説明

ポリプロピレン樹脂組成物およびそれからなる成形体

【課題】VOCの放散が抑制され、しかも引張強度に優れたポリプロピレン樹脂成形体、およびかかる成形体の材料として好適な、VOCの放散が抑制され、さらに引張強度、耐衝撃強度および成形加工性にも優れるポリプロピレン樹脂組成物を得ること。
【解決手段】下記要件(a)、(b)および(c)を充足するプロピレン系ブロック共重合体(A)と、前記プロピレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対し、SiO2/Al23モル比が10〜60であるゼオライト(B)0.01〜0.4重量部とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物、および、それからなる成形体に関するものである。さらに詳細には、それ自身が含有する揮発性有機化合物を外部に放散し難く、また引張強度、耐衝撃強度および成形加工性に優れるポリプロピレン樹脂組成物、および、それからなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、熱可塑性樹脂の中でも、安価で軽量かつ成形加工性、機械的特性、耐熱性、長期の耐熱劣化等の特性に優れる代表的な樹脂であることから、各種容器、食品用包装材料、ボトルなどの容器のキャップ、文具、日用雑貨、カーペットやソファー用の繊維、自動車内外装材、家電用材料、ビルや住宅の内装材等の建築材料などの広範な用途に利用されている。一方で、近年、ビルや住宅の内装材等、建築材料に対するシックハウス(室内空気汚染)問題への懸念から、使用する樹脂材料に対して、シックハウス問題の原因物質であると報告されている揮発性の有機化合物(Volatile Organic Compounds:略称VOC)の低減が求められるようになってきている。中でもホルムアルデヒドをはじめとする13種のVOCについて具体的な対策が検討されている。一方で、シックハウス問題は建築材料のみではなく、自動車等の車両の内装材料等においても対象とされ、VOCの少ない樹脂材料の使用が望まれている。
【0003】
例えば、特開平8−3381号公報には、ポリオレフィンと、滑剤と、特定のSi/Alモル比、平均孔径、水吸着性を有し、特定の式で表されるゼオライトとを含有してなるポリオレフィン系組成物が開示されている。該公報では、該組成物から製造した容器キャップは、容器内の食品の味又は匂いを悪化させないとされている。
【0004】
また、特開平10−1568号公報には、ポリオレフィンと、無機充填剤、ゼオライト、フライポンタイト−シリカ複合体及びハイドロタルサイトからなる群から選ばれる1種以上の吸着性無機物質とを含有してなるポリオレフィン系組成物が開示されている。該公報では、該組成物は、加熱下での不快臭の発生が少なく、かつ耐熱変色性に優れた成形品を与え、かかる成形品は食品包装容器に適するとされている。
また、特開平11−140331号公報には、合成樹脂成分と、人工ゼオライトとを含有してなる合成樹脂組成物が開示されている。該公報では、該組成物からなる製品の焼却時において、塩素水素ガス等の有害ガスの発生が抑制され、更に、燃焼効率が高いために残灰等の発生が少ないとされている。
【0005】
また、特開2000−297221号公報には、合成樹脂成分と、アルカリ土類金属型の合成ゼオライトとを含有してなる合成樹脂組成物とその製品が開示されている。該公報では、該組成物からなる製品を焼却する時に、塩化水素やダイオキシン等の有害ガスの発生が抑制されるとされている。
また、特開2006−257404号公報には、熱可塑性樹脂と、特定のSiO2/Al23モル比を持つ疎水性のシリカアルミナケイ酸塩とを含有してなる低臭気性樹脂組成物が開示されており、かかる組成物では、熱可塑性樹脂本来の諸特性が損なわれることなく、その製造のための溶融混練およびその成形加工等における高温加熱時や、成形品の高温での保管または使用時における臭気の発生が著しく低減され、さらに成形品の外観も優れている旨記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−3381号公報
【特許文献2】特開平10−1568号公報
【特許文献3】特開平11−140331号公報
【特許文献4】特開2000−297221号公報
【特許文献5】特許2006−257404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、環境保護対策の観点から、上記公報に記載されたような樹脂組成物および該組成物からなる製品からのVOC、特にアルデヒド類の放散のさらなる低減が求められている。
【0008】
かかる状況の下、本発明の目的は、VOCの放散が抑制され、しかも引張強度に優れたポリプロピレン樹脂成形体、およびかかる成形体の材料として好適な、VOCの放散が抑制され、さらに引張強度、耐衝撃強度および成形加工性にも優れるポリプロピレン樹脂組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
下記要件(a)、(b)および(c)を充足するプロピレン系ブロック共重合体(A)と、当該共重合体(A)100重量部に対し、SiO2/Al23モル比が10〜60であるゼオライト(B)0.01〜0.4重量部とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物に係るものである。
【0010】
要件(a):プロピレン系ブロック共重合体(A)は、重合体成分(I)および重合体成分(II)を含むプロピレン系ブロック共重合体であり、重合体成分(I)は、135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]I)が0.1〜1.5(dl/g)であるプロピレン系重合体であり、重合体成分(II)は、エチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、プロピレンに由来する単位とを有する共重合体であって、135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]II)が1〜20(dl/g)であるプロピレン系共重合体である。
要件(b):重合体成分(II)の、エチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量が、1〜80重量%である。
要件(c):プロピレン系ブロック共重合体(A)の重合体成分(II)含有量が、5〜70重量%である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、VOCの放散が抑制され、さらに引張強度、耐衝撃強度および成形加工性にも優れるポリプロピレン樹脂組成物、および、VOCの放散が抑制され、引張強度に優れた成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
プロピレン系ブロック共重合体(A)は、下記要件(a)、(b)および(c)を充足するプロピレン系ブロック共重合体である。
要件(a):
プロピレン系ブロック共重合体(A)は、重合体成分(I)および重合体成分(II)からなるプロピレン系ブロック共重合体であり、重合体成分(I)は、135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]I)が0.1〜1.5(dl/g)であるプロピレン系重合体であり、重合体成分(II)は、エチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、プロピレンに由来する単位とを有する共重合体であって、135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]II)が1〜20(dl/g)であるプロピレン系共重合体である。
要件(b):
重合体成分(II)の、エチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量が、1〜80重量%である。
要件(c):
プロピレン系ブロック共重合体(A)の重合体成分(II)含有量が、5〜70重量%である。
【0013】
重合体成分(I)は、典型的には、プロピレン単独重合体成分、または主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系共重合体成分である。そして、重合体成分(I)が前記プロピレン系共重合体成分である場合には、重合体成分(I)はエチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、プロピレン由来の単位とからなるプロピレン系共重合体成分である。
【0014】
重合体成分(I)が、主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系共重合体成分である場合には、重合体成分(I)の、エチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量は、0.01〜30重量%である。
【0015】
炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0016】
重合体成分(I)である主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
【0017】
重合体成分(II)は、エチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、プロピレンに由来する単位とを有する共重合体であるプロピレン系共重合体である。
重合体成分(II)の、エチレンおよび炭素原子数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量は、1〜80重量%であり、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%である。
【0018】
重合体成分(II)における炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、重合体成分(I)における炭素数4〜12のα−オレフィンと同様のα−オレフィンが挙げられる。重合体成分(II)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分等が挙げられる。
