説明

ポリヘミアセタールエステル、硬化樹脂用組成物及び硬化樹脂の分解方法

【課題】硬化樹脂としての良好な耐熱性、耐溶剤性、安定性を備え、且つ加熱又は光照射による優れた主鎖分解性を有する、容易に除去可能な分解性硬化樹脂、該樹脂の原料となる硬化樹脂用組成物、並びに該組成物に好適に利用可能な新規なポリヘミアセタールエステル、その製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のポリヘミアセタールエステルは、式(1)で表される繰返し単位からなり、数平均分子量は1000〜20000である。本発明の硬化樹脂用組成物は、該ポリヘミアセタールエステルと、重合性ビニル基を1分子中に1個以上有する硬化剤と、熱又は光酸発生剤とを含むことを特徴とする。
【化1】


(R1:シクロヘキシル基又はフェニル基、R2:C1〜20の炭化水素基、R3:C1〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート基)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリヘミアセタールエステル、その製造方法、該ポリへミアセタールエステルを含む硬化樹脂用組成物、該組成物を光重合させた分解性硬化樹脂及び該硬化樹脂の分解方法に関し、特に、光硬化後に、良好な化学性能、物理性能及び耐候性を有し、且つ加熱又は光照射により主鎖を容易に分解しうる分解性硬化樹脂、並びにそれに好適に利用しうる新規なポリへミアセタールエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱又は光硬化性樹脂は、不溶・不融であり、耐熱性、耐溶剤性および機械的強度に優れているため、接着剤、塗料、半導体用の封止剤、プリント配線基板や複合材料のマトリックス等に利用されている。しかし、近年、環境負荷の軽減や貴重な材料の価格高騰への対応という観点から、リユース・リワーク・リペア可能な新しい硬化性樹脂の開発が必要とされている。
従来の熱分解性樹脂は、非常に高い分解温度条件を必要としていた。そこで、特許文献1には、酸で分解する、ケテン、アルデヒド共重合体が、特許文献2には、酸非存在下で分解する、ケテン、置換ベンズアルデヒド共重合体のフェニル基にアセタール基を導入した樹脂が提案されている。しかし、これらの樹脂は、架橋構造を持たないために、耐熱性、耐溶剤性および機械的強度が充分でない。
特許文献3及び特許文献5には、ジカルボン酸化合物のカルボキシル基をジビニルエーテルと反応させたポリへミアセタールエステル樹脂及びそれを含有する熱硬化性樹脂組成物が提案されている。該組成物は、比較的低い温度において遊離カルボキシル基を再生し、エポキシ化合物と反応して、化学性能、物理性能、さらには耐候性等に優れた硬化物を提供する。しかし、該硬化物は、分解に際して非常に高い温度条件と長時間を必要とするため、分解性硬化樹脂としての実用性に乏しい。
【0003】
近年、硬化性樹脂としての本来の機能と分解性機能とをあわせ持つ分解性硬化樹脂に関する研究が行われている。例えば、特許文献4および非特許文献1には、種々の分解性硬化樹脂が提案されている。しかし、これらに記載された樹脂は、(1)高分子に硬化・分解可能な架橋剤を混合した系、(2)高分子側鎖に硬化・分解可能な官能基を有する系であって、該架橋剤や高分子の側鎖が分解する系である。従って、高分子の主鎖が分解する硬化性樹脂については知られていない。
【特許文献1】国際公開第03/069412号パンフレット
【特許文献2】特開2006−206650公報
【特許文献3】特開平7−82351号公報
【特許文献4】特開2001−226430公報
【特許文献5】特開2001−239395号公報
【非特許文献1】角岡正弘、白井正充「高分子の架橋と分解−環境保全を目指して−」シーエムシー出版、2004年、第4章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、硬化樹脂としての良好な耐熱性、耐溶剤性、安定性を備え、且つ加熱又は光照射による優れた主鎖分解性を有する、容易に除去可能な分解性硬化樹脂、該樹脂の原料となる硬化樹脂用組成物、並びに該組成物に好適に利用可能な新規なポリヘミアセタールエステルを提供することにある。
本発明の別の課題は、本発明のポリヘミアセタールエステルを容易に得ることができる製造方法を提供することにある。
本発明の他の課題は、本発明の分解性硬化樹脂を容易に分解することが可能な分解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、式(1)で表される繰返し単位からなる、数平均分子量1000〜20000のポリヘミアセタールエステルが提供される。
【化3】

