説明

ポリプロピレン系樹脂組成物およびその製造方法、ならびに、発泡成形体

【課題】比重が低く、剛性が高く、シルバーストリークが少ない発泡成形体、比重が低く、剛性が高く、前記発泡成形体を与えるポリプロピレン系樹脂組成物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】プロピレン単独重合体(A−1)および/またはプロピレン−エチレン共重合体(A−2)を含むプロピレン重合体(A)を40〜94質量%、下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜30質量%ならびに繊維状フィラー(C)を1〜30質量%含む樹脂組成物100質量部を含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。エチレン−α−オレフィン共重合体(B):α−オレフィンの炭素数が4〜20であり、密度が0.85〜0.89g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、2.16kg)が10g/10分よりも大きく、40g/10分以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその製造方法、ならびに、発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、機械的性質、耐薬品性等に優れ、経済性とのバランスにおいて極めて有用なため各成形分野に広く用いられている。
ポリプロピレンを発泡成形した発泡成形体は、自動車分野での緩衝材や、吸音材、透水用ドレン材、各種充填剤等に用いられている。ポリプロピレンの発泡成形体が得られる組成物またはポリプロピレン成形発泡体を得る手段として、例えばメタロセン担持型触媒を用いて製造されたプロピレンおよびα,ω−ジエンからなる共重合体、該共重合体に発泡剤が含有されたポリプロピレン系樹脂組成物、該組成物を加熱、溶融、混練、発泡成形した発泡体および該発泡体を成形した発泡成形体が開示されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献2には、(A)メルトフローレート(ASTM D 1238、230℃、2.16kg荷重)が10〜100g/10分であるポリプロピレン50〜95重量部と、(B)非晶性または低結晶性のα−オレフィン共重合体3〜45重量部と、(C)無機フィラー2〜45重量部(成分(A)、(B)および(C)の合計量は、100重量部である)と、(D)有機過酸化物0.005〜0.2重量部とを溶融ブレンドしてなるポリプロピレン樹脂組成物であり、該ポリプロピレン樹脂組成物は、(i)メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)が50〜150g/10分であり、(ii)23℃におけるアイゾット衝撃強度(ノッチあり;ASTM D 628)が100J/m以上であり、(iii)破断点引張伸び(ASTM D 638)が20%以上であることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献3には(A)メルトフローレート(MFR)が0.1〜80g/10分で、非晶部のエチレン含有量が30重量%以上であるプロピレン−エチレンブロック共重合体50〜100重量部、(B)ゴム状重合体を(A)成分に対して0〜35重量部、(C)無機充填材を(A)成分に対して0〜35重量部、(D)有機過酸化物を上記(A)、(B)および(C)成分の合計100重量部に対して0.005〜0.2重量部を配合し溶融混練処理したポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特許文献4にはメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重で測定)が70〜120g/10分であり、かつ曲げ弾性率が1,300〜4,000MPa、かつIZOD衝撃強度が30〜100kJ/m2であるポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−316510号公報
【特許文献2】特開平10−87919号公報
【特許文献3】特開平11−279369号公報
【特許文献4】特開2004−307842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、比重が低く、剛性が高く、シルバーストリークが少ない発泡成形体、ならびに、比重が低く、剛性が高く、前記発泡成形体を与えるポリプロピレン系樹脂組成物およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の手段により達成された。
<1> プロピレン単独重合体(A−1)および/またはプロピレン−エチレン共重合体(A−2)を含むプロピレン重合体(A)を40〜94質量%、下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜30質量%、ならびに、繊維状フィラー(C)を1〜30質量%含む樹脂組成物(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100質量%とする。)を含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物、
エチレン−α−オレフィン共重合体(B):α−オレフィンの炭素数が4〜20であり、密度が0.85〜0.89g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が10g/10分よりも大きく、40g/10分以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体、
<2> プロピレン単独重合体(A−1)および/またはプロピレン−エチレン共重合体(A−2)を含むプロピレン重合体(A)を40〜94質量%、下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜30質量%、ならびに、繊維状フィラー(C)を1〜30質量%含む樹脂組成物(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100質量%とする。)を、熱処理して得たことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物、
エチレン−α−オレフィン共重合体(B):α−オレフィンの炭素数が4〜20であり、密度が0.85〜0.89g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が10g/10分よりも大きく、40g/10分以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体
<3> <2>に記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法であって、前記プロピレン重合体(A)、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および前記繊維状フィラー(C)を溶融混練装置に供給する工程、ならびに、前記プロピレン重合体(A)、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および前記繊維状フィラー(C)を含む樹脂組成物を前記溶融混練装置により熱処理する工程を含むことを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法、