【0019】
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体(A)としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体等が挙げられる。
【0020】
プロピレン系ブロック共重合体(A)の重合体成分(II)含有量は、5〜70重量%であり、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。
プロピレン系ブロック共重合体(A)は、好ましくは、重合体成分(I)がプロピレンの単独重合体成分であり、重合体成分(II)がエチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、プロピレンに由来する単位とを有するプロピレン系共重合体成分であるブロック共重合体である。
プロピレン系ブロック共重合体(A)は、より好ましくは、重合体成分(I)がプロピレンの単独重合体成分であり、重合体成分(II)がプロピレンとエチレンの共重合体成分であり、重合体成分(II)の含有量が5〜50重量%であり、重合体成分(II)に含有されるエチレンに由来する単位の含有量が20〜70重量%であるブロック共重合体である。
【0021】
重合体成分(I)の極限粘度[η]Iは、0.1〜1.5dl/gであり、好ましくは0.3〜1.5dl/gであり、より好ましくは0.5〜1.5dl/gである。 [η]Iが1.5dl/gよりも大きい場合、得られるポリプロピレン樹脂組成物の引張強度や耐衝撃強度、または成形加工性が悪化することがあり、[η]Iが0.1dl/gよりも小さい場合、成形加工性が不十分であったり、製品からのVOCの放散が多くなることがある。
【0022】
また、重合体成分(II)の極限粘度[η]IIは1〜20dl/gであり、好ましくは1〜15dl/gであり、より好ましくは2〜10dl/gであり、さらに好ましくは3〜7(dl/g)である。[η]IIが20dl/gよりも大きい場合、得られるポリプロピレン系樹脂組成物の引張強度や耐衝撃強度、または成形加工性が悪化することがあり、[η]IIが1dl/gよりも小さい場合、成形加工性が不十分なことがある。
【0023】
また、[η]Iに対する[η]IIの比として、好ましくは1〜20であり、より好ましくは、2〜10であり、さらに好ましくは3〜8である。
【0024】
極限粘度は、以下の方法によって、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定される。
【0025】
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2および0.5g/dlの3点について還元粘度を測定される。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求められる。尚、試料としては、重合槽から採取した重合体パウダー又はそれからなるペレットが用いられる。重合体成分(I)の場合、第一段階の重合槽から一部抜き出した重合体パウダーを用いて測定される。
【0026】
また、プロピレン系ブロック共重合体(A)が、重合体成分(I)が第一段階の重合工程で得られ、重合体成分(II)が第一段階の後に行われる第二段階目の工程で得られる方法によって、製造される共重合体である場合、重合体成分(I)および重合体成分(II)の含有量、極限粘度([η]Total、[η]I、[η]II)の測定および算出については、以下のとおりである。なお、[η]Totalは、プロピレン系ブロック共重合体(A)の極限粘度を示す。
【0027】
第一段階の重合工程で生成した重合体成分(I)の極限粘度[η]I、第一段階および第二段階の両重合工程を経て生成した最終重合体(すなわち、プロピレン系ブロック共重合体(A))の極限粘度[η]Total、最終重合体に含有される重合体成分(I)および重合体成分(II)の各々の重量比から、重合体成分(II)の極限粘度[η]IIを、下記式から計算する。
[η]II=([η]Total−[η]I×XI)/XII
[η]Total:最終重合体の極限粘度(dl/g)
[η]I:第一段階の重合工程後に採取した重合体パウダーの極限粘度(dl/g)
XI:第一段階の重合工程で生成した重合体成分(I)の重量比
XII:第二段階の重合工程で生成した重合体成分(II)の重量比
尚、XI、XIIは重合時の物質収支から求める。
【0028】
プロピレン系ブロック共重合体(A)に含有される重合体成分(I)の13C−NMRで測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率(mmmm分率)は、ブロック共重合体の結晶性が高く、剛性が高いという観点から、好ましくは0.960以上であり、より好ましくは0.980以上である。
【0029】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、ポリプロピレン分子中のペンタッド単位について、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率であって、A.Zambelliらによって発表された方法(Macromolecules 第6巻、第925頁、1973年)に記載の13C−NMR法に従って求められる。但し、13C−NMR吸収ピークの帰属は、Macromolecules、第8巻、第687頁(1975年)に基づいて行うものである。
【0030】
また、プロピレン系ブロック共重合体(A)は、その重合体成分(I)が、主にプロピレンに由来する単位からなるプロピレン系共重合体成分である場合、プロピレン系ブロック共重合体の結晶性、引張強度という観点から、重合体成分(I)の20℃キシレン可溶部の含有量(以下、CXS(I)と称する)が1.0重量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.8重量%以下であり、さらに好ましくは0.5重量%以下ある。
【0031】
プロピレン系ブロック共重合体(A)は、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造することができる。
【0032】
重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒系、チーグラー・ナッタ型触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒系、およびこれらの触媒成分を無機物等の粒子との共存下で処理することにより調製して得られる触媒系等が挙げられ、また、上記の触媒系の存在下でエチレンやα−オレフィンを予備重合させて調製される予備重合触媒を用いてもよい。
【0033】
上記の触媒系としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開平5−194685号公報、特開平7−216017号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182981号公報、特開平9−316147号公報に記載の触媒系が挙げられる。
【0034】
また、重合方法としては、バルク重合、溶液重合、スラリー重合または気相重合が挙げられる。バルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法であり、溶液重合およびスラリー重合は、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法であり、また、気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法である。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を適当に組み合わせてもよい。工業的かつ経済的な観点から、連続式の気相重合法、バルク重合法と気相重合法を連続的に行うバルク−気相重合法が好ましい。
【0035】
また、プロピレン系ブロック共重合体(A)の製造方法は、プロピレン系ブロック共重合体を、少なくとも二段階の多段階で製造する方法である。好ましくは、重合体成分(I)を製造する段階と重合体成分(II)を製造する段階の少なくとも二段階を含む方法である。
【0036】
多段階の方法としては、例えば、特開平5−194685号公報、特開2002−12719号公報に記載の多段階の重合法等が挙げられる。
【0037】
なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、目的とするプロピレン系ブロック共重合体の構造と特性(重合体成分(I)および重合体成分(II)の含有量、極限粘度[η]I、極限粘度[η]II、重合体成分(I)および(II)に含有されるプロピレンと共重合するエチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量など)に応じて、適宜、決定すればよい。
【0038】
また、ポリプロピレン系ブロック共重合体(A)の製造において、プロピレン系ブロック共重合体(A)中に含まれる残留溶媒や、製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するために、必要に応じてプロピレン系ブロック共重合体(A)をそのプロピレン系ブロック共重合体(A)が融解する温度以下の温度で乾燥してもよい。この操作には、VOCの放散量を低減する効果もある。乾燥時のポリプロピレン樹脂は、形状については特に限定は無く、パウダー状であっても、ペレット状であってもよい。乾燥方法としては、例えば、特開昭55−75410号公報、特許第2565753号公報に記載の方法等が挙げられる。
【0039】
また、本発明に用いられるプロピレン系ブロック共重合体(A)の温度230℃、荷重2.16kgfで測定されるメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、成形加工性の観点から、通常0.1〜400g/10分であり、好ましくは、3〜300g/10分であり、より好ましくは、5〜200g/10分であり、さらに好ましくは5〜100g/10分である。
【0040】