(式中、R1はシクロヘキシル基又はフェニル基を表し、R2は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R3は炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート基を示す。)
【0006】
また本発明によれば、式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート基を有するジカルボン酸化合物を得るために、式(3)で示されるカルボン酸無水物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを塩基性触媒の存在下に反応させる工程(a)、及び得られた式(2)で表されるジカルボン酸化合物とジビニルエーテル化合物とを付加反応させる工程(b)を含む、上記ポリヘミアセタールエステルの製造方法が提供される。
【化4】

(式(2)及び(3)中、R1及びR3は上記式(1)と同様である。)
【0007】
更に本発明によれば、上記ポリヘミアセタールエステルと、重合性ビニル基を1分子中に1個以上有する硬化剤と、熱又は光酸発生剤とを含む硬化樹脂用組成物が提供される。
更にまた本発明によれば、上記硬化樹脂用組成物を、光ラジカル重合開始剤の存在下に光重合させて得た分解性硬化樹脂が提供される。
また本発明によれば、上記分解性硬化樹脂を、加熱又は光照射して分解することを特徴とする硬化樹脂の分解方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の分解性硬化樹脂は、主鎖にヘミアセタール基を有する特定構造の本発明のポリヘミアセタールエステルと、特定の硬化剤と、熱又は光酸発生剤とを含む硬化樹脂用組成物を光重合させた樹脂であるので、硬化樹脂として一定温度まで熱に対して安定であり、良好な耐溶剤性等を備え、且つ加熱又は光照射により容易に主鎖の分解ができ、低分子量化による除去が可能で操作性に優れる。従って、本発明のポリヘミアセタールエステル、硬化樹脂用組成物及び分解性硬化樹脂は、接着剤、半導体用の封止剤、プリント配線基板や液晶ディスプレイ用パネル等に有用であり、製品のリサイクル性にも優れる。
本発明の製造方法は、上記有用な本発明のポリヘミアセタールエステルを容易に得ることができる。また、本発明の分解方法は、本発明の分解性硬化樹脂を容易に分解することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のポリヘミアセタールエステルは、前記式(1)で示される繰返し単位からなる、特定の数平均分子量を有する樹脂である。
式(1)において、R1はシクロヘキシル基又はフェニル基を表し、R2は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
2の炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、イソブチレン基、n−ペンチレン基、s−ペンチレン基、イソペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−デシレン基、n−ドデシレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基;シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等の炭素数3〜20の脂環式炭化水素基;フェニレン基、ナフチレン基、アントラセンジイル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられる。
式(1)において、R3は炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート基を示す。R3の炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−ブロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。
【0010】
本発明のポリヘミアセタールエステルの数平均分子量は、通常1000〜20000、好ましくは2000〜10000の範囲である。数平均分子量が1000未満の場合には、硬化不良の恐れがあり、20000を超える場合には分解効率の低下の恐れがある。
ポリへミアセタールエステルの重量平均分子量は、通常1000〜50000、好ましくは3000〜10000の範囲である。
【0011】
本発明のポリヘミアセタールエステルは、式(1)で示される繰返し単位からなり、且つ上記数平均分子量を有するので、ガラス転移温度(Tg)は通常−10〜10℃を示し、ヘミアセタールエステル部位の熱解離温度は通常180〜210℃である。
【0012】
本発明のポリへミアセタールエステルは、例えば、前記式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート基を有するジカルボン酸化合物を得るために、前記式(3)で示されるカルボン酸無水物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを塩基性触媒の存在下に反応させる工程(a)、及び得られた式(2)で表されるジカルボン酸化合物とジビニルエーテル化合物とを付加反応させる工程(b)を含む、本発明の製造方法により容易に得ることができる。
式(2)及び(3)において、R1およびR3は上記式(1)と同様であり、上述の具体例を好ましく挙げることができる。
【0013】
工程(a)に用いる式(3)で表わされるカルボン酸無水物としては、例えば、4−カルボキシルフタル酸無水物、4−カルボキシルヘキサヒドロフタル酸無水物が挙げられる。
工程(a)に用いるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチルが挙げられる。中でもヒドロキシアルキルアクリレート及びヒドロキシアルキルメタクリレートがカルボキシル基との反応性および光硬化性の点から好ましく挙げられる。
【0014】
工程(a)に用いる塩基性触媒は、工程(a)の反応を短縮できるものであれば特に限定されず、例えば、N−メチルジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、1,4−ジアザビシクロオクタン、テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、ジメチルジエチル−1,3−プロパンジアミン、ペンタメチルジエチレンジアミン、テトラエチルメタンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)アジペート、ビス(2−ジエチルアミノエチル)アジペート、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、メチルオクチルシクロヘキシルアミン、メチルドデシルシクロヘキシルアミン等の3級アミン化合物が好ましく挙げられる。
【0015】
工程(a)の反応において、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの使用量は、式(3)で表されるカルボン酸無水物量に対して、反応効率の向上の点から、通常モル比で1.1〜2倍量が好ましい。
工程(a)の反応において、塩基性触媒の使用量は特に限定されず、通常、原料モノマー100質量部に対して、1〜10質量部である。
工程(a)の反応温度は、通常室温〜150℃の範囲、好ましくは50〜120℃である。反応時間は、反応進行状況に応じて適宜選定でき、通常1〜100時間である。
【0016】
工程(a)の反応は、反応系を均一にし、反応を容易にする目的で有機溶媒を用いて行うことができる。
該有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレビン油、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)登録商標)、ソルベッソ#150(エクソン化学(株)登録商標)等の芳香族炭化水素;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、モノメチルエーテル、酢酸メトキシブチル等のエステル及びエーテルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メシチルオキサイド、メチルイソアミルケトン、エチルブチルケトン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。
有機溶媒を用いる場合の使用量は特に限定されないが、原料であるカルボン酸無水物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの混合物の合計量100質量部に対して、通常5〜95質量部、好ましくは20〜80質量部である。
【0017】
工程(b)に用いるジビニルエーテル化合物は、式(4)で表される化合物である。
【化5】

