説明

ポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体およびその製造方法、並びに、アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体

【課題】優れた可視光線透過能を維持しつつ高い熱線遮蔽機能を有する様々な形状のポリカーボネート樹脂成形体を、高コストの物理成膜法などを用いずに、簡便な方法で製造することが出来るポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 酸価が2〜18.5mgKOH/gであり、TG−DTAより求められる熱分解温度が230℃以上の常温で固体であるアクリルポリマー0.3〜10重量部中に、
当該アクリルポリマーと反応した平均粒径100nm以下のアンチモンドープ酸化錫微粒子1重量部が、均一に分散していることを特徴とするポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サングラスやゴーグルのレンズ、建築物の屋根材や壁材、自動車や電車の窓材、アーケード、カーポート等に広く利用されるポリカーボネート樹脂に添加し使用するポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体に関し、さらに詳しくは、可視光透過性が良好でかつ熱線遮蔽性にすぐれた熱線遮蔽機能を有するポリカーボネート樹脂成形体を製造するために使用するポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体及びその製造方法並びにアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サングラスやゴーグルのレンズ、各種建築物や車両の窓等のいわゆる開口部分から入射する太陽光線には、可視光線の他に紫外線や赤外線が含まれている。この太陽光線に含まれている赤外線のうち波長800〜2500nmの近赤外線は、熱線と呼ばれ、暑さの原因になる。そこで近年、サングラスやゴーグルのレンズ、建築物や車両の窓材等の分野では、可視光線を十分に取り入れながら熱線を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇や皮膚の感じる熱さを抑制する熱線遮蔽基材の需要が急増している。
【0003】
たとえば、特許文献1〜3は、透明樹脂フィルムに金属、金属酸化物を蒸着してなる熱線反射フィルムをガラス、アクリル板、ポリカーボネート板等の透明基材に接着した熱線遮蔽板を提案している。
【0004】
この他、たとえば特許文献4、5は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂透明樹脂にフタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物に代表される有機近赤外線吸収剤を練り込んだ熱線遮蔽板、およびフィルムを提案している。
【0005】
さらに、たとえば特許文献6、7は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂に熱線反射能を有する無機粒子を練り込んだ熱線遮蔽板を提案している。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−277437号公報
【特許文献2】特開平10−146919号公報
【特許文献3】特開2001−179887号公報
【特許文献4】特開平6−256541号公報
【特許文献5】特開平6−264050号公報
【特許文献6】特開平5−78544号公報
【特許文献7】特開平2−173060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが本発明者らの検討によると、特許文献1〜3に記載の熱線遮蔽板は、反射フィルム自体が非常に高価であるばかりでなく、製造に際し接着工程等の煩雑な工程を要するので、製造コストも高コストとなっていた。また透明基材と反射フィルムとの接着性が良くないので、経時変化によりフィルムの剥離が生じるといった欠点を有していた。
【0008】
また、特許文献4、5に記載の熱線遮蔽板およびフィルムは、製造に際し高真空や精度の高い雰囲気制御が必要な装置を使用する必要があり、量産性が悪く、汎用性に乏しい。
【0009】
さらに、特許文献6、7に記載の熱線遮蔽板は、十分に熱線を遮蔽するために多量の近赤外線吸収剤を配合しなければならない。しかし、多量の近赤外線吸収剤を配合すると、今度は可視光線透過能が低下してしまうという課題を有していた。また、近赤外線吸収剤として有機化合物を使用しているため、直射日光に常時さらされる建築物や車両の窓材等への適用は耐侯性に問題があり、必ずしも適当であるとは言えなかった。
【0010】
結局のところ、従来の技術に係る特許文献1〜7に記載の熱線遮蔽板等では、熱線遮蔽能を高めるために熱線反射粒子を多量に添加する必要があり、熱線反射粒子の配合量を増大すると可視光線透過能が低下してしまうという課題を有していた。また熱線反射粒子の添加量を少なくすると可視光線透過能は高まるものの熱線遮蔽能が低下してしまい、熱線遮蔽能と可視光線透過能を同時に満足させることは困難であった。
【0011】
本発明は、上述のような状況下でなされたものであり、その解決しようとする課題は、優れた可視光線透過能を維持しつつ高い熱線遮蔽機能を有する様々な形状のポリカーボネート樹脂成形体を、高コストの物理成膜法などを用いずに、簡便な方法で製造することが出来るポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体およびその製造方法、並びに、当該分散体を用いて製造されたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために、自由電子を多量に保有するアンチモンドープ酸化錫に着目した。そして、本発明者らは、種々検討を行った結果、アンチモンドープ酸化錫を超微粒子化し、アクリルポリマー中に均一に分散させたポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体に想到した。本発明者らは、さらに、上記アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体をポリカーボネート樹脂に添加し、希釈、混練し、押出成形、射出成形、圧縮成形等公知の成形方法により、板状、フィルム状、球面状等の任意の形状に成形することによって、可視光領域に透過率の極大を持つと共に、近赤外域に強い吸収を持つポリカーボネート樹脂成形体を作製することが可能となることを知見し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
