説明

ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子

【課題】 複雑な形状を含む様々な形状のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を幅広い成形加工条件で、良好な表面性かつ内倒れの小さい型内発泡成形体を容易に製造できるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を提供すること。
【解決手段】 メルトインデックスが3g/10min以上20g/10min以下であるポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子であって、示差走査熱量計を用い、40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、ひきつづいて200℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却、再度40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温して得られる、樹脂融点が145℃未満であって、樹脂融点から融解終了温度までの融解熱量の樹脂融解熱量全体に対する割合である高温融解熱量比率が20%以上であり、かつ樹脂の曲げ弾性率が800MPa以上であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関し、更に詳しくは、良好な表面性や寸法性を有する型内発泡成形体を幅広い成形加工条件で得ることが可能となるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、ポリスチレン系樹脂型内発泡成形体と比較して、耐薬品性能、耐熱性能、緩衝性能、圧縮歪み回復性能に優れ、ポリエチレン系樹脂型内発泡成形体と比較しても、耐熱性能、圧縮強度に優れることから、緩衝包装資材や通い箱、自動車用部材として広く用いられている。
【0003】
特に、様々な形状の緩衝包装資材として、内包する商品や部材の形状に合わせて柔軟に、かつ切削加工無しで成形できることから、電子機械から産業資材など幅広く利用されている。
【0004】
しかし、様々な形状に成形できるとはいえ、発泡粒子同士の融着を満足させつつ成形体形状を所望の形状とするための加熱蒸気圧力の範囲等の成形加工条件幅がポリスチレンなどと比べて狭いため、型内発泡成形時の加熱蒸気圧力の調整や加熱時間の調整、さらには冷却時間の調整などのユーザーの成形技術の熟練を要する。また、複雑な形状の型内発泡成形体を得ようとする場合、所謂“薄肉”形状と呼ばれる、予備発泡粒子が厚み方向に数個程度しか入らないような厚さが薄く狭い形状や、予備発泡粒子の充填が不十分となりやすいような複雑形状がある型内発泡成形体を得ようとする場合、満足な形状を得ることが困難な場合もある。さらに、当該箇所においては緩衝性能や強度が十分得られなかったり、予備発泡粒子同士の粒間が開き、美麗性を損ねるために、形状設計に大きな制約となっていた。
【0005】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いた型内発泡成形では、一般的に、樹脂融点温度が低い原料を使用することで、蒸気加熱した際の二次発泡性(二次発泡倍率)が高くなりやすくなる為、薄肉形状を成形する場合、融点の低いポリプロピレン系樹脂を使用することは、前記課題を解決するための一手段となりうるが、型内発泡成形後の型内発泡成形体の収縮からの回復が十分でない場合が多く、箱形の型内発泡成形体を目的とした型内発泡成形では、いわゆる“内倒れ”と呼ばれる現象が発生しやすい。内倒れとは、図1における端部寸法(c)と中央部寸法(b)の差が生じることをいい、この差は、個々の製品サイズによって絶対的な数値は変わるが、内倒れが大きい場合、製品として使用できない不良品となる。そのため収縮からの回復時間を長くするなどして内倒れを小さくすることが行われるが、回復時間を長くすると生産性が低下する。
【0006】
以上のような課題に鑑み、樹脂融点が低く、かつ樹脂剛性が融点のわりに高い樹脂として、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体またはプロピレン・エチレン・1−ブテンランダム3元共重合体(特許文献1、特許文献2)が提案されている。しかし、1−ブテンコモノマーを含むプロピレン系ランダム共重合体は、1−ブテンの重合速度が遅いため重合生産性が悪く、樹脂価格が高い問題がある。
【0007】
従来のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を蒸気加熱により型内発泡成形する場合、加熱蒸気圧力を高くすると前記の内倒れや、収縮が大きくなりやすいと共に蒸気使用量の増加など経済性も損ねるが、薄肉部や複雑形状部位の表面美麗性を得るためには加熱蒸気圧力が高い方が良好となりやすくなる。つまり、これまでは、良品の型内発泡成形体を得るための加熱蒸気圧力条件を厳密に管理することが要求され、そのために技術や労力が必要であり、幅広い加熱蒸気圧力幅、すなわち成形加工条件幅を有するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が望まれていた。また、薄肉部や複雑形状部位の表面美麗性を有する型内発泡成形体を得るために低融点樹脂を原料として使用して従来の製造方法で予備発泡粒子を製造した場合、内倒れや収縮が大きくなりやすく、内倒れや収縮の少ない型内発泡成形体を得るために高融点樹脂を原料として使用して従来の製造方法で予備発泡粒子を製造した場合、薄肉部や複雑形状部位の表面美麗性や予備発泡粒子同士の融着性が損なわれたりする場合が多かった。つまり、基材樹脂の選択のみでは充分な成形加工条件幅を有するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得られていなかった。