<4> <1>または<2>に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とする発泡成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比重が低く、剛性が高く、シルバーストリークが少ない発泡成形体、ならびに、比重が低く、剛性が高く、前記発泡成形体を与えるポリプロピレン系樹脂組成物およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン単独重合体(A−1)および/またはプロピレン−エチレン共重合体(A−2)を含むプロピレン重合体(A)を40〜94質量%、下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜30質量%、ならびに、繊維状フィラー(C)を1〜30質量%含む樹脂組成物(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100質量%とする。)を含有することを特徴とする。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン単独重合体(A−1)および/またはプロピレン−エチレン共重合体(A−2)を含むプロピレン重合体(A)を40〜94質量%、下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜30質量%、ならびに、繊維状フィラー(C)を1〜30質量%含む樹脂組成物(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100質量%とする。)を、熱処理して得たことを特徴とする。
前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、α−オレフィンの炭素数が4〜20であり、密度が0.85〜0.89g/cm3であり、メルトフローレート(以下、「MFR」ともいう。)(190℃、2.16kg荷重)が10g/10分よりも大きく、40g/10分以下である。
なお、数値範囲を示す「40〜94質量%」等の記載は、「40質量%以上、94質量%以下」と同義であり、特に断りのない限り他の数値範囲の記載も同様とする。また、「(190℃、2.16kg荷重)」等の記載は、JIS K7210に規定された方法に準じて行ったメルトフローレートの測定における測定温度が190℃、測定荷重が2.16kgであることを意味し、特に断りのない限り以下同様とする。以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
<プロピレン重合体(A)>
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン単独重合体(A−1)および/またはプロピレン−エチレン共重合体(A−2)を含むプロピレン重合体(A)を含む。
本発明に用いることができるプロピレン重合体(A)としては、プロピレン単独重合体(A−1)および/またはプロピレン−エチレン共重合体(A−2)の他、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。
【0012】
プロピレン−エチレン共重合体(A−2)としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A−2−1)、または、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)が挙げられる。
なお、ここでいう「ブロック共重合体」は、結晶性のホモポリマーとエチレン−プロピレン共重合体等のゴム成分との混合物を意味する(「新ポリマー製造プロセス」((株)工業調査会編(1994年)、第5章、p129)。すなわち、本発明においてプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)とは、結晶性のホモポリマーであるプロピレン単独重合体成分と、ゴム成分であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分とからなる混合物である。
プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、または、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体が挙げられる。プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体成分と、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分とからなる混合物である。なお、本発明におけるα−オレフィンとしては、炭素数4以上のα−オレフィンが挙げられる。
プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、または、プロピレン−エチレン−α−オレフィンブロック共重合体が挙げられる。プロピレン−エチレン−α−オレフィンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体成分と、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体成分とからなる混合物である。
プロピレン−α−オレフィン共重合体およびプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体で用いられるα−オレフィンとしては、炭素数が4〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。プロピレン重合体(A)は2種類以上併用してもよい。
好ましくは本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン重合体(A)の主成分として、プロピレン単独重合体(A−1)およびプロピレン−エチレン共重合体(A−2)を含む。ここでいう「主成分」とは、プロピレン重合体(A)の50質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは100質量%を占める成分をいい、以下、同様とする。
【0013】
プロピレン重合体(A)の主成分として、好ましくは、剛性、耐熱性または硬度を高めるという観点から、プロピレン単独重合体(A−1)およびプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)を含む。
【0014】
プロピレン単独重合体(A−1)の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)のプロピレン単独重合体成分の、13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
【0015】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、プロピレン単独重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率であり、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖(以下、mmmmと表す)の中にあるプロピレンモノマー単位の分率である。アイソタクチック・ペンタッド分率の測定方法は、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法、すなわち13C−NMRによって測定される方法である(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて決定される。)。
【0016】
具体的には、13C−NMRスペクトルによって測定されるメチル炭素領域の吸収ピークの面積に対する、mmmmピークの面積の割合が、アイソタクチック・ペンタッド分率である。この方法によって測定された英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率は、0.944であった。
【0017】
上記プロピレン単独重合体(A−1)の135℃のテトラリン溶媒中で測定される固有粘度(「極限粘度数」と同じ。)、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)に含まれるプロピレン単独重合体成分の135℃のテトラリン溶媒中で測定される固有粘度、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A−2−1)の135℃のテトラリン溶媒中で測定される固有粘度は、それぞれ好ましくは0.6〜5.0dl/gであり、より好ましくは0.7〜4.0dl/gであり、さらに好ましくは0.8〜2.0dl/gである。上記の数値の範囲内であると、発泡成形性に優れるため好ましい。
特にプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)に含まれる、プロピレン単独重合体成分の固有粘度(以下、[η]pともいう。)は、0.7〜1.5dl/gであることが好ましく、0.8〜1.1dl/gであることがより好ましい。上記の数値の範囲内であると、流動性に優れる。
【0018】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)に含まれるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の135℃のテトラリン溶媒中で測定される固有粘度(以下、[η]EPともいう。)は、好ましくは1.5〜12.0dl/gであり、より好ましくは2.0〜8.0dl/gであり、さらに好ましくは2.5〜6.0dl/gである。上記の数値の範囲内であると、セルの微細化が高まるため好ましい。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)全体の135℃のテトラリン溶媒中で測定される固有粘度(以下、[η]Tともいう。)は、1.0〜2.0dl/gであることが好ましく、1.4〜1.7dl/gであることがより好ましい。
【0019】
また、プロピレン単独重合体(A−1)、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)に含まれるプロピレン単独重合体成分、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A−2−1)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布(Q値、Mw/Mn)は、それぞれ好ましくは3〜7である。上記の数値の範囲内であると、シルバーストリークの発生量が少ないため好ましい。
【0020】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)に含まれるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含有量は好ましくは20〜65質量%、より好ましくは25〜50質量%、さらに好ましくは30〜45質量%である(ただし、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の全量を100質量%とする。)。上記の数値の範囲内であると、シルバーストリークの発生量が少ないため好ましい。
【0021】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)に含まれるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の含有量は、好ましくは10〜60質量%であり、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは10〜25質量%である。
【0022】
上記プロピレン単独重合体(A−1)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1〜400g/10分であり、より好ましくは1〜300g/10分である。ただし、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。本発明におけるメルトフローレート(MFR)の測定は、JIS K7210に規定された方法に準じて行うことが好ましく、以下同様である。
【0023】
上記プロピレン−エチレン共重合体(A−2)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1〜200g/10分であり、より好ましくは5〜150g/10分、さらに好ましくは30〜130g/10分である。ただし、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。上記の数値の範囲内であると、流動性が高く、発泡成形性に優れるため好ましい。
また、プロピレン重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1〜200g/10分であり、より好ましくは5〜150g/10分である。ただし、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgである。上記の数値の範囲内であると、流動性が高く、発泡成形性に優れるため好ましい。
【0024】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン重合体(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および繊維状フィラー(C)の合計を100質量%として、プロピレン重合体(A)を40〜94質量%含み、40〜85質量%含むことが好ましく、40〜75質量%含むことがより好ましい。プロピレン重合体(A)の含有量が40質量%未満であると、発泡成形体の剛性に劣ることがある。また、プロピレン重合体(A)の含有量が94質量%を超えると発泡成形体の耐衝撃性に劣ることがある。
また、プロピレン重合体(A)に含まれるプロピレン単独重合体(A−1)とプロピレン−エチレン共重合体(A−2)との配合比率(質量比)は、プロピレン単独重合体(A−1):プロピレン−エチレン共重合体(A−2)=5:95〜95:5であることが好ましく、10:100〜70:30であることがより好ましく、5:85〜55:45であることがさらに好ましい。上記の範囲内であると機械物性バランスに優れる。
【0025】
上記プロピレン重合体(A)の製造方法としては、例えば、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
上記プロピレン重合体(A)の製造方法で用いられる公知の重合触媒としては、例えば、(1)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と、(2)有機アルミニウム化合物と(3)電子供与体成分からなる触媒系が挙げられる。この触媒の製造方法としては、例えば、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報、特開平10−212319号公報、および、特開2004−182876号公報に記載されている製造方法が挙げられる。
【0026】
上記の製造方法で用いられる公知の重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。
【0027】
上記のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)の製造方法として、好ましくは、前記の固体触媒成分(1)と、有機アルミニウム化合物(2)と電子供与体成分(3)とからなる触媒系の存在下に少なくとも2槽からなる重合槽を直列に配置し、上記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)に含まれるプロピレン単独重合体成分を製造した後、製造された前記成分を次の重合槽に移し、その重合槽でプロピレン−エチレンランダム共重合体成分を連続して製造して、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)を製造する方法が挙げられる。
上記の製造方法で用いられる固体触媒成分(1)、有機アルミニウム化合物(2)および電子供与体成分(3)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、適宜、決めればよい。
【0028】
重合温度は、好ましくは−30〜300℃であり、より好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、好ましくは常圧〜10MPaであり、より好ましくは0.2〜5.0MPaである。分子量調整剤として、例えば、水素を用いてもよい。
【0029】
上記プロピレン重合体(A)の製造において、本重合を実施する前に、公知の方法によって、予備重合を行ってもよい。公知の予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分(1)および有機アルミニウム化合物(2)の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。
【0030】
<エチレン−α−オレフィン共重合体(B)>