酸価が2〜18.5mgKOH/gであり、TG−DTAより求められる熱分解温度が230℃以上の常温で固体であるアクリルポリマー0.3〜10重量部中に、
当該アクリルポリマーと反応した平均粒径100nm以下のアンチモンドープ酸化錫微粒子1重量部が、均一に分散していることを特徴とするポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体を提供する。
【0014】
第2の発明は、
前記アンチモンドープ酸化錫は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤から選択される少なくとも一種のアルコキシル基と有機官能基を持つ表面処理剤で、表面処理が施されていることを特徴とする第1の発明に記載のポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体を提供する。
【0015】
第3の発明は、
前記アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)が40℃以上であることを特徴とする第1の発明に記載のポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体を提供する。
【0016】
第4の発明は、
第1〜3の発明のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体をポリカーボネート樹脂に添加し、溶融混練した後、成形したものであることを特徴とするアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を提供する。
【0017】
第5の発明は、
平均粒径100nm以下のアンチモンドープ酸化錫微粒子1重量部と、適宜な溶媒で希釈された、酸価が2〜18.5mgKOH/gであり、TG−DTAより求められる熱分解温度が230℃以上の常温で固体であるアクリルポリマー0.3〜10重量部とを混合した後、当該適宜な溶媒を除去してアンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物を生成させる工程と、
当該アンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物を、当該アクリルポリマー中に均一に分散する工程と、を有することを特徴とするポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体を、ポリカーボネート樹脂に添加し、溶融混練した後、成形することによって得られるアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体は、分散性が確保され、ポリカーボネート樹脂と溶融混練するときにアクリルポリマーの分解物が生成し、ポリカーボネート樹脂が褐色に着色してしまうこともなく、優れた可視光線透過能を維持しつつ高い熱線遮蔽機能を有している。さらに、本発明に係るポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体を用いることで、高コストの物理成膜法などを用いずに、簡便な方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を作製することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係るポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体およびアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体について、1.アンチモンドープ酸化錫、2.アクリルポリマー、3.アンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物と、ポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体、4.ポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体の製造方法、5.ポリカーボネート樹脂、6.アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体、の順で詳細に説明する。
【0020】
1.アンチモンドープ酸化錫
本発明に使用されるアンチモンドープ酸化錫としては、可視光領域で光の吸収、反射がほとんど無く、波長1000nm以上の領域でプラズマ共鳴に由来する反射・吸収が大きい材料が好ましい。
【0021】
本発明で使用するアンチモンドープ酸化錫微粒子の粒子径は、100nm以下であることが好ましい。微粒子が凝集した粗大粒子となっておらず、当該微粒子の粒子径が100nm以下であると、成形した熱線遮蔽透明樹脂基材の光散乱源とならないからである。つまり、微粒子が凝集した粗大粒子となっておらず、当該微粒子の粒子径が100nm以下であることで、当該アンチモンドープ酸化錫微粒子が分散された透明樹脂基材は、曇って見えることが回避出来るからである。
【0022】
本発明に使用されるアンチモンドープ酸化錫微粒子は、有機溶剤を溶媒として用いる湿式粉砕によって得ることができる。該湿式粉砕方法は、アンチモンドープ酸化錫微粒子が均一に粉砕され、有機溶剤に分散する方法であれば任意に選択できる。例としては、攪拌媒体ミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用いることが好ましい。尤
も、生産性、微粒子の均一性を考慮すると攪拌媒体ミルを用いることが最も好ましい。また、上記粉砕方法を2つ以上組み合わせて用いることも可能である。
【0023】
また、本発明に使用されるアンチモンドープ酸化錫微粒子は、金属酸化物特有の光触媒活性を抑制し、ポリカーボネート樹脂の加水分解劣化を抑制する観点から、アルコキシル基と有機官能基を持つシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤から選択される少なくとも一種の表面処理剤で表面処理を施されていることも好ましい。これらの表面処理剤としては、アンチモンドープ酸化錫微粒子の表面と親和性をもち、結合を形成するアルコキシル基と、透明熱可塑性樹脂と親和性をもつ有機官能基を有するものが使用することが好ましい。前記アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシル基などを挙げることが出来るが、加水分解を受け、アンチモンドープ酸化錫の表面と結合を形成しうるものであれば特に限定されない。一方、前記有機官能基としては、アルキル基、ビニル基、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピル基、γ-グリシドキシプロピル基、γ-アニリノプロピル基、γ-メルカプトプロピル基、γ-メタクリロキシ基などを挙げることが出来るが、透明熱可塑性樹脂と親和性を有するものであれば特に限定されない。
