説明

ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の製造方法

【課題】従来のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)類の製造方法が有する製造面やコスト面などの欠点を解消し、簡便で、高収率であり、且つ工業的に有利な生産性に優れた方法でポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリカルボンカルボン酸とアルキル置換シクロヘキシルアミンとのアミド化反応によりポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を製造するに際し、ホウ酸化合物及びフェノール化合物存在下、又はホウ酸化合物とフェノール化合物とのホウ酸エステル存在下に当該反応を行うことを特徴とするポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の新規な製造方法に関し、更に詳しく言えば、ポリカルボン酸とアルキル置換シクロヘキシルアミンとのアミド化反応によりポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂は、成形性、機械特性、電気特性等が優れているために、フイルム成形、シート成形、ブロー成形、射出成形等の素材として、様々な分野に応用されている。
しかし、当該樹脂は、一般的には優れた物性を有しているものの、透明性、結晶性及び剛性が低いという問題点があり、ある種の用途によっては、その樹脂本来の優れた性能が充分に引き出せないために、その適用が制限されたものとなっているのが現状である。従来より、ポリオレフィン樹脂の透明性、結晶性及び剛性を改善するために、アミド系化合物を活用する技術が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
これまで、上記アミド系化合物としてポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の製造法についてはいくつか開示されている。例えば、特開平07−242610号公報においては、亜リン酸トリフェニル及びピリジン共存下、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸とシクロヘキシルアミン又は2−メチルシクロヘキシルアミンとの反応により、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)を得る製造例の記載がある(特許文献4参照)。しかしながら、この方法では、カルボキシル基の活性化剤である亜リン酸トリフェニルが極めて高価であり、しかも、大量に、即ち、化学量論量用いなければならないためコスト面での負担が大きく、更に、リン含有廃液が発生するので、環境面からの対策も必要である。
【0004】
この他に、1,2,3、4−ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステルとその3〜30当量倍の相当するシクロヘキシルアミン又は2−メチルシクロヘキシルアミンとを220℃で6時間エステル−アミド交換反応させることにより対応する1,2,3、4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を得る製造例の記載がある(特許文献5参照)。しかしながら、この方法は、1,2,3、4−ブタンテトラカルボン酸のメチルエステル化工程が煩雑であり、さらにシクロヘキシルアミンの沸点以上の温度で反応を行うため高価な耐圧反応設備が必要になる等の製造面やコスト面で更に改良が求められている。
【0005】
このように、本発明の特定の構造を有するポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)に関しては、必ずしも従来公知の製造方法ではかかる目的物を、簡便で、高純度であり、且つ生産性よく製造できないという問題があった。
【0006】
一方、アミド化反応に関して、N−アシルアミノ酸と1級アミン、二級アミン又はアンモニアとのアミド化反応において、ホウ酸化合物が脱水縮合反応触媒として、特に補助溶剤として脂肪族アルコールの共存下で、有効であることが開示されている(特許文献6及び特許文献7参照)。ホウ酸化合物は入手用意で安価である。しかしながら、これらの文献には、ポリカルボン酸とアルキル置換シクロヘキシルアミンとのアミド化反応については、何の言及も示唆もされていない。

【0007】
【特許文献1】特許第3401868号公報
【特許文献2】特開平7−242610号公報
【特許文献3】国際公開第WO00/52089号パンフレット
【特許文献4】特開平07−242610号公報
【特許文献5】特開平07−309821号公報
【特許文献6】特開昭61−00050号公報
【特許文献7】特開2001−187769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)類の製造方法が有する製造面やコスト面などの問題を解消し、簡便で、高純度であり、且つ工業的に有利な生産性に優れた方法でポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、次の知見を得た。
(a)ポリカルボン酸とアルキル置換シクロヘキシルアミンとのアミド化反応において、入手容易で安価な三酸化二ホウ素を用いると、ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)が得られるが、収率は極めて低く、多くても約20%程度であった。
この低収率の原因を究明したところ、イミド環構造を有する副反応生成物の生成が優先していることが明らかになった。例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸とアルキル置換シクロヘキシルアミンとのアミド化反応の場合、次の一般式(4)
【化1】

[式中、R及びRは、同一又は異なっていて、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。]
で表される副反応生成物(以下、「アミド−イミド」と称す。)及び一般式(5)
【化2】

