説明

ポリオール化合物を含有するフルオロポリマー組成物及びその製造方法

i)少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1個のポリオール単位と、少なくとも6個の炭素原子を含有する少なくとも1個の長鎖単位とを含有する、少なくとも1種の非芳香族ポリオール化合物;及びii)フッ素化オレフィンから誘導される繰り返し単位を含む少なくとも1種のフルオロポリマーと、を含む組成物が準備される。また、フルオロポリマー分散液の剪断安定性を高める方法、基材をコーティングする方法、及び上記組成物でコーティングされた基材も準備される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非芳香族ポリオール化合物を含有するフルオロポリマー分散液及びその用途、並びに非芳香族ポリオール化合物を用いてフルオロポリマー分散液を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーは長い間知られており、耐熱性、耐化学性、耐候性、紫外線安定性、低摩擦性、及び粘着防止性等の幾つかの望ましい特性のために種々の用途に使用されてきた。例えば、「Modern Fluoropolymers」、John Scheirs編、Wiley Science 1997又は「Fluoropolymers」、Sina Ebnesajjad編、Plastics Design Library,Norwich,NY,2000等に様々なフルオロポリマーが記載されている。
【0003】
一般的に公知である又は商業的に使用されているフルオロポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー(このようなコポリマーは、FEPポリマーとも呼ばれる)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルコキシコポリマーとのコポリマー(このようなコポリマーはPFAとも呼ばれる)、エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー(このようなコポリマーはETFEポリマーとも呼ばれる)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデン(VDF)のコポリマー(このようなコポリマーはTHVとも呼ばれる)、及びポリフッ化ビニリデンポリマー(PVDF)、並びに他のものが挙げられる。
【0004】
例えば、フルオロポリマーで基材をコーティングするか又は基材をフルオロポリマーに含浸することによって、フルオロポリマーを用いて、基材の耐熱性及び耐化学性を改善したり、あるいは基材に粘着防止性又は低摩擦性を付与する。フルオロポリマーは、例えば、分散液等の液体製剤として用意する場合、液体コーティング技術によって基材に塗布することができる。
【0005】
フルオロポリマー分散液は、フッ素化モノマー、1つ以上のラジカル反応開始剤、及び好適な乳化剤を使用する水性乳化重合によって便利に生成することができる。CF−(CF−COO(nは6〜8の整数である)の種類全フッ素化アルカン酸、特に、ペルフルオロオクタン酸(n=6)及びその塩は、過去数十年間にわたってフルオロモノマーの水性乳化重合における最適な乳化剤であった。ペルフルオロオクタン酸を用いると、分散液の固体含量(ポリマー含量)が増加し、許容できる反応速度で所望の分子量及び粒径のポリマーを生成させ、安定な分散液をもたらす。しかし、全フッ素化乳化剤は、高価な物質である。また、一部の全フッ素化酸は、生分解性が低いことが見出されている。したがって、フルオロポリマー分散液からフッ素化乳化剤を保持し、再利用する方法が開発されており、これによって分散液のフッ素化乳化剤含量が低くなる。
【0006】
フルオロポリマー分散液中のフッ素化乳化剤の量を低下させる別の試みは、フッ素化乳化剤を用いずにフルオロポリマーを調製することに関する。したがって、全くフッ素化乳化剤を必要としない乳化重合法に対する関心が高まっている。
【0007】
界面活性剤を全く用いない水性乳化重合は、例えば、米国特許第5,453,477号、国際公開第96/24622号、及び同第97/17381号に開示されている。例えば、国際公開第97/17381号には、界面活性剤の不在下における水性乳化重合であって、還元剤及び酸化剤のラジカル反応開始剤系を使用して重合を開始させ、反応開始剤系を重合中に1回以上更なる投入(charge)で添加する水性乳化重合が報告されている。
【0008】
非フッ素化乳化剤を用いる方法は、例えば、米国特許出願公開第2006/0281845号、欧州特許第1 462 461号、又は国際公開第2008/033271号に記載されている。国際公開第2008/033271号では、乳化剤としてカルボシランを用いて、TFE、HFP、及びVDFコポリマーとTFEによって作製されたポリマーの大部分との小粒子分散液が得られた。しかし、カルボシランは、容易には入手できず、現在のところカルボシランの使用は経済的ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で用意されるポリオール界面活性剤を用いてフルオロポリマー分散液を調製することができることが今では判明している。
【0010】
また、本明細書で用意されるポリオール界面活性剤を用いて、フルオロポリマー分散液の剪断安定性を高めることができることも判明している。
【0011】
したがって、
i)少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1個のポリオール単位と、少なくとも6個の炭素原子を含有する少なくとも1個の長鎖単位とを含有する、少なくとも1種の非芳香族ポリオール化合物と、
ii)フッ素化オレフィンから誘導される繰り返し単位を含む少なくとも1種のフルオロポリマーと、を含む組成物が用意される。
【0012】
別の態様では、上述の組成物から調製されるコーティングを含有する基材が用意される。
【0013】
更なる態様では、フルオロポリマー分散液の剪断安定性を高める方法であって、有効量の少なくとも1つのポリオール化合物を前記分散液に添加することを含む、方法が用意される。
【0014】
更なる態様では、基材をコーティング又は含浸する方法であって、上記フルオロポリマー組成物を準備する工程と、任意で、更なる成分を添加する工程と、前記組成物を基材に塗布する工程と、を含む方法が準備される。
【0015】
更なる実施形態では、フルオロポリマーを調製する方法であって、上述のポリオールの存在下で、水相中においてフッ素化オレフィンを重合させる工程を含む方法が準備される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施形態を詳細に説明するのに先立ち、本開示はその用途において以下の説明文に記載される詳細に限定されない点は理解されるべきである。本発明には他の実施形態が可能であり、本発明は様々な方法で実施又は実行することが可能である。
【0017】
また、本明細書で使用される専門語及び専門用語は、説明目的のためであり、限定するものと見なされるべきではないことが理解されるべきである。本願における「含む」、「含有する」、「備える」、又は「有する」の使用は、非限定的であることを意味し、これらの語の後に列記される要素(及びその等価物)に加えて更なる要素を包含することを意味する。「からなる」という語は、その後に列記される要素(及びその等価物)を包含するが、任意の更なる要素は包含しないことを意味する。「a」又は「an」の使用は、「1つ(個、種)以上の」を包含することを意味する。
【0018】
本明細書に列挙される任意の数値範囲は、省略を意図し、その範囲の下限から上限までの全ての値を明示的に含むことを意図する。例えば、1%〜50%の濃度範囲は、略記であり、例えば、2%、40%、10%、30%、1.5%、3.9%等の1%と50%との間の値を明示的に開示することを意図する。
【0019】
フルオロポリマー
フルオロポリマーは、完全にフッ素化されている骨格鎖を有してもよい(すなわち、ペルフルオロポリマーであってもよい)。また、フルオロポリマーは、部分的にフッ素化されている骨格鎖を有してもよく、例えば、骨格鎖に水素原子を含有してもよい。
【0020】
フルオロポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。フルオロポリマーは、フッ素化オレフィン(フッ素化オレフィン性モノマー又はフルオロモノマーとも呼ばれる)に由来する繰り返し単位を含有する。このようなフッ素化オレフィン性モノマーとしては、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(1−HPFP)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(2−HPFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、及びこれらの組み合わせ等のフルオロオレフィンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
また、フルオロモノマーとしては、例えば、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル等のフッ素含有ビニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。モノマーとして使用するのに好適なペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)としては、以下の式
CF=CFO(R’O)(R”O)Rf (I)
(式中、R’及びR”は、炭素数2〜6個の異なる直鎖又は分岐ペルフルオロアルキレン基であり、m及びnは、独立して0〜10であり、n+mの合計は0又は少なくとも1であってよく、Rfは、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基である)のものが挙げられる。
【0022】
ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルの特定の実施形態としては、以下の式
CF=CFO(CFCFXO)Rf (II)
(式中、Xは、F又はCFであり、nは0〜5でありかつRfは、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基であるか、又は式中、nは0若しくは1でありかつRfは、炭素数1〜3である)の組成が挙げられる。このような全フッ素化エーテルの例としては、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)及びペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)が挙げられる。
【0023】
他の有用なフルオロモノマーとしては、以下の式
CF=CFO[(CFCFCFZO]Rf (III)
(式中、Rfは炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基であり、m=0又は1であり、n=0〜5であり、Z=F又はCFである)の化合物が挙げられる。この部類の具体的なメンバーは、RfがCF、C又はCであり、m=0であり、n=1であるものである。
【0024】
有用なペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)の他の例としては、以下の式
CF=CFOCFCF(CF)O(CFO)2n+1 (IV)
(式中、nは1〜5、好ましくは1であり、mは1〜3の整数である)に対応する化合物が挙げられる。
【0025】
また、フルオロモノマーとしては、例えば、ペルフルオロ(アルキルアリル)エーテル等のフッ素含有アリルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。モノマーとして使用するのに好適なペルフルオロ(アルキルアリル)エーテル(PAAE)としては、以下の式のものが挙げられる:
CF=CFCFO(R’O)(R”O)Rf (V)
(式中、R’及びR”は、炭素数2〜6個の異なる直鎖又は分岐ペルフルオロアルキレン基であり、m及びnは、独立して0〜10であり、n+mの合計は0又は少なくとも1であり、Rfは、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基である)。
【0026】
また、フルオロポリマーは、非フッ素化モノマーに由来する単位又は繰り返し単位を含有してもよい。このようなコモノマーとしては、アルファオレフィン、例えば、エチレン及びプロピレンが挙げられる。
【0027】
炭化水素オレフィンの共重合単位がフルオロポリマー中に存在する場合、炭化水素オレフィン含量は、一般的に、ポリマーの総重量に基づいて、約4〜約30重量%である。
【0028】
フルオロモノマーと命名された上記のいずれかの組み合わせ、及びフルオロモノマーと命名された上記と炭化水素オレフィンとの組み合わせを用いてもよい。
【0029】
フルオロポリマーは、熱可塑性フルオロポリマーであってもフルオロエラストマーであってもよい。「熱可塑性フルオロポリマー」とは、結晶質又は半結晶質のフルオロポリマーを意味する。結晶質又は半結晶質のフルオロポリマーは、典型的に、鋭い融点(すなわち、3℃未満を網羅する範囲内で融解が生じる融点)を有してもよく、融点範囲を有してもよい。融点又は融点範囲は、典型的に、約90℃〜約350℃、又は312℃超かつ約350℃以下、又は更には326℃超かつ約350℃以下である。融点は、例えば、DSCによって測定することができる。
【0030】
熱可塑性フルオロポリマーは、ホモポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレンホモポリマー又はポリフッ化ビニリデンホモポリマー)であってもよい。熱可塑性フルオロポリマーは、コモノマーであってもよい。熱可塑性フルオロポリマーとしては、PTFE(TFEホモポリマー)、「変性PTFE」(すなわち、1重量%以下のコモノマー含量を有するTFE−コモノマー)、THV(=TFE、HFP、及びVDFに由来する繰り返し単位を含むポリマー)、FEP(=TFE及びFEPに由来する繰り返し単位を含むポリマー)、及びPFA(=TFE及びペルフルオロアルキルビニルエーテル又はペルフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含むポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
熱可塑性フルオロポリマーとしては、「溶融加工可能な」フルオロポリマー及び「溶融加工不可能な」フルオロポリマーが挙げられる。溶融加工不可能なフルオロポリマーは、非常に高い分子量を有するか、又は便利に溶融押出することができない融解粘度を有する。この特性は、「メルトフローインデックス」又は「MFI」によって表され、これは、所定の時間、所定の重量下で開口部から押し出され得るポリマーの量を測定する(DIN EN ISO 1133と比較する)。10kgの荷重を用いる372℃におけるMFI(「MFI 372/10」と略される)が0.1g/10分以下であることは、ポリマーが溶融加工不可能であることを示す。溶融加工可能なポリマーは、0.1g/10分超であるMFI 372/10を有する。溶融加工不可能なフルオロポリマーの例としては、PTFEホモポリマー、及び1重量%以下のコモノマー含量を有するPTFEコモノマーであるいわゆる「変性PTFE」が挙げられる。溶融加工可能なPTFEホモポリマーは、「マイクロパウダー」と呼ばれる。「マイクロパウダー」は、0.1g/10分超であり、MFI 372/10である低分子量を有する。PVDF、THV、FEP、及びPFAは、溶融加工可能なフルオロポリマーの更なる例であるが、唯一の例ではない。
【0032】
「フルオロエラストマー」は、硬化(架橋)させてエラストマー特性を得ることができる非晶質フルオロポリマー又はエラストマー特性を有する(かつ典型的に架橋されている)非晶質ポリマーを意味する。非晶質フルオロポリマーは、一般的に、融点又は融点範囲を有しない。フルオロエラストマーは、フルオロエラストマーの重量に基づいて、フッ化ビニリデン(VDF)又はテトラフルオロエチレン(TFE)又はPAVE又はこれらの組み合わせであってもよい第1のフルオロモノマーの共重合単位を25〜70重量%又は30〜60重量%含有してもよい。フルオロエラストマー中の残りの単位は、前記第1のモノマーとは異なる、1つ以上の更なる共重合モノマーから構成される。このようなモノマーとしては、上述のフルオロモノマー、上述の炭化水素オレフィン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
また、フルオロエラストマーは、1つ以上の硬化部位モノマーの単位を含有するフルオロポリマーを含んでもよい。硬化部位モノマーは、架橋剤の影響を受けやすいフルオロポリマーの基に導入されて、架橋高分子網目構造を形成する。したがって、フルオロエラストマーとしては、硬化性(架橋性)及び硬化された(架橋された)フルオロポリマーが挙げられる。
【0034】
好適な硬化部位モノマーの例としては、i)臭素含有オレフィン;ii)ヨウ素含有オレフィン;iii)臭素含有ビニルエーテル;iv)ヨウ素含有ビニルエーテル;v)ニトリル基を有するフッ素含有オレフィン;vi)ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテル;vii)1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(2−HPFP);viii)ペルフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテル;及びix)非共役ジエンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