【0024】
2.アクリルポリマー
上述したアンチモンドープ酸化錫微粒子を、ポリカーボネート樹脂中へ高い分散性をもって分散させる為には、有機高分子分散剤、界面活性剤を使用することが肝要である。そして、有機高分子分散剤、界面活性剤の中でも、アクリルポリマーを用いることが好適である。
【0025】
アンチモンドープ酸化錫微粒子を、ポリカーボネート樹脂中へ高い分散性をもって分散させる為の本発明に係るアクリルポリマーは、酸価が2mgKOH/g以上、18.5mgKOH/g以下であることが肝要である。酸価が2mgKOH/g以上であると、アンチモンドープ酸化錫微粒子のポリカーボネート樹脂中での分散が十分となり透明性が確保出来る。酸価が18.5mgKOH/g以下であれば、ポリカーボネート樹脂が加水分解を起こすのを回避出来るからである。
【0026】
上述したように本発明に使用されるアクリルポリマーは、酸価が2mgKOH/g以上、18.5mgKOH/g以下であり、分子内に多くのCOOH基を有する。そして当該アクリルポリマーは当該COOH基によって、アンチモンドープ酸化錫微粒子表面に作用し、後述するアンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物を生成する。そして、当該アンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物の生成によって、アンチモンドープ酸化錫微粒子の、ポリカーボネート樹脂中への分散性を向上させる効果が発揮される。
【0027】
つまり、本発明に係る酸価が2mgKOH/g以上、18.5mgKOH/g以下であるアクリルポリマーは、通常のシート成形用に使用される通常のアクリル樹脂、UV照射することで塗膜を形成するUV硬化型アクリル樹脂など、それ自体が構造材としての機能を持つ通常のアクリル樹脂とは、構造の観点からも、効果の観点からも異なるものである。この相違に起因して、本発明に係るアクリルポリマーは、アンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物の生成と、アンチモンドープ酸化錫微粒子の十分な分散効果を発揮するものであると考えられる。一方、構造材としての機能を持つ通常のアクリルポリマーは、アンチモンドープ酸化錫微粒子と当該アクリルポリマーとの反応物を生成せず、アンチモンドープ酸化錫微粒子の十分な分散効果を発揮しない。
【0028】
さらに、本発明に係るアクリルポリマーのTG−DTA測定より得られる熱分解温度は、230℃以上であることが肝要である。熱分解温度が230℃以上あれば、ポリカーボ
ネート樹脂と溶融混練するときにアクリルポリマーの分解物が生成しない。アクリルポリマーの分解物が生成しないことで、ポリカーボネート樹脂が褐色に着色してしまうことを回避出来るからである。
また、取り扱い上の観点から、得られる本発明に係るポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体は、常温で固体(粉体)であることが求められる。よって使用されるアクリルポリマーも常温で固体であることが求められる。従って、本発明に係るアクリルポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上のものを使用することが好ましい。
【0029】
3.アンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物と、ポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体
本発明に係るポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体とは、本発明に係るアクリルポリマーの一部がアンチモンドープ酸化錫微粒子表面に作用してアンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物を生成し、当該アンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物が、本発明に係るアクリルポリマー中に均一に分散しているものである。
【0030】
ここで、アンチモンドープ酸化錫微粒子と、本発明に係るアクリルポリマーとの配合比は、アンチモンドープ酸化錫微粒子1重量部に対して、アクリルポリマーが0.3重量部以上、10重量部以下であることが好ましい。アクリルポリマーの配合比率が、0.3重量部以上あればポリカーボネート樹脂中でアンチモンドープ酸化錫微粒子が凝集することがなく、十分な分散状態が得られ、ポリカーボネート樹脂成形体が曇ることがない。また、10重量部以下であれば、ポリカーボネート樹脂成形体の機械特性が確保出来るからである。
【0031】
4.ポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体の製造方法
ポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体の製造では、まず、攪拌媒体ミルを用いてアンチモンドープ酸化錫微粒子を適宜な溶剤に分散したアンチモンドープ酸化錫微粒子分散液を作製する。当該アンチモンドープ酸化錫微粒子分散液へ、あらかじめ適宜な溶媒に溶解した本発明に係るアクリルポリマー、および必要に応じて他の添加剤を添加し、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機を用いてよく混合する。このアンチモンドープ酸化錫微粒子分散液とアクリルポリマーとの混合物から当該適宜な溶媒を乾燥等の方法により除去する。
すると、本発明に係るアクリルポリマーの一部がアンチモンドープ酸化錫微粒子表面に作用してアンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物が生成する。そして、当該アンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物が、本発明に係るアクリルポリマー中に均一に分散する。
