説明

ポリグリコール酸の結晶化温度を高くする方法及び結晶化温度を高くしたポリグリコール酸樹脂組成物

【課題】ポリグリコール酸の結晶化温度Tc を高くすること。
【解決手段】ポリグリコール酸に、炭素系フィラー、タルク、カオリン、硫酸バリウム、及び芳香族カルボン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加して得られる樹脂組成物試料5mgを、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度で、30℃から270℃まで加熱し、270℃で2分間保持した後、溶融状態にある該試料を20℃/分の降温速度にて冷却したとき、該冷却過程で検出される結晶化による発熱ピークの極大点として定義される結晶化温度(Tc)と、該ポリグリコール酸試料5mgを用いて同じ方法で検出した結晶化温度(Tcとの差〔(Tc)−(Tc〕を10℃以上とするポリグリコール酸の結晶化温度を高くする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリグリコール酸の結晶化温度を高くする方法に関する。また、本発明は、結晶化温度を高くしたポリグリコール酸樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリグリコール酸は、分子鎖中に脂肪族エステル結合を含んでいるため、土壌や海水中などの自然界に存在する微生物または酵素により分解されることが知られている。ポリグリコール酸は、環境に対する負荷が小さい生分解性高分子材料として注目されている。ポリグリコール酸は、酸素ガスバリア性、炭酸ガスバリア性、水蒸気バリア性などのガスバリア性に優れる上、耐熱性や機械的強度にも優れているので、包装材料などの分野において、単独で、あるいは他の樹脂材料などと複合化して用途展開が図られている。
【0003】
例えば、特開平10−138371号公報(特許文献1)には、長期保存を要する内容物等の容器として、ポリグリコール酸層と熱可塑性樹脂層とを含むガスバリヤー性多層中空容器が提案されている。
【0004】
ポリグリコール酸の単独重合体、及びポリグリコール酸の繰り返し単位の含有割合が高い共重合体は、結晶性の重合体である。このような結晶性ポリグリコール酸は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、溶融状態から降温する過程で検出される結晶化温度Tcが比較的高く、融点Tmと結晶化温度Tcとの間の温度差(Tm−Tc)が比較的小さい。
【0005】
一般に、この温度差が小さい重合体は、射出成形する場合には、結晶化速度が速いため、射出サイクル率を高めることができる。また、ポリグリコール酸の結晶化度を高めると、成形品のガスバリア性や機械的強度、耐熱性が向上する。ポリグリコール酸の結晶化度をさらに高めるため、ポリグリコール酸の成形過程で充分にアニーリング(熱処理)を行うことにより、結晶化度を高めることができ、問題は軽減されるが、生産性を高める必要のある場合には、アニーリング(熱処理)時間を短縮させるため、結晶化が不充分となりやすい。
【特許文献1】特開平10−138371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリグリコール酸の成形過程で、アニーリング(熱処理)を充分に行わなくとも、生産性を高める問題を解決する方法として、ポリグリコール酸の結晶化速度をさらに高くする方法が考えられる。一般に、高分子材料の結晶化速度を速める方法として、結晶核剤を添加する方法が用いられている。結晶核剤とは、結晶性高分子の一次結晶核となって結晶成長を促進し、その結果、結晶サイズを微細化するか、結晶化速度を速める働きをするものである。
【0007】
しかし、これまでに、種々の高分子材料について、効果の高い結晶核剤が見出されているが、結晶核剤の化学構造、物理的性質、ポリマーの結晶構造と結晶核剤効果との間には明確な相関関係は見出されておらず、ある高分子材料で効果のあった結晶核剤が、別の高分子材料においても効果があるとは限らない。
【0008】
本発明者らは、ポリグリコール酸に、炭素系フィラー、タルク、カオリン、硫酸バリウム、及び芳香族カルボン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を選択的に配合することにより、ポリグリコール酸の結晶化温度Tcを高くすることを見出した。さらに、ポリグリコール酸の結晶化温度Tcを高くすると、結晶化速度が顕著に増大することを見出した。これらの添加剤中でも、炭素系フィラーは、結晶化温度Tcを高くするために、特に高い効果を示すことを見出した。
【0009】
加えて、結晶化温度Tcを高くするための選択された添加剤の中でも、特に炭素系フィラーは、ポリグリコール酸成形品(例えば、フィルム)の遮光性及びガスバリア性を向上させることができる。上記添加剤のほとんどは、従来、ポリマーの結晶核剤としてではなく、充填剤として用いられていたものであり、ポリグリコール酸の結晶核剤として優れた機能を発揮することは驚くべきことである。
【0010】