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、α−オレフィンの炭素数が4〜20であり、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)5〜30質量%を含み、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、密度が0.85〜0.89g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が10g/10分よりも大きく、40g/10分以下である。
【0031】
本発明で用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)に用いられるα−オレフィンとしては、炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。α−オレフィンとして、好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数4〜12のα−オレフィンである。
【0033】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の製造方法としては、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等によって、所定のモノマーを、メタロセン系触媒を用いて重合する方法が挙げられる。
メタロセン系触媒としては、例えば、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載されているメタロセン系触媒が挙げられる。
メタロセン系触媒を用いるエチレン−α−オレフィン共重合体(B)の製造方法として、好ましくは、欧州特許出願公開第1211287号明細書に記載されている方法が挙げられる。
【0034】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン重合体(A)、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および繊維状フィラー(C)の合計を100質量%として、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜30質量%含み、10〜30質量%含むことが好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の含有量が5質量%未満であると、発泡成形体の耐衝撃性に劣ることがある。また、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の含有量が30質量%を超えると発泡成形性に劣ることがある。
また、エチレン−α−オレフィン共重合体(B)が、ポリプロピレン系樹脂組成物に含まれるエチレン−α−オレフィン共重合体の総量の30〜100質量%を占めることが好ましく、50〜100質量%を占めることがより好ましく、100質量%を占めることがさらに好ましい。上記範囲内であると、発泡成形性に優れる。
【0035】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)のエチレン含量は、好ましくは20〜95質量%であり、より好ましくは30〜90質量%であり、α−オレフィン含量は、好ましくは80〜5質量%であり、より好ましくは70〜10質量%である。
【0036】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)の密度は、0.85〜0.89g/cm3であり、好ましくは0.85〜0.88g/cm3であり、より好ましくは0.86〜0.88g/cm3である。密度が0.85g/cm3未満であると、発泡成形性に劣ることがある。また、0.89g/cm3を超えると発泡セルの均一性・微細性に劣ることがある。
【0037】
エチレン−α−オレフィン共重合体(B)のメルトフローレート(測定温度は190℃、荷重は2.16kg荷重)は、10g/10分よりも大きく、40g/10分以下であり、10g/10分よりも大きく、35g/10分以下が好ましく、10/10分よりも大きく、30g/10分以下がより好ましい。メルトフローレートが10g/10分以下であると、得られた発泡成形体にシルバーストリークが生じることがある。
【0038】
<繊維状フィラー(C)>
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は繊維状フィラー(C)を1〜30質量%含む。
繊維状フィラー(C)としては繊維およびウィスカーが挙げられる。
繊維としてはガラス繊維および金属繊維等が挙げられる。ウィスカーとしては金属、金属酸化物、金属窒化物等の無機化合物のヒゲ結晶が挙げられ、具体的には、炭素、チタン酸カリウム、セピオライト、ワラストナイト、アロフェン、イモゴライト、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、アルミニウム、ニッケル、銅、炭酸カルシウム、チタン酸アルミン酸カリウム、二酸化チタン、珪酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸ニッケル、アルミナおよび窒化ケイ素等が挙げられる。
繊維状フィラー(C)としてはウィスカーが好ましく、中でも繊維状フィラー自体の比重が低く、得られた成形品の剛性、外観に優れることから繊維状マグネシウムオキシサルフェートがより好ましい。繊維状マグネシウムオキシサルフェートとしては例えばモスハイジ(宇部マテリアルズ(株)製)が挙げられる。
【0039】
前記繊維状フィラー(C)の他に、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、および、硫酸バリウム等の粒状フィラー、カオリン、ガラスフレーク、タルク、層状ケイ酸塩(ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト)、ならびに、マイカ等の板状フィラーを併用してもよい。繊維状フィラーは粒状フィラーや板状フィラーと比較して発泡成形体の曲げ弾性率の向上などの補強効果に優れており、粒状フィラーや板状フィラーと比較して配合量を低く抑えることができる。従って強度を維持したまま補強材としてのフィラーの配合量を低減できるためポリプロピレン系樹脂組成物の比重を低くすることができるため好ましい。
【0040】
繊維状フィラー(C)の含有量は1〜30質量%であり、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。ただし、(A)、(B)および(C)の合計量を100質量%とする。
繊維状フィラー(C)の含有量が1質量%未満であると、十分な剛性が得られないことがある。繊維状フィラー(C)の含有量が30質量%を超えると樹脂組成物を製造する工程での作業性が悪化するだけでなく、ポリプロピレン系樹脂組成物の発泡成形性が悪化することがある。
【0041】
本発明に用いられる繊維状フィラー(C)は、電子顕微鏡観察にて測定した平均繊維長が5μm以上であることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましく、10〜20μmであることがさらに好ましい。また、平均繊維径が0.2〜1.5μmであることが好ましく、0.3〜1.0μmであることがより好ましい。繊維状フィラーのアスペクト比は、10以上であることが好ましく、10〜30であることがより好ましく、12〜25であることがさらに好ましい。
剛性の改良効果を高めるという観点や成形体のシルバーストリークの発生を抑制するという観点から、さらに好ましくは、平均繊維径は0.3〜1.0μmであり、平均繊維長は7〜15μmであり、アスペクト比は12〜25である。
ここで繊維状フィラー(C)の平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比は、例えば、繊維状フィラー(C)を走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影し、得られたSEM写真の繊維状フィラー(C)を無作為で50個以上抽出してそれぞれの繊維長、繊維径、アスペクト比を測定し、それぞれの平均値を算出することにより求めることができる。
【0042】