【0008】
二次加工性改良のため、ポリプロピレン系樹脂と特定のビカット軟化点を有するプロピレン−αオレフィン系樹脂を混合して使用する方法が開示されている(特許文献2)が、内倒れ改善、成形加工条件幅改善には効果が見られない。
【0009】
特許文献3には、一般的に、示差走査熱量計法により測定される2つの融点の内、低温側融点は基材樹脂融点±5℃付近に現れ、高温側融点は基材樹脂融点+6℃〜+14℃に現れるとしている。これらの特性は、発泡剤種、発泡剤量、樹脂粒子を含む分散媒体を保持する温度や時間、圧力解放時の冷却状況のすべてにおいて限定された条件での特性であり、発泡剤種や発泡剤量、樹脂粒子を含む分散媒体を保持する温度や時間を変更することで調整・制御が可能であり、さらにはポリプロピレン系樹脂のコモノマー成分の分布によりさらに多様となる。
【0010】
以上の様に従来技術の範疇では、幅広い成形加工条件で、内倒れがなく、表面美麗な型内発泡成形体を得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を製造する方法は見いだされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平1−242638号公報
【特許文献2】特開平7−258455号公報
【特許文献3】特開2004−300179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、複雑な形状を含む様々な形状のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を幅広い成形加工条件で、良好な表面性かつ内倒れの小さい型内発泡成形体を容易に製造できるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは前記実情に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。即ち、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の型内発泡成形では、通常、低温側融点近傍温度範囲内の温度の加熱蒸気により型内発泡成形を行う。その際、低温側融点をピークとする結晶樹脂が溶融し、型内発泡成形時の予備発泡粒子同士の融着に寄与し、高温側融点をピークとする結晶樹脂は、形状を保持し、寸法安定性を発現するための役割を果たすと考えることができる。高温側融点がより高ければ、型内発泡成形時の加熱蒸気の影響が形状保持に寄与する結晶樹脂の溶融を防ぎ、幅広い成形加熱条件で、良好な製品を得ることが可能となる。また低温側結晶融点がより低温であれば、解けやすい結晶樹脂であることを表し、低圧加熱成形でも薄肉部や構造上予備発泡粒子が充填されにくい複雑形状部位でも粒間が少なく金型形状の転写性が良好な型内発泡成形体を得やすくなる。このような樹脂融点が低く、低圧成形が可能であるにもかかわらず、樹脂剛性が高く、十分な形状保持もしくは寸法安定性能を発現するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を得るためには、ポリプロピレン系樹脂の融点温度は低く、高温融解結晶が一定の範囲にあり樹脂の曲げ弾性率が一定の範囲にあることが、複雑形状を有する型内発泡成形体を極めて幅広い成形加工条件で、容易に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の第1は、メルトインデックスが3g/10min以上20g/10min以下であるポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子であって、示差走査熱量計を用い、40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、ひきつづいて200℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却、再度40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温して得られる、樹脂融点が145℃未満であって、樹脂融点から融解終了温度までの融解熱量の樹脂融解熱量全体に対する割合である高温融解熱量比率が20%以上であり、かつ樹脂の曲げ弾性率が800MPa以上であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関する。
【0015】
本発明の第2は、前記記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形してなる型内発泡成形体に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、良好な型内発泡成形体を得ることが可能な成形加工条件幅が広く、良好な二次発泡性を有しているために良好な表面性を有すると共に内倒れの小さい(寸法性に優れた)型内発泡成形体を得ることが出来る、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を提供することが出来る。
