説明

ポリオレフィン多層フィルム用接着性樹脂組成物、ポリオレフィン多層フィルム用接着性樹脂組成物の製造方法、ポリオレフィン多層フィルム、金属蒸着フィルム、及び、オレフィンフィルム用水性コーティング剤。

【課題】 ガスバリアー性があり、層間密着も良好で、透明性、機械的強度の優れた多層フィルムを提供すること。
【解決手段】 重量平均分子量が15000〜150000、且つ、固形分酸価が100〜300である、二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有することを特徴とするポリオレフィン多層フィルム用接着性樹脂組成物、これを用いた積層ポリオレフィン多層積層フィルム、前記多層フィルムに金属を蒸着した金属蒸着フィルム、前記二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂を中和して水性媒体中に分散した水性媒体に分散したオレフィンフィルム用水性コーティング剤、該水性媒体に分散したオレフィンフィルム用水性コーティング剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層多層フィルム、特にポリオレフィン層と、ポリビニルアルコール樹脂、又はエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、又はポリカーボネート樹脂、あるいは各種金属との接着層を有する多層積層フィルムや、金属蒸着ポリオレフィンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン延伸フィルム、特にポリプロピレン系二軸延伸フィルムは安価でかつ透明性、機械的強度等に優れていることより包装用フィルムとして多用されている。しかし、このオレフィンフィルムはガスバリアー性に欠ける等の欠点があった。この欠点を改良するために、ポリプロピレン二軸延伸フィルムでは従来ポリ塩化ビニリデンのエマルジョンを塗布し、層を形成させたものを使用していた。しかしながらこれは焼却時に有害ガス発生等の問題があり、代替が望まれていた。
【0003】
これに対し、ガスバリアー性のある材料としてエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、金属等の極性材料が知られており、この要望に対し、例えば、PPフィルムとガスバリアー層であるエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂層との間に不飽和カルボン酸もしくはその誘導体がグラフトされたグラフト変性オレフィン重合体を含有する重合体組成物からなる接着層を設けて代替を行っていた(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら該手法はグラフト変性オレフィン重合体の酸価、例えば、実施例に用いているグラフト変性オレフィン重合体の酸価も20〜35と低いため、あらゆる樹脂、金属層に対する良好な接着性が発現できなかった。また、金属蒸着を行う場合においても良好な蒸着性を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−94934
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の第一課題は、ガスバリアー性があり、層間密着も良好で、透明性、機械的強度の優れた多層フィルムを提供することにある。
【0006】
上記のような積層フィルムにおいて、ガスバリアー性のあるあらゆる有機・無機材料に対する良好な密着性を発現させる材料を提供することは困難であったため、これを達成することにより今までにない高性能なフィルムの提供が可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体がグラフトされたグラフト変性オレフィン重合体の代わりに、重量平均分子量が15000〜150000、且つ、固形分酸価が100〜300である、二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂(A)を用いることで、種々の樹脂類、或いは金属類に対して高い密着性を与えることを見出し発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、重量平均分子量が15000〜150000、且つ、固形分酸価が100〜300である、二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有することを特徴とするポリオレフィン多層フィルム用接着性樹脂組成物、(I)ポリプロピレン系樹脂からなる少なくとも一軸配向された第一層、(II)第一層のポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い融点を持つ第二層、(III)前記ポリオレフィン(多層)フィルム用接着性樹脂からなる第三層、(IV)ポリビニルアルコール樹脂、エチレン・ビニルアルコール樹脂、またはポリカーボネート樹脂からなる第四層が、〔(I)、(III)〕、〔(I)、(III)、(IV)〕、または、〔(I)、(II)、(III)、(IV)〕の順序で積層されたポリオレフィン多層積層フィルム、前記多層フィルムに金属を蒸着した金属蒸着フィルム、前記二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂を中和して水性媒体中に分散した水性媒体に分散したオレフィンフィルム用水性コーティング剤、該水性媒体に分散したオレフィンフィルム用水性コーティング剤の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接着性樹脂組成物によれば、記のような積層フィルムにおいて、ガスバリアー性のあるあらゆる有機・無機材料に対する良好な密着性を発現させる材料を提供することが可能であり、ガスバリアー性があり、層間密着も良好で、透明性、機械的強度の優れた多層フィルムをも提供できる。