式中、R2は上記式(1)と同様であって、上述の具体例を好ましく挙げることができる。
式(4)で表される化合物としては、脂肪族ジビニルエーテル、芳香族ジビニルエーテルが挙げられ、具体的には例えば、トリメチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ビスビニルオキシメチルシクロヘキセン、エチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ペンタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテルが挙げられる。中でも、脂肪族ジビニルエーテルが入手性及びカルボキシル基との反応性の点から好ましく挙げられる。これらジビニルエーテル化合物は、使用に際して単独で、または2種以上を配合して用いることができる。
【0018】
工程(b)の反応において、ジビニルエーテル化合物の使用量は、式(2)で表されるジカルボン酸化合物に対して、望まれる分子量のポリヘミアセタールエステルを得るという点から、通常モル比で1.1〜2倍量が好ましい。
工程(b)の反応温度は、通常室温〜150℃の範囲、好ましくは50℃〜120℃である。反応時間は、反応進行状況に応じて適宜選定でき、通常1〜100時間である。
工程(b)の反応は、触媒を用いなくでも進行するが、反応時間を短縮できる点から酸触媒を使用することができる。そのような触媒としては、例えば、式(5)で表される酸性リン酸エステルが挙げられる。
【0019】
【化6】

式中、R4は炭素数3〜10のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、mは1又は2である。
【0020】
式(5)で表される酸性リン酸エステルとしては、例えば、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール等の第一級アルコール類のリン酸モノエステル類あるいはリン酸ジエステル類;イソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、シクロヘキサノール等の第二級アルコール類のリン酸モノエステル類あるいはリン酸ジエステル類が挙げられる。
工程(b)の反応において、上記酸触媒を用いる場合の使用量は特に限定されず、通常、原料モノマー100質量部に対して、0.1〜1質量部である。
【0021】
工程(b)の反応は、反応系を均一にし、反応を容易にする目的で有機溶媒を用いて行うことができる。
該有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレビン油、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)登録商標)、ソルベッソ#150(エクソン化学(株)登録商標)等の芳香族炭化水素;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、モノメチルエーテル、酢酸メトキシブチル等のエステル及びエーテルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メシチルオキサイド、メチルイソアミルケトン、エチルブチルケトン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。
有機溶媒を用いる場合の使用量は特に限定されないが、原料であるジカルボン酸化合物とジビニルエーテルとの混合物の合計量100質量部に対して、通常5〜95質量部、好ましくは20〜80質量部である。
【0022】
本発明の硬化樹脂用組成物は、前記本発明のポリへミアセタールエステルと、重合性ビニル基を1分子中に1個以上有する硬化剤と、熱又は光酸発生剤とを含む。
本発明の組成物に用いる上記硬化剤は、光照射により、光ラジカル開始剤の開裂によって、硬化剤の重合性ビニル基とポリヘミアセタールエステルの側鎖の(メタ)アクリレートが反応し硬化する。
このような硬化剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ビニルモノマー、エポキシ基含有モノマー、多官能性モノマーの少なくとも1種が挙げられる。
【0023】
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、イソプロピリデングリセリル−N−メタクリロイルオキシエチルウレタン、シクロヘキシル−N−メタクリロイルオキシエチルウレタン等が挙げられる。
