説明

ポリベンザゾールの製造方法

【課題】ポリベンザゾールを経済的に簡便な反応工程を経て製造する。
【解決手段】パラジウム、ロジウム、銅から選ばれた1種または2種以上の金属化合物を触媒に用いて、アリルジアゾールとジヨウ化アリル化合物とを反応させることを特徴とする重合方法、またはヨウ化アリルアゾールを重合することを特徴とするポリベンザゾールの重合方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性の高分子であるポリベンゾオキサゾールやポリベンゾチアゾール、ポリベンゾイミダゾール等のポリベンザゾールの新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンザゾールは優れた耐熱性高分子として知られている。特にポリベンゾオキサゾールは、耐熱性の他、電気特性にも優れており電気電子機器用材料、半導体装置用材料といったエレクトロニクス分野への適用が広がっている。この分野では、ポリイミドが代表的な耐熱性有機系材料として広く用いられており、実際にソルダーレジスト、カバーレイ、液晶配向膜などに用いられている。しかしながら、近年の半導体の高機能化、高性能化にともない、電気特性、耐熱性について、著しい向上が必要とされているため、更に高性能な樹脂が必要とされるようになっている。ポリイミド樹脂は、イミド環にカルボキシル基を2 個有していることで、電気特性に悪影響を及ぼしている。従って、一般にポリベンゾオキサゾール樹脂は、ポリイミド樹脂よりも電気特性に優れ、かつ耐熱性も同等であるため、極めて有用な樹脂である。
【0003】
このポリベンゾオキサゾールは、例えば、非特許文献1に例示されているように、ビスアミノヒドロキシベンゼン類と活性化された芳香族ジカルボン酸誘導体と反応させ、さらに加熱閉環することにより合成することが出来る。しかし、この方法は溶媒中の水分を完全に除去し、吸湿を防止しなければ、高重合度のポリマーを得ることが出来ないことが欠点である。また、オキサゾール環を閉環するために200℃以上の高温に加熱しなければならないことも欠点である。
【非特許文献1】J. Photopolym. Sci. Technol., 14, No.1, 55(2001)
【0004】
また、ポリベンザゾールは高強度、高弾性率繊維用ポリマーとしても有用である。ポリリン酸を溶媒としてポリベンゾオキサゾールやポリベンゾチアゾールを合成する方法が多数開示されている。(非特許文献2、特許文献1など)この方法の欠点は、ポリリン酸という腐食性の強い溶媒を使用するため、製造装置に特別な耐食金属を使用する必要があることである。また、成型工程で多量のリン酸含有廃液が発生するのも好ましくない。
【0005】
ポリベンズイミダゾールは、ビフェニルテトラアミンとイソフタル酸ジフェニルエステルを溶融重合することにより得られるが、この方法はゲル化による不溶物が副反応として生成するため、品位が劣る。また、有害なフェノールが副生することが好ましくない。
【非特許文献2】J.Polym. Sci., Part A, 2, 2605 (1964)
【特許文献1】特表昭61-501452
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、ポリベンザゾールを経済的に簡便な反応工程を経て製造することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、パラジウム、ロジウム、銅から選ばれた1種以上の触媒を用いて、アリルジアゾールと、ジヨウ化アリル化合物とを反応させること、またはヨウ化アリルアゾールを重合することで、1段階の反応で簡便にポリベンザゾールが合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、一般式(A)および/または(B)および/または(C)で示されるポリベンザゾールの重合方法であって、パラジウム、ロジウム、銅から選ばれた1種または2種以上の金属化合物を触媒に用いて、(D)および/または(E)で示されるアリルジアゾールと(F)で示されるジヨウ化アリル化合物とを反応させることを特徴とする重合方法、または(G)で示されるヨウ化アリルアゾールを重合することを特徴とする重合方法である。
【化1】