【0017】
そのため、ポリプロピレン系樹脂が本来有する耐熱性、耐溶剤性、断熱性、緩衝性を全く阻害することなく、複雑な形状を含む様々な形状の型内発泡成形体を容易に得ることができ、従い、緩衝材や断熱材、自動車用部材などの用途で幅広く好適に利用可能な型内発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】成形評価に用いた箱型の型内発泡成形体の形状を示す斜視図である。
【図2】本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子について、示差走査熱量計を用い、40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、ひきつづいて200℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却、再度40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温した際に得られるDSC曲線の一例である。横軸は温度、縦軸は吸熱量である。ピーク温度を樹脂融点(℃)(A)、融解熱量を樹脂融解熱量(J/g)(C)とし、この樹脂融解熱量のうち、ピーク温度よりも高い温度での融解熱量(J/g)(B)を全体の樹脂融解熱量で除したものを高温融解熱量比率(%)として算出した。
【図3】本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子について、示差走査熱量計を用い、40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温した際に得られるDSC曲線の一例である。横軸は温度、縦軸は吸熱量である。低温側の網掛け部分がQl、高温側の網掛け部分がQhである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂としては、単量体として、プロピレンを80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むものであれば、その組成、合成法に特に制限はなく、例えば、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体などが挙げられる。
【0020】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂のメルトインデックス(MIと表記する場合がある)は3g/10min以上20g/10min以下であり、3g/10min以上15g/10min以下であることが好ましい。メルトインデックスが当該範囲である場合、高い二次発泡性と良好な寸法性の両立が容易となる。メルトインデックスが3g/10min未満である場合、二次発泡性が悪化し、美麗な表面性が得られなくなり、20g/10minより大きい場合、寸法性が悪化する。メルトインデックスの測定は、JIS−K7210記載のMFR測定装置を用い、オリフィス2.0959±0.005mmφ、オリフィス長さ8.000±0.025mm、荷重2160g、230±0.2℃の条件下でおこなう。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂のメルトインデックスは、例えば、有機過酸化物の使用などにより調整してもよい。使用できる有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;パーメタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどがあげられる。
【0022】
本発明のポリプロピレン系樹脂は、樹脂融点が145℃未満であり、より好ましくは142℃未満である。ポリプロピレン系樹脂の樹脂融点が当該範囲内であると、良好な二次発泡性と寸法性を両立できる。実用上の下限は110℃であり、それを下回る場合、低圧蒸気で美麗な表面性の型内発泡成形体を得やすいが、高圧蒸気による型内発泡成形を行うと、表面に皺が多くなったり、寸法性が損なわれたりする場合が多い。また、樹脂融点が145℃よりも高くなると、型内発泡成形時の蒸気加熱圧を高くしなければ融着性や表面転写性、型決まりが悪くなる。
【0023】
ここでいう寸法性とは、得られた型内発泡成形体の変形や収縮が小さく、所望の形状を有することを言うが、たとえば図1のような箱形状である場合、端部寸法(c)と中央部寸法(b)の差が小さい、いわゆる“内倒れ”の小さいことを指す。
【0024】
一般に樹脂融点が低い場合、設備コスト、エネルギーコストに優れる低蒸気圧でポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の生産が可能であるが、型内発泡成形体が柔らかくなる傾向がある。そのため、満足な緩衝性能や圧縮特性を発現させるために、型内発泡成形体密度を高くしなければならず、発泡体の特長である軽量性が損なわれる場合がある。この型内発泡成形体の特性は、一般的には50%圧縮強度で代表的に比較されるが、ポリプロピレン系樹脂特性としては、曲げ弾性率で代表的に相関付けでき、本発明では、ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は800MPa以上であり、より好ましくは850MPa以上である。曲げ弾性率が800MPa未満となった場合、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の50%圧縮強度が低くなりやすく、型内発泡成形体密度を高くしなければならない場合がある。