前記ビニルモノマーとしては、例えば、スチレンやメチルビニルエーテルが挙げられる。
前記エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ベンゼン−1,3,5−トリ(2−(2−アクロイルオキシエトキシ)エチル)ヘミアセタールエステル、シクロヘキサン−1,3,5−トリ(2−(2−アクロイルオキシエトキシ)エチル)ヘミアセタールエステルが挙げられる。
中でもより好ましくは、光硬化性の面からはアクリル酸エステルモノマー又は多官能性モノマーが挙げられる。中でもメチルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート又はシクロヘキサン−1,3,5−トリ(2−(2−アクロイルオキシエトキシ)エチル)ヘミアセタールエステルが最も好ましく挙げられる。
【0024】
本発明の組成物において、前記硬化剤の含有割合は組成物全体が硬化可能であれば特に限定されないが、硬化効率の向上の点から、組成物中の前記ポリヘミアセタールエステルに対して、質量比で通常、1:0.1〜5、好ましくは1:0.1〜1である。
【0025】
本発明の組成物に用いる熱又は光酸発生剤は、熱又は特定波長の光により分解して酸を発生する化合物であって、後述する分解性硬化樹脂を分解する際に、加熱又は光照射により酸を発生し、硬化樹脂の主鎖におけるヘミアセタール基等に作用して分解する化合物である。該熱又は光酸発生剤は、通常、スルホン酸エステルの状態で硬化樹脂中に分散されている。
このような熱又は光酸発生剤としては、本発明の組成物の硬化に使用する波長365nmの光エネルギーを受けて分解しないものから適宜選択することができる。
【0026】
前記光酸発生剤としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、2,6−ジニトロベンジル−p−トルエンスルフォネート、α−p−トルエンスルフォニルオキシアセトフェノンが挙げられる。市販品のスルフォニウム塩型化合物としては、例えば、サンエイドSI−60L、SI−80L、SI−100L(いずれも商品名、三新化学工業(株)社製)が挙げられる。また、市販品のスルフォネート型化合物としては、例えば、PAI−101、NAI−100、NAI−105(いずれも商品名、みどり化学(株)社製)が挙げられる。
本発明の組成物において、光酸発生剤を用いる場合の含有割合は、必要とする光反応性を考慮して適宣決定しうるが、組成物中の前記ポリヘミアセタールエステル100質量部に対して、通常0.5〜10.0質量部、好ましくは1.0〜5.0質量部である。
【0027】
前記熱酸発生剤としては、スルフォニウム塩型化合物、スルフォネート型化合物等の既知化合物が挙げられる。これらオニウム塩型化合物の対アニオンとしては、例えば、CF3SO3-、(CF3SO2)2N-、PF6-、SbF6-が挙げられる。
市販品のスルフォニウム塩型化合物としては、例えば、サンエイドSI−110L、SI−180L、SI−145、SI−150(いずれも商品名、三新化学工業(株)社製)が挙げられる。市販品のスルフォネート型化合物としては、例えば、WPAG-618(商品名、和光純薬(株)社製)が挙げられる。
本発明の組成物において、熱酸発生剤を用いる場合の含有割合は、組成物中の前記ポリヘミアセタールエステル100質量部に対して、通常0.5〜10.0質量部、好ましくは1.0〜5.0質量部である。
【0028】
本発明の組成物には、得られる分解性硬化樹脂の用途等に応じて、本発明の所望の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を含有させることも可能である。
【0029】
本発明の分解性硬化樹脂は、前記本発明の硬化樹脂用組成物を、光ラジカル重合開始剤の存在下に光重合させて得た硬化樹脂である。
光ラジカル重合開始剤は、公知のどのような光ラジカル重合開始剤であっても構わないが、本発明の組成物に配合したあとの貯蔵安定性が良好なものが好ましい。このような光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリル(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オンが挙げられる。
これらの光ラジカル重合開始剤は、1種類でも二種類以上任意の割合で混合して使用することができる。また、必要に応じてアミン化合物、リン化合物等の光増感剤を適量併用して、硬化をより促進させることもできる。