[式中、R及びRは、同一又は異なっていて、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。]
(以下、「ビス−イミド」と称す。)で表される副反応生成物が生成する。この低収率という問題を解消して、目的のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を選択的に高収率で得るためには、この副反応をいかに抑制するかが重要であることが判明した。
【0010】
(b)そこで、本発明者らは、上記特開2001−187769号公報に記載の方法に準じて、ポリカルボン酸とアルキル置換シクロヘキシルアミンとを、ホウ酸化合物として三酸化二ホウ素、及び脂肪族アルコールとして2−エチルヘキサノールを用いてアミド化反応に供したところ、目的のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)が、三酸化二ホウ素単独の場合と比べて、極めて低収率(約2%)でしか得られなかった。
従って、この方法では、目的のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を高収率で得ることは困難であることが明らかとなった。そのため、ホウ酸化合物を用いる場合は、20%を超える収率で、目的とするポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を得ることは不可能かと思われた。
【0011】
(c)ところが、引き続く研究において、本発明者らは、ポリカルボン酸とアルキル置換シクロヘキシルアミンとのアミド化反応において、脱水縮合反応触媒として、三酸化二ホウ素及びフェノール化合物、又は三酸化二ホウ素とフェノール化合物とを脱水縮合して得られるホウ酸エステルを用いることにより、予想外にもポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)が、従来と比較して、簡便に製造でき、しかも副反応生成物の生成が抑制され、目的物の精製も容易であり、目的物の収率、純度等も充分満足できることを見出した。また、本発明者らは、三酸化二ホウ素に代えて、他のホウ酸化合物を使用しても、同様の結果が得られることを見出した。
【0012】
(d)更に、こうして得られた粗製の目的物は、不純物として上記一般式(4)で表されるアミド−イミド、一般式(5)で表されるビスイミド、触媒として使用したホウ酸化合物及びフェノール化合物、又はフェノール化合物のホウ酸エステル、ポリカルボン酸とアルキル置換シクロヘキシルアミンとのアミド化反応中間体であるモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ及びヘキサアミン塩(以下、「アミン塩」と称す)等を含んでいるが、これら不純物は、単に溶剤で洗浄するという極めて工業的に有利な方法で容易に精製できることを見出した。
【0013】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであって、以下のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の製造方法及び精製ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の製造方法を提供するものである。
【0014】
(項1)
下記一般式(1)
【化3】

[式中、nは、4〜6の整数を表す。式中、Rは、炭素数3〜8のn価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の脂環族基又は炭素数6〜30の芳香族基を表す。式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す。]
で表されるポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を製造する方法であって、下記一般式(2)
【化4】

[式中、nは、4〜6の整数を表す。式中、Rは、炭素数3〜8のn価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の脂環族基又は炭素数6〜30の芳香族基、を表す。]
で表されるポリカルボン酸と下記一般式(3)
【化5】

[式中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す。]
で表されるアルキル置換シクロヘキシルアミンとを、
(a)ホウ酸化合物及びフェノール化合物の存在下で、及び/又は
(b)ホウ酸化合物とフェノール化合物とを脱水縮合して得られるホウ酸エステルの存在下で、
アミド化反応に供し、粗製のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を得ることを含む方法。
【0015】
(項2)ホウ酸化合物が、オルトホウ酸、メタホウ酸、ピロホウ酸、四ホウ酸、三酸化二ホウ素、ホウ酸及びホウ酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である項1に記載の製造方法。
【0016】
(項3)フェノール化合物が、フェノール、又はクレゾールである項1又は項2に記載の製造方法。
【0017】
(項4)アミド化反応を反応温度98℃〜180℃で行う項1〜項3のいずれかに記載の製造方法。
【0018】
(項5)アミド化反応を共沸脱水溶剤存在下で行う項1〜項4のいずれかに記載の製造方法。
【0019】
(項6)共沸脱水溶剤が、飽和脂肪族炭化水素、飽和脂環族炭化水素又は芳香族炭化水素である項1〜項5のいずれかに記載の製造方法。
【0020】
(項7)共沸脱水溶剤の沸点が、120〜160℃である項6に記載の製造方法。
【0021】
(項8)ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)がテトラカルボン酸テトラキス(アルキル置換シクロヘキシルアミド)である項1〜項7のいずれかに記載の製造方法。
【0022】
(項9)ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)が、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)又は1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルメチルシクロヘキシルアミド)である項8に記載の製造方法。
【0023】
(項10)粗製のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の精製工程を更に含む項1〜項9のいずれかに記載の製造方法。
【0024】
(項11)精製工程が、ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を、炭素数1〜3の脂肪族アルコール又は水と炭素数1〜3のアルコールとの混合物で洗浄する工程を含むものである項10に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の製造方法によれば、従来の方法で製造した場合と比較して、ポリプロピレン系樹脂に対する透明化剤として有用なポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を簡便に、且つ生産性よく得ることができる。
また、本発明では、副反応生成物の生成が抑制されるので、目的物の収率、純度なども充分満足できる。
更に、こうして得られた目的物の精製は、アルコール又は水とアルコールとの混合物で洗浄するという極めて簡便な方法であるから、工業的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0027】
[ポリカルボン酸]
本発明における下記一般式(2)
【化6】

