説明

ポリオキシアルキレン誘導体、イソシアネート組成物及び感熱記録材料

【課題】 高感度で、色再現性及び生保存性に優れる感熱記録材料に用いるマイクロカプセルの原料の提供。
【解決手段】下記式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体。
A−(O−L1)n−O−CO−L2−(OH)m (1)
[式(1)中、Aは、アルキル基、アリール基又はアシル基を、L1はアルキレン基を、nは10〜500の数を、mは1〜3の数を示し、L2は、芳香族基、−O−、−S−、−CONR1−及びNR1CO−から選ばれる1種又は2種以上の基を含んでいてもよいm+1価の脂肪族炭化水素鎖を示す。R1は、水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシアルキレン誘導体、イソシアネート組成物及びマイクロカプセルに関する。さらに詳しくは、本発明は感熱記録材料に利用することができるマイクロカプセル、このマイクロカプセルを用いた感熱記録材料及び多色感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンター等の記録媒体として普及している感熱記録材料は、主として支持体上に電子供与性染料前駆体の固体分散物を塗布乾燥させたものである。電子供与性染料前駆体を使用した記録方式は、材料も入手し易くかつ高い発色濃度や発色速度を示すとの利点を有するが、記録後の保存条件や加熱あるいは溶剤等の付着により発色し易く、記録画像の保存性や信頼性に問題があり、多くの改良が検討されてきた。
【0003】
記録画像の保存性を改善するための一つの方法として、電子供与性染料前駆体をマイクロカプセル中に内包し、記録層中で顕色剤と該染料前駆体とを隔離することにより、画像の保存性を高める方式が提案されている。この方式によって高い発色性と画像安定性を得ることができる。
【0004】
上記以外の感熱記録材料としては、ジアゾニウム塩化合物を利用した、いわゆるジアゾ型の感熱記録材料も研究されている。このジアゾニウム塩化合物は、フェノール誘導体や活性メチレン基を有する化合物など(カプラー)と反応して染料を形成するものであるが、同時に感光性も有し、光照射によりその活性を失うものである。これらの性質を利用して最近では感熱記録材料にも応用され、ジアゾニウム塩化合物とカプラーを熱で反応させて画像を形成し、その後、光照射して定着させることができる光定着型感熱記録材料が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、ジアゾニウム塩化合物を用いた記録材料は、化学的活性が高いため、低温であってもジアゾニウム塩化合物とカプラーが徐々に反応し、貯蔵寿命(シェルフライフ)が短いとの欠点があった。これに対する一つの解決手段として、ジアゾニウム塩化合物をマイクロカプセルで包含し、カプラーや水、塩基性化合物から隔離する方法が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
また、感熱記録材料の応用分野の一つとして、多色感熱記録材料が注目されてきている。感熱記録による多色画像の再現は、電子写真記録方式やインクジェット方式に比べて難しいと言われてきたが、この点に関してはすでに、支持体上に電子供与性染料前駆体と顕色剤を主成分とする感熱発色層又はジアゾニウム塩化合物と該ジアゾニウム塩化合物と加熱時に反応して発色するカプラーを含有する感熱発色層を2層以上積層することによって多色感熱記録材料を得られることが見い出されている。多色感熱記録材料においては、優れた色再現性を得るためにはマイクロカプセルの熱発色特性を高度に制御することが必須である。
【0007】
従来、電子供与性染料前駆体やジアゾニウム塩化合物をマイクロカプセル中に包含させるには、一般に有機溶媒中にこれらの化合物を溶解させ(油相)、これを水溶性高分子の水溶液中(水相)に加えて乳化分散させる。このとき、壁材となるモノマーあるいはプレポリマーを有機溶媒相側か水相側の何れかに添加しておくことにより有機溶媒相と水相の界面に高分子壁を形成させマイクロカプセル化することができる(例えば、非特許文献3及び4参照。)。形成されるマイクロカプセル壁としては、ゼラチン、アルギン酸塩、セルロース類、ポリウレア、ポリウレタン、メラミン樹脂、ナイロンなど様々なものが使用可能である。また、ポリウレアやウレタン樹脂は、そのガラス転移温度が室温乃至200℃程度にあるためカプセル壁が熱応答性を示し、感熱記録材料を設計するのに好適である。
【0008】
マイクロカプセルの製法としては、ポリウレタンあるいはポリウレア壁を有するマイクロカプセルの場合、まず有機溶媒中にジアゾニウム塩や電子供与性染料前駆体を溶解し、これに多価イソシアネート化合物を添加し、この有機相溶液を水溶性高分子水溶液中で乳化させる。その後、水相に重合反応促進の触媒を添加するか又は乳化液の温度を上げて多価イソシアネート化合物を水等の活性水素を有する化合物と重合させてカプセル壁を形成させる方法が従来から知られている。
【0009】
上記ポリウレアあるいはポリウレタン壁の形成材料である多価イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシナネートとトリメチロールプロパンの付加体、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加体が主として使用されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
しかしながら、上記のような多価イソシアネート化合物を用いたポリウレアあるいはポリウレタンのカプセル壁であっても、前述したジアゾニウム塩化合物を用いた際の短いシェルフライフについてはまだ充分に改善されていない。即ち、シェルフライフが充分に長くない感熱記録材料は、製造後使用するまでの間に、例えば高温高湿の条件下に曝された場合に、「かぶり」と呼ばれる地肌の発色が現われ、印字画像の視認性を低下させる。この様な問題を解決する為には例えばマイクロカプセルの壁厚を厚くする等の手段がある。しかしながらこの様な手法を用いると熱印字時の発色感度の低下を引き起こす。従って、高い発色性を維持しながらシェルフライフを更に向上させることは非常に困難であった。
【0010】
この様な問題を解決する為に、多価イソシアネート化合物の一部をモノアルコール化合物と予め反応させた後に用いる方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながらこの場合に用いられているモノアルコールの具体例は炭素数が2〜9程度の化合物であり、アルコールの使用率を上げると感度は向上するもののかぶりは増加する。逆にアルコールの使用率を下げるとかぶりの防止は可能であるが感度向上の効果は不十分である。
【0011】
さらに、前記多色感熱記録材料においては、シアン、マゼンタ及びイエローの感熱記録層が設けられており、これらは異なった加熱温度の付与により印字されることから、通常の感熱記録材料の感熱記録層に比べて更に優れた熱応答性が求められる。上記従来のポリウレアあるいはポリウレタンのカプセル壁は、この要求を充分に満たすとは言えない。
【0012】
更に感熱記録材料の感熱発色層中には熱感度の向上の為の熱増感剤を添加する事ができる。熱増感剤としては既に、p−トルエンスルホンアミド等が優れた性能を示す事が知られているが(例えば、特許文献4参照。)、更に優れた性能を示すものとして特定の置換基を有するアリールスルホンアミド化合物が挙げられる(例えば、特許文献5参照。)。多色感熱記録材料においては該感熱発色層のヘイズを小さくする為に、上記のアリールスルホンアミド化合物を乳化して用いる必要がある。乳化の方法に関しては特に限定されるものではなく、従来の公知の方法を使用する事ができる。具体的には上記のアリールスルホンアミド化合物を水に難溶性又は不溶性の有機溶剤に溶解し、これを界面活性剤及び/又は水溶性高分子を保護コロイドとして有する水相と混合、攪拌し、乳化分散物とする(例えば、特許文献6参照。)。
【0013】
しかしながら、かかる熱増感剤は通常結晶性物質であることから、これを含む乳化物は長期間の経時により結晶の析出が発生する等の問題点を生ずる場合があり、かかる熱増感剤を用いずに、あるいは少量の使用で十分な熱感度を有するマイクロカプセルの開発が望まれていた。
【0014】
このような課題に鑑み、少なくとも1種の(A)分子中に1個の活性水素を有し、かつ平均分子量が500から2万の化合物と(B)分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートとの付加物を含むイソシアネート化合物の重合により得られるポリマーからなることを特徴とする熱応答性マイクロカプセルが開示されており、かぶりと感度の両立するマイクロカプセルが提供されている(特許文献7参照。)。ここで分子中に1個の活性水素を有し、かつ平均分子量が500から2万の化合物には、ポリオキシアルキレン、ポリエステル等のポリマーしか例示されておらず、また実施例には活性水素を有する官能基が水酸基であるポリオキシアルキレン誘導体しか記載されていない。一般にポリオキシアルキレン誘導体は、アルコールを開始末端として環状エーテルの開環重合により得られるが、このような反応による場合ポリオキシアルキレン鎖と末端OH基の間にはアルキレン基が存在するだけであり、更なるマイクロカプセルの高機能化を図ることは困難であった。
【0015】
一方ポリオキシアルキレン鎖と末端OH基の間にエステル結合とアミノ基を有するポリオキシアルキレン誘導体が知られているが、イソシアネート組成物とした場合にはアミノ基の塩基性のため経時安定性に問題があった(非特許文献5)。
【0016】
