ポリペプチドの持続性送達用経皮システム
本発明は、高分子量親水性薬物、特にペプチド薬物、ポリペプチド薬物又は蛋白質薬物の持続性送達用の経皮システム及びその使用法に関する。該システムは、ポリマーマトリックス及び治療又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質を含む少なくとも1層の貯留層を含む経皮用パッチと共に、対象の皮膚にマイクロチャネルを発生させる装置を含む。このシステムは、治療用又は免疫原性薬剤の持続性送達を提供することによって、これらの薬剤の持続的な治療血中濃度を達成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量親水性薬物、特にペプチド薬物、ポリペプチド薬物又は蛋白質薬物の持続性送達用の経皮システム、及びそれの使用法に関する。このシステムは、ペプチド薬物、ポリペプチド薬物又は蛋白質薬物を含有するポリマーマトリックスを含む少なくとも1層の貯留層を含む経皮用パッチと共に、対象の皮膚にマイクロチャネルを発生させる装置を含む。
【背景技術】
【0002】
皮膚を介した薬物の送達は、多くの利点を提供する。本来、このような送達手段は、薬物投与の快適で都合のよい非侵襲的な方法である。経口投与において遭遇する可変的な吸収率及び代謝率を回避し、他の固有の不都合さ、例えば胃腸刺激作用及び胃腸酵素を介したある種の薬物の分解が排除される。経皮薬物送達は、任意の特定の薬物の血中濃度に関して高度なコントロールを理論的に可能にする。実際には、これらの利益を達成するために解決すべき多くの問題が残っている。
【0003】
皮膚は、構造的に複雑で比較的厚い膜である。無傷の皮膚中にまたそれを介してその環境から移動する分子は、最初に角質層を透過しなければならない。次に、それら分子は、生存表皮、乳頭真皮、及び毛細管壁を透過して、血流又はリンパチャネル中まで行かなければならない。そのように吸収されるために、分子は、各タイプの組織において種々の耐透過性を克服しなければならない。したがって、皮膚膜を横断する輸送は複雑な現象である。しかしながら、経皮投与薬物に対して一次バリヤーを呈するのは角質層の細胞である。角質層は、身体の大部分にわたる、ほぼ10〜30ミクロンの厚さの高密度で高度に角質化された細胞の薄い層である。これら細胞内の高度な角質化及びそれらの高密度の充填は、薬物透過に対して実質的に不透過性バリヤーとなると考えられる。多くの薬物において、皮膚透過率は極めて低く、特にポリペプチド及び蛋白質などの高分子量薬物について問題がある。したがって、皮膚の透過性を増大させる手段は、無傷の皮膚中にまたそれを介して輸送を達成することが望ましい。
【0004】
薬物の皮膚透過率を増すために、種々のアプローチが採用され、その各々は、物理的透過性エンハンサー又は化学的透過性エンハンサーのいずれかの使用を含む。皮膚透過性の物理的増強としては、例えば、イオン導入療法又は電気穿孔法などの電気泳動技法が挙げられる。物理的透過性エンハンサーとして超音波(又は「音波泳動」)の使用もまた研究されている。化学的エンハンサーは、角質層の透過性を増すために、薬物(又は幾つかの場合において、皮膚は化学的エンハンサーにより前処置できる)と共に投与される化合物であり、それによって皮膚を介する薬物の増強された透過性を提供する。しかしながら、このような化学的エンハンサーを用いる場合の主要な欠点としては、皮膚損傷、刺激があり、過敏性に遭遇することが多い。
【0005】
参照として本明細書に組み込まれているAvrahamiに対する米国特許第6,148,232号は、対象の角質層をアブレーションする装置を記載している。この装置は、対象の皮膚上の個々の箇所に適用される複数の電極を含む。電源により、2つ以上の電極間に電気的エネルギーが加えられて、主として個々の電極下の角質層(SC)の異なる領域のアブレーションを引き起こし、マイクロチャネルを発生させる。角質層に対する限定的アブレーションに関する種々の技法は、電極の間隔及び隣接電極間で皮膚の電気抵抗をモニターすることなどが記載されている。Avrahamiに対する米国特許第6,597,946号;米国特許第6,611,706号;米国特許第6,708,060号;及び米国特許第6,711,435号は全て、本出願の出願人に譲渡されており、本明細書に完全に記載されているように参照として組み込まれており、皮膚を介して物質の経皮通過を促進するための、角質層をアブレーションし、マイクロチャネルを発生させる別の装置を開示している。この装置は、マイクロチャネル発生時に角質層の下にある皮膚に対する感覚を減少し、損傷を最少にすることを目的としている。
【0006】
制御放出を与えない様式での治療剤の投与は、毒性又は望ましくない副作用を生じ得る濃度に到達するときと治療効果に必要とされる濃度以下に低下するときとで、その濃度の実質的な変動をもたらし得ることが長い間認識されてきた。制御放出用の装置及び/又は方法の使用の第一の目標は、治療薬剤の全身濃度に関してより大きなコントロールを生じさせることである。
【0007】
種々の方法が、治療薬剤の制御放出を達成する目的で開発されている。制御分散による放出は、これら方法のうちの1つである。種々の材料が、分散制御緩徐放出装置を製作するために用いられている。これらの材料としては、ポリジメチルシロキサン、エチレンビニルアセテートコポリマー、及びヒドロキシルアルキルメタクリレートなどの非分解性ポリマー並びに分解性ポリマー、それらの中で乳酸/グリコール酸コポリマーが挙げられる。エチレンビニルアセテートコポリマーから製作された細孔膜が、蛋白質の放出用に用いられており、高い放出能力を与える。
【0008】
制御放出のためのさらなる方法は、治療薬剤が固定された支持体からの化学開裂、及び/又は前記薬剤が固定されたポリマーの生分解を必要とする化学的制御された持続放出を含む。このカテゴリーとしてはまた、制御された非共有解離が挙げられ、これは非共有結合により支持体に一時的に結合している薬剤の解離から生じる放出に関連する。この方法は、好適な支持体に対して蛋白質の安定ではあるが永続的ではない結合をもたらす、複数の非共有結合、イオン結合、疎水性結合及び/又は水素結合を形成できる高分子である蛋白質又はペプチドの制御放出に特によく適している。
【0009】
米国特許第5,418,222号は、活性成分、特にPDGFの制御放出における使用のために単層及び複層コラーゲン薄膜類に関する。米国特許第5,512,301号は、吸収性ゼラチンスポンジ、コラーゲン、及び活性成分を含むコラーゲン含有スポンジに関する。米国特許第5,418,222号に開示されたコラーゲン薄膜類及び米国特許第5,512,301号に開示されたコラーゲンスポンジは、長時間にわたり治療薬剤の安定的、連続的及び持続性放出を提供する。
【0010】
米国特許第5,681,568号は、ミクロキャピラリーポアを有する細孔下層を含む装置を開示しており、前記ポアは、被覆されているが、生物学的に活性な高分子薬剤が結合しているマイクロスキンによって完全に満たされてはいない。細孔下層は、ポリマーを含み、マイクロスキンは、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、及びグリコサミノグリカンから選択される物質を含む。このような装置は、高分子、特に成長因子の治療標的に対する送達を最適化するために有用であると考えられている。
【0011】
米国特許第6,596,293号は、薬物送達材料及び架橋剤による生物学的ポリマーの架橋を含む装置を調製する方法、並びに生物活性薬剤との架橋バイオポリマーを充填する方法を開示する。
【0012】
米国特許第6,275,728号は、ヒドラタブル(hydratable)の親水性ポリマーを含む電気輸送薬物送達装置用の薄膜薬物貯留を提供し、前記薄膜は、含水液体と接触させて置かれた場合にヒドロゲルを形成できる。
【0013】
本出願の出願人に譲渡されている国際特許出願WO2004/039428は、乾燥医薬組成物の経皮送達用のシステムを開示している。このシステムには、対象の皮膚上の領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させる、対象の皮膚を介して薬物の経皮送達を促進させる装置、及び治療有効量の乾燥医薬組成物を含むパッチを含む。WO2004/039428は、初めて親水性高分子量蛋白質の経皮送達の効率的方法を提供している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
親水性高分子量薬物の経皮送達用装置及び方法の未知の必要性がまだ残されており、これによってこのような薬剤の持続性送達及び制御送達を達成する。これらの装置及び方法の利点は、ポリペプチド及び蛋白質並びに他の生物活性水溶性薬物に特に著しいと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、皮膚をアブレーションし、活性薬剤を前処理した皮膚に適用するシステムと方法を提供し、このシステムと方法は活性薬剤の体循環への徐放及び持続性送達を達成するようにデザインされている。
【0016】
本発明はさらに、活性薬剤を経皮的に送達するシステムと方法を提供し、このシステムは、活性薬剤が非共役的に結合し、それから放出されうる少なくとも1層の薬物貯留層を含むパッチを含んでいる。
【0017】
ポリマーマトリックスは、ポリペプチド又は蛋白質の組織又は血液循環中への送達用の支持体又はインプラントとしてよく知られていることを認識すべきである。しかしながら、背景技術において、ポリマーマトリックスと親水性高分子量ポリペプチド又は蛋白質との組合せが、経皮送達用のパッチに使用できることはどこにも開示も示唆もされていない。マイクロチャネルを発生させる装置によって前処理された皮膚の領域に置かれた場合、活性薬剤として高分子量ポリペチドを含むポリマー薬物貯留層を含むパッチの使用は、長時間にわたり、高分子量ポリペプチドの治療有効血清中濃度を達成することができることが、初めて本明細書に開示される。本発明によれば、本発明の装置は、対象の角質層で親水性マイクロチャネルを発生させ、それを介してパッチのポリマー薬物貯留層に浸出液が拡散する。この浸出液は、ポリマー薬物貯留層から活性薬剤を緩徐に放出し、したがってマイクロチャネルを介して長時間にわたり体循環に活性薬剤を送達する。その結果、活性薬剤の緩徐且つ持続的送達が達成される。
【0018】
本発明の原理は、ヒト成長ホルモン(hGH)、22kDa蛋白質、及びヒトインスリンを用いて本明細書の下記に例示される。本発明に開示されたシステムと方法は、限定はしないが、種々の成長因子及びホルモンなど、多種多様の蛋白質、ポリペプチド、ペプチド、及び水溶性生物活性分子に適用できることが明白に意図されている。