光ラジカル重合開始剤の使用量は、本発明の組成物中の前記硬化剤100質量部に対して、通常0.1〜10.0質量部、好ましくは0.5〜5.0質量部である。
【0030】
本発明の分解性硬化樹脂を得るための光重合は、光ラジカル重合開始剤の存在下、本発明の組成物に、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより行うことができる。
光重合に用いる光源としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアーク、紫外線用蛍光灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。また、硬化を十分に行うために、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で活性エネルギー線を照射することが望ましい。
エネルギー線の照射時間は、その強度によるが、通常は数秒間から数分間である。特に、得られる分解性硬化樹脂の形態に応じて適宜選択することができ、例えば、厚い膜厚を有するフィルム状の場合には比較的に長い時間照射することが効率的である。
【0031】
本発明の分解性硬化樹脂は、ポリヘミアセタールエステル化合物単独、あるいは他の硬化剤と光硬化し、架橋構造を形成するため、耐熱性等の物性に優れた硬化物を得ることができる。
本発明の分解性硬化樹脂は、そのままで、もしくは、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニルエテール樹脂等の汎用熱可塑性樹脂と混合して使用することもできる。
【0032】
本発明の分解方法は、本発明の分解性硬化樹脂を、加熱又は光照射することによって分解する。例えば、光酸発生剤を含む分解性硬化樹脂の場合は光照射により、一方、熱酸発生剤を含む分解性硬化樹脂の場合は加熱により分解することができる。
このような加熱又は光照射することで、分解性硬化樹脂中の熱酸発生剤又は光酸発生剤から酸が発生し、該酸が分解性硬化樹脂の主鎖におけるヘミアセタールエステル構造を分解(開裂)させる。
【0033】
本発明の分解方法において、加熱は、熱酸発生剤から酸を発生させうる条件で行うことができる。具体的には、熱酸発生剤の種類等により異なるが、通常50〜200℃、好ましくは80〜160℃の範囲で、通常5分〜1時間程度、好ましくは10〜30分間程度の加熱条件により行うことができる。
本発明の分解方法において、光照射は、光酸発生剤から酸を発生させうる条件で行うことができる。照射する光エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線等を用いることができるが、簡易な光源としては、紫外線が挙げられる。これらのエネルギー線照射時間は、光酸発生剤の種類およびエネルギー線の強度によるが、通常は数秒間から数分間である。特に、分解する分解性硬化樹脂の形態に応じて適宜選択することができ、例えば、厚い膜厚を有するフィルム状の場合には比較的に長い時間照射することが効率的である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されない。
合成例1 エチルメタクリレート基を有する芳香族ジカルボン酸化合物の合成
攪拌機、還流冷却管および温度計を装着した4つ口フラスコに、4−カルボキシルフタル酸無水物(TMA)80g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)65g、トリエチルアミン0.8g及びプロピレングリコール−1−モノメチルエステル−2−アセテート(PEGMEA)270gを仕込み、80℃を保ちながら均一になるまで撹拌した。
次いで、この混合物を100℃に昇温し、同温度を維持しながら反応を続け、反応率が98%となったところで反応を終了した。反応終了後、反応混合物を室温で一晩放置し、白色の沈殿物を得た。沈殿物をろ過した後トルエンで2回洗浄し、減圧乾燥させ、式(6)で示される、エチルメタアクリレート基を有する芳香族ジカルボン酸化合物(TMA/HEMA)を得た。1H−NMR分析の結果を以下に示す。また、収量は77.8g、収率は58.0%であった。
1H−NMR(d−THF、ppm):2.5(s、3H、H1)、5.0、5.1(t、t、4H、H3)、6.2(s、1H、cis H2)、6.7(s、1H、trans H2)、8.2〜9.1(m、3H、H4)
【0035】
【化7】

