説明

ポリカーボネートポリオールの製造方法及び該ポリカーボネートポリオールを用いたポリウレタン

【課題】ポリカーボネートポリオールを製造する際に、効率的に製造する方法を確立することを課題としており、更にはポリカーボネートポリオールの色相、透明性の良好な、高品質のポリカーボネートポリオールを製造する方法を提供しようとするものである。
【解決方法】ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを、触媒の存在下でエステル交換反応により重縮合反応する、特定の構造と物性を有するポリカーボネートポリオールの製造方法であって、反応器の少なくとも1つが、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段および還流冷却器を具備した内容積20L以上の反応器であり、該熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、且つ全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して15重量%以下である、ポリカーボネートポリオールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートポリオールの製造方法に関する。本発明はまた、ポリカーボネートポリオールを原料として製造される、物性バランスに優れた塗料、コーティング剤、合成・人工皮革、高機能エラストマー用途等に有用なポリカーボネート系ポリウレタンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工業規模で生産されているポリウレタン樹脂の主たるソフトセグメント部の原料としては、ポリテトラメチレングリコールに代表されるエーテルタイプとアジペート系エステルに代表されるエステルタイプ、ポリカプロラクトンに代表されるポリラクトンタイプ、そしてポリカーボネートポリオールに代表されるポリカーボネートタイプがあげられる(非特許文献1)。
【0003】
このうち、ポリカーボネートジオールを用いるポリカーボネートタイプは、耐熱性、耐加水分解性において最良な耐久グレードとされており、耐久性フィルムや自動車や家具用の人工皮革、塗料(特に水系塗料)、コーティング剤、接着剤として広く利用されている。かかる状況下、特殊なジヒドロキシ化合物をモノマー成分とし、炭酸ジエステルとのエステル交換により副生するモノヒドロキシ化合物を減圧下で留去しながら、ポリカーボネートポリオールを得る方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
ところが、このような特殊な構造を有するジヒドロキシ化合物は、ビスフェノール類に比べると沸点が低いため、高温、減圧下で行うエステル交換反応中の揮散が激しく、原料原単位の悪化を招くだけではなく、品質に影響を及ぼす末端基濃度を所定の値に制御することが困難になるという問題や、ジヒドロキシ化合物を複数種使用する場合には、使用するジヒドロキシ化合物のモル比率が重合中に変化し、所望の分子量や組成のポリカーボネートポリオールが得られないという問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、重合温度を低くしたり、減圧の度合いを緩めたりするなどの方法が検討されているが、この方法では、モノマーの揮散は抑制されるものの、生産性の低下を招くというジレンマがあった。そこで、特定の還流冷却器を有する重合反応器を用いる方法や(例えば、特許文献4参照)、ジアリールカーボネートとポリオールとを反応させてポリカーボネートポリオールを製造する際の原料原単位を改善する技術も開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/111106号パンフレット
【特許文献2】特開平5−51428号公報
【特許文献3】特開平2−289616号公報
【特許文献4】特開2008−56844号公報
【特許文献5】特許第4198940号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“ポリウレタンの基礎と応用”96頁〜106頁 松永勝治 監修、(株)シーエムシー出版、2006年11月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従前知られたポリカーボネートポリオールを製造する技術では、未だ効率的且つ色相の良好なポリカーボネートポリオールの製造方法は確立されていない。本発明は、ポリカーボネートポリオールを、効率的に製造する方法を確立することを課題としており、更にはポリカーボネートポリオールの色相、透明性の良好な、高品質のポリカーボネートポリオールを製造する方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを、触媒の存在下でエステル交換反応により重縮合反応して、特定のポリカーボネートポリオールを製造する方法であって、当該エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物を留出する反応器の少なくとも1つが、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段および還流冷却器を具備した内容積20L以上の反応器であり、該熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、且つ全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して15重量%以下であるように、ポリカーボネートポリオールを製造することが、有効であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[16]に存する。
【0011】
[1] ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを、触媒の存在下でエステル交換反応により重縮合反応する、下記式(A)で表される繰り返し単位を有し、且つ水酸基価が10mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であるポリカーボネートポリオールの製造方法であって、エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物を留出する反応器の少なくとも1つが、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段および還流冷却器を具備した内容積20L以上の反応器であり、該熱媒体の温度と該反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、且つ全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して15重量%以下である、ポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0012】
【化1】

【0013】
(前記式(A)において、Xはヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【0014】
[2] 前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物、および下記式(C)で表されるジヒドロキシ化合物から選ばれる少なくとも1つのジヒドロキシ化合物を含有する、[1]に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0015】
【化2】

【0016】
(前記式(B)において、前記式(B)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
【0017】
【化3】

【0018】
(前記式(C)において、mは0または1、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜15の、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれる基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはハロゲン原子またはこれらを含む置換基を有していてよい。Yはヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の価の基を表す。)
【0019】
[3] 前記ジヒドロキシ化合物のうち、少なくとも1種のジヒドロキシ化合物の大気圧での沸点が300℃以下である、[1]または[2]に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0020】
[4] 前記重縮合反応を、複数の反応器を用いて多段階で行う、[1]から[3]の何れか1に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0021】
[5] 前記触媒として、周期表第2族金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を有する化合物を、その全金属原子の合計量として、原料として用いた全ジヒドロキシ化合物1molあたり5μmol以上500μmol以下用いる、[1]から[4]の何れか1に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0022】
[6] 前記触媒が、マグネシウム化合物およびカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物である、[5]に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0023】
[7] 前記炭酸ジエステルが、ジアリールカーボネートである、[1]から[6]のいずれか1に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0024】
[8] 前記エステル交換反応におけるいずれか1つの反応段階における反応液の最高温度が、190℃未満である、[1]から[7]の何れか1に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0025】
[9] 前記エステル交換反応におけるいずれか1つの反応段階で使用する反応器に用いられる熱媒体の最高温度が、240℃未満である、[1]から[8]のいずれか1に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0026】
[10] 前記エステル交換反応において、
1)炭酸ジエステルから副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が、モノヒドロキシ化合物の全理論生成量の50%未満の場合には、
a)温度110℃以上130℃未満では圧力10kPa〜4kPa、
b)温度130℃以上150℃未満では圧力14kPa〜6kPa、
c)温度150℃以上170℃未満では圧力20kPa〜8kPa、
d)温度170℃以上190℃未満では圧力30kPa〜10kPa、
であって、
2)炭酸ジエステルから副生するモノヒドロキシ化合物の留出量がモノヒドロキシ化合物の全理論生成量の50%以上の場合には、
a)温度110℃以上130℃未満では圧力6kPa〜0.01kPa、
b)温度130℃以上150℃未満では圧力8kPa〜0.01kPa
c)温度150℃以上170℃未満では圧力12kPa〜0.01kPa
d)温度170℃以上190℃未満では圧力16kPa〜0.01kPa
である、[1]から[9]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0027】
[11] 前記式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物が、下記式(D)で表されるジヒドロキシ化合物である、[2]から[10]のいずれか1に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0028】
【化4】

【0029】
[12] 前記ジヒドロキシ化合物が、脂肪族ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物を含む、[1]から[11]のいずれか1に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0030】
[13] 得られるポリカーボネートポリオールの数平均分子量が、250以上5000以下である、[1]から[12]のいずれか1に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0031】
[14] 得られるポリカーボネートポリオールの、JIS−K0071−1(1998)に準拠して測定したハーゼン色数が、100以下である、[1]から[13]のいずれか1に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0032】
[15] 得られるポリカーボネートポリオールの、塩化メチレンで50%濃度に希釈した場合の濁度が、1.0ppm以下である、[1]から[14]のいずれか1に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【0033】
[16] [1]から[15]のいずれかに記載のポリカーボネートポリオールの製造方法によって得られるポリカーボネートポリオールを用いて得られるポリウレタン。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ポリカーボネートポリオールを効率よく、且つ低い着色で製造することが可能となり、本発明により製造されたポリカーボネートポリオールを用いたポリウレタンは、従来知られた製造方法により得られたポリカーボネートポリオールを用いたポリウレタンと比較して、着色が少なく色相の良好なものとなり、各種塗料や、コーティング剤、接着剤等の物理的な外因に対して耐久性が求められる用途に適しており、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書において“質量%”と“重量%”、“質量ppm”と“重量ppm”とは、それぞれ同義である。
【0036】
本発明は、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを、触媒の存在下でエステル交換反応により重縮合反応するポリカーボネートポリオールの製造方法に係るものである。当該ポリカーボネートポリオールは、下記式(A)で表される繰り返し単位(以下「構造(A)」と称す場合がある)を有し、且つ水酸基価が10mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であって、当該製造方法では、エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物を留出する反応器の少なくとも1つが、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段および還流冷却器を具備した内容積20L以上の反応器を用い、該熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、且つ全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して15重量%以下であるようにする。なお、本発明に係る重縮合反応は、好ましくは複数の反応器を用いた段階で行われる。
【0037】
【化5】

