説明

ポリプロピレン樹脂組成物およびその射出成形体

【課題】耐熱性、ロックウェル硬度および延性に優れるポリプロピレン樹脂組成物およびそれからなる射出成形体を提供する。
【解決手段】メルトフローレートが2〜90g/10分であるプロピレン単独重合体またはプロピレン共重合体86〜95重量%と、密度が0.885〜0.850g/cm3であり、メルトフローレートが1〜50g/10分であるプロピレンとα−オレフィンから選ばれるオレフィンと、エチレンとの共重合体)5〜14重量%とを含有する樹脂混合物100重量部と、造核剤0.03〜2重量部とを含むポリプロピレン樹脂組成物およびその射出成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物およびその射出成形体に関するものである。さらに詳細には、耐熱性、ロックウェル硬度および延性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物およびその射出成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂組成物は、剛性や耐衝撃性、耐熱性に優れていることから、従来から、種々の成形品等に用いられている。例えば、特開2000−72938号公報には、シートおよびシートからなる成形品に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物として、一定以上の結晶性と特定範囲のMFRを持つポリプロピレン系樹脂に対し、造核剤を添加し、さらに、一定以上の温度上昇溶離分別特性と密度、MFRを持ったポリエチレン系樹脂を配合したポリオレフィン系樹脂組成物が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−72938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記公報に記載されているポリオレフィン系樹脂組成物についても、耐熱性、ロックウェル硬度および延性については、さらなる改良が望まれていた。かかる状況の下、本発明の目的は、耐熱性、ロックウェル硬度および延性に優れるポリプロピレン樹脂組成物およびそれからなる射出成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、検討の結果、本発明が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
下記ポリプロピレン樹脂(成分(A))86〜95重量%と、下記ポリエチレン樹脂(成分(B))5〜14重量%とを含有する樹脂混合物(I)と(成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする)、前記樹脂混合物(I)100重量部に対して、造核剤(成分(C))0.03〜2重量部とを含むポリプロピレン樹脂組成物およびその射出成形体に係るものである。
成分(A):
プロピレン単独重合体または、エチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のオレフィンに由来する1モル%以下の構造単位とプロピレンに由来する構造単位とを含むプロピレン共重合体であり(ただし、プロピレン共重合体の全量を100モル%とする)、
測定温度230℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(JIS−K6758)が2〜90g/10分であるポリプロピレン樹脂。
成分(B):
プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンと、エチレンとの共重合体であって、
密度が0.885〜0.850g/cm3であり、
測定温度190℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(JIS−K7210)が1〜50g/10分であるポリエチレン樹脂。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱性、ロックウェル硬度および延性に優れるポリプロピレン樹脂組成物およびその射出成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(成分(A))は、プロピレン単独重合体または、エチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のオレフィンに由来する1モル%以下の構造単位とプロピレンに由来する構造単位とを含むプロピレン共重合体である(ただし、プロピレン共重合体の全量を100モル%とする)。
【0008】
成分(A)に用いられる炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチル−ペンテン−1等が挙げられ、好ましくは1−ブテンである。これらのα−オレフィンは単独で用いても良く、少なくとも2種を併合しても良い。
【0009】
成分(A)がプロピレン共重合体である場合、プロピレン共重合体に含有されるエチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のオレフィンに由来する構造単位の含有量は1モル%以下である。オレフィンに由来する構造単位の含有量に由来する構造単位の含有量が1モル%を超えた場合、耐熱性や硬度が不充分なことがある。
【0010】
成分(A)の測定温度230℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(以下、MFRと称する)(JIS−K6758)が2〜90g/10分であり、好ましくは15〜50g/10分である。成分(A)のMFRが2g/10分未満の場合、成形性が不充分なことがあり、90g/10分を超えた場合、延性が不充分なことがある。
【0011】
耐熱性または硬度の観点から、本発明の成分(A)として、好ましくはプロピレン単独重合体であり、より好ましくは13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率が0.95以上であるプロピレン単独重合体である。