【0036】
合成例2 エチルメタクリレート基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物の合成
合成例1で用いたTMAの代わりに、4−カルボキシルヘキサヒドロフタル酸無水物(H−TMA)を用い、合成例1と同様に行い、式(7)で表されるエチルメタアクリレート基を有する脂肪族ジカルボン酸化合物(H−TMA/HEMA)を得た。1H−NMR分析の結果を以下に示す。また、収量は60.0g、収率は45.3%であった。
1H−NMR(d−DMSO、ppm):2.1(s、3H、H1)、1.3〜1.9、2.1〜2.2(m、9H、H4)、4.3(m、4H、H3)、5.6(s、1H、cis H2)、6.1(s、1H、trans H2)
【0037】
【化8】

【0038】
実施例1 芳香族ポリヘミアセタールエステルの合成
攪拌機、還流冷却管および温度計を装着した4つ口フラスコに、合成例1で合成したTMA/HEMA20gとシクロペンチルメチルエテール(CPME)66.9gを入れ、80℃で溶解させた。次いで、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(CHDVE)13.4gを滴下し、同温度を維持しながら反応を続け、反応率が98%となったところで反応を終了した。反応終了後、ヘキサン/アセトン=9/1の混合溶剤により、ポリマー分の再沈精製を行った。さらに、ロータリーエバポレーターを用い、混合液から溶剤を留去し、その後、真空ポンプにより真空乾燥することにより、式(8)で表される芳香族ポリヘミアセタールエステル(TMA/HEMA−CHDVE)を得た。TMA/HEMA−CHDVEのNMRスペクトルを図1に示す。
【0039】
【化9】

【0040】
得られたTMA/HEMA−CHDVEの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、ガラス転移温度(Tg)及び10%重量減少温度(Td)を以下の分析方法及び評価方法により測定した。結果を表1に示す。
<重量平均分子量の測定>
重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より、ポリスチレン換算にて求めた。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件は次のとおり
機種;東ソー(株)社製、ゲル浸透クロマトグラフィーSC-8010、
カラム;昭和電工(株)製SHODEX K-801、
溶離液;THF液、
検出器;RI
<DSC>
機種;セイコ(株)社製、示差走査量測定装置DSC-210
測定条件:窒素気流下、10℃/分の昇温速度
<TG/DTA>
機種;セイコ(株)社製、熱重量/示差熱分析装置TG-220
測定条件:窒素気流下、10℃/分の昇温速度
【0041】
実施例2 脂肪族ポリヘミアセタールエステルの合成
攪拌機、還流冷却管および温度計を装着した4つ口フラスコに、合成例2で合成したH−TMA/HEMA21.3gとPEGMEA75.5gを入れ、100℃で溶解させた。次いで、CHDVE16.5gを滴下し、同温度を維持しながら反応を続け、反応率が98%となったところで反応を終了した。反応終了後、ヘキサン/アセトン=9/1の混合溶剤により、ポリマー分の再沈精製を行った。さらに、ロータリーエバポレーターを用い、混合液から溶剤を留去し、その後、真空ポンプにより真空乾燥することにより、式(9)で表される脂環式ポリヘミアセタールエステル(H−TMA/HEMA−CHDVE)を得た。得られたH−TMA/HEMA−CHDVEについて、実施例1と同様な測定を行った。結果を表1に示す。H−TMA/HEMA−CHDVEのNMRスペクトルを図2に示す。
【0042】
【化10】