繊維状フィラー(C)は、無処理のまま使用してもよく、ポリプロピレン系樹脂組成物との界面接着強度を向上させる、またはポリプロピレン系樹脂組成物中での繊維状フィラー(C)の分散性を向上させるために、公知の各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類あるいは他の界面活性剤で繊維状フィラー(C)の表面を処理して使用してもよい。
繊維状フィラー(C)は、事前に、プロピレン重合体(A)および/またはエチレン−α−オレフィン共重合体(B)と溶融混練し、マスターバッチとして使用してもよい。
【0043】
<有機過酸化物(D)>
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、必要に応じて前記プロピレン重合体(A)、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および前記繊維状フィラー(C)の合計100質量部に対して、有機過酸化物(D)2質量部以下を添加し、熱処理して得たものでもよい。
【0044】
本発明で用いる有機過酸化物(D)としては、従来公知の有機過酸化物が挙げられ、例えば、半減期が1分となる分解温度が120℃未満である有機過酸化物や、半減期が1分となる分解温度が120℃以上である有機過酸化物を挙げることができる。
【0045】
半減期が1分となる分解温度が120℃未満である有機過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカルボネート化合物(分子骨格中に下記式(1)で表される構造を有する化合物(I)やアルキルパーエステル化合物(分子骨格中に下記式(2)で表される構造を有する化合物(II))等が挙げられる。
【0046】
【化1】

【0047】
上記式(1)で表される構造を有する化合物(I)としては、ジ(3−メトキシブチル)パーオキシジカルボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカルボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、ジミリスチルパーオキシカルボネート等が挙げられる。
【0048】
上記式(2)で表される構造を有する化合物(II)としては、1,1,3,3−テトラメチルブチルネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート等が挙げられる。
【0049】
また、半減期が1分となる分解温度が120℃以上である有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ベルオキシ)バレラート、ジ−t−ブチルベルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
【0050】
有機過酸化物(D)の使用量は、前記(A)〜(C)の合計100質量部に対して2質量部以下であることが好ましく、0.002〜1質量部であることがより好ましく、0.005〜0.5質量部であることがさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると発泡成形性に優れる。本発明においては、有機過酸化物(D)を含まない態様もまた好ましい。
【0051】
<添加剤>
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤を含有させてもよく、例えば、中和剤、酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、銅害防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、分散剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、造核剤、難燃剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、着色剤、顔料等が挙げられる。
【0052】
<ポリプロピレン系樹脂組成物の物性>
(メルトフローレート)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)は、50〜150g/10分であることが好ましく、50〜90g/10分であることがより好ましい。上記の数値の範囲内であると、シルバーストリークの発生を効果的に抑制することができる。
【0053】
(比重)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の比重は、発泡させていない状態において、1.20以下であることが好ましく、1.00以下であることがより好ましく、0.95未満であることがさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると低比重の発泡成形体が得られるため好ましい。比重はJIS K7112に規定された方法等により測定することができる。
【0054】
(曲げ弾性率)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の曲げ弾性率は発泡させていない状態において、1,000MPa以上であることが好ましく、1,100MPa以上であることがより好ましい。上記の数値の範囲内であると、剛性に優れた発泡成形体が得られるため好ましい。曲げ弾性率はJIS K7171に規定された方法等により測定することができる。
【0055】
<ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法は、前記プロピレン重合体(A)、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および前記繊維状フィラー(C)を溶融混練装置に供給する工程、ならびに、前記プロピレン重合体(A)、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および前記繊維状フィラー(C)を含む樹脂組成物を前記溶融混練装置により熱処理する工程を含むことを特徴とする。
また、必要に応じて前記プロピレン重合体(A)、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および前記繊維状フィラー(C)の合計100質量部に対して、有機過酸化物(D)を2質量部以下供給する工程を、前記熱処理する工程の前にさらに含んでいてもよく、例えば有機過酸化物(D)を、前記プロピレン重合体(A)、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および前記繊維状フィラー(C)と混合して同時に溶融混練装置に供給してもよい。
【0056】
本発明において、熱処理とは溶融混練することをいう。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、各成分を溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練に用いられる装置としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等が挙げられる。
熱処理の温度(溶融混練の温度)は、好ましくは170〜250℃であり、時間は、好ましくは20秒〜20分である。また、各成分の溶融混練は同時に行ってもよく、分割して行ってもよい。例えば樹脂組成物の各成分を所定量計量し、タンブラー等で均一に予備混合する工程と、予備混合物を溶融混練する工程とを含むことが好ましい。
【0057】
<発泡成形体>
本発明の発泡成形体は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物、または、本発明の製造方法により製造されたポリプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0058】
本発明の発泡成形体は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に発泡剤を添加し、成形することによって得られるものである。
【0059】
本発明で使用される発泡剤は特に限定されるものではなく、公知の化学発泡剤や物理発泡剤を用いることができる。発泡剤の添加量は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物100質量部に対して好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.2〜8質量部である。