【0038】
(前記式(A)において、Xはヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【0039】
[本発明の特徴的な構成について]
本発明においては、副生するモノヒドロキシ化合物を留出する反応器の少なくとも1つとして、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段および還流冷却器を具備した内容積20L以上の反応器を用いる。そして該熱媒体の温度と反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、且つ全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して15重量%以下であるようにする。当該反応器の内容積は、好ましくは30L以上である。本発明では、反応器の内容積が大きくなるほど本発明の効果が大きくなる。
【0040】
本発明の方法において、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物は、後述する触媒の存在下で重縮合反応させるが、なかでも好ましくは複数の反応器を用いて多段階でエステル交換反応により重縮合(単に重合という場合もある)させる。この重合反応では、モノヒドロキシ化合物(例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを使用した場合にはフェノール)がその副生物として生じる。そこで、副生したモノヒドロキシ化合物は、系外に留去させながら重合を行うが、重合初期の段階においては、単位時間当たりのモノヒドロキシ化合物の副生量が多く、多くの蒸発潜熱を奪うため、本発明においては、反応器(以下「特定反応器」と称す場合がある)の少なくとも1つを、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段を具備した内容積20L以上の反応器とし、導入される熱媒体の温度は反応器中の反応液の温度(以下、「内温」と称する場合がある)より高く、即ちその温度差を、少なくとも5℃以上(熱媒体温度≧(内温+5℃))とし、且つ全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して15重量%以下であるようにする。
【0041】
熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段としては、反応器の周囲(全周囲または部分的に)に設けたジャケット形式(以下、単に熱媒体ジャケットと呼ぶことがある)や、反応器の内部に内部コイルを設置する形式や、反応器の外部に設けた熱交換器の形式などが挙げられるが、熱媒体ジャケットが好ましい。熱媒体ジャケットを用いる場合、そのジャケット内の熱媒体の温度を過度に高くしないために、反応器の内部にも内部コイルを設置し、反応器の内部からも熱を与えて、加熱伝面積を増やすことは有効である。
【0042】
熱媒体の温度と反応液の温度差が5℃未満では、反応器の熱収支が悪化し、反応液の温度を所定の温度に出来ない場合がある。特に反応器の大きさが大きくなると、例えば加熱手段が熱媒体ジャケットである場合には、反応器の内容積に対する熱媒体ジャケットの伝熱面積が低下する傾向にあるため、熱媒体の温度と反応液の温度差は大きくするのが望ましく、好ましくは10℃以上、特に好ましくは15℃以上とするのが好ましい。
【0043】
逆に、熱媒体の温度と反応液の温度差が大きくなりすぎると、原料モノマーの留出量が多くなるだけではなく、内容物の熱劣化も激しくなるため、好ましくは、80℃以下、より好ましくは40℃以下、特に好ましくは30℃以下である。
導入される熱媒体の温度は、達成したい反応液の温度によって、適宜決めればよいが、熱媒体の温度が高くなりすぎると、原料モノマーの留出量が多くなりすぎるため、最高温度が好ましくは240℃未満、より好ましくは230℃未満、さらに好ましくは220℃未満、特に好ましくは215℃未満、最も好ましくは210℃未満である。
【0044】
熱媒体の温度を反応液の温度より5℃以上高くするとは、その1つの反応器における反応時間内において、常に5℃以上高くしてもよいし、モノヒドロキシ化合物の留出が顕著な時間・期間のみ行ってもよい。一般的に、連続反応では前者、バッチ反応では後者である。
尚、本発明において、熱媒体の温度とは、加熱手段に導入する前の温度、例えば加熱手段が熱媒体ジャケットである場合には、反応器の周囲(全周囲または部分的に)に設けられた熱媒体ジャケットに導入する前の熱媒体の温度をさす。また、本発明において、反応液の温度とは、熱伝対などの測定機器で測定される反応液の温度をいう。
【0045】
本発明における重合反応によって副生するモノヒドロキシ化合物の留出量は、理論留出量の20%以上、特に50%以上であることが好ましく、モノヒドロキシ化合物が留出する特定反応器の内温(最高温度)は、通常90〜220℃、好ましくは100〜210℃、更に好ましくは110〜200℃、特に好ましくは120℃〜190℃、最も好ましくは130℃〜180℃である。内温が過度に高いと原料モノマーの留出量が多くなるだけではなく、熱劣化も激しくなり、過度に低いと反応速度が低下し、生産の効率を低下させる。また、理論留出量に対するモノヒドロキシ化合物の留出量の割合が低いと反応が完結せず所望のポリカーボネートポリオールが得られない可能性がある。
ここで、本発明における、モノヒドロキシ化合物の理論留出量とは、原料として使用する炭酸ジエステルの2倍のモル数である。理論留出量の20%以上留出する反応器とは、バッチ式反応の場合には、原料として当初仕込んだ炭酸ジエステル化合物の量に対する、1つの反応器から留出するモノヒドロキシ化合物のトータルの量から算出して、理論留出量の20%以上となっている反応器を意味し、連続反応の場合には、原料として供給する炭酸ジエステルの単位時間当たりの量に対する、1つの反応器から留出する単位時間当たりのモノヒドロキシ化合物の量から算出して、理論留出量の20%以上となっている反応器を意味する。
【0046】
また、前記エステル交換反応における圧力は、
1)炭酸ジエステルから副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が、モノヒドロキシ化合物の全理論生成量の50%未満の場合には、
a)温度110℃以上130℃未満では圧力10kPa〜4kPa、
b)温度130℃以上150℃未満では圧力14kPa〜6kPa、
c)温度150℃以上170℃未満では圧力20kPa〜8kPa、
d)温度170℃以上190℃未満では圧力30kPa〜10kPa、
であって、
2)炭酸ジエステルから副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が、モノヒドロキシ化合物の全理論生成量の50%以上の場合には、
a)温度110℃以上130℃未満では圧力6kPa〜0.01kPa、
b)温度130℃以上150℃未満では圧力8kPa〜0.01kPa
c)温度150℃以上170℃未満では圧力12kPa〜0.01kPa
d)温度170℃以上190℃未満では圧力16kPa〜0.01kPa
であることが好ましい。
【0047】
本発明においては、留出するモノマーの量を抑制するために、特定反応器に還流冷却器を具備させることを特徴とする。
還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において、45〜180℃であるのが好ましく、より好ましくは、80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下する傾向があり、逆に低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
【0048】
還流冷却器は、留出するモノマーの量を抑制するために、反応器に具備させることが好ましい。複数の反応器を使用して多段階で重縮合反応させる場合は、使用する反応器のうち複数の反応器に具備させることが好ましい。
本発明の方法において、全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して15重量%以下であることが肝要である。
ここで全反応段階で留出するモノマーの合計量(以下、「留出するモノマー量」と称する場合がある)とは、エステル交換反応の開始から終了までに留出したジヒドロキシ化合物の合計量であり、またジヒドロキシ化合物が炭酸ジエステルと反応して生成する物質のうち、ジヒドロキシ化合物成分(ジヒドロキシ化合物の水酸基部分の水素を除く)を含む物質に関しては、その物質の重量をジヒドロキシ化合物成分の重量に換算してジヒドロキシ化合物の重量に含めた量のことである。
【0049】
留出するモノマー量が原料モノマーの総量に対して15重量%を超えると、原料原単位の悪化を招くだけではなく、品質に影響を及ぼす末端基濃度を所定の値に制御することが困難になるという問題や、ジヒドロキシ化合物を複数使用する場合には、使用するジヒドロキシ化合物のモル比率が重合中に変化し、所望の分子量や組成のポリカーボネートポリオールが得られない可能性がある。
【0050】
留出するモノマー量は、原料モノマー総量に対して、通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
留出するモノマー量は、少ない方が原料原単位の改善が大きい一方で、留出するモノマー量の低減には内温や加熱媒体温度を過度に低くしたり、圧力を過度に高くしたり、触媒量を増やしたり、重合時間を長くしたりする必要があり、ポリカーボネートポリオールの生産効率低下や、品質の悪化を招くため、その下限は通常0.2重量%、好ましくは0.4重量%、より好ましくは0.6重量%、さらに好ましくは1重量%、特に好ましくは2重量%である。
【0051】
本発明で規定した留出するモノマー量は、前記のように触媒の種類と量、反応液の温度、加熱媒体の温度、反応圧力、滞留時間、還流条件等を適宜選択することによって達成することができる。
例えば、重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させるが、各分子量段階での熱媒体の温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりする可能性がある。
【0052】
重合速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、最終的なポリカーボネートポリオールの色相や熱安定性、耐光性等を損なわないようにするためには、後述する触媒の種類と量の選定も重要である。
本発明の方法において、ポリカーボネートポリオールの製造は、触媒を用いて、好ましくは複数の反応器を用いて多段階で重合させることが好ましい。重合を複数の反応器で実施することが好ましい理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
【0053】
本発明の方法で使用される反応器の数に特に制限は無いが、少なくとも2つ以上であればよく、生産効率などの観点からは、3つ以上、好ましくは3〜5つ、特に好ましくは、4つである。
本発明において、反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせ、段階的にあるいは連続的に温度・圧力を変えていくなどしてもよい。
【0054】
即ち、例えば、反応器を2つ用い、それぞれで反応条件を変えて2段階の重合とするケースや、反応器を2つ用い、1つ目の反応器で条件の異なる2つの反応段階を持たせ、かつ、2つ目の反応器で1つの反応条件を持たせて、3段階とするケースなどが含まれる。
本発明において、後述する触媒は原料調製槽、原料貯槽に添加することもできるし、反応器に直接添加することもできるが、供給の安定性、重合の制御の観点からは、反応器に供給される前の原料ラインの途中に触媒供給ラインを設置し、好ましくは水溶液で供給する。
【0055】
エステル交換反応の温度は、低すぎると生産性の低下や製品への熱履歴の増大を招き、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネートポリオールの分解や着色を助長する可能性がある。
【0056】
内容積20L以上である特定反応器の内温については、上述した通り、90〜220℃、好ましくは100〜210℃、更に好ましくは110〜200℃、特に好ましくは120〜190℃、最も好ましくは130〜180℃であるが、その他の条件としては、通常110〜1kPa、好ましくは70〜5kPa、更に好ましくは30〜10kPa(絶対圧力)の圧力下、通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間で、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。
【0057】
第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を通常1500Pa以下、好ましくは1000Pa以下にして、内温の最高温度120〜220℃、好ましくは130〜200℃で行う。
特にポリカーボネートポリオールの着色や熱劣化を抑制し、留出するモノマー量を原料モノマーの総量に対して10重量%以下とするためには、全反応段階における内温の最高温度が、220℃未満、特に150〜190℃であることが好ましい。本発明の方法において、副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジエステルやビスフェノール化合物等の原料として再利用することが好ましい。
【0058】
[ポリカーボネートポリオールの製造原料化合物]
<ジヒドロキシ化合物>
本発明の製造方法に用いるジヒドロキシ化合物は、炭酸ジエステルと重合することにより前記式(A)で表される構造となるものであれば如何なるものも使用することができる。前記式(A)におけるXは、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の2価の基であり、直鎖または分岐鎖の鎖状基および環状基のいずれの構造が含まれていてもよい。Xを構成する元素としての炭素数は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下であり、更に好ましくは6以下である。Xが有していてもよいヘテロ原子は、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子等であり、化学的な安定性から好ましくは酸素原子である。Xの具体例としては、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CHCH(CH)CH−が挙げられ、−CH−、−CHCH−がより好ましい。これらのジヒドロキシ化合物は、得られるポリカーボネートポリオールの要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
本発明のポリカーボネートポリオールの製造に用いる原料ジヒドロキシ化合物の具体例については以下に詳述するが、本発明で用いる原料ジヒドロキシ化合物は、大気圧での沸点が300℃以下であるジヒドロキシ化合物を含むことが好ましい。これは、重合反応終了後、後述する精製段階にて一部残存するジヒドロキシ化合物を薄膜蒸留等により除去するが、沸点が高過ぎる場合はポリカーボネートポリオール中の残存量が多くなり、例えばこのポリカーボネートポリオールを用いてポリウレタンを製造した際の物性が、低下する可能性があることによる。そのため、全原料ジヒドロキシ化合物中の沸点が300℃以下のジヒドロキシ化合物の割合は15重量%以上であることが好ましく、特に50〜100重量%であることが好ましい。また、この沸点が300℃以下のジヒドロキシ化合物の沸点は、特に280℃以下、とりわけ260℃以下であることが好ましい。ただし、このジヒドロキシ化合物の沸点は通常190℃以上である。
【0060】
本発明の製造方法で用いるジヒドロキシ化合物はまた、下記式(B)で表される構造(以下「構造(B)」と称す場合がある。)を有するジヒドロキシ化合物(以下「ジヒドロキシ化合物(B)」と称す場合がある。)を含有することが好ましい。
【0061】
【化6】

【0062】
(前記式(B)において、前記式(B)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
本発明の製造方法で用いるジヒドロキシ化合物が、ジヒドロキシ化合物(B)を含有する場合、本発明の製造方法で用いるジヒドロキシ化合物には、ジヒドロキシ化合物(A)ともジヒドロキシ化合物(B)とも解される化合物が含まれうる。
本発明のポリカーボネートポリオールが、このようなジヒドロキシ化合物を用いて製造される場合、当該ジヒドロキシ化合物を任意にジヒドロキシ化合物(A)またはジヒドロキシ化合物(B)と位置づければよい。ただし、特定のジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ化合物(A)と位置づけた場合、当該ジヒドロキシ化合物を同時にジヒドロキシ化合物(B)と位置づけることはなく、逆の場合もまた同様である。
【0063】
ジヒドロキシ化合物(B)としてより具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、環状エーテル構造を有する化合物が挙げられる。また、環状エーテル構造を有する化合物のなかでも、環状エーテル構造を複数有する化合物がより好ましく、環状エーテル構造を2つ有する化合物が更に好ましい。環状エーテル構造を有する化合物としては、特に下記式(D)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコールが好ましい。これらは得られるポリカーボネートポリオールの要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
【化7】

【0065】
これらのジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることがポリカーボネートポリオールから得られるポリウレタンの耐光性の観点から好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビド(以下、ISBと略記することがある。)が、入手および製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
【0066】
一方で、式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物は、不安定な場合があり、保存や使用する際には注意を要する。例えば、イソソルビドは酸素が存在すると徐々に酸化されるので、保管や製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが肝要である。また、水分が混入しないようにすることも必要である。イソソルビドが酸化されると、ギ酸をはじめとする分解物が発生する。例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いてポリカーボネートポリオールを製造すると、得られるポリカーボネートポリオールに着色が発生したり、物性が著しく劣化する場合がある。また重合反応に影響を与え、目的の分子量の重合体が得られない場合がある。
【0067】
これらの対策としては公知の文献に記載の方法を任意に採用することができる。例えば、日本国特開2009−161745号公報には、ポリカーボネートを製造する際に使用するイソソルビド等の原料ジヒドロキシ化合物中に含まれる好ましいギ酸の量が規定されており、規定量以下のジヒドロキシ化合物を用いると物性の良いポリカーボネートが得られるとしている。
【0068】
本発明に係るポリカーボネートポリオールを製造する場合にも同様の事が言え、使用する式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に含まれるギ酸の量は、特に限定はされないが上限は通常20ppm、好ましくは10ppm、さらに好ましくは5ppmであり、下限は通常は0.1ppm、好ましくは1ppmである。
また、これら式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物は、酸化的に劣化するとギ酸等の酸性物質を生成する場合があることから、pHが下がる傾向がある。従って式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物の評価にpHを指標とすることもできる。pHは例えば、国際公開第2009/057609号に記載の方法、すなわちジヒドロキシ化合物の40%水溶液としてpHメーターで測定する方法が採用できる。
【0069】
本発明に係るポリカーボネートポリオールを製造するために必要な式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物の40%水溶液のpHの下限は、特に限定はされないが、通常3であり、好ましくはpH4、さらに好ましくはpH5であり、上限はpH11、好ましくはpH10である。
式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物が酸化劣化すると、過酸化物を生じる。この過酸化物は、ポリカーボネートポリオールを製造する際や、ウレタン化反応の際の着色の原因になることがあるので、より少ない方が好ましい。式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物中の過酸化物の量は、通常は式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物重量に対して10ppm以下、好ましくは5ppm以下、より好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下である。下限は特に限定されないが、通常0.01ppm以上である。
【0070】
式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物中に、Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005 における長周期型周期表(以下、「周期表」と略記する場合がある。)の1族金属および/または周期表の2族金属化合物が含有されると、ポリカーボネート化反応の際、さらには得られたポリカーボネートポリオールをポリウレタン化する際の反応速度に影響を与えてしまう場合がある。そのため、式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物中にア周期表1族金属および/または周期表2族金属化合物の含有量は、特に限定はされないが、少ないほうが好ましく、通常、上限は、式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物重量に対しての金属の重量割合として10ppm、好ましくは5ppm、より好ましくは3ppm、さらに好ましくは1ppmであり、特に好ましくは周期表1族金属および/または周期表2族金属化合物を全く含まないものである。
【0071】
式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物中に塩化物イオンや臭化物イオン等のハロゲン成分が含有されると、ポリカーボネート化反応の際、さらには得られたポリカーボネートポリオールをポリウレタン化する際の反応に影響を与えたり、着色の原因となる場合があるため、その含有量は少ないほうが好ましい。通常、式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物中のハロゲン成分の含有量の上限は、式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物の重量に対してハロゲン量として10ppm、好ましくは5ppm、より好ましくは1ppmである。
【0072】
酸化等により劣化したり、あるいは前記不純物を含む式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物は、例えば、蒸留等により精製することができるため、重合に使用する前に蒸留して前記した範囲となったものを使用することが可能である。蒸留後再び酸化劣化するのを防ぐためには安定剤を添加することも有効である。具体的な安定剤としては通常一般に有機化合物の酸化防止剤として使用されているものであれば制限なく使用することが可能であり、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート(住友化学製、商品名:Sumilizer(登録商標)GS)等のフェノール系安定化剤、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(住友化学製、商品名Sumilizer(登録商標)GP)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系安定化剤が例として挙げられる。
【0073】
また、本発明の製造方法で用いるジヒドロキシ化合物は、下記式(C)で表されるジヒドロキシ化合物(以下「ジヒドロキシ化合物(C)」と称す場合がある)を含有することが好ましい。
【0074】
【化8】

