機械的強度等の点で優れたポリエーテルスルホンを用いて、高強度、高透水性、高阻止性能および優れた耐汚濁性を有する分離膜を熱誘起相分離法により製造し得る製膜原液を提供することを目的とする。また、その製膜原液を用いた分離膜およびその分離膜の製造方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の製膜原液は、ポリエーテルスルホンと、熱誘起相分離用の溶媒とを含有することを特徴とする。
【0009】
ポリエーテルスルホンは耐薬品性に優れ、機械的強度に優れた高分子であるため、得られる分離膜の耐薬品性および機械的強度を高めることができる。また、ポリエーテルスルホンは焼却時に発煙量が少なく、ハロゲンを含む有害物質の発生がないため、使用後の廃棄も容易である。
【0010】
ここで、熱誘起相分離用の溶媒は、前記製膜原液の重量を基準として15〜50重量%の前記ポリエーテルスルホンを相分離温度以上の温度で溶解させるとともに、相分離温度未満の温度で相分離を生じさせるものである。
【0011】
ここで、本明細書において、「相分離温度」とは、ポリエーテルスルホンを加熱して溶解させた溶液を常温まで冷却した場合に、その溶液から分離した固相又は液相を生ずる温度をいう。また、「常温」とは、その溶液に対して特に加熱や冷却を行なわない温度であり、具体的には0〜40℃、通常は日本薬局方に定められているように、15〜25℃付近の温度をいう。
【0012】
熱誘起相分離用の溶媒は、3−ピリジンメタノール、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ベンジルピペリジン、リン酸トリメチル、1,3−ジオキソラン−2−オン(炭酸エチレン)およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0013】
本発明の分離膜は、上記のポリエーテルスルホンを溶解させた製膜原液を用いて熱誘起相分離法により得られることを特徴とする。分離膜が平膜の場合には、上記のポリエーテルスルホンを溶解させた製膜原液を凝固液の液面上方から又は液中に膜状に吐出して冷却することにより得られる。分離膜が中空糸膜の場合には、上記のポリエーテルスルホンを溶解させた製膜原液を凝固液の液面上方から又は液中に中空糸状に吐出して冷却すると同時に、該中空糸の中心部に内径維持剤を吐出することにより得られる。
【0014】
ここで、前記内径維持剤は、常温では前記ポリエーテルスルホンを溶解せず、相分離温度以上の温度で前記ポリエーテルスルホンを溶解させるものであり、上記の熱誘起相分離用の溶媒も、相分離を生ずる条件で内径維持剤として使用することができる。
【0015】
本発明の分離膜の製造方法は、上記のポリエーテルスルホンを溶解させた製膜原液を用いて熱誘起相分離法により分離膜を得ることを特徴とする。平膜状の分離膜は、上記のポリエーテルスルホンを溶解させた製膜原液を凝固液の液面上方から又は液中に吐出ノズルを用いて膜状に吐出して冷却することにより製造される。中空糸状の分離膜は、上記のポリエーテルスルホンを溶解させた製膜原液を凝固液の液面上方から又は液中に多重吐出ノズルを用いて中空糸状に吐出して冷却すると同時に、該多重吐出ノズルの中心部から前記中空糸の中心部に内径維持剤を吐出することにより製造される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製膜原液によれば、熱誘起相分離法により高強度、高透水性、高阻止性能および優れた耐汚濁性を有するポリエーテルスルホンの分離膜を製造することが可能となる。従って、この製膜原液を用いて製造した分離膜を使用すれば、例えばフミン酸などの有機物の汚れを含んだ水を処理した場合にも透水量の低下を抑えることができ、高い耐汚濁性を有する分離膜を提供することができる。これによって、分離膜の洗浄の頻度が少なくなり、製品寿命も長くなるため、造水コストの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の製膜原液は、化1に示すポリエーテルスルホンと、熱誘起相分離用の溶媒とを含有している。ここで、本発明の製膜原液においては、ポリエーテルスルホンの分子量は、25,000〜70,000の範囲であることが好ましい。分子量がこの範囲を外れると、分離膜を製膜することができない場合があるので好ましくない。