【0012】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて行う)。具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定した。この方法によって英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19-14Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
【0013】
成分(A)の製造方法は、従来の重合触媒を用いて、従来の重合方法によって製造する方法である。成分(A)の製造に用いられる重合触媒としては、例えば、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と(b)有機アルミニウム化合物と(c)電子供与体成分とから形成される触媒系が挙げられる。この触媒の製造方法は例えば、特開平1−319508、特開平7−216017、特開平10−212319号等に記載されている。
【0014】
成分(A)の製造に用いられる重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重合、気相重合等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を任意に組合せもよい。工業的かつ経済的な観点から、好ましくは気相重合法である。
【0015】
成分(A)の製造において、固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)および電子供与体成分(c)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、公知の触媒の使用方法によって、適宜、決めればよい。
【0016】
成分(A)の製造において、重合温度は、通常、−30〜300℃であり、好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜5MPaである。分子量調整剤として、例えば、水素を用いることができる。
【0017】
成分(A)の製造において、重合(本重合)の実施前に、公知の方法によって、予備重合を行っても良い。公知の予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分(a)および有機アルミニウム化合物(b)の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。
【0018】
本発明で用いられるポリエチレン樹脂(成分(B))は、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンと、エチレンとの共重合体である。成分(B)に用いられる炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、前記の成分(A)に用いられる炭素数4〜20のα−オレフィンと同様のα−オレフィンが挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0019】
成分(B)の密度は0.885〜0.850g/cm3である。成分(B)の密度が0.85g/cm3未満の場合、剛性が不充分なことがあり、0.885g/cm3を超えた場合、衝撃強度が不充分なことがある。
【0020】
成分(B)の測定温度190℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(以下、MFRと称する)(JIS−K7210)が1〜50g/10分であり、好ましくは2〜30g/10分である。成分(B)のMFRが1g/10分未満の場合、成形性が不充分なことがあり、50g/10分を超えた場合、衝撃強度が不充分なことがある。
【0021】
成分(B)の製造方法は、従来の重合触媒を用いて、従来の重合方法によって製造する方法である。成分(B)の製造に用いられる重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒(担持型または非担持型のハロゲン含有チタン化合物と有機アルミニウム化合物の組み合わせからなる触媒)、フィリップス型触媒(担持された酸化クロム(Cr6+)からなる触媒)、カミンスキー型触媒(担持型または非担持型のメタロセン化合物と有機アルミニウム化合物(特にアルモキサン)との組み合わせからなる触媒)等が挙げられる。成分(B)としては、比較的狭い組成分布を有するポリエチレン樹脂が望ましいことから、触媒として好ましくはカミンスキー型触媒である。
【0022】
成分(B)の製造に用いられる重合方法としては、スラリー重合法、気相流動床重合法(例えば、特開昭59−23011号公報に記載の方法)、溶液重合法、圧力が20MPa以上で、重合温度が100℃以上で行われる高圧バルク重合法等が挙げられる。また、例えば、公知の方法で、重合温度やモノマー量を調節することによって、分子量や結晶性の分布を制御することができる。
【0023】
本発明で用いられる造核剤(成分(C))は、ポリプロピレン樹脂に対して造核効果を持つ物質であり、例えば、1,3:2,4−ビス(o−ベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−o−3,4−ジメチルベンジリデン−2,4−o−ベンジリデンソルビトール、1,3−o−ベンジリデン−2,4−o−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−o−p−クロロベンジリデン−2,4−o−3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール、1,3−o−3,4−ジメチルベンジリデン−2,4−o−p−クロロベンジリデンソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−p−クロロベンジリデン)ソルビトール、リン酸ビス(p−t−ブチルフェニル)ナトリウム、メチレン(2,4−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ナトリウム−2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ポリビニルシクロヘキサン、アルミニウム−ジ−パラ−ターシャリブチル−ヒドロキシベンゾイックアシッド等が挙げられ、好ましくはアルミニウム−ジ−パラ−ターシャリブチル−ヒドロキシベンゾイックアシッドである。これらの造核剤は単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