また、少なくともイソシアネート化合物を用いて製造されるマイクロカプセルであって、前記イソシアネート化合物は、(A)分子中にイソシアネート基を少なくとも2つ有する化合物と、(B)片方の末端に活性水素を含む官能基を2個以上有する、ポリエーテル部分の重合度が10〜500のポリエーテル誘導体と、の反応生成物であることを特徴とするマイクロカプセルが開示されているが、(B)のうち末端に水酸基を持つ化合物を用いたものは開示されていない(特許文献8参照)。
【特許文献1】特開昭62−212190号公報
【特許文献2】特開平4−261893号公報
【特許文献3】特開平5−317694号公報
【特許文献4】特公平6−55546号公報
【特許文献5】特開平9−39389号公報
【特許文献6】特開平2−141279号公報
【特許文献7】特開平10−114153号公報
【特許文献8】特開2004−345105号公報
【非特許文献1】佐藤弘次ら著「画像電子学会誌」、第11巻、第4号、290−296頁、1982年、など
【非特許文献2】宇佐美智正ら著「電子写真学会誌」、第26巻、第2号、115〜125頁、1987年、など
【非特許文献3】近藤朝士著「マイクロカプセル」、日刊工業新聞社、1970年
【非特許文献4】近藤保ら著「マイクロカプセル」、三共出版、1977年
【非特許文献5】Katsutoshi Nagaiら、Chemistry Letters 32,518−519(2003年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、感熱記録材料及び多色感熱記録材料に好適に使用することができる、カプラーあるいは顕色剤との接触により高い発色性示し、かつ生保存性に優れたマイクロカプセル、これをを有する感熱記録材料、特に高感度で、色再現性及び生保存性に優れた多色感熱記録材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
斯かる実情に鑑み、本発明者は鋭意研究を行った結果、新たにポリオキシアルキレン誘導体を見出し、これと多官能性イソシアネートとの反応生成物を含むイソシアネート組成物を原料としたマイクロカプセルを用いれば、上記課題が解決された感熱記録材料が得られることを見出し本発明を完成した。
即ち本発明は、次のものを提供するものである。
【0019】
<1> 下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体。
【0020】
A−(O−L1)n−O−CO−L2−(OH)m (1)
【0021】
[一般式(1)中、Aは、アルキル基、アリール基又はアシル基を示し、L1はアルキレン基を示し、nは、ポリエーテル基の平均付加モル数で10〜500の数を示し、mは1〜3の数を示し、L2は、芳香族基、−O−、−S−、−CONR1−及び−NR1CO−から選ばれる1種又は2種以上の基を含んでいてもよいm+1価の脂肪族炭化水素鎖を示すが、−O−、−S−、−CONR1−及び−NR1CO−のから選ばれる2種以上の基が隣接することはない。R1は、水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を示す。]
【0022】
<2> 一般式(1)中、mが2である<1>記載のポリオキシアルキレン誘導体。
【0023】
<3> 2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートと<1>又は<2>記載のポリオキシアルキレン誘導体との反応生成物を含むイソシアネート組成物。
【0024】
<4>イソシアネートと多官能アルコールとの反応により得られたポリウレタンであって、原料として使用したイソシアネートの少なくとも1種が、<3>記載のイソシアネート組成物であることを特徴とするポリウレタン。
<5> ポリウレア又はポリウレタン/ウレア壁を有するマイクロカプセルであって、原料として使用したイソシアネートの少なくとも1種が、<3>記載のイソシアネート組成物であることを特徴とするマイクロカプセル。
【0025】
<6> 支持体上に、ジアゾニウム塩化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーを含む感熱記録層、又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと顕色剤を含む感熱記録層を有する感熱記録材料であって、該マイクロカプセルが、<5>記載のマイクロカプセルであることを特徴とする感熱記録材料。
【0026】
<7> 支持体上に、シアン、マゼンタ及びイエローの感熱記録層を有する多色感熱記録材料である<6>記載の感熱記録材料。
【発明の効果】
【0027】
本発明のポリオキシアルキレン誘導体を原料とするマイクロカプセルを用いた感熱記録材料は、高感度で、色再現性及び生保存性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<ポリオキシアルキレン誘導体>
本発明のポリオキシアルキレン誘導体は下記一般式(1)で表されるものである。
【0029】
A−(O−L1)n−O−CO−L2−(OH)m (1)
【0030】
[一般式(1)中、Aは、アルキル基、アリール基又はアシル基を示し、L1はアルキレン基を示し、nは、ポリエーテル基の平均付加モル数で10〜500の数を示し、mは1〜3の数を示し、L2は、芳香族基、−O−、−S−、−CONR1−及び−NR1CO−から選ばれる1種又は2種以上の基を含んでいてもよいm+1価の脂肪族炭化水素鎖を示すが、−O−、−S−、−CONR1−及び−NR1CO−のから選ばれる2種以上の基が隣接することはない。R1は、水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を示す。]
【0031】
一般式(1)中、Aは、アルキル基、アリール基又はアシル基を示す。
ここで、アルキル基は総炭素数1〜30のものが好ましく、特に1〜20のものが好ましい。また、該アルキル基は分岐鎖を有していてもよく、置換基を有していてもよい。
該置換基としては、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基が好ましい。このような(置換)アルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、イソプロピル、ベヘニル、ベンジル、アリル、オレイル、メトキシエチル等が挙げられる。
【0032】
Aで示されるアリール基は総炭素数6〜30のものが好ましく、特に6〜20のものが好ましい。
該アリール基は置換基を有していてもよく、該置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基が好ましく、中でも特にアルキル基、アルコキシ基が好ましい。このような(置換)アリール基としては、フェニル基、ノニルフェニル、オクチルフェニル、フルオロフェニル、スチリルフェニル、フェニルエテニルフェニル、メトキシフェニル等が挙げられる。
【0033】
Aで示されるアシル基は総炭素数2〜30のものが好ましく、特に2〜20のものが好ましい。該アシル基は脂肪族でも芳香族のアシル基でもよく、また置換基を有していてもよく、また分岐を有していてもい。該置換基にはアミノ基、ニトロ基は含まれず、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基が好ましい。このようなアシル基としてはアセチル、ベンゾイル、(メタ)アクリロイル、オレオイル、ラウロイル、ステアロイル、メトキシベンゾイル等が挙げられる。
このようなAのうち、アルキル基又はアリール基が好ましく、特にアルキル基が好ましい。
【0034】
一般式(1)中、L1で示されるアルキレン基は総炭素数2〜20のものが好ましく、特に2〜10のものが好ましい。該アルキレン基は置換基を有していてもよく、また分岐を有していてもよく、前記置換基としてはアリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アシル基が好ましく、中でも特にアリール基が好ましい。このようなアルキレンとしては、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、フェニルエチレン、シクロヘキシレン、ビニルエチレン、フェノキシメチルエチレン等が挙げられる。
【0035】
繰り返し単位(O−L1)は、n個の繰り返しにおいてそれぞれ独立の基であってもよいが、同一の基であることが特に好ましい。このような繰り返し単位を有するポリオキシアルキレンとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンキシド、ポリテトラメチレンオキシド、ポリスチレンオキシド、ポリシクロヘキシレンオキシド、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ブロック共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドランダム共重合体等が挙げられる。
nはポリエーテル基の平均付加モル数であり、10〜500の数を示すが、10−400が好ましく、特に10−300が好ましい。
【0036】
mは水酸基の数で1〜3を示すが、1又は2が好ましく、特に2が好ましい。
【0037】
2は、芳香族基、−O−、−S−、−CONR1−及び−NR1CO−から選ばれる1種又は2種以上の基を含んでいてもよいm+1価の脂肪族炭化水素鎖を示すが、−O−、−S−、−CONR1−及び−NR1CO−のから選ばれる2種以上の基が隣接することはない。