このように、本発明者らは、ポリグリコール酸の溶融状態からの降温過程で検出される結晶化温度Tcが、ポリグリコール酸の結晶化速度の指標となることを見出し、ポリグリコール酸の結晶化温度Tc がポリグリコール酸単独の結晶化温度(Tcよりも高温側になるほど、結晶化速度が速いことを見出した。
【0011】
結晶化温度Tcの測定には、昇温速度、加熱最高温度、最高温度での維持時間、降温速度等の条件が重要である。この条件の相違によって、結晶化温度Tc の測定値は相違してくる。特許文献1では、昇温速度10℃/分で、結晶化温度Tc の測定が行われている。
【0012】
本発明における、結晶化温度Tcは、試料5mgを、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度で30℃から270℃まで加熱し、270℃で2分間保持した後、溶融状態にある該試料を20℃/分の降温速度にて冷却したとき、該冷却過程で検出される結晶化による発熱ピークの極大点として定義される結晶化温度である。
【0013】
本発明者らは、ポリグリコール酸の場合、このような条件で測定した結晶化温度Tcが、結晶化温度Tcを高くする効果をもっともよく定量的に示し、ポリグリコール酸の結晶化速度を反映していることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0014】
本発明の課題は、ポリグリコール酸の結晶化温度Tcを高くする方法を提供することにある。本発明の他の課題は、結晶化温度Tcを高くする役割を果たす添加剤成分を見出して、該添加剤成分を含有し、より高い結晶化温度Tcを有するポリグリコール酸樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、ポリグリコール酸に、炭素系フィラー、タルク、カオリン、硫酸バリウム、及び芳香族カルボン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加して、該ポリグリコール酸と該添加剤とを含有する樹脂組成物試料5mgを、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度で30℃から270℃まで加熱し、270℃で2分間保持した後、溶融状態にある該試料を20℃/分の降温速度にて冷却したとき、該冷却過程で検出される結晶化による発熱ピークの極大点として定義される結晶化温度(Tc)と、該ポリグリコール酸試料5mgを用いて同じ方法で検出した結晶化温度(Tcとの差〔(Tc)−(Tc〕を10℃以上とすることを特徴とするポリグリコール酸の結晶化温度を高くする方法が提供される。
【0016】
さらに、本発明によれば、ポリグリコール酸及び添加剤を含有するポリグリコール酸樹脂組成物において、
(1)該添加剤が、炭素系フィラー、タルク、カオリン、硫酸バリウム、及び芳香族カルボン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、かつ、
(2)該樹脂組成物試料5mgを、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度で30℃から270℃まで加熱し、270℃で2分間保持した後、溶融状態にある該試料を、20℃/分の降温速度で冷却したとき、該冷却過程で検出される結晶化による発熱ピークの極大点として定義される結晶化温度(Tc)と、該ポリグリコール酸試料5mgを用いて、同じ方法で検出した結晶化温度(Tcとの差〔(Tc)−(Tc〕が10℃以上である
ことを特徴とする結晶化温度を高くしたポリグリコール酸樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、結晶化温度Tcを著しく高くしたポリグリコール酸を提供することができる。また、本発明によれば、結晶化速度が著しく速くなり、生産性に優れることに加えて、ガスバリア性、機械的強度、耐熱性に優れた成形品を与えることができるポリグリコール酸樹脂組成物が提供される。さらに、本発明によれば、添加剤をさらに選択することにより、充分な遮光性を成形品に付与することができる。遮光性のある包装材料は、内容物の保存性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0019】
1.ポリグリコール酸
本発明のポリグリコール酸は、式(I)
【0020】
【化1】

【0021】
で表される繰り返し単位を有する単独重合体または共重合体である。
【0022】
ポリグリコール酸の式(I)で表される繰り返し単位の含有割合は、好ましくは55重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。式(I)で表される繰り返し単位の含有量が少なすぎると、ポリグリコール酸が本来有するガスバリア性、耐熱性、結晶性などの特性が損なわれる。
【0023】
本発明のポリグリコール酸は、融点を有するポリマーである。このようなポリグリコール酸は、グリコール酸、グリコール酸アルキルエステル、またはグリコール酸塩を重縮合する方法により製造することができる。
【0024】
また、ポリグリコール酸は、式(II)
【0025】
【化2】