【0018】
【化1】

ポリエーテルスルホンの濃度は、製膜原液の重量を基準(100重量%)として、15〜50重量%、好ましくは15〜35重量%である。ポリエーテルスルホンの濃度がこの濃度未満では十分な強度の膜が得られず、この濃度を超えると生成する孔の径が小さくなり、分離に際してより高い圧力を要する透過性の低い膜となる傾向が現れるので好ましくない。
【0019】
本発明の製膜原液における溶媒は、ポリエーテルスルホンを相分離温度以上の温度で溶解させるとともに、相分離温度未満で相分離を生じさせるものである。
【0020】
このような熱誘起相分離用の溶媒としては、表1に示すもの、およびこれらの2以上の混合溶媒を挙げることができる。これらの溶媒を使用すれば、熱による相分離を容易に生じ、均一な細孔構造の分離膜を得るのが容易となる。
【0021】
【表1】

図6〜図10は、ポリエーテルスルホンに対する表1の溶媒の相分離温度を測定した結果を表している。これらの結果は、ホットステージを取り付けた光学顕微鏡を用いて、以下のようにして測定したものである。まず、ポリエーテルスルホン(BASF社製、E−6020P、分子量51000)の溶液を調製し、均一に溶解するまで昇温した後、すぐに光学顕微鏡で撮影する。図11はポリエーテルスルホンの均一溶液の顕微鏡写真である。次に、この溶液をホットステージ上で放置し、温度低下に伴う溶液の状態を顕微鏡により観察する。そして、図12に示すように高分子低濃度領域が生成し始める温度を求め、この温度を相分離温度とする。このような相分離温度を濃度を変えてプロットしたのが図6〜図10のデータである。このように相分離温度を示す溶媒であれば、熱誘起相分離法を適用して細孔構造を有するポリエーテルスルホン分離膜を得ることができると判断することができる。
【0022】
本発明の製膜原液におけるポリエーテルスルホンの濃度若しくは溶媒を適宜選択することにより、又は製膜原液の冷却速度を制御することにより、十分な表面細孔数を保持しながら表面細孔径を0.01μm〜10μmの範囲で制御することが可能である。
【0023】
本発明の分離膜は、上記製膜原液を用いて、上述のように熱誘起相分離法を適用して得られる。本発明の分離膜が平膜の場合には、製膜原液を凝固液の液面上方から又は液中に膜状に吐出して冷却することにより製造される。
【0024】
本発明の分離膜が中空糸膜の場合には、ポリエーテルスルホンを溶解させた製膜原液を凝固液の液面上方から又は液中に中空糸状に吐出して冷却すると同時に、該中空糸の中心部に内径維持剤を吐出することにより得られる。
【0025】
ここで、本発明における内径維持剤は、常温では前記ポリエーテルスルホンを溶解せず、相分離温度以上の温度で前記ポリエーテルスルホンを溶解させるものである。具体的には、前述の表1に挙げる化合物および表2に挙げる化合物を挙げることができ、更には気体も内径維持剤として使用することができる。内径維持剤は、通常、製膜原液と同様に加熱して中空糸の中心部に供給され、その際の温度範囲は、製膜原液とほぼ同じである。
【0026】
【表2】

本発明における凝固液は、ポリエーテルスルホンを溶解させないものである。具体的には、表3に挙げる化合物を挙げることができる。凝固液は吐出された製膜原液を冷却するために使用されるものであり、その温度は、通常、常温又はそれ以下である。製膜原液が凝固液に接触して冷却されると、前述の図12に示すように、相分離によって粒子が生成して粒子内部の溶媒が高分子高濃度領域と分離することにより、細孔構造の分離膜を形成することになる。この粒子の大きさは冷却速度が大きいほど小さくなるので、細孔の大きさも冷却速度が大きいほど小さくなる。
【0027】
【表3】

熱誘起相分離法を用いた中空糸膜は、一般的には図1に示すような紡糸装置を使用して製造される。同図に示す紡糸装置は、ポリエーテルスルホンを均一に溶解した製膜原液9を貯留する加熱溶解槽2を有する製膜原液供給ポンプ1を備えており、この製膜原液供給ポンプ1は製膜原液9を多重吐出ノズル3に供給する。また、多重吐出ノズル3には、内径維持剤供給ポンプ4から内径維持剤5が供給される。
【0028】