臭化硬化部位モノマーは、他のハロゲン、好ましくはフッ素を含有してもよい。臭化オレフィン硬化部位モノマーの例は、CF=CFOCFCFCFOCFCFBr;ブロモトリフルオロエチレン;4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(BTFB);並びに臭化ビニル、1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン;ペルフルオロアリルブロミド;4−ブロモ−1,1,2−トリフルオロブテン−1;4−ブロモ−1,1,3,3,4,4−ヘキサフルオロブテン;4−ブロモ−3−クロロ−1,1,3,4,4−ペンタフルオロブテン;6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキセン;ブロモペルフルオロブテン−1及び3,3−ジフルオロアリルブロミド等の他のものである。好適な臭化ビニルエーテル硬化部位モノマーとしては、2−ブロモ−ペルフルオロエチルペルフルオロビニルエーテル及びCFBr−Rf−O−CF=CF(Rfは、ペルフルオロアルキレン基である)の部類のフッ素化化合物、例えば、CFBrCFO−CF=CF、及びROCF=CFBr又はROCBr=CF(Rは、低級アルキル(C1〜C6)基又はフルオロアルキル基)の部類のフルオロビニルエーテル、例えば、CHOCF=CFBr又はCFCHOCF=CFBrが挙げられる。
【0036】
好適なヨウ化硬化部位モノマーとしては、以下の式:CHR=CH−Z−CHCHR−I(式中、Rは−H又は−CHであり、Zは、米国特許第5,674,959号に開示されている通り、直鎖又は分岐の、任意で1個以上のエーテル酸素原子を含有するC1〜C18(ペル)フルオロアルキレンラジカル、又は(ペル)フルオロポリオキシアルキレンラジカルである)のヨウ化オレフィンが挙げられる。有用なヨウ化硬化部位モノマーの他の例は、以下の式:I(CHCFCFO−CF=CF及びICHCFO[CF(CF)CFO]CF=CF等(式中、n=1〜3である)の不飽和エーテルである。更に、ヨードエチレン、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB);3−クロロ−4−ヨード−3,4,4−トリフルオロブテン;2−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(ビニルオキシ)エタン;2−ヨード−1−(ペルフルオロビニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエチレン;1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヨード−1−(ペルフルオロビニルオキシ)プロパン;2−ヨードエチルビニルエーテル;3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−4−ヨードペンテン;及びヨードトリフルオロエチレンを含む好適なヨウ化硬化部位モノマーが米国特許第4,694,045号に開示されている。ヨウ化アリル及び2−ヨード−ペルフルオロエチルペルフルオロビニルエーテルも有用な硬化部位モノマーである。
【0037】
有用なニトリル含有硬化部位モノマーとしては、以下の式:CF=CF−O(CF−CN(式中、n=2〜12、好ましくは2〜6である);CF=CF−O[CF−CF(CF)−O]−CF−CF(CF)−CN(式中、n=0〜4、好ましくは0〜2である);CF=CF−[OCFCF(CF)]−O−(CF−CN(式中、x=1〜2及びn=1〜4である);及びCF=CF−O−(CF−O−CF(CF)CN(式中、n=2〜4である)のものが挙げられる。好ましい硬化部位モノマーは、例えば、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN(すなわち、ペルフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)又は8−CNVE)等の、ニトリル基及びトリフルオロビニル基を有する全フッ素化ポリエーテルである。
【0038】
非共役ジエン硬化部位モノマーの例としては、1,4−ペンタジエン;1,5−ヘキサジエン;1,7−オクタジエン;3,3,4,4−テトラフルオロ−1,5−ヘキサジエンが挙げられるが、これらに限定されない。好適なトリエンは、8−メチル−4−エチリデン−1,7−オクタジエンである。
【0039】
上に列記した硬化部位モノマーのうち、フルオロエラストマーがペルオキシド硬化剤で硬化される状況で好ましい化合物としては、1つ以上のヨウ素及び/又は1個以上の臭素基を含有する硬化部位モノマー、並びに1個以上のニトリル基を含有する硬化部位モノマー、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
典型例としては、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(BTFB);4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB);ヨウ化アリル;ブロモトリフルオロエチレン、8−CNVE等のニトリル含有硬化部位モノマーが挙げられる。
【0041】
フルオロエラストマーが硬化剤としてのポリオールで硬化されるとき、2−HPFP又はペルフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテルを好ましい硬化部位モノマーとして用いることができる。
【0042】
フルオロエラストマーがテトラアミンで硬化されるとき、ビス(アミノフェノール)又はビス(チオアミノフェノール)、ニトリル含有硬化部位モノマー(例えば、8−CNVE)を好ましい硬化部位モノマーとして用いることができる。
【0043】
フルオロエラストマーがアンモニア又は硬化温度でアンモニアを放出する化合物(例えば、尿素)で硬化されるとき、ニトリル含有硬化部位モノマー(例えば、8−CNVE)が好ましい硬化部位モノマーである。
【0044】
硬化部位モノマーの単位は、本発明の方法によって製造されるフルオロエラストマー中に存在するとき、典型的に、(フルオロエラストマーの総重量に基づいて)0.05〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、最も好ましくは0.05〜3重量%の濃度で存在する。硬化剤、硬化促進剤の存在又は欠如、及び用いられる硬化レジメによって、ルーチンな実験により最適な量を決定することができる。
【0045】
特定のフルオロエラストマーとしては、i)フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレン;ii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレン;iii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及び4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;iv)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及び4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;v)フッ化ビニリデン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレン及び4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vi)フッ化ビニリデン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレン及び4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;vii)フッ化ビニリデン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、テトラフルオロエチレン及び1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン;viii)テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル及びエチレン;ix)テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、エチレン、及び4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;x)テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、エチレン、及び4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xi)テトラフルオロエチレン、プロピレン、及びフッ化ビニリデン;xii)テトラフルオロエチレン及びペルフルオロ(メチルビニル)エーテル;xiii)テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、及びペルフルオロ(8−シアノ−5−メチル3,6−ジオキサ−1−オクテン);xiv)テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル及び4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;xv)テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル及び4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;及びxvi)テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、及びペルフルオロ(2−フェノキシプロピルビニル)エーテルの共重合単位を含むものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
更に、ヨウ素含有末端基、臭素含有末端基、又はこれらの混合物が、任意で、フルオロエラストマーの調製中に官能化連鎖移動剤又は分子量調節剤を使用した結果として、フルオロエラストマーポリマー鎖末端の一方又は両方に存在してもよい。連鎖移動剤の量は、使用されるとき、フルオロエラストマー中のヨウ素又は臭素濃度が0.005〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%の範囲になると計算される。官能化連鎖移動剤の例としては、ポリマー分子の末端の一方又は両方に結合ヨウ素が組み込まれたヨウ素含有化合物が挙げられる。ヨウ化メチレン;1,4−ジヨードペルフルオロ−n−ブタン;及び1,6−ジヨード−3,3,4,4,テトラフルオロヘキサンが、このような剤の代表例である。他のヨウ化連鎖移動剤としては、1,3−ジヨードペルフルオロプロパン;1,6−ジヨードペルフルオロヘキサン;1,3−ジヨード−2−クロロペルフルオロプロパン;1,2−ジ(ヨードフルオロメチル)−ペルフルオロシクロブタン;モノヨードペルフルオロエタン;モノヨードペルフルオロブタン;2−ヨード−1−ヒドロペルフルオロエタン等が挙げられる。また、シアノ−ヨウ素連鎖移動剤も挙げられる。特に好ましいのは、ニヨウ化連鎖移動剤である。臭化連鎖移動剤の例としては、1−ブロモ−2−ヨードペルフルオロエタン;1−ブロモ−3−ヨードペルフルオロプロパン;1−ヨード−2−ブロモ−1,1−ジフルオロエタン、及び他のものが挙げられる。
【0047】
硬化部位モノマー及び連鎖移動剤は、反応器に未希釈で添加してもよく、溶液として添加してもよい。重合の開始時付近で反応器に組み込むことに加えて、生成されるフルオロエラストマーの所望の組成、使用される連鎖移動剤、及び合計反応時間によって、ある量の連鎖移動剤を重合反応期間全体にわたって添加してもよい。
【0048】
フルオロポリマーの具体例としては、
(a)フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(b)フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(c)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(d)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(e)テトラフルオロエチレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(f)ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンのコポリマー;
(g)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(h)荷重10kgで372℃におけるメルトフローインデックスが0.1g/10分超であるテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(i)372℃におけるメルトフローインデックスが0.1g/10分以下であるテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー及び
(j)PVDF;
(k)TFE並びに1つ以上のペルフルオロアルキルビニルエーテル及び/又はペルフルオロアルキルアリルエーテル並びに任意でヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(l)TFE、ヘキサフルオロプロピレン、並びに任意で1つ以上のペルフルオロアルキルビニルエーテル及び/又はペルフルオロアルキルアリルエーテルに由来する繰り返し単位を含むポリマー;及び
(m)TFE、ヘキサフルオロプロピレン、エチレン及び/又はプロピレン、並びに任意で1つ以上のペルフルオロアルキルビニルエーテル及び/又はペルフルオロアルキルアリルエーテルに由来する繰り返し単位を含むポリマー;が挙げられる:
ポリオールを用いてフルオロポリマーを製造する方法
下記のようなポリオールは、少量のフッ素化乳化剤を用いて、又は更にはフッ素化乳化剤を用いることなく、フッ素化モノマーを重合させることができる。例えば、更なる実施形態では、本明細書に記載される方法は、100ppm未満の全フッ素化アルカン酸カルボキシレート(特に、ペルフルオロオクタン酸等の全フッ素化C8〜C12アルカン酸)を含有する水性媒質中でフッ素化モノマーを重合させることを含んでもよい。他の実施形態では、水性媒質は、50ppm未満、10ppm未満、又は更には0ppmの上述のフッ素化乳化剤を含有してもよい。
【0049】
また、本明細書に記載されるポリオール化合物を用いる重合によって、小さな粒径を有するフルオロポリマー分散液を調製することができる。小さな粒径を有するフルオロポリマーは、コーティング又は含浸用途に対して優れた特性を有することが見出されている。更に、小さなフルオロポリマー粒子を含有する分散液は、大きなフルオポリマー粒子を含む分散液よりも安定している傾向がある。後者は、早すぎる凝固(すなわち、不可逆的相分離)又は水相からのポリマーの沈降(すなわち、可逆的相分離)を導く場合がある。どちらの種類の相分離も、たとえ可逆的な種類であっても望ましくない。フルオロポリマー分散液を原材料として準備するとき、早すぎ凝固を避けるべきである。しかし、最終産物が、凝固によってフルオロポリマー分散液から得られる固体であったとしても、フルオロポリマーの早すぎ凝固又は沈降は避けるべきである。その理由は、それが分散液の貯蔵寿命を短縮したり、ポリマー処理、後処理、及び適用工程において破損を導くためである。
【0050】
本明細書に記載されるポリオールの使用は、小さな粒径のフルオロポリマーの調製、特にTFEとの重合、又はTFE及びHFP、TFE及びVDF、並びにTFE、VDF及びHFPを含む組み合わせに特に適していることが見出されている。
【0051】
フッ素化モノマーの重合において本明細書に準備される少量のポリオールからは、小さな粒径を有するフルオロポリマーを得ることができ、また10重量%超である固体含量を有するフルオロポリマー分散液を生成するために用いることができる。
【0052】
本発明のポリオールは、特にフッ素化界面活性剤(通常、乳化重合プロセスにて使用される)の量と比較して非常に少量で存在することができる。例えば、ポリオールは、水相重量に対して、1重量%以下、0.5重量%以下、あるいは0.1重量%以下の量で存在してよい。
【0053】
更に、ポリオールは、水相重量に対して、0.0001重量%から、0.001重量%から、0.01重量%から、あるいは0.1重量%からの量で存在してよい。この状況では、「水相の重量」は、反応媒質で用いられる水の重量を指す。最適な量は、ルーチンな実験により同定することができる。
【0054】
水性乳化重合は、典型的には、フルオロモノマーのフリーラジカル重合を開始させることが既知である任意の反応開始剤を含む反応開始剤により始まる。好適な反応開始剤としては、過酸化物及びアゾ化合物及びレドックス系反応開始剤が挙げられる。過酸化物反応開始剤の具体例としては、過酸化水素;過酸化ナトリウム又は過酸化バリウム;過酸化ジアセチル、過酸化ジサクシノイル、過酸化ジプロピオニル、過酸化ジブチリル、過酸化ジグルタル酸などの過酸化ジアシル;並びに更なる過酸及びその塩類、例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩が挙げられる。過酸の例としては、過酢酸が挙げられる。過酸のエステルも同様に使用可能である。無機の反応開始剤の例としては、例えば、過硫酸塩、過マンガン酸若しくはマンガン酸の、アンモニウム−、アルカリ−、若しくはアルカリ土類塩、又はマンガン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
過硫酸塩反応開始剤、例えば過硫酸アンモニウム(APS)は、単独で使用しても、還元剤と組み合わせて使用してもよい。好適な還元剤としては、例えば重亜硫酸アンモニウム又はメタ重亜硫酸ナトリウムのような重亜硫酸塩、例えばチオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸カリウム、又はチオ硫酸ナトリウムのようなチオ硫酸塩、ヒドラジン、アゾジカルボン酸塩及びアゾジカルボキシルジアミド(ADA)が挙げられる。使用してよい更なる還元剤としては、スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド(RONGALIT、BASF(ドイツ)から入手可能)又はスルフィン酸フルオロアルキルが挙げられる。還元剤は、典型的には、過硫酸塩反応開始剤の半減期を減少させる。更に、例えば銅塩、鉄塩又は銀塩のような金属塩触媒を添加してよい。反応開始剤の量は(生成されるべきフルオロポリマー固形分に基づいて)、0.0001重量%〜1重量%であってよい。一実施形態では、反応開始剤の量は、0.0005重量%〜0.5重量%である。別の実施形態では、前記量は、0.005重量%〜0.3重量%であってよい。