【0043】
【表1】

【0044】
実施例3 芳香族ポリヘミアセタールエステルを含む組成物の光硬化
実施例1で合成したTMA/HEMA−CHDVEとエチレングリコールジメタアクリレート(EGDM)とを質量比1:1で混合し、固形分濃度20質量%のCPME溶液を調製した。その溶液に光ラジカル重合開始剤として2−メチル−2−モルホリル(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン(商品名イルガキュア、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、365nm光吸収)を、EGDM100質量部に対して5質量部、光酸発生剤として商品名TPS−105(みどり化学社製、254nm光吸収)を、TMA/HEMA−CHDVE100質量部に対して5質量部添加して硬化樹脂用組成物としてのサンプル溶液を調製した。その溶液をシリコンウェハー上にスピンコートして、100℃、プリベーク2分間の条件で、膜厚3μmの薄膜を得、該薄膜に、紫外線照射装置で365nmの光を照射して硬化させた。
得られた硬化膜について、赤外吸収スペクトル(IR)により、1636cm-1及び1178cm-1のビニル基に由来するピーク強度変化から硬化率を測定した。IRスペクトルから求めた光硬化率は80.0%であった。365nm光照射前後のIRスペクトルを図3に示す。図3において(1)は、365nm光照射前のIRスペクトル、(2)は365nm光照射後のIRスペクトルを示す。
【0045】
実施例4 脂肪族ポリヘミアセタールエステルを含む組成物の光硬化
実施例2で合成したH−TMA/HEMA−CHDVEとEGDMとを質量比1:1で混合し、固形分濃度20質量%のCPME溶液を調製した。その溶液に光ラジカル重合開始剤として2−メチル−2−モルホリル(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン(商品名イルガキュア、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、365nm光吸収)を、EGDM100質量部に対して5質量部、熱酸発生剤としてWPAG−618(和光純薬社製、分解温度152℃)を、H−TMA/HEMA−CHDVE100質量部に対して5質量部添加して硬化樹脂用組成物としてのサンプル溶液を調製した。その溶液をシリコンウェハー上にスピンコートして、100℃、プリベーク2分間の条件で、膜厚3μmの薄膜を得、該薄膜に、紫外線照射装置で365nmの光を照射して硬化させた。
得られた硬化膜について、IRにより、1636cm-1及び1178cm-1のビニル基に由来するピーク強度変化から硬化率を測定した。IRスペクトルから求めた光硬化率は88.8%であった。365nm光照射前後のIRスペクトルを図4に示す。図4において、(1)は365nm光照射前のIRスペクトル、(2)は365nm光照射後のIRスペクトルを示す。
【0046】
実施例5 芳香族ポリヘミアセタールエステルを含む硬化樹脂の光分解
実施例3で得られた硬化膜に、254nmの光を照射後、IRにより、1133cm-1のヘミアセタール基に由来するピークの変化及び3000〜3600cm-1のカルボン酸に由来するピークの変化から光分解率を測定した。IRスペクトルから求めた光分解率は50.0%。254nm光照射前後のIRスペクトルを図5に示す。図5において(1)は365nm光照射後のIRスペクトル、(2)は254nm光照射後のIRスペクトルを示す。
【0047】
実施例6 脂肪族ポリヘミアセタールエステルを含む硬化樹脂の熱分解
実施例4で得られた硬化膜を、150℃で30分間加熱処理後、IRにより、1133cm-1のヘミアセタール基に由来するピークの変化および3000〜3600cm-1のカルボン酸に由来するピークの変化から熱分解率を測定した。IRスペクトルから求めた熱分解率は60.0%であった。加熱処理前後のIRスペクトルを図6に示す。図6において、(1)は365nm光照射後のIRスペクトル、(2)は150℃熱処理後のIRスペクトルを示す。
【0048】
合成例3 シクロヘキサン-1,3,5-トリ(2-(2-アクロイルオキシエトキシ)エチル)ヘミアセタールエステル(VEEA−CHTCA)の合成
攪拌機、CaCl2付き還流冷却管および温度計を装着した褐色4つ口セパラブルナス型フラスコにシクロヘキサントリカルボン酸(CHTCA)20.0g、2−(2−(ビニロキシ)エトキシ)エチルアクリレート(VEEA)78.0g及びメチルエチルケトン(MEK)80.3gを仕込み、80℃を保ちながら均一になるまで攪拌した。次いで、この混合物を90℃に昇温し、反応率が98%となったところで反応を終了した。反応終了後、エバポレーターでMEKを留去し、ヘキサンで2回洗浄後、商品名キョーワード500(陰イオン吸着剤、協和化学工業株式会社製)を用いて吸着処理を行い、式(10)で表されるシクロヘキサン−1,3,5−トリ(2−(2−アクロイルオキシエトキシ)エチル)ヘミアセタールエステル(VEEA−CHTCA)を得た。式(10)において、Rは式中に示す基を表す。1H−NMR分析の結果を以下に示す。また、収量は30.0g、収率は24.9%であった。
1H−NMR(d−CDCl3、ppm):1.4(s、3H、H1)、1.6、2.5(m、m、6H、H2)、2.3(m、3H、H3)、3.8(m、6H、H4)、4.3(t、2H、H5)、5.9、6.5(d、d、2H、H6)、6.0(s、1H、H7)、6.2(q、1H、H8)
【0049】
【化11】