このようなL2のうち、芳香族基及び脂肪族基からなる炭化水素鎖; −O−、−S−、−CONR1−及び−NR1CO−から選ばれる1種又は2種以上の基を互いに隣接しないようにして有する脂肪族基及び芳香族基が好ましく、特に、芳香族基及び脂肪族基からなる炭化水素鎖が好ましい。更に、このような芳香族基及び脂肪族基からなる炭化水素鎖のうち、OH基がフェノール性水酸基となるようなものが特に好ましい。
1は、水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を示すが、炭素原子数1〜8のアルキル基が好ましい。
上記、炭化水素鎖(及び芳香族基)は、さらに置換基を有していてもよく、このような置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基が好ましいものとして挙げられ、中でもアルキル基、アルコキシ基が特に好ましい。
2の炭素原子数は、1〜40が好ましく、特に6〜25が好ましい。
2の具体例を以下に示す。
【0038】
【化1】

【0039】
次に、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体の具体例を以下に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
製造方法
本発明の一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体は、下記一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン誘導体と下記一般式(3)で表されるカルボン酸類とを反応させることにより製造することができる。この際、必要に応じて水酸基には保護基をかけておき、エステル化後に脱保護することもできる。保護基としてはベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0044】
A−(O−L1)n−OH (2)+ HOOC−L2−(OH)m (3) → (1)
【0045】
<イソシアネート組成物>
本発明のイソシアネート組成物は、2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートと本発明のポリオキシアルキレン誘導体との反応生成物を含む組成物である。
上記多官能イソシアネートとしては、例えば、分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物として、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4−クロロ−m−キシリレンジイソシアネート、2−メチル−m−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。更にこれらの2官能イソシアネート化合物とエチレングリコール類やビスフェノール類等の2官能アルコール及びフェノール類との付加反応物も利用できる。
【0046】
更に、3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシーネート化合物も利用できる。この様な多官能イソシーネートの例としては、上記2官能イソシアネート化合物を主原料としこれらの3量体(ビューレット又はイソシアヌレート)、トリメチロールプロパン等のポリオールと2官能イソシアネート化合物の付加体として多官能としたもの、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の重合性基を有するイソシアネート化合物の重合体、リジントリイソシアネート、等も用いることができる。
【0047】
上述した多官能イソシアネートの内、キシリレンジイソシアナート、トリレンジイソシアネート、又は、キシレンジイソシアネート及びその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びその水添物等を主原料としこれらの3量体(ビューレット又はイソシヌレート)の他、トリメチロールプロパンとの付加体(アダクト)として多官能としたものが好ましい。これらの化合物については、岩田敬治編「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社発行、1987)に詳しく記載されている。
【0048】
上記の中でも、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンとp−キシリレンジイソシアネート又はm−キシリレンジイソシアネートとの付加物が好ましく、特に、p−キシリレンジイソシアネート及びm−キシリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンとp−キシリレンジイソシアネート又はm−キシリレンジイソシアネートとの付加物が好ましい。
【0049】
本発明のイソシアネート組成物を製造するに際、上記イソシアネートのイソシアネート基と、一般式(1)で表される化合物中の水酸基のモル比としては、1.5/1〜10/1であることが好ましく、特に2/1〜5/1が好ましい。
上記の反応モル比率が1.5/1以上であれば、カプセル化反応を行なう場合に十分な量のイソシアネート基を確保でき、カプセル化反応を容易に行わせることができる。また、上記反応モル比率が10/1以下であれば、本発明のマイクロカプセルを感熱記録材料に用いた場合に感度を向上させることができる。
【0050】
本発明のイソシアネート組成物は、少なくとも一般式(1)で表される化合物と、分子内にイソシアネート基を少なくとも2個有する化合物とを、活性水素を持たない有機溶剤中で、加熱(約50〜100℃)しながら攪拌することにより、あるいはオクチル酸第1錫やジブチル錫ジアセテート等の触媒を添加しながら比較的低温(約40〜70℃)で反応させることにより、容易に得ることができる。
上記活性水素を持たない有機溶媒の具体例としては、例えば、酢酸エチル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトン、アセトニトリル、トルエン、等が挙げられる。
尚、本発明のイソシアネート組成物の製造に供される、一般式(1)で表される化合物、及び分子内にイソシアネート基を少なくとも2個有するイソシアネート化合物は、それぞれ1種単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0051】
(マイクロカプセル)
本発明のマイクロカプセルは、ポリウレタン及び/又はウレア壁を有するマイクロカプセルにおいて、原料として使用したイソシアネートの少なくとも1種が、上記のイソシアネート組成物であることを特徴とする。
また「ポリウレタン及び/又はウレア壁」とは、ポリウレタン壁、ポリウレア壁、又はポリウレタンとポリウレアの混合壁を言う。
すなわち、本発明のマイクロカプセルは、イソシアネート化合物を用いるマイクロカプセルの製造において、使用するイソシアネート化合物が少なくとも前述した本発明のイソシアネート組成物を含むことを特徴とするポリウレタン及び/又はウレア壁を有するマイクロカプセルである。
【0052】
前述のイソシアネート組成物は、本発明のマイクロカプセルの製造における原料(カプセル壁材)として好適に提供される。本発明のマイクロカプセルの製造の際、上記本発明のイソシアネート組成物以外に、公知の分子内にイソシアネート基を少なくとも2個有する化合物を併用することもできる。その具体例としては、上述した2官能及び多官能イソシアネート化合物の中から適宜に選択することができる。尚、本発明のイソシアネート組成物及び他の公知多官能イソシアネート化合物は、各々単独で用いても2種以上を併用することもできる。
本発明のマイクロカプセルの製造において、本発明のイソシアネート組成物と他の公知多官能イソシアネート化合物類との質量比は、100/0〜5/95が好ましく、特に50/50〜5/95が好ましい。
【0053】
本発明のマイクロカプセルの製造は、本発明のイソシアネート組成物を含むイソシアネートと、分子内に2個以上の活性水素を有する化合物との反応で行なわれるのが望ましい。上記分子内に2個以上の活性水素を有する化合物の具体例としては、例えば、水の他、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール系化合物、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の多価アミン系化合物等、又はこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも特に水を用いて重合させるのが好ましい。この結果としてポリウレタン及び/又はポリウレア壁を有するマイクロカプセルが製造される。
上記の重合は、好ましくは10〜70℃、より好ましくは20〜50℃の温度範囲で、好ましくは30分〜10時間、より好ましくは1時間〜5時間かけて反応させることで容易に行われる。
【0054】
マイクロカプセルの製造に必要な他の成分、即ち、カプセルに封入する物質、疎水性溶媒、水相媒体等は、当該技術の現状に対応するものが使用可能である。カプセルに封入することの可能な物質の例としては、例えば、香料油、植物保護剤、反応性接着剤、ジアゾ化合物、電子供与性染料前駆体、及び医薬等が挙げられる。
本発明のマイクロカプセルを感熱記録材料に適用する場合には、ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルとして製造するのが好ましい。該ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を用いる場合には、それらを高沸点有機溶媒、必要ならば更に低高沸点有機溶媒を加えた溶媒に溶解させて、マイクロカプセルに内包させる形態が好ましい。
【0055】
(感熱記録材料)