実質的な上限は1200MPa程度である。この範囲よりも高くなっても、緩衝性能としては問題ないが、一般的に樹脂融点が高くなる傾向がある。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は、ポリプロピレン系樹脂粒子を80℃にて6時間乾燥させた後、35t射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、金型温度30℃にて厚み6.4mmバー(幅12mm、長さ127mm)を作製し、ASTM D790に従い曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求める。なお、曲げ弾性率は、成形加工等によって殆ど変化しない物性であるため、測定サンプルとして、発泡工程を経ていないポリプロピレン系樹脂粒子、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の樹脂化したもののいずれを用いてもよい。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は示差走査熱量測定(DSC)において、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子4〜6mgを40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温した際に、2つの融解ピークを示し、2つの融点を有している。
【0027】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の示差走査熱量計法による測定において、2つの融解ピークのうち低温側融点に基づく融解ピーク熱量Ql(J/g)と高温側融点に基づく融解ピーク熱量Qh(J/g)としたときに、高温側融点に基づく融解ピーク熱量の融解ピーク全体熱量に対する比率(Qh/(Ql+Qh))(以下、DSCピーク比と称す場合がある)が、10%以上50%以下であることが好ましく、15%以上45%以下であることがより好ましい。DSCピーク比が当該範囲内にある場合、本発明の効果である幅広い成形加工条件幅を得やすくなる。
【0028】
ここで、低温側融点に基づく融解ピーク熱量Qlは、低温側融点に基づく融解ピークと、低温側融点に基づく融解ピークと高温側融点に基づく融解ピークの間の極大点からの融解開始ベースラインへの接線で囲まれる熱量であり、高温側融点に基づく融解ピーク熱量Qhは、DSC曲線の高温側融点に基づく融解ピークと、低温側融点に基づく融解ピークと高温側融点に基づく融解ピークの間の極大点からの融解終了ベースラインへの接線で囲まれる熱量を言う。
【0029】
低温側融点は本来基材樹脂が有する樹脂融点に近く、冷却時の結晶化履歴により、そのピーク温度や結晶熱量は影響を受ける。また、高温側融点は樹脂の組成はもとより、アニーリングする際の温度や時間、さらには可塑化性能を有する発泡剤の量に関連して制御できる。高いアニーリング温度や長時間のアニーリング、可塑化性能を有する発泡剤の量が多ければ、高温側融点は高温となりやすくなる。
【0030】
本発明のポリプロピレン系樹脂は、示差走査熱量計を用い、40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、ひきつづいて200℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却、再度40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温して得られる、樹脂融点から融解終了温度までの融解熱量の樹脂融解熱量全体に対する割合である高温融解熱量比率が20%以上であり、好ましくは25%以上である。
【0031】
ここでいう樹脂融点および樹脂融解熱量とは、示差走査熱量測定(DSC)において、ポリプロピレン系樹脂粒子(或いは、予備発泡粒子または成形体から切り出したものでもよい)4〜6mgを40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、ひきつづいて200℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却、再度40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線(図2)から得られるピーク温度を樹脂融点(℃)(A)、融解熱量を樹脂融解熱量(J/g)(C)とした。また、樹脂融解熱量のうち、ピーク温度よりも高い温度での融解熱量(J/g)(B)を全体の樹脂融解熱量で除したものを高温融解熱量比率(%)として算出する。
【0032】
本発明の樹脂融点から融解終了温度までの融解熱量の樹脂融解熱量全体に対する割合である高温融解熱量比率が当該範囲にある場合、短時間のアニーリングにより、高温側融点をより高温にすることができ、内倒れが発生しにくくなる。
【0033】
本発明のポリプロピレン系樹脂は単独のポリプロピレン系樹脂、もしくは、2種類以上のポリプロピレン系樹脂を溶融樹脂ブレンドしたポリプロピレン系樹脂を使用できる。たとえば、樹脂融点の異なる樹脂を適切なバランスでブレンドすることにより、高温融解熱量比率を20%以上とすることができる。
【0034】