【0060】
化学発泡剤としては、無機化合物であっても有機化合物であってもよく、2種以上を併用してもよい。無機化合物としては、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩などが挙げられる。有機化合物としては、クエン酸などのポリカルボン酸、アゾジカルボンアミド(ADCA)などのアゾ化合物などが挙げられる。
物理発泡剤としては、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスや揮発性有機化合物などが挙げられる。中でも超臨界状態の二酸化炭素、窒素、または、これらの混合物を使用することが好ましい。物理発泡剤は2種以上を併用してもよく、化学発泡剤と物理発泡剤とを併用してもよい。
【0061】
物理発泡剤を用いる場合には、物理発泡剤を超臨界状態で溶融状のポリプロピレン系樹脂組成物に混合することが好ましい。超臨界状態の物理発泡剤は樹脂への溶解性が高く、短時間で溶融状のポリプロピレン系樹脂組成物に均一に拡散することができるため、発泡倍率が高く、均一な発泡セル構造をもつ発泡成形体を得ることができる。
溶融状のポリプロピレン系樹脂組成物に物理発泡剤を混合する工程としては、物理発泡剤を射出成形装置のノズルまたはシリンダ内に注入する工程が挙げられる。
【0062】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を発泡成形する方法としては、具体的には射出発泡成形法、プレス発泡成形法、押出発泡成形法、スタンパブル発泡成形法などの公知の方法が挙げられる。
【0063】
本発明の発泡成形体は、インサート成形、接着などの方法により表皮材を貼合して加飾発泡成形体とすることもできる。
【0064】
前記の表皮材としては、公知の表皮材を使用できる。具体的な表皮材としては、織布、不織布、編布、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーからなるフィルム、シート等が例示される。さらに、これらの表皮材に、ポリウレタン、ゴム、熱可塑性エラストマー等のシートを積層した複合表皮材を使用してもよい。
表皮材には、さらにクッション層を設けることができる。かかるクッション層を構成する材料としては、ポリウレタンフォーム、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)フォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム等が例示される。
【0065】
<発泡成形体の用途>
本発明の発泡成形体の用途としては、例えば、自動車内装部品および外装部品等の自動車部品、二輪車部品、家具や電気製品の部品等が挙げられ、中でも自動車部品用であることが好ましく、自動車内装用部品であることがより好ましい。
【0066】
自動車内装部品としては、例えば、インストルメンタルパネル、トリム、ドアーパネル、サイドプロテクター、コンソールボックス、コラムカバー等が挙げられ、自動車外装部品としては、例えば、バンパー、フェンダー、ホイールカバー等が挙げられ、二輪車部品としては、例えば、カウリング、マフラーカバー等が挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例および比較例によって、本発明を説明する。
実施例または比較例では、以下に示した樹脂および添加剤を用いた。
(1)プロピレン単独重合体(A−1)
特開平10−212319の実施例7記載の固体触媒成分を用いて溶媒重合法により製造した。
MFR:300g/10分
【0068】
(2)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)
(2−1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)a
特開平10−212319号公報に記載のα−オレフィン重合用触媒およびα−オレフィン重合体の製造方法に準拠して調製した固体触媒成分を用いて溶媒重合法により製造した。
MFR:130g/10分
プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度[η]T:1.4dl/g
プロピレン単独重合体成分の固有粘度[η]P:0.8dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の共重合体全体に対する質量比率X:12質量%
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度[η]EP:6.0dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン単位含量:30質量%
【0069】
(2−2)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)b
特開2004−182876号公報に記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分、および、そのα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法に準拠して調製した固体触媒成分を用いて気相重合法により製造した。
MFR:60g/10分
プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度[η]T:1.55dl/g
プロピレン単独重合体成分の固有粘度[η]P:0.89dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の共重合体全体に対する質量比率X:13質量%
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度[η]EP:6.0dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン単位含量:32質量%
【0070】
(2−3)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)c
特開2004−182876号公報に記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分、および、そのα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法に準拠して調製した固体触媒成分を用いて気相重合法により製造した。
MFR:32g/10分
プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度[η]T:1.64dl/g
プロピレン単独重合体成分の固有粘度[η]P:1.00dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の共重合体全体に対する質量比率X:16質量%
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度[η]EP:5.0dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン単位含量:34.5質量%
【0071】
(2−4)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)d
特開2004−182876号公報に記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分、および、そのα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法に準拠して調製した固体触媒成分を用いて気相重合法により製造した。
MFR:30g/10分
プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度[η]T:1.42dl/g
プロピレン単独重合体成分の固有粘度[η]P:1.06dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の共重合体全体に対する質量比率X:20.5質量%