【0075】
(前記式(C)において、mは0または1、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜15の、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれる基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはハロゲン原子またはこれらを含む置換基を有していてよい。Yはヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【0076】
上記式(C)において、Yは、特に本発明の効果を得る上では制限はなく、鎖状基、環状基いずれの構造であってもよいが、これらの基を構成する元素としての炭素数は1以上20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であり、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子が入っていてもよい。Yは、第4級炭素原子を含まない炭素数1〜20、好ましくは1〜15の2価の基、または、Yにおいて少なくとも酸素に結合する炭素原子および該炭素原子に結合する炭素原子が第4級炭素原子ではない炭素数5〜20、好ましくは5〜15の2価の基であることが好ましい。Yの具体例としては、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CHCH(CH)CH−が挙げられ、−CH−、−CHCH−がより好ましい。
【0077】
およびRは互いに独立に異なる基であっても、同じ基であってもよい。これら置換基の炭素数は、本発明の効果がもたらされるために1以上である必要がある。ただし、炭素数が多すぎると重合反応性が低下するなどの問題が生ずるので15以下、好ましくは10以下である。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基等がより好ましい。
【0078】
前記アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、トリル基、o−キシリル基等が挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えばビニル基(エチレニル)、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられ、特にビニル基、プロペニル基等がより好ましい。
前記アルキニル基としては、例えばエチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等が挙げられ、エチニル基、プロピニル基等がより好ましい。
【0079】
前記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基が挙げられ、中でもメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基等がより好ましい。
これらのアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基にさらに置換していても良い置環基としては、例えばニトリル基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子等が挙げられ、ニトロ基、ハロゲン原子等がより好ましい。ハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子が挙げられる。
【0080】
本発明の製造方法に用いるジヒドロキシ化合物(C)としてより具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール(以下、16HDと略記することがある。)、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖炭化水素の末端ジヒドロキシ化合物類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のエーテル基を有する鎖状のジヒドロキシ化合物類;ビスヒドロキシエチルチオエーテル等のチオエーテルジオール類;2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(以下、「ネオペンチルグリコール」と称し、「NPG」と略記する場合がある。)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ペンチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,9,9−テトラメチル−1,10−デカンジオール等の分岐鎖を有するジヒドロキシ化合物類; 1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2,2’−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン)、ノルボルナン−2,3−ジメタノール等の脂環式構造を有するジヒドロキシ化合物類;2,5−ビス(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン、3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(cas番号:1455−42−1)、2−(5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチルプロパン−1−オール(cas番号:59802−10−7)等のヘテロ原子を環内にもつ環状基を含むジヒドロキシ化合物類;ジエタノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミン等の含窒素ジヒドロキシ化合物類;ビス(ヒドロキシエチル)スルフィド等の含硫黄ジヒドロキシ化合物類が、あげられる。
【0081】
これらのジヒドロキシ化合物のうち、工業的な入手性、得られるポリカーボネートポリオールおよびポリウレタンの物性が優れることからより好ましいジヒドロキシ化合物としては、直鎖炭化水素の末端ジヒドロキシ化合物としてはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール等が、エーテル基を有する鎖状のジヒドロキシ化合物としてはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が、分岐鎖を有するジヒドロキシ化合物としては、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール等が、脂環式構造を有するジヒドロキシ化合物としては1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノール、ノルボルナン−2,3−ジメタノール等が、ヘテロ原子を環内にもつ環状基を含むジヒドロキシ化合物としては3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(cas番号:1455−42−1)、2−(5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチルプロパン−1−オール(cas番号:59802−10−7)等が挙げられる。特に、これらのジヒドロキシ化合物のうち、直鎖炭化水素の末端ジヒドロキシ化合物や分岐鎖を有するジヒドロキシ化合物類等の脂肪族ジヒドロキシ化合物を用いることにより、液状で取り扱いやすく、当該ポリカーボネートポリオールを原料としてポリウレタンを製造した際に、ポリウレタンの柔軟性および弾性回復性を向上させることができるという効果が得られ、好ましい。これらのジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
<炭酸ジエステル>
使用可能な炭酸ジエステルとしては、本発明の効果を失わない限り限定されないが、アルキルカーボネート、アリールカーボネート、またはアルキレンカーボネートが挙げられる。このうちアリールカーボネートを使用すると速やかに反応が進行するという利点がある。しかしその一方で、アリールカーボネートを原料とすると沸点の高いフェノール類が副生するが、ポリカーボネートポリオール生成物中のフェノール類の残留量は、より少ない方が好ましい。このフェノール類は一官能性化合物なので、ポリウレタン化の際の重合阻害因子となり得る上、刺激性物質でもあるためである。
【0083】
本発明に係るポリカーボネートポリオールの製造に用いることができる炭酸ジエステルのジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネートの具体例は以下の通りである。
ジアルキルカーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、エチルイソブチルカーボネート等が挙げられ、好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートである。
【0084】
ジアリールカーボネートの例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジm−クレジルカーボネート等が挙げられ、好ましくはジフェニルカーボネートである。
さらにアルキレンカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、1,3−ペンチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート、1,5−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネート、2,4−ペンチレンカーボネート、ネオペンチルカーボネート等が挙げられ、好ましくはエチレンカーボネートである。
【0085】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でもジアリールカーボネートが反応性に富み、工業的に製造する上で効率的であることから好ましく、中でも工業原料として容易にかつ安価に入手可能なジフェニルカーボネートがより好ましい。
【0086】
[ポリカーボネートポリオールの物性]
<分子量・分子量分布>
本発明のポリカーボネートポリオールの製造方法で製造されるポリカーボネートポリオール(以下、「本発明のポリカーボネートポリオール」と称す場合がある)の数平均分子量(Mn)の下限は通常250であり、好ましくは500、さらに好ましくは700、特に好ましくは1,000である。一方、上限は通常5,000であり、好ましくは4,000、さらに好ましくは3,000である。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が前記下限未満では、ポリウレタンとした際に充分な硬度が得られない。一方前記上限超過では粘度が上がり、ポリウレタン化の際のハンドリングに支障がでてくる。
【0087】
本発明に係るポリカーボネートポリオールの分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、下限は通常1.5であり、好ましくは1.7であり、さらに好ましくは2.0である。上限は通常3.5であり、好ましくは3.0である。
分子量分布が前記範囲を超える場合、このポリカーボネートポリオールを用いて製造したポリウレタンの物性が、低温で硬くなる、伸びが悪くなる等、悪化する傾向があり、分子量分布が前記範囲未満のポリカーボネートポリオールを製造しようとすると、オリゴマーを除く等の高度な精製操作が必要になる場合がある。
【0088】
ここでMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量であり、通常ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定で求めることができる。Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定が困難な場合には、ポリオールのOH価による算出も可能である。また、H−NMRにて測定することも可能である。
・GPCによる数平均分子量の測定
GPC(東ソー社製「HLC−8120GPC」)を用いて、溶媒としてテトラヒドロフラン、標準サンプルとしてポリスチレン、カラムとしてTSK gel superH1000+H2000+H3000を使用して、送液速度0.5cm/分、カラムオーブン温度40℃にて、数平均分子量を測定する。
【0089】
・OH価によるポリオールの数平均分子量の算出
JIS K1557−1(2007)に記載のアセチル化法により算出する。
【0090】
<末端アルキルオキシ基またはアリールオキシ基の割合・水酸基価>
本発明に係るポリカーボネートポリオールは基本的にポリマーの末端構造は水酸基である。しかしながら、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応で得られるポリカーボネートポリオール生成物中には、不純物として一部ポリマー末端が水酸基ではない構造のものが存在する場合がある。その構造の具体例としては、分子鎖末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基のものであり、多くは炭酸ジエステル由来の構造である。アルキルオキシ基、アリールオキシ基の割合は、通常H−NMRにより算出する。
【0091】
例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを使用した場合はアリールオキシ基としてフェノキシ基(PhO−)、ジメチルカーボネートを使用した場合はアルキルオキシ基としてメトキシ基(MeO−)、ジエチルカーボネートを使用した場合はエトキシ基(EtO−)、エチレンカーボネートを使用した場合はヒドロキシエトキシ基(HOCHCHO−)が末端基として残存する場合がある(ここで、Phはフェニル基を表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。)。
【0092】
本発明において、ポリカーボネートポリオール生成物中に含まれる分子鎖末端がアルキルオキシ基ないしアリールオキシ基となっている構造の割合は、通常、その末端基の数として全末端数の5モル%以下、好ましくは3モル%以下、より好ましくは1モル%以下である。この分子鎖の末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基である数の割合の下限は特に制限はなく、通常は0.01モル%、好ましくは0.001モル%、最も好ましくは0モル%である。アルキルオキシないしアリールオキシ末端基の割合が大きいとポリウレタン化反応を行なう際に重合度が上がらない等の問題が生じる場合がある。
【0093】
本発明に係るポリカーボネートポリオールは、上述のように分子鎖の末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基である数の割合が通常5%以下で、分子鎖の両末端基は基本的には水酸基であり、ポリウレタン化反応の際はこの水酸基がイソシアネートと反応できる構造となっている。
本発明に係るポリカーボネートポリオールの水酸基価は、特に限定されないが下限は通常10mg−KOH/g、好ましくは20mg−KOH/g、より好ましくは35mg−KOH/gである。また、上限は通常400mg−KOH/g、好ましくは300mg−KOH/g、より好ましくは200mg−KOH/gである。水酸基価が前記下限未満では、粘度が高くなりすぎポリウレタン化の際のハンドリングが困難となる場合があり、前記上限超過ではポリウレタンとした時に強度や硬度が不足する場合がある。
【0094】
<エーテル構造>
本発明に係るポリカーボネートポリオールは、カーボネート基によりジヒドロキシ化合物が重合した構造が基本となっている。しかしながら、製造方法によっては、ジヒドロキシ化合物中のエーテル構造以外に、ジヒドロキシ化合物の脱水反応によりエーテル構造となったものが混入する場合があり、その存在量が多くなると耐候性や耐熱性が低下することがあるので、エーテル構造の割合が過度に多くならないように製造することが望ましい。
【0095】
ポリカーボネートポリオール中の構造(A)以外のエーテル構造を低減して、耐候性、耐熱性等の特性を確保する点において、本発明に係るポリカーボネートポリオールの分子鎖中に含まれる構造(A)以外のエーテル結合とカーボネート結合の比は、特に限定されないが、通常モル比で2/98以下、好ましくは1/99以下、より好ましくは0.5/99.5以下である。
【0096】
また、ポリカーボネートポリオールの製造に用いたジヒドロキシ化合物(B)もエーテル結合を含有する場合、構造(A)および構造(B)以外のエーテル構造の割合が過度に多くならないように製造することが望ましい。その際、本発明に係るポリカーボネートポリオールの分子鎖中に含まれる構造(A)および構造(B)以外のエーテル結合とカーボネート結合の比は、特に限定されないが、通常モル比で2/98以下、好ましくは1/99以下、より好ましくは0.5/99.5以下である。
【0097】
<粘度・溶媒溶解性>
本発明に係るポリカーボネートポリオールは、室温付近で通常、液状からワックス状の固体という性状を呈しているが、加温することにより粘度を低下させることができ、ハンドリングしやすくなる。また、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系の溶媒、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒に溶解させることも可能で、移送や反応が行いやすくなる場合もある。
【0098】
本発明に係るポリカーボネートポリオールの性状は上述したように通常室温で液状〜ワックス状固体であり、温度によりその性状は異なる。例えば粘度で表すと、本発明に係るポリカーボネートポリオールの40℃における粘度の下限は好ましくは0.1Pa・s、より好ましくは1Pa・s、さらに好ましくは5Pa・sであり、上限は好ましくは10kPa・s、より好ましくは1.0kPa・s、さらに好ましくは500Pa・sである。
【0099】
<APHA値>
本発明に係るポリカーボネートポリオールの色は、得られるポリウレタンの色目に影響を与えない範囲が好ましく、着色の程度をハーゼン色数(JIS K0071−1(1998)に準拠)で表した場合の値(以下「APHA値」と表記する。)は特に限定されないが、100以下が好ましく、より好ましくは80以下、さらに好ましくは50以下である。
【0100】
<濁度>
本発明のポリカーボネートポリオールの濁度は、三菱化学株式会社製積分球式濁度計PT−200にて、10mmのセルにポリカーボネートポリオールの50%塩化メチレン溶液を入れ、予め装置に設定されているポリスチレン検量線を使用して測定された値として、2.0ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0ppm以下、特に好ましくは0.5ppm以下である。濁度が2.0ppmより大きいと、ポリカーボネートポリオールを原料として得られるポリウレタンの透明性悪化を招いて商品価値を低下させたり、機械的物性を低下させたりすることがある。濁りは主に、触媒成分の失活・析出、溶解度の低い環状オリゴマー等の生成が原因と考えられ、濁度を低くするためには、ポリカーボネートポリオール製造時の触媒の種類や量の選択、熱履歴、重合中および重合終了後のモノヒドロキシ化合物の濃度や未反応モノマーの濃度を総合的に制御する必要がある。例えば、触媒自体のポリカーボネートジオールへの溶解度が低いと触媒の析出が起こり易くなり、濃度が高いと析出を助長する。一方、溶解度に劣る環状オリゴマーの生成を抑制するためには、モノマーであるジヒドロキシ化合物の選択や組合せも重要である。例えば、ホモポリマーの場合、環状オリゴマーが生成しやすい傾向にあるが、共重合にすることにより、安定な環状構造を取り難くなり、濁度が下がる傾向にある。また、ポリカーボネートポリオール製造時の温度が高いと、熱力学的に環状オリゴマーが生成し易くなるため、重合温度を低下させることは有効である。但し、低下させすぎると生産性に支障が出たり、過度に時間がかかって、色調の悪化を招いたり、濁度の悪化を招いたりするので好ましくない。
【0101】
<不純物含有量>
・フェノール類
本発明に係るポリカーボネートポリオール中に含まれるフェノール類の含有量は、特に限定されないが、少ないほうが好ましく、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下、さらに好ましくは0.001重量%以下である。フェノール類は一官能性化合物なので、ポリウレタン化の際の重合阻害因子となる可能性がある上、刺激性物質であるためである。
【0102】
・炭酸ジエステル
本発明に係るポリカーボネートポリオール生成物中には、製造時の原料として使用した炭酸ジエステルが残存することがあるが、本発明に係るポリカーボネートポリオール中の炭酸ジエステルの残存量は限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、通常上限が5重量%、好ましくは3重量%、さらに好ましくは1重量%である。ポリカーボネートポリオールの炭酸ジエステル含有量が多すぎるとポリウレタン化の際の反応を阻害する場合がある。一方、その下限は特に制限はなく0.1重量%、好ましくは0.01重量%、さらに好ましくは0重量%である。
【0103】
・ジヒドロキシ化合物