[式中、nは、4〜6の整数を表す。式中、Rは、炭素数3〜8のn価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の脂環族基又は炭素数6〜30の芳香族基を表す。]
で表されるポリカルボン酸としては、飽和脂肪族ポリカルボン酸、脂環族ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸が挙げられ、カルボキシル基の置換位置は特に限定されない。ここで、Rは、一般式(2)で表されるポリカルボン酸からn個のカルボキシル基を除いて得られるn価の有機基を指す。これら、ポリカルボン酸は酸無水物の形であってもよい。また、上記ポリカルボン酸は、水酸基、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基(炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4)直鎖状若しくは分岐鎖状のアルケニル基(炭素数2〜10、好ましくは3〜4)、及び直鎖状若しくは分岐鎖状のアセトキシ基からなる群から選択される1個若しくは2個以上(特に1又は2個)の置換基を有していてもよい。
尚、本明細書及び特許請求の範囲において、脂環族ポリカルボン酸は脂環基を有するポリカルボン酸を表し、芳香族ポリカルボン酸は芳香族基を有するポリカルボン酸を表す。
【0028】
一般式(2)で表される飽和脂肪族ポリカルボン酸は、具体的には1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,2,3−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,5−ペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ペンタンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ヘキサンテトラカルボン酸、1,2,6,7−ヘプタンテトラカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、3−カルボキシ−3−(カルボキシメチル)ペンタン二酸等のテトラカルボン酸等のテトラカルボン酸が例示される。
これらの中でも特に1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸又は、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸の一無水物若しくは二無水物が好ましい。
【0029】
一般式(2)で表される脂環族ポリカルボン酸としては、シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、5−(コハク酸)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸等のテトラカルボン酸、シクロヘキサンヘキサカルボン酸等のヘキサカルボン酸等が例示される。
【0030】
一般式(2)で表される芳香族族ポリカルボン酸としては、メロファン酸 、プレーニト酸 、ピロメリット酸)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルメタンテトラカルボン酸、ペリレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、ベンジジン−3,3'−ジカルボキシル−N,N'−四酢酸、ジフェニルプロパンテトラカルボン酸、フタロシアニンテトラカルボン酸等のテトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸等のペンタカルボン酸、メリット酸等のヘキサカルボン酸が例示される。
【0031】
[アルキル置換シクロヘキシルアミン]
本発明における下記一般式(3)
【化7】