(Ar1、Ar2、Ar3はそれぞれ下式(H)(I)(J)の群の中から選ばれる任意の芳香族基を表し、XはOまたはSまたはNHを表す。)
【化2】

【化3】

【化4】

(Yは(K)で表される2価の有機基)
【化5】

【発明の効果】
【0009】
本発明のポリベンザゾールの製造方法によれば、アリルジアゾールと、ジヨウ化アリル化合物とを反応させること、またはヨウ化アリルアゾールを出発原料とし、1段階の反応で簡便のポリベンザゾールが合成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に使用される一般式(D)または(E)で示される化合物としては、6−(3,4−オキサゾイルフェニル)ベンゾオキサゾール、5−(3,4−チアゾイルフェニル)ベンゾチアゾール、5−(3,4−イミダゾイルフェニル)ベンゾイミダゾール、2,2−ビス(3、4−オキサゾイルフェニル)プロパン、2 ,2−ビス(3,4−オキサゾイルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3,4−オキサゾイルフェニル)テトラフルオロベンゼン、1,2,5,4−ベンゾビスオキサゾール、1,2,4,5−ベンゾビスチアゾール、1,2,4,5−ベンゾビスイミダゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この中でも2,2−ビス(3、4−オキサゾイルフェニル)プロパン、2 ,2−ビス(3,4−オキサゾイルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,2,5,4−ベンゾビスオキサゾールが有用であり、特にエレクトロニクス用のポリマー原料として2 ,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0011】
本発明において使用される一般式( G )で示される化合物の例としては、4−(4−ヨードフェニル)ベンゾオキサゾール、4−(4−ヨードフェニル)ベンゾイミダゾール、4−(4−ヨードフェニル)ベンゾチアゾール、4−(3−ヨードフェニル)ベンゾオキサゾール、4−(3−ヨードフェニル)ベンゾチアゾール、4−(3−ヨードフェニル)ベンゾイミダゾール、4−(4‘−ヨードビフェニル)ベンゾチアゾール、4−(4‘−ヨードビフェニル)ナフトオキサゾールなどが挙げられる。
【0012】
また本発明において使用される一般式(F)で示される化合物の例としては、1,3−ジヨードベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、2,6−ジヨードナフタレン、1,8−ジヨードナフタレン
2,6−ジヨードピリジン、3,5−ジヨードピリジン、4,4‘−ジヨードビフェニル、3,4’−ジヨードビフェニル、2,2−ビス(4−ヨードフェニル) プロパン、2 ,2−ビス(4−ヨ−ドフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4、4‘−ジヨードジフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0013】
本発明において、反応に用いられる溶媒は特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N,−ジメチルホルムアミドといったアミド系の溶媒の他、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブといったエーテル系の溶媒が好適である。これらの溶媒にトルエンやキシレンを混合して使用しても良い。また、溶媒は特に蒸留や乾燥といった操作を行うことなく使用できる。
【0014】
重合反応に用いられる金属化合物触媒としては、パラジウム、ロジウム、銅から選ばれた1種又は2種以上の金属化合物であり、具体的には、酢酸パラジウムやヨウ化銅などが挙げられる。特に触媒の価格が安価であるヨウ化銅が好ましく、酢酸パラジウムとヨウ化銅を併用することも好ましい。
【0015】
触媒と共にトリフェニルホスフィンおよび炭酸カリウムや炭酸ナトリウム、炭酸セシウムを用いる。また、特に銅触媒単独で用いられる場合には、リチウムtert-ブトキシドおよび/またはポタシウムtert-ブトキシドが用いられる場合がある。これらのアルコキシド化合物を反応系に添加することにより、反応速度、反応収率が向上する。
【0016】
反応温度は100℃以上が好ましく、140〜200℃で行うことが反応速度の面で好ましい。
【0017】
反応の終点は、高速液体クロマトグラフィー等で原料の減少をモニターすること、または反応溶液の粘度からも判定可能である。反応終了後、生成物を分離するには反応系に水などの貧溶媒を大量に添加して生成物を析出させ、ろ過により回収することが可能である。