【0026】
に示されるように、グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリドを開環重合することにより製造することができる。
【0027】
特に、高い機械的強度が求められる場合には、ポリグリコール酸の合成法として、比較的高分子量体が得られやすいグリコリドの開環重合法を採用することが好ましい。グリコリドを単独で開環重合することにより、ポリグリコール酸の単独重合体(即ち、ポリグリコリド)を得ることができる。
【0028】
ポリグリコール酸としてグリコール酸の共重合体を製造するには、必要に応じてグリコリドやグリコール酸などのモノマーと各種コモノマーとを共重合させる。
【0029】
ポリグリコール酸に、結晶性を調節するなどの目的で、本発明の効果を阻害しない範囲の比較的少量の他の熱可塑性樹脂を混合することもできる。また、成形加工性、シートや成形体の物性を調整する目的で、可塑剤、滑剤、無機フィラー、紫外線吸収剤、着色剤などのその他の添加剤などを添加することができる。
【0030】
本発明で使用するグリコール酸(共)重合体の温度270℃及びせん断速度120sec−1の条件下で測定した溶融粘度は、好ましくは100〜5,000Pa・sec、より好ましくは200〜3,000Pa・sec、特に好ましくは300〜2,000Pa・secである。
【0031】
ポリグリコール酸の重合装置としては、押出機型、パドル翼を持った縦型、ヘリカルリボン翼を持った縦型、押出機型やニーダー型の横型、アンプル型、管状型、平板型(四角形、特に、長方形)など様々な装置の中から、適宜選択することができる。
【0032】
2.添加剤
本発明でポリグリコール酸の結晶化温度Tcを高くするために用いられる添加剤は、炭素系フィラー、タルク、カオリン、硫酸バリウム、及び芳香族カルボン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0033】
炭素系フィラーとしては、黒鉛、活性炭、カーボンブラック、フラーレン、及びカーボンナノチューブからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0034】
黒鉛は、炭素の同素体の一つで、グラファイトとも呼ばれ、鉱物名を石墨という。黒鉛としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、熱分解黒鉛、球状黒鉛、及び膨張黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0035】
活性炭は、大きな比表面積と吸着能をもつ多孔質の炭素物質である。木炭などの原料を十分に炭化した後、水蒸気による高温処理あるいは塩化亜鉛などの水溶液の含浸と高温焼成などの方法で賦活し製造される。
【0036】
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チヤンネルブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、製法や原料によって特に限定されるものではない。フラーレンは、クラスター構造の炭素であり、最初に発見されたのがカーボン60である。カーボン60は、炭素原子60個からなり、クラスターの形はサッカーボール状である。その他にも、炭素原子70個、84個などでもクラスター構造を形成する。カーボンナノチューブは、炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質である。
【0037】
炭素系フィラーは、樹脂中での分散性を高くする目的で分散剤を併用したり、化学修飾や、表面処理したりすることができる。
【0038】
炭素系フィラーの平均粒子径(レーザー回折法により測定)は、特に限定されるものではないが、粒子径が小さすぎると凝集による分散不良を生じ、粒子径が大きすぎると機械物性の低下を引き起こすことから、0.01〜200μmであることが好ましく、0.01〜100μmがより好ましい。粒径の測定は、島津製作所製の粒径測定器SALD−3000Jを用いて、重量基準でのメディアン径を測定し、平均粒子径 とする。
【0039】
これら炭素系フィラーの添加量は、ポリグリコール酸100重量部に対し、好ましくは0.001〜30重量部、より好ましくは0.01〜10重量部であり、特に好ましくは、0.1〜5重量部であり、所望の結晶化速度、ガスバリア性、遮光性などによって適宜選択される。
【0040】
タルクとは、粘度鉱物の一種である滑石という鉱物を物理的に粉砕した粉末状のものである。化学組成は、3MgO・4SiO・HOで表され、含水ケイ酸マグネシウムとも呼ばれる。タルクは、樹脂中での分散性を向上させる目的で分散剤を併用したり、化学修飾や表面処理をしたりすることができる。
【0041】
カオリンは、基本化学式AlOSi(OH)・nHOで表される含水ケイ酸アルミニウムである。カオリンは、樹脂中での分散性を向上させる目的で分散剤を併用したり、化学修飾や表面処理をしたりすることができる。
【0042】