また、前記ポリプロピレン系樹脂にポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲で添加して、基材樹脂としても良い。ポリプロピレン系樹脂以外の他の合成樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体等のエチレン系樹脂、或いはポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂等が例示される。
【0035】
また、必要に応じて、例えば、タルク等の造核剤をはじめ酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸などの安定剤または架橋剤、連鎖移動剤、滑剤、可塑剤、充填剤、強化剤、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤等を本発明の効果を損なわない範囲で基材樹脂に添加してポリプロピレン系樹脂としてもよい。
【0036】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂への添加剤としては、発泡剤として、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素系発泡剤を使用する場合は、タルク、シリカ、炭酸カルシウムのようなセル造核剤となる無機物質を、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上0.5重量部以下添加することが好ましい。
【0037】
また、発泡剤として、空気、窒素、炭酸ガス、水等の無機発泡剤を使用する場合は、前記無機物質および/または吸水物質を使用することが好ましい。吸水物質とは、当該物質を樹脂粒子中に添加し、該樹脂粒子を水と接触させる、或いは、水分散媒中で発泡剤含浸をする際に、樹脂粒子内に水を含有させうる物質をいい、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硼砂、硼酸亜鉛等の水溶性無機物;ポリエチレングリコール、ポリエーテルを親水性セグメントとした特殊ブロック型ポリマー(商品名:ペレスタット;三洋化成製)、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、ブタジエン(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、カルボキシル化ニトリルゴムのアルカリ金属塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩及びポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩等の親水性ポリマー;エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、イソシアヌル酸等の多価アルコール類;メラミン等が挙げられる。
【0038】
吸水物質の添加量は、目的とする発泡倍率、使用する発泡剤、使用する吸水物質の種類によって異なり一概に記載することはできないが、水溶性無機物、多価アルコール類、メラミンを使用する場合、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上2重量部以下であることが好ましく、親水性ポリマーを使用する場合、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.05重量部以上5重量部以下であることが好ましい。また、これら、水溶性無機物、親水性ポリマー、多価アルコール類等を2種以上併用してもよい。
【0039】
本発明のポリプロピレン系樹脂は、必要に応じて添加される前記添加剤と共に、あらかじめ押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱状、楕円柱状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状で、その粒重量が好ましくは0.2mg以上10mg以下、更に好ましくは0.5mg以上6mg以下であるようなポリプロピレン系樹脂粒子に成形加工される。
【0040】
本発明では前記ポリプロピレン系樹脂粒子を、例えば、発泡剤と共に耐圧容器内で水中に分散させ、ポリプロピレン系樹脂分散物とし、該分散物を所定の温度まで加熱し、アニーリングを行うと共に発泡剤を含浸させ、該発泡剤の示す蒸気圧以上で、所望の発泡倍率を得るための適宜な圧力で耐圧容器内を一定に保持しながら、該ポリプロピレン系樹脂粒子と水との分散物を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することによりポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が得られるが、この方法に限定されるものではない。
【0041】
前記分散物の調製に際しては、分散剤として、例えば、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、アルミノ珪酸塩、硫酸バリウム、カオリン等の無機系分散剤と、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、n−パラフィンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ等の界面活性剤等を分散助剤として使用することが好ましい。これらの中でも第三リン酸カルシウムとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの併用が更に好ましい。分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリプロピレン系樹脂の種類と使用量によって異なるが、通常、水100重量部に対して分散剤0.2重量部以上3重量部以下を配合することが好ましく、分散助剤0.001重量部以上0.1重量部以下を配合することが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂粒子は、水中での分散性を良好なものにするために、通常、水100重量部に対して20重量部以上100重量部以下使用することが好ましい。