[式中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。]
アルキル置換シクロヘキシルアミンにおいて、R、Rで表される炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基を例示できる。これらの中でも、炭素数1〜3のアルキル基、特に、メチル基、エチル基、n−プロピル、i−プロピル基が好ましい。
また、R及びRの一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜4のアルキル基、特にメチル基、エチル基、n−プロピル、i−プロピル基であるのが好ましい。その場合、アルキル基の置換位置は特に限定されないが、好ましくは、アミノ基に対して2位又は4位であるのが好ましい。
また、R及びRの双方が水素原子であるのも好ましい。
【0032】
これら一般式(3)で表されるアルキル置換シクロヘキシルアミンは、いずれも公知で入手容易であるか又は公知方法により容易に製造できる化合物である。
【0033】
一般式(3)で表されるアルキル置換シクロヘキシルアミンとしては、具体的には、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミン、2,4−ジメチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、3−エチルシクロヘキシルアミン、4−エチルシクロヘキシルアミン、2−n−プロピルシクロヘキシルアミン、3−n−プロピルシクロヘキシルアミン、4−n−プロピルシクロヘキシルアミン、2−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、3−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、4−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、2−n−ブチルシクロヘキシルアミン、3−n−ブチルシクロヘキシルアミン、4−n−ブチルシクロヘキシルアミン、2−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、3−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、4−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、3−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、4−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、2−n−オクチルシクロヘキシルアミン、3−n−オクチルシクロヘキシルアミン、4−n−オクチルシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、2−メチルシクロヘキシルメチルアミン、3−メチルシクロヘキシルメチルアミン、4−メチルシクロヘキシルメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルメチルアミン、トリメチルシクロヘキシルメチルアミン、メトキシシクロヘキシルメチルアミン、エトキシシクロヘキシルメチルアミン、ジメトキシシクロヘキシルメチルアミン、メトキシシクロヘキシルエチルアミン、ジメトキシシクロヘキシルエチルアミン、メチルシクロヘキシルプロピルアミン等が挙げられ、なかでも特に、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミンが好ましい。尚、これらのアルキル置換シクロヘキシルアミンは、立体異性体混合物のまま用いてもよく、特に限定されるものではない。
【0034】
これらのアルキル置換シクロヘキシルアミンは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。従って、本明細書及び請求の範囲において、一般式(1)における4〜6個のカルバモイル基は、同一又は異なっていてもよい。
【0035】
[ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)]
本発明方法により製造される脂肪族ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の好ましい具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,5−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3,5−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,5−ペンタンテトラカルボンテトラキス(シクロヘキシルアミド)酸、1,2,3,5−ペンタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,4,5−ペンタンテトラカルボン酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)、1,2,4,5−ペンタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,5,6−ヘキサンテトラカルボン酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)、1,2,5,6−ヘキサンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,6,7−ヘプタンテトラカルボン酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)、1,2,6,7−ヘプタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,2,3−プロパンテトラカルボン酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)、1,2,2,3−プロパンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)等が挙げられる。
【0036】
本発明方法により製造される脂環族ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の好ましい具体例としては、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラキス(メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラキス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラキス(4−メチルシクロヘキシルアミド)等が挙げられる。
【0037】