硫酸バリウムは、化学組成BaS0で表され、一般的に天然の重晶石と呼ばれるバライト鉱物の粉砕品と、化学反応で製造した沈降性硫酸バリウムとがあるが、どちらの硫酸バリウムも用いることができる。硫酸バリウムは、樹脂中での分散性を向上させる目的で分散剤を併用したり、化学修飾や表面処理をしたりすることができる。
【0043】
タルク、カオリン、及び硫酸バリウムの添加量は、ポリグリコール酸100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは、0.5〜5重量部である。タルク、カオリン、及び硫酸バリウムの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、粒子径が小さすぎると凝集による分散不良を生じ、粒子径が大きすぎると機械物性の低下を引き起こすことから、0.01〜200μmであることが好ましく、0.1〜100μmがより好ましい。粒径の測定は、島津製作所製の粒径測定器SALD−3000Jを用いて、重量基準でのメディアン径を測定し、平均粒子径 とする。
【0044】
芳香族カルボン酸金属塩としては、例えば、ジ−パラ−tert−ブチル安息香酸アルミニウムが用いられる。これらの添加量は、ポリグリコール酸100重量部に対し、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0045】
3.ポリグリコール酸樹脂組成物の製造方法
本発明のポリグリコール酸樹脂組成物は、二軸または単軸の通常の押出機を用いて、ポリグリコール酸と、炭素系フィラー、タルク、カオリン、硫酸バリウム、及び芳香族カルボン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを溶融混練することにより得ることができる。混合方法については、特に限定されるものではなく、添加剤を適当に分散できる方法であれば、どのような方法でもよい。
【0046】
4.結晶化温度Tc及び半結晶化時間の測定
結晶化速度は、降温過程における結晶化による発熱ピークの極大点として定義される結晶化温度Tcと関連している。結晶化速度の具体的目安としては、半結晶化時間が挙げられる。
【0047】
本発明の結晶化温度Tcの測定値は、示差走査熱量計を用いて測定した値である。より具体的には、試料5mgを、DSCを用いて、窒素雰囲気下、30℃から、結晶の融解ピークが消失する融点より高い270℃まで、20℃/分の昇温速度で加熱し、270℃で2分間保持した後、溶融状態にある試料を、20℃/分の降温速度で冷却した場合に、熱量曲線に表われる結晶化による発熱ピークの極大点を示す温度を、結晶化温度Tcの測定値とする〔図1〕。
【0048】
本発明のポリグリコール酸の結晶化温度を向上させる方法においては、ポリグリコール酸に、炭素系フィラー、タルク、カオリン、硫酸バリウム、及び芳香族カルボン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加して、該ポリグリコール酸と該添加剤とを含有する樹脂組成物試料5mgを、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度で、30℃から270℃まで加熱し、270℃で2分間保持した後、溶融状態にある該試料を20℃/分の降温速度にて冷却したとき、該冷却過程で検出される結晶化による発熱ピークの極大点として定義される結晶化温度(Tc)と、該ポリグリコール酸試料5mgを用いて同じ方法で検出した結晶化温度(Tcとの差〔(Tc)−(Tc〕を10℃以上とする。〔(Tc)−(Tc〕は、好ましくは10〜75℃、より好ましくは11〜70℃であり、多くの場合11〜55℃である。
【0049】
本発明のポリグリコール酸の結晶化温度を高くする方法において、〔(Tc)−(Tc〕の数値が、大きければ大きい程、樹脂組成物の結晶化時間Tc が高くなり、結晶化速度が速くなっている。
【0050】
本発明の半結晶化時間は、結晶化速度測定器を用いて、該試料から形成した厚み200μmのシートを270℃で2分間加温し溶融した後、100℃のオイルバス中に投入して結晶化させ、安定化した透過光量の半値を示す時間として測定される半結晶化時間である。
【0051】
この方法で求められる半結晶化時間は、結晶化速度の具体的な目安となり、値が小さいほど結晶化速度が速いことを示している。本発明のポリグリコール酸樹脂組成物の半結晶化時間(S)と、ポリグリコール酸の半結晶化時間(S)との比(S/S)は、通常0.75以下である。S/Sの比が小さければ、小さい程、添加剤の結晶化速度は速くする効果が示される。S/S は、より好ましくは、0.03〜0.75、特に好ましくは0.04〜0.71である。
【0052】
5.その他の特性の測定
本発明のポリグリコール酸樹脂組成物は、遮光率及び酸素ガス透過率で顕著な特性をさらに示す。
【0053】
本発明の遮光率は、分光光度計を用いて、試料から形成した厚み60μmのフィルムについて、波長400〜900nmの範囲で測定した光線透過率の平均値である。ポリグリコール酸樹脂組成物の光線透過率の平均値(T)と、ポリグリコール酸の光線透過率の平均値(T)との比(T/T )は、好ましくは0.95以下であり、より好ましくは0〜0.93、特に好ましくは0〜0.90である。