本発明に用いられるゼオライト(B)は、三次元骨格構造を保持した結晶性のアルミノシリケートであり、該ゼオライトのSiO2/Al23モル比は10〜60である。中でも、Y型と呼称される結晶構造を有するゼオライト、ZSM−5型(またはMFI型)と呼称される結晶構造を有するゼオライト等が挙げられる。
【0041】
ゼオライト(B)は、アルデヒド類等のVOCを捕捉する効率の観点から、好ましくは一般式(I)xM2/nO・Al23・ySiO2・zH2O(式中、Mは周期律表のIA及びIIA族元素を示し、nはMの原子価を示し、xは0より大きい数を示し、yは20〜60であり、zは該ゼオライトの結晶水の数で0〜7を示す。)で表されるゼオライトである。より好ましくは一般式(I)中のyが20〜50の範囲のゼオライトであり、さらに好ましくは一般式(II)xNa2O・Al23・ySiO2・zH2O(式中、xは0〜1の範囲であり、yは20〜50の範囲であり、zは該ゼオライトの結晶水の数で0〜7を示す。)で示されるゼオライトである。
【0042】
好ましいゼオライトの結晶構造としては、ZSM−5型(またはMFI型)と呼称される結晶構造である。
【0043】
ゼオライト(B)は、通常、粒子径分布を有する粒子からなる。ゼオライト(B)の体積基準で測定された粒子径分布の累積が50%となる粒子径(以下、「D50粒子径」と記す)の範囲は特に制限はないが、レーザー回折式粒子径分布測定法で求められるD50粒子径の範囲は、通常0.01〜50μmであり、粒子径が10μm以上である粒子の割合は通常、30重量%未満である。尚、レーザー回折式粒子径分布測定法とは、レーザー回折式粒子径分布測定装置を用いて粉体の粒子径分布を測定する方法である。測定には、ゼオライトの分散媒体として純水が用いられる。本発明で用いられるゼオライト(B)の粒子径分布およびD50粒子径は、株式会社島津製作所製のレーザー回折式粒子径分布測定装置「SALD−2100」を用いて純水中で測定される値である。
【0044】
ゼオライト(B)は、好ましくは、D50粒子径が0.1〜20μmであり、粒子径10μm以上である粒子の割合が10重量%未満である粒子からなるゼオライトである。ゼオライト(B)のD50粒子径は、より好ましくは0.1〜10μmであり、さらに好ましくは0.1〜5μmである。
【0045】
D50粒子径が0.1μmよりも小さいゼオライトは、製造コストや取り扱い性の観点から不利であり、D50粒子径が20μmよりも大きいゼオライトは、プロピレン系ブロック共重合体(A)に対する分散性が劣り、それを含有するポリプロピレン系樹脂組成物の機械的特性が低下したり、後述するポリプロピレン系樹脂組成物の製造においてフィルターの通過性が低下することがあるため不利である。
【0046】
プロピレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して配合されるゼオライト(B)の量は、0.01〜0.4重量部の範囲であり、好ましくは、0.01〜0.3重量部の範囲であり、さらに好ましくは0.02〜0.2重量部の範囲である。ゼオライト(B)の量が0.01重量部未満の場合は、ポリプロピレン系樹脂組成物中におけるVOC(特にアルデヒド類)の捕捉効果が不十分であり、また、ゼオライト(B)の量が0.4重量部を超える場合は、ポリプロピレン系樹脂組成物が黄変することがある。
【0047】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の温度230℃、荷重2.16kgfで測定されるMFRは、成形加工性という観点から、好ましくは5〜400g/10分であり、より好ましくは、5〜300g/10分であり、さらに好ましくは、5〜200g/10分である。
【0048】
また、原料を溶融混練して本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を調製する際に、溶融混練工程で有機過酸化物を配合することにより、得られるポリプロピレン系樹脂組成物のMFRの調整を行ってもよい。
【0049】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化アルキル類、過酸化ジアシル類、過酸化エステル類および過酸化カーボネート類である。過酸化アルキル類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン等が挙げられる。
【0050】
過酸化ジアシル類としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等が挙げられる。過酸化エステル類としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシル−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルーパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアディペート等が挙げられる。
【0051】
過酸化カーボネート類としては、例えば、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0052】
有機過酸化物は、好ましくは過酸化アルキル類であり、特に好ましくは2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナンである。
【0053】
有機過酸化物の使用量は、プロピレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、一般的には0.0001〜1重量部である。好ましくは0.0005〜0.5重量部であり、より好ましくは0.001〜0.3重量部である。但し、有機過酸化物の配合量が多すぎると、ポリプロピレン系樹脂組成物の加工性は幾分改良されるが、ポリプロピレン系樹脂組成物のVOCの放散量が増加することがあるため、目的に応じて配合量を調整することが好ましい。
【0054】
有機過酸化物は、プロピレン系ブロック共重合体(A)のパウダーに含浸させた含浸パウダー(マスターバッチ)として用いてもよい。パウダーの重量平均粒子径は特に限定されるものではないが、溶融混合におけるプロピレン系ブロック共重合体(A)に対する有機過酸化物の分散性の観点から、一般的には100μm〜2000μmの範囲である。有機過酸化物の含浸量は特に限定されるものではないが、通常1〜50重量%の範囲であり、取扱い易さの点で、好ましくは5〜20重量%の範囲のものが用いられる。
【0055】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、例えば、プロピレン系ブロック共重合体(A)と、当該プロピレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、SiO2/Al23モル比が10〜60を示すゼオライト(B)0.01〜0.4重量部とを、180℃以上の温度で溶融混合し、得られた溶融混合物を、フィルターを通過させて製造することができる。
【0056】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造に用いられるフィルターの開き目は、ポリプロピレン樹脂組成物の製造時の生産安定性や、得られるポリプロピレン樹脂組成物からなる成形品の外観という観点から、好ましくは30〜400μmであり、より好ましくは30〜300μmであり、さらに好ましくは、50〜150μmである。
【0057】
前記フィルターの開き目とは、プロピレン系ブロック共重合体(A)およびゼオライト(B)からなるポリプロピレン系樹脂組成物が通過することのできる開孔の大きさであり、JIS−B8356の方法により、フィルターメディアを通過した最大グラスビーズの粒子径(μm)として測定される値である。フィルターの開き目は、そのフィルターの濾過精度の指標となる。
【0058】
フィルターの材質は、金属製や樹脂製のいずれでもよく、好ましくは、ステンレス製である。好ましくは、SUS304、SUS316、SUS316L製のものである。
【0059】
フィルターの形状は、取扱い易さの観点から、好ましくは、ディスク状(円形、半月形、長円形、ドーナツ形、角形)、円筒状である。
【0060】
フィルターの種類としては、例えば、織金網、クリンプ金網、溶接金網、デミスター、スパイラル金網、積層金属フィルター、金属焼結フィルター等が挙げられる。織金網としては、平織の織金網、綾織の織金網、繻子織の織金網、平畳織の織金網、綾畳織の織金網等が挙げられる。金属焼結フィルターとしては、ミクロンオーダーのステンレス鋼(SUS316L)繊維の焼結によって製造されるフィルターが挙げられる。フィルターとして、好ましくは、金属焼結フィルターである。
【0061】
樹脂の通過方向に並列もしくは直列に複数のフィルターを設置してよい。また、複数のフィルターを並列に配置する場合には、一列の中に複数のフィルターを配置してもよい。
【0062】
また、本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、1種類以上の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、加工助剤、着色剤、発泡剤、抗菌剤、可塑剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、高輝度化剤等が挙げられる。
【0063】
中でも、酸化防止剤が好ましく用いられる。本発明において、酸化防止剤の使用はポリプロピレン系樹脂組成物のVOCの放散量増加を抑制したり、成形加工性を良くしたり、長期の耐熱劣化性を良くしたりという観点で高い効果がある。適用可能な酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0064】
中でも、好ましくは、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤の使用であり、さらに好ましくは、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤の組み合わせによる使用である。