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度[η]EP:2.8dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン単位含量:37質量%
【0072】
(2−5)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)e
特開平7−216017号公報記載の固体触媒成分を用いて溶媒重合法により製造した。
MFR:30g/10分
プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の固有粘度[η]T:1.5dl/g
プロピレン単独重合体成分の固有粘度[η]P:1.05dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の共重合体全体に対する質量比率X:16質量%
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度[η]EP:4.0dl/g
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン単位含量:45質量%
【0073】
(3)エチレン−α−オレフィン共重合体(B)
(B−1) エチレン−ブテン共重合体ゴム
商品名: CX5505(住友化学(株)製)
密 度: 0.878(g/cm3
MFR(190℃、2.16kg荷重):14.0(g/10分)
【0074】
(B−2) エチレン−ブテン共重合体ゴム
商品名: タフマー A0250S(三井化学(株)製)
密 度: 0.860(g/cm3
MFR(190℃、2.16kg荷重):0.2(g/10分)
【0075】
(B−3) エチレン−ブテン共重合体ゴム
商品名: VL800(住友化学(株)製)
密 度: 0.905(g/cm3
MFR(190℃、2.16kg荷重):20.0(g/10分)
【0076】
(B−4) エチレン−ブテン共重合体ゴム
商品名: A35050(三井化学製)
密 度: 0.863(g/cm3
MFR(190℃、2.16kg荷重):35.0(g/10分)
【0077】
(4)繊維状フィラー(C)
(4−1)繊維状マグネシウムオキシサルフェート マスターバッチ(C’−1)
230℃におけるMFR=300g/10minのプロピレン単独重合体(A−1)50質量%と宇部マテリアルズ(株)製モスハイジA(C−1)50質量%とを混合し、溶融混練して、モスハイジA含有量50質量%のマスターバッチ(C’−1)を得た。
尚、用いたモスハイジAの平均繊維径は0.5μm、平均繊維長は10μm、平均アスペクト比は20であった。
繊維状フィラーを走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影した。得られたSEM写真の繊維状フィラーを無作為に50個以上抽出してそれぞれの繊維長、繊維径、アスペクト比を測定し、それぞれの平均値を求めた。
【0078】
(4−2)タルクマスターバッチ(C’−2)
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)eベースのタルクマスターバッチ(C’−2)。タルク(C−2)は林化成(株)製 商品名JR−46 粒径2.7μm、タルク含有量は70質量%である。
【0079】
(5)有機過酸化物(D)
化薬アクゾ(株)製 商品名:パーカドックス14R−P(ビス(t−ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼン)
【0080】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
表1に示した各成分を所定量、計量し、タンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機((株)日本製鋼所製TEX44SS 30BW−2V型)を用いて、押出量30〜50kg/hr、スクリュー回転数300rpm、温度200℃、ベント吸引下で混練押出して、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを製造した。
【0081】
このペレットを用い、エンゲル社製ES2550/400HL−MuCell(型締力400トン)射出成形機を用いて、射出発泡成形を行った。発泡剤としては超臨界状態の窒素を用いた。
金型として、成形体概略寸法が、図1に示した成形品部寸法が290mm×370mm、高さ45mm、型締めした状態の基本キャビティクリアランス(初期板厚)1.5mmtに、一部1.6mmtの部分を有する箱型形状(ゲート構造:ダイレクトゲート)のものを用いた。
シリンダ温度250℃、金型温度50℃に設定し、型締め後、発泡剤を含むポリプロピレン系樹脂組成物の射出を開始した。前記ポリプロピレン系樹脂組成物を、金型キャビティ内に完全に射出充填した後、金型のキャビティ壁面を2.0mm後退させて該キャビティを増加させて前記ポリプロピレン系樹脂組成物を発泡させた。発泡したポリプロピレン系樹脂組成物をさらに冷却し、完全に固化させて発泡成形体を得、ゲートから100mmの部位にて発泡成形体の評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
実施例および比較例で用いた樹脂成分、ならびに、ポリプロピレン系樹脂組成物の物性の測定法を以下に示した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に規定された方法に従って測定した。特に断りのない限り、測定温度は230℃で、荷重は2.16kg荷重で測定した。
【0083】
(2)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)の構造分析
(2−1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)の固有粘度
(2−1−a)プロピレン単独重合体成分の固有粘度:[η]P
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)に含まれるプロピレン単独重合体成分の固有粘度:[η]Pはその製造時に、第1工程であるプロピレン単独重合体成分の重合後に重合槽内よりプロピレン単独重合体成分を取り出し、取り出されたプロピレン単独重合体成分の[η]Pを測定して求めた。
【0084】
(2−1−b)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度:[η]EP
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)に含まれるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の固有粘度:[η]EPは、プロピレン単独重合体成分の固有粘度:[η]Pとプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)全体の固有粘度:[η]Tをそれぞれ135℃のテトラリン溶媒中で測定し、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)全体に対する質量比率:Xを用いて次式から計算により求めた。
[η]EP=[η]T/X−{(1/X)−1}[η]P
[η]P:プロピレン単独重合体成分の固有粘度(dl/g)
[η]T:プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)全体の固有粘度(dl/g)
【0085】
(2−2)プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)全体に対する質量比率:X
プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)全体に対する質量比率:Xはプロピレン単独重合体成分とプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)全体の結晶融解熱量をそれぞれ測定し、次式を用いて計算により求めた。結晶融解熱量は、示唆走査型熱分析(DSC)により測定した。
X=1−(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)全体の融解熱量(cal/g)
