説明

ポリプロピレン系樹脂積層無延伸フィルムの製造方法

【課題】 マット感、溶断シール強度に優れ、かつ溶断シール後のカールが少ないフィルムを提供すること。
【解決手段】 少なくともプロピレン系ランダム共重合体を50〜80%質量と融点が100℃以下のエチレン−α・オレフィン共重合袋及び/又はプロピレン−α・オレフィン共重合体樹脂20〜50質量%からなるシール層と、融点140℃以上のプロピレン系ブロック共重合体を95質量%以上含有する樹脂からなる印刷層の2層以上のポリオレフィン系樹脂からなる積層フィルムの製造方法であって、該フィルムを冷却固化する際、シール層側の面を冷却ロールに接するようにすることを特徴とするポリオレフィン系積層フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ポリプロピレン系無延伸フィルムに関するものであり、詳しくは、マット感、溶断シール強度に優れ、かつ溶断シールによる製袋時のカールが少ないため、食パン、菓子パン等の食品などの包装分野に適したポリプロピレン系積層無延伸フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系無延伸フィルムは、シーラントフィルムの中では剛性が高く、透明性が良好であり、かつ安価であるので、食品包装など種々の包装材料に使用されている。しかし、食パン、菓子パン等の食品などの包装分野に関しては、マット感、溶断シール強度に優れることが求められるようになってきている。
【0003】
これらの要求に対し、プロピレン系ランダム共重合体を50%質量%以上含む樹脂からなるシール層とエチレン含有量およびキシレン可溶分比率が特定の範囲にあるプロピレン系ブロック共重合体からなる印刷層、さらに中間層からなる積層フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−45050号公報
【0004】
しかしながら、上記方法は溶断シールによる製袋時のカールが大きいという欠点を有していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、マット感、溶断シール強度に優れ、かつ溶断シールによる製袋時のカールが少ないため、食パン、菓子パン等の食品などの包装分野に適したポリプロピレン系積層無延伸フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、マット感、溶断シール強度に優れ、かつ溶断シールによる製袋時のカールが少ない、ポリプロピレン系積層有無延伸フィルムの製造方法の完成に到った。
【0007】
すなわち、本発明は少なくともシール層と印刷層の2層以上のポリオレフィン系樹脂からなる積層フィルムの製造方法であって、前記各層が下記の特性を有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおいて、前記積層フィルムを冷却固化する際、シール層側の面を冷却ロールに接するようにすることを特徴とするポリオレフィン系積層フィルムの製造方法である。
(1)シール層
プロピレン系ランダム共重合体(A)を50〜80%質量%と、融点が100℃以下のエチレン−α・オレフィン共重合袋(B)20〜50質量%からなる。
(2)印刷層
融点140℃以上のプロピレン系ブロック共重合体(D)を95質量%以上含有する樹脂組成物からなる。
【0008】
この場合において、前記印刷層に、少なくともアルキルスルホン酸塩を含有する帯電防止剤を3000〜8000ppm添加することが好適である。
【0009】
また、場合において、前記シール層と印刷層の間に、20℃におけるキシレン可溶分比率が6〜25%であるプロピレン系ブロック共重合体(D)を主体とする中間層を有することが好適である。
【0010】
さらにまた、この場合において、前記シール層の厚み比率が全体の10〜30%であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層フィルムの製造方法。
さらにまた、前記方法により、少なくともシール層と印刷層の2層以上のポリオレフィン系樹脂からなる積層フィルムの製造方法であって、前記各層が下記の特性を有し、かつシール層の厚み比率が10%以上であり、下記測定による高さが3mm未満であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層フィルムという好適なフィルムが得られる。
(1)シール層
プロピレン系ランダム共重合体(A)を50〜80%質量%と、融点が100℃以下のエチレン−α・オレフィン共重合袋(B)20〜50質量%からなる樹脂組成物。
(2)印刷層
融点140℃以上のプロピレン系ブロック共重合体(C)を95質量%以上含有する樹脂組成物からなる。
(測定方法)