本発明に係るポリカーボネートポリオールには、製造時に使用したジヒドロキシ化合物が残存する場合がある。本発明に係るポリカーボネートポリオール中のジヒドロキシ化合物の残存量は、限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、通常10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは3重量%以下であり、さらに好ましくは1重量%以下であり、好ましくは0.1重量%以下であり、より好ましくは0.05重量%以下である。またジヒドロキシ化合物としてイソソルビド、イソマンニド、およびイソイディッドから選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物(以下、「イソソルビド類」と略記することがある)を用いた場合には、ポリカーボネートポリオール中のイソソルビド類の残存量は少ない方が好ましく、通常10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下であり、より好ましく3重量%以下であり、さらに好ましくは1重量%以下であり、特に好ましくは0.1重量%以下であり、最も好ましくは0.01重量%以下である。ポリカーボネートポリオール中のジヒドロキシ化合物の残存量が多いと、ポリウレタンとした際のソフトセグメント部位の分子長が不足し、望む物性が得られない場合がある。
【0104】
なお、ポリカーボネートポリオールの原料であったジヒドロキシ化合物はポリカーボネートポリオール生成物のNMR測定または生成物に含まれる未反応ジヒドロキシ化合物のNMR測定やGCおよびLC測定で特定することができ、炭酸ジエステルは未反応物が生成物に残っている場合はNMR測定やGCおよびLC測定から特定することができる。また炭酸ジエステルが反応した際に副生するアルコール成分等の不純物を生成物のNMR測定やGCおよびLC測定で特定することから原料であった炭酸ジエステルの構造を推定することもできる。
【0105】
・エステル交換触媒
本発明のポリカーボネートポリオールを製造する場合には、後述するように、重合を促進するために必要に応じてエステル交換触媒を用いることが可能である。その場合、得られたポリカーボネートポリオール中にその触媒が残存することがあるが、過度に多くの触媒が残存するとポリウレタン化反応の際に反応の制御が困難となり、ポリウレタン化反応を想定以上に促進してゲル化してしまい、均一なポリウレタンが得られない場合があり、残存しない方が好ましい。
【0106】
ポリカーボネートポリオール中に残存する触媒量の上限は、特に限定されないが、このポリカーボネートポリオールから均質なポリウレタンを得る観点から、触媒金属換算の含有量として通常100重量ppmであり、好ましくは50重量ppm、より好ましくは30重量ppmであり、特に好ましくは10重量ppmである。残存する金属の種類としては、後述のエステル交換能を有する触媒活性成分の金属が挙げられる。
【0107】
また、ポリカーボネートポリオール中に残存する触媒量の下限は、特に限定されないが、触媒金属換算の含有量として通常0.01重量ppm、好ましくは0.1重量ppm、より好ましくは1重量ppmであり、特に好ましくは5重量ppmである。通常、ポリカーボネートポリオールを製造する際に使用した触媒を、製造後に除去することが難しく、残存する触媒量を後述する使用量の下限値未満にすることが困難な場合が多い。
【0108】
ポリカーボネートポリオール中における前記触媒の量は製造時に用いる触媒の使用量、または生成物の濾過等による触媒単離や水等の溶媒を用いた触媒抽出等によって調整することができる。
・環状カーボネート
ポリカーボネートポリオール生成物中には、製造の際に副生した環状のカーボネートが含まれることがある。例えばジヒドロキシ化合物にネオペンチルグリコール等の、1,3−プロパンジオール骨格を有するジヒドロキシ化合物から選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物(以下、「1.3−プロパンジオール類」と略記することがある。)を用いた場合、5.5−ジアルキル−1,3−ジオキサン−2−オンもしくはさらにこれらが2分子ないしそれ以上で環状カーボネートとなったもの等が環状化合物として生成してポリカーボネートポリオール中に含まれる場合がある。これらの環状化合物は、ウレタン化反応においてイソシアネート基と反応しなかったり、加熱時に副反応をもたらす可能性があり、ポリウレタン中に可塑剤の如く残存して最終製品等に不具合をもたらす可能性のある好ましくない不純物であるので、製造の段階でなるべく除去しておくのが望ましい。
【0109】
ポリカーボネートポリオール生成物中に含まれるこれら環状化合物の含有量は、5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。
【0110】
<ウレタン化反応速度>
本発明に係るポリカーボネートポリオールのウレタン化反応における反応速度は、前記ポリカーボネートポリオールをN,N−ジメチルホルムアミドの溶液とし、ポリカーボネートポリオールのモル等量に対して0.98倍のジフェニルメタンジイソシアネートを添加して、動力源としてモーターを用いて所定時間100rpmで攪拌した後の前記モーターの負荷値[V]として評価することができる。ジフェニルメタンジイソシアネート添加後30分後のモーター負荷値の下限は通常0.10V、好ましくは0.13V、より好ましくは0.20V、上限は通常2.00V、好ましくは1.95V、より好ましくは1.90Vである。また、ジフェニルメタンジイソシアネート添加後60分後のモーター負荷値の下限は通常0.10V、好ましくは0.13V、より好ましくは0.20V、上限は通常2.00V、好ましくは1.95V、より好ましくは1.90Vである。前記下限未満の場合には、もはや重合が進行しない傾向があり、前記上限超過の場合には、非常に高い分子量となってしまうかゲル化してしまう傾向がある。
【0111】
また、同様に、モーター負荷値が0.7Vとなるまでの時間[分]の下限は通常8分、好ましくは10分、より好ましくは15分、上限は通常240分、好ましくは200分、より好ましくは120分である。また、モーター負荷値が1.0Vとなるまでの時間[分]の下限は通常2分、好ましくは5分、より好ましくは10分、上限は通常120分、好ましくは90分、より好ましくは60分である。前記下限未満の場合には、非常に高い分子量となってしまうかゲル化してしまう傾向があり、前記上限超過の場合には、もはや重合が進行しない傾向がある。
【0112】
なお、モーター負荷値[V]の測定は、ポリカーボネートポリオールのN,N−ジメチルホルムアミド溶液を100rpmで攪拌した際のモーター負荷値と、ジフェニルメタンジイソシアネート添加後所定時間100rpmで攪拌した後のモーター負荷値との差分から求めることができる。なお、モーターとしては10から600rpm程度の回転範囲を持ち、最大回転数600rpm程度での最大トルクが0.49N・m程度となり、そのモーター負荷値を0から5V程度で出力できるものを用い、反応容器としては容量500mLのセパラブルフラスコを用い、攪拌羽根としてイカリ型を2枚組み合わせた4枚羽根を用いて、窒素流通または窒素封入の条件で測定を行えば良い。
【0113】
[ポリカーボネートポリオールの製造方法]
本発明のポリカーボネートポリオールは、構造(A)を与えるジヒドロキシ化合物、好ましくは、イソソルビドに代表されるジヒドロキシ化合物(B)、及び/又はジヒドロキシ化合物(C)等のジヒドロキシ化合物と、前述の炭酸ジエステルとを、エステル交換触媒を用いてエステル交換反応させることにより製造することができる。
例えば、(i)イソソルビド、イソマンニド、およびイソイディッドから選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物、(ii)ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1〜15のジヒドロキシ化合物、および(iii)炭酸ジエステルを、エステル交換触媒存在下に反応させて製造することができる。
【0114】
以下にその製造方法について述べる。
<エステル交換触媒>
エステル交換触媒として利用できる金属は、一般にエステル交換能があるとされている金属であれば制限なく用いることができる。
触媒金属の例を挙げると、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の周期表1族金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族金属;チタン、ジルコニウム等の周期表4族金属;ハフニウム等の周期表5族金属;コバルト等の周期表9族金属;亜鉛等の周期表12族金属;アルミニウム等の周期表13族金属;ゲルマニウム、スズ、鉛等の周期表14族金属;アンチモン、ビスマス等の周期表15族金属;ランタン、セリウム、ユーロピウム、イッテルビウム等ランタナイド系金属等が挙げられる。これらのうち、エステル交換反応速度を高めるという観点から、周期表1族金属、周期表2族金属、周期表4族金属、周期表5族金属、周期表9族金属、周期表12金属、周期表13族金属、周期表14族金属が好ましく、周期表1族金属、周期表2族金属がより好ましく、周期表2族金属がさらに好ましい。周期表1族金属の中でも、リチウム、カリウム、ナトリウムが好ましく、リチウム、ナトリウムがより好ましく、ナトリウムがさらに好ましい。周期表2族金属の中でも、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましく、カルシウム、マグネシウムがより好ましく、マグネシウムがさらに好ましい。これらの金属は金属の単体として使用される場合と、水酸化物や塩等の金属化合物として使用される場合がある。塩として使用される場合の塩の例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物塩;酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等のカルボン酸塩;メタンスルホン酸やトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸塩;燐酸塩や燐酸水素塩、燐酸二水素塩等の燐含有の塩;アセチルアセトナート塩;等が挙げられる。触媒金属は、さらにメトキシドやエトキシドの様なアルコキシドとして用いることもできる。
【0115】
これらのうち、好ましくは、周期表1族金属、周期表2族金属、周期表4族金属、周期表5族金属、周期表9族金属、周期表12金属、周期表13族金属、周期表14族金属の酢酸塩や硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシドが用いられ、より好ましくは周期表1族金属または周期表2族金属の酢酸塩や炭酸塩、水酸化物が用いられ、さらに好ましくはマグネシウム、カルシウム等の周期表2族金属化合物、特に好ましくは当該金属の酢酸塩が用いられる。
【0116】
これらの金属、および金属化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エステル交換触媒の周期表1族金属を用いた化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、フェニルリン酸二ナトリウム;ビスフェノールAの二ナトリウム塩、二カリウム塩、二セシウム塩、二リチウム塩;フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩;等が挙げられる。
【0117】
周期表2族金属を用いた化合物の例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0118】
周期表4族金属、12族金属、14族金属を用いた化合物の例としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のチタンアルコキシド;四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物;酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛の塩;塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド等のスズ化合物;ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド等のジルコニウム化合物;酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、塩化鉛(IV)等の鉛化合物等が挙げられる。
【0119】
<原料等の使用割合>
本発明に係るポリカーボネートポリオールの製造において、炭酸ジエステルの使用量は、特に限定されないが、通常ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対するモル比で下限が好ましくは0.50、より好ましくは0.55、さらに好ましくは0.60、特に好ましくは0.65であり、上限は通常1.20、好ましくは1.15、より好ましくは1.10、さらに好ましくは1.00、特に好ましくは0.98である。炭酸ジエステルの使用量が前記上限超過では得られるポリカーボネートポリオールの末端基が水酸基でないものの割合が増加する、または、分子量が所定の範囲とならず本発明に係るポリカーボネートポリオールを製造できない場合があり、前記下限未満では所定の分子量まで重合が進行しない場合がある。
【0120】
本発明に係るポリカーボネートポリオールの製造において、構造(A)を与えるジヒドロキシ化合物の使用量と、構造(B)もしくは構造(C)を与えるジヒドロキシ化合物の使用量の割合(以下「原料(A)/原料(B)比」もしくは「原料(A)/原料(C)比」と称す場合がある。)は、通常、モル比で、構造(A)を与えるジヒドロキシ化合物/構造(B)もしくは構造(C)を与えるジヒドロキシ化合物=100/0〜100/99である。分子鎖中に構造(B)を導入することによりポリカーボネートポリオールの規則性が乱されるため融点および粘度が低下しハンドリング性が改良されるという効果が得られる。前述した剛直性、親水性等の本発明の効果をもたらすのは主として構造(C)の部分である。本発明に係るポリカーボネートポリオール中の構造(B)もしくは(C)の割合が少なすぎるとその効果が十分得られない場合がある。原料(A)/原料(B)比もしくは原料(A)/原料(C)比は100/0〜100/90であることが好ましく、さらには、100/20〜100/80であることがより好ましく、100/30〜100/70であることがさらに好ましい。
【0121】
本発明に係るポリカーボネートポリオールを製造するにあたって、エステル交換触媒を用いる場合、その使用量は、得られるポリカーボネートポリオール中に残存しても性能に影響の生じない量であることが好ましく、ジヒドロキシ化合物の重量に対する金属換算の重量比として、上限が、好ましくは500ppm、より好ましくは100ppm、さらに好ましくは50ppmである。一方、下限は十分な重合活性が得られる量であって、好ましくは0.01ppm、より好ましくは0.1ppm、さらに好ましくは1ppmである。
また、触媒として周期表2族金属の化合物を用いる場合は、その全金属原子の合計量として、原料として用いた全ジヒドロキシ化合物1molあたり好ましくは5μmol以上、より好ましくは7μmol以上、さらに好ましくは10μmol以上、好ましくは500μmol以下、より好ましくは300μmol以下、さらに好ましくは100μmol以下である。
【0122】
<反応条件等>
反応原料の仕込み方法は、特に制限はなく、ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルと触媒の全量を同時に仕込み反応に供する方法や、炭酸エステルが固体の場合まず炭酸エステルを仕込んで加温、溶融させておき後からジヒドロキシ化合物と触媒を添加する方法、逆にジヒドロキシ化合物を先に仕込んでおいて溶融させ、ここへ炭酸エステルと触媒を投入する方法、ジヒドロキシ化合物の一部と炭酸エステル類またはクロロ炭酸エステル類を反応させてジヒドロキシ化合物のジエステル炭酸塩誘導体を合成した後に残りのジヒドロキシ化合物と反応させる方法、等自由にその方法は選択できる。本発明に係るポリカーボネートポリオールにおいて分子鎖の末端がアルキルオキシ基またはアリールオキシ基である数の割合を5%と以下とするために、使用するジヒドロキシ化合物の一部を反応の最後に添加する方法を採用することも可能である。その際に最後に添加するジヒドロキシ化合物の量の上限は、仕込むべきジヒドロキシ化合物量の通常は20%、好ましくは15%、さらに好ましくは10%であり、下限は通常0.1%、好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.0%である。
【0123】
エステル交換反応の際の反応温度は、実用的な反応速度が得られる温度であれば任意に採用することができる。その温度は特に限定されないが、通常70℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上である。また、通常は250℃以下、好ましくは230℃以下、より好ましくは200℃以下、よりさらに好ましくは180℃未満、特に好ましくは170℃以下、最も好ましくは165℃以下である。前記上限超過では得られるポリカーボネートポリオールが着色したり、エーテル構造が生成したり、前記末端(A)率(I)が大きくなりすぎたりするため、ポリカーボネートポリオールを原料としてポリウレタンを製造する際に所望の物性の発現が不十分となる等の品質上の問題が生じる場合がある。
【0124】
反応は常圧で行なうこともできるが、エステル交換反応は平衡反応であり、生成する軽沸成分を系外に留去することで反応を生成系に偏らせることができる。従って、通常、反応後半には減圧条件を採用して軽沸成分を留去しながら反応することが好ましい。あるいは反応の途中から徐々に圧力を下げて生成する軽沸成分を留去しながら反応させていくことも可能である。
【0125】
特に反応の終期において減圧度を高めて反応を行うと、副生したモノアルコール、フェノール類、さらには環状カーボネート等を留去することができるので好ましい。
この際の反応終了時の反応圧力は、特に限定はされないが、通常上限が、10kPa、好ましくは5kPa、より好ましくは1kPaである。これら軽沸成分の留出を効果的に行うために、反応系へ窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを少量通じながら該反応を行うこともできる。
【0126】
エステル交換反応の際に低沸の炭酸エステルやジヒドロキシ化合物を使用する場合は、反応初期は炭酸エステルやジヒドロキシ化合物の沸点近辺で反応を行い、反応が進行するにつれて、徐々に温度を上げて、更に反応を進行させる、という方法も採用可能である。この場合、反応初期に未反応の炭酸エステルの留去を防ぐことができるので好ましい。さらにこれら反応初期における原料の留去を防ぐ意味で反応器に還流管をつけて、炭酸エステルとジヒドロキシ化合物を還流させながら反応を行うことも可能である。この場合、仕込んだ原料が失われず試剤の量比を正確に合わせることができるので好ましい。
【0127】
重合反応は、生成するポリカーボネートポリオールの分子量を測定しながら行い、目的の分子量となったところで終了する。重合に必要な反応時間は、使用するジヒドロキシ化合物、炭酸エステル、触媒の使用の有無、種類により大きく異なるので一概に規定することはできないが、通常所定の分子量に達するのに必要な反応時間は50時間以下、好ましくは20時間以下、さらに好ましくは10時間以下である。
【0128】
前述の如く、重合反応の際に触媒を用いた場合、通常得られたポリカーボネートポリオールには触媒が残存し、金属触媒の残存で、ポリウレタン化反応を行う際に反応の制御ができなくなる場合がある。この残存触媒の影響を抑制するために、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルの例えばリン系化合物を添加してもよい。さらには添加後、後述のように加熱処理すると、エステル交換触媒を効率的に不活性化することができる。
【0129】
エステル交換触媒の不活性化に使用されるリン系化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸等の無機リン酸や、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニル等の有機リン酸エステル等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記リン系化合物の使用量は、特に限定はされないが、前述したように、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルであればよく、具体的には、使用されたエステル交換触媒1モルに対して上限が好ましくは5モル、より好ましくは2モルであり、下限が好ましくは0.8モル、より好ましくは1.0モルである。これより少ない量のリン系化合物を使用した場合は、前記反応生成物中のエステル交換触媒の失活が十分でなく、得られたポリカーボネートポリオールを例えばポリウレタン製造用原料として使用する時、該ポリカーボネートポリオールのイソシアネート基に対する反応性を十分に低下させることができない場合がある。また、この範囲を超えるリン系化合物を使用すると得られたポリカーボネートポリオールが着色してしまう可能性がある。
【0130】