【0054】
本発明の酸素透過率は、試料から形成した厚み60μmのフィルムについて、温度23℃、相対湿度80%で測定した酸素ガス透過係数である。 ポリグリコール酸樹脂組成物の酸素ガス透過係数(P)と、ポリグリコール酸の酸素ガス透過係数(P)との比(P/P )が、好ましくは0.95以下であり、より好ましくは0〜0.90、特に好ましくは0〜0.88である。
【0055】
6.成形加工及び用途
本発明のポリグリコール酸樹脂組成物は、結晶化温度Tcが高くなり、結晶化速度が速くなっているため、射出成形サイクルを短縮させることができる。射出成形物は、ポリグリコール酸の生分解性を活かす用途に使用する場合には、ポリグリコール酸単独から形成されるが、必要に応じて、他の樹脂層で被覆することもできる。
【0056】
本発明のポリグリコール酸樹脂組成物は、フィルムやシートなどの押出成形品の成形に用いることができる。その他の成形法も可能である。フィルムやシートは、一般に、ポリグリコール酸樹脂組成物をTダイなどのフラットダイ、あるいはサーキュラーダイから溶融押出することにより製造される。シートは、フィルムよりも比較的厚みのある各種包材に適用することができる。シートは、真空成形などのシート成形法により、絞り比の比較的浅いトレー、絞り比の比較的深いカップなどの容器に二次加工することができる。
【0057】
フィルムやシートは、単層でもよいが、必要に応じて、他の樹脂層や紙などと積層することができる。積層法としては、ラミネート加工、コーティング、共押出などがある。アルミニウム蒸着などのドライプロセスも適用することができる。ラミネート加工には、ウエットラミネーション、ドライラミネーション、エクストルージョンラミネーション、ホットメルトラミネーション、ノンソルベントラミネーションなどが含まれる。コーティングには、フィルムの表面に防湿コートや防湿ラミネートなどを施す方法が含まれる。
【0058】
共押出による積層では、本発明の樹脂組成物層を中間層として、他の樹脂層を内外層に配置することが好ましい。層構成としては、例えば、外層/中間層/内層の少なくとも三層構成があり、各層間には、必要に応じて接着層を配置してもよい。
【0059】
また、外層または内層には、所望の機能に応じて、例えば、シール可能な樹脂、耐衝撃性や耐アビューズ性、耐熱性(例えば、耐ボイル性、耐レトルト性)などに優れた樹脂を配置することができる。外層、中間層、及び内層は、所望により、それぞれ複数層にすることができる。
【0060】
ラミネート加工による積層体としては、例えば、以下のような層構成のものが挙げられる。
1)外層/中間層/内層、
2)外層/中間層/防湿コート層、
3)外層/中間層/防湿コート層/内層、
4)防湿コート層/外層/中間層/内層、
5)防湿コート層/外層/中間層/防湿コート層、
6)防湿コート層/外層/中間層/防湿コート層/内層。
【0061】
外層、中間層、及び内層は、それぞれ単層でもよいが、多層であってもよい。各層間には、必要に応じて接着剤層が配置される。これらの積層フィルムにおいて、その一部を構成する層に延伸フィルムを含んでもよい。また、アルミニウム蒸着層などの金属若しくは金属酸化物などの蒸着層を最外層や中間層などに付加的に配置することができる。
【0062】
本発明における、 ポリグリコール酸の結晶化温度を高くする方法、およびポリグリコール酸樹脂組成物は、紙への溶融押出コーティングに好適に用いられる。溶融押出しコーティングは、冷却ロール温度を低くしても巻き取り速度が速いため、通常のポリグリコール酸樹脂では結晶化が不充分となる。本発明における、ポリグリコール酸の結晶化温度を高くする方法、およびポリグリコーール酸樹脂組成物を用いることで、上記成形過程であってもポリグリコール酸の結晶化度を高め、ガスバリア性を向上させることができる。
【0063】
溶融押出しコーティングによって成形されるシートとして、例えば、以下のような層構成を考えることができる。また、各層の間には、接着層を配置することができる。
1)紙層/ポリグリコール酸樹脂組成物層、
2)紙層/ポリグリコール酸樹脂組成物層/他の樹脂層、
3)紙層/他の樹脂層/ポリグリコール酸樹脂組成物層/他の樹脂層、
4)他の樹脂層/ポリグリコール酸樹脂組成物層/他の樹脂層/紙層/他の樹脂層、
5)他の樹脂層/ポリグリコール酸樹脂組成物層/紙層/他の樹脂層、
6)他の樹脂層/ポリグリコール酸樹脂組成物層/紙層。
【0064】
紙層に用いられる紙として、原材料パルプからの加工の程度あるいは秤量によって、和紙、普通紙、クラフト紙、アート紙、コート紙、インディアン紙、板紙、段ボール紙、カップ原紙、アイボリー紙などを用いることができる。食品容器基材としての使用を考慮したとき秤量が5〜800g/m、特に20〜500g/mであるものが好ましく用いられる。
【0065】
他の樹脂層としては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリエステルコポリマーなどが用いられる。
【0066】
繊維としては、ポリグリコール酸を含む生分解性樹脂からなる糸、例えば、釣糸にすることができる。中空成形物としては、ガスバリヤ性を有する中空容器(例えば、ボトル)がある。中空成形物としては、延伸ブロー容器が好ましい。