また、本発明の二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂を用いれば、固形分酸価が100〜300であるため、下層にあらゆる樹脂を用いた場合においても、あるいは上層において、EVOH、ポリエステル、アルミ等無機金属を用いても、良好な層間接着性を発現できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリオレフィン多層フィルム用接着性樹脂組成物は、重量平均分子量が15000〜150000、且つ、固形分酸価が100〜300である、二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有するものである。
なお、後述する多層フィルムの層(III)である。
【0011】
本発明で使用する二塩基カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン等のホモポリマーやコポリマーを使用することができ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−プロピレン共重合体、天然ゴム、合成イソプロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を使用することができる。前記二塩基カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)がコポリマーである場合には、ランダムコポリマーであってもブロックコポリマーであっても良い。
【0012】
また、前記二塩基カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)としては、上記で例示したポリオレフィン樹脂と不飽和二塩基カルボン酸(a)と反応させて得られたものや、不飽和二塩基カルボン酸(a)とビニル単量体(b)とを反応させて得られたもの等の、いわゆる変性ポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。
【0013】
前記ポリオレフィン樹脂の変性に使用可能な二塩基カルボン酸(a)成分としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸やそれらの無水物が挙げられる。なかでも(無水)マレイン酸を使用することが、変性量制御や導入率向上、さらにはガラスの集束性と、このガラスを補強剤として用いたFRTPの機械的強度等の理由により好ましい。
【0014】
また、前記ポリオレフィン樹脂の変性に使用可能なビニル単量体(b)としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、ジ(メタ)アクリル酸(ジ)エチレングリコ−ル、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオ−ル、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオ−ル、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロ−ルプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸エステルや、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロメチルスチレン等を使用することができる。
【0015】
前記ポリオレフィン樹脂の変性は、例えば有機溶剤に溶解したポリオレフィン樹脂と、前記不飽和カルボン酸等とを混合し、前記ポリオレフィン樹脂の軟化温度または融点以上の温度で加熱し溶融状態にてラジカル重合と水素引き抜き反応を同時に行うことで可能になる。
【0016】
本発明の多層フィルムは、
(I)ポリプロピレン系樹脂からなる少なくとも一軸配向された第一層、
(II)第一層のポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い融点を持つ第二層、
(III)請求項1、2または3記載のポリオレフィン(多層)フィルム用接着性樹脂からなる第三層、
(IV)ポリビニルアルコール樹脂、エチレン・ビニルアルコール樹脂、またはポリカーボネート樹脂からなる第四層において、
(1)〔(I)、(III)〕がこの順序で積層された多層フィルム、
(2)〔(I)、(III)、(IV)〕がこの順序で積層された多層フィルム、または、
(3)〔(I)、(II)、(III)、(IV)〕がこの順序で積層された多層フィルムである。
【0017】
第一層(I)はプロピレン重合体からなり、そして少なくとも一軸配向されている。第一層のプロピレン重合体は、プロピレンのホモポリマー、または、プロピレン以外のα―オレフィンの含有率が2モル%以下のプロピレン/α―オレフィンの共重合体が挙げられる。前記α―オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4-メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等を挙げることができる。
【0018】