リン系化合物を添加することによるエステル交換触媒の不活性化は、室温でも行うことができるが、加温処理するとより効率的である。この加熱処理の温度は、特に限定はされないが、上限が好ましくは150℃、より好ましくは120℃、さらに好ましくは100℃であり、下限は、好ましくは50℃、より好ましくは60℃、さらに好ましくは70℃である。これより低い温度の場合は、エステル交換触媒の失活に時間がかかり効率的でなく、また失活の程度も不十分な場合がある。一方、150℃を超える温度では、得られたポリカーボネートポリオールが着色することがある。
【0131】
リン系化合物と反応させる時間は特に限定するものではないが、通常1〜5時間である。
【0132】
重合反応後のポリカーボネートポリオールはろ過してもよく、通常のろ過の方法にて行うことができる。その際、重合反応温度、ジヒドロキシ化合物や炭酸ジエステルなどの使用原料、モノヒドロキシ化合物や環状カーボネートなどの副生物、目的生成物のポリカーボネートポリオールなどの物質に対して耐薬品性のあるものが好ましく、好適にはステンレス製を使用する。例えば、ADVANTEC製のステンレスハウジング:1TSタイプとステンレスメッシュカートリッジフィルター(例:TMC−2−STCHやTMP−2−STCH)によりろ過する方法がある。
【0133】
<精製>
反応後は、前記のポリカーボネートポリオール生成物中の末端構造がアルキルオキシ基である不純物、アリールオキシ基である不純物、フェノール類、ジヒドロキシ化合物や炭酸エステル、副生する軽沸の環状カーボネート、さらには添加した触媒等を除去する目的で精製を行うことができる。その際の精製は軽沸化合物については、蒸留で留去する方法が採用できる。蒸留の具体的な方法としては減圧蒸留、水蒸気蒸留、薄膜蒸留等特にその形態に制限はなく、任意の方法を採用することが可能である。また、水溶性の不純物を除くために水、アルカリ性水、酸性水、キレート剤溶解溶液等で洗浄してもよい。その場合、水に溶解させる化合物は任意に選択できる。
【0134】
[ポリウレタン]
本発明に係るポリウレタンは、上述の本発明に係るポリカーボネートポリオールを用いて得られるものである。
本発明に係るポリカーボネートポリオールを用いて本発明に係るポリウレタンを製造する方法は、通常ポリウレタンを製造する公知のポリウレタン化反応条件が用いられる。
【0135】
例えば、本発明に係るポリカーボネートポリオールとポリイソシアネートおよび鎖延長剤を常温から200℃の範囲で反応させることにより、本発明に係るポリウレタンを製造することができる。
また、本発明に係るポリカーボネートポリオールと過剰のポリイソシアネートとをまず反応させて末端イソシアネートのプレポリマーを製造し、さらに鎖延長剤を用いて重合度を上げてポリウレタンを製造することができる。
【0136】
{反応試剤等}
<ポリイソシアネート>
本発明に係るポリカーボネートポリオールを用いてポリウレタンを製造するのに使用されるポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族または芳香族の各種公知のポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0137】
例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよびダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよび1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネートおよびm−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等がその代表例として挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0138】
これらの中でも好ましい有機ジイソシアネートは、得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートである。
【0139】
<鎖延長剤>
また、本発明に係るポリウレタンを製造する際に用いられる鎖延長剤は、イソシアネート基と反応する活性水素を少なくとも2個有する低分子量化合物であり、通常ポリオールおよびポリアミンを挙げることができる。
【0140】
その具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−ジメチロールヘキサン、1,9−ノナンジオール、1,12−ドデカンジオール、ダイマージオール等の直鎖ジヒドロキシ化合物;2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の分岐鎖を有するジヒドロキシ化合物;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン等の環状基を有するジヒドロキシ化合物、キシリレングリコール、1,4−ジヒドロキシエチルベンゼン、4,4’−メチレンビス(ヒドロキシエチルベンゼン)等の芳香族基を有するジヒドロキシ化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類;N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等のヒドロキシアミン類;エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、メチレンビス(o−クロロアニリン)、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、トリレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、N,N’−ジアミノピペラジン等のポリアミン類;および水等を挙げることができる。
【0141】
これらの鎖延長剤は単独で用いることも、あるいは2種以上を組み合わせ用いることも可能である。
これらの中でも好ましい鎖延長剤は、得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、エチレンジアミン、1,3−アミノプロパン等である。
【0142】
<鎖停止剤>
本発明に係るポリウレタンを製造する際には、得られるポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤を使用することができる。
これらの鎖停止剤としては、水酸基を有するエタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族モノオール、アミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の脂肪族モノアミンが例示される。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0143】
<触媒>
本発明に係るポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応において、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒またはトリメチルチンラウレート、ジブチルチンジラウレート等のスズ系触媒等のスズ系の化合物、さらにはチタン系化合物等の有機金属塩等に代表される公知のウレタン重合触媒を用いることもできる。ウレタン重合触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0144】
<他のポリオール>
本発明に係るポリウレタンを製造する際、本発明に係るポリカーボネートポリオールに加えて、必要に応じて公知の他のポリオールを併用することも可能である。その際に使用可能な公知のポリオールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリオキシアルキレングリコール類;ビスフェノールA,グリセリンのエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物等のポリアルコールのアルキレンオキシド付加物類;ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0145】
ポリエステルポリオールの例としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸等の二塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等のグリコール類から得られるものが挙げられる。
【0146】
また、ポリカーボネートポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパンジオールから製造されるホモポリカーボネートポリオール、共重合ポリカーボネートポリオール等が使用可能なものの例として挙げられる。
これらの他のポリオールを使用する場合、本発明に係るポリカーボネートポリオールを用いることによる効果を十分に得る上で、全ポリオール中の本発明に係るポリカーボネートポリオールの割合は特に限定はされないが、通常30重量%以上、特に50重量%以上となるように用いることが好ましい。
【0147】
<溶剤>
本発明に係るポリウレタンを製造する際のポリウレタン形成反応は溶剤を用いて行ってもよい。
好ましい溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;およびトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いることも、2種以上の混合溶媒として用いることも可能である。
【0148】
これらの中で好ましい有機溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよびジメチルスルホキシド等である。
また、本発明に係るポリカーボネートポリオール、ポリジイソシアネート、および前記の鎖延長剤が配合されたポリウレタン樹脂組成物から、水分散液のポリウレタン樹脂を製造することもできる。
【0149】
{製造方法}
上述の反応試剤を用いて本発明に係るポリウレタンを製造する方法としては、一般的に実験ないし工業的に用いられる全ての製造方法が使用できる。
その例としては、本発明に係るポリカーボネートポリオールを含むポリオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤を一括に混合して反応させる方法(以下、「一段法」という)や、まず本発明に係るポリカーボネートポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートを反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと鎖延長剤を反応させる方法(以下、「二段法」という)等がある。
【0150】
二段法は、本発明に係るポリカーボネートポリオールを含むポリオールを予め1当量以上の有機ポリイソシアネートと反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する部分の両末端イソシアネート中間体を調製する工程を経るものである。このように、プレポリマーを一旦調製した後に鎖延長剤と反応させると、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすい場合があり、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離を確実に行う必要がある場合には有用である。
【0151】
<一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、本発明に係るポリカーボネートポリオールを含むポリオール、ポリイソシアネート、および鎖延長剤を一括に仕込むことで反応を行う方法である。
一段法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、本発明に係るポリカーボネートポリオールを含むポリオールの水酸基数と鎖延長剤の水酸基数およびアミノ基数の合計を1当量とした場合、下限は、通常0.7当量、好ましくは0.8当量、さらに好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は、通常3.0当量、好ましくは2.0当量、より好ましくは1.5当量、さらに好ましくは1.1当量である。
【0152】
ポリイソシアネートの使用量が多すぎると、未反応のイソシアネート基が副反応を起こし、所望の物性が得られにくくなる傾向があり、少なすぎると、ポリウレタンの分子量が十分に大きくならず、所望の性能が発現されない傾向がある。
また、鎖延長剤の使用量は、特に限定されないが、本発明に係るポリカーボネートポリオールを含むポリオールの水酸基数からポリイソシアネートのイソシアネート基数を引いた数を1当量とした場合、下限は、通常0.7当量、好ましくは0.8当量、さらに好ましくは0.9当量、特に好ましくは0.95当量であり、上限は3.0当量、好ましくは2.0当量、より好ましくは1.5当量、特に好ましくは1.1当量である。鎖延長剤の使用量が多すぎると、得られるポリウレタンが溶媒に溶けにくく加工が困難になる傾向があり、少なすぎると、得られるポリウレタンが軟らかすぎて十分な強度や硬度、弾性回復性能や弾性保持性能が得られなかったり、高温特性が悪くなる場合がある。
【0153】
<二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれ、予めポリイソシアネートと本発明に係るポリカーボネートポリオールを含むポリオールを、ポリイソシアネート/ポリオール反応当量比1.0〜10.00で反応させて、末端がイソシアネート基となったプレポリマーを製造し、次いでこれに多価アルコール、アミン化合物等の活性水素を有する鎖延長剤を加えることによりポリウレタンを製造する方法である。
【0154】
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。
二段法によるポリウレタン製造は以下に記載の(1)〜(3)のいずれかの方法によって行うことができる。
(1) 溶媒を用いずに、まず直接ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールを含むポリオールを反応させてプレポリマーを合成し、そのまま以降の鎖延長反応に使用する。
(2) (1)の方法でプレポリマーを合成しその後に溶媒に溶かして、以降の鎖延長反応に使用する。
(3) 初めから溶媒を用いてポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールを含むポリオールを反応させ、その後溶媒中で鎖延長反応を行う。
【0155】
(1)の方法の場合には、鎖延長剤を作用させるにあたり、鎖延長剤を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマーおよび鎖延長剤を導入する等の方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることが重要である。
二段法におけるポリイソシアネートの使用量は、特に限定はされないが、ポリカーボネートポリオールを含むポリオールの水酸基の数を1当量とした場合のイソシアネート基の数として、下限が通常1.0、好ましくは1.05であり、上限が通常10.0、好ましくは5.0、より好ましくは3.0の範囲である。
【0156】
このイソシアネート使用量が多すぎると、過剰のイソシアネート基が副反応を起こしてポリウレタンの物性に好ましくない影響を与える傾向があり、少なすぎると、得られるポリウレタンの分子量が十分に上がらず強度や熱安定性に問題を生じる傾向がある。
鎖延長剤の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるイソシアネート基の当量に対して、下限が、通常0.1、好ましくは0.5、さらに好ましくは0.8であり、上限が通常5.0、好ましくは3.0、さらに好ましくは2.0の範囲である。
【0157】
前記鎖延長化反応を行う際に、分子量を調整する目的で、一官能性の有機アミンやアルコールを共存させてもよい。
鎖延長反応は通常、各成分を0〜250℃で反応させるが、この温度は溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なり、特に制限はない。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低い為に生産性が悪くなることがあり、また高すぎると副反応や得られるポリウレタンの分解が起こることがある。鎖延長反応は、減圧下で脱泡しながら行ってもよい。
【0158】
また、鎖延長反応には必要に応じて、触媒や安定剤等を添加することもできる。
触媒としては例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸、スルホン酸等の1種または2種以上が挙げられ、安定剤としては例えば2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ・ベ−タナフチルフェニレンジアミン、トリ(ジノニルフェニル)ホスファイト等の1種または2種以上が挙げられる。しかしながら、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施することが好ましい。
【0159】
<水系ポリウレタンエマルション>
本発明に係るポリカーボネートポリオールを用いて、水系のポリウレタンエマルションを製造することも可能である。
その場合、ポリカーボネートポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートを反応させてプレポリマーを製造する際に、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物を混合してプレポリマーを形成し、これを鎖延長剤と反応させてポリウレタンエマルションとする。
【0160】
ここで使用する少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物の親水性官能基とは、例えばカルボン酸基やスルホン酸基であって、アルカリ性基で中和可能な基である。また、イソシアネート反応性基とは、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基等の一般的にイソシアネートと反応してウレタン結合、ウレア結合を形成する基であり、これらが同一分子内に混在していてもかまわない。
【0161】
少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物としては、具体的には、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2−メチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等が挙げられる。また、ジアミノカルボン酸類、例えば、リジン、シスチン、3,5−ジアミノカルボン酸等も挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらを実際に用いる場合には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等のアミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ性化合物で中和して用いることができる。
【0162】
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物の使用量は、水に対する分散性能を上げるために、その下限は、本発明に係るポリカーボネートポリオールを含むポリオールの重量に対して通常1重量%、好ましくは5重量%、さらに好ましくは10重量%である。一方、これを多く添加しすぎると本発明に係るポリカーボネートポリオールの特性が維持されなくなってしまうことがあるために、その上限は通常50重量%、好ましくは40重量%、さらに好ましくは30重量%である。
【0163】
また、水系ポリウレタンエマルションの合成、あるいは保存にあたり、高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、スルホン酸高級アルキル、スルホン酸アルキルアリール、スルホン化ひまし油、スルホコハク酸エステル等に代表されるアニオン性界面活性剤、第一アミン塩、第二アミン塩、第三アミン塩、第四級アミン塩、ピリジニウム塩等のカチオン系界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコールまたはフェノール類との公知の反応生成物に代表される非イオン性界面活性剤等を併用して、乳化安定性を保持してもよい。
【0164】
また、プレポリマーを鎖延長剤と反応させてポリウレタンエマルションとする際、プレポリマーを必要に応じて中和した後、水中に分散させてもよい。
このようにして製造された水系ポリウレタンエマルションは、様々な用途に使用することが可能である。特に、最近は環境負荷の小さな化学品原料が求められており、有機溶剤を使用しない目的としての従来品からの代替が可能である。
【0165】
水系ポリウレタンエマルションの具体的な用途としては、例えば、コーティング剤、水系塗料、接着剤、合成皮革、人工皮革への利用が好適である。特に本発明に係るポリカーボネートポリオールを用いて製造される水系ポリウレタンエマルションは、ポリカーボネートポリオール中に構造(A)を有していることから、高硬度で耐擦性に優れ、表面の性状が長期間維持されるので、コーティング剤等として従来のポリカーボネートポリオールを使用した水系ポリウレタンエマルションに比べて優位に利用することが可能である。
【0166】