中空成形物には、ポリグリコール酸樹脂組成物からなる単層の容器があるが、他の樹脂層との多層容器とすることができる。
【0067】
ポリグリコール酸樹脂組成物層を中間層とし、ポリエステル樹脂/ポリグリコール酸樹脂組成物/ポリエステル樹脂からなる少なくとも三層構成を有し、適宜、他の熱可塑性樹脂層や接着層を配置した層構成の容器は、ガスバリヤ性や透明性に優れているため、ビールなどのボトルとして好適である。中間層をポリエステル樹脂とポリグリコール酸樹脂組成物とのブレンド物で追加形成してもよい。このように、ポリグリコール酸樹脂組成物と共押出あるいは共射出される別の熱可塑性樹脂とのブレンド物は、目的とする用途の特性に特別な不都合を来たさない限り、中間層、表面層、接着層としてよく用いられる。こららブレンド物を使用することは、リサイクルなど環境にとって有用である。また、積層体や多層体において、ポリグリコール酸樹脂組成物層を発泡体層とすることができる。
【0068】
以上の如き各種成形物において、層を構成する樹脂中に乾燥剤、吸水剤などを配合してもよい。また、積層体や多層体などにおいて、脱酸素剤含有層を配置することができる。積層体や多層体において、必要に応じて用いられる接着剤層には、エポキシ化ポリオレフィンなどの接着剤などが用いられる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例に基づいて本発明を更に、具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例において、測定は以下のように行われる。
【0070】
(1)示差走査熱量分析計(DSC)による、結晶化温度の測定(JIS K7121)
島津製作所製DSC−60を用い、試料5mgをアルミニウムパン中に秤量し、窒素雰囲気下(流量30mm/min)において、20℃/分の昇温速度にて、30℃から270℃まで加熱し、270℃で2分間保持した後、溶融状態にある試料を、20℃/分の降温速度にて冷却した際に表れる結晶化による発熱ピークの極大点を結晶化温度Tcとした。結晶化温度Tcは、結晶化速度の指標となり、ポリグリコール酸単独の結晶化温度よりも高温側になるほど結晶化速度が速いことを示している。
【0071】
(2)半結晶化時間の測定
半結晶化時間の測定は、脱偏光強度法という方法で行う。この方法の原理は、偏光をフィルムに入射し、それに直行する方向で光の検出を行った場合、結晶化していない状態では光は透過せず、結晶化に伴って光が透過するというものである。結晶化が終了した時点で、透過光量が安定(飽和)するので、その飽和強度の1/2での時間を半結晶化時間とする。
【0072】
具体的には、コタキ結晶化速度測定器(MODEL MK−801)を使用し、厚さ200μmの非晶シートを270℃で2分間保持した後、100℃に設定したオイルバス中に投入し、安定化した透過光量の半値を示す時間を半結晶化時間とした。この方法で求められる半結晶化時間は、結晶化速度の目安となり、値が小さいほど結晶化速度が速いことを示している。
【0073】
(3)遮光性の評価
島津分光光度計UV−2000を用いて、波長400〜900nmの範囲における光線透過率を測定し、平均値を求めた。試料の厚みは60μmで測定を行った。
【0074】
(4)酸素ガス透過係数
モダンコントロール社製OX−TRAN2/20を用い、温度23℃、相対温度80%で酸素ガス透過度を測定し、試料厚みから酸素ガス透過係数を算出した。酸素ガス透過係数の単位は(cm・cm/cm・sec・cmHg)となる。
【0075】
[実施例1]
ポリグリコール酸(温度270℃、せん断速度120sec−1で測定した溶融粘度が600Pa・sec)100重量部に、鱗状黒鉛を1重量部をドライブレンドした後、東洋精機製作所製ラボプラストミルMODEL30C150にて、温度250℃、回転数50rpmで5分間溶融混練しポリグリコール酸樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を120℃で6時間乾燥し、神藤金属工業所製プレス成型機を用いて温度250℃、圧力100kgf/cmで2分間プレスし、その後冷却して、厚さ200μmのシート、60μmのフィルムを得た。このシート、フィルムについて結晶化温度Tcおよび半結晶化時間、遮光性、酸素ガス透過係数を測定した。
【0076】
[実施例2]
添加物質をアセチレンカーボンブラック(和光純薬製)とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間を測定した。
【0077】
[実施例3]
添加物質を活性炭(和光純薬製)とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間を測定した。
【0078】
[実施例4〜8]
添加量を0.001、0.01、0.1、0.5、5重量部とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間、遮光性、酸素ガス透過係数を測定した。
【0079】
[実施例9〜13]