【0042】
前記発泡剤としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン等脂肪族炭化水素、モノクロルメタン、ジクロロメタン、ジクロロジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素、二酸化炭素、窒素、空気などの無機ガス、水等が挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を併用して用いることが出来る。発泡剤の添加量は予備発泡粒子の発泡倍率、発泡剤の種類、ポリプロピレン系樹脂の種類、樹脂粒子と、分散媒である水の比率、含浸または発泡温度などによって異なるが、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対し、5重量部以上50重量部以下であることが好ましい。
【0043】
以上のようにして得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率は3倍以上40倍以下であることが好ましく、5倍以上35倍以下であることがさらに好ましい。必要に応じて、一旦15倍以下のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を製造した後、該予備発泡粒子に空気等の不活性ガスを含浸させて発泡力を付与した後、加熱を行って更に発泡させるという、いわゆる二段発泡法を採用してもよい。発泡倍率が当該範囲内であると、型内発泡成形した型内発泡成形体の利点である軽量性と満足な圧縮強度が得られる傾向がある。ここでいう発泡倍率は、予備発泡粒子の重量と予備発泡粒子をメスフラスコ中のエタノールに水没させてえられる容積から予備発泡粒子密度を算出し、基材樹脂密度を除したものである。
【0044】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子のセル径は50μm以上1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以上750μm以下であり、さらに好ましくは、100μm以上500μmである。当該範囲内のセル径であると、成形性や寸法安定性が高い為、好ましい。セル径とは予備発泡粒子の中から任意に30個の予備発泡粒子を取り出し、JIS K6402に準拠してセル径を測定し、算出される平均セル径である。
【0045】
本発明の型内発泡成形体は、本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて型内発泡成形することにより得られる。
【0046】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形体にするには、例えば、イ)発泡粒子を無機ガスで加圧処理して粒子内に無機ガスを含浸させ所定の粒子内圧を付与した後、金型に充填し、蒸気等で加熱融着させる方法(特公昭51−22951号公報)、ロ)発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し粒子の回復力を利用して、蒸気等で加熱融着させる方法(特公昭53−33996号公報)等の方法が利用しうる。
【0047】
本発明における型内発泡成形体の密度は、0.012g/cm3以上0.075g/cm3以下であることが好ましい。当該範囲の密度である型内発泡成形体は、型内発泡成形体の特徴である軽量性を有し、かつ、型内発泡成形時に収縮、変形が起こりにくく、不良品の割合が低いため生産性が良好である傾向にある。
【0048】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率と型内発泡成形時の2次発泡倍率を適宜調整することで所望とする密度の型内発泡成形体を得ることが出来る。
【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
〈発泡倍率測定〉
試料となる予備発泡粒子重量と、該試料をメスフラスコ中のエタノールに水没させてえられる容積から予備発泡粒子密度を算出し、基材樹脂密度を除して発泡倍率とした。
【0051】
〈低温側融点、高温側融点、DSCピーク比および樹脂融点の測定〉
示差走査熱量測定(DSC)において、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子4〜10mgを40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、得られる2つの融解ピークのうち、基材樹脂が本来有していた結晶状態に基づく融点である低温側融点と、該低温側融点より高温側に現れる高温側融点を得た。該2つの融解ピークのうち低温側融点に基づく融解ピーク熱量Ql(J/g)と高温側融点に基づく融解ピーク熱量Qh(J/g)としたときに、高温側融点に基づく融解ピーク熱量の融解ピーク全体熱量に対する比率(Qh/(Ql+Qh))をDSCピーク比とした。