本発明の感熱記録材料は、上述した本発明のマイクロカプセルを記録層に含む記録材料であり、感熱記録層を含む感熱記録材料であることが好ましく、更に、支持体上に、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルとカプラー、及び/又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと顕色剤を含有する感熱記録層を設けた感熱記録材料に適用することが好ましい。
更に、本発明の多色感熱記録材料は、支持体上に、シアンに発色する感熱記録層と、マゼンタに発色する感熱記録層と、イエローに発色する感熱記録層と、を備え、上記感熱記録層の各々が、ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセル及びカプラー、又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセル及び顕色剤を含有する多色感熱記録材料であって、該マイクロカプセルの少なくとも1種が、本発明のマイクロカプセルであることがより好ましい態様である。
本発明においては、上記支持体として透明支持体を用いた場合、該支持体の感熱記録層の設けられた面と反対の面に所望によりブラックの感熱記録層が設けられてもよい。
【0056】
本発明のマイクロカプセル中に内包される電子供与性染料前駆体としては、トリアリールメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、キサンテン系化合物、スピロピラン系化合物等が挙げられるが、特にトリアリールメタン系化合物及びキサンテン系化合物が、発色濃度が高く有用である。
【0057】
これらの具体例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6ジメチルアミノフタリド(即ちクリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノ)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,3−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(o−メチル−p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(o−メチル−p−ジエチルアミノフェニル)−3−(1’−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン(p−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(p−クロロアニリノ)ラクタム、2−ベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−シクロヘキシルメチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−イソアミルエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−オクチルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−エトキシエチルアミノ−3−クロロ−2−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンジルロイコメチレンブルー、3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3,3’−ジクロロ−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルピロジナフトピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン等が挙げられる。
上記電子供与性染料前駆体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0058】
電子供与性染料前駆体と組み合わせて用いられる電子受容性化合物(顕色剤(マイクロカプセルには内包されない))としては、フェノール誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。これらの中でも特に、ビスフェノール類、ヒドロキシ安息香酸エステル類が好ましい。
例えば、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸及びその多価金属塩、3,5−ジ(tert−ブチル)サリチル酸及びその多価金属塩、3−α,α−ジメチルベンジルサリチル酸及びその多価金属塩、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−フェニルフェノール及びp−クミルフェノールを挙げることができる。
上記電子受容性化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0059】
本発明の感熱記録層には、その反応を促進するための増感剤を添加することが好ましい。増感剤としては、分子内に芳香族性の基と極性基を適度に有している低融点有機化合物が好ましい。その具体例としては、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、α−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフチルベンジルエーテル、β−ナフトエ酸フェニルエステル、α−ヒドロキシ−β−ナフトエ酸フェニルエステル、β−ナフトール−(p−クロロベンジル)エーテル、1,4−ブタンジオールフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−メチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−p−エチルフェニルエーテル、1,4−ブタンジオール−m−メチルフェニルエーテル、1−フェノキシ−2−(p−トリルオキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−エチルフェノキシ)エタン、1−フェノキシ−2−(p−クロロフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、p−トルエンスルホンアミド、4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニルスルホンアミド、4−n−ペンチルオキシフェニルスルホンアミド等が挙げられる。
上記増感剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0060】
本発明のマイクロカプセルに内包されるジアゾ化合物は、公知のものを使用することができる。該ジアゾ化合物は、下記一般式で表わされる化合物をいう。
Ar−N2+-
上式中、Arはアリール基を表わし、X-は酸アニオンを表す。
【0061】
上記ジアゾ化合物は、フェノール化合物あるいは活性メチレンを有する化合物と反応し、いわゆる染料を形成可能であり、さらに光(一般的には紫外線)照射により分解し、脱窒素してその反応活性を失うものである。
該ジアゾ化合物の具体例としては、2,5−ジブトキシ−4−モルホリノベンゼンジアゾニウム、2,5−オクトキシ−4−モルホリノベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−(N−(2−エチルヘキサノイル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、2,5−ジエトキシ−4−(N−(2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)ブチリル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−トリルチオベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−クロルベンゼンチオジアゾニウム、2,5−ジヘプチルオキシ−4−クロルベンゼンチオジアゾニウム、3−(2−オクチルオキシエトキシ)−4−モロホリノベンゼンジアゾニウム、4−N,N−ジヘキシルアミノ−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウム、4−(N−ヘキシル−N−(1−メチル−2−(p−メトキシフェノキシ)エチル)アミノ)−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウム及び4−N−ヘキシル−N−トリルアミノ−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウムの塩等を挙げることができる。
【0062】
ジアゾ化合物内の酸アニオンには、ヘキサフルオロフォスフェート塩、テトラフルオロボレート塩、1,5−ナフタレンスルホネート塩、パーフルオロアルキルカルボネート塩、パーフルオロアルキルスルフォネート塩、塩化亜鉛塩、及び塩化錫塩などを用いることができる。好ましくは、ヘキサフルオロフォスフェート塩、テトラフルオロボレート塩、及び1,5−ナフタレンスルホネート塩が、水溶性が低く、有機溶剤に可溶であるので好適である。
上記ジアゾ化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0063】
ジアゾ化合物を内包するマイクロカプセルを用いた感熱記録層においては、アリールスルフォンアミド化合物などの公知の熱増感剤が添加されていてもよい。具体的には、トルエンスルホンアミドやエチルベンゼンスルホンアミドなどが挙げられる。該熱増感剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0064】