【0019】
一態様によれば、本発明は、対象の皮膚上の領域において少なくとも1つのマイクロチャネルを発生できる装置、及び少なくとも1層の薬物貯留層を含むパッチを含む、対象の皮膚を介した活性薬剤の経皮送達を促進するシステムであって、前記少なくとも1層の薬物貯留層はポリマーマトリックス及び活性薬剤として少なくとも1種の治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含む医薬組成物を含むシステムを提供する。
【0020】
幾つかの実施形態によれば、本発明のシステムは、対象の皮膚を介した活性薬剤の経皮送達を促進する装置を含み、該装置は、
a.複数の電極を含む電極カートリッジ、及び
b.前記電極が皮膚の近くにあるときに、2個以上の電極間に電気的エネルギーを加え、前記電極の下の領域の角質層のアブレーションを可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させるようになされているコントロールユニットを含む主要ユニット
を含む。
【0021】
本発明の他の実施形態によれば、該装置のコントロールユニットは、電流又はスパークの発生、したがって1つ又は複数形成されるマイクロチャネルの幅、深さ及び形状をコントロールするための、電極に送られる電気的エネルギーの大きさ、周波数、及び/又は持続時間をコントロールする回路を含む。
【0022】
さらなる実施態様によれば、複数の電極を含む電極カートリッジは、均一の形状及び寸法を有する複数のマイクロチャネルを発生させるようになされている。電極カートリッジは取り外しできることが好ましい。電極カートリッジは、1回の使用後に廃棄されることがより好ましく、したがって、主要ユニットへの取り付け、及びその後の主要ユニットからの取り外しが容易になるようデザインされている。
【0023】
本発明の幾つかの実施態様によれば、ポリマーマトリックスは、親水性バイオポリマー、親水性合成ポリマー、それらの誘導体及び組合せからなる群から選択される親水性ポリマーマトリックスである。本発明により使用できるバイオポリマーとしては、限定はしないが、セルロース、キチン、キトサン、アルギネート、コラーゲン、ゼラチン、ペクチン、例えば、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸及びヘパラン硫酸などのグリコサミノグリカン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、カラゲナン、及びラミニンが挙げられる。幾つかの代表的実施形態によれば、薬物貯留層は、コラーゲン、アテロコラーゲン、又はカラゲナンを含む。
【0024】
本発明により使用できる親水性合成ポリマーとしては、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)ポリマーなどの生分解性及び非分解性ポリマー、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリウレタンが挙げられる。幾つかの代表的な実施形態によれば、薬物貯留層は、Vigilon(登録商標)、すなわち96%の水及び4%のポリエチレンオキシドからなるヒドロゲルを含む。
【0025】
さらなる実施形態によれば、治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質は、成長因子、ホルモン、サイトカイン、水溶性薬物、抗原、抗体、それらの断片並びに類縁体からなる群から選択される。本発明により経皮的に送達される治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質は、親水性であることが好ましい。
【0026】
幾つかの実施形態によれば、治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質としては、限定はしないが、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、上皮小体ホルモン、成長ホルモン、骨形成蛋白質、エリスロポエチン、ヘモポイエチン成長因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、凝固因子、抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、プラスミノーゲン活性化因子、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、プロレラキシン、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、ホルモン受容体、成長因子受容体、インテグリン、蛋白質A、蛋白質D、リウマチ因子、神経栄養因子、CD蛋白質、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン(IL)、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜蛋白質、崩壊促進因子、ウィルス抗原、輸送蛋白質、ホーミング受容体、アドレッシン、調節蛋白質、それらの類縁体、誘導体及び断片が挙げられる。
【0027】
幾つかの代表的な実施形態によれば、治療剤は、ヒト成長ホルモン(hGH)又はヒトインスリンである。本発明の原理によれば、薬物貯留層を含むパッチは、2種以上の治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質を含むことができることを認識すべきである。マイクロチャネル発生の結果、浸出液は、マイクロチャネルを介して薬物貯留層に拡散し、したがってポリマーマトリックスから活性薬剤を放出し、マイクロチャネルを介して体循環に活性薬剤を送達することも理解されるであろう。
【0028】
他の実施形態によれば、薬物貯留層は、乾燥形態、半乾燥形態、ヒドロゲル、液体形態、及び活性薬剤を保持する安定性及び/又は能力などのポリマーの性質が維持される当業界に知られた任意の他の形態から選択される形態で製剤化できる。幾つかの代表的な実施形態によれば、薬物貯留層は、薄膜又はヒドロゲルの形態で製剤化される。
【0029】
さらなる実施形態によれば、治療用又は免疫原性薬剤を含む本発明の医薬組成物は、薄膜形成、ヒドロゲル形成、又はポリマーの任意の他の形態前にバイオポリマー又は親水性合成ポリマーの溶液と混合することができる。或いは又はさらに、治療用又は免疫原性薬剤を含む医薬組成物は、薄膜形成、ヒドロゲル形成、又はポリマーの任意の他の形態に続いて添加できる。幾つかの代表的な実施形態によれば、hGH溶液又はヒトインスリン溶液は、コラーゲン又はカラゲナン薄膜形成前にコラーゲン溶液と混合される。
【0030】
幾つかの実施形態によれば、本発明のパッチは、以下の層、すなわち、バッキング層、接着剤、及び律速層の少なくとも1層をさらに含む。
【0031】
他の実施形態によれば、医薬組成物は、プロテアーゼ阻害剤、安定化剤、抗酸化剤、緩衝剤、及び保存剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む。
【0032】
もう1つの態様によれば、本発明は、少なくとも1層の薬物貯留層、ポリマーマトリックスを含む薬物貯留層及び本発明の原理による治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質を活性薬剤として含む医薬組成物を含む活性薬剤の経皮送達用パッチを提供する。
【0033】
本発明によるパッチは、その使用前にその薬物種の安定で、場合によっては微生物学的に制御された、無菌又は滅菌貯蔵に適合するようになされていれば、任意の好適な幾何学的配置であってよいことを認識すべきである。さらなる実施形態によれば、パッチは、以下の層、すなわち、バッキング層、接着剤、及び律速層の少なくとも1層をさらに含む。
【0034】
もう1つの態様によれば、本発明は、治療用又は免疫原性薬剤の持続性経皮送達の方法であって、
(a)対象の皮膚上の領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させるステップ、
(b)前記少なくとも1つのマイクロチャネルが存在する皮膚の領域にパッチを固定させるステップであって、前記パッチは少なくとも1層の薬物貯留層を含み、前記薬物貯留層はポリマーマトリックス及び治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含むステップ、及び
(c)前記治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質の治療血中濃度を、少なくとも6時間達成させるステップ
を含む方法を提供する。
【0035】
幾つかの実施形態によれば、対象の皮膚のマイクロチャネルの発生は、皮膚のアブレーション、好ましくは本明細書上記の技法及び装置により実施される。複数のマイクロチャネルを生じることが好ましい。
【0036】
他の実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、バイオポリマー、親水性合成ポリマー、それらの誘導体及び組合せから選択できる。幾つかの代表的実施形態によれば、バイオポリマーは、コラーゲン、アテロコラーゲン又はカラゲナンである。
【0037】
さらなる実施形態によれば、治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質は、成長因子、ホルモン、サイトカイン、水溶性薬物、抗原、抗体、それらの断片並びに類縁体からなる群から選択される。幾つかの代表的実施形態によれば、治療的蛋白質は、ヒト成長ホルモン又はヒトインスリンである。
【0038】
さらなる実施形態によれば、治療用又は免疫原性活性薬剤の治療血中濃度は、少なくとも8時間維持される。治療血中濃度は、少なくとも10時間維持されることが好ましい。本明細書の下記の実施例に開示されるように、皮膚マイクロチャネルを発生させたラット又はモルモットの皮膚の領域に、200μgの用量でコラーゲン薄膜及びhGHを含むパッチを貼り付けると、約10時間10〜50ng/mlのhGH血中濃度が達成された。モルモットにおいてポリマーマトリックスは含まないが、hGHの乾燥組成物を含む印刷されたパッチと共に本発明の装置を用いて同一用量のhGHを経皮的に投与すると、同様のhGH血中濃度は、約5時間だけ維持されたことが理解されるであろう。このように、本発明のシステムは、活性薬剤の持続的且つ長時間送達を提供する。