【0065】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオビス−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート] 、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート、トコフェロール類等が挙げられる。トコフェロール類としては、α−トコフェロールであるビタミンEが挙げられる。
【0066】
中でも、ポリプロピレン系樹脂組成物の成形加工性や耐熱劣化性を良くするといった観点から、好ましくは分子量300以上のフェノール系酸化防止剤が用いられる。このような酸化防止剤としては、例えば、テトラキス[メチレン−3(3’,5’ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオビス−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0067】
色相安定性に優れる樹脂組成物を得ることができるという観点から、好ましくは3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンが用いられる。
【0068】
フェノール系酸化防止剤の配合量は、一般には、ポリプロピレン樹脂(A)100重量
部に対し、0.01〜1重量部である。好ましくは0.01〜0.5重量部であり、さら
に好ましくは0.05〜0.3重量部である。
【0069】
また、リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル) 2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、2−(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−5−エチル−5−ブチル−1,3,2−オキサホスホリナン、2,2’,2’’−ニトリロ[トリエチル−トリス(3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
【0070】
ポリプロピレン系樹脂組成物の成形加工性や耐熱劣化性を良くするといった観点から、好ましくは分子量300以上のリン系酸化防止剤が用いられる。このような酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等である。
【0071】
リン系酸化防止剤の配合量は、一般には、ポリプロピレン樹脂(A)100重量部に対し、0.01〜1重量部である。好ましくは0.01〜0.5重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.3重量部である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、好ましい一態様において、分子量300以上のフェノール系酸化防止剤および/または分子量300以上のリン系酸化防止剤を、プロピレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.01〜1重量部で含有する。
【0072】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系ブロック共重合体(A)以外の1種類以上の樹脂やゴムを含有してもよい。
【0073】
このようの追加的な樹脂やゴムとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン/α−オレフィン系共重合体(L−LDPEやエラストマー)、ポリスチレン類(例えばポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合)樹脂、AAS(特殊アクリルゴム/アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、ACS(アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合)樹脂、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0074】
このようの追加的な樹脂やゴムとしては、一般には、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン−α−オレフィン系共重合体からなるエラストマーが使用され、エチレン−α−オレフィン系共重合体からなるエラストマーとしては、例えば、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体からなるエラストマーが挙げられ、メタロセン系触媒に代表される均一系触媒を用いて製造されるエラストマーが挙げられる。
【0075】
これら共重合体におけるα−オレフィンの含有量は、一般には、5〜50重量%であり、エチレン−α−オレフィン系エラストマーの190℃で測定されるMFRは、一般には、0.05〜50g/10分である。
【0076】
前記のプロピレン系ブロック共重合体(A)以外の樹脂やゴムなどを配合する方法は、例えば、予め溶融混練されたポリプロピレン樹脂組成物のペレットに配合する方法や、ポリプロピレン樹脂組成物を製造する段階でプロピレン系ブロック共重合体(A)とゼオライト(B)と必要に応じて添加される前記添加剤と一緒に配合する方法等が挙げられる。
【0077】
また、本発明の製造方法によって製造されるポリプロピレン樹脂組成物は、充填剤(ゼオライト(B)とは異なるもの)を含有してもよい。
【0078】
前記の充填剤を配合する方法としては、例えば、予め溶融混練されたポリプロピレン樹脂組成物のペレットに配合する方法や、ポリプロピレン樹脂組成物を製造する段階でプロピレン系ブロック共重合体(A)とゼオライト(B)と必要に応じて添加される前記添加剤と一緒に混合する方法等が挙げられる。
【0079】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造において、プロピレン系ブロック共重合体(A)とゼオライト(B)と必要に応じて添加される添加剤、プロピレン系ブロック共重合体(A)以外の樹脂やゴムや充填材等を混合して、180℃以上で溶融混合する方法には、溶融押出機やバンバリーミキサー等の混合機を用いることができる。
【0080】
また、ゼオライト(B)を配合する方法としては、プロピレン系ブロック共重合体(A)とゼオライト(B)を溶融混合して製造され、ゼオライト(B)の濃度が1〜90重量%であるゼオライト(B)の高濃度マスターバッチや、ゼオライト(B)と少なくとも1種の添加剤とを混合し、顆粒状に固形化し、ゼオライト(B)の濃度が10〜90重量%であるゼオライト(B)の高濃度顆粒物をあらかじめ用意し、これをプロピレン系ブロック共重合体(A)と混合する方法等が挙げられる。
【0081】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の製造で用いられる溶融混練装置としては、例えば、単軸押出機、二軸同方向回転押出機(Wernw Pfleideren製 ZSK[登録商標]や東芝機械(株)製 TEM[登録商標]、日本製鋼所(株)製 TEX[登録商標]等)、二軸異方向回転押出機(日本製鋼所(株)製 CMP[登録商標]、TEX[登録商標]、神戸製鋼所(株)製 FCM[登録商標]、NCM[登録商標]、LCM[登録商標]等)が挙げられる。
【0082】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の形状としては、例えば、ストランド状、シート状、平板状、ストランドを適当な長さに裁断したペレット状等が挙げられる。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を成形加工に適用するためには、得られる成形体の生産安定性の観点から、該組成物は、長さが1〜50mmのペレット状であることが好ましい。
【0083】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物から各種成形方法によって、成形体を得ることができ、得られる成形体の形状やサイズ等は、適宜、決定することができる。
【0084】
前記成形体の製造方法としては、例えば、通常工業的に用いられている射出成形法、プレス成形法、真空成形法、発泡成形法、押出成形法等が挙げられ、また、目的に応じて、本発明のポリプロピレン樹脂組成物と同種のポリオレフィン樹脂や他の樹脂と貼合する成形方法、共押出成形する方法等も挙げられる。
【0085】
成形体は、好ましくは、射出成形体であり、その製造に用いられる射出成形法としては、例えば、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、インサート・アウトサート成形法等の方法が挙げられる。
【0086】
成形体の用途としては、例えば、自動車材料、家電材料、建材、ボトル、コンテナー、シート、フィルム等が挙げられる。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、VOCの発生が少ないため、好ましい用途としては、自動車用内装材料、家電材料、建材(特にヒトの居住空間に存在する製品)である。
【0087】
自動車材料としては、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーパネル、スペアタイヤカバー、エアバッグカバー等の内装部品等、および、バンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ等の外装部品、その他エアインテークダクト、クーラントリザーブタンク、フェンダーライナー、ファン、アンダーデフレクター等の部品、また、フロント・エンドパネル等の一体成形部品等が挙げられる。
【0088】
また、家電材料としては、例えば、洗濯機用材料(外槽、内槽、蓋、パルセータ、バランサー等)、乾燥機用材料、掃除機用材料、炊飯器用材料、ポット用材料、保温機用材料、食器洗浄機用材料、空気清浄機用材料等が挙げられる。
【0089】
また、建材としては、屋内の床部材、壁部材、窓枠部材等が挙げられる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例および比較例によって本発明を説明する。実施例および比較例で使用したポリプロピレン樹脂、添加剤を下記に示した。
【0091】
(1)プロピレン系ブロック共重合体(成分(A))