ジアゾ化合物と反応して色素を形成するカプラーは、乳化分散及び/又は固体分散することにより微粒子化して使用される。
該カプラーの具体例としてはレゾルシン、フルルグルシン、2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸モルホリノプロピルアミド、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ−6−スルファニルナフタレン、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸エタノールアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸オクチルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸−N−ドデシルオキシプルピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸テトラデシルアミド、アセトアニリド、アセトアセトアニリド、ベンゾイルアセトアニリド、2−クロロ−5−オクチルアセトアセトアニリド、2,5−ジ−n−ヘプチルオキシアセトアニリド、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’−オクチルフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’,4’,6’−トリクロロフェニル)−3−ベンズアミド−5−ピラゾロン、1−(2’,4’,6’−トリクロロフェニル)−3−アニリノ−5−ピラゾロン、1−フェニル−3−フェニルアセトアミド−5−ピラゾロン、1−(2−ドデシルオキシフェニル)−2−メチルカーボネイトシクロヘキサン−3,5−ジオン、1−(2−ドデシルオキシフェニル)シクロヘキサン−3,5−ジオン、N−フェニル−N−ドデシルバルビツール酸、N−フェニル−N−(2,5−ジオクチルオキシフェニル)バルビツール酸及びN−フェニル−N−(3−ステアリルオキシ)ブチルバルビツール酸を挙げることができる。
上記カプラーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。該カプラーを2種以上併用し、目的の発色色相を得ることもできる。
【0065】
更に、色素形成反応を促進させるために、乳化分散及び/又は固体分散して微粒子化した塩基化合物を添加するのが一般的である。該塩基化合物としては無機あるいは有機の塩基化合物のほか、加熱時に分解等によりアルカリ物質を放出するような化合物も含まれる。代表的なものとしては、有機アンモニウム塩、有機アミン、アミド、尿素およびチオ尿素さらにそれらの誘導体、チアゾール類、ピロール類、ピリミジン類、ピペラジン類、グアニジン類、インドール類、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアゾール類、モルホリン類、ピペリジン類、アミジン類、フォルムアジン類、ピリジン類等の含窒素化合物があげられる。
これらの具体例としてはトリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン、オクタデシルベンジルアミン、ステアリルアミン、アリル尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、アリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、2−ベンジルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4,5−トリフリル−2−イミダゾリン、1,2−ジフェニル−4,4−ジメチル−2−イミダゾリン、2−フェニル−2−イミダゾリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、1,2−ジシクロヘキシルグアニジン、1,2,3−トリシクロヘキシルグアニジン、グアニジントリクロロ酢酸塩、N,N’−ジベンジルピペラジン、4,4’−ジチオモルホリン、モルホリニウムトリクロロ酢酸塩、2−アミノベンゾチアゾール、及び2−ベンゾイルヒドラジノベンゾチアゾールを挙げることができる。
上記塩基化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0066】
ジアゾ化合物又は電子供与性染料前駆体を内包する本発明のマイクロカプセルの具体的な製造工程は、例えば、以下の様にして行われる。
マイクロカプセルの芯を形成するための疎水性溶媒としては、沸点100〜300℃の有機溶媒が好ましい。具体的には、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルエタン、アルキルジフェニルメタン、ジフェニルエタンアルキル付加物、アルキルビフェニル、塩素化パラフィン、トリクレジルフォスフェートなどの燐酸系誘導体、マレイン酸−ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸エステル類、及びアジピン酸エステル類などを挙げることができる。これらは2種以上混合して用いてもよい。ジアゾニウム塩化合物や電子供与性染料前駆体のこれらの疎水性溶媒に対する溶解度が充分でない場合は、更に低沸点溶剤を併用することができる。併用する低沸点有機溶媒としては、沸点40〜100℃の有機溶媒が好ましく、具体的には酢酸エチル、酢酸ブチル、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン及びアセトンなどを挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いてもよい。低沸点(沸点約100℃以下のもの)の溶媒のみをカプセル芯に用いた場合には、溶媒は蒸散し、カプセル壁とジアゾニウム塩化合物や電子供与性染料前駆体のみが存在するいわゆるコアレスカプセルが形成され易い。
【0067】
ジアゾ化合物の種類によっては、マイクロカプセル化反応中の水相側へ移動する場合があり、これを抑制するために、あらかじめ酸アニオンを水溶性高分子溶液中に適宜添加しても良い。この酸アニオンとしては、PF6-、B(−Ph)4-[Phはフェニル基]、ZnCl2-、Cn2n+1COO-(nは1〜9の整数)及びCp2p+1SO3-(pは1〜9の整数)を挙げることができる。
また、保存安定性や発色感度調整等のために種々の添加剤を併用することも可能である。
【0068】
本発明においてマイクロカプセル化の際、マイクロカプセル壁を形成するためのイソシアネート化合物の重合に用いる活性水素を有する化合物としては、一般に水が使用されるが、ポリオールを芯となる有機溶媒中あるいは分散媒となる水溶性高分子溶液中に添加しておき、上記活性水素を有する化合物(マイクロカプセル壁の原料の一つ)として用いることができる。具体的にはプロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパンなどが挙げられる。またポリオールの代わりに、あるいは併用してジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のアミン化合物を使用しても良い。これらの化合物も先の「ポリウレタン樹脂ハンドブック」に記載されている。
【0069】
マイクロカプセルの油相を水相中に分散するための水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールおよびその変成物、ポリアクリル酸アミドおよびその誘導体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン/アクリル酸共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム及びアルギン酸ナトリウムを挙げることができる。これらの水溶性高分子は、イソシアネート化合物と反応しないか、又は極めて反応し難いものが好ましく、たとえばゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは予め反応性をなくしておくことが必要である。
【0070】
本発明では、界面活性剤を油相あるいは水相の何れに添加して使用しても良いが、有機溶媒に対する溶解度が低いために水相に添加する方が容易である。添加量は油相の質量に対し0.1〜5質量%、特に0.5〜2質量%が好ましい。一般に乳化分散に用いる界面活性剤は、比較的長鎖の疎水基を有する界面活性剤が優れているとされており「界面活性剤便覧」(西一郎ら、産業図書発行(1980))、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸などのアルカリ金属塩を用いることができる。
【0071】
本発明では、界面活性剤(乳化助剤)として、下記一般式(A)に示す芳香族スルホン酸塩のホルマリン縮合物や芳香族カルボン酸塩のホルマリン縮合物などの化合物を使用することもできる。
【0072】
【化2】

【0073】
一般式(A)において、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、XはSO3-またはCOO- を表し、Mはナトリウム原子またはカリウム原子を表し、そしてqは1〜20の整数を表わす。一般式(A)に示す化合物については特開平6−297856号に記載されている。
【0074】
また、下記一般式(B)に示すアルキルグルコシド系化合物も同様に使用することができる。
【0075】
【化3】

【0076】