【0039】
本発明は、以下の図面及びそれらの好ましい実施形態の詳細な説明からより十分に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、マイクロチャネルを発生させた処理済の皮膚を介して親水性活性薬剤、特に親水性高分子量ポリペプチド又は蛋白質を送達するシステムと方法を提供する。
【0041】
マイクロチャネルを発生させる装置によって前処理された皮膚の領域上に置かれた場合、親水性ポリマー又は蛋白質及び活性薬剤を含むポリマー薬物貯留層を含むパッチの使用は、親水性ポリマーマトリックスは含まないが、同一の活性薬剤を含む乾燥又は凍結乾燥組成物を含む医療用パッチと比較して、活性薬剤の経皮送達を延長し、改善することを本明細書に開示している。さらに、本発明の原理によるパッチは、送達が皮下注射された場合の同一活性薬剤の同一用量の送達と比較した場合、活性薬剤の送達を延長する。したがって、本発明は、親水性高分子量蛋白質の持続的且つ緩徐な送達に関する高効率的システムと方法を提供する。
【0042】
親水性ポリマー及び治療有効量を含むパッチは、経皮送達を通して活性薬剤の安定性と活性を維持し、したがって、有意に長時間にわたって治療血中濃度を維持し、皮下注射によって得られたものと比較して治療効果の延長を達成することも開示されている。
【0043】
本明細書及び請求項の文脈に用いられる用語の「マイクロチャネル」とは、角質層の全て又は重要な部分を介して皮膚表面から一般に伸び、表皮又は真皮に到達できる親水性経路を称し、それを介して分子が拡散できる。ミクロチャネルが角質層に生じた後、装置は皮膚から取り外され、その後、活性薬剤は皮膚上に置かれたパッチから体循環中に送達されることを認識すべきである。
【0044】
本発明は、以下の米国特許第6,148,232号;米国特許第5,983,135号;米国特許第6,597,946号;米国特許第6,611,706号;米国特許第6,708,060号;及びWO第2004/039428号の1つ又は複数に開示されており、それらの内容は、本明細書に記載されているように参照として組み込まれているViaDerm又はMicroDermと称される装置を含み、電流又はスパーク発生により、好ましくは高周波(RF)で角質層のアブレーションを誘導することによってマイクロチャネルを発生させる装置と技法が組み込まれている。しかしながら、本発明の幾つかの好ましい実施形態は、Viadermによる皮膚をアブレーションすることによって得られた経皮送達に関するが、対象の皮膚にチャネルを発生させるために当業界に知られた実質的に任意の方法が使用できる(例えば、米国特許第5,885,211号;米国特許第6,022,316号;米国特許第6,142,939号及び米国特許第6,173,202号を参照)。
【0045】
マイクロチャネルの性質は水性であるので、したがって、本発明のシステムは、角質層のアブレーションによって生じる新たな皮膚環境を介した親水性高分子の送達に大いに好適である。
【0046】
用語の「活性薬剤」及び「治療用又は免疫原性薬剤」は、生物(ヒト又は動物)に投与される場合に、全身作用による所望の治療効果を誘導する化合物を称して本明細書中互換的に用いられる。
【0047】
本発明によれば、本発明のシステムは、ペプチド、ポリペプチド、及び蛋白質の経皮送達に好適である。
【0048】
「ペプチド」とは、モノマーがアミド結合を介して一緒に結合しているアミノ酸であるポリマーを称す。「ペプチド」は、一般に蛋白質よりも小さく、典型的には全部で30〜50のアミノ酸以下である。
【0049】
「ポリペプチド」とは、アミノ酸、一般に50個以上のアミノ酸の単一ポリマーを称す。
【0050】
本明細書に用いられる「蛋白質」とは、アミノ酸、典型的に50個以上のアミノ酸のポリマーを称す。本発明において活性薬剤として用いることができるペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質は、天然のペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質、修飾された天然のペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質、或いは天然のペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質と同一であっても、又はそうでなくてもよい化学的に合成されたペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質であり得る。ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質の誘導体、類縁体及び断片は、それらが治療用又は免疫原性効果を保持している限り本発明に包含される。
【0051】
一態様によれば、本発明は、対象の皮膚上の領域において少なくとも1つのマイクロチャネルを発生できる装置、及び少なくとも1層の薬物貯留層を含むパッチを含む、対象の皮膚を介した活性薬剤の経皮送達を促進するシステムであって、前記薬物貯留層はポリマーマトリックス及び活性薬剤として治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含む医薬組成物を含むシステムを提供する。
【0052】
本発明の原理と関連する使用に好適な活性薬剤としては、限定はしないが、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1及びインスリン様成長因子−2、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、上皮小体ホルモン、成長ホルモン、骨形成蛋白質、エリスロポエチン、ヘモポイエチン成長因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、因子VIIIC、因子IX、組織因子、及びフォンウィルブランド因子などの凝固因子、蛋白質Cなどの抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、ウロキナーゼ又は組織タイププラスミノーゲン活性化因子などのプラスミノーゲン活性化因子、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、ミュラー抑制剤、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、プロレラキシン、Dナーゼ、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、ホルモン又は成長因子の受容体、インテグリン、蛋白質A又は蛋白質D、リウマチ因子、骨由来神経栄養因子(BDNF)、神経栄養3、4、5及び6(NT−3、NT−4、NT−5、又はNT−6)などの神経栄養因子、CD−3、CD−4、CD−8、及びCD−19などのCD蛋白質、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン−アルファ、−ベータ、及び−ガンマなどのインターフェロン、コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−−CSF、及びG−CSF、インターロイキン(IL)、例えば、IL−1からIL−10まで、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜蛋白質、崩壊促進因子、例えば、AIDS外膜の一部などのウィルス抗原、輸送蛋白質、ホーミング受容体、アドレッシン、調節蛋白質、抗体、上記に掲げた任意のポリペプチドの類縁体、及び断片など、治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、及び水溶性薬物が挙げられる。
【0053】
本明細書に用いられる用語の「類縁体」とは、天然ペプチド、ポリペプチド、蛋白質のアミノ酸置換、付加、削除、又は化学修飾により改変された配列を含むペプチド、ポリペプチド又は蛋白質を称す。「アミノ酸置換」を用いることにより、機能的に等しいアミノ酸残基を、沈黙変化をもたらす配列内の残基に置換されることを意味する。例えば、配列内の1つ又は複数のアミノ酸残基を、沈黙変化をもたらす官能基等価体として働く同様の極性の別のアミノ酸により置換できる。配列内のアミノ酸置換基は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択できる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンが挙げられる。極性の中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが挙げられる。陽電荷(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン及びヒスチジンが挙げられる。陰電荷(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。このような置換は、保存的置換として知られている。さらに、非保存的置換は、ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質の生物学的活性に寄与しないアミノ酸において実施し得る。
【0054】
本発明によれば、パッチは、活性薬剤が埋め込まれるか、又は非共有結合される少なくとも1層の薬物貯留層を含む。種々のポリマーは、薬物貯留層を形成するために使用でき、バイオポリマー及び親水性合成ポリマーを挙げることができる。
【0055】
本発明により用いることができるバイオポリマーとしては、限定はしないが、多糖類、特に例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、キチン及び/又はキトサン、アルギネート;コラーゲン;デラチン;ペクチン;グリコサミノグリカン(GAG);プロテオグリカン;フィブロネクチン;カラゲナン;及びラミニンが挙げられる(例えば、米国特許第5,418,222号;米国特許第5,510,418号;米国特許第5,512,301号;米国特許第5,681,568号;米国特許第6,596,293号;米国特許第6,565,879号及びそれらの中の引用文献及びCurr.Pharm.Biotechnol.、2003年、4(5):283〜302頁;Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.、2001年、18(5):459〜501頁;Eur.J.Pharm.Sci.2001年、14(3):201〜7頁;Adv.Drug Deliv.Rev.、2001年、51(1〜3):81〜96頁;及びInt.J.Pharm.2001年、221(1〜2):1〜22頁を参照)。