ここで、当該適宜な溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
また、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散液を作製する工程で、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンへアクリルポリマーを添加することも可能である。
【0032】
尚、上述したアンチモンドープ酸化錫微粒子分散液へ、アクリルポリマーを添加する際、アクリルポリマーの添加量が過剰であると、分散液の粘度が増大し、分散速度が低下する。加えて、製造工程における送液、ミルへの負荷を考慮すると、分散液の粘度は低い方が好ましい。そこで、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散液へ、アクリルポリマーを添加する際は、まず、必要最低限のアクリルポリマーを用いて混合分散液を作製し、その混合分散液に残余のアクリルポリマーを加える方法が好適である。
溶剤の除去にあたっては、アンチモンドープ酸化錫微粒子の再凝集を抑制する観点から、30〜100℃の低温下で真空乾燥することが好適である。
【0033】
5.ポリカーボネート樹脂
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネートが好ましい。芳香族ポリカーボネートとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンに代表される二価のフェノール系化合物の一種以上と、ホスゲンまたはジフェニルカーボネート等で代表されるカーボネート前駆体とから、界面重合、溶融重合又は固相重合等の公知の方法によって得られる重合体が挙げられる。
【0034】
本発明に係るポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体とポリカーボネート樹脂の溶融混練方法は、公知の方法で実施可能である。例えば、一軸押出機、二軸押出機等の混練機を使用して均一に溶融混練することで、ポリカーボネート樹脂にアンチモンドープ酸化錫微粒子が均一に分散した樹脂組成物を調製することができる。
【0035】
6.アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体
本発明に係るアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体は、本発明に係るポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体を用い、公知の方法で成形することによって得られる。アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体は任意の形状に成形可能であり、必要に応じて平面状および曲面状に成形することができる。また、成形体の厚さは、板状からフィルム状まで必要に応じて任意の厚さに調整することが可能である。更に、平面状に形成した樹脂シートは、後加工によって球面状等任意の形状に加工することができる。
【0036】
このアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形または回転成形等の任意の方法を挙げることができる。特に、射出成形により成形品を得る方法と、押出成形により成形品を得る方法が好適である。また、上記アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂組成物を造粒装置により一旦ペレット化した後、同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を作製することも可能である。
【0037】
このように本発明によれば、ポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体を提供することで、高コストの物理成膜法や複雑な工程を用いずに、熱線遮蔽機能を有し、かつ可視光域に高い透過性能を有するアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を提供することが可能である。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を述べるが、本発明はこれらにより何ら制限されるものでない。
尚、本実施例において、アンチモンドープ酸化錫の平均粒径は、BET法より求めた比表面積より算出した。実施例に係るアクリルポリマーの熱分解温度は、TG−DTA測定により求めた。
【0039】
(実施例1)
平均粒径20nmのアンチモンドープ酸化錫20g、トルエン74g、アクリルポリマーA(熱分解温度240℃、ガラス転移温度105℃、酸価6.5mgKOH/g)4g、を混合し、直径0.5mmのジルコニアボールを用いて10時間ボールミル混合して、アンチモンドープ酸化錫分散液100gを作製した(A液)。
【0040】
A液100gへ、アクリルポリマーAの40重量%トルエン溶液190g添加し、アンチモンドープ酸化錫1重量部に対してアクリルポリマーAが4重量部になるように調整し
た。当該調整されたA液と、アクリルポリマーAのトルエン溶液との混合物から真空乾燥機を用いてトルエンを除去し、ポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体を得た(A分散体)。
得られたアンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
【0041】
ポリカーボネート樹脂ペレットへ、得られたA分散体を添加し、アンチモンドープ酸化錫濃度が2重量%となるように調整し、タンブラーで均一に混合した。当該ポリカーボネート樹脂ペレットとA分散体との混合物を、二軸押出機で溶融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネートマスターバッチを得た(マスターバッチA)。
【0042】
ポリカーボネート樹脂ペレットへ、得られたマスターバッチAを添加し、アンチモンドープ酸化錫濃度が0.2重量%となるように希釈し、タンブラーで均一に混合した。当該ポリカーボネート樹脂ペレットとマスターバッチAとの混合物を、Tダイを用いて厚さ2mmに押出成形し、アンチモンドープ酸化錫が樹脂全体に均一に分散したアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