一般式(B)において、Rは炭素原子数4〜18のアルキル基を、qは0〜2の整数を表わす。
【0077】
本発明においては、いずれの界面活性剤も、単独で使用してもよいし、二種以上適宜併用してもよい。
【0078】
前記ジアゾ化合物(又は電子供与性染料前駆体)、高沸点溶媒等からなる溶液と本発明のイソシアネート組成物との混合液(油相)を、界面活性剤及び水溶性高分子からなる水溶液(水相)に添加する。その際、水溶液をホモジナイサー等の高シェア攪拌装置で攪拌させながら、添加することにより乳化分散させる。この乳化後、イソシアネート化合物の重合反応触媒を添加するか、乳化物の温度を上昇させてカプセル壁形成反応を行なう。
【0079】
調製されたジアゾ化合物を内包したマイクロカプセル液には、更にカップリング反応失活剤を適宜添加することができる。この反応失活剤の例としては、ハイドロキノン、重亜硫酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、次亜リン酸、塩化第1スズ及びホルマリンを挙げることができる。これらの化合物については、特開昭60−214992号公報に記載されている。
また通常、カプセル化の過程で、水相中にジアゾ化合物が溶出することが多いが、これを除去する方法として、濾過処理、イオン交換処理、電気泳動処理、クロマト処理、ゲル濾過処理、逆浸透処理、限外濾過処理、透析処理、活性炭処理などの方法を利用することができる。この中でもイオン交換処理、逆浸透処理、限外濾過処理及び透析処理が好ましく、特に、陽イオン交換体による処理、陽イオン交換体と陰イオン交換体の併用による処理が好ましい。これらの方法については、特開昭61−219688号公報に記載されている。
【0080】
本発明においては、感熱記録層中に電子受容性化合物、熱増感剤、カプラー及び塩基化合物などを添加することができる。これらは、適宜混合して、別々に乳化分散、あるいは固体分散、微粒化して添加、あるいは適宜混合してから、乳化分散あるいは固体分散、微粒化して添加することができる。乳化分散する方法は、有機溶媒中にこれらの化合物を溶解し、水溶性高分子水溶液をホモジナイザー等で攪拌中に添加する。微粒子化を促進するにあたり、前述の疎水性有機溶媒、界面活性剤、水溶性高分子を使用することが好ましい。
【0081】
カプラーおよび塩基化合物、電子受容性化合物、熱増感剤などを固体分散するには、これらの粉末を水溶性高分子水溶液中に投入しボールミル等の公知の分散手段を用いて微粒子化し、使用することができる。微粒子化に際しては、熱感度、保存性、記録層の透明性、製造適性などの感熱記録材料及びその製造方法に必要な特性を満足しうる粒子直径を得るように行なうことが好ましい。
【0082】
上述のマイクロカプセル液と、熱増感剤、電子受容性化合物、カプラー及び塩基化合物等の調製液とは、適当な割合で混合され支持体上に塗布される。一般には、ジアゾ化合物1モルに対して、カプラー1〜10モル、好ましくは2〜6モルが適当である。上記塩基化合物の最適添加量は塩基性の強度により異なるがジアゾ化合物の0.5〜5モルが一般的である。
電子受容性化合物(顕色剤)は、電子供与性染料前駆体1モルに対して0.5〜30モルの範囲内で一般に添加するが、好ましくは1〜20モルの範囲で適宜添加する。更に好ましく3〜15モルの範囲内で添加する。熱増感剤は、電子供与性染料前駆体に対して一般に0.1〜20モルの範囲内で添加するが、好ましくは0.5〜10モルの範囲で適宜添加する。
【0083】
これらの塗布液を塗布する支持体としては、感熱記録材料の支持体として公知の材料を使用することができる。例えば、紙、紙上にクレー等を塗布した塗工紙、ポリエチレン、ポリエステル等を紙上にラミネートしたラミネート紙、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、トリアセチルセルロース等のプラスチックフィルムを挙げることができる。また透明支持体としては、上記のポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、さらにポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチックフィルムを挙げることができる。
【0084】
本発明には、光堅牢性などを更に改善するために感熱記録層の上に保護層を設けてもよい。また、多色感熱記録材料においては、色再現性を更に良くするために感熱記録層の間に中間層を設けてもよい。これらに用いられる層の素材としては、水溶性高分子化合物もしくは疎水性高分子化合物のエマルジョン(ラテックス)が好ましい。
【0085】
本発明の多色感熱記録材料及びその記録方法について述べる。まず初めに、低エネルギーの熱記録でジアゾ化合物を含有する最外層の感熱記録層(第1感熱記録層、通常イエロー発色層)を発色させた後、該感熱記録層に含有されるジアゾ化合物の吸収波長域の光を放出する光源を用いて全面光照射して、最上層の感熱記録層中に残存するジアゾ化合物を光分解させる。
【0086】
次いで、前回より高エネルギーで、第1層に含有されるジアゾ化合物の吸収波長域の光とは異なった光吸収波長域を有するジアゾ化合物を含有する第2層目の感熱記録層(第2感熱記録層、通常マゼンタ発色層)を発色させた後、該ジアゾ化合物の吸収波長域の光を放出する光源を用いて再度全面光照射し、これによって第2層目の感熱記録層中に残存するジアゾ化合物を光分解させる。最後に、更に高エネルギーで、最内層(第3感熱記録層、通常シアン発色層)の電子供与性染料前駆体を含有する層(第3層)を発色させて画像記録を完了する。
【0087】
上記の場合には、最外層及び第2層を透明な感熱層とすることが、各発色が鮮やかになるので好ましい。また本発明においては、支持体として透明な支持体を用い、上記3層のうち何れか一層を透明な支持体の裏面に塗布することにより、多色画像を得ることもできる。この場合には、画像を見る側と反対側の最上層の感熱層は透明である必要はない。
【0088】
上記ジアゾ化合物の光分解に使用する光源としては、通常紫外線ランプを使用する。紫外線ランプは管内に水銀蒸気を充填した蛍光管であり、管の内壁に塗布する蛍光体の種類により種々の発光波長を有する蛍光管を得ることができる。
【0089】
多色感熱記録材料においては、上記第3感熱記録層を適当なジアゾ化合物とカプラー化合物との組合せで作成することも可能である。
【実施例】
【0090】
以下に、実施例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。尚、本実施例中の「部」及び「%」は全て「質量部」及び「質量%」を示す。
【0091】
<実施例1>具体的化合物例1−1の合成
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本油脂製、ユニオックスM−4000、平均分子量:4350)21.8g(5mmol)、ジフェノリックアシッド2.86g(10mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物47.5mg(0.025mmol)、及びトルエン50mlを混合し、ディーンスタークにより水を除去しながら17時間還流した。50℃に冷却後、t−ブチルメチルエーテル100mlを添加し、生じた固体をろ取した。イソプロピルアルコール/t−ブチルメチルエーテル=1/5(体積比)で再沈して、ろ取することにより例示化合物1−1を白色固体として20.8g得た。収率90%。
1H−NMR(CDCl3):δ(TMS)7.00(d、4H)、6.75(d、4H)、4.16(m、2H)、3.95−3.30(m、ca.391H)、2.38(t、2H)、2.14(t、2H)、1.55(s、3H)
【0092】
<実施例2>イソシアネート組成物の調製
具体的化合物例1−1の化合物10部を外温80℃で2時間真空ポンプを用いて乾燥した後に、室温に戻し、窒素気流下、乾燥酢酸エチル10部、乾燥アセトニトリル10部、および多価イソシアネート化合物(キシリレンジイソシアナート/トリメチロールプロパン付加物(タケネートD110N、75重量%酢酸エチル溶液、三井武田ケミカル(株)製)13.3部を添加して、50℃で5時間撹拌を行なった。この様にしてイソシアネート組成物の溶液(50重量%)を得た。イソシアネート含量3.63重量%。
【0093】
<実施例3>イソシアネート組成物の調製
具体的化合物例1−1の化合物10部を外温80℃で2時間真空ポンプを用いて乾燥した後に、室温に戻し、窒素気流下、乾燥酢酸エチル10部、乾燥アセトニトリル10部、キシリレンジイソシアナート0.90部、および触媒量のスタノクト(吉冨製薬(株)製)を添加して、50℃で5時間撹拌を行なった。この様にしてイソシアネート組成物の溶液(50重量%)を得た。イソシアネート含量0.75wt%。
【0094】
[実施例4]マイクロカプセルの調製
ジアゾニウム塩化合物として420nmに分解の最大吸収波長をもつ下記の化合物(A−1)3.5部及び化合物(A−2)0.9部を酢酸エチル16.4部に溶解し、さらに高沸点溶媒であるイソプロピルビフェニル7.3部、フタル酸ジフェニル2.5部を添加し、加熱して均一に混合した。
【0095】
【化4】

【0096】