【0056】
本明細書の下記に開示された代表的な実施形態によれば、薬物貯留層は、溶解性コラーゲンの溶液から製造することができる。溶解性コラーゲンは、400,000未満の平均分子量を有し、好ましくは約300,000の分子量を有するコラーゲンである。溶解性コラーゲンの好ましい特性の1つは、最少量架橋、すなわち0.5%以下を有することである。特に好適な溶解性コラーゲンは、Vitrogen(登録商標)(Cohesion Technologies社、カリフォルニア州パロアルト所在)である。コラーゲンの他の形体、すなわちコラーゲンのアテロペプチド形体はまた、本発明に使用できることが理解されるであろう。アテロペプチドコラーゲンは、免疫原性を伴うことが多い精製コラーゲンの一端に配置されているペプチドであるテロペプチドがないコラーゲンである。コラーゲンのテロペプチド形体の溶液は、有機酸を用いる加水分解によりコラーゲンのアテロペプチド形に変換できる。
【0057】
一般に、バイオポリマーは、活性薬剤と結合できる荷電されているか、又は高度極性基を有する。該バイオポリマーは、選択された活性薬剤に対してその結合親和性を変えるために化学的に修飾して活性薬剤への結合親和性を改善できる。しかしながら、本発明の原理によれば、ポリマーマトリックスは、必ずしも活性薬剤と結合しない。活性薬剤は、ポリマーマトリックスに対して埋め込まれるか、又は非共有結合されて薬物貯留層を形成できる。
【0058】
本発明により使用できる親水性合成ポリマーとしては、限定はしないが、ポリグリコール酸(PGA)ポリマー、ポリ乳酸(PLA)ポリマー、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、例えば、ジイソシアネート/ポリグリコール及びグリコールがポリエチレングリコールであるグリコール結合に基づくポリウレタン、並びに当業界に知られている他の親水性合成ポリマーなど、生分解性及び非分解性ポリマーが挙げられる。薬物貯留層を形成するために、バイオポリマーが親水性合成ポリマーと共役している化学結合体は、本発明に包含されていることも当業者にとって認識されるべきである。例えば、米国特許第5,510,418号は、親水性合成ポリマーに化学的に共役された化学的誘導GAG類を含む生体適合性結合体を開示している。したがって、親水性合成ポリマーに共役結合されたGAGを含む結合体は、コラーゲンなどの別のバイオポリマーにさらに結合して三成分の結合体を形成できる。本発明のポリマー物質は、架橋が可能であるが、架橋する必要はない。
【0059】
典型的に、薬物貯留層の数は、所望の放出特性により決定される。一般に、層の数が増すと活性薬剤の安定性並びに持続性が増すことになる。異なる層内の活性薬剤の濃度は異なっていてよく、また、異なる層の厚さは、同じである必要はない。さらに、薬物貯留層は、所望の治療用又は免疫原性効果を達成するために、1種又は複数種の活性薬剤を含むことができる。
【0060】
本発明の原理は、薬物貯留層の乾燥製剤、すなわち、コラーゲン及び活性薬剤を含有する薄膜により本明細書の下記に例示される。本明細書に十分に記載され、参照として組み込まれている米国特許第5,418,222号は、薬剤の制御放出に有用である単一及び複数のコラーゲン薄膜を開示している。しかしながら、薬物貯留層は、半乾燥形態、液体形態又はヒドロゲル形態で製剤化できることも認識すべきである。ヒドロゲルは、水を吸収するが、水に溶解しない高分子ネットワークである。すなわち、ヒドロゲルは、水吸収を提供する親水性官能基を含有するが、ヒドロゲルは、水性不溶性を引き起こす架橋ポリマーからなる。一般に、ヒドロゲルは、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、デキストラン、セルロース、アルギネート、キチン、キトサン、寒天、アガロース、カラゲナン、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(ポリ(HEMA))、それらのコポリマー又は混合物などの親水性、好ましくは架橋ポリマーからなる。さらに、活性薬剤の安定性及び保持のポリマー特徴を維持する任意の他の製剤もまた考え得る。
【0061】
典型的に、身体皮膚と密接な接触を呈するために薄く、可撓性で整合している薄膜内に製剤化されたものなどの薬物貯留層を水和でき、また、薬剤の治療有効な経皮流量を達成するのに十分な率で貯留層から活性薬剤を放出できる。本発明の装置は、浸出液が放出される親水性マイクロチャネルを生じるので、これらの浸出液は、薬物貯留層内に含まれた薬物を放出する。
【0062】
本発明によれば、パッチは、通常細孔膜である1層又は複数層の律速層を含むことができる。この律速層は、バイオポリマー及び/又は合成ポリマーを含む。この律速層は、活性薬剤を欠いている。律速層を形成するために有用な代表的な材料としては、限定はしないが、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン−エタクリレートコポリマー、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、エチレン−ビニルメチルアセテートコポリマー、エチレン−ビニルエチルアセテートコポリマー、エチレン−ビニルプロピルアセテートコポリマー、ポリイソプレン、ポリアクリロニトリル、エチレン−プロピレンコポリマー、セルロースアセテート及びセルロースナイトレート、ポリテトラフルオロエチレン(「Teflon(登録商標)」)、ポリカーボネート、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリスルホンなどが挙げられる。
【0063】
種々の層は、当業界に知られた任意の方法により互いに接触する。1つのこのような方法は、互いに隣接して各層を配置し、一緒にこの層を押し付けるために層の外側に圧をかけることである。別の方法は、各層を配置する前に水などの溶媒により各層の表面をコーティングして接触させることである。この方法において、各表面の薄い部分は、可溶性になることにより接触の際に接着性を生じる。別の方法は、1つ又は複数の接触面に知られた接着剤を使用することである。該接着剤は、薬物貯留層からの活性薬剤送達を妨害しないものが好ましい。
【0064】
本発明によれば、パッチは、活性薬剤を投与するために用いられ、その場合、活性薬剤は、1層又は複数層の薬物貯留層に存在する。薬物貯留層は、それ自体接着性があるか、又は薬物貯留層に接着した接着層をさらに含むことができる。パッチは、さらにバッキング層を含むことができる。
【0065】
典型的に、バッキング層は、経皮システムの主要な構造的要素として機能し、可撓性を提供し、好ましくは閉塞性を提供する。バッキング層に用いられる材料は、不活性であり、薬物貯留層内に含まれている活性薬剤又は医薬組成物のいずれの成分をも吸収してはならない。バッキング層は、パッチの上面を通る透過による活性薬剤の損失を防ぐための保護カバーとして役立つ可撓性のエラストマー材料を含むことが好ましく、パッチによって覆われた体表面の領域が使用中に水和されるように該システムにある程度の閉塞性を与えることが好ましい。バッキング層に用いられる材料は、装置が皮膚の形状に従うことができ、皮膚及び装置の可撓性又は弾性における相違のため、皮膚から装置が離れる可能性が殆どないか、又は離れないように、機械的歪みに正常に供されるジョイント又は他のたわみ点などにおいて皮膚の領域に快適に装着されるべきである。バッキング層に有用な材料の例は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエーテルアミドなどである。
【0066】
使用前の貯蔵中、パッチはアブレーションライナーを含むことができる。使用直前に、この層は、パッチが皮膚に貼り付けできるように取り外される。アブレーションライナーは、薬物又は活性薬剤の不透過性材料から作製すべきであり、適用前のパッチを保護するのみに役立つ使い捨て要素である。
【0067】
本発明の原理によれば、医薬組成物は製薬的に許容できる担体を含む。
【0068】
用語の「製薬的に許容できる」とは、連邦政府又は州政府の規制当局により認可されたもの、或いは動物、特にヒトへの使用のため米国薬局方又は他の一般的に認識された薬局方に掲げられたものを意味する。用語の「担体」とは、治療剤と共に投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は媒体を称す。担体は、組成物に好適な整合性又は形態を付与するように医薬組成物に添加される場合、多かれ少なかれ不活性物質である。
【0069】
本明細書に用いられる「製薬的に許容できる担体」は、水性又は非水性溶液、懸濁液、又は乳液であってもよい。水性担体の例としては、水、生理食塩水及び緩衝媒体、アルコール性/水性溶液、乳液又は懸濁液が挙げられる。
【0070】
医薬組成物の所望の特性を最適化するために、種々の添加物を医薬組成物に場合によっては含んでもよい。したがって、活性薬剤の安定性を改善するために、好適な安定化剤を加えることができる。好適な安定化剤としては、限定はしないが、大部分の糖類、好ましくはマンニトール、乳糖、ショ糖、トレハロース、及びグルコースが挙げられる。水分吸収を改善するために、その上さらに吸湿性添加物を加えてもよい。使用される特定の活性薬剤と適合できるpHを生じさせるために、好適な緩衝液を使用できる。好適な緩衝液としては、酢酸、リン酸又はクエン酸緩衝液など、大部分が一般に知られて利用されている生物学的緩衝液が挙げられる。適合できるpHは、活性薬剤の安定性を維持し、その治療効果を最適にし、又はその分解に対して保護するものである。好適なpHは、一般に約3から約8まで、好ましくは約5から約8までであり、好適なpHは、約7.0から約7.5までのほぼ中性のpHが最も好ましい。さらにその上、プロテアーゼ阻害剤、抗酸化剤、及び保存剤を、単独又は組み合わせて添加できる。
【0071】
活性薬剤を含む医薬組成物は、薄膜形成、ヒドロゲル形成、又は薬物貯留層の任意の他の製剤化時にバイオポリマー又は親水性合成ポリマーの溶液中に組み込まれてもよいか、或いは活性薬剤を含む医薬組成物は、薄膜、ヒドロゲル形成又はポリマーマトリックスの他の製剤化に続いて添加されてもよい。代表的な実施形態において現在、hGH又はヒトインスリン溶液の各々は、コラーゲン薄膜形成時にコラーゲン溶液に添加された。一般に、薬物溶液又は薬物/ポリマー溶液は、薄膜又はヒドロゲル形成後に乾燥することが可能である。乾燥時間は、乾燥温度によって変わる。好適な温度は、約15℃から37℃までである。