【0056】
水性乳化重合系は、更に、緩衝剤のような他の材料、及び必要に応じて錯体形成剤又は連鎖移動剤を含んでよい。存在する場合、連鎖移動剤は、典型的に、ポリマーの鎖長を制御するために少量存在する。使用可能な連鎖移動剤の例としては、ジメチルエーテル、及びメチルt−ブチルエーテルなどのエーテル;エタン、プロパン及びn−ペンタンなどの、1個〜5個の炭素原子を有するアルカン;CCl、CHCl及びCHCl並びにハイドロフルオロカーボン化合物などのハロゲン化炭化水素が挙げられる。他の好適な連鎖移動剤としては、イソプロパノール、マロン酸ジエチル、酢酸エチル、クロロホルム、アセトン、及びドデシルメルカプタン、ジアルキルエーテルが挙げられる。
【0057】
また、水性乳化重合系は、ポリオール以外の更なる乳化剤を含有してもよいが、これは必須ではない。このような乳化剤としては、例えば、スルフィン酸塩又はペルフルオロ脂肪族スルフィン酸塩等のカルボン酸ではない1つ以上のフッ素系界面活性剤が挙げられる。スルフィン酸塩は、式Rf−SOM(式中、Rfは、ペルフルオロアルキル基又はペルフルオロアルコキシ基である)を有してもよい。また、スルフィン酸塩は、式Rf’−(SOM)n(式中、Rf’は、多価、好ましくは二価のペルフルオロラジカルであり、nは2〜4、好ましくは2の整数である)を有してもよい。好ましくは、ペルフルオロラジカルは、ペルフルオロアルキレンラジカルである。一般的に、Rf及びRf’は、1〜20個の炭素原子、好ましくは4〜10個の炭素原子を有する。Mは、一価のカチオンである(例えば、H+、Na+、K+、NH+等)。
【0058】
このようなフッ素系界面活性剤の具体例としては、例えば、C−SONa;C13−SONa;C17−SONa;C12−(SONa);及びC−O−CFCF−SONaが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
必須ではないが、フッ素化カルボン酸等のフッ素化乳化剤、特に、全フッ素化アルカン酸よりも生物蓄積性が低いことが分かっているものを、重合で用いてもよい。必要に応じて、部分的フッ素化又は全フッ素化アルコキシ酸又はポリオキシアルカン酸を用いてもよい。このような乳化剤は、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、及びスルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1個の末端基を有するフルオロポリエーテル(FPE)であってもよい。フルオロポリエーテルは、分子の骨格鎖中の酸素原子が1〜3個の炭素原子を有する飽和フッ化炭素によって分離されている任意の鎖構造を有してもよい。1種超であるフッ化炭素基が分子中に存在してもよい。代表的な構造は、(−CF(CF)−CF−O−)、(−CF−CF−O−)、(−CF−O−)、(−CFH−)、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上の単位を有する。
【0060】
固体含量(ポリマー含量)が10〜39重量%であるフルオロポリマー分散液は、本明細書に準備される重合方法によって調製することができる(原分散液)。例えば、固体含量は、14重量%以下、24重量%以下、又は31重量%以下であってもよい。分散液は、熱的高濃縮(upconcentration)、限外濾過、相分離等の既知の方法によって、より高い固体含量に高濃縮することができる。
【0061】
更なる実施形態では、本明細書に記載の方法は、非フッ素化アニオン性界面活性剤、非フッ素化非イオン性界面活性剤、又はこれらの組み合わせを、上述の方法によって生成したフルオロポリマー分散体へ添加する工程を更に含んでよい。これら界面活性剤は、例えば、高濃縮プロセス中又は後に分散液の安定性を更に高めたり、剪断力に対する分散液の安定性は高めたりすることができるが、組成物の濡れ特性を微調整して、例えば、基材のコーティング又は含浸を促進するために添加してもよい。
【0062】
本発明に関連して使用してよいアニオン性非フッ素化界面活性剤としては、酸性基、特に、スルホン酸基又はカルボン酸基を有する界面活性剤が挙げられる。非フッ素化アニオン性界面活性剤の例としては、1個以上のアニオン性基を有する界面活性剤が挙げられる。アニオン性非フッ素化界面活性剤としては、1個以上のアニオン性基に加えて、オキシアルキレン基中に2個〜4個の炭素原子を有するポリオキシアルキレン基(例えば、ポリオキシエチレン基)などの、他の親水性基を挙げることができる。
【0063】
典型的な非フッ素化界面活性剤としては、アニオン性炭化水素界面活性剤が挙げられる。用語「アニオン性炭化水素界面活性剤」は、本明細書で用いられる時、分子中に1つ以上の炭化水素部分、及び1個以上のアニオン性基(特に、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基及びカルボン酸基などの酸性基、並びにこれらの塩)を含む界面活性剤からなる。アニオン性炭化水素界面活性剤の炭化水素部分の例としては、例えば6個〜40個の炭素原子、好ましくは8個〜20個の炭素原子を有する飽和及び不飽和の脂肪族基が挙げられる。このような脂肪族基は、直鎖又は分枝状であってよく、また環状構造を含有してよい。炭化水素部分はまた、芳香族基であってもよいし、あるいは芳香族基を含有してもよい。更に、炭化水素部分は、例えば酸素、窒素及びイオウなどのヘテロ原子を1個以上含有してよい。
【0064】
本発明で使用するための非フッ素化アニオン性炭化水素界面活性剤の特定例としては、ラウリルスルホネートなどのアルキルスルホネート、ラウリルサルフェートなどのアルキルサルフェート、アルキルアリールスルホネート及びアルキルアリールサルフェ−ト、及びアルキルスルホスクシネート、ラウリン酸及びその塩類などの脂肪酸(カルボン酸)及びそれらの塩、並びにリン酸アルキル又はアルキルアリールエステル及びそれらの塩が挙げられる。使用可能な市販のアニオン性炭化水素界面活性剤としては、Stepan Company,Germany製のPolystep A1 6(ドデシルベンジルスルホン酸ナトリウム);Clariant GmbH,Germanyからそれぞれ入手可能なHostapur SAS 30(二級アルキルスルホン酸ナトリウム塩)、Emulsogen LS(ラウリル硫酸ナトリウム)及びEmulsogen EPA 1954(C2〜C4のアルキル硫酸ナトリウムの混合物);Cognis,Germanyから入手可能なEdenor C−12(ラウリン酸);並びにDow Chemical,Midland,MIから入手可能なTRITON X−200(アルキルスルホン酸ナトリウム)として販売されているものが挙げられる。更なる好適なアニオン性界面活性剤としては、欧州特許第1,538,177号及び欧州特許第1,526,142号に開示されているスルホサクシネートが挙げられる。カルボン酸基を有する非フッ素化アニオン性炭化水素界面活性剤が好ましい。
【0065】
好適な非フッ素化非イオン性界面活性剤としては、「Nonionic Surfactants」、M.J.Schick(編)、Marcel Dekker,Inc.,New York 1967に記載されているものが挙げられる。非イオン性界面活性剤の例は、アルキルアリールポリエトキシアルコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル界面活性剤、及びアルコキシル化アセチレンジオール、好ましくはエトキシル化アセチレンジオール、並びにこのような界面活性剤の混合物の群から選択することができる。他の好適な非フッ素化非イオン性界面活性剤としては、本明細書に記載されるポリオール化合物が挙げられる。
【0066】
通常は、使用される非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤の混合物は、11〜16のHLB(親水親油バランス)を有する。HLB数は、界面活性剤を特性評価するために、W.C.Griffin「Calculation of HLB Values of Non−Ionic Surfactants」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 5(1954),p.259によって導入された。エチレンオキシド基のみを有する非イオン性界面活性剤のHLB数は、式HLB=E/5(式中、Eはエチレンオキシド基の重量%を表す)に従って計算することができる。特定の実施形態では、非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤の混合物は、以下の一般式(VI):
O−[CHCHO]−[RO]−R (VI)
(式中、Rは、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは8〜18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の脂肪族又は芳香族の炭化水素基を表す)に対応する。したがって、好ましい実施形態では、残基R1は、残基(R’)(R”)C−(式中、R’及びR”は、同一であっても異なっていてもよい、直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル基である)に対応する。式(X)中、Rは3個の炭素原子を有するアルキレンを表し、Rは水素又はC1〜C3アルキル基を表し、nは0〜40の値を有し、mは0〜40の値を有し、かつn+mの合計は少なくとも2である。上記一般式が、混合物を表す場合、n及びmは、対応する基の平均量を表す。また、上記式が混合物を表す場合、脂肪族基R中の炭素原子の表示量は、界面活性剤混合物中の炭化水素基の平均長を表す平均数であり得る。市販の非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤の混合物としては、GENAPOL X−080及びGENAPOL PF 40などの商品名ゲナポールとして、Clariant GmbHから入手可能なものが挙げられる。
【0067】
市販されている更なる好適な非イオン性界面活性剤としては、商品名Tergitol TMN 6、Tergitol TMN 10OX、Tergitol TMN 10、及びTriton X−I00(Dow Chemicalから入手可能)が挙げられる。更なる実施形態によれば、mが0である式(VII)の1つ以上の界面活性剤と、n及びmのそれぞれが0ではない式(VII)の1つ以上の界面活性剤との混合物を使用することが可能である。このような混合物の例は、GENAPOL X−080とGENAPOL PF40との混合物である。
【0068】
また、エトキシル化アミン及びアミンオキシドを乳化剤として用いてもよい。
【0069】
使用可能な更なる非フッ素化非イオン性界面活性剤としては、アルコキシル化アセチレンジオール、例えば、エトキシル化アセチレンジオールが挙げられる。本実施形態で使用するためのエトキシル化アセチレンジオールは、好ましくは、11〜16のHLBを有する。
【0070】
使用してよい市販のエトキシル化アセチレンジオールとしては、Air Products,Allentown,PAから商品名SURFYNOLとして入手可能なもの(例えば、特に、SURFYNOL 465)が挙げられる。更に有用な非イオン性界面活性剤としては、商品名Silwet L77(Crompton Corp.,Middlebury,CT)として入手可能なもの等のポリシロキサン系界面活性剤が挙げられる。また、アミンオキシドも、本明細書に記載されるフルオロポリマー分散液に対する安定剤として有用であると考えられる。
【0071】
更に、上述の界面活性剤に加えて又は上述の界面活性剤の代わりに、ポリアニオン性化合物(例えば、ポリアニオン性ポリアクリレート等)等の高分子電解質を分散液に添加してもよい。
【0072】
本明細書に記載される重合方法から得られる分散液は、一般的に、小さな粒径を有する。例えば、本明細書に準備される方法によって、40nm以下、典型的には20nm超又は50nm(数平均)の数平均粒径を有する上述のフルオロポリマーを含有するフルオロポリマー分散液を生成することができる。より具体的には、本明細書で準備される方法によって、約55nm〜約300nm未満、又は更には約250nm未満まで、又は更には約200nm未満までの平均粒径(数平均)を有する上述のフルオロポリマーを含有するフルオロポリマー分散液を生成することができる。
【0073】
分散液は、粒径分布に関して単峰性、二峰性、又は多峰性であり、ポリマーは、例えば、当該技術分野において既知であるシード重合を用いることによってコア−シェル構造を有してもよい。フルオロポリマーの分子量分布は、フルオロポリマーの分子量分布に関して単峰性、二峰性、又は多峰性分布を得ることができるように、当該技術分野において既知の方法によって適合させることができる。また、既知の重合方法によって、狭い又は広い分子量分布を有するポリマーを生成することができる。
【0074】
本明細書に記載される方法は、特に記載しない限り、約0.01〜約100g/10分のMFI(265/5)又は約0.01〜約100g/10分のMFI(372/5)を有する上述のフルオロポリマーを作製するのに特に適しており、ここでMFI(265/5)は荷重5kgを用いて265℃で測定されたことを意味し、MFI(372/5)は、荷重5kgを用いて372℃で測定されたことを意味する。
【0075】
したがって、本明細書に記載されるポリオールと上述のように小さな粒径を有するフルオロポリマーとを含む水性分散液が準備される。具体例としては、400nm以下又は350nm未満、又は更には250nm未満又は約199nm以下の平均粒径(Z−平均)を有する粒子が挙げられる。例えば、フルオロポリマーは、約20nm〜約198nm、又は約51nm〜約182nmの平均粒径(Z−平均)を有してもよく、約55nm〜約300nm未満、又は更には約250nm未満まで、又は更には約200nm未満までの平均粒径(Z−平均)を有してもよい。典型的なフルオロポリマーとしては、400nm以下、又は約55nm〜約300nm未満、又は250nm未満又は200nm未満の平均粒径(Z−平均)を有し、かつ約0.01〜約100g/10分のMFI(265/5)又は約0.01〜約100g/10分のMFI(372/5)を有するポリマーが挙げられる。典型的なフルオロポリマーとしては、400nm以下、又は約55nm〜約300nm未満、又は250nm未満、又は約200nm未満の平均粒径(Z−平均)を有し、かつ約0.01〜約100g/10分のMFI(265/5)又は約0.01〜約100g/10分のMFI(372/5)を有し、かつ約90℃〜約327℃、好ましくは100℃〜310℃の融点を有するポリマー、又は非晶質であるフルオロポリマーが挙げられる。典型的に、フルオロポリマーは、約20〜約500nmの平均粒径(Z−平均)を有する。本明細書で言及される粒径は、粒子の最長寸法、すなわち、球形又は楕円体形粒子の場合は直径であり、棒状又は細長い粒子状の場合は長さである。
【0076】
特定のフルオロポリマー分散液の例としては、
i)本明細書に記載される1つ以上のポリオール界面活性剤と、
ii)TFE、TFE及びVDF、又はTFE、VDF、及びHFPに由来する繰り返し単位を含むフルオロポリマーとを含む水性分散液が挙げられる。
【0077】
好ましくは、(ii)のフルオロポリマーは、約50nm〜約201nm、又は約300nm以下の平均粒径(数平均)を有する。
【0078】
(ii)のフルオロポリマーは、約0.01〜約100g/10分のMFI(265/5)(又は約0.01〜約100g/10分のMFI(372/5))を更に有してもよく、分散液は、分散液の重量に基づいて、約10〜約60重量%の固体含量を有してもよい。
【0079】
分散液は、FC−[(CF)−Z(式中、nは4〜16の整数であり、Zはカルボン酸基である)の種類の全フッ素化アルカン酸を含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよい。本質的に含まないとは、分散液当たり>0であるが50ppm未満であることを意味する。
【0080】
特に、上記(ii)のフルオロポリマーとしては、
(a)フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(b)フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(c)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(d)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(e)テトラフルオロエチレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(f)ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンのコポリマー;
(g)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;及び
(h)荷重10kgで372℃における、0.1g/10分超であるメルトフローインデックス(ISO−12086−2)、又は265℃において、約0.01〜約100g/10分のMFI(MFI(265/5))を有するテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
i)VDFホモポリマー(10重量%以下の他のコモノマー、特にHFP及び/又はCTFEを含有してもよい)、が挙げられる。
【0081】
また、上記(ii)のフルオロポリマーとしては、
(a)フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとのビポリマー;
(b)フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのビポリマー;
(c)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、及びヘキサフルオロプロピレンのターポリマー;