フィルムをシール面同士が向かい合うように、かつ一方のフィルムが5cm長くなるように2つに折り、自動型製袋機(共栄印刷機械材料社製PP5500型)に供給した。そして、溶断シール刃(刃先角度60度)の温度設定300℃、製袋速度100袋/分でシール、製袋を行って得た袋のフィルム1枚の側を下にして水平に置き、フィルムの浮き上がった高さをゲージで測定した。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリプロピレン系積層有無延伸フィルムは、マット感、溶断シール強度に優れ、かつ溶断シールによる製袋時のカールが少ないため、食パン、菓子パン等の食品やその他物品の幅広い包装分野に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、少なくともシール層および印刷層の2層よりなる積層ポリプロピレン系無延伸フィルムである。
【0013】
以下に前記ラミネート層およびシール層に使用する樹脂について説明する。
(シール層)
本発明のシール層には、プロピレン系ランダム共重合体(A)を50〜80%質量%と、融点が100℃以下のエチレン−α・オレフィン共重合袋(B)20〜50質量%からなる樹脂組成物を使用するのが溶断シール性の点で好ましい。
【0014】
前記プロピレン系ランダム共重合体(A)は、α−オレフィンの含有量が2〜8質量%の範囲にあるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂である。α−オレフィンの含有量は3〜7質量%がより好ましく、3〜6質量%がさらに好ましい。α−オレフィンの含有量が2質量%未満では溶断シール性が劣り、8質量%を超えると、耐ブロッキング性が悪化する。α―オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等が例示できる。
【0015】
これらの中では、エチレン及び/又は1−ブテンとのランダム共重合体が好ましい。又、MFRはフィルムとすることができる限り特に限定はされないが、通常0.5〜20g/10分、好ましくは2〜10g/10分の範囲にあること、特に好ましくは5〜10g/10分の範囲にあることである。また融点は、120℃以上であることが好ましい。
本発明に係わるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は通常、分子量分布(重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される)は、1.5〜3の範囲にあることが好ましい。3を超えると、低分子量物が増えて耐ブロッキング性が悪化する。従って、シングルサイト触媒を用いて重合されてなることが好ましい。
【0016】
前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)はエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン等の炭素数が2〜10のα−オレフィン系モノマーから選ばれた2種以上を重合して得たポリプロピレン系ランダム共重合体又はブロック共重合体が好ましく、また、この共重合体は単独又は混合して使用することができる。
【0017】
コモノマーとしては、20〜40質量%含有するのが好ましく、メルトフローレートが1〜8g/10分、密度が0.850〜0.910/cmの範囲が好ましい。
(印刷層)
本発明の印刷層には、融点140℃以上のプロピレン系ブロック共重合体(C)を95質量%以上含有する樹脂組成物を使用する。
プロピレン系ブロック共重合体(C)の含有量が95質量%未満であると溶断シールによる製袋後のカールが大きくなる。
【0018】
プロピレン系ブロック共重合体(C)はα−オレフィン含有量が好ましくは2〜10質量%、より好ましくは4〜8質量%の範囲にあるプロピレン・α―オレフィンブロック共重合樹脂である。α−オレフィンの含有量が2質量%未満では耐衝撃性が劣り、8質量%を超えると、透明性や剛性が悪化する。α―オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等が例示できる。これらの中では、エチレン及び/又は1−ブテンが好ましい。又、MFRはフィルムとすることができる限り特に限定はされないが、通常0.5〜10g/10分、好ましくは1〜5g/10分の範囲にある。MFRが0.5g/10分未満の場合は生産性に劣り、10g/10分を超える場合は耐衝撃性に劣る。
プロピレン系ブロック共重合体(C)は20℃におけるキシレン可溶分比率が10〜30%であり、エチレン含有量は8〜20質量%、メルトフローレートが2〜8g/10分、融点が150〜200℃のものが好ましい。
特に、20℃におけるキシレン可溶部の比率が10%未満だとフィルムが裂けやすいという問題が、30%を越えるとフィルムの剛性が低下するという問題がある。
【0019】
前記印刷層が少なくともアルキルスルホン酸塩を含有する帯電防止剤を前記樹脂組成物に対して、3000〜8000ppm含有することが好ましい。