上記混合物に、カプセル壁材として、キシリレンジイソシアナート/トリメチロールプロパン付加物(タケネートD110N、75重量%酢酸エチル溶液、三井武田ケミカル(株)製)4.5部と特願平5−233536号公報に記載の方法に従って合成したキシリレンジイソシアナート/ビスフェノールA付加物の30重量%酢酸エチル溶液4.5部の混合物の6.9部に対して実施例2に記載のイソシアネート組成物2.2部を添加し、均一に攪拌した。別途、ScraphAG−8(日本精化(株)製)0.36部が添加された8重量%フタル化ゼラチン水溶液77部を用意し、前記ジアゾニウム塩化合物の混合液(溶液)を添加し、ホモジナイザーにて乳化分散した。得られた乳化液に水20部を加え均一化した後、40℃にて攪拌しながら3時間カプセル化反応を行なった。この後35℃に液温を下げ、イオン交換樹樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ社製)4.1部、アンバーライトIRC50(オルガノ社製)8.2部を加え、更に1時間撹拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が20.0%になるように濃度調節しジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は粒径測定(LA-700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.70μmであった。
【0097】
[実施例5]マイクロカプセルの調製
実施例4に記載のカプセル液の調製におけるカプセル壁材として実施例2に記載のイソシアネート組成物2.2部の代わりに実施例3に記載のイソシアネート組成物1.1部を用いる他は実施例4と同様にしてマイクロカプセル液を得た。カプセルの平均粒径は0.75μmであった。
【0098】
[実施例6]
(I)感熱記録層(A)の塗布液の調製
【0099】
(1)カプラー乳化分散液の調製
カプラーとして2,5−ジ−n−ヘプチルオキシアセトアニリド2.4部とトリフェニルグアニジン2.5部、4−(2−エチルヘキシルオキシ)フェニルスルホンアミド3.3部、4−n−ペンチルオキシフェニルスルホンアミド1.7部、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール5.0部を、酢酸エチル8.0部に溶解し、パイオニンA41C(竹本油脂(株)製)1.0部を添加した後、加熱し均一に混合した。この混合物を、別途調製したゼラチン(#750ゼラチン、新田ゼラチン(株)製)10重量%水溶液75.0部中に加えて、ホモジナイザーにて40℃で乳化分散した。この乳化液から残存する酢酸エチルを蒸発させ、固形分濃度が26.5重量%になるように濃度調節を行なった。
更に上記カプラー乳化分散液100部に対して、SBRラテックス(商品名SN-307,48%液、住化エイビーエスラテックス(株)製)を26.5%に濃度調整したものを9部添加して均一に撹拌してカプラー乳化分散液を得た。
【0100】
(2)塗液の調製
実施例4に記載のジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液および前記カプラー乳化分散液を、内包しているジアゾニウム塩化合物/カプラー化合物の重量比が1/3.2になるように混合し、感熱記録層用塗布液を得た。
【0101】
(II)感熱保護層(D)の塗布液の調製
5.0重量%のイタコン酸変性ポリビニルアルコール(KL−318、クラレ(株)製)水溶液61部に、20.5重量%のステアリン酸亜鉛分散液(ハイドリンF115、中京油脂(株)製)2.0重量部を添加し、下記に示す化合物(D−1)の2重量%水溶液8.4部、フッ素系離型剤(ME−313、ダイキン社製)8.0部、小麦粉澱粉(KF−4、籠島澱粉(株)製)0.5部を添加し均一に撹拌した。これを母液と呼ぶ。
【0102】
化合物(D−1)
1225O−(C24 O)10−H
【0103】
別途、イオン交換した20重量%のカオグロス(白石工業(株)製)水溶液12.5部、ポイズ532A(花王(株)製)0.06部、ハイドリンZ−7(中京油脂(株)製)1.87部、10重量%のポリビニルアルコール(PVA105、クラレ(株))水溶液1.25部、2重量%のドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液0.39部を混合し、ダイノミルにて微分散を行なった。この液を顔料液と呼ぶ。上記母液80部に、顔料液4.4部を加え、30分以上撹拌した。その後、Wetmaster500(東邦化学社製)2.8部を添加し、更に30分以上撹拌して目的とする感熱保護層(D)の塗布液を得た。
【0104】
(III) 塗布
上質紙上にポリエチレンがラミネートされた印画紙用支持体の表面に、ワイヤーバーで感熱記録層(A)及び保護層(D)の塗布液をこの順に塗布、乾燥を行い、目的の感熱記録材料を得た。固形分としての塗布量は1m2 当たり各々4.5gと1gであった。
【0105】
(IV)熱記録
サーマルヘッドKST型(京セラ(株)製)を用い、下記のように上記感熱記録材料の熱記録特性を評価した。
(1)単位面積あたりの記録エネルギーが34mJ/ mm2 となるようにサーマルヘッドに対する印加電力、パルス幅を設定し、該感熱記録材料に印字して、イエローの画像を記録した。
(2)その記録材料を発光中心波長420nm、出力40Wの紫外線ランプで10秒間照射し、未印字部分の画像を定着させた。イエロー画像の発色濃度は、マクベス濃度計(RD918型)にて発色部分の光学反射濃度を測定した。結果を表4の発色濃度として記す。
(3)またシェルフライフ(生保存性)の評価は、得られた感熱記録材料を、40℃、相対湿度90%に保った恒温恒湿槽に24時間保存した後、非印字部分を定着して地肌部分の光学反射濃度を測定した。結果を表4のカブリ濃度として記す。
【0106】
[実施例7]
実施例6に記載の塗液の調製における実施例4に記載のジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液の代わりに実施例5に記載のジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液を用いる他は実施例6と同様にして感熱記録材料を作成した。
【0107】
[比較例1]
実施例4に記載のカプセル液の調製においてカプセル壁材として、キシリレンジイソシアナート/トリメチロールプロパン付加物(タケネートD110N、75重量%酢酸エチル溶液、武田薬品(株)製)4.5部と特願平5−233536号公報に記載の方法に従って合成したキシリレンジイソシアナート/ビスフェノールA付加物の30重量%酢酸エチル溶液4.5部の混合物を8.6部用い、実施例2に記載のイソシアネート組成物を用いない他は実施例4と同様にしてカプセル液を得た。カプセルの平均粒径は1.0μmであった。このカプセル液を実施例6と同様にして感熱記録材料を得た。
【0108】
上記で得られた感熱記録材料(実施例7及び比較例1)についても実施例6の熱記録と同様に発色濃度及び非発色部分の濃度を測定した。その結果を表4に示す。
【0109】
【表4】

【0110】
[実施例8]
(感熱記録層(B)の塗布液の調製)
ジアゾニウム塩化合物として365nmに分解の最大吸収波長をもつ下記(B−1)に示す化合物2.8部、硫酸ジブチル2.8部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651、チバ・ガイギー(株)製)0.56部を酢酸エチル10.0部に溶解した。さらに高沸点溶媒であるイソプロピルビフェニルを5.9部およびリン酸トリクレジル2.5部を添加し、加熱して均一に混合した。
【0111】
【化5】

【0112】
カプセル壁材として、とキシリレンジイソシアナート/トリメチロールプロパン付加物(タケネートD110N、75重量%酢酸エチル溶液、三井武田ケミカル(株)製)7.6部を上記混合液にさらに添加し、均一に攪拌した。別途、10%重量ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液2.0部を加えた6重量%ゼラチン(商品名:MGP−9066、ニッピゼラチン工業(株)製)水溶液64部を用意し、上記ジアゾニウム塩化合物の混合液を添加し、ホモジナイザーにて乳化分散した。
【0113】
(3)カプセル化反応
得られた乳化液に水20部を加え均一化した後、攪拌しながら40℃で30分反応させ、この後60℃に昇温し、3時間カプセル化反応を行なった。この後35℃に液温を下げ、イオン交換樹樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ社製)4.1部、アンバーライトIRC50(オルガノ社製)8.2部を加え、更に1時間撹拌した。その後イオン交換樹脂をろ過して目的のカプセル液を得た。カプセルの平均粒径は0.64μmであった。
【0114】
(4)カプラー乳化分散液の調製
カプラーとして、下記に示す化合物(B−2)3.0部、トリフェニルグアニジン8.0部、1,1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサンを8.0部、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール8.0部、下記に示す化合物(B−3)2.0部、及び1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン2.0部を、酢酸エチル10.5部に溶解し、更に高沸点溶媒のりん酸トリクレジル0.48部、マレイン酸ジエチル0.24部及びパイオニンA41C(竹本油脂(株)製)1.27部を添加した後、加熱し均一に混合した。この混合物を、8重量%ゼラチン(#750ゼラチン、新田ゼラチン(株)製)水溶液93部中に加えてホモジナイザーにて乳化分散した。この乳化液から残存する酢酸エチルを蒸発させ、目的とする乳化分散液を得た。
【0115】
【化6】

【0116】
【化7】

【0117】
(5)塗液の調製
前記ジアゾニウム塩化合物内包マイクロカプセル液および前記カプラー乳化分散液を、内包しているジアゾニウム塩化合物/カプラー化合物の重量比が1/3.2になるように混合し、感熱記録層(B)用塗布液を得た。
【0118】