【0050】
実施例7 VEEA-CHTCA/脂肪族ポリヘミアセタールエステルを含む組成物の光硬化
合成例3で合成したVEEA−CHTCAと実施例2で合成したH−TMA/HEMA−CHDVEとを質量比7:3で混合し、固形分濃度20質量%THF溶液を調製した。その溶液に光開始剤として2−メチル−1(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、365nm光吸収)をビニルモノマーに対して5質量%、光酸発生剤としてTPS−105(みどり化学社製、254nm光吸収)をビニルモノマーに対して5質量%添加してサンプル溶液を調製した。その溶液をシリコンウェハー上にスピンコートして膜厚1μmの薄膜を調製した。薄膜を紫外線照射装置で365nm光を照射した後、赤外吸収スペクトル(IR)により、1636cm-1及び1178cm-1のビニル基に由来するピーク強度変化から硬化率を測定した。IRスペクトルから求めた光硬化率は78.6%。365nm光照射前後のIRスペクトルを図7に示す。図7において(1)は365nm光照射前のIRスペクトル、(2)は365nm光照射後のIRスペクトルを示す。
【0051】
実施例8 VEEA−CHTCA/脂肪族ポリヘミアセタールエステルを含む硬化樹脂の光分解
実施例7で得られた硬化膜に、254nm光照射及び150℃で10分間の熱処理を行った後、赤外吸収スペクトル(IR)により、1133cm-1のヘミアセタール基に由来するピークの変化及び3000〜3600cm-1のカルボン酸に由来するピークの変化から光分解率を測定した。IRスペクトルから求めた光分解率は86.0%。254nm光照射及び熱処理後のIRスペクトルを図8に示す。図8において(1)は365nm光照射後のIRスペクトル、(2)は254nm光照射及び150℃の熱処理後のIRスペクトルを示す。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1で調製したTMA/HEMA−CHDVEのNMRスペクトルを示す図である。
【図2】実施例2で調製したH−TMA/HEMA−CHDVEのNMRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例3で調製した硬化膜の365nm光照射前後のIRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例4で調製した硬化膜の365nm光照射前後のIRスペクトルを示す図である。
【図5】実施例5で光分解した硬化膜の254nm光照射前後のIRスペクトルを示す図である。
【図6】実施例6で熱分解した硬化膜の加熱処理前後のIRスペクトルを示す図である。
【図7】実施例7で調製した硬化膜の365nm光照射後のIRスペクトルを示す図である。
【図8】実施例8で光分解した硬化膜の254nm光照射及び熱処理後のIRスペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される繰返し単位からなる、数平均分子量1000〜20000のポリヘミアセタールエステル。
【化1】

(式中、R1はシクロヘキシル基又はフェニル基を表し、R2は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R3は炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート基を示す。)
【請求項2】
式(2)で表されるアルキル(メタ)アクリレート基を有するジカルボン酸化合物を得るために、式(3)で示されるカルボン酸無水物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを塩基性触媒の存在下に反応させる工程(a)、及び得られた式(2)で表されるジカルボン酸化合物とジビニルエーテル化合物とを付加反応させる工程(b)を含む、請求項1記載のポリヘミアセタールエステルの製造方法。
【化2】

(式(2)及び(3)中、R1はシクロヘキシル基又はフェニル基を表し、R3は炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート基を示す。)
【請求項3】
請求項1記載のポリヘミアセタールエステルと、重合性ビニル基を1分子中に1個以上有する硬化剤と、熱又は光酸発生剤とを含む硬化樹脂用組成物。
【請求項4】
請求項3記載の硬化樹脂用組成物を、光ラジカル重合開始剤の存在下に光重合させて得た分解性硬化樹脂。
【請求項5】
請求項4記載の分解性硬化樹脂を、加熱又は光照射して分解することを特徴とする硬化樹脂の分解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−214604(P2008−214604A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260762(P2007−260762)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】