プロピレン系ブロック共重合体(A−1)は特開平7−216017号公報の実施例5に記載の方法によって得られる触媒を用いて、液相−気相重合法によって製造した。
(A−1)プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体
ブロック共重合体のMFR(230℃で測定):26g/10分
ブロック共重合体のエチレン含量:7.0重量%
ブロック共重合体の極限粘度[η]Total:1.4(dl/g)
[η]II/[η]I=2.52
重合体成分(I):プロピレン単独重合体成分
重合体成分(I)のアイソタクチック・ペンタッド分率:0.983
重合体成分(I)の極限粘度[η]I:1.07(dl/g)
重合体成分(I)の20℃キシレン可溶部(CXS(I)):0.20重量%
重合体成分(II):プロピレン−エチレン共重合体成分
重合体成分(II)の含有量:20重量%
重合体成分(II)のエチレン含有量:35重量%
重合体成分(II)の極限粘度[η]II:2.7(dl/g)
【0092】
(2)ゼオライト(成分(B))
(B−1)
製品名:ミズカシーブス[登録商標]EX122(水澤化学工業(株)製)
化学名:ソジウムアルミノシリケート
(一般名:ZSM−5型ゼオライト粉末)
化学式:Na2O・Al23・20〜45SiO2・nH2
SiO2/Al23モル比:32
D50粒子径:4.5μm
(B−1s)
前記(B−1)の小粒子品
D50粒子径:2.0μm
(B−2)
製品名: ミズカシーブス[登録商標]H−EX122(水澤化学工業(株)製)
化学名:ソジウムアルミノシリケート
(一般名:ZSM−5型ゼオライト粉末)
化学式:xNa2O・Al23・20〜45SiO2・nH2O (x≦0.2)
(ナトリウムイオンの一部が水素イオンで置換)
SiO2/Al23モル比:32
D50粒子径:3.7μm
(B−3)
製品名: シルトン[登録商標]B(水澤化学工業(株)製)
化学名:ソジウムアルミノシリケート
(一般名:A型ゼオライト粉末)
化学式:Na2O・Al23・2〜3SiO2・nH2O
SiO2/Al23モル比:2.0
D50粒子径:3.5μm
(B−4)
製品名: シルトン[登録商標]CPT−30(水澤化学工業(株)製)
化学名:ソジウムアルミノシリケート
(一般名:X型ゼオライト粉末)
化学式:Na2O・Al23・2〜3SiO2・nH2
SiO2/Al23モル比:2.7
D50粒子径:2.8μm
(B−5)ミズカシーブス[登録商標]Y−500(水澤化学工業(株)製)
化学名:ソジウムアルミノシリケート
(一般名:Y型ゼオライト粉末)
化学式:Na2O・Al23・3〜6SiO2・nH2
SiO2/Al23モル比:5.0
D50粒子径:1.2μm
(B−6)シルトン[登録商標]MT-100(水澤化学工業(株)製)
化学名:ソジウムアルミノシリケート
(一般名:ZSM−5型ゼオライト粉末)
化学式:Na2O・Al23・80〜120SiO2・nH2
SiO2/Al23モル比:110
D50粒子径:3.9μm
(B−7)ハイシリカゼオライトHS−20(日本化学工業(株)製)
化学名:ソジウムアルミノシリケート
(一般名:ZSM−5型ゼオライト粉末)
化学式:Na2O・Al23・15〜25SiO2・nH2
SiO2/Al23モル比:20
D50粒子径:2.5μm
(B−8)ハイシリカゼオライトHS−50(日本化学工業(株)製)
化学名:ソジウムアルミノシリケート
(一般名:ZSM−5型ゼオライト粉末)
化学式:Na2O・Al23・40〜50SiO2・nH2
SiO2/Al23モル比:46
D50粒子径:2.9μm
(B−9)ハイシリカゼオライトHS−450(日本化学工業(株)製)
化学名:ソジウムアルミノシリケート
(一般名:ZSM−5型ゼオライト粉末)
化学式:Na2O・Al23・470〜490SiO2・nH2
SiO2/Al23モル比:480
D50粒子径:5.0μm
【0093】
(3)添加剤(成分C)
(C−1)カルシウムステアレート:共同薬品(株)製
化学名:ステアリン酸カルシウム
分子量:607
(C−2)スミライザー[登録商標]GA80:住友化学(株)製
化学名:3,9−ビス[2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン
分子量:741
(C−3)アデカスタブ[登録商標]PEP−24G:旭電化工業(株)製
ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
分子量:604
(C−4)イルガノックス[登録商標]1010:チバ・ジャパン(株)製
化学名:テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン
分子量:1178
(C−5)イルガフォス[登録商標]168:チバ・ジャパン(株)製
化学名:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト
分子量:647
(C−6):スミライザー[登録商標]BHT:住友化学(株)製
化学名:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール
分子量:220
【0094】
(4)有機過酸化物(成分D)
(D−1)パーヘキサ[登録商標]25B−10:日本油脂(株)製
10%重量濃度の有機過酸化物と90重量%のポリプロピレンパウダーの混合物
【0095】
ポリプロピレン樹脂(成分A)、ポリプロピレン系樹脂組成物の物性は下記に示した試験方法に従って測定した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−6758に規定された方法に従って測定した。温度は230℃で、荷重は2.16kgで測定した。
(2)極限粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2および0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定した。尚、試料は重合槽から採取した重合体パウダーを用いた。重合体成分(I)の場合、第一段階の重合槽から一部抜き出した重合体パウダーを用いて測定し、これの極限粘度を[η]Iとした。
(3)重合体成分(I)及び(II)の割合、極限粘度([η]Total、[η]I、[η]II)の測定および算出
第一段階の重合工程で得た重合体成分(I)の極限粘度[η]I、第一段階および第二段階の両重合工程を経て生成した最終重合体(すなわち、プロピレン系ブロック共重合体(A))の前記(2)の方法で測定した極限粘度[η]Total、第二段階目の重合工程で生成した重合体成分(II)の最終重合体における重量比から、重合体成分(II)の極限粘度[η]IIを、下記式から計算した。
[η]II=([η]Total−[η]I×XI)/XII
[η]Total:最終重合体の極限粘度(dl/g)
[η]I:第一段階の重合工程後に採取した重合体パウダーの極限粘度(dl/g)
I:第一段階の重合工程で生成した重合体成分(I)の重量比
II:第二段階の重合工程で生成した重合体成分(II)の重量比
尚、XI、XIIは重合時の物質収支から求めた。
(4)プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体のプロピレン−エチレン共重合体成分(II)の含有量(単位:重量%)及びプロピレン−エチレン共重合体成分(II)中のエチレン含有量(単位:重量%)の算出 下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules 1982年,第15巻,第1150〜1152頁)に基づいて求めた。
直径10mmの試験管中で約200mgのプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体を3mlの混合溶媒(オルトジクロロベンゼン/重オルトクロロベンゼン=4/1(容積比))に均一に溶解させて試料を調整し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件下で測定した。測定は、日本電子社製JNM−EX270を用いて行った。
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
(5)20℃キシレン可溶部の含有量(CXS(I)、単位:重量%)
重合体成分(I)のサンプル5gを沸騰キシレン500mlに完全に溶解させた後、20℃に降温させ4時間放置した。その後これを濾別し、20℃キシレン不溶部を分離した。キシレンを蒸発させて濾液を濃縮、乾固して、さらに減圧下60℃で乾燥することにより20℃キシレン可溶部を得た。この20℃キシレン可溶部の乾燥重量を測定して、以下の式に従い、重合体成分(I)の20℃キシレン可溶部の含有量(CXS(I))を算出した。
CXS(I)=(20℃キシレン可溶部の乾燥重量/重合体成分(I)の重量)×100
(6)VOCの放散量
VOCの放散量の測定は、後述する試験片を用いて、以下の方法により測定を行った。
1.試験片を容積10Lのテドラーバッグに封入し、純窒素ガスを充填した。その後、純窒素ガスを抜くことにより、テドラーバッグ内の空気を窒素ガスに置換する作業を2回繰り返し行った。
2.テドラーバッグに純窒素ガス4Lを充填し、テドラーバッグのコックを閉じた。
テドラーバッグをオーブンの中に入れ、コックの先にサンプリング用テフロン(登録商標)チューブを取り付けてオーブンの外まで延ばし、この状態で65℃、2時間加熱処理を行った。
3.上記2.で調製した試料ガスを、65℃の加熱状態で、2,4−ジニトロフェノルヒドラジン(2,4-Dinitrophenylhydrazine(略称:DNPH))カートリッジに3L採取した。採取後のカートリッジはアセトニトリルで溶出処理を行い、得られた溶出液を高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて、カートリッジから溶出した成分の測定を行った。上述の方法により検出された成分がVOCである。なお、VOC放散量(所定サイズの試験片1枚から放散されるVOCの量、単位:μg)は、各成分の標準物質の検量線を用いて算出した。不検出の場合は非検出と示した。
(射出成形体の作製)
上記のVOC放散量測定用の試験片は下記の方法に従い作製した。