(感熱記録層(C)の塗布液の調製〕
(4)電子供与性染料前駆体カプセル乳化液の調製
電子供与性染料前駆体として3−(o−メチル−p−ジエチルアミノフェニル)−3−(1′−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド0.39部、紫外線吸収剤として285nmに最大吸収波長を持つ2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン0.19部及び酸化防止剤として2、5−tert−オクチルハイドロキノン0.29部を、酢酸エチル0.93部に溶解し、さらに高沸点溶媒であるフェネチルクメン0.54部を添加し、加熱して均一に混合した。カプセル壁剤として、キシリレンジイソシアナート/トリメチロールプロパン付加物(タケネートD110N)1.0部を、この溶液に更に添加し、均一に撹拌した。別途、10%ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液0.07部が添加された6重量%ゼラチン(MGP−9066、ニッピゼラチン工業(株)製)水溶液36.4部を用意し、前記の電子供与性染料前駆体溶液を添加し、ホモジナイザーにて乳化分散した。このようにして得られた乳化分散液を一次乳化分散液と呼ぶ。
【0119】
別途3−(o−メチル−p−ジエチルアミノフェニル)−3−(1′−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド6.0部、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン3.0部及び2、5−tert−オクチルハイドロキノン4.4部を、酢酸エチル14.4部に溶解し、さらに高沸点溶媒であるフェネチルクメン8.4部を添加し、均一に撹拌した溶液に、先に用いたタケネートD110Nを7.8部及びメチレンジイソシアネート(ミリオネートMR200、日本ポリウレタン(株)製)5.9部を添加し、均一に撹拌した。このようにして得られた溶液と、10%ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液1.2部を前記の一次乳化分散液に添加しホモジナイザーにて乳化分散した。このようにして得られる液を二次乳化分散液と呼ぶ。この二次乳化分散液に、水60.0部及びジエチレントリアミン0.4部を加えて均一化した後、攪拌しながら65℃に昇温し、3.5時間カプセル化反応を行い、目的のカプセル乳化液を得た。カプセルの平均粒子径は1.9μmであった。
【0120】
(5)電子受容性化合物分散液の調製
電子受容性化合物としてビスフェノールP30部をゼラチン(MGP−9066、ニッピゼラチン工業(株)製)2.0重量%水溶液82.5部中に添加し、さらに2重量%の2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム水溶液7.5部を加え、得られた混合物をボールミルにて24時間分散して分散液を作製した。この分散液に15重量%ゼラチン(#750ゼラチン、新田ゼラチン(株)製)水溶液36.0部を加え均一に撹拌して電子受容性化合物分散液を得た。分散液中の電子受容性化合物の平均粒径は0.5μmであった。
【0121】
(6)塗布液の調製
次に上記の電子供与性染料前駆体カプセル液、電子受容性化合物分散液、15重量%のゼラチン(#750ゼラチン、新田ゼラチン(株)製)水溶液及びスチルベン系蛍光増白剤(Whitex−BB、住友化学(株)製)を、電子供与性染料前駆体/電子受容性化合物の比率が1/14、電子供与性染料前駆体/#750ゼラチン=1.1/1、そして電子供与性染料前駆体/蛍光増白剤=5.3/1となるように混合し、目的の塗布液を調製した。
【0122】
(7)中間層(E)液の調液
14重量%のゼラチン(#750ゼラチン、新田ゼラチン(株)製)水溶液に4重量%ほう酸水溶液8.2部、(4−ノニルフェノキシトリオキシエチレン)ブチルスルホン酸ナトリウムの2重量%水溶液1.2部及び下記の化合物(E−1)2重量%水溶液7.5部を添加し、均一に撹拌し目的の塗布液を調製した。
【0123】
E−1
(CH3 CH2 SO2 CH2 CONHCH22
【0124】
(8)塗布
上質紙上にポリエチレンがラミネートされた印画紙用支持体の表面に、ワイヤーバーで上記感熱記録層(C)、中間層(E)、感熱記録層(B)、中間層(E)、実施例6記載の感熱記録層(A)及び保護層(D)を、この順に塗布、乾燥を行い目的の多色感熱記録材料を得た。固形分としての塗布量は1m2 あたり各々9g、3g、8g、3g、4.5g、1gであった。
【0125】
(9)熱記録
サーマルヘッドKST型(京セラ(株)製)を用い、下記のように上記感熱記録材料の熱記録特性を評価した。
(1)単位面積あたりの記録エネルギーが35mJ/ mm2 となるようにサーマルヘッドに対する印加電力、パルス幅を調整し、該感熱記録材料に印字して、イエローの画像を記録した。(2)その記録材料を発光中心波長420nm、出力40Wの紫外線ランプで10秒間照射し、(3)再度単位面積あたりの記録エネルギーが80mJ/mm2となるようにサーマルヘッドに対する印加電力、パルス幅を決め、印字して、マゼンタの画像を記録した。さらに(4)発光中心波長365nm、出力40Wの紫外線ランプで15秒間照射し、(5)再度単位面積あたりの記録エネルギーが140mJ/mm2となるようにサーマルヘッドに対する印加電力、パルス幅を調整し、印字してシアンの画像を記録した。この結果、イエロー、マゼンタ、シアンの各発色画像の他に、イエローとマゼンタの記録が重複した記録部分は赤色に、マゼンタとシアンが重複した部分は青色に、イエローとシアンが重複した部分は緑色に、そしてイエロー、マゼンタ、シアンの記録が重複した画像部分は黒色に発色した。未記録部は、灰白色であった。イエロー、マゼンタ、シアンの各発色部分の光学反射濃度をマクベスRD918型濃度計で測定した。シェルフライフ(生保存性)の評価は、得られた多色感熱記録材料を40℃、相対湿度90%に保った恒温恒湿槽に24時間放置した後、定着し、地肌部分の光学反射濃度を測定した。
【0126】
[実施例9]
実施例8において、感熱発色層(A)に用いるジアゾニウム塩化合物カプセル液として、実施例5に記載のジアゾニウム塩化合物カプセル液を用いた以外は実施例8と同様にして多色感熱記録材料を得た。上記で得られた感熱記録材料についても実施例8の熱記録と同様に発色濃度及び非印字部分の濃度を測定した。その結果を表5に示す。
【0127】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明のマイクロカプセルは、熱に対する感度が高く、カプラーあるいは顕色剤との接触により高い発色性示し、また芯材料としてジアゾニウム塩化合物を用いた場合は優れた生保存性(長いシェルフライフ)を示すとの優れた特性を有する。従って、上記マイクロカプセルを感熱記録材料の感熱記録層に使用した場合、感度及び発色性が高く、そしてジアゾニウム塩化合物を用いた場合は生保存性に優れた記録材料を得ることができる。さらに、上記マイクロカプセルを感熱記録層に用いると、高感度で、色再現性及び生保存性に優れた多色感熱記録材料を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン誘導体。
A−(O−L1)n−O−CO−L2−(OH)m (1)
[一般式(1)中、Aは、アルキル基、アリール基又はアシル基を示し、L1はアルキレン基を示し、nは、ポリエーテル基の平均付加モル数で10〜500の数を示し、mは1〜3の数を示し、L2は、芳香族基、−O−、−S−、−CONR1−及び−NR1CO−から選ばれる1種又は2種以上の基を含んでいてもよいm+1価の脂肪族炭化水素鎖を示すが、−O−、−S−、−CONR1−及び−NR1CO−のから選ばれる2種以上の基が隣接することはない。R1は、水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を示す。]
【請求項2】
一般式(1)中、mが2である請求項1記載のポリオキシアルキレン誘導体。
【請求項3】
2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートと請求項1又は2記載のポリオキシアルキレン誘導体との反応生成物を含むイソシアネート組成物。
【請求項4】
イソシアネートと多官能アルコールとの反応により得られたポリウレタンであって、原料として使用したイソシアネートの少なくとも1種が、請求項3記載のイソシアネート組成物であることを特徴とするポリウレタン。
【請求項5】
ポリウレア又はポリウレタン/ウレア壁を有するマイクロカプセルであって、原料として使用したイソシアネートの少なくとも1種が、請求項3記載のイソシアネート組成物であることを特徴とするマイクロカプセル。
【請求項6】
支持体上に、ジアゾニウム塩化合物を内包するマイクロカプセルとカプラーを含む感熱記録層、又は電子供与性染料前駆体を内包するマイクロカプセルと顕色剤を含む感熱記録層を有する感熱記録材料であって、該マイクロカプセルが、請求項5記載のマイクロカプセルであることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項7】
支持体上に、シアン、マゼンタ及びイエローの感熱記録層を有する多色感熱記録材料である請求項6記載の感熱記録材料。

【公開番号】特開2006−273878(P2006−273878A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90195(P2005−90195)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】