また、本発明に係るポリカーボネートポリオールを用いて、ポリイソシアネートと反応後、ヒドロキシ基を有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルと反応させて、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート等に誘導することが可能である。これらウレタンアクリレートおよびウレタンメタクリレートは、コーティング剤として広く利用されており、それらの用途に特に制限なく本発明に係るポリカーボネートポリオールを原料として利用することができる。さらには、必要に応じて重合官能基を(メタ)アクリレートから、グリシジル基、アリル基、プロパルギル基等に変えて利用することも可能である。
【0167】
{添加剤}
本発明に係るポリカーボネートポリオールを用いて製造した本発明に係るポリウレタンには、熱安定剤、光安定剤、着色剤、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘着防止剤、難燃剤、老化防止剤、無機フィラー等の各種の添加剤を、本発明に係るポリウレタンの特性を損なわない範囲で、添加、混合することができる。
【0168】
熱安定剤として使用可能な化合物としては、燐酸、亜燐酸の脂肪族、芳香族またはアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルぺンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;フェノール系誘導体、特にヒンダードフェノール化合物;チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステル系等のイオウを含む化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物等を使用することができる。
【0169】
ヒンダードフェノール化合物の具体例としては、Irganox245(商品名:BASFジャパン(株)製)、Irganox1010(商品名:BASFジャパン(株)製)、Irganox1520(商品名:BASFジャパン(株)製)等が挙げられる。
リン化合物としては、PEP−4C、PEP−8、PEP−36、PEP−24G、HP−10(いずれも商品名:(株)アデカ製)Irgafos 168(商品名:BASFジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0170】
イオウを含む化合物の具体例としては、ジラウリルチオプロピオネート(DLTP)、ジステアリルチオプロピオネート(DSTP)等のチオエーテル化合物が挙げられる。
光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられ、具体的には「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、BASFジャパン(株)製)、「SANOL LS−2626」、「SANOL LS−765」(以上、三共社製)等が使用可能である。
【0171】
紫外線吸収剤の例としては、「TINUVIN328」、「TINUVIN234」(以上、BASFジャパン(株)製)等が挙げられる。
着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料等の染料;カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、マイカ等の無機顔料;およびカップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾン系、フタロシアニン系等の有機顔料等が挙げられる。
【0172】
無機フィラーの例としては、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン、白土等が挙げられる。
難燃剤の例としては、燐およびハロゲン含有有機化合物、臭素あるいは塩素含有有機化合物、ポリ燐酸アンンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加および反応型難燃剤が挙げられる。
【0173】
これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの添加剤の添加量は、ポリウレタンに対し、下限が、好ましくは0.01重量%、より好ましくは0.05重量%、さらに好ましくは0.1重量%、上限は、好ましくは10重量%、より好ましくは5重量%、さらに好ましくは1重量%である。添加剤の添加量が少な過ぎるとその添加効果を十分に得ることができず、多過ぎるとポリウレタン中で析出したり、濁りを発生したりする場合がある。
【0174】
{ポリウレタンフィルム・ポリウレタン板}
本発明に係るポリウレタンを使用してフィルムを製造する場合、そのフィルムの厚さは、通常下限が10μm、好ましくは20μm、さらに好ましくは30μm、上限は通常1,000μm、好ましくは500μm、より好ましくは100μmである。 フィルムの厚さが厚すぎると、十分な透湿性が得られない傾向があり、また、薄過ぎるとピンホールを生じやすかったり、フィルムがブロッキングしやすく取り扱いにくくなる傾向がある。
【0175】
本発明に係るポリウレタンフィルムは、医療用粘着フィルム等の医療材料や衛生材料、包装材、装飾用フィルム、その他透湿性素材等に好ましく用いることができる。また、本発明に係るポリウレタンフィルムは布や不織布等の支持体に上に成膜されたものでもよい。この場合、ポリウレタンフィルム自体の厚さは、10μmよりもさらに薄くてもよい場合がある。
【0176】
また、本発明に係るポリウレタンを使用してポリウレタン板を製造することも可能である。その場合の板の厚みは、上限は特に制限はなく、下限は通常0.5mm、好ましくは1mm、さらに好ましくは3mmである。
【0177】
{物性}
<分子量>
本発明に係るポリウレタンの分子量は、その用途に応じて適宜調整され、特に制限はないが、GPCにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)として5万〜50万、特に10万〜30万であることが好ましい。分子量が前記下限よりも小さいと十分な強度や硬度が得られないことがあり、前記上限よりも大きいと加工性等ハンドリング性が悪化する傾向がある。
【0178】
<引張破断伸度>
本発明に係るポリウレタンは、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度55%で測定した引張破断伸度の下限が通常50%、好ましくは100%、さらに好ましくは150%であり、上限は通常400%、好ましくは350%、さらに好ましくは300%である。引張破断伸度が前記下限未満では加工性等ハンドリング性が悪化する傾向があり、前記上限を超えると十分な強度、硬度が得られない場合がある。
【0179】
<100%モジュラス>
本発明に係るポリウレタンは、幅10mm、長さ100mm、厚み約50〜100μmの短冊状のサンプルに対して、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃、相対湿度55%で測定した100%モジュラスの下限が通常10MPa以上、好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上であり、上限は通常200MPa以下、好ましくは150MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下である。100%モジュラスが前記下限未満では強度や硬度が不足する場合があり、前記上限を超えると加工性等ハンドリング性が悪化する傾向がある。
【0180】
<クリープ特性>
本発明に係るポリウレタンは、厚さ100μmのポリウレタンフィルムを形成し、幅10mmの短冊形に切り取り、50mmの幅で基準線を記したサンプルを気温23℃、相対湿度55%RHの恒温恒湿の状態にて、長さ方向に1MPaの荷重を加え、16時間経過後に荷重を外したときの基準線間の長さ(Lmm)を測定して求めたクリープ特性((L−50)/50)×100(%))の下限は特に制限はなく小さいほど好ましいが通常5%、好ましくは2%、より好ましくは1%で、上限が通常20%、好ましくは10%である。このクリープ特性が前記下限未満ではポリウレタンの粘度が高く加工時の負荷が大きくなる場合があり、前記上限を超えると強度や硬度が不足する場合がある。
【0181】
<硬度>
本発明に係るポリウレタンは、剛性に富む構造(A)を有することに起因して高い硬度が得られるという特徴がある。具体的には例えば、厚さ約50〜100μmのフィルム状のサンプルを試験機(II形、学振形)に固定し、JIS L0849(2004)に準じて4.9Nの荷重にて摩擦試験を500往復行った際の重量減少割合({(試験前のサンプル重量−試験後のサンプル重量)/(試験前のサンプル重量)}×100)で表記すると、通常その重量減少割合の上限は2%、好ましくは1.5%、さらに好ましくは1.0%である。一方、この重量減少割合の下限は、通常0.1%、好ましくは0.05%、さらに好ましくは0.01%である。
【0182】
また、指標としてJIS K−5600−5−4(1999)に準じて測定した鉛筆硬度で表記すると、このフィルム状サンプルは通常6B以上、好ましくは4B以上、さらに好ましくは3B以上の硬度を有する。
【0183】
{用途}
本発明に係るポリウレタンは、多様な特性を発現させることができ、フォーム、エラストマー、塗料、繊維、接着剤、床材、シーラント、医療用材料、人工皮革、コーティング剤、水系ポリウレタン塗料等に広く用いることができる。
【0184】
特に、人工皮革、合成皮革、水系ポリウレタン、接着剤、医療用材料、床材、コーティング剤等の用途に、本発明に係る高剛性ポリウレタンを用いると、耐摩擦性、耐ブロッキング性に優れるため、引っ掻き等による傷がつきにくく、摩擦による劣化の少ないという良好な表面特性を付与することができる。
本発明に係るポリウレタンは、注型ポリウレタンエラストマーに使用できる。その具体的用途として、圧延ロール、製紙ロール、事務機器、プレテンションロール等のロール類、フォークリフト、自動車車両ニュートラム、台車、運搬車等のソリッドタイヤ、キャスター等、工業製品として、コンベアベルトアイドラー、ガイドロール、プーリー、鋼管ライニング、鉱石用ラバースクリーン、ギア類、コネクションリング、ライナー、ポンプのインペラー、サイクロンコーン、サイクロンライナー等がある。また、OA機器のベルト、紙送りロール、複写用クリーニングブレード、スノープラウ、歯付ベルト、サーフローラー等にも使用できる。
【0185】
本発明に係るポリウレタンは、また、熱可塑性エラストマーとしての用途にも適用される。例えば、食品、医療分野で用いる空圧機器、塗装装置、分析機器、理化学機器、定量ポンプ、水処理機器、産業用ロボット等におけるチューブやホース類、スパイラルチューブ、消防ホース等に使用できる。また、丸ベルト、Vべルト、平ベルト等のベルトとして、各種伝動機構、紡績機械、荷造り機器、印刷機械等に用いられる。また、履物のヒールトップや靴底、カップリング、パッキング、ポールジョイント、ブッシュ、歯車、ロール等の機器部品、スポーツ用品、レジャー用品、時計のベルト等に使用できる。さらに自動車部品としては、オイルストッパー、ギアボックス、スペーサー、シャーシー部品、内装品、タイヤチェーン代替品等が挙げられる。また、キーボードフィルム、自動車用フィルム等のフィルム、カールコード、ケーブルシース、ベロー、搬送ベルト、フレキシブルコンテナー、バインダー、合成皮革、ディピンイング製品、接着剤等に使用できる。
【0186】
本発明に係るポリウレタンは、溶剤系二液型塗料としての用途にも適用可能であり、楽器、仏壇、家具、化粧合板、スポーツ用品等の木材製品に適用できる。また、タールエポキシウレタンとして自動車補修用にも使用できる。
本発明に係るポリウレタンは、湿気硬化型の一液型塗料、ブロックイソシアネート系溶媒塗料、アルキド樹脂塗料、ウレタン変性合成樹脂塗料、紫外線硬化型塗料、水系ウレタン塗料等の成分として使用可能であり、例えば、プラスチックバンパー用塗料、ストリッパブルペイント、磁気テープ用コーティング剤、床タイル、床材、紙、木目印刷フィルム等のオーバープリントワニス、木材用ワニス、高加工用コイルコート、光ファイバー保護コーティング、ソルダーレジスト、金属印刷用トップコート、蒸着用ベースコート、食品缶用ホワイトコート等に適用できる。
【0187】
本発明に係るポリウレタンは、また、接着剤として、食品包装、靴、履物、磁気テープバインダー、化粧紙、木材、構造部材等に適用でき、また、低温用接着剤、ホットメルトの成分としても用いることができる。
本発明に係るポリウレタンを接着剤として使用する場合の形態としては、特に制限はなく、得られたポリウレタンを溶剤に溶解して溶剤型接着剤として使用することも、溶剤を用いずにホットメルト型接着剤として使用することも可能である。
【0188】
溶剤を使用する場合の使用可能な溶剤としては、得られるウレタンの特性に合った溶剤であれば特にその制限はなく、水系溶剤、有機系溶剤ともに使用することが可能である。特に最近は、環境への負荷の軽減から水性ポリウレタンエマルションを水系溶剤に溶解または分散させた水性接着剤の要望が高まっており、本発明に係るポリウレタンはその目的にも好適に用いることができる。さらに本発明に係るポリウレタンを用いて製造した接着剤には、必要に応じて通常の接着剤で使用される添加剤および助剤は制限なく混合することが可能である。添加剤の例としては、顔料、ブロッキング防止剤、分散安定剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、無機および有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒等があり、その配合方法は、攪拌、分散等公知の方法が採用可能である。
【0189】
このようにして得られる接着剤は、鉄、銅、アルミニウム、フェライト、メッキ鋼板等の金属材料、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂材料、ガラス、セラミック等の無機材料を効率良く接着することができる。
本発明に係るポリウレタンは、バインダーとして、磁気記録媒体、インキ、鋳物、焼成煉瓦、グラフト材、マイクロカプセル、粒状肥料、粒状農薬、ポリマーセメントモルタル、レジンモルタル、ゴムチップバインダー、再生フォーム、ガラス繊維サイジング等に使用可能である。
【0190】
本発明に係るポリウレタンは、繊維加工剤の成分として、防縮加工、防皺加工、撥水加工等に使用できる。
本発明に係るポリウレタンを弾性繊維として使用する場合のその繊維化の方法は、紡糸できる方法であれば特に制限なく実施できる。例えば、一旦ペレット化した後、溶融させ、直接紡糸口金を通して紡糸する溶融紡糸方法が採用できる。本発明に係るポリウレタンから弾性繊維を溶融紡糸により得る場合、紡糸温度は好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以上235℃以下である。
【0191】
本発明に係るポリウレタン弾性繊維はそのまま裸糸として使用したり、また、他繊維で被覆して被覆糸として使用することもできる。他繊維としては、ポリアミド繊維、ウール、綿、ポリエステル繊維等従来公知の繊維を挙げることができるが、なかでも本発明ではポリエステル繊維が好ましく用いられる。また、本発明に係るポリウレタン弾性繊維は、染着タイプの分散染料を含有していてもよい。
【0192】
本発明に係るポリウレタンは、シーラント・コーキングとして、コンクリート打ち壁、誘発目地、サッシ周り、壁式PC目地、ALC目地、ボード類目地、複合ガラス用シーラント、断熱サッシシーラント、自動車用シーラント等に使用できる。
本発明に係るポリウレタンは、医療用材料としての使用が可能であり、血液適合材料として、チューブ、カテーテル、人工心臓、人工血管、人工弁等、また、使い捨て素材としてカテーテル、チューブ、バッグ、手術用手袋、人工腎臓ポッティング材料等に使用できる。
【0193】
本発明に係るポリウレタンは、末端を変性させることによりUV硬化型塗料、電子線硬化型塗料、フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物、光硬化型の光ファイバー被覆材組成物等の原料として用いることができる。
【実施例】
【0194】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
以下において、各物性値の評価方法は下記の通りである。
[評価方法:ポリカーボネートポリオール]
【0195】
<留出するモノマー量>
重合による留出物中の1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルカーボネート、イソソルビドの濃度は、CDClに溶解して400MHz H−NMR(日本電子(株)製AL−400)を測定し、各成分のシグナルの積分値より算出した。
【0196】
<フェノキシド末端量、エーテル結合量、ジフェニルカーボネート量、ジヒドロキシ化合物量、ネオペンチルカーボネート量、フェノール量>
生成物をCDClに溶解して400MHz H−NMR(日本電子(株)製AL−400)を測定し、各成分のシグナルの積分値より算出した。その際の検出限界は、サンプル全体の重量に対するジフェニルカーボネートまたはジヒドロキシ化合物またはネオペンチルカーボネートまたはフェノールの重量として100ppmである。またフェノキシド末端の割合は、フェノキシド末端の1プロトン分の積分値と末端全体の1プロトン分の積分値の比から求めており、フェノキシド末端の検出限界は末端全体に対して0.05%である。また、エーテル結合の割合は、エーテル結合のα位の炭素に結合している1プロトン分の積分値と、カーボネート結合のα位の炭素に結合した1プロトン分の積分値の和に対するエーテル結合のα位の炭素に結合している1プロトン分の積分値で求めており、エーテル結合の検出限界は0.05%である。
【0197】
<ISB/16HD>
NMRチャート上の下記ケミカルシフトの積分値からそれぞれの比率を求める。なお、ケミカルシフト値は組成により若干異なる場合があるので、その場合は積分値の取り方を適宜変更する場合がある。
δ5.22〜4.98ppmの積分値=a
δ4.79〜4.61ppmの積分値=b
δ4.61〜4.47ppmの積分値=c
δ3.68〜3.51ppmの積分値=d
δ2.73〜2.66ppmの積分値=e
δ1.52〜1.30ppmの積分値=f
ISBに由来する鎖末端の構造は2種存在し、それぞれを「ISB末端1」、「ISB末端2」とする。また末端以外のポリカーボネートポリオール中のISB由来構造部分を「ISB中」とする。同様に16HDに関して、「16HD末端」「16HD中」とする。それぞれのプロトン数を考慮し、以下の式によりそれぞれの数を計算する。
(ISB)末端1=b−e
(ISB)中=c−(ISB)末端1
(ISB)末端2=a−(ISB)末端1−(ISB)中×2
(16HD)末端=(d−e−(ISB)末端1)÷2
(16HD)中=(f−(16HD)末端×4)÷4
前記の値から((ISB)中+(ISB)末端1+(ISB)末端2)と((16HD)中+(16HD)末端)の比率を比べて全体比を求めた。
<NPG/16HD>
NMRチャート上の下記ケミカルシフトの積分値からそれぞれの比率を求める。なお、ケミカルシフト値は組成により若干異なる場合があるので、その場合は積分値の取り方を適宜変更する場合がある。
δ4.25〜4.05ppmの積分値=g
δ4.05〜3.87ppmの積分値=h
δ3.70〜3.57ppmの積分値=i
δ3.41〜3.30ppmの積分値=j
δ1.15〜1.12ppmの積分値=k
NPGに由来する末端を「NPG末端」とする。また末端以外のポリカーボネートポリオール中のNPG由来構造部分を「NPG中」とする。同様に16HDに関して、「16HD末端」「16HD中」とする。それぞれのプロトン数を考慮し、以下の式によりそれぞれの数を計算する。
NPG末端=j÷2
NPG中=(h−j)÷4
16HD末端=i÷2
16HD中=(g−16HD末端×2−k÷6×4)÷4
前記の値から(NPG中+NPG末端)と(16HD中+16HD末端)の比率を比べて全体比を求めた。
【0198】
<数平均分子量>
数平均分子量(Mn)は、上記のポリカーボネート中の各ジヒドロキシ化合物に由来する末端のプロトン数、末端以外の部位のプロトン数と各部位の分子量より計算した。
【0199】
<APHA値>
JIS K0071−1(1998)に準拠して、比色管に入れた標準液と比較して測定した。
【0200】
<水酸基価>
JIS K1557−1(2007)に記載の手法により測定、算出した。
【0201】
<濁度>
三菱化学株式会社製積分球式濁度計PT−200にて、10mmのセルにポリカーボネートジオールの50%塩化メチレン溶液を入れ、予め装置に設定されているポリスチレン検量線を使用して測定した。
<触媒量>
ポリカーボネートポリオール生成物を約0.1g測り取り、4mLのアセトニトリルに溶解した後、20mLの純水を加えてポリカーボネートポリオールを析出させ、析出したポリカーボネートポリオールをろ過にて除去した。そしてろ過後の溶液を純水で所定濃度まで希釈し、金属イオン濃度をイオンクロマトグラフィーで分析した。なお、溶媒として使用するアセトニトリルの金属イオン濃度をブランク値として測定し、溶媒分の金属イオン濃度を差し引いた値をポリカーボネートポリオールの触媒金属イオン濃度とした。測定条件は以下の表1に示す通りである。分析結果と予め作成した検量線を使用し、マグネシウム濃度を求めた。
【0202】
【表1】