図2(a)は多重吐出ノズル3の断面図を表しており、図2(b)は同図(a)の底面図の中央部分を表している。図2(a)に示すように、多重吐出ノズル3はノズルブロック11を有し、ノズルブロック11内には空洞部12が設けられており、この空洞部12には、製膜原液供給ポンプ1から製膜原液9が供給される。また、空洞部12はノズルブロック11の下面に吐出口13として開口しており、吐出口13は、図2(b)に示すように、平面視円形を成している。更に、空洞部12内には、内径維持剤供給ポンプ4(図1)に接続された内径維持剤供給管14が配設されている。この内径維持剤供給管14は空洞部12を貫いて吐出口13の中心部に達し、図2(b)に示すように、内径維持剤供給管14の中心が吐出口13の中心と一致するように固定されている。このような配置により、吐出口13と内径維持剤供給管14との間に紡糸吐出口15が形成されている。また、内径維持剤供給管14の中心部分には、前述の内径維持剤供給ポンプ4により内径維持剤5が供給される内径維持剤吐出口16が形成されている。従って、この多重吐出ノズル3では、紡糸吐出口15から中空糸状に吐出される製膜原液9の中心部に、内径維持剤吐出口16により内径維持剤5を吐出することが可能となっており、これにより中空糸膜の紡糸が可能となっている。
【0029】
図1に示すように、多重吐出ノズル3から吐出された製膜原液9および内径維持剤5は、凝固液7内に達する。ここで、多重吐出ノズル3の下面から凝固液7の液面までの距離、即ちエアーギャップ6は、製膜原液の冷却速度に関係しており、通常30mm以下が好ましく、0mm以下、即ち多重吐出ノズル3の下面が凝固液7の液面下にあってもよい。エアーギャップ6を調整することにより、製膜原液の冷却速度を制御することができ、これにより、中空糸膜に形成される表面細孔の孔径および孔数を調整することができる。
【0030】
凝固液7中で熱誘起相分離により形成された中空糸膜10は、巻き取り装置8(図1)により巻き取られる。ここで、巻き取り装置8の巻き取り速度は、製膜原液の供給量、紡糸吐出口15の大きさ等に依存するが、通常は0.15〜0.45m/secが適切である。製膜原液の供給量が多く、紡糸吐出口15の大きさが大きいほど、巻き取り装置8の巻き取り速度を大きくする必要がある。
【0031】
上記のようにして得られる中空糸膜の物性は、概ね以下のようである。
【0032】
孔径;1μm以下
透水性能;300L/m2/hr/atm以上
最大応力;3.0MPa以上
最大歪;30%以上
弾性率;50MPa以上。
【0033】
ここで、中空糸膜の透水性能は、図3に概略的に示す装置により測定した。同図に示すように、中空糸膜20の両端は2つのホルダ27,28に固定され、ホルダ27からは、貯水槽21から配管22を介してローラポンプ23により送出されるイオン交換水が、中空糸膜20の中心部分に吐出される。下流側のホルダ28には、中空糸膜20におけるイオン交換水の圧力を調整する圧力調整弁29が接続され、圧力調整弁29を出たイオン交換水は排水槽26に排出される。また、2つのホルダ27,28には、それぞれ圧力計24,25が接続されている。この装置を用いて中空糸膜20にイオン交換水を供給することにより透水性能を求めた。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
3−ピリジンメタノールに、ポリエーテルスルホン(BASF社製、E−6020P、分子量51000)を、20重量%の濃度となるよう添加し、135℃で加熱撹拌して完全に溶解した製膜原液を得た。次に、図1および図2に示す紡糸装置を用い、内径維持剤として3−ピリジンメタノールを使用し、凝固液として水を使用して、中空糸膜を製造した。このとき、エアーギャップは0mm、凝固液の温度は0℃、内径維持剤の温度は製膜原液の温度と同じ135℃、紡糸吐出口の口径は1.58mm、内径維持剤吐出口の口径は0.83mm、巻き取り装置の巻取り速度は0.17m/sである。このようにして製造した中空糸膜の断面の走査電子顕微鏡写真を図4に示した。また、この中空糸膜の物性を表4に示した。
【0035】
なお、表4における最大応力、最大歪および弾性率については、長さ50mmの中空糸膜20本を用い、島津製作所製オートグラフAGS−Jを使用して測定し、その平均値を示した。また、透水性能については、長さ200mmの5本の中空糸膜のそれぞれについて、図3に示す装置を用いて、温度25℃の条件下にイオン交換水の透水量を測定し、その平均値を示した。