【0072】
所望の血清中濃度を提供するために必要な治療用又は免疫原性薬剤量は、本明細書の下記の方法及び当業界に知られた方法により決定できる。したがって、1パッチ当たりの医薬組成物中の治療用又は免疫原性薬剤量は、所望の治療効果を達成するために変わり得る。
【0073】
活性薬剤の経皮送達を増強させる装置及び方法
本発明のシステムは、活性薬剤の経皮送達を増強させる装置を含む。本発明の原理によれば、該装置は、それを介して活性薬剤が効率的に送達される新たな皮膚環境を発生させるために用いられる。
【0074】
本明細書に用いられている用語の「新たな皮膚環境」は、本発明の装置を用いて、角質層のアブレーション及び少なくとも1つのマイクロチャネルの形成により発生した皮膚の領域を意味する。
【0075】
本明細書に完全に記載されているかのように、参照として組み込まれているAvrahamの米国特許第6,148,232号は、対象の皮膚のそれぞれの点に電極を適用し、2つ以上の電極間に電気的エネルギーを加えて、抵抗加熱、及びそれぞれの点の主に中間領域に、角質層の引き続くアブレーションを生じさせる装置を開示している。電極の間隔空け、隣接電極間の皮膚電気抵抗のモニタリングなど、角質層に対するアブレーションを制限するための種々の方法が記載されている。米国特許第6,148,232号に開示されたタイプの経皮薬物送達及び検体抽出のための装置、及び本明細書に完全に記載されているかのように、参照として組み込まれている米国特許第5,983,135号、第6,597,946号、第6,611,706号、第6,708,060号に開示されているものなど、前記発明に対する種々の変更は本発明に包含される。
【0076】
幾つかの実施形態によれば、治療用又は免疫原性薬剤の経皮送達を増強させる装置は、複数の電極を含む任意に取り外し可能な電極カートリッジ、及び主要ユニットを含み、前記電極カートリッジを装填した主要ユニットもまた、本明細書においてViaDermと呼ぶ。
【0077】
制御ユニットは、電極カートリッジが皮膚の近傍にある場合、典型的には、電流又は1つ又は複数のスパークを発生させることにより電極に電気的エネルギーを加えるようになされている。電極アレイ内の各電極における電気的エネルギーは、電極下の領域における角質層のアブレーションを引き起こし、それによって、少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させる。電気的エネルギーは高周波(RF)であることが好ましい。
【0078】
電流又はスパークの発生を制御し、その結果、生じるマイクロチャネルの大きさ及び形状を制御するために、制御ユニットは、電極に送達される電気的エネルギーの大きさ、回数、及び/又は持続時間を制御することのできる回路を含む。典型的には、電極カートリッジは1回使用後に廃棄され、そのため、主要ユニットへの取り付け及び該ユニットからの引き続いての取り外しが容易であるようにデザインされる。
【0079】
カートリッジ及びその結合電極の汚染の機会を最少化するために、カートリッジの取り付け及び取り外しは、使用者の身体がカートリッジに触れずに行われる。カートリッジは、滅菌カートリッジホルダー内に密封され、使用直前に開き、それからカートリッジを主要ユニットに固定する仕組みを係合させるために、主要ユニットをカートリッジの上面に接触させることが好ましい。使用者がカートリッジに触れる必要のないカートリッジのアンロッキング及び取り出しの簡便な手段もまた提供される。
【0080】
場合によっては、パッチを、皮膚の治療領域の上に正確に置くことができるように、電極カートリッジは、マイクロチャネルができた皮膚の領域をマークする手段をさらに含む。マイクロチャネルの発生は(Avrahamiらの上記で引用した米国特許及び本特許出願の譲受人に譲渡された特許出願に記載された方法に従って実施した場合)、典型的に発生する多数のマイクロチャネルであっても、新たな皮膚環境に対して感知できる刺激には関係ないため、一般に、肉眼で見えるマークを残さない。
【0081】
本発明の幾つかの実施形態による他の適用では、マイクロチャネルは、パッチの適用と別に、又は同時に発生させ得る。他の適用の中でも、該システムは接着性の切り抜きテンプレートを含み、前記切り抜きテンプレートは、皮膚上に配置され、該テンプレートを通して露出した皮膚の領域を治療するために、該テンプレートを通してカートリッジが配置される。本発明の実施形態によって、パッチに含有される活性薬剤はテンプレートに取り付けられ、それが皮膚の治療領域にわたって配置される。これらの適用において、保護バッキング層を除去後、パッチのテンプレート部分を皮膚に配置し、接着剤で固定する。次いで、電極カートリッジをハンドルに取り付け、該カートリッジをテンプレート内側の皮膚の領域に対して配置するために、使用者は該ハンドルを握り、電極に電流を流して皮膚を処置する。その後、カートリッジは廃棄される。次いで、皮膚の治療領域にわたってパッチを同時に引き上げて配置するように、カバーから出ているタブを引っ張ることによって保護カバーをパッチから取り除く。テンプレートとパッチを単一のユニットに組み込むことで、使用者がパッチを正確に皮膚の治療領域に配置することを助ける点が注目される。この様式で本発明のシステムを利用することが、非感染適用のため有利となる。
【0082】
さらに他の適用では、本特許発明の出願人に譲渡され、本明細書に記載されたかのように、参照として組み込まれている米国特許第6,611,706号に開示された実用的装置を提供するために、組み込み型の電極/薬剤添加パッドカートリッジが使用される。これらの適用において、該カートリッジは、電極アレイ、制御ユニット及び薬剤添加パッドを含む。したがって、典型的には、テンプレートは必要ない。使用者が電極を皮膚に配置すると、電極内の電流又はスパーク形成の開始及び引き続いてのマイクロチャネルの形成にとっては、この接触で十分である。電極が皮膚に配置されると、薬剤添加パッドの底部と結合している接着剤ストリップが皮膚に接触して粘着する。ハンドルに固定された電極領域を皮膚から取り外すと、上部カバーが薬剤添加パッドから除去され、パッドが同時に皮膚の治療領域に折り重なるように、薬剤添加マトリックス上の上部カバーがカートリッジの電極領域に結合する。このタイプの適用により、使用者が電極カートリッジ又は薬剤添加パッドのいずれの部分にも触れる必要性がなくなり、したがって、使用者が該装置を汚染させる可能性が実質的に減少するか又はなくなる。
【0083】
幾つかの実施形態によれば、細胞を加熱することによって角質層をアブレーションさせるために、皮膚に電流を印加する。他の実施形態によれば、フィードバックの一形態として、スパークの発生、スパーク発生の停止、又は特定の電流レベルを使用でき、これは、所望の深さに達すると電流の印加が中止されるべきであることを示している。これらの適用では、電極は所望の深さまで角質層及び表皮のアブレーションを促進するが、その深さを超えては促進しない導電性のカートリッジ内に形状化され及び/又は支持されていることが好ましい。或いは、スパークの発生無しで角質層をアブレーションするように電流を設定できる。
【0084】
本発明の一般的に好ましい実施形態は、典型的には、本発明の出願人に譲渡され、本明細書に記載されたかのように、参照として組み込まれている「経皮薬物送達及び検体抽出のための単極及び二極電流印加(Monopolar and bipolar current application for transdermal drug delivery and analyte extraction)」という標題の米国特許第6,611,706号に記載された方法及び装置を組み込んでいる。例えば、米国特許第6,611,706号は、皮膚に接触させて、又はそれから約500ミクロンまでの距離にアブレーション電極を維持することを記載している。したがって、本明細書及び請求項を通して用いられている用語の皮膚の「近傍に」は、電極から皮膚表面までの0ミクロンから約500ミクロンの距離を含む。該適用はさらに、約10kHzと4000kHとの間、好ましくは約10kHと500kHとの間の周波数を有する電場を印加することによる角質層のスパーク誘導アブレーションを記載している。
【0085】
或いは又はそれに加えて、本発明の好ましい実施形態は、本明細書に記載されたかのように、参照として組み込まれている「経皮薬物送達及び検体抽出のための手持型装置及び方法(Handheld apparatus and method for transdermal drug delivery and analyte extraction)」という標題の米国特許第6,708,060号に記載された方法及び装置を組み込んでいる。
【0086】
本発明の幾つかの実施形態によれば、該カートリッジは、カートリッジの下の皮膚の領域に高マイクロチャネル密度を発生させるために一緒に作用する電極のアレイ、好ましくは、間隔の密な電極を支持している。しかし典型的には、角質層に発生したマイクロチャネルの全体面積は、電極アレイに覆われた全体面積に比べて狭い。
【0087】
本発明の他の実施形態によれば、電極アレイから皮膚へと通る電流にとっての帰路として、カートリッジの皮膚接触面を用いることにより、同心性電極セットが形成される。該カートリッジは、比較的広い皮膚との接触面面積を有し、その結果、カートリッジの近くの皮膚に比較的低い電流密度が生じ、したがって、接触面における皮膚に有意な加熱又は実質的な損傷を生じさせないことが好ましい。
【0088】
それと対照的に、電極アレイにおける各電極の近位では、高エネルギー印加電場が典型的に極めて急速な加熱及び角質層のアブレーションを誘導する。
【0089】
本発明はまた、本発明の原理に従った経皮送達システムを用いて、活性薬剤を持続送達する方法を提供する。典型的には、新たな皮膚環境を形成する方法は、皮膚の上に、少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させるための装置を配置するステップを含む。マイクロチャネルを発生させる前に、処置部位を滅菌アルコールパッドでふき取ることが好ましい。前記部位は処置前に乾燥させておくことがより好ましい。
【0090】