例えば、エルカ酸アミド、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルスルホン酸ナトリウムなどを30000〜70000ppm添加するのが好ましい。
【0020】
前記シール層と印刷層の間に、20℃におけるキシレン可溶分比率が6〜25%であるプロピレン系ブロック共重合体(D)を主体とする樹脂組成物からなる中間層を有することがヒートシール強度の点で好ましい。
エチレン含有量は8〜20質量%のものが好ましく、20℃におけるキシレン可溶部の比率が20〜30%、メルトフローレートが2〜8g/10分、融点が150〜200℃のものが好ましい。
また、上記範囲のプロピレン系ブロック共重合体(D)は2種以上の上記範囲のプロピレン系ブロック共重合体を混合してもよい。
【0021】
また、本発明においては、上記印刷層、中間層およびシール層中に含有される20℃におけるキシレン可溶部の比率がシール層<中間層層<印刷層の順に増大させることが好ましく、前記した各種特性のバランスを取ることが可能となる。
【0022】
本発明のシール層、印刷層、中間層には本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料等の添加剤或いは他の重合体を必要に応じて配合することができる。特に、シール層中にはシリカ、タルク、ゼオライトや硼酸アルミニウム等の無機化合物粒子、ポリメタクリル酸メチル、メラミンホルマリン樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリエステル樹脂等の有機化合物粒子等、種々公知のブロッキング防止剤を0.01〜1質量%添加しておくと、更に耐ブロッキング防止性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。これらの中でも、粉砕シリカ、球状シリカ、ポリメタクリル酸メチルがアンチブロッキング性、透明性の面から特に好ましい。
これらの、平均粒子径は2〜8μmが好ましく、50000〜15000ppm添加するのが好ましい。
【0023】
又、シール層中には、炭化水素系、脂肪酸系、高級アルコ−ル系、脂肪族アマイド系、金属せっけん系、エステル系等、種々公知のスリップ剤を0.01〜0.5質量%添加しておくと、更にスリップ性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。これらの中でも即効性のあるエルカ酸アミドと遅効性のベヘニン酸アミドの併用系にすると、即効性のあるエルカ酸アミドにより製膜加工時でのフィルムの巻き安定性とその後の裁断加工時、印刷、ラミネ−トの作業性を改善することができ、一方接着剤に吸着されにくい遅効性のベヘニン酸アミドによりドライラミネート後の滑り性、抗ブロッキング性の改良効果を得ることができる。
【0024】
更に、シール層中には、高密度ポリエチレン、ジベンジリデンソルビト−ル、メチル置換ジベンジリデンソルビト−ル、ヒドロキシ−ジ−アルミニウム、ビスソルビシ−ル、リン酸ビスナトリウムメチレンビスアシッドホスフェ−トナトリウム塩等、種々公知の結晶化核剤を0.01〜1.0重量%添加しておくと、製膜時のロ−ル跡の発生を抑えたり、直後でのスリップ性・ブロッキング性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。これらの中でも比較的添加しやすく臭い等も問題ないポリエチレン結晶化核剤を利用すると製膜加工時直後の品質と加工適性をバランス良く改善することができる。
【0025】
印刷層中にも種々公知のブロッキング防止剤を0.01〜1質量%添加しておくと、更にフィルム製品ロールの耐ブロッキング防止性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。
【0026】
尚、これら添加剤や重合体の添加方法としては、フィルム製膜時に直接押出機に投入する方法も可能であるが、前に本発明に用いられる重合体をベース樹脂としたマスターバッチを作成し、このマスターバッチを製膜時に押出機に投入する方法が好ましい。
帯電防止剤マスターバッチは帯電防止剤を前記ポリプロピレン系樹脂に10〜30%配合したものが使用される。
【0027】
本発明に係わる上記の樹脂(A)〜(E)の製造方法は限定されない。種々公知の方法、例えば、Ti、Mg,Cl等を主成分とするTi系チーグラー触媒等を用いて製造することができる。ただし、前述のごとく、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂(A)は、特にはシングルサイト触媒を用いて製造された樹脂を用いるのが好ましい。シングルサイト触媒は、活性点が均一(シングルサイト)である触媒であり、例えばメタロセン触媒(いわゆるカミンスキー触媒)やブルックハート触媒などがあげられる。例えばメタロセン触媒は、メタロセン系遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物および上記メタロセン系遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されていてもよい。