本発明方法により製造される芳香族ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の好ましい具体例としては、ピロメリット酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)、ピロメリット酸テトラキス(2−メチルシクロシクロヘキシルアミド)、ピロメリット酸テトラキス(3−メチルシクロシクロヘキシルアミド)、ピロメリット酸テトラキス(3−メチルシクロシクロヘキシルアミド)等が挙げられる。
【0038】
これらのうち、工業的有用性を考慮すると、テトラカルボン酸テトラキス(アルキル置換シクロヘキシルアミド)が好ましく、具体的には、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,5−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3,5−ジメチルシクロヘキシルアミド)、ピロメリット酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)、ピロメリット酸テトラキス(2−メチルシクロシクロヘキシルアミド)、ピロメリット酸テトラキス(3−メチルシクロシクロヘキシルアミド)、ピロメリット酸テトラキス(3−メチルシクロシクロヘキシルアミド)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラキス(メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラキス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラキス(4−メチルシクロヘキシルアミド)が好ましく、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)が特に好ましい。
【0039】
[ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の製造方法]
<アミド化工程>
本発明のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の製造方法は、例えば、ポリカルボン酸とアルキル置換シクロヘキシルアミンの混合溶液に、ホウ酸化合物とフェノール化合物或いはホウ酸化合物とフェノール化合物とのホウ酸エステルを加え、共沸脱水溶剤の存在下又はその非存在下に加熱するだけで、容易に目的とするポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を製造できる。特に、これらのポリカルボン酸、アルキル置換シクロヘキシルアミン、ホウ酸化合物とフェノール化合物若しくはホウ酸エステル、及び共沸脱水溶剤の添加順序は、反応に影響を与えないため、作業性を考慮して適宜選択すればよい。
上記アルキル置換シクロヘキシルアミンは、反応基質であるが、反応溶媒としても機能すると考えられる。また、上記フェノール化合物は、触媒の構成成分であるが、反応溶媒としても機能すると考えられる。
このように脱水縮合触媒としてホウ酸化合物及びフェノール化合物、又はホウ酸化合物とフェノール化合物とのホウ酸エステルを用いることにより、ホウ酸化合物を単独で用いた場合と比較して、イミド環形成が抑制されてポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の収率が著しく向上するという効果が得られる。
【0040】
本発明における反応温度としては、98〜180℃が好ましく、更に120〜160℃が好ましい。通常、反応によって生じた水を除去するため100℃以上の温度が好ましく、反応温度が高いほど反応が促進されるが、副反応を抑制するために120〜160℃が特に好ましい。通常は、反応系において、還流が連続的に起こる温度が好ましい。本発明において、反応は、通常大気圧で行うことができるが、反応混合液から水分の除去を促進するために反応系を減圧にしてもよい。また、反応雰囲気は特に限定されないが、窒素、アルゴン等の不活性ガス存在下、或いは不活性ガス気流下で行うことが好ましい。
反応時間としては0.1〜50時間が好ましく、更に1〜30時間とするのが好適である。
【0041】
本発明のアミド化反応が進行するにつれて、生成したポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)が反応混合物から固体状で析出する。
反応終了後に目的とするポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を回収する方法については、適宜選択することができる。例えば、アミド化反応終了後の反応混合物から析出している固体状の目的物を濾過、遠心分離などの慣用の方法を用いて単離することができる。
【0042】
本発明の反応においては、原料のポリカルボン酸の転化率が高く、粗製のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の収率も満足できるものである。特に、本発明に従い、ホウ酸化合物とフェノール化合物との混合物又はフェノールのホウ酸エステルを使用することにより、ホウ酸化合物を単独で用いた場合と比較すると、イミド環形成が抑制されてポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の収率が著しく向上する。
【0043】
一方、目的物(粗製のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド))を濾過して得られた反応母液は、必要に応じて、ポリカルボン酸、アルキル置換シクロヘキシルアミン及び共沸脱水溶剤を加え、再びアミド化反応に供することができる。
【0044】
<共沸脱水溶剤>
本発明において共沸脱水溶剤は、使用しても、使用しなくてもよいが、共沸脱水溶剤は反応を促進するうえで使用することが好ましい。共沸脱水溶剤としては、沸点(1atm下における沸点、以下同じ)が98〜180℃の飽和脂肪族炭化水素、飽和脂環族炭化水素又は芳香族炭化水素が好ましい。
【0045】
具体的には、へプタン、ヘキサン、イソオクタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の飽和脂肪族炭化水素、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、シクロへプタン等の飽和脂環族炭化水素、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、p−キシレン、p−シメン、メシチレン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の芳香族炭化水素化合物及びこれらの混合物で、沸点が98〜180℃の範囲にある共沸脱水溶剤が挙げられる。これらのなかでも副反応を抑制する観点から、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、n−オクタン、n−ノナン等の化合物及びこれらの混合物で、沸点が120〜160℃の範囲にある共沸脱水溶剤が好ましく、特に、キシレンやこれらの溶剤を適宜混合して沸点が130〜150℃となるように調整した共沸脱水溶剤混合物が好ましい。