本発明のある例示的な実施形態によれば、マイクロチャネルを発生させるために用いられるタイプの装置は、米国特許第6,148,232号及び米国特許第6,708,060号に開示されている。電極アレイを含有する装置は、処置部位に置かれ、このアレイはRFエネルギーによりエネルギーが与えられ、処置が開始する。原理的に、アブレーション及びマイクロチャネルの発生は、数秒以内で完了する。マイクロチャネルを、制限された深さ、好ましくは角質層及び表皮の限定された深さで発生させた後、この装置は取り外される。本発明の原理によるパッチは、新たな皮膚環境に付着される。
【0091】
本発明は、治療用又は免疫原性薬剤の持続性経皮送達の方法を提供し、この方法は、
(i)対象の皮膚上の領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させるステップ、
(ii)前記少なくとも1つのマイクロチャネルが存在する皮膚の領域にパッチを固定させるステップであって、前記パッチは少なくとも1層の薬物貯留層を含み、前記薬物貯留層はポリマーマトリックス及び治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含むステップ、及び
(iii)前記ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質の治療的血中濃度を、少なくとも6時間達成させるステップ
を含む。
【0092】
本明細書に定義される「治療有効血中濃度」とは、治療効果が生じる治療用又は免疫原性活性薬剤の濃度を意味する。
【0093】
用語の「治療的」とは、病的状態又は疾患に対して、対象の臨床病態の改善及び/又は全体又は部分的保護が含まれることを意味する。本発明は、有効成分として免疫原性薬剤を含むので、本明細書を通して用いられる用語の治療的なこととしては、例えば、細胞の免疫応答及び/又は体液免疫応答などの免疫応答の誘導が挙げられる。
【0094】
例示的な一実施形態によれば、活性薬剤はhGHである。本明細書の下記に開示されるように、ラット及びモルモットにおいて10ng/mlから50ng/mlまでの範囲でhGHの血中濃度は、200μgのhGHをコラーゲン薄膜で投与した場合、約2〜4時間以内に、約10時間得られた。対照的に、200μgのhGHをコラーゲン薄膜のない印刷パッチでモルモットに投与した場合、同様のhGHの血中濃度が、1時間以内に、5時間のみ得られた(本明細書中下記の実施例4を参照)。このように、本発明の原理による経皮送達方法は、hGHの持続的送達を提供する。
【0095】
他の例示的実施形態において、活性薬剤はヒトインスリンである。本発明によれば、本発明のシステムにより糖尿病ラットに経皮的に投与されたヒトインスリン(0.4IU)は、パッチ適用2.5時間後、血中グルコース濃度を正常化し、このような正常な濃度は、約9時間維持された(実施例7を参照)。対照的に、同じ用量でインスリンの皮下投与は、注射1時間後に糖尿病ラットにおいて血中グルコース濃度が減少し、正常な血中グルコース濃度は5時間維持した。このように、本発明による経皮送達は、治療効果が最高に達するインスリンの持続的送達を提供する。
【0096】
このように本発明は、ポリマー、好ましくはバイオポリマー又は親水性ポリマー又はそれらの組合せ内に含浸又は埋め込まれた、例えば、hGH又はヒトインスリンなどの治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質を含むパッチを包む。本発明の装置と共にこのようなパッチを使用すると、治療血中濃度が少なくとも6時間、好ましくは少なくとも8時間、より好ましくは少なくとも10時間達成される結果となる。
【0097】
さらに、治療用ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質の治療血中濃度は、対象の臨床状態によって判断される。例えば、インスリンの治療血中濃度は、糖尿病対象の血中グルコース濃度によって判断される。また、hGHの治療血中濃度は、小児における成長速度又は成人におけるIGF−1の血中濃度によって判断される。したがって、対象の臨床状態に基づいて、臨床医は、当業界に知られた活性薬剤の治療的濃度を判断すると考えられる。同様に、治療期間又は治療薬剤に対する曝露期間は、治療を受ける疾患、並びに性別、年齢、及び患者の全身状態など二次的因子を考慮して臨床医により判断される。
【0098】
ここに本発明を一般的に説明したが、例示として提供され、本発明を限定する意図がない、以下の実施例を参照にするとさらに容易に同じことが理解されるであろう。
【実施例】
【0099】
(実施例1)
hGH−コラーゲン薄膜ベースパッチの調製
本実施例に用いられるコラーゲンは、Vitrogen(登録商標)100(3mg/ml、Cohesion Technologies社、米国カリフォルニア州パロアルト)であった。ヒト成長ホルモンは、Genotropin(登録商標)(5.3mg/16IU、Pharmacia and Upjohn、スウェーデン国ストックホルム)であった。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、Biological Industries(イスラエル国、Kibbutz Beit Haemak)から入手した。
【0100】
コラーゲンパッチの幾つかは、以下のものから構成されていた:接着剤(National−Starch Duro−Tak 387−251;オランダ国Zutphen)でコーティングされ、有孔SIL−Kシリコンストリップ25ミル(Dgania Silicone、イスラエル国Dgania)で覆われ、1.4cm2の開口側のバッキングライナーBLF2080 3ミル(Dow film)、及びアブレーションライナーRexam 78CD(Rexam社、米国イリノイ州ベッドフォードパーク)。
【0101】
コラーゲン(Vitrogen(登録商標))溶液を、コラーゲン:PBS×10:NaOHをそれぞれ8:1:1の体積比でPBS×10及びNaOH 0.1Mと静かに混合した。所望の量のhGHを、14mg/mlの保存溶液から加えた。最終体積が300〜400μlのコラーゲン−hGH溶液を、パッチテンプレートに注ぎ、ゲル化が生じるまで37℃で30分間置いた。次に、パッチを風乾し、パラフィンでカバーし、ラミネートバッグ、シリカゲル及びアルゴンと共に包装した。パッチは、使用されるまで4℃に維持した。
【0102】
(実施例2)
コラーゲン薄膜ベースパッチパッチからhGHの回収
コラーゲン薄膜中のヒトGH含量は、PBS溶液に対するhGHの抽出及びゲルろ過HPLC(Phenomenex SEC、250x4.6mm、Phenomenex)を用いる定量的分析により決定された。コラーゲン薄膜からhGHの回収は、表1に要約されている。
【0103】
【表1】
300ミリグラムのhGHを、各パッチ上に装填した。回収結果は、3つの実験の平均値±SDである。表1に示されるように、最初の量の90%以上が、5分以内で薄膜から抽出された。接着剤群内の変化はより高かったが、コラーゲンを接着剤に直接注ぐ場合、又はバッキングライナーに注ぐ場合において抽出量に有意差はなかった。
【0104】
放出動態を試験するために、コラーゲン薄膜をPBS(2ml)に懸濁し、室温でインキュベーションした。種々の時点で、緩衝液を新鮮な緩衝液と交換し、hGH量をゲルろ過HPLCにより分析した。
【0105】
Vitrogen(登録商標)タイプのコラーゲンは、1時間以内でhGHの大部分を放出された。ViaDerm処置の皮膚を介してコラーゲン−hGHからhGHの放出を次の実験で調べた。
【0106】
(実施例3)
皮膚を介するhGHのin vitro透過性試験
ブタ皮膚を介するhGHの透過性は、Franz分散細胞系(社内製)によりin vitroで測定した。分散領域は2cm3であった。皮膚切断された(300〜500μm、Electric Dermatom、Padgett Instruments社、米国ミシガン州カンザス)ブタ皮膚を、屠殺白ブタ(Landres and Large Whiteの育種、イスラエル国Kibbutz Lahav地域で飼育)から切除された。経皮水分損失測定(TEWL、Dermalab Cortex Technology、デンマーク国Hadsund)を実施し、15g/m2/時間未満のTEWL濃度を有するものだけを、分散細胞に乗せた。
【0107】
必要な量のhGHで印刷パッチを調製するために、各液滴の体積を、溶液中のhGHの濃度に従って算出し、それに応じて1液滴当たりの印刷を必要とするシリンジプランジャーの置き換えを調整し、0.035〜0.105mmの範囲は0.09〜0.18μlに相当する。この置き換え範囲は、印刷をコントロールする基本プログラムに送り込まれた。次にバッキング薄膜層(DOW BLF2080(商標)、The Dow Chemical社、米国ミシガン州)を、平らな金属ブロック上に明るい側を上にして平らに置いた。hGH溶液を含有するシリンジを、XYZ投与機に乗せてから、バッキングライナー上に測定したhGH液滴を乗せた。数分以内に液滴は連続的に乾燥し始めたことに注意すべきである。印刷液滴の144ドットアレイが形成されたら、新たなアレイの印刷を新しい位置で開始した。この方法によれば、5.5×1.6インチのバッキングライナー上に6アレイまで形成することが可能であった。印刷された144ドットアレイの2×2cm2の切片を、密閉バイアル中4℃で維持した。
【0108】
皮膚マイクロチャネル化は、ViaDerm(商標)装置を用いて実施した(内容が、本明細書に完全に記載されているかのように、参照として組み込まれている米国特許第6,148,232号、WO2004/039428及びそれらの中の引用文献、Sintovら、J.Cont.Release 89、311〜320頁、2003年)。全ての試験に用いられた微小電極アレイの密度は、100/cm2であった。この装置を、各位置に2回適用し、それよってマイクロチャネルの密度は、200/cm2であった。皮膚は、330Vの印加電圧、100kHzの周波数、2回のバースト、700マイクロ秒のバースト長、及び電流制限のない条件で処理した。ViaDermの適用後、TEWLは、操作をコントロールするために再度測定した。
【0109】
皮膚片は、PBSで3回洗浄し、hGHが刷り込まれたパッチ又はhGHコラーゲン薄膜は、角質層側に置いた。次いで皮膚とパッチ又は薄膜を、角質層を上に向けて受容体細胞上に置き、ドナーチャンバは、その場にクランプで留めた。受容体細胞は、0.1%アジ化ナトリウム、(Merk、ドイツ国ダルムシュタット)、1%ウシ血清アルブミン(Biological Industries、イスラエル国Kibbutz Beit Haemak)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(50ml PBS当たり1個の錠剤、Complete Mini、Roch)を含んだリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で満たされた。受け器溶液からのサンプルを、20時間まで予め決められた時間でチューブに採取した。サンプルは、分析されるまで4℃に維持した。hGH分析は、ELIZAキット(DSL−10−1900、Diagnostic Systems Laboratories社、米国テキサス州ウェブスター)により実施した。