(d)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンのクアドポリマー;
(e)テトラフルオロエチレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンのビポリマー;
(f)ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンのビポリマー;
(g)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンのターポリマー;及び
(h)372℃において、荷重10kgで0.1g/10分超であるメルトフローインデックス(ISO−12086−2)を有するテトラフルオロエチレンのホモポリマー、から選択されるフルオロポリマーが挙げられ、
ここで、上記(a)、(b)、(c)及び(d)で用いられる用語「ビポリマー」、上記(c)、(d)、及び(g)で用いられる用語「ターポリマー」及び「クアドポリマー」、及び上記(h)で用いられる用語「ホモポリマー」とは、ポリマーの調製において本質的に他のモノマーが用いられていない、すなわち、ポリマーが少なくとも99重量%の、対応するモノマーのポリマー共重合化単位を含有することを意味する。
【0082】
水性分散液は、約9〜約60重量%の固体含量(ポリマー含量)を有してもよく、更に、上述のような1つ以上のアニオン性界面活性剤及び/又は上述のような1つ以上の非イオン性界面活性剤を含有してもよい。
【0083】
好ましいアニオン性界面活性剤としては、ラウリルスルホネートなどのアルキルスルホネート、ラウリルサルフェートなどのアルキルサルフェート、アルキルアリールスルホネート及びアルキルアリールサルフェ−ト、ラウリン酸及びその塩類などの脂肪酸(カルボン酸)及びそれらの塩、並びにリン酸アルキル又はアルキルアリールエステル及びそれらの塩が挙げられる。
【0084】
好ましい非イオン性界面活性剤としては、式(VI)に係るものが挙げられる。
【0085】
例えば、制御された凝固によって分散液からフルオロポリマーを回収することができ、これは、例えば、高剪断力の印加及び/又は当該技術分野において既知である、水と不混和性である塩、酸、塩基、及び有機溶媒を挙げることができる凝固剤の添加によって達成することができる。
【0086】
本明細書に記載されるプロセスによって得られるフルオロポリマー及びフルオロポリマー分散液を用いて、例えば、基材又は表面を積層、コーティング、及び/又は含浸することができる。表面は、無機材料であっても有機材料であってもよい。基材は、例えば、繊維、布地、顆粒、又は層であってもよい。好適な基材としては、繊維、布地、顆粒、及び層が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
典型的に、基材としては、例えば、フルオロポリマーを含む1つ以上の有機ポリマーを含有する繊維、布地、顆粒、及び層が挙げられる。布地は、織布でも不織布でもよい。繊維は、有機であっても無機であってもよい。
【0088】
上述のプロセスによって得ることができるフルオロポリマー及びフルオロポリマー分散液は、コーティング組成物、例えば、上述の基材を含む有機又は無機基材をコーティングするためのコーティング組成物の調製において用いることができる。このようなコーティング組成物は、例えば、接着強化剤又はプライマー等の更なる成分を含有する水性分散液であってもよい。また、このようなコーティング組成物は、好適な有機溶媒又は溶媒混合物中のフルオロポリマーの溶液を含む。特に、THVポリマーは、有機溶媒に可溶性であってもよく、好適な有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトン等)の溶液として用いてもよい。
【0089】
また、THVポリマーを用いて、インクを用いて印刷することができるフルオロポリマー層を準備することができる。PTFE(すなわち、TFEのホモポリマー、又はTFEと1重量%未満の量の1つ以上の他のフッ素化オレフィンとのコポリマー)は、典型的に、表面エネルギーが低くかつ粘着特性がないので、インクを用いて印刷することができない。
【0090】
この目的のために、フルオロポリマー表面を、THV溶液又は分散液を用いてTHVでコーティングしてもよい。次いで、コーティングされた基材を、酸素を含まない雰囲気下で、例えば、窒素ガス雰囲気下で、又は窒素、及びアセトン等の気化有機溶媒の雰囲気下で、コロナ処理に供する。コロナ処理は、例えば、0.5〜8J/cmのエネルギーレベルで実施してもよい。コロナ処理後、紫外線硬化性インクを用いて基材に印刷してもよい。インクは、色素を含有する液体である。紫外線硬化性インクは、紫外線によって硬化することができるインクである。このようなインクは、典型的に、例えばアクリレート基等の架橋性オレフィン性不飽和を含有する。紫外線硬化性インクは、例えば、3M Company,St.Paul,USAから市販されている。例としては、3M製の2600 UVインク及び3M製の2500 UVインク及び3M製の2200 UVインクが挙げられる。インクで印刷可能なコーティングを準備するために好ましいポリマーは、本明細書に準備されるフルオロポリマー、特にTHVポリマーである。1つの実施形態では、フルオロポリマー、好ましくはPTFEを含み、該層に隣接して又は、フルオロポリマー層に面する表面と反対側の表面に装飾のパターンディスプレイ情報を含有し、前記パターンがUVインクによって作製されるTHVポリマーを含む層上にコーティングされた、層状物品が準備される。好ましくは、パターンを含むTHV表面は、コロナ処理された表面である。より好ましくは、THVは、上述の重合プロセスによって調製されるTHVである。
【0091】
本明細書に準備されるフルオロポリマー及びフルオロポリマー分散液を用いて、フルオロポリマーフィルム又はシート、成形又は押出成形物品、フルオロポリマー含有織物、衣服、屋外用衣類、建築物やテント等で用いるためのフルオロポリマー層含有織物を調製することができる。
【0092】
このような物品及びそれを調製するための方法の例は、DE 20 2004 020 048 U1、WO03/037623、及びUS2008/0178993に記載されている。
【0093】
また、本明細書に記載されるプロセスを用いてフルオロエラストマーを生成することもでき、ここでは上述の水性分散液が、中間産物であってもよい。したがって、本明細書に準備されるフルオロポリマー及び/又は分散液を用いて、フルオロエラストマー組成物、及び硬化性フルオロポリマーを含有する1枚以上の層を含む物品、及び硬化したフルオロエラストマー又は硬化したエラストマーを含有する少なくとも1枚の層を含有する物品を調製することができる。このような物品は、射出成形、吹込成形、押出成形、共押出成形、積層、又は層状物品であってもよい。典型的な物品としては、シール、O−リング、ガスケット、ホース、コンテナ、チューブ等が挙げられる。例えば、燃料タンク、燃料管理システム、ターボチャージャーホース等の燃料又は燃料の煙を収容したり、運んだりするために用いられる、又は曝される容器、ホース、及びチューブ等の物品、あるいは飛行機、船舶、自動車等において燃料又は燃料の煙に曝される材料が特に有用である。他の用途は、医療用途で用いられる材料、例えば、衣類、織物において表面保護に用いられる材料、及び建築用途で用いられる織物又は箔である。
【0094】
剪断安定性を高めるための剤としてのポリオール:
フルオロポリマー分散液は、不安定であり、高い摩擦又は剪断力に曝されたときに凝固(不可逆的相分離)しやすい場合がある。特に、フルオロポリマー分散液がコーティングシステムを通して汲み上げられるか、又はノズルを通して噴霧される連続コーティングプロセスでは、凝固がプロセスの遮断及び中断を導く。凝固体を含有する不均質な分散液もコーティングの質を低下させる。乳化重合で用いられるフッ素化乳化剤は、分散液の安定性に寄与する。フッ素化乳化剤が存在しない場合、又はその量が少ない場合、他の界面活性剤を添加して、フッ素化乳化剤の欠如又は減量分を補わなければならない。
【0095】
従来、芳香族非イオン性界面活性剤、典型的にアルキルフェノールエトキシレートは、フルオロポリマー分散液を安定化させるために用いられてきた。また、例えば、WO 2006/086796、WO03/059992、EP 0 818 506 A1、及びEP 1 452 571 A1に記載されているように、非芳香族エトキシレートが代替物として提案されており、特に、分岐アルキルエトキシレートは、フルオロポリマー分散液に剪断安定性を準備するのに有効であると報告されている。
【0096】
また、本明細書に記載されるポリオール界面活性剤を用いて、フルオロポリマー分散液、特にフッ素化乳化剤を含有しないか少量しか含有しない分散液の剪断安定性を高めることができることが今では判明している。
【0097】
例えば、EP 0 030 663 A2(Kuhlsら)、WO 03/059992(Cavanaughら)又はEP 1 533 325 A1(Zippliesら)に記載されているように、ポリオールを任意のフルオロポリマー分散液に添加してもよく、例えば、本明細書に記載されるものだけでなく、当該技術分野における分散液ポリオールを用いて調製されるもの、又はフッ素化乳化剤を用いて従来の方法で調製されるものである。
【0098】
本明細書に記載されるポリオールを原分散液又は高濃縮された分散液に添加してもよい。重合から得られるフルオロポリマー分散液(いわゆる原分散液)は、典型的に、(分散液の総重量に基づいて)10〜45%の「固体含量」(ポリマー含量)を有する。分散液中のフルオロポリマー含量は、例えば、米国特許第4,369,266号に記載されているように、例えば限外濾過を用いて高濃縮することによって、又は(例えば、米国特許第3,037,953号及びEP 818 506 A1に記載されているように)熱デカンテーションによって、又は電気デカンテーションによって高めることができる。高濃縮された分散液の固体含量は、典型的に、約50〜約70重量%である。
【0099】
特に、アニオン交換によって処理されてもよいか又は処理されている分散液にポリオールを添加して、フッ素化乳化剤を除去してもよい。アニオン交換及び非イオン性乳化剤の添加によって分散液から乳化剤を除去する方法は、例えば、EP 1 155 055 B1、EP 1 193 242 B1又はWO 2006/086793に開示されており、高分子電解質の添加による方法は、WO 2007/142888に開示されており、又はポリビニルアルコール、ポリビニルエステル等の非イオン性安定剤の添加による方法もある。
【0100】
好適なフルオロポリマー分散液は、好ましくは、水中における上述のフルオロポリマーの分散液である、すなわち、分散液は、水性分散液である。したがって、以下に詳細に記載する通り、水を含有するフルオロポリマー分散液、1つ以上のフルオロポリマー、及び少なくとも1つのポリオール化合物が準備される。
【0101】
任意のフルオロポリマーを用いてもよいが、好ましいポリマーとしては、少なくとも約15モル%又は少なくとも約30モル%、又は少なくとも約51モル%のTFEを含有するものが挙げられる。溶融加工不可能なフルオロポリマーが特に有用である。
【0102】
フルオロポリマーは、コア−シェル構造であってもコア−シェル−シェル構造であってもよい。1つの実施形態では、フルオロポリマーは、コア及び少なくとも1つのシェルを含み、該シェルは、コアよりも分子量が低い。特に、熱可塑性フルオロポリマー、及び特に、0.1g/10分以下のMFI(372/10)を有するフルオロポリマーは、このような構造を含んでもよい。
【0103】
フルオロポリマーは、典型的に、粒子の形態で存在する。粒子は、棒状又は球形状であってもよい。フルオロポリマーは、小さな粒径を有しても大きな粒径を有してもよい。「小さな粒径」(又は「小さな粒子」)とは、本明細書で言及されるとき、400nm以下又は350nm未満、又は更には250nm未満又は約199nm以下の平均粒径(Z−平均)を有する粒子である。例えば、フルオロポリマーは、約20nm〜約198nm、又は約51nm〜約182nmの平均粒径(Z−平均)を有してもよく、約55nm〜約300nm、又は更には約250nm以下、又は更には約200nm以下の平均粒径(Z−平均)を有してもよい。典型的なフルオロポリマーとしては、500nm以下又は400nm以下、又は約55nm〜約300nm、又は250nm未満又は200nm未満の平均粒径(Z−平均)を有し、かつ約0.01〜約100g/10分のMFI(265/5)又は約0.01〜約100g/10分のMFI(372/5)を有するポリマーが挙げられる。典型的なフルオロポリマーとしては、400nm以下、又は約55nm〜約300nm未満、又は250nm未満、又は約200nm未満の平均粒径(Z−平均)を有し、かつ約0.01〜約100g/10分のMFI(265/5)又は約0.01〜約100g/10分のMFI(372/5)を有し、かつ約90℃〜約327℃、好ましくは100℃〜310℃の融点を有するポリマー、又は非晶質であるフルオロポリマーが挙げられる。典型的に、フルオロポリマーは、約20〜約500nmの平均粒径(Z−平均)を有する。本明細書で言及される粒径は、粒子の最長寸法、すなわち、球形又は楕円体形粒子の場合は直径であり、棒状形又は細長い粒子状形の場合は長さである。
【0104】
また、フルオロポリマーは、「大きな粒径」を有してもよい。「大きな粒子」又は「大きな粒径」とは、本明細書で使用されるとき、500nm超である粒径である。大きな粒子は、例えば、凝固中に小さな粒子が凝集することによって、又は粒子が溶融ペレット化することによって生成され得る。典型的に、大きな粒子は、固体形態で存在してもよい、すなわち、凝固及び乾燥したポリマーである。
【0105】
平均粒径は、当該技術分野において既知の方法、例えば、非弾性光散乱(ISO 13321)によって測定することができる。この方法は、好ましくは、分散液中のポリマーの粒径を測定するために用いられる。乾燥した(凝固した)ポリマーの粒径は、電子顕微鏡によって求めることができる。
【0106】
特定の実施形態では、フルオロポリマーは、上述の通り(a)〜(m)に係り、かつ約20〜500nmの粒径(Z−平均)を有するフルオロポリマーである。
【0107】
分散液は、異なる粒径のフルオロポリマーを含有してもよい、すなわち、フルオロポリマー粒子の粒径分布は、例えば、米国特許第5,576,381号、EP 0 990 009 B1、及びEP 969 055 A1に開示されているように二峰性又は多峰性であってもよい。多峰性フルオロポリマー粒径分布は、基材に良好に接着する、及び密度の高いフィルムを形成する等、コーティングにおいて有利な特性を提示することができる。例えば、フルオロポリマー分散液は、少なくとも180nmの平均粒径(Z−平均)を有する第1のフルオロポリマー粒子と180nm未満、好ましくは、(例えば、米国特許第5,576,381号に開示されているように)第1のフルオロポリマー粒子の平均粒径(Z−平均)の0.9倍以下又は0.7倍以下の平均粒径(Z−平均粒径)を有する第2のフルオロポリマー粒子との混合物を含んでもよい。二峰性又は多峰性フルオロポリマー分散液は、従来、異なるフルオロポリマー粒径の水性フルオロポリマー分散液を所望の量でブレンドすることによって得ることができる。フルオロポリマー集団は、粒径に関して二峰性又は多峰であってよいだけではなく、用いられるフルオロポリマー又はフルオロポリマーの分子量に関しても二峰性又は多峰性であってよい。例えば、少なくとも180nmの平均粒径を有する第1のポリマーは、溶融加工不可能なフルオロポリマーであってもよく、第1のポリマーの平均粒径の0.9倍以下又は0.7倍以下である平均粒径を有する第2のフルオロポリマーは、溶融加工不可能なフルオロポリマーであっても溶融加工可能なフルオロポリマーであってもよい。同様に、第1及び/又は第2のフルオロポリマーは、フルオロエラストマーであってもよい。特に、溶融加工不可能なフルオロポリマーの分散液は、他のフルオロポリマー、特に溶融加工可能なフルオロポリマーの水性分散液と混合することができる。溶融加工不可能なフルオロポリマー分散液と混合することができる溶融加工可能なフルオロポリマーの好適な分散液としては、以下のフルオロポリマーの分散液が挙げられる:TFEと全フッ素化ビニルエーテル(PFA)とのコポリマー及びTFEとHFP(FEP)とのコポリマー。このような分散液は、例えば、EP 990 009 A1に開示されているように、単峰性、二峰性又は多峰性であってもよい。
【0108】
好ましくは、個々の分散液は、既にフッ素化界面活性剤を含まないか、又は少量、例えば、分散液の総重量に基づいて約1〜約500ppm(又は2〜200ppm)の量を含有する。しかし、フッ素化界面活性剤の量を減らした後、分散液を混合することも可能である。典型的に、分散液は、イオン交換された分散液であり、これは、アニオン交換処理に供されて、分散液からフッ素化乳化剤又は他の化合物が除去されていることを意味する。このような分散液は、典型的に、アニオン交換処理の副産物として微量の三級アミンを含有する。典型的に、このような分散液は、(分散液の総重量に基づいて)約0.5〜50ppm、又は5〜50ppmのトリメチルアミンを含有する。
【0109】
分散液は、好ましくは、少なくとも50μS、典型的には100μS〜1500μSの伝導度を有する。分散液の伝導度の所望のレベルは、例えば、塩化ナトリウム又は塩化アンモニウム、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩等の単純な無機塩のような塩を分散液に添加することによって調整することができる。また、伝導度のレベルは、WO 03/020836に開示されているように、分散液にアニオン性非フッ素化界面活性剤を添加することによって調整することができる。例えば、WO 2006/069101に記載されているように、カチオン性乳化剤を分散液に添加することも可能である。
【0110】
分散液は、上述のものを含む他の非フッ素化アニオン性及び/又は非イオン性乳化剤を含有してもよい。典型的な量は、分散液の重量に基づいて1〜12重量%である。
【0111】
非イオン性界面活性剤の他の例としては、ポリソルベートが挙げられる。ポリソルベートとしては、エトキシル化、プロポキシル化、又はアルコキシル化ソルビタンが挙げられ、例えば、脂肪族アルコール又は脂肪酸残基等の直鎖、環状、又は分岐アルキル残基を更に含有してもよい。ポリソルベートの例としては、以下の一般構造:
【0112】
【化1】