【0028】
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂においては、シール開始温度を下げるためにはα−オレフィンの含有量を増やすことが一般的である。しかし、α−オレフィンの含有量を増やすと、フィルムが柔らかくなり、耐ブロッキング性が悪化する方向にある。
一方、樹脂の分子量分布(質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される)は、値が大きいほど分子量の分布が広くなるため、低分子量物が増加して耐ブロッキング性が悪化する。よって、低温ヒートシール性と耐ブロッキング性をバランスさせるためには、樹脂の分子量分布を狭めて低分子量物を減らすことが効果的である。この分子量分布を狭くするためには、活性が均一であるシングルサイト触媒を用いて重合することが有効である。
【0029】
本発明の積層プロピレン系無延伸フィルムの厚さは用途により種々決定されるが、通常10〜500μm、好ましくは20〜100μmの範囲にある。また、各層の厚み比率は、2層タイプシール層の比率が5〜40%、印刷層の比率が60〜95%となることが望ましい。更には、シール層の比率が10〜30%、ラミ層の比率が70〜90%となることがより望ましい。
【0030】
シール層の厚み比率が10%未満では、溶断シール性が低下するので好ましくない。逆に40%を超えた場合は、耐ブロッキング性やフィルム剛性が低下するので好ましくない。
【0031】
また、3層タイプの場合の各層の厚み比率は、シール層の比率が5〜40%、中間層の比率が30〜80%、ラミ層の比率が10〜30%となることが望ましい。更には、シール層の比率は10〜30%、中間層の比率は40〜70%、ラミ層の比率は10〜30%がより好ましい。
【0032】
シール層の厚み比率が10%未満では、ヒートシール性が低下するので好ましくない。逆に40%を超えた場合は、耐ブロッキング性やフィルム剛性が低下するので好ましくない。
【0033】
中間層の厚み比率が30%未満では、フィルムの剛性が低下するので好ましくない。逆に80%を超えた場合は溶断シール性が低下するので好ましくない。
【0034】
印刷層の厚み比率が10%未満では、耐ブロッキング性やフィルム剛性が低下する。逆に30%を超えた場合は透明性が悪化するので好ましくない。
【0035】
本発明の積層プロピレン系無延伸フィルムは、具体的にはT−ダイ法等の製膜方法を採用し得る。また、かかる積層フィルムは夫々別個にフィルムを製膜後貼り合せてもよいが、二層構造の多層ダイを用いて共押出し成形により製膜する方法が最も好ましい。共押出し製膜する方法としては、フィードブロックによる積層、マルチマニホールドダイを用いる方法などが挙げられる。
例えば、重合体及び添加剤を配合し、3層Tダイ共押出キャスト成形機により押出し、シール面が冷却ロールに接するようにして冷却固化し、フィルム全体厚みおよび各層のア厚みが前記範囲となるように製膜して3層フィルムを得る。
特にシール面が冷却ロールに接するようにして冷却固化することにより、各フィルム層の収縮応力を最適にできる。
ダイス出口樹脂温度は、シール層と印刷層が240〜260℃、中間層が250〜270℃で、冷却ロールの温度は30℃以下とするのが好適な条件である。
これにより溶断シール強度に優れ、かつ溶断シールによる製袋時のカールが少ないフィルムを得ることができる。
【0036】
本願発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおいては、下記測定による高さが3mm未満であることが好適である。
(測定方法)
フィルムをシール面同士が向かい合うように、かつ一方のフィルムが5cm長くなるように2つに折り、自動型製袋機(共栄印刷機械材料社製PP5500型)に供給した。そして、溶断シール刃(刃先角度60度)の温度設定300℃、製袋速度100袋/分でシール、製袋を行って得た袋のフィルム1枚の側を下にして水平に置き、フィルムの浮き上がった高さをゲージで測定した。
【0037】
本発明の積層プロピレン系無延伸フィルムは、印刷性あるいは他のフィルムとの接着性を改良するために、そのラミ層側面を、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等による酸化処理を行うか、アンダーコート処理等による表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0038】
本発明の方法で得られたフィルムは、フィルムをシール面同士が向かい合うように、かつ一方のフィルムが5cm長くなるように2つに折り、以下上記と同様の方法で溶断シール、製袋を行った。できた袋のフィルムが1枚の側を下にして水平に置き、フィルムの浮き上がった高さ3mm未満である。