住友重機械製NEOMAT[登録商標]350/120型射出成形機を用い、成形温度220℃、金型冷却温度50℃で射出成形を行い、MD長さ×TD長さ×厚み=150mm×90mm×3mmの寸法の試験片を得た。これを面積が72cm2となるように裁断した後、温度23℃、相対湿度50%の条件下で14日静置させたものを測定用試験片とした。
(7)引張破断点強度(単位:MPa)
ASTM D638に規定された方法に従って、引張破断点強度を測定した。測定は、前記(6)に記載したのと同じ方法で得られた厚みが3.2mmである試験片を用い、引張り速度50mm/分、温度は23℃で行った。なお、試験片は温度23℃、相対湿度50%の条件下で2日間静置させた後で測定に使用した。
(8)アイゾット衝撃強度(単位:kJ/m2
JIS K−7110に規定された方法に従ってアイゾット衝撃強度を測定した。測定には、射出成形によって得られた、厚みが6.4mmであり、ノッチ付きの試験片を用いた。ノッチは、射出成形後に付けた。なお、射出成形は、製品厚みを変更した以外は前記(6)に記載の方法と同様に行った。測定は−20℃で行った。
(9)落錘衝撃強度(単位:J)
図1に示す形状の鉄製重錘を用いて、落錘衝撃強度(以下、FWIと記す)を測定した。前記重錘を用いた以外は、JIS K7211の測定方法に従い、全試験片の半数が破壊する衝撃エネルギーを求めた。測定は−20℃で実施した。
尚、測定用試験片は、前記(6)に記載の方法と同様にして得られたものを用いた。具体的には、MD長さ×TD長さ×厚み=150mm×90mm×3mmの寸法の試験片を20枚成形し、これを測定に使用した。
尚、作製した。
(10)成形加工性
前記(6)に記載したVOC放散量測定用の試験片の成形加工時における成形加工性を評価した。具体的には、得られた成形品の重量測定と、成形品の外観観察による異常の有無の観察を行うことにより評価を行った。同一の射出成形条件で成形した場合、成形品の重量が大きいほど、金型への充填量が多いことから、成形品の重量が大きいほど、成形加工性が良好であると判定した。また、成形品の外観については、縞模様のフローマークや反りの不具合が殆どなければ「良好」、このような不具合が顕著に確認されれば「不良」と判定した。
(11)耐熱劣化性(単位:時間)
JIS K 7212[熱可塑性プラスチックの熱老化性試験法(オーブン法)通則]に従って、試験片の耐熱劣化性の評価を行った。東洋精機製作所(株)製、ギヤーオーブンを使用して、オーブン内温度:150℃で評価を行った。劣化時間は、試験片が完全劣化するまで、言い換えれば抗張力がゼロになるまでの時間を測定することにより決定した。劣化時間が長いほど、耐熱劣化性が良好である。なお、評価に使用した試験片は、圧縮プレス成形機でプレス成形加工することにより作製した。その成形加工の条件と試験片サイズは、以下の通りである。
(試験片の作製)
ポリプロピレン樹脂組成物を、SUS製の金型内で、設定温度:230℃で10分間加熱溶融させ、その後、温度30℃で5分間冷却することで、厚みが1mm、縦と横の長さが各々5cmからなる正方形の成形品(シート)を作製した。そして、得られた成形品を打ち抜いて、厚さが1mm、直径が25mmの円板状の耐熱劣化性の評価用試験片を作製した。
【0096】
実施例1
[プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)の製造方法]
[予備重合]
ジャケット付きのSUS製反応器中に、脱気・脱水されたn−へキサン、特開平7−216017号公報の実施例5に記載の方法で製造した固体触媒成分(A)、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(B)、およびトリエチルアルミニウム(C)を、(A)の量に対する(C)の量の比が1.67mmol/g、(C)の量に対する(B)の量の比が0.13mmol/mmolになるように供給して、プロピレン予備重合度が3.5の予備重合触媒成分を調製した。予備重合度は、固体触媒成分(A)1g当たりに生成した予備重合体のグラム数で定義される。
[本重合]
液相重合
SUS製ループ型液相重合反応器の内部気体をプロピレンで十分置換したのち、トリエチルアルミニウム(C)、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(B)((B)/(C)比率=0.15mol/mol)、及び前記の予備重合触媒成分を2.2g/時間の速度で連続して供給し、さらに内温を70℃、圧力をプロピレン及び水素で4.5MPaに調整し、重合を開始した。
重合度が全重合度の20重量%となった時点で、ループ型液相重合反応器で生成された粉末状のプロピレン単独重合体を抜き出ししてSUS製気相重合反応器へ移した。尚、気相重合反応器は3槽で構成される。
気相重合
第一槽にて、反応温度80℃で反応圧力2.1MPaを保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を7.0vol%に保つように水素を供給しながら、前記液相重合反応器から移送されたプロピレン単独重合体成分の存在下に気相重合を行った。
ついで、第一槽における重合で生成した重合体成分の一部を、断続的に第二槽に移し、反応温度80℃、反応圧力1.7MPaが保たれた条件で、プロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を7.0vol%に保つように水素を供給しながら、気相重合を継続して、プロピレン単独重合体成分(以下、重合体成分(I)と記す)を生成させた。
第二槽による重合で得られた重合体成分(I)を分析した結果、極限粘度[η]Iは1.07dl/g、アイソタクチック・ペンタッド分率(以下、mmmm分率)は0.983であり、20℃キシレン可溶部(CXS(I))含有量は0.20重量%であった。
引き続いて、第二槽で生成した重合体成分(I)の一部を、ジャケット付きの第三槽に移し、プロピレン及びエチレンの重合によるエチレン−プロピレン共重合体成分(以下、重合体成分(II)と記す)の製造を開始した。温度70℃で圧力を1.3MPaに保つようにプロピレン/エチレン=2/1(重量比)の割合で、プロピレンとエチレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度が3.0vol%に保たれるように水素の供給量を調整しながら気相重合を継続して、重合体成分(II)を生成させた。
ついで、第三槽内の粉末を断続的に失活槽へ導き、水で触媒成分の失活処理を行った後、該粉末を65℃の窒素により乾燥して、プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)からなる白色のパウダーを得た。
得られたプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)の極限粘度[η]Totalは、1.4dl/gであり、エチレン含量は7.0重量%であった。又、重合体成分(I)の重合体成分(II)に対する重量比は80/20であった。この比は、最終的に得られたプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体の重量と重合体成分(I)の量から算出した。したがって、重合体成分(II)中のエチレンの含有量は35重量%であり、重合体成分(II)の極限粘度[η]IIは2.7dl/gであった。
[造粒(溶融混練、濾過)]
得られたプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)のパウダー100重量部、添加剤C−1、C−2、C−3をそれぞれ0.05重量部、ゼオライト(B−1)0.05重量部、さらに、有機過酸化物(D−1)0.2重量部をミキサーで混合して、更に、得られた混合物を、単軸押出機(田辺プラスチックス(株)製、バレル内径:40mm、スクリュー回転数:100rpm、シリンダー温度:200〜210℃)を用いて溶融混練した。この溶融混練物を二軸混練機に移し、該混練機のダイ部入り口にセットした織金網フィルター(50メッシュ、開き目:410μm)で濾過した後にダイ部より押し出した。この押出物を冷水により冷却固化、切断して、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。また、このときの押出速度は18kg/時間であった。また、このポリプロピレン系樹脂組成物のペレットのMFR(測定温度:230℃)は50.1g/10分であった。
(成形体の製造)
この得られたペレットを用いて射出成形体を作成し、VOC放散量を測定した。評価結果を表1に示した。
【0097】
実施例2、3
ゼオライト(B−1)の配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。
【0098】
実施例4〜6
0.05重量部のゼオライト(B−1)の代わりに表2に記載した量のゼオライト(B−2)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表2に示した。
【0099】
比較例1
ゼオライト(B−1)を配合しなかった以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表3に示した。
【0100】
比較例2〜4
0.05重量部のゼオライト(B−1)の代わりに表3に記載した量のゼオライト(B−3、B−4、またはB−5)使用した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表3に示した。
【0101】
比較例5
0.05重量部のゼオライト(B−1)の代わりに0.4重量部のゼオライト(B−6)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表3に示した。
【0102】
【表1】

【0103】
[共通配合]
成分C: C−1/C−2/C−3:0.05/0.05/0.05(重量部)
成分D: D−1:0.02(重量部)
【0104】
【表2】

【0105】
[共通配合]
成分C: C−1/C−2/C−3:0.05/0.05/0.05(重量部)
成分D: D−1:0.02(重量部)
【0106】
【表3】

【0107】
[共通配合]
成分C: C−1/C−2/C−3:0.05/0.05/0.05(重量部)
成分D: D−1:0.02(重量部)
【0108】