前記プロピレン重合体としては、プロピレンのホモポリマーが好ましい。プロピレン重合体としては、ASTM D1238(230℃、荷重2.16kg)に準じて測定したメルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/分、より好ましくは0.1〜10g/分であるものが有利に用いられる。
【0019】
更にこのプロピレン重合体に石油樹脂、テルペン樹脂あるいはこれらを水添した樹脂を添加し、水蒸気バリア性を高めることできる。
【0020】
第一層は、更に好ましくは二軸延伸され配向されている樹脂が好ましい。二軸延伸方法としては、種々の方法を採用することができる。
【0021】
第二層(II)は第一層(I)のプロピレン重合体の融点よりも低い融点を持つプロピレン重合体であることが必要である。該プロピレン重合体としては、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンの共重合体であって、プロピレンの含有率が80〜98モル%を占めるものが好ましい。プロピレン以外のα―オレフィンとしては、第一層(I)のプロピレン共重合体について上記したものと同じものを例示できる。第二層(II)のプロピレン共重合体としては、たとえばプロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を好ましいものとして挙げることができる。これらは1種または2種以上一緒に用いることができる。第二層のポリプロピレン共重合体は110〜150℃の融点を持つのが好ましい。このプロピレン重合体としては、ASTM D1238(230℃、荷重2,160kg)に準じて測定したメルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/分、より好ましくは0.1〜10g/分であるものが有利に用いられる。
【0022】
第三層の接着性樹脂組成物は、前述の重量平均分子量が15000〜150000、且つ、固形分酸価が100〜300である、二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂(A)である。この場合、特に二塩基カルボン酸無水物変性ポリプロピレン系樹脂であることが望ましい。ポリプロピレン系樹脂とは、前記したプロピレンと他のα―オレフィンとの共重合物を示し、2元でも、3元共重合体でも一向に構わない。またこのような高酸価の変性ポリオレフィン樹脂は、特顔2009−255987のような方法によって、グラフト変性される。これにより、有機・無機層に関係なく、第二層、第四層に対し優れた接着性を示す。
【0023】
また、第三層(III)には二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィンの重合体のほかに、他の重合体を含有することができる。他の重合体としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、エチレン・α―オレフィンランダム共重合ゴムあるいは炭化水素樹脂等を好ましいものとして挙げる事ができる。
【0024】
上記のうち組み合わせによれば、第三層(III)を最表層にし、他の適性(帯電防止、印刷適性)を付与することも可能である。
【0025】
第四層(IV)はエチレン・ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂あるいは各種金属の層からなる。
【0026】
前記エチレン・ビニルアルコール共重合体は、好ましくは20〜50モル%のエチレン含有率を有する。エチレン・ビニルアルコール共重合体は、エチレンと酢酸ビニルの共重合体をケン化することにより調整できる。本発明に用いられるエチレン・ビニルアルコール共重合体は、融点が130〜200℃であるものが好ましい。
【0027】
前記ポリエステル樹脂は、非晶性のポリエステル樹脂で、DSC(示差熱走査型熱量計)などの熱分析により融点が観測されないポリエステルであれば、特に制限はない。
【0028】
前記ポリカーボネート樹脂としては、、例えば、ビスフェノールA等の芳香族ジオール類とホスゲンもしくはカーボネートエステル類とを反応させて得られる樹脂であれば特に限定されない。これらの中でも、ビスフェノールAのポリカーボネートが好ましく、成形物を得るには、粘度平均分子量(MV)が10000〜40000であることが好ましく、更に好ましくは15000〜36000、特に好ましくは18000〜35000である。
【0029】
前記金属層については、金属箔又は金属の蒸着膜を有する樹脂フィルム、或いは無機酸化物の蒸着膜を有する樹脂フィルムその他を使用することができる。アルミニウム箔、銅箔、各種合金箔等の金属箔も使用することができるが、一般的にアルミニウム箔を使用することが好ましい。前記の金属箔膜厚は、6〜20μm、好ましくは7〜10μmである。更に基材フィルムとして、金属の蒸着膜を有する樹脂フィルム、樹脂フィルムの一方の面に、金属を例えば、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法を用いて、蒸着した金属蒸着樹脂フィルムを使用することができる。上記の金属の蒸着膜を有する樹脂フィルムとして、例えば、アルミニウム、ニッケル、錫、ビスマス、インジウム、その他の金属を使用することができる。
【0030】
本発明の多層積層フィルムにおいて、第一層、第二層、第三層、第四層のそれぞれの厚みは、それぞれ5〜100μm、0.5〜10μm、0.5〜50μm、および0.5〜50μmの範囲が好ましい。但し、四層以外(一、三、四層、一、三層)においては、この限りでない。