【0203】
<濾過>
重合反応終了後のろ過はADVANTEC製のステンレスハウジング:1TSタイプ、ステンレスメッシュカートリッジフィルター:TMC−2−STCHを使用して行った。
【0204】
<薄膜蒸留装置>
直径50mm、高さ200mm、面積0.0314mの内部コンデンサー、ジャケット付きの柴田科学株式会社製、分子蒸留装置MS−300特型を使用した。
【0205】
[実施例1]
(第1段階の反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、1,6−ヘキサンジオール(16HD、沸点253℃)12.13kg、イソソルビド(ISB)15.00kg、ジフェニルカーボネート32.87kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液11.0mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物2.2g)を入れ、窒素ガス置換した。還流器には約100℃の蒸気を冷媒として流し、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。まず、重合反応槽のジャケットにオイルを循環して内容物を加熱溶解し、内温100℃にて内容物がほぼ完全に溶解したのを確認し攪拌を開始した。その後、内温が130℃に到達した時点で、5分間かけて圧力を6.65kPaまで下げ、副生するフェノールを留出させ始めた。その後、内温を139℃に保ち副生するフェノールを留出させながら、120分かけて圧力を4.00kPaまで下げ、さらに副生するフェノールを留出させつつ、25分間反応を継続した。その際の重合反応槽の熱媒体オイルの温度は138〜146℃であった。この段階での留出量は理論フェノール生成量の80%であった。
【0206】
(第2段階の反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、窒素雰囲気下、第1段階で得られた反応液を移送した。重合反応槽ジャケットには170℃の熱媒体オイルを循環させ、還流器には約100℃の蒸気を冷媒として流し、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。第1段階の反応液を移送後、5分間かけて圧力を4.00kPaまで下げた。その段階で反応液の温度は160℃に到達しており、副生したフェノールが留出し始めた。その後、60分かけて圧力を0.40kPaまで下げつつ、フェノールおよび未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。その後、160℃、0.40kPaにて15分間反応を継続し、フィルターによりろ過を行いポリカーボネートポリオールを得た。この結果を下記表2に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は30.44kg(収率97.8%)であった。
【0207】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明固体であり、分子量900、APHA50、全体比は16HD/ISB=50/50、ジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は2.15重量%、フェノール含有量は0.78重量%で、フェノキシド末端、イソソルビド骨格以外のエーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は2.5重量%であった。
【0208】
[実施例2]
(第1段階の反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、1,6−ヘキサンジオール(16HD)12.33kg、イソソルビド(ISB)15.25kg、ジフェニルカーボネート32.43kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液2.2mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物0.44g)を入れ、窒素ガス置換した。還流器には蒸気を流さず、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。まず、重合反応槽のジャケットにオイルを循環して内容物を加熱溶解し、内温100℃にて内容物がほぼ完全に溶解したのを確認し攪拌を開始した。その後、内温が146℃に到達した時点で、5分間かけて圧力を18.7kPaまで下げ、副生するフェノールを留出させ始めた。その後、内温を165℃に保ち副生するフェノールを留出させながら、120分かけて圧力を9.33kPaまで下げ、さらに副生するフェノールを留出させた。その際の重合反応槽の熱媒体オイルの温度は167〜179℃であった。この段階での留出量は理論フェノール生成量の80%であった。
【0209】
(第2段階の反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、窒素雰囲気下、第1段階で得られた反応液を移送した。重合反応槽ジャケットには180℃の熱媒体オイルを循環させ、還流器には約100℃の蒸気を冷媒として流し、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。第1段階の反応液を移送後、5分間かけて圧力を9.33kPaまで下げた。その段階で反応液の温度は167℃に到達しており、副生したフェノールが留出し始めた。その後、60分かけて圧力を0.40kPaまで下げつつ、フェノールおよび未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。その後、160℃、0.40kPaにて35分間反応を継続し、フィルターによりろ過を行いポリカーボネートポリオールを得た。この結果を下記表2に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は30.4kg(収率96.3%)であった。
【0210】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明液体であり、分子量770、APHA50、全体比は16HD/ISB=50/50、ジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は4.17重量%、フェノール含有量は0.64重量%で、フェノキシド末端、イソソルビド骨格以外のエーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は4.4重量%であった。
【0211】
[実施例3]
(第1段階の反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、1,6−ヘキサンジオール(16HD)14.52kg、イソソルビド(ISB)17.95kg、ジフェニルカーボネート37.53kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液5.3mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物1.06g)を入れ、窒素ガス置換した。還流器には蒸気を流さず、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。まず、重合反応槽のジャケットにオイルを循環して内容物を加熱溶解し、内温100℃にて内容物がほぼ完全に溶解したのを確認し攪拌を開始した。その後、内温が151℃に到達した時点で、5分間かけて圧力を17.3kPaまで下げ、副生するフェノールを留出させ始めた。その後、内温を160℃に保ち副生するフェノールを留出させながら、115分かけて圧力を9.66kPaまで下げ、さらに副生するフェノールを留出させた。その際の重合反応槽の熱媒体オイルの温度は168〜179℃であった。この段階での留出量は理論フェノール生成量の80%であった。
【0212】
(第2段階の反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、窒素雰囲気下、第1段階で得られた反応液を移送した。重合反応槽ジャケットには175℃の熱媒体オイルを循環させ、還流器には約100℃の蒸気を冷媒として流し、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。第1段階の反応液を移送後、5分間かけて圧力を9.33kPaまで下げた。その段階で反応液の温度は164℃に到達しており、副生したフェノールが留出し始めた。その後、60分かけて圧力を0.40kPaまで下げつつ、フェノールおよび未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。その後、160℃、0.40kPaにて75分間反応を継続し、フィルターによりろ過を行いポリカーボネートポリオールを得た。この結果を下記表2に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は35.6kg(収率96.2%)であった。
【0213】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明液体であり、分子量790、APHA40、全体比は16HD/ISB=52/48、ジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は7.35重量%、フェノール含有量は0.30重量%で、フェノキシド末端、イソソルビド骨格以外のエーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は4.0重量%であった。
【0214】
[実施例4]
(反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、1,6−ヘキサンジオール(16HD)14.52kg、イソソルビド(ISB)17.95kg、ジフェニルカーボネート37.53kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液2.6mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物0.52g)を入れ、窒素ガス置換した。還流器には約100℃の蒸気を冷媒として流し、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。まず、重合反応槽のジャケットにオイルを循環して内容物を加熱溶解し、内温100℃にて内容物がほぼ完全に溶解したのを確認し攪拌を開始した。その後、内温が145℃に到達した時点で、5分間かけて圧力を17.3kPaまで下げ、副生するフェノールを留出させ始めた。その後、内温を160℃に保ち副生するフェノールを留出させながら、115分かけて圧力を9.00kPaまで下げ、さらに副生するフェノールを留出させた。その後、60分かけて圧力を0.40kPaまで下げつつ、フェノールおよび未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。さらに160℃、0.40kPaにて60分間反応を継続し、フィルターによりろ過を行いポリカーボネートポリオールを得た。この結果を下記表2に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は35.5kg(収率95.8%)であった。
【0215】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明液体であり、分子量770、APHA50、全体比は16HD/ISB=51/49、ジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は5.67重量%、フェノール含有量は0.65重量%で、フェノキシド末端、イソソルビド骨格以外のエーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は4.7重量%であった。
【0216】
[比較例1]
(第1段階の反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、1,6−ヘキサンジオール(16HD)14.52kg、イソソルビド(ISB)17.95kg、ジフェニルカーボネート37.53kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液0.53mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物0.11g)を入れ、窒素ガス置換した。還流器には蒸気を流さず、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。まず、重合反応槽のジャケットにオイルを循環して内容物を加熱溶解し、内温100℃にて内容物がほぼ完全に溶解したのを確認し攪拌を開始した。その後、内温が171℃に到達した時点で、5分間かけて圧力を10.0kPaまで下げ、副生するフェノールを留出させ始めた。その後、内温を180℃に保ち副生するフェノールを留出させながら、65分かけて圧力を6.67kPaまで下げ、さらに副生するフェノールを留出させた。その際の重合反応槽の熱媒体オイルの温度は188〜195℃であった。この段階での留出量は理論フェノール生成量の80%であった。
【0217】
(第2段階の反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、窒素雰囲気下、第1段階で得られた反応液を移送した。重合反応槽ジャケットには190℃の熱媒体オイルを循環させ、還流器には蒸気を流さず、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。第1段階の反応液を移送後、5分間かけて圧力を6.67kPaまで下げた。その段階で反応液の温度は182℃に到達しており、副生したフェノールが留出し始めた。その後、60分かけて圧力を0.40kPaまで下げつつ、フェノールおよび未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。その後、185℃、0.10kPaにて55分間反応を継続し、フィルターによりろ過を行いポリカーボネートポリオールを得た。この結果を下記表2に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は28.4kg(収率86.1%)であった。
【0218】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明液体であり、分子量890、APHA40、全体比は16HD/ISB=43/57、ジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は1.9重量%、フェノール含有量は0.12重量%で、フェノキシド末端、イソソルビド骨格以外のエーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は15.8重量%であった。
【0219】
[比較例2]
(反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、1,6−ヘキサンジオール(16HD)14.52kg、イソソルビド(ISB)17.95kg、ジフェニルカーボネート37.53kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液5.3mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物1.06g)を入れ、窒素ガス置換した。還流器には蒸気を流さず、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。まず、重合反応槽のジャケットにオイルを循環して内容物を加熱溶解し、内温100℃にて内容物がほぼ完全に溶解したのを確認し攪拌を開始した。その後、熱媒体オイル164℃、内温が160℃に到達した時点で、5分間かけて圧力を30.0kPaまで下げ、副生するフェノールを留出させ始めた。その後、熱媒体オイル164℃、内温を160℃に保ち副生するフェノールを留出させながら、内温が低下しないように徐々に減圧を行い、さらに副生するフェノールを留出させた。結果、900分間かけて圧力を0.4kPaまで下げた。さらに0.4kPaにて55分間反応を継続し、フィルターによりろ過を行いポリカーボネートポリオールを得た。この結果を下記表2に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は36.6kg(収率98.8%)であった。
【0220】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明液体であり、分子量700、APHA300、全体比は16HD/ISB=53/47、ジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は6.0重量%、フェノール含有量は0.45重量%で、フェノキシド末端、イソソルビド骨格以外のエーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は0.4重量%であった。
【0221】
[比較例3]
熱媒体ジャケット、攪拌機、留出液トラップ、コールドトラップ、真空ポンプを備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに1,6−ヘキサンジオール(16HD)707.3g、イソソルビド(ISB):777.7g、ジフェニルカーボネート:1843.4g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:13.2mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:111mg)を入れ、窒素ガス置換した。まず、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温・溶解したら5分間で圧力を5.33kPaまで下げた。その後、内温130℃にて65分間で5.33kPaから4.00kPaまで下げ、その後4.00kPaにて80分間、副生するフェノールを留出させながら反応した。そして、140分かけて圧力を0.40kPaまで下げつつ、内温を160℃まで上げ、フェノールおよび未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応しポリカーボネートポリールを得た。この結果を下記表2に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は1641.4g(収率96.5%)であった。
【0222】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明固体であり、分子量930、APHA60、全体比は16HD/ISB=53/47、ジヒドロキシ化合物であるイソソルビドの含有量は3.78重量%、フェノール含有量は1.14重量%で、フェノキシド末端、イソソルビド骨格以外のエーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は4.8重量%であった。
実施例1〜4および比較例1〜3の反応結果を表2にまとめて示す。
【0223】
[実施例5]
(第1段階の反応)
原料に、1,6−ヘキサンジオール(16HD)11.92kg、ネオペンチルグリコール(NPG、沸点210℃)15.76kg、ジフェニルカーボネート42.32kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液13.5mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物2.7g)を使用し、内温105℃にて内容物がほぼ完全に溶解したのを確認してから攪拌を開始した以外は実施例1と同様な方法にて反応を行った。その際の重合反応槽の熱媒体オイルの温度は141〜147℃であった。
【0224】
(第2段階の反応)
実施例1と同様な方法にて反応を行った。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は31.7kg(収率96.6%)であった。この結果を下記表3に示す。
【0225】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明粘性液体であり、分子量810、APHA30、全体比は16HD/NPG=43/57、ジヒドロキシ化合物であるネオペンチルグリコールの含有量は2.15重量%、副生物のネオペンチルカーボネートの含有量は1.79重量%、フェノール含有量は1.79重量%で、フェノキシド末端、エーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は7.6重量%であった。
【0226】
[実施例6]
(第1段階の反応)
原料に、1,6−ヘキサンジオール(16HD)11.92kg、ネオペンチルグリコール(NPG)15.76kg、ジフェニルカーボネート42.32kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液13.5mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物2.7g)を使用し、内温105℃にて内容物がほぼ完全に溶解したのを確認してから攪拌を開始し、還流器に蒸気を流さなかった以外は実施例1と同様な方法にて反応を行った。その際の重合反応槽の熱媒体オイルの温度は136〜146℃であった。
【0227】
(第2段階の反応)
実施例1と同様な方法にて反応を行った。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は31.2kg(収率95.1%)であった。この結果を下記表3に示す。
【0228】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明粘性液体であり、分子量860、APHA20、全体比は16HD/NPG=44/56、ジヒドロキシ化合物であるネオペンチルグリコールの含有量は0.99重量%、副生物のネオペンチルカーボネートの含有量は2.41重量%、フェノール含有量は0.62重量%で、フェノキシド末端、エーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は8.2重量%であった。
【0229】
[実施例7]
(第1段階の反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、1,6−ヘキサンジオール(16HD)11.19kg、ネオペンチルグリコール(NPG)14.80kg、ジフェニルカーボネート44.01kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液2.5mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物0.50g)を入れ、窒素ガス置換した。還流器には蒸気を流さず、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。まず、重合反応槽のジャケットにオイルを循環して内容物を加熱溶解し、内温105℃にて内容物がほぼ完全に溶解したのを確認し攪拌を開始した。その後、内温が131℃に到達した時点で、5分間かけて圧力を18.0kPaまで下げ、副生するフェノールを留出させ始めた。その後、内温を160℃に保ち副生するフェノールを留出させながら、110分かけて圧力を8.83kPaまで下げ、さらに副生するフェノールを留出させた。その際の重合反応槽の熱媒体オイルの温度は169〜176℃であった。この段階での留出量は理論フェノール生成量の80%であった。
【0230】
(第2段階の反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、窒素雰囲気下、第1段階で得られた反応液を移送した。重合反応槽ジャケットには180℃の熱媒体オイルを循環させ、還流器には約100℃の蒸気を冷媒として流し、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。第1段階の反応液を移送後、5分間かけて圧力を8.00kPaまで下げた。その段階で反応液の温度は170℃に到達しており、副生したフェノールが留出し始めた。その後、60分かけて圧力を0.40kPaまで下げつつ、フェノールおよび未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。その後、160℃、0.40kPaにて145分間反応を継続し、フィルターによりろ過を行いポリカーボネートポリオールを得た。この結果を下記表3に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は27.9kg(収率89.0%)であった。
【0231】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明粘性液体であり、分子量1960、APHA30、全体比は16HD/NPG=45/55、ジヒドロキシ化合物であるネオペンチルグリコールの含有量は0.17重量%、副生物のネオペンチルカーボネート含有量は2.81重量%、フェノール含有量は0.09重量%で、フェノキシド末端、エーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は8.9重量%であった。
【0232】
[実施例8]
(第1段階の反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、1,6−ヘキサンジオール(16HD)10.90kg、ネオペンチルグリコール(NPG)14.41kg、ジフェニルカーボネート44.69kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液2.5mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物0.50g)を入れ、窒素ガス置換した。還流器には蒸気を流さず、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。まず、重合反応槽のジャケットにオイルを循環して内容物を加熱溶解し、内温105℃にて内容物がほぼ完全に溶解したのを確認し攪拌を開始した。その後、内温が147℃に到達した時点で、5分間かけて圧力を18.7kPaまで下げ、副生するフェノールを留出させ始めた。その後、内温を160℃に保ち副生するフェノールを留出させながら、120分かけて圧力を9.33kPaまで下げ、さらに副生するフェノールを留出させつつ、5分間反応を継続した。その際の重合反応槽の熱媒体オイルの温度は168〜174℃であった。この段階での留出量は理論フェノール生成量の80%であった。
【0233】
(第2段階の反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、窒素雰囲気下、第1段階で得られた反応液を移送した。重合反応槽ジャケットには201℃の熱媒体オイルを循環させ、還流器には約100℃の蒸気を冷媒として流し、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。第1段階の反応液を移送後、5分間かけて圧力を9.33kPaまで下げた。その段階で反応液の温度は173℃に到達しており、副生したフェノールが留出し始めた。その後、60分かけて圧力を0.40kPaまで下げつつ、フェノールおよび未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。その後、160℃、0.40kPaにて35分間反応を継続し、フィルターによりろ過を行いポリカーボネートポリオールを得た。この結果を下記表3に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は28.9kg(収率94.0%)であった。
【0234】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明粘性液体であり、分子量2010、APHA20、全体比は16HD/NPG=44/56、ジヒドロキシ化合物であるネオペンチルグリコールの含有量は0.15重量%、副生物のネオペンチルカーボネート含有量は3.92重量%、フェノール含有量は0.24重量%で、フェノキシド末端、エーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は5.1重量%であった。
【0235】
[実施例9]
(反応)
熱媒体ジャケット、攪拌機、還流器、コンデンサー、留出液タンク、コールドトラップ、真空ポンプを具備した180Lの重合反応槽に、1,6−ヘキサンジオール(16HD)10.95kg、ネオペンチルグリコール(NPG)14.48kg、ジフェニルカーボネート44.56kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液5.0mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物1.00g)を入れ、窒素ガス置換した。還流器には約100℃の蒸気を冷媒として流し、コンデンサーには約45℃の温水を冷媒として流した。まず、重合反応槽のジャケットにオイルを循環して内容物を加熱溶解し、内温110℃にて内容物がほぼ完全に溶解したのを確認し攪拌を開始した。その後、内温が152℃に到達した時点で、5分間かけて圧力を17.3kPaまで下げ、副生するフェノールを留出させ始めた。その後、内温を160℃に保ち副生するフェノールを留出させながら、90分かけて圧力を10.0kPaまで下げ、さらに副生するフェノールを留出させた。その後、60分かけて圧力を0.40kPaまで下げつつ、フェノールおよび未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。さらに160℃、0.40kPaにて150分間反応を継続し、フィルターによりろ過を行いポリカーボネートポリオールを得た。この結果を下記表3に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は27.7kg(収率89.8%)であった。
【0236】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明粘性液体であり、分子量1930、APHA30、全体比は16HD/NPG=45/55、ジヒドロキシ化合物であるネオペンチルグリコールの含有量は0.15重量%、副生物のネオペンチルカーボネート含有量は3.13重量%、フェノール含有量は0.05重量%で、フェノキシド末端、エーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は7.6重量%であった。
【0237】
[比較例4]
(反応)
原料に、1,6−ヘキサンジオール(16HD)11.31kg、ネオペンチルグリコール(NPG)14.95kg、ジフェニルカーボネート43.74kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液0.51mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物0.10g)を用い、内温110℃にて内容物がほぼ完全に溶解した以外は比較例1と同様な方法で反応を行った。その際の熱媒体温度、内温、結果を下記表3に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は25.5kg(収率80.8%)であった。
【0238】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明粘性液体であり、分子量2830、APHA30、全体比は16HD/NPG=49/51、ジヒドロキシ化合物であるネオペンチルグリコールの含有量は0.40重量%、副生物のネオペンチルカーボネート含有量は4.01重量%、フェノール含有量は0.32重量%で、フェノキシド末端、エーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は18.5重量%であった。
【0239】
[比較例5]
(反応)
原料に、1,6−ヘキサンジオール(16HD)10.74kg、ネオペンチルグリコール(NPG)14.20kg、ジフェニルカーボネート45.06kg、酢酸マグネシウム4水和物水溶液4.9mL(濃度:200g/L、酢酸マグネシウム4水和物0.98g)を用い、内温110℃にて内容物がほぼ完全に溶解した以外は比較例2と同様な方法で反応を行った。この結果を下記表3に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は29.9kg(収率98.3%)であった。
【0240】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明粘性液体であり、分子量2030、APHA250、全体比は16HD/NPG=42/58、ジヒドロキシ化合物であるネオペンチルグリコールの含有量は0.16重量%、副生物のネオペンチルカーボネート含有量は2.91重量%、フェノール含有量は0.74重量%で、フェノキシド末端、エーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は0.6重量%であった。
【0241】
[比較例6]
熱媒体ジャケット、攪拌機、留出液トラップ、コールドトラップ、真空ポンプを備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに1,6−ヘキサンジオール(16HD):424.4g、ネオペンチルグリコール(NPG):374.0g、ジフェニルカーボネート:1201.6g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:9.2mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:77.3mg)を入れ、窒素ガス置換した。まず、内温130℃まで昇温して内容物を加熱溶解させた。昇温・溶解したら5分間で圧力を6.00kPaまで下げ、130℃、6.00kPaで330分間反応した。そして、150分かけて圧力を4.0kPaまで下げた後、さらに30分かけて圧力を0.40kPaまで下げた。その後、90分間かけて温度を160℃まで上げつつ、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を留出させ除きながら反応した。この結果を下記表3に示す。得られたポリカーボネートポリオール生成物の収量は819.4g(収率86.8%)であった。
【0242】
(反応結果)
得られたポリカーボネートポリオール生成物の性状は常温で透明粘性液体であり、分子量850、APHA20、全体比は16HD/NPG=55/45、ジヒドロキシ化合物であるネオペンチルグリコールの含有量は0.03重量%、副生物のネオペンチルカーボネート含有量は0.28重量%、フェノール含有量は0.01重量%以下で、フェノキシド末端、エーテル結合は検出されなかった。また、残存ジフェニルカーボネートは定量限界以下(0.01重量%以下)であった。留出したモノマー量は13.1重量%であった。
実施例5〜9および比較例4〜6の反応結果を表3にまとめて示す。
【0243】
【表2】