【0052】
ひきつづいて200℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却、再度40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線において、得られるピーク温度を基材樹脂が本来有している樹脂融点(A)、融解熱量を樹脂融解熱量(J/g)(C)とした。また、樹脂融解熱量のうち、ピーク温度よりも高い温度での融解熱量(J/g)(B)を全体の樹脂融解熱量で除したものを高温融解熱量比率(%)として算出した。
【0053】
<ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率>
ポリプロピレン系樹脂粒子を80℃にて6時間乾燥させた後、35t射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、金型温度30℃にて厚み6.4mmバー(幅12mm、長さ127mm)を作製して、一週間以内にASTM D790に従い曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求めた。
【0054】
〈成形評価〉
得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を、pH=1の塩酸水溶液で洗浄した後、75℃で乾燥し、該予備発泡粒子を無機ガスで加圧処理して予備発泡粒子内に無機ガスを含浸させ所定の粒子内圧(約0.2MPa)を付与した後、図1に示す形状の金型(成形体設計外形寸法 327mm×353mm×256mm、薄肉部寸法 103mm×153mm×5mm)を用いて、加熱水蒸気圧力0.20および0.35MPa(ゲージ圧)で型内発泡成形を実施し、薄肉部表面aおよび寸法c(長手方向中央部)を評価した。
【0055】
(1)表面性
加熱水蒸気圧力0.20および0.35MPa(ゲージ圧)で型内発泡成形した型内発泡成形体表面について、
型内発泡成形体表面aに現れる予備発泡粒子の輪郭全てが隣り合った予備発泡粒子と融着し、エッジ部分の型決まりが良好な型内発泡成形体が得られた場合。・・・◎
型内発泡成形体表面aに現れる予備発泡粒子の輪郭のほとんどが隣り合った予備発泡粒子と融着し、エッジ部分の型決まりが概ね良好な型内発泡成形体が得られた場合。・・・○
予備発泡粒子間に隙間が多く観られるなど、エッジ部分の型決まりが不良な型内発泡成形体が得られた場合。・・・×
【0056】
(2)寸法性
0.20もしくは0.35MPa(共にゲージ圧)の水蒸気加熱により型内発泡成形した後、25℃で2時間静置し、次いで75℃に温調した恒温室内に5時間静置した後、取り出し、25℃で4時間放冷した型内発泡成形体3試験体の寸法(b)と(c)を測定し、(b)−(c)で算出される内倒れ量の3試験体について平均して変形量とした。
変形量(c−b)が3.0mm以下である場合、◎とし、3.0mmを超えて5.0mm以下である場合、○とし、寸法性が良好な型内発泡成形体とした。5.0mmより大きい場合は、不良とした。
【0057】
<型内発泡成形体の50%圧縮強度>
得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を、pH=1の塩酸水溶液で洗浄した後、75℃で乾燥し、耐圧容器にて加圧空気を含浸して予備発泡粒子内圧を0.2MPaとした後、物性測定用に400mm×300mm×60mmの板状金型を用いて、加熱水蒸気圧力0.20〜0.35MPa(ゲージ圧)で型内発泡成形した。得られた型内発泡成形体は1時間室温で放置した後、75℃の恒温室内で15時間養生乾燥を行い、融着性が60%以上の型内発泡成形体を選び、室温で1週間放置した後に圧縮強度測定を行った。
【0058】
得られた型内発泡成形体から縦50mm×横50mm×厚み25mmのテストピースを切り出し、NDZ−Z0504に準拠し、10mm/分の速度で圧縮した際の50%圧縮時の圧縮応力(MPa)を測定した5点のデータを成形体密度に対してプロットし、最小二乗法により成形体密度20kg/m3における圧縮応力を算出した。
【0059】
(実施例1)
エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体(樹脂密度0.90g/cm3、樹脂融点141.1℃、メルトインデックス7.6g/10min、高温融解熱量比率25%、曲げ弾性率880MPa)からなる樹脂に対し、該樹脂100重量部にパウダー状タルク0.1重量部、ポリエチレングリコール0.5重量部をブレンドし、該ブレンド物を50mm単軸押出機にて押し出し、1.2mg/粒の樹脂粒子とした。得られた樹脂粒子100重量部(2.8kg)を、攪拌機を有する10L容の耐圧容器の中に入れ、第3リン酸カルシウム(大平化学産業社製)1.0重量部及びノルマルパラフィンスルホン酸ナトリウム0.05重量部の存在下で、水170重量部中に分散させた。該分散物を攪拌しながら、二酸化炭素5重量部を加え、加熱し、該分散物を表1に示す温度に調整した状態で、20分間保持した。さらに二酸化炭素を追加して、耐圧容器の内圧を表1に示す圧力になるように調整した。次に、該耐圧容器内の圧力をガス状の二酸化炭素で維持しながら、内径25mmの放出バルブの後方端に取り付けた直径4mmの円形オリフィスを通して、ペレット及び水の分散物を大気中に放出して、表1の予備発泡粒子を得た。該予備発泡粒子に空気を含浸させた後、二段発泡により、発泡倍率30倍の予備発泡粒子として成形評価を実施したところ、表面性、寸法性ともに良好な型内発泡成形体を得ることができ、50%圧縮強度は0.17MPaであった。