【0036】
(実施例2)
3−ピリジンメタノールに、ポリエーテルスルホン(BASF社製、E−6020P、分子量51000)を、20重量%の濃度となるよう添加し、135℃で加熱撹拌して完全に溶解した製膜原液を得た。次に、図1および図2に示す紡糸装置を用い、内径維持剤として3−ピリジンメタノールを使用し、凝固液として水を使用して、中空糸膜を製造した。このとき、エアーギャップは5mm、凝固液の温度は25℃、内径維持剤の温度は製膜原液の温度と同じ135℃、紡糸吐出口の口径は1.58mm、内径維持剤吐出口の口径は0.83mm、巻き取り装置の巻取り速度は0.25m/sである。このようにして製造した中空糸膜の断面の走査電子顕微鏡写真を図5に示した。また、この中空糸膜の物性を実施例1と同様に測定し、表4に示した。
【0037】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の製膜原液によれば、高強度、高透水性、高阻止性能および優れた耐汚濁性を有するポリエーテルスルホンからなる分離膜が得られる。従って、本発明は、水道事業、食品工業分野、人工透析などの医療分野の分野などで利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】中空糸膜の製造に使用される紡糸装置の概略構成図である。
【図2】(a)は、図1の多重吐出ノズルの断面図、(b)は図1の多重吐出ノズルの開口部分の底面図である。
【図3】中空糸膜の透水性能を測定する装置の概略図である。
【図4】実施例1で得られた中空糸膜の断面の走査電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例2で得られた中空糸膜の断面の走査電子顕微鏡写真である。
【図6】リン酸トリメチルの相分離温度を示す図である。
【図7】3−ピリジンメタノールの相分離温度を示す図である。
【図8】4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンの相分離温度を示す図である。
【図9】4−ベンジルピペリジンの相分離温度を示す図である。
【図10】1,3−ジオキソラン−2−オンの相分離温度を示す図である。
【図11】均一に溶解した製膜原液の顕微鏡写真である。
【図12】相分離を生じている製膜原液の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0040】
1 製膜原液供給ポンプ
2 加熱溶解槽
3 多重吐出ノズル
4 内径維持剤供給ポンプ
5 内径維持剤
6 エアーギャップ
7 凝固液
8 巻き取り装置
9 製膜原液
10 中空糸膜
11 ノズルブロック
12 空洞部
13 吐出口
14 内径維持剤供給管
15 紡糸吐出口
16 内径維持剤吐出口
20 中空糸膜
21 貯水槽
22 配管
23 ローラポンプ
24,25 圧力計
26 排水槽
27,28 ホルダ
29 圧力調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルスルホンと、熱誘起相分離用の溶媒とを含有する製膜原液。
【請求項2】
前記溶媒は、前記製膜原液の重量を基準として15〜50重量%の前記ポリエーテルスルホンを相分離温度以上の温度で溶解させるとともに、相分離温度未満の温度で相分離を生じさせるものである請求項1記載の製膜原液。
【請求項3】
前記溶媒が、3−ピリジンメタノール、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ベンジルピペリジン、リン酸トリメチル、1,3−ジオキソラン−2−オンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものである請求項1又は2記載の製膜原液。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の製膜原液を用いて熱誘起相分離法により得られる分離膜。
【請求項5】
前記分離膜が平膜であり、請求項1乃至3の何れかに記載の製膜原液を、凝固液の液面上方から又は液中に膜状に吐出して冷却することにより得られる請求項4記載の分離膜。