(ΔHf)P:プロピレン単独重合体成分の融解熱量(cal/g)
【0086】
(2−3)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)中のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含量:(C2’)EP
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)に含まれるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含量:(C2’)EPは、赤外線吸収スペクトル法によりプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)全体のエチレン含量(C2’)Tを測定し、次式を用いて計算により求めた。
(C2’)EP=(C2’)T/X
(C2’)T:プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)全体のエチレン含量(質量%)
(C2’)EP:プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のエチレン含量(質量%)
X:プロピレン−エチレンランダム共重合体成分のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2−2)全体に対する質量比率
【0087】
(3)比重の測定
JIS K7112に規定された方法に従って測定した。水中置換法による測定を23℃で行った。
【0088】
(4)曲げ弾性率の測定
発泡させていないポリプロピレン系樹脂組成物を用いてJIS K7171に規定された方法に従い、ポリプロピレン系樹脂組成物の曲げ弾性率を測定した。測定には射出成形によって成形される試験片を用いた。試験片の厚みは6.4mmであり、スパン長さ100mm、幅12.7mm、荷重速度2.0mm/minの条件で曲げ弾性率を評価した。測定温度は23℃で行った。
【0089】
(5)発泡成形体の外観評価(シルバーストリーク)
発泡成形により得られたポリプロピレン系樹脂組成物からなる発泡成形体3のゲート部1から100mm離れた部位の図1に示した直径60mmの円の範囲(シルバーストリークを評価した部位)2を、目視で評価し、以下に示したとおりに判定した。
○:発泡成形体の表面のシルバーストリークが目視では確認できない
△:シルバーストリークがやや目立つ
×:シルバーストリークが目立つ
発泡成形体の外観評価結果が○の場合を合格とした。
【0090】
(6)発泡成形性の評価
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を発泡成形する際の、発泡セルの膨らみやすさおよび成形条件幅を以下に示した通りに判定した。
○:金型キャビティ内に完全に射出充填してから、金型のキャビティ壁面を後退させる際に、キャビティ壁面の後退量に応じて、発泡成形体が膨らむ。また、金型キャビティ内に完全に射出充填してから、金型のキャビティ壁面を後退させるまでの時間を延長しても、キャビティ壁面の後退量に応じて、発泡成形体が膨らむ。
△:キャビティ壁面を後退させると、発泡成形体が膨らむ。
×:キャビティ壁面を後退させても、キャビティ壁面の後退量に応じて、発泡成形体は膨らまず、発泡成形性に劣る。
【0091】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施例において作製した本発明の発泡成形体の一例を表す斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
1:ゲート部
2:直径60mmの円の範囲(シルバーストリークを評価した部位)
3:発泡成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単独重合体(A−1)および/またはプロピレン−エチレン共重合体(A−2)を含むプロピレン重合体(A)を40〜94質量%、
下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜30質量%、ならびに、
繊維状フィラー(C)を1〜30質量%含む
樹脂組成物(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100質量%とする。)を含有することを特徴とする
ポリプロピレン系樹脂組成物。
エチレン−α−オレフィン共重合体(B):α−オレフィンの炭素数が4〜20であり、密度が0.85〜0.89g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が10g/10分よりも大きく、40g/10分以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、50〜150g/10分である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記繊維状フィラー(C)が、繊維状マグネシウムオキシサルフェートである請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
プロピレン単独重合体(A−1)および/またはプロピレン−エチレン共重合体(A−2)を含むプロピレン重合体(A)を40〜94質量%、
下記のエチレン−α−オレフィン共重合体(B)を5〜30質量%、ならびに、
繊維状フィラー(C)を1〜30質量%含む
樹脂組成物(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100質量%とする。)を、
熱処理して得たことを特徴とする
ポリプロピレン系樹脂組成物。
エチレン−α−オレフィン共重合体(B):α−オレフィンの炭素数が4〜20であり、密度が0.85〜0.89g/cm3であり、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が10g/10分よりも大きく、40g/10分以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体
【請求項5】
前記樹脂組成物が、前記プロピレン重合体(A)、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および前記繊維状フィラー(C)の合計100質量部に対して2質量部以下の有機過酸化物(D)を含む請求項4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4または5に記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法であって、
前記プロピレン重合体(A)、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および前記繊維状フィラー(C)を溶融混練装置に供給する工程、ならびに、
前記プロピレン重合体(A)、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および前記繊維状フィラー(C)を含む樹脂組成物を前記溶融混練装置により熱処理する工程を含むことを特徴とする、
ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記プロピレン重合体(A)、前記エチレン−α−オレフィン共重合体(B)および前記繊維状フィラー(C)の合計100質量部に対して、有機過酸化物(D)を2質量部以下供給する工程を、前記熱処理する工程の前にさらに含む請求項6に記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5いずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とする
発泡成形体。
【請求項9】
前記発泡成形体が自動車部品用である請求項8に記載の発泡成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−132894(P2009−132894A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278745(P2008−278745)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】