【0046】
上記共沸脱水溶剤を使用する場合、その使用量は、特に限定されないが、ポリカルボン酸100重量部に対して、通常500〜5000重量部、好ましくは800〜2500重量部の範囲である。
【0047】
<ホウ酸化合物>
本発明において触媒として用いられるホウ酸化合物としては、フェノール化合物とホウ酸エステルを形成し得るホウ酸化合物、特に無機ホウ酸化合物が使用できる。具体的には、オルトホウ酸、メタホウ酸、ピロホウ酸、四ホウ酸及び三酸化二ホウ素が挙げられ、なかでもオルトホウ酸、三酸化二ホウ素が好ましく、特に、ホウ酸は、後述する精製工程において用いる精製溶剤に容易に溶解し、目的物と容易に分離できるため好ましい。これらは1種単独で又は2種以上混合して用いることもできる。
【0048】
このホウ酸化合物の使用量は、特に限定されないが、ポリカルボン酸1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜5モルの範囲である。0.1モル未満の場合は、反応促進効果が十分でない傾向にあり、一方、10モルを超えて使用しても、その使用量に見合うだけの反応促進効果が得られにくくなる傾向が見られる。
【0049】
<フェノール化合物>
また、フェノール化合物としては、上記ホウ酸化合物とホウ酸エステルを形成し得るものであれば、特に限定されないが、一般には、ヒドロキシ基を1〜2個、特に1個有し、更に置換基を1〜3個、特に1〜2個有していてもよいベンゼンが好ましい。置換基の例としては、炭素数1〜3のアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、iso−プロピル基が挙げられる。
【0050】
フェノール化合物の具体例としては、フェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、p−メトキシフェノール、キシレノール等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して用いることもできる。なかでも特にフェノール、クレゾールが好ましい。
【0051】
このフェノール化合物の使用量は、特に限定されないがポリカルボン酸1モルに対して、通常0.5〜20モル、好ましくは1.0〜10モルの範囲である。0.5モル未満の場合は、反応促進効果が十分ではない傾向が見られ、一方、20モルを超えて使用しても、その使用量に見合うだけの反応促進効果が得られにくくなる傾向が見られる。
【0052】
<ホウ酸エステル>
本発明のホウ酸エステルとは、上記ホウ酸化合物と上記フェノール化合物より得られるホウ酸エステルである。本発明のアミド化反応において、ホウ酸エステルはホウ酸化合物及びフェノール化合物を夫々反応開始時に仕込み、反応系中で発生させることができる。又、常法に従いホウ酸化合物とフェノール化合物を共沸脱水溶剤存在下に脱水縮合することにより予め調製したものも反応に用いることができる(後述の実施例4参照)。反応共沸脱水溶剤としては、アミド化反応に関して例示したものがいずれも使用できる。ホウ酸エステルとしてはホウ酸化合物とクレゾールとのホウ酸エステルが特に好ましい。
【0053】
上記、反応系中に発生させるホウエステル又は予め調製しておいたホウ酸エステルをアミド化反応に用いる場合、その使用量は、特に限定されないが、ポリカルボン酸1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜5モルの範囲である。0.1モル未満の場合は、反応促進効果が十分でない傾向が見られ、一方、10モルを超えて使用しても、その使用量に見合うだけの反応促進効果が得られにくくなる傾向が見られる。
【0054】
<ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド))の精製方法>
得られた固体、即ち、粗製のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)は、不純物として、前記一般式(4)で表されるアミド−イミド、一般式(5)で表されるビスイミド、触媒として使用したホウ酸化合物及びフェノール化合物、又はフェノール化合物のホウ酸エステル、アミン塩等を含んでいる。
上記不純物は、有機物及び無機物の双方を含有しているので、通常の再結晶等の精製方法では除去が困難又は除去操作に長時間を要すると考えられた。しかしながら、本発明者らの研究によると、予想外にも、溶剤を用いて洗浄するという簡便な方法で、これら不純物が一挙に除去されて、高純度のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を製造できることが見出された。
【0055】
従って、本発明は、上記粗製のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を溶剤で洗浄する工程を含む精製ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の製造方法を提供するものでもある。
上記精製に使用する溶剤としては、該粗製のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)に含有されている上記不純物を溶解し得る溶剤であれば、特に限定されることなく使用できる。
【0056】
上記精製溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜3の低級脂肪族アルコール若しくはこれらの混合アルコール、又は水と炭素数1〜3の低級脂肪族アルコールとの混合溶剤が好ましく、炭素数1〜3の低級脂肪族アルコールとしては特にメタノール、エタノールが好ましい。水と低級アルコールとの混合溶剤を使用する場合、水と低級アルコールとの比率は、広い範囲から適宜選択できるが、一般にはその体積割合は、水:低級アルコール=9:1〜1:9程度であって、特に5:5〜1:9程度とするのが好ましい。
精製溶剤の使用量は、特に限定されないが、粗製のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)100重量部に対して、通常200〜5000重量部が好ましい。これにより目的物中の副反応生成物及びホウ素化合物若しくはホウ酸エステル並びにアミン塩等を容易に除去できる。
【0057】
洗浄の方法としては、例えば、濾別した目的物(粗製のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド))を精製溶剤中に分散し、室温〜精製溶剤の沸点温度の範囲内の温度(一般に室温〜100℃程度、好ましくは室温〜90℃程度、より好ましくは室温〜80℃程度)で撹拌、混合する方法、目的物の固体に精製溶剤をシャワーリングする等の方法が例示でき、これらを適宜組み合わせて行うことができる。洗浄後の固体を、濾過、減圧乾燥等の通常行われる操作に供することにより、容易に高純度の目的とするポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を得ることができる。