【0110】
結果
ViaDerm処理皮膚を介した印刷パッチ又はコラーゲン薄膜からhGHの累積透過性を図1に示す。図1に示されるように、hGH−コラーゲン薄膜ベースのパッチを用いるhGHの投与は、薄膜又は印刷パッチ投与1時間後のhGH印刷パッチにより得られたものと比較して、より低いhGH透過性を生じた。これらの結果、遅延送達は、hGH−コラーゲン薄膜ベースパッチを用いると達成されることを示している。しかしながら、hGH−コラーゲン薄膜ベースのパッチを用いたhGHのより後の時間での投与は、時間の関数として累積hGH量の増加をもたらし、hGH投与20時間後の全透過性は、hGH印刷パッチよりもhGH−コラーゲン薄膜パッチの方が2倍高かった(図1)。hGH経皮流量値(1時間につき1cm2当たりの透過量)を図2に示す。hGH適用1時間後、印刷パッチからのhGHの流量は、コラーゲン薄膜により得られたものよりも6倍大きかった。しかしながら、3時間から20時間までの時点で、コラーゲン薄膜からのhGHの流量は、印刷パッチから見られたものよりも高かった。このin vitro結果は、hGHの持続的送達は、コラーゲン薄膜により達成できることを示唆している。
【0111】
(実施例4)
in vivoでのhGH経皮送達
オスのモルモット(500〜800グラム、Dunkin Hartley、Harlan laboratories社、イスラエル国)及びオスのラット(350〜400、Sprague Dawley、Harlan laboratories社、イスラエル国)に、10%ケタミン/2%キシラジン溶液の70:30の比率、1ml/kgのIP注射により予め投薬した。麻酔は、イソフルオラン又はハロタンガスのいずれかで維持した。腹部皮膚の毛を注意深く剃り、イソプロピルアルコールで清浄した。30分後、経皮水分損失測定(TEWL、Dermalab Cortex Technology、デンマーク国Hadsund)を実施して皮膚の統合性をチェックした。皮膚のマイクロチャネル化は、上記実施例3に記載された条件でViaDerm装置の使用により実施した。次にTEWLを、操作をコントロールするために再度測定した。処置された皮膚は、hGH印刷パッチ又はhGH−コラーゲン薄膜ベースパッチのいずかでカバーし、血液サンプルは、0.2、4、6、9、12及び15時間適用後に、モルモットでは予め挿入された頚動脈カニューレから、或いはラットの尾から採血した。
【0112】
結果
ViaDerm処理のモルモット皮膚を介するhGHの送達を図3に示す。コラーゲン中のhGH埋め込みは、印刷パッチと比較して持続的送達をもたらした。このin vivo知見は、in vitro結果と相関する。最大の送達は、コラーゲン薄膜では6時間後に、印刷パッチでは2時間後に得られた(図3)。さらに、hGHは、印刷パッチの投与9時間後には検出されなかったが、一方、コラーゲンベースパッチの同じ時間の投与後には有意な濃度が検出された(図3)。
【0113】
ViaDerm処理のモルモット皮膚又はラット皮膚を介するhGHの送達を図4に示す。図4に示されるように、hGHの送達延長は、ラットにも見られた。ラットにおける曲線プロファイルは、モルモットのものと同様であった。
【0114】
送達延長は、hGHの高用量(300μg)を投与した場合でも達成された(表2を参照)。
【0115】
【表2】
【0116】
表2に示されるように、同様のhGH血清中濃度は、ViaDerm及びパッチ適用6時間後に見られた(コラーゲン薄膜ベースパッチ及び印刷パッチに対し、それぞれ33.1±10.9及び42.6±9.7ng/ml、表2)。しかしながら、はるかにより高いhGH血清中濃度は、より遅い時点でコラーゲン群に見られた(コラーゲン薄膜ベースパッチ及び印刷パッチに対し、それぞれ17.7±6.8対4.9±5.1ng/ml、表2)。このように、in vivo結果は、放出延長プロファイルは、生体適合性コラーゲン薄膜の使用により達成できることを示している。
【0117】
(実施例5)
インスリン−コラーゲン薄膜ベースパッチの調製
インスリン−コラーゲン薄膜ベースパッチの調製のために、用いられるコラーゲンは、Vitrogen(登録商標)100(3mg/ml、Cohesion Technologies社、米国カリフォルニア州パロアルト)又はアテロコラーゲン(6.5%、Koken社、日本国東京)のいずれかであった。ヒト組換えインスリンHumolog(登録商標)(Lispro−100IU/ml)、Humulin N(登録商標)(NPH−100IU/ml)、及びHumulin U(登録商標)(Ultra Lente(UL)−100IU/ml)は、Lilly(Lilly France S.A.、フランス国Fegershein)から購入した。
【0118】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、Biological Industries(イスラエル国Kibbutz Beit Haemak)から入手した。
【0119】
コラーゲンパッチのテンプレートは、寸法が2.25cm2のバッキングライナー(BLF2080 3ミル、Dow film)から構成されていた。
【0120】
Vitrogen(登録商標)(コラーゲンA)溶液を、コラーゲン:PBS×10:NaOHをそれぞれ8:1:1の体積比でPBS×10及びNaOH 0.1Mと静かに混合した。所望の量のインスリンを、100IU/mlの保存溶液から加えた。最終体積が300〜320μlのコラーゲン−インスリン溶液を、パッチテンプレートに注ぎ、ゲル化が生じるまで37℃で60分間置いた。次に、パッチを風乾し、ラミネートバッグ、シリカゲル及びアルゴンで包装した。パッチは、使用されるまで4℃に維持した。
【0121】
アテロコラーゲン(コラーゲンB)を、4℃でインスリン含有PBSにより所望の濃度に希釈した。インスリンの量は、パッチ中の最終選択量に従って算出された。インスリンは、100IU/mlの保存溶液から希釈した。
【0122】
最終体積が300μlのアテロコラーゲン−インスリン溶液を、パッチテンプレートに注ぎ、風乾した。パッチを上記のとおり詰めて維持した。
【0123】
(実施例6)
経皮適用前後のインスリン−コラーゲンパッチ中のインスリン含量
ViaDerm Engineering Prototypeを使用した。全ての試験に用いられた微小電極アレイの直径は、80μmであり、密度は、75/cm2であった。ラットの皮膚は、330Vの印加電圧、100kHzの周波数、2回のバースト、700マイクロ秒のバースト長、及び電流制限のない条件で処理した。
【0124】
全てのコラーゲンパッチ中のインスリン含量は、PBS又はHCl 0.1N溶液(それぞれインスリン−lispro又はインスリン−NPH/ULに対して)に対するインスリンの抽出により決定され、逆相HPLC分析により定量化した。
【0125】
結果
経皮適用前後のコラーゲンパッチ中のインスリン含量分析の要約を表3に示す。
【0126】
【表3】
【0127】
表3に示されるように、高用量のパッチ(1.8IUのインスリンを投入)は、平均して1.5IUのインスリンを含有し、適用された最初の量の83%を構成する。低用量(LD)のパッチ(0.6IUのインスリンを投入)は、0.4IUのインスリンを含有し、適用された最初の量の67%を構成する。抽出されなかった最初のインスリン投入量の20〜30%は、コラーゲン又はアテロコラーゲンに結合していると考えられた。
【0128】
種々のコラーゲンパッチ内のインスリン含量の差異が、比較的小さかった(0〜7%の標準偏差;表3)ことに注意すべきである。インスリン経皮適用後のパッチ内に残ったインスリン残量は、コラーゲンパッチ内のインスリン量及び皮膚に置かれたパッチの適用時間と相関した。0.4IUのパッチを、皮膚に12.5時間置いたところ、インスリン残量がないことが判明した(表3)。1.5IUパッチは、LDパッチよりもほぼ4倍以上のインスリンを含有し、より短い時間(8〜10時間)皮膚に置かれた。これらパッチ内のインスリン残量は、アテロコラーゲンパッチ及びVitrogen(登録商標)パッチについて、それぞれインスリン投入量の約20%及び40%であることが判明した(表3)。
【0129】
これらの結果により、インスリンは、最大効力(インスリン投入の100%)でLDインスリン−コラーゲンから経皮的に送達できることを示している。このような送達は、インスリンがインスリン−コラーゲンパッチから送達される場合、幾らかより低くなり、インスリン含量はより高くなる(1.5IUインスリン)。しかしながら、パッチ適用時間を延長すると、より高い効力が得られると思われる。
【0130】
(実施例7)
糖尿病ラットにおけるコラーゲン薄膜に埋め込まれたインスリンの生物活性
オスのラット(300〜325、Sprague Dawley、Harlan laboratories社、イスラエル国)は、パッチ適用前に飼料を与えず、48時間水を自由に摂取させた。糖尿病を誘発するために、パッチ適用24時間前にラットにストレプトゾトシン(クエン酸緩衝液中55mg/kg、0.1M、pH4.5;Sigma、米国ミズーリ州セントルイス)をIP注射した。
【0131】
Keto−Diastix−Glucose及びKetones尿検査スティック、Glucometer(登録商標)、及び血糖値試験ストリップを用いた(Ascensia Elite、Bayer)。
【0132】
注射24時間後、グルコース濃度が300mg/dl超であり、陽性の尿中グルコース及び陰性の尿中ケトンが観察された場合に、ラットは、糖尿病として定義された。糖尿病ラットに、70:30の比の10%ケタミン/2%キシラジン溶液1ml/kgをIP注射した。麻酔は、イソフルオラン又はハロタンガスのいずれかで維持した。腹部皮膚の毛を注意深く剃り、イソプロピルアルコールで清浄した。30分後、経皮水分損失測定(TEWL、Dermalab Cortex Technology、デンマーク国Hadsund)を実施して皮膚の統合性をチェックした。皮膚のマイクロチャネル化は、実施例6に記載された条件でViaDerm装置の使用により実施した。次にTEWLを、操作をコントロールするために再度測定した。処置された皮膚は、種々のインスリン−コラーゲンパッチでカバーした。0.4IUの皮下(SC)注射を陽性対照とした。血液サンプルは、ラットの尾のチップから得、血中グルコース濃度を、適用後予め決められた時点で判定した。