【0113】
(式中、Rは残基OC−R1を表し、R1は、6〜26個、又は8〜16個の炭素原子を含む直鎖、分岐鎖、環状、飽和、不飽和、好ましくは飽和のアルキル、アルコキシ、又はプロポキシアルキル残基である)に係るものが挙げられる。上記式中、n、x、y、及びzは、0を含む整数であり、n+x+y+zは3〜12である。式(IX)は、モノエステルを表すが、ジ−、トリ−、又はテトラエステルも包含される。このような場合、1つ以上のヒドロキシル水素が、残基Rによって置換され、残基Rは、モノエステルについて上に記載されたのと同じ意味を有する。
【0114】
有用なポリソルベートとしては、商品名ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、及びポリソルベート80として入手可能なものが挙げられる。ポリソルベート20は、ソルビトール及びソルビトール無水物1モル当たり約20モルのエチレンオキシドを有する、ソルビトール及びその無水物のラウリン酸エステルである。ポリソルベート40は、ソルビトール及びソルビトール無水物1モル当たり約20モルのエチレンオキシドを有する、ソルビトール及びその無水物のパルミチン酸エステルである。ポリソルベート60は、ソルビトール及びソルビトール無水物1モル当たり約20モルのエチレンオキシドを有する、ソルビトール及びその無水物の、ステアリン酸エステルとパルミチン酸エステルとの混合物である。
【0115】
上述の界面活性剤に加えて又は上述の界面活性剤の代わりに、ポリアニオン性化合物(例えば、ポリアニオン性ポリアクリレート)等の高分子電解質を分散液に添加してもよい。
【0116】
分散液は、接着促進剤、減摩剤、色素等の、基材に分散液をコーティングするか又は含浸させるときに有益であり得る成分を更に含有してもよい。任意成分としては、例えば、様々な用途に必要であるか又は望ましい場合があるとき、緩衝剤及び酸化剤が挙げられる。本発明の分散液を用いて、例えば、金属、フルオロポリマー層、及び布地、例えば、ガラス繊維系布地等の様々な基材をコーティングするための最終コーティング組成物を生成することができる。このような布地を建築用布地として用いてもよい。一般的に、フルオロポリマー分散液は、最終コーティング組成物を生成するために典型的に用いられる更なる成分とブレンドされる。このような更なる成分は、トルエン、キシレン等の有機溶媒に溶解又は分散することができる。最終コーティング組成物において用いられる典型的な成分としては、ポリアミドイミド、ポリイミド、若しくはポリアリーレンスルフィド等のポリマー、又はシリコンカーバイド及び金属酸化物等の無機カーバイドが挙げられる。これらは、典型的に、耐熱性接着促進剤又はプライマーとして使用される。色素及び雲母粒子等の更なる成分を同様に添加して、最終コーティング組成物を得ることができる。フルオロポリマー分散液は、典型的に、最終組成物の約10〜80重量%を表す。金属コーティング用コーティング組成物及びそれに使用される成分についての詳細は、例えば、WO 02/78862、WO 94/14904、EP 1 016 466 A1、DE 2 714 593 A1、EP 0 329 154 A1、WO 00/44576、及び米国特許第3,489,595号に記載されている。
【0117】
本明細書に記載されるフルオロポリマー分散液は、例えば、基材を積層、コーティング、及び/又は含浸するために用いることができる。基材又はその処理された表面は、無機物質であっても有機物質であってもよい。基材は、例えば、繊維、布地、顆粒、又は層であってもよい。典型的な基材としては、例えば、フルオロポリマーを含む1つ以上の有機ポリマーを含有する有機又は無機繊維、好ましくは、ガラス繊維、有機又は無機布地、顆粒(ポリマービーズ等)、及び層が挙げられる。
【0118】
布地は、織布でも不織布でもよい。また、基材は、金属又は金属表面を含有する物品であってもよい。
【0119】
本明細書に準備されるフルオロポリマー組成物を用いて、フルオロポリマーフィルム又はシート、フルオロポリマーでコーティングされた調理器具又はフルオロポリマーでコーティングされたビーズ、例えば、クロマトグラフィー樹脂、成形又は押出成形物品、フルオロポリマー含有織物、衣服、屋外用衣類、建築物やテント等で用いるためのフルオロポリマー層含有織物を調製することができる。このような物品及びそれを調製する方法の例は、DE 20 2004 020 048 U1、WO 03/037623、及び米国特許出願公開第2008/0178993号に記載されている。
【0120】
ポリオール化合物:
本明細書で使用されるとき、上記及び下記ポリオール化合物は、非芳香族化合物である。ポリオール化合物は、少なくとも1個のポリオール単位及び少なくとも1個の長鎖単位を含有する。
【0121】
ポリオール単位は、少なくとも2又は少なくとも3個のヒドロキシル基を含む。好ましくは2、より好ましくは少なくとも2個のヒドロキシル基が互いに隣接する。ポリオール単位は、非環状であってもよいが、好ましくは、ポリオール単位は環状である。ポリオール化合物は、1個超であるポリオール単位を含んでもよく、これは同一であっても異なっていてもよい。
【0122】
長鎖単位は、少なくとも6個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐残基であってもよい。長鎖残基は、典型的に、炭化水素残基である。好ましくは、長鎖単位は、鎖中に酸素原子(カテナリー酸素原子)を含有しないか、又は1個含有するか、又は1個超含有し、かつ置換されていても置換されていなくてもよいアルキル鎖である。典型的な置換基としては、ハロゲン、アルコキシ基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。長鎖単位は、典型的に、少なくとも6個の炭素原子、又は少なくとも8個の炭素原子、典型的には6〜26個又は8〜16個の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ、又はポリオキシアルキル残基を含む。長鎖単位は、典型的に飽和している。実際、ポリオール化合物は、典型的に飽和している。ポリオール化合物は、複数の長鎖単位を含有してもよく、これらは同一であっても異なっていてもよい。
【0123】
ヒドロキシル基の数、ポリオール単位の数、並びに長鎖単位の長さ及び/又は数は、好ましくは、ポリオール化合物が室温でも尚水溶性であるように選択される。水溶性とは、少なくとも1gの化合物が周囲条件(25℃、1bar(100kPa))で100mLの蒸留水に溶解することを意味する。好ましくは、ポリオール化合物は界面活性剤である、すなわち、表面活性であり、かつ水の表面張力を低下させることができる。好ましいポリオール化合物は、周囲条件において1.0重量%の量で蒸留水中に存在するとき、35dyn/cm未満に水の表面張力を低下させるものである。これは、表面張力計を用いて測定することができる。
【0124】
ポリオール化合物は、好ましくは非イオン性である。
【0125】
ポリオール化合物の典型例としては、ポリオール単位として1個以上の糖単位を有する化合物が挙げられる。糖単位は、上述のように少なくとも1個の長鎖を含有するように変性されてもよい。少なくとも1つの長鎖部分を含有する好適なポリオール化合物としては、例えば、アルキルグリコシド、変性アルキルグリコシド、糖エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。糖としては、単糖、オリゴ糖、及びソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。単糖としては、五炭糖及び六炭糖が挙げられる。単糖の典型例としては、リボース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アラビノース、キシロースが挙げられる。オリゴ糖としては、2〜10個の同一又は異なる単糖のオリゴマーが挙げられる。オリゴ糖の例としては、サッカロース、マルトース、ラクトース、ラフィノース、及びイソマルトースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
典型的に、ポリオール化合物として使用するのに好適な糖としては、4個の炭素原子と1個のヘテロ原子(典型的に、酸素又は硫黄であるが、好ましくは酸素原子)との五員環を含有する環状化合物、又は5個の炭素原子と上述のような1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子との六員環を含有する環状化合物が挙げられる。これらは、炭素環原子に結合している少なくとも2個の又は少なくとも3個のヒドロキシ基(−OH基)を更に含有する。典型的に、糖は、エーテル又はエステル結合が長鎖残基と糖部分との間に作製されるように、炭素環原子に結合しているヒドロキシ基(及び/又はヒドロキシアルキル基)の水素原子のうちの1個以上が、長鎖残基によって置換されているという点で変性された。
【0127】
糖系ポリオールは、1個の糖単位又は複数の糖単位を含有してもよい。1個の糖単位又は複数の糖単位は、上述のような長鎖部分で変性されてもよい。
【0128】
糖系ポリオール化合物の特定の例としては、グリコシド、糖エステル、ソルビタンエステル、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。
【0129】
グリコシドは、非糖部分、ここでは上述のような少なくとも1つの長鎖部分を含有する糖を表す。グリコシドの特定の例としては、アルキルグリコシド(長鎖部分はアルキルである)及び変性アルキルグリコシド(長鎖残基は変性アルキルである)が挙げられる。
【0130】
グリコシドとしては、モノグリコシド(すなわち、1個のグルコース部分を有する分子)、ジグリコシド(すなわち、2個のグルコース部分を有する分子)、及びポリグリコシド(すなわち、2個以上のグルコース部分を有する分子)が挙げられる。グリコシドは、グルコース単位のみを含有してもよいが、他の糖の単位を含有してもよい。糖部分は、ピラノース(六員環)として、又はフラノース(五員環)として、又はこれらの組み合わせ及び混合物(例えば、グルコピラノシド、グルコフラノシド、ジグルコピラノシド、ジフラノシド、グルコピラノシド−グリコフラノシド等)として存在することができる。
【0131】
好ましくは、グリコシドはアルキルグリコシドである。アルキルグリコシドは、上述のような長鎖部分として、1個の、複数の、同一及び異なるアルキル残基を含有してもよい。アルキル残基としては、直鎖、環状、又は分岐、好ましくは少なくとも6個の炭素原子を含有する飽和アルキル残基が挙げられる。典型的に、アルキル残基は、6〜26個、又は8〜16個の炭素原子を含有する。
【0132】
変性アルキルグリコシドとしては、長鎖部分として置換アルキル残基が挙げられ、ここで置換基は、アルコキシ基、ハロゲン、又はカテナリー酸素原子であってもよく、例えば、長鎖部分は、(ポリ)オキシアルキル残基である。
【0133】
好適なアルキル及び変性アルキルグリコシドは、以下の一般式
【0134】
【化2】