【0043】
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を、日立製作所製の分光光度計U−4000を用いて測定し、JISR3106に従って日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値は、村上色彩技術研究所(株)社製HR−200を用い、JIS K 7105に基づいて測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0044】
(実施例2)
ポリカーボネート樹脂ペレットへ、マスターバッチAを添加して、アンチモンドープ酸化錫濃度が0.3重量%となるように希釈した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体において、アンチモンドープ酸化錫が樹脂全体に均一に分散していた。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0045】
(実施例3)
ポリカーボネート樹脂ペレットへ、マスターバッチAを添加して、アンチモンドープ酸化錫濃度が0.1重量%となるように希釈した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体において、アンチモンドープ酸化錫が樹脂全体に均一に分散していた。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアン
チモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0046】
(実施例4)
アンチモンドープ酸化錫として平均粒径100nmのものを使用した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体において、アンチモンドープ酸化錫が樹脂全体に均一に分散していた。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0047】
(実施例5)
アクリルポリマーAを、アクリルポリマーB(熱分解温度240℃、ガラス転移温度70℃、酸価2mgKOH/g)に代替した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体において、アンチモンドープ酸化錫が樹脂全体に均一に分散していた。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0048】
(実施例6)
アクリルポリマーAを、アクリルポリマーC(熱分解温度240℃、ガラス転移温度40℃、酸価18.5mgKOH/g)に代替した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体において、アンチモンドープ酸化錫が樹脂全体に均一に分散していた。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0049】
(実施例7)
アクリルポリマーAを、アクリルポリマーD(熱分解温度230℃、ガラス転移温度70℃、酸価6.5mgKOH/g)に代替した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポ
リマーについて、表1に記載する。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体において、アンチモンドープ酸化錫が樹脂全体に均一に分散していた。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0050】
(実施例8)
アンチモンドープ酸化錫1重量部に対してアクリルポリマーAが0.3重量部になるように調整した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体において、アンチモンドープ酸化錫が樹脂全体に均一に分散していた。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0051】
(実施例9)
アンチモンドープ酸化錫1重量部に対してアクリルポリマーAが10重量部になるように調整した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体において、アンチモンドープ酸化錫が樹脂全体に均一に分散していた。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0052】
(比較例1)
アンチモンドープ酸化錫として平均粒径200nmのものを使用した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
当該比較例1に係るアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体は、平均粒径の大きなアンチモンドープ酸化錫を使用しため、ヘイズ値が高くなり、やや曇ったポリカーボネート樹脂成形体であった。メガネやゴーグルのレンズ用途では、視認性を確保するために高い透明性が必要とされ、比較例1で得られたポリカーボネート樹脂成形体は、これらの用途に不適当であることが判明した。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0053】
(比較例2)
アクリルポリマーAを、アクリルポリマーE(熱分解温度240℃、ガラス転移温度105℃、酸価1mgKOH/g)に代替した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
当該比較例2に係るアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体は、酸価1mgKOH/gのアクリルポリマーを使用しため、アンチモンドープ酸化錫の分散が不十分となり、ヘイズ値が高くやや曇ったポリカーボネート樹脂成形体であった。メガネやゴーグルのレンズ用途では、視認性を確保するために高い透明性が必要とされ、比較例2で得られたポリカーボネート樹脂成形体は、これらの用途に不適当であることが判明した。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0054】
(比較例3)
アクリルポリマーAを、アクリルポリマーF(熱分解温度240℃、ガラス転移温度70℃、酸価20mgKOH/g)に代替した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得ようとした。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