【0018】
重合して生成したポリマーは、そのまま成型しても良いし、精製してから用いても良い。成型品の品質をより高品質なものとするために、精製を行うことが好ましい。精製方法は特に限定されないが、良溶媒に溶解した後に、
【0019】
本発明の上記方法で得られたポリベンザゾールは高強度・高耐熱性の繊維やフィルムといった樹脂成型品の他、電子部品保護膜や電線被覆などの用途に好適である。
【実施例】
【0020】
次に実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)対数粘度:ポリマーをメタンスルホン酸に0.1g/dLの濃度で溶解し、ウベローデ粘度計を用いて25℃で測定した。
【0021】
( 実施例1 )リボン形攪拌機、冷却還流管、温度計、を備えた2Lのステンレス製反応装置に、2 ,2−ビス(3,4−オキサゾイルフェニル)ヘキサフルオロプロパン27.83g(0.1mol)、2 ,2−ビス(4−ヨ−ドフェニル)ヘキサフルオロプロパン44.81g(0.1mol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド1Lに分散、溶解した。ヨウ化銅1.90g(0.01mol)リチウムtert-ブトキシド0.08g(0.01mol)を加えて、攪拌しながら120℃に加熱して1時間反応させたところ、反応溶液の粘度が上昇した。反応溶液を10Lの水に少しずつ流しいれ、生成したポリマーを凝固させた。ろ過によりポリマーを回収し、乾燥させた後、もう一度N,N−ジメチルアセトアミド500mlに溶解し、再度水に流しいれて再沈殿を行った。この再沈殿操作をさらに3回繰り返したのち薄く黄色に着色したほぼ無色のポリマーを得た。このポリマーの対数粘度は、2.4dL/gであった。
【0022】
(実施例2)2 ,2−ビス(3,4−オキサゾイルフェニル)ヘキサフルオロプロパンの代わりに、2 ,2−ビス(3,4−イミダゾイルフェニル)ヘキサフルオロプロパン27.63g(0.1mol)を、2 ,2−ビス(4−ヨ−ドフェニル)ヘキサフルオロプロパンの代わりに4、4‘−ジヨードジフェニルエーテル42.20g(o.1mol)を使用したほかは、実施例1と同様にして、薄緑色のポリマーを得た。このポリマーの対数粘度は1.6dL/gであった。
【0023】
(実施例3)ヨウ化銅1.90g(0.01mol)リチウムtert-ブトキシド0.08g(0.01mol)の代わりに酢酸パラジウム2.25g(0.01mol)とトリフェニルホスフィン2.62g(0.01mol)、ヨウ化銅3.80g(0.2mol)、炭酸ナトリウム5gを加えた他は、実施例1と同様にして、薄緑色のポリマーを得た。このポリマーの対数粘度は1.6dL/gであった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によるアミノアリルアミノアラゾールの製造方法は、パラジウム、ロジウム、銅から選ばれた1種以上または2種以上の金属化合物を触媒に用いて、アリルジアゾールと、ジヨウ化アリル化合物とを反応させること、またはヨウ化アリルアゾールを重合する点で新規な製造方法であり、経済的に簡便な反応工程を経て製造すると言う利点があるため、産業界に寄与することが大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)および/または(B)および/または(C)で示されるポリベンザゾールの重合方法であって、パラジウム、ロジウム、銅から選ばれた1種又は2種以上の金属化合物を触媒を用いて、(D)および/または(E)で示されるアリルジアゾールと(F)で示されるジヨウ化アリル化合物とを反応させることを特徴とする重合方法、または(G)で示されるヨウ化アリルアゾールを重合することを特徴とする重合方法。
【化1】

(Ar1、Ar2、Ar3はそれぞれ下式(H)(I)(J)の群の中から選ばれる任意の芳香族基を表し、XはOまたはSまたはNHを表す。)
【化2】

【化3】

【化4】

(Yは(K)で表される2価の有機基)
【化5】

【請求項2】
金属化合物触媒がヨウ化銅を含むことを特徴とする請求項1の製造方法。
【請求項3】
銅化合物触媒と併せてリチウムtert-ブトキシドおよび/またはポタシウムtert-ブトキシドを用いることを特徴とする請求項2の製造方法。

【公開番号】特開2009−191184(P2009−191184A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34100(P2008−34100)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】