【0031】
本発明のオレフィンフィルム用水性コーティング剤は、前記二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂(A)を塩基性化合物(F)にて中和し、水性媒体に分散したオレフィンフィルム用水性コーティング剤である。
【0032】
前記塩基性化合物(F)としては、前記二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基、または酸無水基を中和して、水性媒体中に分散するために用い、例えば、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルルアミン、ジプロピルルアミントリプロピルルアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−(ジメチルアミノ)−2−メチルプロパノール、N−メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の多価アミン等の有機アミンやアンモニア(水)の無機アミンのほか、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。塩基性化合物の中でも揮発性が高い為、硬化塗膜に残りにくく、耐水性に優れる硬化塗膜が得られることからアンモニア水が好ましい。中和剤(塩基性化合物)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記前記二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基、または酸無水基の中和率としては、活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物が安定に水性媒体中に分散されていれば、特に限定されないが、水性組成物の粘度、水性組成物の被膜形成時の乾燥性の観点から、30〜100%が好ましい。
【0034】
本発明のオレフィンフィルム用水性コーティング剤は、必要に応じて、有機溶剤を配合してもよい。該有機溶剤としては、親水性、疎水性に関係なく使用することができる。これら水混和性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロへキサン、シクロヘキサノン等の脂環族系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;などが挙げられる。これら水混和性有機溶剤は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0035】
本発明においては、酸価100〜300の二塩基カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂が接着層として必須成分であり、該樹脂は、PPホモポリマー等オレフィン樹脂とブレンドしても良いし、また二塩基カルボン酸の全量あるいは一部を中和剤にて中和したのち、水分散させても、さらには該水分散体を脱溶剤したものでもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0037】
〔実施例1〕
第三層を形成するための重合体組成物(A)として、ポリプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体〔70/20/10(重量比)〕の無水マレイン酸グラフト変性重合体〔A-1〕(理論酸価=200)を用いた。
【0038】
(下層フィルムとの接着性試験片作成法)
PPホモポリマー樹脂(密度0.90、MFR7.5g/10分、日本ポリプロ株式会社製ノバテックFB3HAT)と重合体組成物(A)を2層押し出しラミネーター(ダイ幅=300mm)に供給し、PPホモポリマー樹脂(厚み8μm)/重合体物A層(厚み7μm)の共押出積層体(厚み15μm)を得、これをただちに第一層(A)と第二層(B)とからなる2層ベースフィルムを作成した。
【0039】
また、これと同様、PPホモポリマー樹脂のかわりにエチレンプロピレンランダムコポリマー樹脂(密度0.90、MFR5.3g/10分、日本ポリプロ株式会社製ノバテックFX4E)、またはプロピレン・1-ブテン共重合体(密度0.89、MFR4.3g/10分、三井化学株式会社製タフマーXR106L)を使用し、各々2層ベースフィルムを得た。
【0040】
(上層フィルムとの接着性試験片作成法)
重合体組成物(A)とエチレン・ビニルアルコール共重合体(クラレ製 エバールE−105B)を2層押し出しラミネーター(ダイ幅=300mm)に供給し、重合体物A層(厚み7μm)/エチレン・ビニルアルコール共重合体(厚み8μm)の共押出積層体(厚み15μm)を得、これをただちに第一層(A)と第二層(B)とからなる2層ベースフィルムを作成した。
【0041】
また、エチレン・ビニルアルコール共重合体のかわりにポリエステル樹脂(SKケミカル社製PET樹脂 BB7755)フィルムを用い、各々2層ベースフィルムを得た。
【0042】
このほか、重合体組成物(A)とアルミ箔(膜圧10μ)をロール温度190℃、プレス圧50kg/cm2、プレス時間10秒にてラミネートし、二層ラミネートフィルムを作成した。
【0043】
これら作成した下層フィルム/重合体組成物、及び上層フィルム/重合体組成物の2層フィルムの層間接着力を測定した。(g/15mm、剥離速度300mm/min)
【0044】
〔実施例2〕