【0024】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物に含有される成分(A)の含有量は86〜95重量%であり、好ましくは86〜90重量%である。成分(B)の含有量は5〜14重量%であり、好ましくは10〜14重量%である。ただし、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とし、成分(A)と成分(B)を含有する樹脂混合物を樹脂混合物(I)と称する。成分(A)の含有量が86重量%未満の場合(すなわち、成分(B)の含有量が14重量%を超えた場合)、耐熱性やロックウェル硬度が不充分なことがあり、成分(A)の含有量が95重量%を超えた場合(すなわち、成分(B)の含有量が5重量%未満の場合)、衝撃強度が不十分なことがある。
【0025】
成分(C)の含有量は、成分(A)と成分(B)を含有する前記樹脂混合物(I)100重量部に対して、0.03〜2重量部であり、好ましくは0.03〜0.5重量部である。成分(C)の含有量が0.03重量部未満の場合、耐熱性、ロックウェル硬度が不充分なことがあり、2重量部を超えた場合、過剰なだけで不経済であり、また、射出成形する時に煙や臭気の原因になる恐れがある。
【0026】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、成形性、延性、耐衝撃性を高めるという観点から、好ましくは、5〜120g/10分であり、より好ましくは8〜50g/10分である。なお、ポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、測定温度230℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(JIS−K6758)である。
【0027】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物のメルトフローレートを調整する方法としては、ポリプロピレン樹脂(成分(A))とポリエチレン樹脂(成分(B))と造核剤(成分(C))と有機過酸化物(成分(D))とを溶融混練する方法が挙げられる。成分(D)の使用量として好ましくは、メルトフローレートの調整効果や成形性を高めるという観点から、成分(A)と成分(B)を含有する前記樹脂混合物(I)100重量部に対して、0.001〜0.1重量部である。
【0028】
有機過酸化物(成分(D))としては、過酸化アルキル類、過酸化ジアシル類、過酸化エステル類、過酸化カーボネート類等が挙げられる。過酸化アルキル類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンや、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキシノナン等が挙げられる。
【0029】
過酸化ジアシル類としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドやデカノイルパーオキサイドが挙げられ、過酸化エステル類としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルネオヘプタネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエートやジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジテート等が挙げられる。
【0030】
過酸化カーボネート類としては、例えば、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネートやジミリスチルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0031】
有機過酸化物(成分(D))として好ましくは、過酸化アルキル類であり、より好ましくは、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4−7−トリパーオキシノナンである。
【0032】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法は、通常の溶融混練方法であり、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール、ブラベンダー、ニーダーなどを用いた方法が挙げられる。
【0033】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、必要に応じて、各種添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤等が挙げられる。
【0034】
本発明の射出成形体は、本発明のポリプロピレン樹脂組成物からなるものである。そして、その射出成形方法は、公知の射出成形方法が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を説明する。実施例および比較例で用いた重合体及び組成物の物性の測定方法を以下に示した。
【0036】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
(1−1)ポリプロピレン樹脂のMFRの測定
測定温度230℃、荷重2.16kgfで、JIS−K6758に従って測定した。
(1−2)ポリエチレン系樹脂のMFRの測定
測定温度190℃、荷重2.16kgfで、JIS−K7210に従って測定した。
【0037】
(2)耐熱性試験(加熱変形温度(HDT)、単位:℃)
JIS−K−7207に規定された方法に従って測定した。後述する射出成形体の製造方法によって成形された厚みが6.4mmであり、スパン長さが100mmである試験片を用いて、ファイバーストレスを4.6kg/cm2にして測定した。