【0135】
(鏡像異性体、立体異性体、及びこれらの組み合わせを含む)(式中、Rは、H、6個未満の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ、又はポリオキシアルキル残基、あるいは上述のような長鎖部分を表す)によって表すことができる。R、R、R、R、R、及びRは、独立して、H、OH、OR’又はCHR”のいずれかであるが、但し、R、R、R、R、R及びRのうちの少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個がOHであるか、又はOH基を含有する。R’は、上述のような長鎖単位である。R”は、OH、6個未満の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ、又はポリオキシアルキル残基、あるいは上述のような長鎖単位であり;Aは、1個以上の、同一又は異なる環状、直鎖又は分岐鎖ポリヒドロキシ残基を表す。上記式中、R1、R’、又はR”のうちの少なくとも1個は、上述のような長鎖単位である。
【0136】
ポリオール化合物の好ましい種類は、アルキル又は変性アルキルグルコシドである。これらの種類の界面活性剤は、少なくとも1個のグルコース部分を含有する。アルキル又は変性アルキルグルコシドの例としては、以下の式(鏡像異性体及びジアステレオマー及びこれらの組み合わせを含む):
【0137】
【化3】

【0138】
(式中、xは、0、1、2、3、4、又は5を表し、nは、8〜22の整数を表す)によって表される化合物が挙げられる。R及びR’は、同一であっても異なっていてもよく、H又は上述のような長鎖単位を表すが、但し、R及びR’のうちの少なくとも1個はHではない。R及びR’の典型例としては、脂肪族アルコール残基が挙げられる。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。
【0139】
上記の式は、ピラノース形態のグルコースを示すアルキルポリグルコシドの特定の例を表すが、他の糖又は同じ糖であるが異なる鏡像異性体又はジアステレオマー形態である糖を用いてもよいことが理解される。
【0140】
アルキルグルコシドは、例えば、グルコース、デンプン、又はn−ブチルグルコシドと脂肪族アルコールとの酸触媒反応によって入手可能であり、これからは、典型例に、様々なアルキルグルコシドの混合物が得られる(Alkylpolygylcoside,Rompp,Lexikon Chemie,Version 2.0,Stuttgart/New York,Georg Thieme Verlag,1999)。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。
【0141】
また、アルキルグルコシドは、Cognis GmbH,Dusseldorf,Germanyから商品名GLUCOPON又はDISPONILとして市販されている。
【0142】
別の種類の好適なポリオール化合物としては、以下の式に係る化合物が挙げられ、
【0143】
【化4】

【0144】
鏡像異性体及びジアステレオマー及びこれらの組み合わせを含む。上記式中、R’は、S又はO等のヘテロ原子、好ましくはOを表し、Rは、上述のような長鎖残基を表す。
【0145】
糖エステル:
糖エステルとしては、糖と6〜26個又は8〜16個の炭素原子を含有するカルボン酸(例えば、脂肪酸等)とのモノ−、ジ−、トリ−、又はテトラエステルが挙げられ、このようなカルボン酸と二糖類、三糖類、又は四糖類、又は多糖類のエステルを含む。二糖類の例としては、スクロース(グルコースとフルクトースとの二糖類)、ラクトース、トレハロース、マルトース、セルビオース、ツラロース(turalose)が挙げられる。三糖類の例としては、マルトトリオース、ラフィノース、メレジトースが挙げられる。脂肪酸の例としては、例えば、ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0146】
糖エステルの特定の例は、ソルビタンエステルである。ソルビタンエステルとしては、エステル、ソルビタンと長鎖(C6〜C26又はC8〜C16)カルボン酸、例えば、上述の脂肪酸とのモノ−、ジ−、又はトリエステルが挙げられる。
【0147】
特定の例としては、以下の構造に係る化合物が挙げられる(鏡像異性体及びジアステレオマー及びこれら混合物を含む):
【0148】
【化5】

【0149】
(式中、Rは6〜26個、又は8〜16個の炭素原子を含む直鎖、分岐鎖、環状、飽和、不飽和、好ましくは飽和のアルキル、アルコキシ、又はプロポキシアルキル残基である)。上記式中に示されるソルビタンエステルは、モノエステルである。ジ−、トリ−、又はテトラエステルも包含される。このような実施形態では、1個以上の環状及び/又は側鎖ヒドロキシ基の水素原子は、同一又は異なる残基Rによって置換され、ここでRは、上述のような長鎖残基であり、好ましくは6〜26個又は8〜18個の炭素原子の直鎖、環状、又は分岐鎖アルキル残基である。
【0150】
糖エステルは、Sisterna BV.Netherlandsから商品名SISTERNA、例えば、SISTERNA PS750として市販されている。
【0151】
ポリオール化合物の混合物を用いてもよいことが理解される。
【0152】
好適なポリオール化合物は、対応する分散液を下記の剪断試験に供することによって測定できるように、有効な量で用いるときフルオロポリマー分散液の剪断安定性を高めることができる。剪断安定性を高めるために、ポリオール化合物は、典型的に、分散液中のポリマーの量に基づいて約1〜約12%の量で用いられて、剪断安定性を高める。重合において乳化剤として用いられる場合、その目的を達成するために必要なポリオールの量は、上述の通り低くてもよい。
【0153】
ポリオール化合物は、好ましくは、フッ素化乳化剤を除去するためのイオン交換プロセスにおいて干渉しない。また、ポリオール化合物は、例えば、デカンテーション又は限外濾過等の高濃縮プロセスにおいて用いることもできる。
【0154】
本発明の利点及び実施形態は、以下に例示される実施形態及び実施例によって更に説明されるが、これは本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0155】
1.
i)少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1個のポリオール単位と、少なくとも6個の炭素原子を含有する少なくとも1個の長鎖単位とを含有する、少なくとも1種の非芳香族ポリオール化合物と、
ii)フッ素化オレフィンから誘導される繰り返し単位を含む少なくとも1種のフルオロポリマーと、を含む組成物。
【0156】
2.前記ポリオール単位が環状である、上記実施形態1に記載の組成物。
【0157】
3.前記ポリオール単位が少なくとも3個のヒドロキシル基を含有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0158】
4.前記ポリオール単位が、互いに隣接する位置にある少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0159】
5.前記長鎖単位が直鎖又は分岐鎖である、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0160】
6.前記ポリオール単位が少なくとも1個の糖を含有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0161】
7.ポリオール化合物が、少なくとも6個の炭素原子を含有する長鎖単位を少なくとも1個含有するように変性された糖単位を少なくとも1個含む、上述の実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0162】
8.前記ポリオール化合物が、アルキルグリコシド、変性アルキルグリコシド、ソルビタンエステル、及びこれらの組み合わせから選択される、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0163】
9.前記ポリオール化合物が、以下の一般式
【0164】
【化6】