【請求項6】
前記分離膜が中空糸膜であり、請求項1乃至3の何れかに記載の製膜原液を、凝固液の液面上方から又は液中に中空糸状に吐出して冷却すると同時に、該中空糸の中心部に内径維持剤を吐出することにより得られる請求項4記載の分離膜。
【請求項7】
前記内径維持剤は、常温では前記ポリエーテルスルホンを溶解せず、相分離温度以上の温度で前記ポリエーテルスルホンを溶解させることができるものである請求項6記載の分離膜。
【請求項8】
前記内径維持剤は、3−ピリジンメタノール、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ベンジルピペリジン、リン酸トリメチル、1,3−ジオキソラン−2−オン、フタル酸ジメチル、4−ベンジルピリジン、m−キシレン−α,α’−ジアミン、1−アセトナフトン、2−ピロリドン、6−ヘキサノラクトン、3,4−ジメトキシベンジルアルコール、1−ナフトアルデヒド、o−ニトロアニソール、4−メチルキノリン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、ジプロピレントリアミン、N−(3−アミノプロピル)モルホリン、2−(1−ピペラジニル)エチルアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、スルホラン、o−メトキシフェノール、p−エトキシベンズアルデヒド、γ−ブチロラクトン、o−アセトアミノフェノン、N−フェニルピペラジン、トリエチレンテトラミン、2−アセチルピロール、ベンゾフェノン、アセトアニリド、m−アニリノフェノール、p−エチルフェノール、ジプロピルスルホン、イミダゾール、o−ヒドロキシアセトフェノン、2−メトキシ−4−メチルフェノール、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2,6−ジクロロフェノール、クマリン、o−ニトロベンジルアルコール、o−ヒドロキシビフェニル、桂皮アルコール、3−ブロモアニリンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものである請求項7記載の分離膜。
【請求項9】
前記凝固液は、ポリエーテルスルホンを溶解させないものである請求項5乃至8の何れかに記載の分離膜。
【請求項10】
前記凝固液は、水、フタル酸−2−エチルヘキシル、フタル酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジブチル、1−ドデカンチオール、スクアレン、トリブチリン、トリデカン、ペンタデカン、テトラデカン、1−ヘキサデセン、1−デカノール、オレイン酸、1−テトラデセン、1−フェニルオクタン、n−ドデカン、1−ドデセン、1−ノナール、フマル酸ジエチル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アクリル酸−2−エチルヘキシル、n−吉草酸、ミリスチン酸イソプロピル、N−n−ブチルエタノールアミン、オレイン酸ブチル、ジプロピレングリコール、2−ウンデカノール、1−フェニルノナン(n−ノニルベンゼン)、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、1−オクタデセン、臭化ドデシル、n−ヘキサデカン、n−へプタデカン、ブチルフタリルグリコール酸ブチル、n−オクタデカノール、エイコサン、n−ノナデカン、ジ−2−プロパノールアミン、1−ウンデカノール、2−ウンデカノン、2−オクタノール、1−ヘプタナール、1−ヘキサデカノール、ステアリン酸、トリイソプロパノールアミン、パルミチン酸メチル、オクタデカン、グリセリンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものである請求項9記載の分離膜。
【請求項11】
請求項1乃至3の何れかに記載の製膜原液を用いて熱誘起相分離法により分離膜を得る分離膜の製造方法。
【請求項12】
前記分離膜が平膜であり、請求項1乃至3の何れかに記載の製膜原液を凝固液の液面上方から又は液中に吐出ノズルを用いて膜状に吐出して冷却する請求項11記載の分離膜の製造方法。
【請求項13】