添加物質を、鱗片状黒鉛、熱分解黒鉛、土状黒鉛、球状黒鉛、膨張黒鉛とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間を測定した。
【0080】
[実施例14]
添加物質をタルク(和光純薬製)とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間を測定した。
【0081】
[実施例15]
添加物質をカオリン(竹原化学工業製、NNカオリンクレー)とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間を測定した。
【0082】
[実施例16]
添加物質を硫酸バリウム(竹原化学工業製、W1)とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間を測定した。
【0083】
[実施例17]
添加物質を芳香族カルボン酸金属塩(堺化学工業社製、A46)とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間を測定した。
【0084】
[比較例1]
添加物質を添加しないこと以外は、実施例1と同様に結晶化温度、半結晶化時間、遮光性、酸素ガス透過係数を測定した。
【0085】
[比較例2]
添加物質を炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、ソフトン2200)とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間を測定した。
【0086】
[比較例3]
添加物質をシリカ(日本アエロジル社製、アエロジル90G)とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間を測定した。
【0087】
[比較例4]
添加物質を酸化亜鉛(和光純薬)とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間を測定した。
【0088】
[比較例5]
添加物質をジベンジリデンソルビトール(新日本理化社製ゲルオールLM30)とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間を測定した。
【0089】
[比較例6]
添加物質をステアリン酸アミド(和光純薬)とした以外は、実施例1と同様に結晶化温度Tc、半結晶化時間を測定した。
【0090】
【表1】

【0091】
[考察] 結晶化温度Tc、半結晶化時間の結果を表1に示した。
ここで、実施例では、(Tc)−(Tcは、10℃を超えている。
(Tc)−(Tc が大きいほど、試料の結晶化速度が速いことを意味し、試料の半結晶化時間は短いほど結晶化速度が速いことを意味する。
【0092】
表1より、黒鉛、カーボンブラック、活性炭の添加により結晶化速度が向上していることがわかる(実施例1〜3、比較例1)。添加量に関しては、0.001〜5重量部の範囲で効果があり、0.1〜5重量部で特に効果が高い(実施例1、実施例4〜8)。また、様々な種類の黒鉛で同等の効果が表れていることがわかる(実施例9〜13)。タルク、カオリン、硫酸バリウム、芳香族カルボン酸金属塩においても結晶化速度が向上していることがわかる(実施例14〜17)。
【0093】
これらの添加剤は、一般的に添加剤として用いられている他の物質よりも効果が高いことがわかる(比較例2〜6)。
【0094】
【表2】

【0095】
[考察] 表2より、黒鉛の添加によって光線透過率が減少していることがわかる。すなわち、遮光性が向上している。
【0096】
【表3】

【0097】
[考察] 表3より、黒鉛の添加によって酸素ガス透過係数が低下していることがわかる。すなわち、ガスバリア性が向上している。
【0098】
[考察] 以上のことから、炭素の同素体(グラファイト、カーボンブラック、活性炭)を添加することによって、ポリグリコール酸の結晶化温度Tcが高くなり、すなわち結晶化速度が速くなり、遮光性、ガスバリア性も向上することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、結晶化温度Tcを著しく高くしたポリグリコール酸を提供できる。結晶化温度Tcを著しく高くすることにより、結晶化速度が速くなり、生産性に優れることに加えて、ガスバリア性、機械的強度、耐熱性に優れた成形品を与えることができるポリグリコール酸樹脂組成物が提供できる。さらに、本発明によれば、添加剤をさらに選択することにより、遮光性を付与することができる。遮光性のある包装材料は、内容物の保存性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】30℃から270℃まで20℃/分で昇温し、270℃で2分間保持した後、溶融状態の試料を20℃/分の降温速度にて冷却した際に表れる結晶化温度Tc の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリコール酸に、炭素系フィラー、タルク、カオリン、硫酸バリウム、及び芳香族カルボン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加して、該ポリグリコール酸と該添加剤とを含有する樹脂組成物試料5mgを、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度で30℃から270℃まで加熱し、270℃で2分間保持した後、溶融状態にある該試料を20℃/分の降温速度にて冷却したとき、該冷却過程で検出される結晶化による発熱ピークの極大点として定義される結晶化温度(Tc)と、該ポリグリコール酸試料5mgを用いて同じ方法で検出した結晶化温度(Tcとの差〔(Tc)−(Tc〕を10℃以上とすることを特徴とするポリグリコール酸の結晶化温度を高くする方法。