【0165】
(式中、Rは、少なくとも6個の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ、又はポリオキシアルキル残基を表し、R、R、R、R、R及びRは、独立して、H、OH、OR’又はCHR”のいずれかであるが、但し、R、R、R、R、R及びRのうちの少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個がOHであり、R’は、少なくとも6個の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ、又はポリオキシアルキル残基であり、R”は、少なくとも6個の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ、若しくはポリオキシアルキル残基、又はヒドロキシルアルキル若しくはアルコキシ若しくはポリオキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル若しくはアルコキシ若しくはポリオキシアルキル残基であり;Aは、1個以上の、同一又は異なる、環状、直鎖又は分岐鎖ポリヒドロキシ残基を表す)によって表されるアルキルグリコシドを含む、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0166】
10.前記ポリオール化合物が、以下の一般式
【0167】
【化7】

【0168】
(式中、xは、0、1、2、3、4、又は5を表し、R及びR’は、独立して、H又は少なくとも6個の炭素原子を含有する長鎖単位を表すが、但しR及びR’のうちの少なくとも1個はHではない)によって表されるアルキルグリコシドである、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0169】
11.前記ポリオール化合物が、以下の式に係るソルビタンエステルである、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の組成物:
【0170】
【化8】

【0171】
(式中、R’は、O及びSから選択されるヘテロ原子を表し、Rは、少なくとも6個の炭素原子を含有する長鎖単位を表す。)
12.前記ポリオール化合物が、以下の式
【0172】
【化9】

【0173】
(式中、Rは、少なくとも6個の炭素原子を有する長鎖単位、好ましくは、6〜26個、又は8〜16個の炭素原子を含む直鎖、分岐鎖、環状、飽和又は不飽和、好ましくは飽和のアルキル、アルコキシ、又はプロポキシアルキル残基を表す)に係るソルビタンエステルである、実施形態11に記載の組成物。
【0174】
13.前記組成物が、0ppm又は0超かつ150ppm未満の、FC−[(CF)−Z(式中、nは5〜8の整数であり、Zはカルボン酸基である)の種類の全フッ素化アルカン酸を含有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0175】
14.1つ以上のフッ素化アルコキシ又はフッ素化ポリオキシアルキル酸を含有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0176】
15.前記フルオロポリマーが、約20〜約500nmの平均粒径(Z−平均)を有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0177】
16.前記組成物が水性分散液である、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0178】
17.前記組成物が、約10〜約70%(又は約30〜約65%)のフルオロポリマー含量(固体含量)を有する水性組成物である、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0179】
18.1つ以上のアニオン性界面活性剤及び/又は1つ以上の非イオン性界面活性剤を更に含有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0180】
19.1〜100ppmのトリメチルアミンを更に含有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0181】
20.前記組成物の重量に基づいて、約1〜20重量%のポリオール化合物を含有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0182】
21.芳香族界面活性剤を含有しないか、又は100ppm未満の芳香族界面活性剤を含有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0183】
22.少なくとも1つのアニオン性界面活性剤、好ましくは硫酸アルキルを更に含有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0184】
23.前記フルオロポリマーが、コア及び少なくとも1つのシェルを含有し、前記シェルが前記コアよりも低い分子量を有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0185】
24.
前記フルオロポリマーが
(a)フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(b)フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(c)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(d)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(e)テトラフルオロエチレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(f)ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンのコポリマー;
(g)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(h)荷重10kgで0.1g/10分である372℃におけるメルトフローインデックスを有するテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(i)0.1g/10分以下の、372℃におけるメルトフローインデックスを有するテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(j)PVDF;
(k)TFE並びに1つ以上のペルフルオロアルキルビニルエーテル及び/又はペルフルオロアルキルアリルエーテル並びに任意でヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(l)TFE、ヘキサフルオロプロピレン、並びに任意で1つ以上のペルフルオロアルキルビニルエーテル及び/又はペルフルオロアルキルアリルエーテルに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(m)TFE、ヘキサフルオロプロピレン、エチレン及び/又はプロピレン、並びに任意で1つ以上のペルフルオロアルキルビニルエーテル及び/又はペルフルオロアルキルアリルエーテルに由来する繰り返し単位を含むポリマー。
【0186】
25.前記フルオロポリマーが、372℃における荷重10kgのメルトフローインデックス(MFI 372/10)が0g/10分〜0.1g/10分であるか、又は前記フルオロポリマーが、MFI(372/10)における0.1g/10分超である、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0187】
26.前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンホモポリマー又は1重量%以下のコモノマーを含有するテトラフルオロエチレンコポリマーから選択される、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0188】
27.前記フルオロポリマーが、約312℃〜約350℃の融点を有する、上記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【0189】
28.実施形態1〜27のいずれか1つに記載の組成物から調製されるコーティングを含有する基材。
【0190】
29.調理器具、軸受け、繊維、及び布地から選択される、実施形態28に記載の基材。
【0191】
30.実施形態1〜12に記載の少なくとも1つのポリオール化合物の有効量を分散液に添加することを含む、フルオロポリマー分散液の剪断安定性を高める方法。
【0192】
31.前記分散液が、実施形態23〜27に画定されるフルオロポリマーを含有する、実施形態30に記載の方法。
【0193】
32.基材をコーティング又は含浸する方法であって、実施形態1〜27のいずれか1つに記載のフルオロポリマー組成物を準備する工程と、任意で、更なる成分を添加する工程と、前記組成物を基材に塗布する工程とを含む方法。
【0194】
33.金属酸化物、金属カーバイド、少なくとも1つの非フッ素化ポリマー、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を更に含有するコーティング組成物である、実施形態1〜27に記載の組成物。
【0195】
34.1つ以上のフッ素化オレフィンに由来する繰り返し単位を含むフルオロポリマーを含有する水性分散液を調製する方法であって、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1個のポリオール単位と、少なくとも6個の炭素原子を含有する少なくとも1個の長鎖単位と、を含有する非芳香族ポリオールの存在下で、前記フッ素化オレフィンを水相中で重合させる工程を含む方法。
【0196】
35.前記フッ素化オレフィンが、以下のフッ素化オレフィンのうちの1つ以上を含む、実施形態34に記載の方法:テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、又はこれらの組み合わせ、特に、TFEとVDFとを含む組み合わせ、TFEとHFPとを含む組み合わせ、又はTFEとVDFとHFPとを含む組み合わせ。
【0197】
36.前記ポリオールが実施形態1〜12に記載のポリオールである、実施形態34又は35に記載の方法。
【0198】
37.前記ポリオールが、以下の一般式
【0199】
【化10】

【0200】
(式中、Rは、少なくとも6個の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ、又はポリオキシアルキル残基を表し、
、R、R、R、R、及びRは、独立して、H、OH、OR’又はCHR”のいずれかであるが、但し、R、R、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個がOHであり、R’は、アルキル、アルコキシ、又はポリオキシアルキル残基であり、R”は、OH、アルキル、アルコキシ、若しくはポリオキシアルキル、又はヒドロキシルアルキル若しくはアルコキシ若しくはポリオキシアルキル、ポリヒドロキシアルキル若しくはアルコキシ若しくはポリオキシアルキル残基であり;Aは、1個以上の、同一又は異なる、環状、直鎖又は分岐鎖ポリヒドロキシ残基を表す)によって表されるアルキルポリグリコシドを含む、実施形態34〜36のいずれか1つに記載の方法。
【0201】
38.前記ポリオールが、以下の一般式
【0202】
【化11】

【0203】
(式中、xは、0、1、2、3、4、又は5を表し、nは、8〜22の整数を表し、xが0である場合、エーテル酸素は水素を含有し、ヒドロキシル基を形成する)によって表されるアルキル(ポリ)グルコシドである、実施形態34〜37に記載の方法。
【0204】
39.前記ポリオールが、ソルビタンエステルを含む、実施形態34〜37に記載の方法。
【0205】
40.前記重合が、FC−[(CF)−Z(式中、nは4〜16の整数であり、Zはカルボン酸である)の種類の全フッ素化アルカン酸を含まないか、又は0超かつ100ppm未満の量の全フッ素化アルカン酸を含有する水性媒質中で行われる、実施形態34〜39に記載の方法。
【0206】
41.前記ポリオールが、水相の重量に対して、0.0001重量%〜10重量%の量で存在する、実施形態34〜40に記載の方法。
【0207】
42.前記フッ素化オレフィンが、
(i)フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(ii)フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(iii)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(iv)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(v)テトラフルオロエチレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(vi)ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンのコポリマー;
(vii)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;及び
(viii)荷重10kgで372℃におけるメルトフローインデックス(ISO−12086−2)が0.1g/10分超であるテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;から選択されるポリマーを生成するように選択される、実施形態34〜41に記載の方法。
【0208】
43.前記フルオロポリマーが、約20〜約350nm又は約50〜約200nmの(数平均)平均粒径を有する、実施形態34〜42に記載の方法。
【0209】
44.前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンに由来する1つ以上の繰り返し単位を含む、実施形態34〜43に記載の方法。
【0210】
45.前記フルオロポリマーが硬化性である、実施形態34〜44に記載の方法。
【0211】
46.前記フルオロポリマーが、約20〜約350nm、好ましくは約30〜約250nm、より好ましくは約50〜約210nmの平均粒径(Z−平均)を有する、実施形態34〜45のいずれか1つに記載の方法。
【0212】
47.前記フルオロポリマーが、約0.01〜約100g/分のMFI(265/5)、又は約0.01〜約100g/10分のMFI(372/5)を有する、実施形態34〜36のいずれか1つに記載の方法。
【0213】
48.前記フルオロポリマーが、100℃〜310℃で融解する、実施形態34〜47のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
49.
i)実施形態1〜12に画定される1つ以上のポリオールと、
ii)TFE、VDF、HFP、又はこれらの組み合わせから選択されるモノマーに由来する繰り返し単位を含有する1つ以上のフルオロポリマーと、を含む組成物。
【0215】
50.前記組成物が、FC−[(CF)−Z(式中、nは4〜16の整数であり、Zはカルボン酸基であるか、0超かつ100ppm未満の量の全フッ素化アルカン酸を含有する)の種類の全フッ素化アルカン酸を含まない、実施形態49に記載の組成物。
【0216】
51.前記モノマーが、
(i)フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(ii)フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(iii)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(iv)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(v)テトラフルオロエチレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(vi)ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンのコポリマー;
(vii)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;及び
(viii)372℃におけるメルトフローインデックス(ISO−12086−2)が荷重10kgで0.1g/10分超であるテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;から選択されるフルオロポリマーを生成するように選択される、実施形態49又は50に記載の組成物:
52.前記組成物が水性分散液である、実施形態49〜51のいずれか1つに記載の組成物。
【0217】
53.前記組成物が、約20〜約60重量%のフルオロポリマー含量(固体含量)を有し、かつ1つ以上のアニオン性界面活性剤及び/又は1つ以上の非イオン性界面活性剤を更に含有する水性組成物である、実施形態49〜52のいずれか1つに記載の組成物。
【0218】
54.前記フルオロポリマーが硬化性である、実施形態49〜53のいずれか1つに記載の組成物。
【0219】
55.実施形態49〜54に記載の組成物から調製される物品。
【0220】
56.実施形態34〜48に記載の方法により得られるフルオロポリマーを含有する物品。
【0221】
57.前記物品が、有機又は無機繊維、有機又は無機の不織布又は織布から選択される、実施形態55又は56に記載の物品。
【0222】
58.前記物品が、ホース、シール、O−リング、ガスケット、又は有機ポリマーを含有する少なくとも1つの層を含有する積層品又は層状物品から選択される、実施形態55又は56に記載の物品。
【0223】
59.1つ以上の有機ポリマーを含有する布地、繊維、又は層をコーティングするか又は含浸するための実施形態49〜54に記載の組成物の使用。
【0224】
60.フルオロポリマー表面上にパターンディスプレイ情報又は装飾を作製する方法であって、
前記方法が、
(a)ポリテトラフルオロエチレン又はTFEと別のオレフィンとのコポリマーを含有するフルオロポリマー表面を有する物品を準備する工程であって、前記他のオレフィンが前記ポリマーの重量に基づいて1重量%以下の量で存在し、THVポリマーでコーティングされて、フルオロポリマー表面及びその反対側の表面に隣接する表面を有するTHV表面を準備し、少なくとも前記THVポリマーコーティングがコロナ処理に供されている工程、
(b)硬化性インクをTHVコーティングに添加して、パターンディスプレイ情報又は装飾を作製する工程、及び
(c)前記インクを硬化させる工程、を含む方法。
【0225】
62.前記インクが紫外線硬化性インクである、実施形態61に記載の方法。
【0226】
63.前記コロナ処理が、窒素ガス雰囲気、又は希ガス雰囲気、又はこれらの組み合わせの中で実施された、実施形態61又は62に記載の方法。
【0227】
64.インク印刷可能なフルオロポリマー表面を作製する方法であって、前記方法が、
(a)ポリテトラフルオロエチレン又はTFEと別のオレフィンとのコポリマーを含有するフルオロポリマー表面を準備する工程であって、前記他のオレフィンが前記ポリマーの重量に基づいて1重量%以下の量で存在する工程、
(b)THVポリマーで前記表面をコーティングする工程、
(c)前記THVポリマーを、好ましくは窒素又は希ガス雰囲気下でコロナ処理に供する工程、
(d)硬化性インク、好ましくは紫外線硬化性インクを前記THVポリマーに塗布して、パターンディスプレイ情報又は装飾を作製する工程、及び
(e)前記硬化性インクを硬化させる工程、を含む方法。
【0228】
65.ポリテトラフルオロエチレン又はTFEと別のオレフィンとのコポリマーを含有する表面を有する物品であって、前記他のオレフィンが前記ポリマーの重量に基づいて1重量%以下の量で存在し、前記表面がTHVポリマーでコーティングされ、前記THVコーティングがコロナ処理されており、硬化されたインクによるパターンディスプレイ情報又は装飾を含有する物品。
【0229】
方法
固体含量は、ISO 120866に従って重量測定で求めることができる。
【0230】
メルトフローインデックス(MFI)は、DIN EN ISO 1133に従って、372℃(荷重10kg)(MFI 372/10)、372℃(荷重5kg)(MFI 372/5)、又は265℃(荷重5kg)(MFI 265/5)で求めることができる。
【0231】
粒径は、ISO 13321に従ってMalvern HAS Zetasizerを用いて非弾性光散乱を介して求めることができる。平均粒径は、Z−平均として表される。Z−平均は、必要に応じて数平均に変換することができる。
【0232】
融点は、ASTM D 4591に従って示差走査熱量計(DSC)によって求めることができる。
【0233】
ペルフルオロアルカン酸含量の測定:
ペルフルオロアルカン酸の含量は、例えば、ペルフルオロデカン酸のメチルエステル等の内部標準を用いてメチルエステルのガスクロマトグラフィーを介して求めることができる。量的に酸をメチルエステルに変換するために、200μLの分散液を、100℃にて1時間、0.3gのMgSO4の存在下で2mLのメタノール及び1mLの塩化アセチルで処理した。形成されるメチルエステルを、2mLのヘキサンで抽出し、ガスクロマトグラフィー分析に供してもよい。検出限界は、<5ppmである。
【0234】
伝導度:
伝導度は、Metrohm AG,Germanyによって供給されている712伝導度測定器で測定することができる。
【0235】
表面張力:
表面張力は、例えば、白金板を用いるWilhelmy法によって、Kruss GmbH,Germanyより供給されているKruss Tensiometer T9で測定することができる。
【実施例】
【0236】
EP 1 533 325 A1の実施例4[0079]に従って調製された1,000gのPTFE分散液に、表1に示す12.5gの非イオン性界面活性剤を穏やかに撹拌しながら添加した。次いで、0.25gのEDENOR C−12を分散液に添加した。50mLのAMBERLITE IRA 402−OHイオン交換樹脂(OH型)を添加し、混合物を一晩圧延した。混合物を50μmの篩に通すことによって、イオン交換樹脂を除去した。分散液を蒸発によって固体含量が58%になるまで高濃縮した(乳化剤含量は、固体含量に基づいて5.5%であった)。次いで、150gの分散液を20℃に保ち、内径65mmの250mLの標準的なガラスビーカーに入れた。Janke & Kunkelによって供給されているUltra Turrax T25の撹拌ヘッド(S 25 N−25G)を、ヘッドの端部がビーカーの底部の7mm上方にあるようにビーカーの中心に浸漬させた。Ultra Turraxを回転数8000rpmで作動させた。撹拌によって、分散液の表面が「乱流」又は「波状」になった。10〜20秒後、2.0gのキシレンを10秒未満内で撹拌分散液に滴下した。キシレンの添加時に時間測定を開始し、撹拌分散液の表面がもはや視認できる乱流を示さなくなったときに停止した。凝固によって表面は「凝結(freezes)」するか、又は平坦になる。Ultra Turraxの音の特徴的な変化と凝固が同時に起こった。発泡体の形成によって「表面の凝結」が明らかに見られなかった場合、音の変化が生じたときに時間測定を停止した。報告した剪断安定性を表1に示し、これは5回の測定値の平均である。
【0237】
【表1】