前記分離膜が中空糸膜であり、請求項1乃至3の何れかに記載の製膜原液を凝固液の液面上方から又は液中に多重吐出ノズルを用いて中空糸状に吐出して冷却すると同時に、該多重吐出ノズルの中心部から前記中空糸の中心部に内径維持剤を吐出する請求項11記載の分離膜の製造方法。
【請求項14】
前記内径維持剤は、常温では前記ポリエーテルスルホンを溶解せず、相分離温度以上の温度で前記ポリエーテルスルホンを溶解させるものである請求項13記載の分離膜の製造方法。
【請求項15】
前記内径維持剤は、3−ピリジンメタノール、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ベンジルピペリジン、リン酸トリメチル、1,3−ジオキソラン−2−オン、フタル酸ジメチル、4−ベンジルピリジン、m−キシレン−α,α’−ジアミン、1−アセトナフトン、2−ピロリドン、6−ヘキサノラクトン、3,4−ジメトキシベンジルアルコール、1−ナフトアルデヒド、o−ニトロアニソール、4−メチルキノリン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、ジプロピレントリアミン、N−(3−アミノプロピル)モルホリン、2−(1−ピペラジニル)エチルアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、スルホラン、o−メトキシフェノール、p−エトキシベンズアルデヒド、γ−ブチロラクトン、o−アセトアミノフェノン、N−フェニルピペラジン、トリエチレンテトラミン、2−アセチルピロール、ベンゾフェノン、アセトアニリド、m−アニリノフェノール、p−エチルフェノール、ジプロピルスルホン、イミダゾール、o−ヒドロキシアセトフェノン、2−メトキシ−4−メチルフェノール、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2,6−ジクロロフェノール、クマリン、o−ニトロベンジルアルコール、o−ヒドロキシビフェニル、桂皮アルコール、3−ブロモアニリンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものである請求項14記載の分離膜の製造方法。
【請求項16】
前記凝固液は、ポリエーテルスルホンを溶解させないものである請求項11乃至15の何れかに記載の分離膜の製造方法。
【請求項17】
前記凝固液は、水、フタル酸−2−エチルヘキシル、フタル酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジブチル、1−ドデカンチオール、スクアレン、トリブチリン、トリデカン、ペンタデカン、テトラデカン、1−ヘキサデセン、1−デカノール、オレイン酸、1−テトラデセン、1−フェニルオクタン、n−ドデカン、1−ドデセン、1−ノナール、フマル酸ジエチル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アクリル酸−2−エチルヘキシル、n−吉草酸、ミリスチン酸イソプロピル、N−n−ブチルエタノールアミン、オレイン酸ブチル、ジプロピレングリコール、2−ウンデカノール、1−フェニルノナン(n−ノニルベンゼン)、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、1−オクタデセン、臭化ドデシル、n−ヘキサデカン、n−へプタデカン、ブチルフタリルグリコール酸ブチル、n−オクタデカノール、エイコサン、n−ノナデカン、ジ−2−プロパノールアミン、1−ウンデカノール、2−ウンデカノン、2−オクタノール、1−ヘプタナール、1−ヘキサデカノール、ステアリン酸、トリイソプロパノールアミン、パルミチン酸メチル、オクタデカン、グリセリンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものである請求項11乃至16の何れかに記載の分離膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−95812(P2009−95812A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272481(P2007−272481)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】