当該比較例3においては、酸価30mgKOH/gのアクリルポリマーを使用しため、二軸押出機による溶融混練時にポリカーボネートの加水分解が起こり、マスターバッチが発泡してしまいアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得ることが出来なかった。
アンチモンドープ酸化錫の添加量、所見を表1に記載する。
【0055】
(比較例4)
アクリルポリマーAを、アクリルポリマーG(熱分解温度180℃、ガラス転移温度50℃、酸価6.5mgKOH/g)に代替した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
当該比較例4に係るアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体は、熱分解温度180℃のアクリルポリマーを使用したため、溶融混練時にアクリルポリマーが分解してしまい褐色に変色していた。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0056】
(比較例5)
アンチモンドープ酸化錫1重量部に対してアクリルポリマーAが0.25重量部になる
ように調整した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
当該比較例5に係るアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体は、アクリルポリマーの含有量が少ないため、アンチモンドープ酸化錫の分散が不十分となり、ヘイズ値が高くやや曇ったポリカーボネート樹脂成形体であった。メガネやゴーグルのレンズ用途では、視認性を確保するために高い透明性が必要とされ、比較例5で得られたポリカーボネート樹脂成形体は、これらの用途に不適当であることが判明した。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0057】
(比較例6)
アンチモンドープ酸化錫1重量部に対してアクリルポリマーAが15重量部になるように調整した以外は実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
当該比較例6に係るアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体は、アクリルポリマーの含有量が多いため、得られたポリカーボネート樹脂成形体の表面強度が低下し、傷が付き易くなっていた。
得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の光学特性を実施例1と同様の方法で測定し、日射透過率、可視光透過率を算出した。さらに、得られたアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体のヘイズ値を測定した。
当該アンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体の、アンチモンドープ酸化錫の添加量、厚み、光学特性、所見を表1に記載する。
【0058】
(比較例7)
アクリルポリマーAを、アクリルポリマーH(熱分解温度240℃、ガラス転移温度30℃、酸価6.5mgKOH/g)に代替した以外は、実施例1と同様の方法でアンチモンドープ酸化錫微粒子分散体を得た。
尚、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体のアンチモンドープ酸化錫およびアクリルポリマーについて、表1に記載する。
当該比較例7に係るアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体は、ガラス点移転30℃のアクリルポリマーを使用しため、アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体がペースト状になり、その後の工程でポリカーボネート樹脂ペレットと均一に混合することが出来なかった。
アンチモンドープ酸化錫の添加量、所見を表1に記載する。
【0059】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価が2〜18.5mgKOH/gであり、TG−DTAより求められる熱分解温度が230℃以上の常温で固体であるアクリルポリマー0.3〜10重量部中に、
当該アクリルポリマーと反応した平均粒径100nm以下のアンチモンドープ酸化錫微粒子1重量部が、均一に分散していることを特徴とするポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体。
【請求項2】
前記アンチモンドープ酸化錫は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤から選択される少なくとも一種のアルコキシル基と有機官能基を持つ表面処理剤で、表面処理が施されていることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体。
【請求項3】
前記アクリルポリマーのガラス転移温度(Tg)が40℃以上であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体をポリカーボネート樹脂に添加し、溶融混練した後、成形したものであることを特徴とするアンチモンドープ酸化錫分散ポリカーボネート樹脂成形体。
【請求項5】
平均粒径100nm以下のアンチモンドープ酸化錫微粒子1重量部と、適宜な溶媒で希釈された、酸価が2〜18.5mgKOH/gであり、TG−DTAより求められる熱分解温度が230℃以上の常温で固体であるアクリルポリマー0.3〜10重量部とを混合した後、当該適宜な溶媒を除去してアンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物を生成させる工程と、
当該アンチモンドープ酸化錫微粒子とアクリルポリマーとの反応物を、当該アクリルポリマー中に均一に分散する工程と、を有することを特徴とするポリカーボネート樹脂添加用アンチモンドープ酸化錫微粒子分散体の製造方法。

【公開番号】特開2009−235303(P2009−235303A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85566(P2008−85566)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】