実施例7
[プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−5)の製造方法]
[予備重合]
ジャケット付きのSUS製反応器中に、脱気・脱水されたn−へキサン、特開平7−216017号公報の実施例5に記載の方法で製造した固体触媒成分(A)、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(B)、およびトリエチルアルミニウム(C)を、(A)の量に対する(C)の量の比が6.0mmol/g、(C)の量に対する(B)の量の比が0.1mmol/mmolになるように供給して、プロピレンの予備重合度が2.0の予備重合触媒成分を調製した。予備重合度は、固体触媒成分(A)1g当たりに生成した予備重合体のグラム数で定義される。
[本重合]
液相重合
SUS製ループ型液相重合反応器の内部気体をプロピレンで十分置換したのち、トリエチルアルミニウム(C)、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(B)((B)/(C)比率=0.15mol/mol)、及び前記の予備重合触媒成分を2.025g/時間の速度で連続して供給し、さらに内温を70℃、プロピレンと水素の供給により、圧力を4.5MPaに調整しながらプロピレンを25kg/時間の速度で、水素を215NL/時間の速度でそれぞれ供給して重合を開始した。
重合度が全重合度の13.7重量%となった時点で、ループ型液相重合反応器で生成された粉末状のプロピレン単独重合体を抜き出ししてSUS製気相重合反応器へ移した。尚、気相重合反応器は2槽で構成される。
気相重合
第一槽にて、反応温度80℃で反応圧力1.8MPaを保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を10.6vol%に保つように水素を供給しながら、前記液相重合反応器から移送された粉末状のプロピレン単独重合体成分の存在下に気相重合を行って、プロピレン単独重合体成分(以下、重合体成分(I)と記す)を生成させた。
第一槽による重合で得られた重合体成分(I)を分析した結果、極限粘度[η]Iは0.93dl/g、mmmm分率は0.980であり、20℃キシレン可溶部(CXS(I))含有量は0.25重量%であった。
引き続いて、第一槽で生成した重合体成分(I)の一部を、第二槽に移し、プロピレン及びエチレンの重合によるエチレン−プロピレン共重合体成分(以下、重合体成分(II)と記す)の製造を開始した。温度70℃で圧力を1.4MPaに保つようにプロピレン/エチレン=2.19/1(重量比)の割合で、プロピレンとエチレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度が0.88vol%、エチレン濃度が27.3vol%に保たれるように混合ガス濃度を調整しながら気相重合を継続して、重合体成分(II)を生成させた。
ついで、第二槽内の粉末を断続的に失活槽へ導き、水で触媒成分の失活処理を行った後、該粉末を65℃の窒素により乾燥して、プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−5)からなる白色のパウダーを得た。
得られたプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−5)の極限粘度[η]Totalは、1.87dl/gであり、エチレン含量は9.7重量%であった。又、重合体成分(I)の重合体成分(II)に対する重量比は69.3/30.7であった。この比は、最終的に得られたプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体の重量と重合体成分(I)の量から算出した。したがって、重合体成分(II)中のエチレンの含有量は31.6重量%であり、重合体成分(II)の極限粘度[η]IIは3.99l/gであった。
[造粒(溶融混練、濾過)]
得られたプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−5)のパウダー100重量部、添加剤C−1を0.05重量部、C−2を0.1重量部、C−3を0.1重量部、ゼオライト(B−1s)0.05重量部をミキサーで混合して、更に、得られた混合物を、有機過酸化物によるMFRの調整を行わない条件下で、同方向回転式ニ軸混練機(株式会社テクノベル製、形式名:KZW15−45MG、バレル内径:15mm、スクリュー回転数:300rpm、シリンダー設定温度:200℃、押出量:6〜7kg/時間)を用いて溶融混練した。この溶融混練物を該混練機のダイ部入り口にセットした焼結金網フィルター(日本精線株式会社製、ファインポアNF13D、開き目:60μm)で濾過した後にダイ部より押し出した。この押出物を冷水により冷却固化、切断して、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。また、このポリプロピレン系樹脂組成物のペレットのMFR(測定温度:230℃)は12g/10分であった。
(成形体の製造)
この得られたペレットを用いて、上記に示したように射出成形機によってVOC評価用
の試験片を作製した。得られた試験片の重量は34.8gであり、外観に異常はなかった。また、この試験片についてVOC放散量を測定した。さらに、前記ペレットから機械物性評価用の試験片を作製し、物性を評価した。評価結果を表4に示した。
【0109】
実施例8
プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−5)の代わりにブロック共重合体(A−1)を使用した以外は、実施例7と同様に行った。また、各種評価も実施例7に記載の方法と同様に行った。評価結果を表4および表5に示した。
【0110】
実施例9
プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−5)の代わりにプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)を使用し、造粒時に有機過酸化物(D−1)を0.02重量部添加した以外は実施例7に記載の造粒と同様に行った。また、各種評価も実施例7に記載の方法と同様に行った。評価結果を表4および表5に示した。
【0111】
実施例10〜13
プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)の代わりに表4に記載のブロック共重合体を使用した以外は、実施例9と同様に行った。尚、各プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体の製造は、実施例7に記載の[プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−5)の製造方法]において、表4に記載の各プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体の構造および物性になるように、重合条件を変更することにより実施した。また、各種評価も実施例7に記載の方法と同様に行った。評価結果を表4および表5に示した。
【0112】
比較例6
プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)の代わりに表4に記載のプロピレン単独重合体(A−7)を使用した以外は、実施例9と同様に行った。結果は表4および表5に示した。尚、プロピレン単独共重合体(A−7)の製造は、実施例1に記載のプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)の製造方法において、気相重合段階の第三槽での重合工程で、エチレンを使用しないでプロピレンの単独重合を第二槽目の重合工程と同様な条件で継続して行い、また、表4に記載のものが得られるように各槽(液相重合段階、気相重合段階)の水素濃度を調整することにより実施した。また、各種評価も実施例7に記載の方法と同様に行った。評価結果を表4および表5に示した。
【0113】
実施例14
プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−5)の代わりにブロック共重合体(A−1)を使用し、造粒工程における二軸混練機のシリンダー設定温度を230℃に変更した以外は、実施例7と同様に行った。また、各種評価も実施例7に記載の方法と同様に行った。評価結果を表4および表6に示した。
【0114】
比較例7〜8
プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)の代わりに、重合体成分(I)の極限粘度[η]Iが大きい(A−6)を使用し、有機過酸化物(D−1)の配合量を表6に記載のように変更した以外は、実施例14と同様に行った。尚、プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−6)の製造は下記に示した。また、各種評価は実施例7に記載の方法と同様に行った。評価結果を表4および表6に示した。
[予備重合]
ジャケット付きのSUS製反応器中に、脱気・脱水されたn−へキサン、特開平7−216017号公報の実施例5に記載の方法で製造した固体触媒成分(A)、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(B)、およびトリエチルアルミニウム(C)を、(A)の量に対する(C)の量の比が5.5mmol/g、(C)の量に対する(B)の量の比が0.1mmol/mmolになるように供給して、プロピレンの予備重合度が2.0の予備重合触媒成分を調製した。予備重合度は、固体触媒成分(A)1g当たりに生成した予備重合体のグラム数で定義される。
[本重合]
液相重合
直列に配置された三槽のSUS製ループ型液相重合反応器の内部気体をプロピレンで十分置換したのち、第一槽目にトリエチルアルミニウム(C)、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(B)((B)/(C)比率=0.151mol/mol)、及び前記の予備重合触媒成分を1.8g/時間の速度で連続して供給し、さらに内温を73℃、プロピレンと水素の供給により、圧力を4.7MPaに調整しながら、プロピレンを25kg/時間の速度で、及び水素を20NL/時間の速度でそれぞれ供給して重合を開始した。