【0060】
【表1】

【0061】
(実施例2)
実施例1の樹脂を用いるかわりにエチレン−プロピレンランダム共重合体(樹脂密度0.90g/cm3、樹脂融点142.5℃、メルトインデックス6.2g/10min、高温融解熱量比率21%、曲げ弾性率860MPa)の樹脂を用い、分散物の保持温度を表1に示すとおりとした以外は実施例1と同様の方法により、表1に示す予備発泡粒子を得た。実施例1と同様に二段発泡により発泡倍率30倍として成形評価したところ、表面性、寸法性ともに良好な型内発泡成形体を得ることができ、50%圧縮強度は0.17であった。
【0062】
(実施例3)
実施例1で用いた樹脂を用いる代わりに、エチレン−プロピレンランダム共重合体(樹脂密度0.90g/cm3、樹脂融点144.5℃、メルトインデックス6.5g/10min、高温融解熱量比率27%、曲げ弾性率960MPa)を用い、該樹脂100重量部にパウダー状タルク0.02重量部、グリセリン0.2重量部をブレンドし、該ブレンド物を50mm単軸押出機にて押し出し、1.2mg/粒の樹脂粒子とした。続いて実施例1と同様に調整した分散物を表1に示す温度・圧力に調整し、実施例1と同様に大気放出して表1に示す予備発泡粒子を得た。実施例1と同様に二段発泡を行い、成形評価を実施したところ、表面性、寸法性ともに良好な型内発泡成形体を得ることができ、50%圧縮強度は0.18MPaであった。
【0063】
(比較例1)
実施例3で用いた樹脂を用いる代わりに、エチレン−プロピレンランダム共重合体(樹脂密度0.90g/cm3、樹脂融点145.4℃、メルトインデックス6.8g/10min、高温融解熱量比率14%、曲げ弾性率1100MPa)を用いた以外は実施例3と同様にポリプロピレン系樹脂粒子とした。続いて実施例1と同様に調整した分散物を表1に示す温度・圧力に調整し、実施例1と同様に大気放出して表1に示す予備発泡粒子を得た。実施例1と同様に二段発泡を行い、成形評価を実施したところ、0.2MPaでの表面性が不良な型内発泡成形体となり、50%圧縮強度は0.19MPaであった。
【0064】
(比較例2)
実施例1で用いた樹脂を用いる代わりに、エチレン−プロピレンランダム共重合体(樹脂密度0.90g/cm3、樹脂融点141.3℃、メルトインデックス0.5g/10min、高温融解熱量比率28%、曲げ弾性率800MPa)を用い、該樹脂100重量部にパウダー状タルク0.02重量部、グリセリン0.4重量部をブレンドし、該ブレンド物を50mm単軸押出機にて押し出し、1.2mg/粒の樹脂粒子とした。続いて実施例1と同様に調整した分散物を表1に示す温度・圧力に調整し、実施例1と同様に大気放出して表1に示す予備発泡粒子を得た。実施例1と同様に二段発泡を行い、成形評価を実施したところ、0.2MPaでの表面性および寸法性が不良な型内発泡成形体となり、50%圧縮強度は0.17MPaであった。
【0065】
(比較例3)
実施例1で用いた樹脂を用いる代わりに、エチレン−プロピレンランダム共重合体(樹脂密度0.90g/cm3、樹脂融点137.5℃、メルトインデックス7.2g/10min、高温融解熱量比率30%、曲げ弾性率750MPa)を用いた以外は実施例1と同様にポリプロピレン系樹脂粒子とした。続いて実施例1と同様に調整した分散物を表1に示す温度・圧力に調整し、実施例1と同様に大気放出して表1に示す予備発泡粒子を得た。実施例1と同様に二段発泡を行い、成形評価を実施したところ、表面性、寸法性ともに良好な型内発泡成形体を得ることができたが、50%圧縮強度は0.15MPaと低くなった。
【符号の説明】
【0066】
a 薄肉形状部位
b 中央部寸法を測定した箇所
c 端部寸法を測定した箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトインデックスが3g/10min以上20g/10min以下であるポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子であって、示差走査熱量計を用い、40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、ひきつづいて200℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却、再度40℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温して得られる、樹脂融点が145℃未満であって、樹脂融点から融解終了温度までの融解熱量の樹脂融解熱量全体に対する割合である高温融解熱量比率が20%以上であり、かつ樹脂の曲げ弾性率が800MPa以上であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項2】
請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形してなる型内発泡成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−248341(P2010−248341A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98153(P2009−98153)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】