【実施例】
【0058】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。使用出発物質は、公知化合物であるか、または公知の実験的方法により製造される化合物である。融点、赤外吸収スペクトル分析、及び有機元素分析は、以下の方法により測定した。
【0059】
1)融点(℃)
示差走査熱量計(商品名「DSC−50」、島津製作所製)を用いて、以下の条件にて測定し、最大吸熱ピークのピークトップ温度とした。
窒素流量:30ml/分、昇温速度:10℃/分、試料重量:5mg、標準試料:シリカゲル5mg。
2)赤外吸収スペクトル
FT−IR装置(商品名「Spectrum One」、パーキンエルマー社製)を用いて、ATR(全拡散反射)法により測定した。
3)元素分析
CE Instruments社製EA1110型を用いて測定した。
【0060】
[実施例1]
機械的撹拌装置、温度計、水分離器及び還流冷却管を取り付けた200mlの4つ口セパラブルフラスコに1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(新日本理化社製)4.68g(20mmol)、2−メチルシクロヘキシルアミン18.1g(160mmol)、クレゾール(ナカライテスク(株)製)8.64g(80mmol)、三酸化二ホウ素0.7g(10mmol)及びキシレン80gを仕込み、窒素雰囲気下6時間加熱還流し、生成した水を連続的に共沸除去することにより反応を行った。反応終了後、析出した固体を減圧濾過し、得られた白色固体をメタノール100mlで室温下、1時間撹拌洗浄し、濾過後、120℃、2時間減圧乾燥することにより白色固体1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)5.11g(収率41.5%)を得た。その構造は以下の測定により、目的物の構造を有していることを確認した。
【0061】
FT−IR(ATR法):1640cm−1(アミド第1吸収)、1542cm−1(アミド第2吸収)
元素分析(C3662):測定値 C70.7 H10.3 N 9.16
計算値 C70.4 H10.1 N 9.12
融点:373℃
【0062】
[実施例2]
クレゾール8.64g(80mmol)、三酸化二ホウ素0.7g(10mmol)に代えて、クレゾール17.3g(160mmol)、三酸化二ホウ素1.4g(20mmol)を用いた他は実施例1と同様に反応、後処理を行い、白色固体1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)6.42g(収率52.2%)を得た。その構造は、FT−IR及び融点から実施例1の化合物と同等の構造を有していることを確認した。
【0063】
[実施例3]
クレゾール8.64g(80mmol)に代えてフェノール7.52g(80mol)を用いた他は実施例1と同様に反応を行った。反応終了後、実施例1と同様に後処理し、白色固体1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)5.21g(収率42.3%)を得た。その構造は、FT−IR及び融点から実施例1の化合物と同等の構造を有していることを確認した。
【0064】
[実施例4]
実施例1で記載したのと同様の装置を用い、クレゾール17.3g(160mmol)、三酸化二ホウ素1.4g(20mmol)及びキシレン80gを仕込み、窒素雰囲気下、2時間加熱還流し、生成した水を連続的に共沸除去することによりホウ酸トリクレゾールエステルのキシレン溶液を得た。次に、得られたホウ酸トリクレゾールエステルのキシレン溶液に1,2,3,4−ブタントラカルボン酸(新日本理化社製)4.68g(20mmol)、続いて2−メチルシクロヘキシルアミン18.1g(160mmol)を加え、6時間加熱還流し、反応を行った。反応終了後、実施例1と同様に後処理し、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)5.76g(収率46.8%)を得た。その構造は、FT−IR及び融点から実施例1の化合物と同等の構造を有していることを確認した。
【0065】
[実施例5]
実施例1で記載したのと同様の装置を用い、クレゾール17.3g(160mmol)、三酸化二ホウ素1.4g(20mmol)及びキシレン80gを仕込み、窒素雰囲気下、2時間加熱還流し、生成した水を連続的に共沸除去することによりホウ酸トリクレゾールエステルのキシレン溶液を得た。次に、得られたホウ酸トリクレゾールエステルのキシレン溶液に1,2,3,4−ブタントラカルボン酸二無水物3.96g(20mmol)、続いて2−メチルシクロヘキシルアミン18.1g(160mmol)を加え、6時間加熱還流し、反応を行った。反応終了後、実施例1と同様に後処理し、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)6.51g(収率52.9%)を得た。その構造は、FT−IR及び融点から実施例1の化合物と同等の構造を有していることを確認した。
【0066】
[実施例6]
三酸化二ホウ素1.4g(20mmol)に代えてオルトホウ酸1.24g(20mmol)を用いた他は実施例4と同様に反応、後処理を行い、白色固体1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)6.55g(収率53.2%)を得た。その構造は、FT−IR及び融点から実施例1の化合物と同等の構造を有していることを確認した。
【0067】
[実施例7]
2−メチルシクロヘキシルアミン13.6g(160mmol)、三酸化二ホウ素1.4g(20mmol)に代えてシクロヘキシルアミン11.9g(160mmol)、オルトホウ酸2.5g(40mmol)を用いた他は、実施例4と同様に反応、後処理を行い、白色固体の1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)5.38g(収率46.4%)を得た。その構造は、以下の測定により、目的物の構造を有していることを確認した。
【0068】
FT−IR(ATR法):1641cm−1(アミド第1吸収)、1548cm−1(アミド第2吸収)
元素分析(C3266):
測定値 C 68.8、H 11.8、N 10.0
計算値 C 69.1、H 10.9、N 9.95
融点:400℃
【0069】
[実施例8]
実施例1で記載したのと同様の装置を用い、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸 5.20g(20mmol)、2−メチルシクロヘキシルアミン18.1g(160mmol)、クレゾール(ナカライテスク(株)製)8.64g(80mmol)、三酸化二ホウ素0.7g(10mmol)及びキシレン80gを仕込み、窒素雰囲気下6時間加熱還流し、生成した水を連続的に共沸除去することにより反応を行った。反応終了後、析出した固体を減圧濾過し、得られた白色固体をメタノール100mlで室温下、1時間撹拌洗浄し、濾過後、120℃、2時間減圧乾燥することにより白色固体1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)5.02g(収率39.5%)を得た。その構造は以下の測定により、目的物の構造を有していることを確認した。
【0070】
FT−IR(ATR法):1642cm−1(アミド第1吸収)、1553cm−1(アミド第2吸収)
元素分析(C3864):
測定値 C 70.9、H 9.82、N 8.50
計算値 C 71.2、H 10.0、N 8.75
【0071】
[実施例9]
実施例1で記載したのと同様の装置を用い、ピロメリット酸5.08g(20mmol)、2−メチルシクロヘキシルアミン18.1g(160mmol)、クレゾール(ナカライテスク(株)製)8.64g(80mmol)、三酸化二ホウ素0.7g(10mmol)及びキシレン80gを仕込み、窒素雰囲気下6時間加熱還流し、生成した水を連続的に共沸除去することにより反応を行った。反応終了後、析出した固体を減圧濾過し、得られた白色固体をメタノール100mlで室温下、1時間撹拌洗浄し、濾過後、120℃、2時間減圧乾燥することにより白色固体ピロメリット酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)4.83g(収率38.0%)を得た。その構造は以下の測定により、目的物の構造を有していることを確認した。
【0072】
FT−IR(ATR法):1640cm−1(アミド第1吸収)、1550cm−1(アミド第2吸収)
元素分析(C3858):
測定値 C 71.2、H 9.50、N 8.71
計算値 C 71.7、H 9.12、N 8.80
【0073】
[比較例1]
クレゾール8.64g(80mmol)を用いなかった他は実施例1と同様に反応、後処理を行い、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)1.04g(収率8.4%)を得た。
【0074】
[比較例2]
三酸化二ホウ素0.7g(10mmol)を用いなかった他は実施例1と同様に反応を行ったが、目的の1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)は得られなかった。
【0075】
[比較例3]
クレゾール17.3g(160mmol)に代えて2−エチルヘキサノール20.8g(160mmol)を用いた他は実施例2と同様に反応、後処理を行い、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)0.2g(収率1.6%)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の製造方法によりこれまでその製造が目的物を得るまでに煩雑な工程を要するか、或いは多量のリン含有廃棄物が発生する高価な反応剤を用いる必要があったポリカルボン酸テトラキス(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を工業的に簡便で、高純度であり、且つ工業的に有利な生産性に優れた方法で製造することが可能となった。このポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)は、優れた熱安定性を示し、ポリプロピレン系樹脂に対して、透明化剤として作用し、優れた透明性を付与することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