【0038】
(3)ロックウェル硬度(Rスケール)
JIS−K−7202に規定された方法に従って測定した。後述する射出成形体の製造方法によって成形された厚みが5.0mmである試験片を用いて測定した。測定値はRスケールで表示した。
【0039】
(4)引っ張り試験(破断伸び(UE)、単位:%)
ASTM D638に規定された方法に従って測定した。後述する射出成形体の製造方法によって成形された厚みが3.2mmである試験片を用いて測定した。引っ張り速度を50mm/分にして測定した。
【0040】
〔射出成形体の製造方法〕
上記(2)〜(4)の物性評価用の射出成形体である試験片は、次の方法に従って製造した。住友重機械製ネスタールサイキャップ120t射出成形機を用い、成形温度220℃、金型冷却温度50℃、冷却時間20secで射出成形を行い、射出成形体である試験片を得た。
【0041】
実施例1
成分(A)としてプロピレン単独重合体(MFR:19g/10分)86重量部に成分(C)としてアルミニウム−ジ−パラ−ターシャリブチル−ヒドロキシベンゾイックアシッド(大日本インキ株式会社製、商品名Al−PTBBA)を0.05重量部、成分(B)としてエチレンを主成分としたブテンとの共重合体(住友化学株式会社製、商品名エクセレンFX CX5505、MFR:16g/10分、密度:0.868g/cm3)14重量部を添加した溶融混練物を得た。
【0042】
この溶融混練物について、前述の手法に従い、試験片の成形を行い、また、物性を評価し、その結果を表1に示した。試験片は、耐熱性、ロックウェル硬度、破断伸びのバランスに優れ、特に耐熱性と破断伸びに優れていた。
【0043】
実施例2
実施例1において、成分(A)及び成分(B)の配合割合を、それぞれ90重量%及び10重量%に変更した他は、実施例1と全く同様にして溶融混練物を得た。成形・評価の結果は表1に示したとおり、耐熱性、ロックウェル硬度、破断伸びのいずれにおいても優れていた。
【0044】
実施例3
実施例1において、成分(A)及び成分(B)の配合割合を、それぞれ87重量%及び13重量%に変更し、成分(B)としてエチレンを主成分としたブテンとの共重合体(ダウデュポンエラストマー社製、商品名エンゲージ ENR7447、MFR:5.0g/10分、密度:0.864g/cm3)13重量部を添加した他は、実施例1と全く同様にして溶融混練物を得た。成形・評価の結果は表1に示したとおり、耐熱性、ロックウェル硬度、破断伸びのいずれにおいても優れていた。
【0045】
比較例1
実施例3において、成分(B)をエチレンを主成分としたブテンとの共重合体(住友化学株式会社製、商品名エスプレンSPO N0377、MFR:18g/10分、密度:0.890g/cm3)に変更した他は、実施例3と全く同様にして溶融混練物を得た。成形・評価の結果は表1に示したとおり、実施例1〜3に比べて耐熱性が劣っていた。
【0046】
比較例2
実施例3において、成分(B)をエチレンを主成分としたブテンとの共重合体(住友化学株式会社製、商品名エクセレンVL VL800、MFR:20g/10分、密度:0.905g/cm3)に変更した他は、実施例3と全く同様にして溶融混練物を得た。成形・評価の結果は表1に示したとおり、実施例1〜3に比べて耐熱性が劣っていた。
【0047】
比較例3
成分(A)としてプロピレン単独重合体(MFR:19g/10分)100重量部に成分(C)としてリン酸2,2メチレンビス(2,6−ジ−ターシャリブチルフェニル)ナトリウム(旭電化株式会社製、商品名NA−11UY)を0.3重量部添加した溶融混練物を得た。成形・評価の結果は表1に示したとおり、耐熱性、ロックウェル硬度に優れるものの、実施例1〜3に比べて破断伸びが著しく劣っていた。
【0048】
比較例4
比較例1において、成分(A)をコモノマーとしてエチレンを2.5重量%含むプロピレン−エチレンランダム共重合体(MFR:20g/10分)に変更した他は、比較例1と全く同様にして溶融混練物を得た。成形・評価の結果は表1に示したとおり、耐熱性が劣っていた。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ポリプロピレン樹脂(成分(A))86〜95重量%と、
下記ポリエチレン樹脂(成分(B))5〜14重量%とを含有する樹脂混合物(I)と(成分(A)と成分(B)の合計を100重量%とする)、前記樹脂混合物(I)100重量部に対して、造核剤(成分(C))0.03〜2重量部とを含むポリプロピレン樹脂組成物。
成分(A):
プロピレン単独重合体または、エチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも1種のオレフィンに由来する1モル%以下の構造単位とプロピレンに由来する構造単位とを含むプロピレン共重合体であり(ただし、プロピレン共重合体の全量を100モル%とする)、
測定温度230℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(JIS−K6758)が2〜90g/10分であるポリプロピレン樹脂。
成分(B):
プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンと、エチレンとの共重合体であって、
密度が0.885〜0.850g/cm3であり、
測定温度190℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(JIS−K7210)が1〜50g/10分であるポリエチレン樹脂。
【請求項2】
測定温度230℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(JIS−K6758)が5〜120g/10分である請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリプロピレン樹脂組成物からなる射出成形体。

【公開番号】特開2007−231162(P2007−231162A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54785(P2006−54785)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】