第三層を形成するための重合体組成物(A)として、ポリプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体〔70/20/10(重量比)〕の無水マレイン酸グラフト変性重合体〔A-2〕(理論酸価=100)を用いた以外は、実施例1と同様にて、各々2層フィルムの層間接着力を測定した。
【0045】

〔実施例3〕
第三層を形成するための重合体組成物(A)として、ポリプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(70・20・10wt%)の無水マレイン酸グラフト変性重合体(理論酸価=200)とPPホモポリマー(MI=7)のブレンド物(重合体組成物(A)/PPホモポリマー=10/90)〔A-3〕を用いた以外は、実施例1と同様にて、各々2層フィルムの層間接着力を測定した。
【0046】
〔実施例4〕
第三層を形成するための重合体組成物(A)として、ポリプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体〔70・20・10(重量比)〕の無水マレイン酸グラフト変性重合体(理論酸価=200)とPPホモポリマー(MI=7)のブレンド物〔A-4〕(重合体組成物(A)/PPホモポリマー=1/99)を用いた以外は、実施例1と同様にて、各々2層フィルムの層間接着力を測定した。
【0047】
〔比較例1〕
第三層を形成するための重合体組成物(A)として、エチレンの無水マレイン酸グラフト変性重合体(理論酸価=23)とエチレン・プロピレンランダム共重合体(エチレン/プロピレン=80/20、MI=7)のブレンド物〔A-5〕〔重合体組成物(A)/エチレン・プロピレンランダム共重合体=10/90(重量比)〕を用いた以外は、実施例1と同様にて、各々2層フィルムの層間接着力を測定した。
【0048】
〔比較例2〕
第三層を形成するための重合体組成物(A)として、エチレンの無水マレイン酸グラフト変性重合体〔A-6〕(理論酸価=23)を用いた以外は、実施例1と同様にて、各々2層フィルムの層間接着力を測定した。
【0049】
【表1】

【0050】
本発明においては、酸価100〜300の二塩基カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂が接着層として必須成分であり、該樹脂は、PPホモポリマー等オレフィン樹脂とブレンドしても良いし、また二塩基カルボン酸の全量あるいは一部を中和剤にて中和したのち、水分散させても、さらには該水分散体を脱溶剤したものでもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が15000〜150000、且つ、固形分酸価が100〜300である、二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有することを特徴とするポリオレフィン多層フィルム用接着性樹脂組成物。
【請求項2】
二塩基カルボン酸変性無水物ポリオレフィン樹脂(A)が二塩基カルボン酸無水物変性ポリプロピレン系樹脂である請求項1記載のポリオレフィン多層フィルム用接着性樹脂組成物。
【請求項3】
更に、前記二塩基カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂(A)以外のプロピレン系樹脂を含有する請求項1記載のポリオレフィンフィルム用接着性樹脂組成物。
【請求項4】
(I)ポリプロピレン系樹脂からなる少なくとも一軸配向された第一層、(II)第一層のポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い融点を持つ第二層、(III)請求項1〜3の何れか1項に記載のポリオレフィン(多層)フィルム用接着性樹脂からなる第三層、(IV)ポリビニルアルコール樹脂、エチレン・ビニルアルコール樹脂、またはポリカーボネート樹脂からなる第四層が、〔(I)、(III)〕、〔(I)、(III)、(IV)〕、または、〔(I)、(II)、(III)、(IV)〕の順序で積層されたポリオレフィン多層積層フィルム。
【請求項5】
(I)ポリプロピレン系樹脂からなる少なくとも一軸配向された第一層、(II)第一層のポリプロピレン系樹脂の融点よりも低い融点を持つ第二層、(III)請求項1〜3の何れか1項記載のポリオレフィン(多層)フィルム用接着性樹脂からなる第三層がこの順序で積層された多層積層フィルムの第三層表面に金属を蒸着した金属蒸着フィルム。
【請求項6】
請求項1、2又は3記載の二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂(A)を塩基性化合物(F)にて中和し、水性媒体に分散したオレフィンフィルム用水性コーティング剤。
【請求項7】
請求項6記載のオレフィンフィルム用水性コーティング剤を、フィルム表面に塗布乾燥してなるフィルム。
【請求項8】
重量平均分子量が15000〜150000、且つ、固形分酸価が100〜300の二塩基カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂(A)を有機溶剤にて溶解し、次いで無水酸基を塩基性化合物にて中和し、水性媒体中に分散させた後、有機溶剤を除去したオレフィンフィルム用水性コーティング剤を得ることを特徴とするオレフィンフィルム用水性コーティング剤の製造方法。

【公開番号】特開2012−1661(P2012−1661A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139267(P2010−139267)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】