[式中、nは、4〜6の整数を表す。式中、Rは、炭素数3〜8のn価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の脂環族基又は炭素数6〜30の芳香族基を表す。式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す。]
で表されるポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を製造する方法であって、下記一般式(2)
【化2】

[式中、nは、4〜6の整数を表す。式中、Rは、炭素数3〜8のn価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の脂環族基又は炭素数6〜30の芳香族基、を表す。]
で表されるポリカルボン酸と下記一般式(3)
【化3】

[式中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基を表す。]
で表されるアルキル置換シクロヘキシルアミンとを、
(a)ホウ酸化合物及びフェノール化合物の存在下で、及び/又は
(b)ホウ酸化合物とフェノール化合物とを脱水縮合して得られるホウ酸エステルの存在下で、
アミド化反応に供し、粗製のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を得ることを含む方法。

【請求項2】
ホウ酸化合物が、オルトホウ酸、メタホウ酸、ピロホウ酸、四ホウ酸、及び三酸化二ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の製造方法。

【請求項3】
フェノール化合物が、フェノール、又はクレゾールである請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
アミド化反応を反応温度98℃〜180℃で行う請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
アミド化反応を共沸脱水溶剤存在下で行う請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
共沸脱水溶剤が、飽和脂肪族炭化水素、飽和脂環族炭化水素又は芳香族炭化水素である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
共沸脱水溶剤の沸点が、120〜160℃である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)がテトラカルボン酸テトラキス(アルキル置換シクロヘキシルアミド)である請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)が、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(シクロヘキシルアミド)又は1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルメチルシクロヘキシルアミド)である請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
粗製のポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)の精製工程を更に含む請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
精製工程が、ポリカルボン酸ポリ(アルキル置換シクロヘキシルアミド)を、炭素数1〜3の脂肪族アルコール又は水と炭素数1〜3のアルコールとの混合物で洗浄する工程を含むものである請求項10に記載の製造方法。


【公開番号】特開2008−24614(P2008−24614A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196881(P2006−196881)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】