重合度が全体の7.5重量%となった段階で、第一槽目のループ型液相重合反応器で生成されたプロピレン単独重合体を抜き出して、第二槽目のループ型液相重合反応器へ移送し、内温を70℃、プロピレンと水素により、圧力を4.5MPaに調整しながら、プロピレンを15kg/時間の速度で、及び水素を11NL/時間の速度で供給し、プロピレン単独重合を行った。
重合度が全重合度の14.8重量%となった時点で、第二槽目のループ型液相重合反応器で生成された粉末状のプロピレン単独重合体を抜き出して、第三槽目のループ型液相重合反応器へ移送し、内温を68℃、プロピレンと水素の供給により、圧力を4.3MPaに調整しながら、プロピレン単独重合を行った。
重合度が全重合度の20重量%となった時点で、第三槽目のループ型液相重合反応器で生成された粉末状のプロピレン単独重合体を抜き出して、SUS製気相重合反応器へ移した。尚、気相重合反応器は2槽で構成される。
気相重合
第一槽にて、反応温度80℃で反応圧力1.8MPaを保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を1.0vol%に保つように水素を供給しながら、前記液相重合反応器から移送された粉末状のプロピレン単独重合体成分の存在下に気相重合を行って、プロピレン単独重合体成分(以下、重合体成分(I)と記す)を生成させた。
第一槽おける重合で得られた重合体成分(I)を分析した結果、極限粘度[η]Iは1.84dl/g、mmmm分率は0.983であり、20℃キシレン可溶部(CXS(I))含有量は0.27重量%であった。
引き続いて、第一槽で生成した重合体成分(I)の一部を、第二槽に移し、プロピレン及びエチレンの重合によるエチレン−プロピレン共重合体成分(以下、重合体成分(II)と記す)の製造を開始した。温度70℃で圧力を1.4MPaに保つようにプロピレン/エチレン=1.35/1(重量比)の割合で、プロピレンとエチレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度とエチレン濃度を、それぞれ2.0vol%および33.1vol%となるように調整しながら気相重合を継続して、重合体成分(II)を生成させた。
ついで、第二槽内の粉末を断続的に失活槽へ導き、水で触媒成分の失活処理を行った後、該粉末を65℃の窒素により乾燥して、プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−6)からなる白色のパウダーを得た。
得られたプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−6)の極限粘度[η]Totalは、2.71dl/gであり、エチレン含量は8.3重量%であった。又、重合体成分(I)の重合体成分(II)に対する重量比は78.2/21.8であった。この比は、最終的に得られたプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体の重量と重合体成分(I)の量から算出した。したがって、重合体成分(II)中のエチレンの含有量は38.1重量%であり、重合体成分(II)の極限粘度[η]IIは2.71l/gであった。
【0115】
実施例15〜16、比較例9
プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−5)の代わりにブロック共重合体(A−1)を使用し、造粒時に有機過酸化物(D−1)を0.02重量部添加し、ゼオライト(B−1s)の代わりに表7に記載のゼオライトを使用した以外は、実施例7と同様に行った。また、各種評価も実施例7に記載の方法と同様に行った。結果を表7に示した。
【0116】
実施例17〜21
添加剤(酸化防止剤)とその配合量を表8に記載のように変更した以外は、実施例9と同様に行った。また、各種評価も実施例9に記載の方法と同様に行った。結果を表8に示した。
【0117】
【表4】



【0118】
【表5】


[共通配合]
成分C: C−1/C−2/C−3:0.05/0.1/0.1(重量部)

【0119】
【表6】


[共通配合]
成分C: C−1/C−2/C−3:0.05/0.1/0.1(重量部)
【0120】
【表7】


[共通配合]
成分C: C−1/C−2/C−3:0.05/0.1/0.1(重量部)
【0121】
【表8】


C−3:アデカスタブ[登録商標]PEP−24G、C−4:イルガノックス1010
C−5:イルガフォス168、C−6:スミライザーBHT






【0122】
実施例1〜6は、ホルムアルデヒドが検出されず、またアセトアルデヒドの放散量が少なかった。これに対して、ゼオライトを配合しなかった比較例1、および本発明の要件を満足しないゼオライトを配合した比較例2〜5は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが両者ともに放散量が多かった。
また、実施例7〜14は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの放散量が少ないか、或いは検出されず、また、機械的特性、流動性、成形加工性にも優れている。これに対して、本発明の要件を満足しないプロピレン単独重合体を使用した比較例6は、アイゾッド衝撃強度とFWIが著しく劣り、本発明の要件を満足しないプロピレン系ブロック共重合体を使用した比較例7は、流動性、成形加工性が劣り、成形体表面に縞模様(フローマーク)が認められた。また、本発明の要件を満足しないプロピレン系ブロック共重合体に有機過酸化物を配合することにより流動性を高めた比較例8は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが両者ともに放散量が多い。
また、実施例9、15、16は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが両者ともに検出されず、また、機械的特性、流動性、成形加工性にも優れている。これに対して、本発明の要件を満足しないゼオライトを配合した比較例9は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが両者ともに放散量が多い。
また、実施例17〜21は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの放散量が少ないか、或いは検出されず、また機械的特性、成形加工性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】実施例において落錘衝撃強度の測定に使用した鉄製重錘の形状を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(a)、(b)および(c)を充足するプロピレン系ブロック共重合体(A)と、前記プロピレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対し、SiO2/Al23モル比が10〜60であるゼオライト(B)0.01〜0.4重量部とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物。
要件(a):プロピレン系ブロック共重合体(A)は、重合体成分(I)および重合体成分(II)を含むプロピレン系ブロック共重合体であり、重合体成分(I)は、135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]I)が0.1〜1.5(dl/g)であるプロピレン系重合体であり、重合体成分(II)は、エチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、プロピレンに由来する単位とを有する共重合体であって、135℃テトラリン中で測定される極限粘度([η]II)が1〜20(dl/g)であるプロピレン系共重合体である。
要件(b):重合体成分(II)の、エチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量が、1〜80重量%である。
要件(c):プロピレン系ブロック共重合体(A)の重合体成分(II)含有量が、5〜70重量%である。
【請求項2】
ゼオライト(B)が、一般式(I)xM2/nO・Al23・ySiO2・zH2O(式中、Mは周期律表のIA族又はIIA族の元素を示し、nはMの原子価を示し、xは0より大きい数を示し、yは20〜60の数であり、zは0〜7の数を示す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
ゼオライト(B)が、一般式(II)xNa2O・Al23・ySiO2・zH2O(式中、xは0〜1の数であり、yは20〜50の数であり、zは0〜7の数を示す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
重合体成分(I)の極限粘度([η]I)に対する重合体成分(II)の極限粘度([η]II)の比が1〜20であり、プロピレン系ブロック共重合体(A)の重合体成分(II)含有量が、10〜50重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂
組成物。
【請求項5】
さらに、分子量300以上のフェノール系酸化防止剤および/または分子量300以上のリン系酸化防止剤を、プロピレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.01〜1重量部で含有する、請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
プロピレン系ブロック共重合体(A)100重量部、ゼオライト(B)0.01〜0.4重量部、および有機過酸化物(C)0.0001〜1重量部を溶融混合する工程を有することを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−40998(P2009−40998A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179865(P2008−179865)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】