【0238】
ポリオールを用いる重合:
比較例1(カルボシラン界面活性剤を用いる重合)
2gのカルボシラン界面活性剤(ポリエチレングリコール−モノメチル−モノ−(ビストリメチルシリルメチル−メチル−プロプ−3−イル)エーテル(WO 2008/033271に従って調製)を含有する30リットルの脱イオン水を50リットルの重合ケトルに200gのNaOH及び40mgのCuSO×5 HOと共に供給した。交互の排気置換と4bar(400kPa)以下の窒素による加圧とにより、空気を除去した。次に、ケトルを6.1bar(610kPa)のHFP、5.2bar(520kPa)のVDF、2.9bar(290kPa)のTFE、及び1.3bar(130kPa)のエタンで加圧した。全圧力は、15.5bar(1550kPa)絶対圧力であった。容器内の温度は70℃に調整した。重合は、脱イオン水100mLに溶解したAPS(ペルオキソ二硫酸アンモニウム)36gを含有する水溶液と、脱イオン水50mL中に6gのNaの溶液とを容器内に汲み上げる(pumping)ことによって開始した。攪拌速度は、240rpmであった。
【0239】
重合温度及び重合圧力は、TFE、HFP、及びVDFを1:0.443:0.855の一定重量比で供給することによって、一定に保持した。5.5kgのTFEが消費された時に、モノマー供給を停止し攪拌速度を低下させることによって、重合を停止させた。容器を通気させ、得られた分散体を排出した。こうして得られた分散体は、29.4%の固形物含有率及び約246nmの平均粒径を有した。
【0240】
比較例2(界面活性剤を用いない重合):
12gのシュウ酸アンモニウム及び2gのシュウ酸を含有する28リットルの脱イオン水を、50リットルの重合容器に供給した。交互の排気置換と4bar(400kPa)以下の窒素による加圧により、空気を除去した。次に、容器を8.6bar(860kPa)のHFP、1.9bar(190kPa)のVDF、4.2bar(420kPa)のTFE、及び0.8bar(80kPa)のエタンで加圧した。容器内温度は、60℃に調整した。1000mLの脱イオン水中に溶解した5gのKMnOを含有する水溶液を、容器中に連続的にポンプ注入することによって、重合を開始させた。重合は、111mLを素早く容器中にポンプ注入することによって開始させ、次にポンプ注入速度を2.5mL/分に低下させた。撹拌速度は240rpmであった。重合温度及び圧力は、TFE、HFP、及びVDFを1:0.412:0.488の一定重量比で供給することによって、一定に保持した。2.5kgのTFEが消費された時に、モノマー供給を停止し攪拌速度を低下させることによって、重合を停止させた。容器を通気させ、得られた分散体を排出した。このようにして、得られた分散物の固形分含有率は13%であり、粒径は約387nmであった。
【0241】
(実施例2)
2gの糖系界面活性剤(GLUCOPON 600 CS UP、Cognis AG,Dusseldorf,Germany製の、天然脂肪族アルコール(C10〜C16)に基づくアルキルポリグルコシド)を含有する30リットルの脱イオン水を、50リットルの重合ケトルに200gのNaOH(10重量%水溶液)及び37mgのCuSO×5 HO及び7.5gのNHOH(25重量%水溶液)と共に供給した。交互の排気置換と3bar(300kPa)以下の窒素による加圧により、空気を除去した。次に、ケトルを8.6bar(860kPa)のHFP、1.9bar(190kPa)のVDF、4.5bar(450kPa)のTFE、及び0.5bar(50kPa)のエタンで加圧した。全圧力は、15.5bar(1550kPa)絶対圧力であった。容器内の温度は70℃に調整した。重合は、脱イオン水200mLに溶解したAPS(ペルオキソ二硫酸アンモニウム)72gを含有する水溶液と、脱イオン水100mL中に30gのNaの溶液とを容器内に汲み上げる(pumping)ことによって開始した。
【0242】
撹拌速度は240rpmであった。重合温度及び圧力は、TFE、HFP、及びVDFを1:0.412:0.488の一定重量比で供給することによって、一定に保持した。5.5kgのTFEが消費された時に、モノマー供給を停止し攪拌速度を低下させることによって、重合を停止させた。容器を通気させ、得られた分散体を排出した。こうして得られた分散体は、26.0%の固形物含有率及び約203nmの平均粒径を有した。ポリマーのMFI(372/5)は73g/10分であった。ポリマーは、139℃の融点(DSCによって測定)を有していた。
【0243】
50重量%のGLUCOPON 600 CSUPの水溶液8gを用いたこと以外、実施例3を繰り返した。実施例3は、GLUCOPON 600 CSUPをDISPONIL APG 600(Cognis GmbH,Germany製のC12−C14アルキルポリグリコシド(実施例4)、及びSISTERNA PS 750(Sisterna BV,Rosendaal,NL製のスクロースエステル)(実施例5)に置き換えることによって繰り返された。
【0244】
【表2】

【0245】
全ての分散液は、26%の固体含量を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1個のポリオール単位と、少なくとも6個の炭素原子を含有する少なくとも1個の長鎖単位とを含有する、少なくとも1種の非芳香族ポリオール化合物と、
ii)フッ素化オレフィンから誘導される繰り返し単位を含む少なくとも1種のフルオロポリマーと、
を含む組成物。
【請求項2】
前記フルオロポリマーの372℃、荷重10kgにおけるメルトフローインデックス(MFI 372/10)が0g/10分〜0.1g/10分であるか、又は前記フルオロポリマーのMFI(372/10)が0.1g/10分超である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオール単位が環状である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオール化合物が、少なくとも6個の炭素原子を含有する長鎖単位を少なくとも1個含有するように変性された糖単位を少なくとも1個含む、上述の実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリオール化合物が、アルキルグリコシド、変性アルキルグリコシド、ソルビタンエステル、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオール化合物が、以下の一般式
【化1】

(式中、xは、0、1、2、3、4、又は5を表し、R及びR’は、独立して、H又は少なくとも6個の炭素原子を含有する長鎖単位を表すが、但しR及びR’のうちの少なくとも1個はHではない)によって表されるアルキルグリコシドである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリオール化合物が以下の式
【化2】

(式中、R’は、O及びSから選択されるヘテロ原子を表し、Rは、少なくとも6個の炭素原子を含有する長鎖単位を表す)に依る、請求項1〜5のいずれか一項に記載の実施形態。
【請求項8】
前記組成物が、0ppm又は0ppm超かつ150ppm未満の、FC−[(CF)−Z(式中、nは5〜8の整数であり、Zはカルボン酸基である)の種類の全フッ素化アルカン酸を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が水性分散液である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
1〜100ppmのトリメチルアミンを更に含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記フルオロポリマーが
(a)フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(b)フッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(c)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(d)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(e)テトラフルオロエチレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(f)ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンのコポリマー;
(g)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び2〜9個の炭素原子を有する炭化水素アルファオレフィンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(h)荷重10kgで372℃におけるメルトフローインデックスが0.1g/10分超であるテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(i)372℃におけるメルトフローインデックスが0.1g/10分以下であるテトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー及び
(j)PVDF;
(k)TFE並びに1つ以上のペルフルオロアルキルビニルエーテル及び/又はペルフルオロアルキルアリルエーテル並びに任意でヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
(l)TFE、ヘキサフルオロプロピレン、並びに任意で1つ以上のペルフルオロアルキルビニルエーテル及び/又はペルフルオロアルキルアリルエーテルに由来する繰り返し単位を含むポリマー;及び
(m)TFE、ヘキサフルオロプロピレン、エチレン及び/又はプロピレン、並びに任意で1つ以上のペルフルオロアルキルビニルエーテル及び/又はペルフルオロアルキルアリルエーテルに由来する繰り返し単位を含むポリマー;
から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物から調製されるコーティングを含有する基材。
【請求項13】
請求項1〜7に記載のポリオール化合物のうちの少なくとも1種の有効量を分散液に添加することを含む、フルオロポリマー分散液の剪断安定性を高める方法。
【請求項14】
基材をコーティング又は含浸する方法であって、請求項1〜11のいずれか一項に記載のフルオロポリマー組成物を準備する工程と、任意で、更なる成分を添加する工程と、前記組成物を基材に塗布する工程と、を含む方法。
【請求項15】
フルオロポリマーを調製する方法であって、
請求項1〜7に記載のポリオール化合物の存在下で、フッ素化オレフィンを水相中で重合させる工程を含む方法。

【公表番号】特表2013−501100(P2013−501100A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523065(P2012−523065)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/043805
【国際公開番号】WO2011/014715
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】