【請求項2】
該添加剤が炭素系フィラーであり、かつ、該炭素系フィラーが、黒鉛、カーボンブラック、活性炭、フラーレン、及びカーボンナノチューブからなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素系フィラーである請求項1記載の方法。
【請求項3】
該黒鉛が、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、熱分解黒鉛、球状黒鉛、及び膨張黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の黒鉛である請求項2記載の方法。
【請求項4】
結晶化速度測定器を用いて、該樹脂組成物から形成した厚み200μmのシートを270℃で2分間加温し溶融した後、100℃のオイルバス中に投入して結晶化させ、安定化した透過光量の半値を示す時間として測定される半結晶化時間(S)と、該ポリグリコール酸から形成した厚み200μmのシートを用いて同じ方法で測定される半結晶化時間(S)との比(S/S)が、0.75以下であるとの特性をさらに示す請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
分光光度計を用いて、該樹脂組成物から形成した厚み60μmのフィルムについて、波長400〜900nmの範囲で測定した光線透過率の平均値(T)と、該ポリグリコール酸から形成した厚み60μmのフィルムについて、同じ方法で測定した光線透過率の平均値(T)との比(T/T )が、0.95以下であるとの特性をさらに示す請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該樹脂組成物から形成した厚み60μmのフィルムについて、温度23℃、相対湿度80%で測定した酸素ガス透過係数(P)と、該ポリグリコール酸から形成した厚み60μmのフィルムについて、同じ方法で測定した酸素ガス透過係数(P)との比(P/P )が、0.95以下であるとの特性をさらに示す請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該添加剤が、炭素系フィラーであって、かつ、該ポリグリコール酸100重量部に対する添加剤の添加割合が、0.001〜30重量部である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ポリグリコール酸及び添加剤を含有するポリグリコール酸樹脂組成物において、
(1)該添加剤が、炭素系フィラー、タルク、カオリン、硫酸バリウム、及び芳香族カルボン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、かつ、
(2)該樹脂組成物試料5mgを、示差走査熱量計を用いて、20℃/分の昇温速度で30℃から270℃まで加熱し、270℃で2分間保持した後、溶融状態にある該試料を、20℃/分の降温速度で冷却したとき、該冷却過程で検出される結晶化による発熱ピークの極大点として定義される結晶化温度(Tc)と、該ポリグリコール酸試料5mgを用いて、同じ方法で検出した結晶化温度(Tcとの差〔(Tc)−(Tc〕が10℃以上である
ことを特徴とする結晶化温度を高くしたポリグリコール酸樹脂組成物。
【請求項9】
該添加剤が炭素系フィラーである場合、該炭素系フィラーが、黒鉛、カーボンブラック、活性炭、フラーレン、及びカーボンナノチューブからなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素系フィラーである請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
該黒鉛が、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、熱分解黒鉛、球状黒鉛、及び膨張黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の黒鉛である請求項9記載の樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−260902(P2008−260902A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106453(P2007−106453)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】