このことにより、製袋後の外観が非常に優れたものになる。
【0039】
本願発明は、シール層同士を80℃でヒートシールした時のヒートール強度が0.3N/70mm以上であることが好適である。
さらに、90℃でヒートシールした時のヒートール強度が0.3〜3.0N/70mmであることが好適である。
【0040】
また本願発明は、300℃で溶断シールした時の溶断シール強度が15N/15mm以上であることが好適であり、17N/15mm以上であることがさらに好適である。
【0041】
上記の方法により得られた、本発明の積層プロピレン系無延伸フィルムは、単独で各種包装材料として用いてもよいが、食パン、菓子パン等の食品などの包装分野に用いるのが好適である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能である。
【0043】
本明細書中で採用した測定、評価方法は次の通りである。
【0044】
[MFR(メルトフローレート)]
2004年版JISK7210に従い、条件−14の方法(荷重2.16kg、温度230℃)で測定した。
【0045】
[融点]
プロピレン系共重合体(C)約6mgを秤量し、セイコー電子業株式会社製の示差走査熱量計(タイフ5200)を用いて、昇温速度を10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度を100℃/分で0℃まで冷却し、再度、昇温速度を10℃/分で0℃〜200℃まで昇温したときの融解曲線を測定し、かかる融解曲線から、J1S−K−71219.1の方法に習い、融解曲線から最も高温側にある溶融ピークの頂点の温度を融点した。
【0046】
[20℃におけるキシレン可溶部の比率(%)]
試料5gを沸騰キシレン500m1に完全溶融した後、20℃に降温し、4時間以上放置した。その後、析出物と溶液にろ別し、ろ液を乾固して減圧下70℃にて乾燥した。得られた乾燥物の重量から20℃キシレン可溶部量を測定し、その比率を求めた。
【0047】
[エチレン含有量]
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の616ぺージに記載されている方法により13C−NMR法で測定した。
【0048】
[ヘイズ]
2004年版JIS−K−6714に準拠し、東洋精機製作所製の「へ一ズテスターJ」を用いて測定した。
【0049】
[ヒートシール強度]
テスター産業社製ヒートシーラー(PP−701−B)を用い、加熱バーの幅方向をフィルムの流れ方向と直交する方向で、下バー温度80℃に固定して0.1MPa×3秒シールし、70mm幅で剥離強度を測定してヒートシール強度とした。
【0050】
[溶断シール強度]
フィルムロールを2本用意し、それぞれフィルムを引き出してフィルムのシール面同士が向い合うようにセットし、さらにこれを2つに折り、自動型製袋機(共栄印刷機械材料社製PP5500型)に供給した。そして、溶断シール刃(刃先角度60度)の温度設定300℃、製袋速度100袋/分でシール、製袋を行った。そして、シール部を15mm幅に切り出し、テンシロンの上下のチャックに各々フィルム2枚を取り付け、クロスヘッド速度200mm/分の条件にて印刷面間の溶断シール強度を15mm幅で測定した。
【0051】
[カール]
フィルムロールをシール面同士が向かい合うように、かつ一方のフィルムが5cm長くなるように2つに折り、自動型製袋機(共栄印刷機械材料社製PP5500型)に供給した。そして、溶断シール刃(刃先角度60度)の温度設定300℃、製袋速度100袋/分でシール、製袋を行った。できた袋の、フィルム1枚の側を下にして水平に置き、フィルムの浮き上がった高さをゲージで測定した。
高さが3mm未満を○、3〜6mmを△、6mを超える場合を×とした。
【0052】
[平均粒子径]
レーザー回折粒度分布測定装置(日機装マイクロトラックHRAmode19320−X100(Leeds&Northrup社製))を用い、体積平均粒子径を求めた。
【0053】
[表面抵抗率(logΩ)]
ポリオレフィン系樹脂積層フィルムを、(2004年版)JISK−69115.13抵抗率に準拠し、23℃、相対湿度50%環境下で16時間調製後外層表面の表面抵抗率を測定した。
【0054】
[スイーパーロール跡]
フィルム表面を肉眼で観察し、スイーパーロール(冷却ロールからフィルムを引き剥がすロール)の跡があるかどうか確認した。
【0055】
(使用した重合体)
実施例及び比較例に使用した重合体をF記に示す。
1)プロピレン系ランダム共重合体(A):エチレン含有量4質量%、1一ブテン含有量4質量%を含むプロピレンランダム共重合体、メルトフローレートが7.0g/1分、融点が130℃。
2)エチレン・α一オレフィン共重合体(B):コモノマーとしてヘキセン−1を28質量%含有し、メルトフローレートが3g/10分、密度が0.8909/cm3.