【0244】
【表3】

【0245】
[実施例2−2]
実施例2で製造したポリカーボネートポリオールを薄膜蒸留した。薄膜蒸留後の水酸基価は143.0であった。そのポリカーボネートポリオールを予め加温し(例えば80℃)、500mLセパラブルフラスコに100.9gを加えた。さらに1,4−ブタンジオール:6.26gを添加し、ジオクチルスズジネオデカノエート:0.027gを滴下した。続いてジメチルアセトアミド(DMAc)を加えて、55℃設定のオイルバスフラスコを漬けて溶解させた。約60rpmで攪拌を開始し、次いでジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を常温・固体で48.7g添加した。その後、GPCで測定する重量平均分子量で15万を超える程度までMDIを徐々に3.0gまで添加し、固形分濃度32重量%のポリウレタン溶液を得た。このポリウレタン溶液を固形分濃度30重量%に希釈し、ドクターブレードにてニトフロンシート上に均一膜厚に塗布し、乾燥機で乾燥しポリウレタンフィルムを得た。
【0246】
[実施例7−2]
実施例7で製造したポリカーボネートポリオールを薄膜蒸留した。薄膜蒸留後の水酸基価は56.5であった。
そのポリカーボネートポリオールを予め加温し(例えば80℃)、500mLセパラブルフラスコに112.7gを加えた。さらに1,4−ブタンジオール:5.13gを添加し、ジオクチルスズジネオデカノエート:0.057gを滴下した。続いてジメチルホルムアミド(DMF)を加えて、55℃設定のオイルバスフラスコを漬けて溶解させた。約60rpmで攪拌を開始し次いで、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を常温・固体で28.6gを添加した。その後、GPCで測定する重量平均分子量で15万を超える程度までMDIを徐々に0.1gまで添加し、固形分濃度36重量%のポリウレタン溶液を得た。このポリウレタン溶液を固形分濃度30重量%に希釈し、ドクターブレードにてニトフロンシート上に均一膜厚に塗布し、乾燥機で乾燥しポリウレタンフィルムを得た。
【0247】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2011年5月30日出願の日本特許出願(特願2011−120728)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本発明の製造方法によれば、高収率で着色の少ないポリカーボネートポリオールを製造することが可能となり、これを用いて製造されたポリウレタンは、高硬度で耐擦性に優れ、表面の性状が長期間維持されるため、例えば、コーティング剤、水系塗料、接着剤、合成皮革、人工皮革への利用が好適である。本発明の製造方法により製造されるポリカーボネートポリオールを用いて製造されたポリウレタンは、水に対する親和性が要求される用途、例えば慣用負荷の小さな水系塗料を製造する際にも好適に用いることができ、産業上極めて有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される繰り返し単位を有し、且つ水酸基価が10mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であるポリカーボネートポリオールの製造方法であって、
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを、触媒の存在下でエステル交換反応により重縮合反応する工程を含み、
エステル交換反応によって副生するモノヒドロキシ化合物を留出する反応器の少なくとも1つが、熱媒体を用いて反応器を加熱するための加熱手段および還流冷却器を具備した内容積20L以上の反応器であり、該熱媒体の温度と該反応器中の反応液の温度差が少なくとも5℃以上であり、且つ全反応段階で留出するモノマーの合計量が、原料モノマーの総量に対して15重量%以下である、ポリカーボネートポリオールの製造方法。
【化1】

(前記式(A)において、Xはヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【請求項2】
前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物、および下記式(C)で表されるジヒドロキシ化合物から選ばれる少なくとも1つのジヒドロキシ化合物を含有する、請求項1に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【化2】

(前記式(B)において、前記式(B)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
【化3】

(前記式(C)において、mは0または1である。RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜15の、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基およびアルコキシ基よりなる群から選ばれる基であり、前記炭素数の範囲で、酸素原子、硫黄原子、窒素原子若しくはハロゲン原子またはこれらを含む置換基を有していてもよい。Yはヘテロ原子を含有してもよい炭素数1〜20の2価の基を表す。)
【請求項3】
前記ジヒドロキシ化合物のうち、少なくとも1種のジヒドロキシ化合物の大気圧での沸点が300℃以下である、請求項1または請求項2に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項4】
前記重縮合反応を、複数の反応器を用いて多段階で行う、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項5】
前記触媒として、周期表第2族金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を有する化合物を、その全金属原子の合計量として、原料として用いた全ジヒドロキシ化合物1molあたり5μmol以上500μmol以下用いる、請求項1から請求項4の何れか1項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項6】
前記触媒が、マグネシウム化合物およびカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物である、請求項5に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項7】
前記炭酸ジエステルが、ジアリールカーボネートである、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項8】
前記エステル交換反応におけるいずれか1つの反応段階における反応液の最高温度が、190℃未満である、請求項1から請求項7の何れか1項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項9】
前記エステル交換反応におけるいずれか1つの反応段階で使用する反応器に用いられる熱媒体の最高温度が、240℃未満である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項10】
前記エステル交換反応において、
1)炭酸ジエステルから副生するモノヒドロキシ化合物の留出量が、モノヒドロキシ化合物の全理論生成量の50%未満の場合には、
a)温度110℃以上130℃未満では圧力10kPa〜4kPa、
b)温度130℃以上150℃未満では圧力14kPa〜6kPa、
c)温度150℃以上170℃未満では圧力20kPa〜8kPa、
d)温度170℃以上190℃未満では圧力30kPa〜10kPa、
であって、
2)炭酸ジエステルから副生するモノヒドロキシ化合物の留出量がモノヒドロキシ化合物の全理論生成量の50%以上の場合には、
a)温度110℃以上130℃未満では圧力6kPa〜0.01kPa、
b)温度130℃以上150℃未満では圧力8kPa〜0.01kPa
c)温度150℃以上170℃未満では圧力12kPa〜0.01kPa
d)温度170℃以上190℃未満では圧力16kPa〜0.01kPa
である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項11】
前記式(B)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物が、下記式(D)で表されるジヒドロキシ化合物である、請求項2から請求項10のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【化4】

【請求項12】
前記ジヒドロキシ化合物が、脂肪族ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物を含む、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項13】
得られるポリカーボネートポリオールの数平均分子量が、250以上5000以下である、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項14】
得られるポリカーボネートポリオールの、JIS−K0071−1(1998)に準拠して測定したハーゼン色数が、100以下である、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項15】
得られるポリカーボネートポリオールの、塩化メチレンで50%濃度に希釈した場合の濁度が、1.0ppm以下である、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のポリカーボネートポリオールの製造方法によって得られるポリカーボネートポリオールを用いて得られるポリウレタン。

【公開番号】特開2013−10948(P2013−10948A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−123380(P2012−123380)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】