3)スリップ剤マスターバッチ:エチレン含有量6質量%を含むプロピレンランダム共重合体に、エノレカ酸アミドを50000ppm添加した。
4)アンチブロッキング剤マスターバッチ:エチレン含有量6質量%を含むプロピレンランダム共重合体に、平均粒子径4μmの球状シリカを80000ppm添加した。
5)プロピレン系ブロック共重合体(C):エチレン含有量が13質量%、20℃におけるキシレン可溶部の比率が25%、メノレトフローレートが4g/10分、融点が163℃。
6)プロピレン系ブロック共重合体(D):エチレン含有量が7質量%、20℃におけるキシレン可溶部の比率が11%、メルトフローレートが4g/10分、融点が163℃。
7)帯電防止剤マスターバッチ:エチレン含有量が6質量%、メルトフローレートが8g/10分のプロピレンーエチレンランダム共重合体に、グリセリン脂肪酸エステル/アルキルスルホン酸ナトリウム=70/30wt%の帯電防止剤を15%配合したもの。
【0056】
(実施例1)
第1表に記載のように重合体及び添加剤を配合し、3層Tダイ共押出キャスト成形機により押出し、シール面が冷却ロールに接するようにして冷却固化し、フィルム全体厚みが30μmとなるように製膜して3層フィルムを得た。フィルムの層厚み比は、内層/中間層/外層二15/65/20とした。ダイス出口樹脂温度は、シール層と印刷層が250℃、中間層が260℃で、冷却ロールの温度は25℃とした。更に、外層表面に表面張力が40mN/mとなるようにコロナ処理を行った。
【0057】
(比較例1)
印刷面が冷却ロールに接するようにして冷却固化した以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを製造した。
【0058】
(比較例2)
シール属の厚み比率を3%に変更した以外は、比較例1と同様にして多層フィルムを製造した。
【0059】
(比較例3)
冷却ロールの温度を60℃とした以外は、比較例1と同様にして多層フィルムを製造した。
【0060】
(比較例4)
マット層の原料処方を第1表に記載の通り変更した以外は、比較例1と同様にして多層フィルムを製造した。
【0061】
上記結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、マット感、溶断シール強度に優れ、かつ溶断シールによる製袋時のカールが少ないため、食パン、菓子パン等の食品やその他物品の幅広い包装分野に使用することができ、産業界の寄与することが大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシール層と印刷層の2層以上のポリオレフィン系樹脂からなる積層フィルムの製造方法であって、前記各層が下記の特性を有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおいて、前記積層フィルムを冷却固化する際、シール層側の面を冷却ロールに接するようにすることを特徴とするポリオレフィン系積層フィルムの製造方法。
(1)シール層
プロピレン系ランダム共重合体(A)を50〜80%質量%と、融点が100℃以下のエチレン−α・オレフィン共重合袋(B)20〜50質量%からなる樹脂組成物。
(2)印刷層
融点140℃以上のプロピレン系ブロック共重合体(C)を95質量%以上含有する樹脂組成物からなる。
【請求項2】
請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルムの製造方法であって、前記印刷層に、少なくともアルキルスルホン酸塩を含有する帯電防止剤を3000〜8000ppm添加することを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルムの製造方法であって、前記シール層と印刷層の間に、20℃におけるキシレン可溶分比率が6〜30%であるプロピレン系ブロック共重合体(D)を主体とする中間層を有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルムの製造方法であって、前記シール層の厚み比率が全体の10〜30%であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
少なくともシール層と印刷層の2層以上のポリオレフィン系樹脂からなる積層フィルムの製造方法であって、前記各層が下記の特性を有し、かつシール層の厚み比率が10%以上であり、下記測定による高さが3mm未満であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
(1)シール層
プロピレン系ランダム共重合体(A)を50〜80%質量%と、融点が100℃以下のエチレン−α・オレフィン共重合袋(B)20〜50質量%からなる樹脂組成物。
(2)印刷層
融点140℃以上のプロピレン系ブロック共重合体(C)を95質量%以上含有する樹脂組成物からなる。
(測定方法)
フィルムをシール面同士が向かい合うように、かつ一方のフィルムが5cm長くなるように2つに折り、自動型製袋機(共栄印刷機械材料社製PP5500型)に供給した。そして、溶断シール刃(刃先角度60度)の温度設定300℃、製袋速度100袋/分でシール、製袋を行って得た袋のフィルム1枚の側を下にして水平に置き、フィルムの浮き上がった高さをゲージで測定した。

【公開番号】特開2009−61705(P2009−61705A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232362(P2007−232362)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】