【0133】
結果
糖尿病ラットのマイクロチャネル化皮膚に対するインスリン−コラーゲンパッチの適用後の血中グルコース濃度は、図5及び図6に示している。図5に示されるように、ラットに対して0.4IUインスリンの皮下(SC)投与は、血中グルコース濃度が急速に減少、すなわち、SC投与1時間後、グルコース濃度が200mg/dL以下であった。SC効果は約4時間続き、その後、グルコース濃度は200mg/dL超に上昇した(図5)。ラットの正常なグルコース濃度は、100〜200mg/dlの範囲であることに注意すべきである。対照的に、インスリン−コラーゲンパッチが適用された場合、インスリンのSC投与と比較して血中グルコース濃度の減少遅延が見られた。この血中グルコース濃度の減少遅延は、コラーゲンパッチの再水和化及び発生したマイクロチャネルを介するインスリンの分散のためである。さらに、コラーゲンパッチ中の0.4IUインスリンの経皮適用は、血中グルコース濃度が持続的減少(200mg/dL未満)が反映されるインスリンの持続的放出を生じ、このような低血中グルコース濃度は約8時間継続した(図5)。
【0134】
ラットに対するインスリン−コラーゲンパッチ中の1.5IUインスリンの投与は、最初のグルコース濃度の90%超の減少となり(図6)、低血糖ショックを生じた。その結果、この実験は、10時間より長くは続かなかった(図6)。したがって、ラットにおける試験用インスリンパッチの最適用量は、1.5IU未満にするべきである。
【0135】
図6は、糖尿病ラットの血中グルコース濃度に対する、ViaDerm処置の皮膚に置かれた種々のインスリン−コラーゲンパッチの効果を示している。図6に示されるように、コラーゲンA−lisproパッチ適用2.5時間後、グルコース濃度は、約400mg/dlから約200mg/dlに減少した。同じ減少は、コラーゲンA−NPH又はコラーゲンA−Ultra Lente(UL)パッチ適用1時間後に達成された。コラーゲンA−NPH又はコラーゲンA−Ultra LenteパッチとコラーゲンA−lisproパッチとの間のこの差異は、恐らくインスリンがNPH又はULインスリン複合体製剤から離れるのに必要な時間が異なるためである。コラーゲンB−lisproの適用は、コラーゲンA−NPH又はコラーゲンA−ULパッチと同様の血糖値プロファイルを生じた。これらの結果により、インスリンの遅延効果は、種々の複合化インスリンの使用により得ることができることを示している。
【0136】
本知見により、種々のインスリン−コラーゲンパッチは、遅延及び延長血糖値プロファイルにより反映されるインスリンの遅延及び延長送達が提示されることを示している。その結果、インスリンの生物学的効果はSC注射後に得られた効果より長時間であった。
【0137】
(実施例8)
インスリン−Vigilon(登録商標)ベースパッチの調製
Vigilon(登録商標)(C.R.BARD、米国ジョージア州コビントン)を、インスリンパッチの調製のために用いた。ヒト組換えインスリンHumulin(登録商標)R(Regular−100IU/ml)は、Lilly(Lilly France S.A.、フランス国Fegershein)から購入した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、Biological Industries(イスラエル国Kibbutz Beit Haemak)から入手した。
【0138】
四角形のVigilon(登録商標)ヒドロゲルシートを、2.25cm2の寸法で切断し、経皮適用前にインスリン溶液により予め水和した。四角形のVigilon(登録商標)をインスリン溶液と共に1時間インキュベーションすると、0.2mlのインスリン溶液の吸収を生じた。それによって、四角形のVigilon(登録商標)を、0.2ml中に所望の最終装填用量を含んだインスリン溶液と共にインキュベーションした。各パッチに対するインキュベーション溶液の体積は2mlであった。100IU/mlの保存液を、PBSで所望の濃度に希釈した。このように、例えば、2.5IU装填パッチを調製するために、Vigilon(登録商標)テンプレートを12.5IU/mlの濃度でインスリン溶液と共に1時間インキュベーションした。
【0139】
(実施例9)
インスリン−Vigilon(登録商標)パッチ中のインスリン含量
全てのVigilon(登録商標)パッチ中のインスリン含量を、PBS溶液によるインスリンの抽出及び逆相HPLC(LUNA 5um C18、150×4mm、Phenomenex)による定量分析により決定した。
【0140】
Vigilon(登録商標)パッチ中のインスリン含量分析の要約を表4に示す。
【0141】
【表4】
【0142】
表4に示されるように、高用量パッチ(2.5IU及び5IUの投入)から抽出されたインスリン量は、1.9IU及び4.1IUであり、これらはそれぞれ、パッチに適用された最初の用量の75%及び81%である。低用量パッチ(0.25IU及び0.5IUの投入)から抽出されたインスリン量は、0.15IU及び0.31IUであり、これらはそれぞれ、パッチに適用された最初の用量の59%及び61%である。抽出されなかった最初のインスリン投入量の20〜40%は、ヒドロゲルに結合したままであると考えられた。低用量のインスリン(0.25〜0.5IU/Vigilon(登録商標)パッチ)を用いた場合、インスリンの非抽出量がより多かったのは、恐らく、このような用量ではインスリンのヒドロゲルに対する結合が、より大きいからと思われる。
【0143】
(実施例10)
インスリン−Vigilon(登録商標)パッチ中のインスリンのin vitro皮膚透過性試験
ブタ皮膚を介するVigilon(登録商標)パッチにおけるインスリンの透過性は、Franz分散細胞系(社内製)によりin vitroで測定した。分散領域は2cm2であった。皮膚切断された(300〜500μm、Electric Dermatom、Padgett Instruments社、米国ミシガン州カンザス)ブタ皮膚を、屠殺白ブタ(Landres and Large Whiteの育種、イスラエル国Kibbutz Lahav地域で飼育)から切除した。経皮水分損失測定(TEWL、Dermalab Cortex Technology、デンマーク国Hadsund)を実施し、15g/m2/時間未満のTEWL濃度を有する皮膚片だけを、分散細胞に乗せた。
【0144】
皮膚マイクロチャネル化は、ViaDerm(商標)装置を用いて以下のとおり実施した。全ての試験に用いた微小電極アレイの直径は、80μmであり、密度は、75/cm2であった。この装置を、各位置に2回適用し、それよってマイクロチャネルの密度は、150個/cm2であった。ラットの皮膚は、330Vの印加電圧、100kHzの周波数、2回のバースト、700マイクロ秒のバースト長、及び電流制限のない条件で処理した。
【0145】
ViaDermの適用後、操作をコントロールするためにTEWLを再度測定した。皮膚片は、角質層を上に向けて受容体細胞上に置き、ドナーチャンバは、その場でクランプで留めた。皮膚は、PBSで3回洗浄し、受容体細胞中のPBSを、0.1%アジ化ナトリウム(Merk、ドイツ国ダルムシュタット)、1%ウシ血清アルブミン(Biological Industries、イスラエル国Kibbutz Beit Haemak)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(50ml PBS当たり1個の錠剤、Complete Mini、Roch)を含んだPBSで置換してから、インスリン−Vigilon(登録商標)パッチを角質層側に置いた。受け器溶液からのサンプルを、12時間まで予め決められた時間でチューブに採取した。サンプルは、分析されるまで−20℃に維持した。インスリン分析は、ELIZAキット(DSL−10−1600、Diagnostic Systems Laboratories社、米国テキサス州ウェブスター)により実施した。
【0146】
結果
ViaDerm処置皮膚を介してVigilon(登録商標)パッチ中のインスリンの累積透過性を図7に示す。インスリン投与後、その累積量は、時間の関数としての増加し、全透過量は、用量依存的であった(Vigilon(登録商標)中のインスリン0.25、0.5、2.5及び5IUに関して、それぞれ12時間後1.5、2.8、7.8、及び16.0mU/cm2、図7を参照)。インスリン経皮流量値(1時間につき1cm2当たりの透過量)を図8に示す。この流量値も用量依存性を示した。したがって、例えば、6時間後、この値は、Vigilon(登録商標)中のインスリン0.25、0.5、2.5、及び5IUに関して、それぞれ0.1、0.2、0.5、及び1.0mU×cm2−1×hr−1であった(図8を参照)。
【0147】
このin vitro結果により、インスリンの経皮送達は、ヒドロゲルへのその組み込み及びマイクロチャネル化法の使用により達成できることを示している。in vitro透過性試験は、持続的且つ制御されたin vivoのインスリン送達は、インスリン−Vigilon(登録商標)パッチを用いて達成し得ることを示唆している。
【0148】
(実施例11)
糖尿病ラットにおけるVigilon(登録商標)に埋め込まれたインスリンの生物活性
オスのラット(300〜325、Sprague Dawley、Harlan laboratories社、イスラエル国)は、パッチ適用前に飼料を与えず、48時間水を自由に摂取させた。糖尿病を誘発するために、パッチ適用24時間前にラットにストレプトゾトシン(クエン酸緩衝液中55mg/kg、0.1M、pH4.5;Sigma、米国ミズーリ州セントルイス)をIP注射した。注射24時間後にグルコース濃度が300mg/dl超であり、陽性の尿中グルコース及び陰性の尿中ケトンが観察された場合に、ラットは糖尿病として定義された。糖尿病ラットに、70:30の比の10%ケタミン/2%キシラジン溶液を1ml/kgIP注射した。麻酔は、イソフルオラン又はハロタンガスのいずれかで維持した。腹部皮膚の毛を注意深く剃り、イソプロピルアルコールで清浄した。30分後、経皮水分損失測定(TEWL、Dermalab Cortex Technology、デンマーク国Hadsund)を実施して、皮膚の統合性をチェックした。皮膚のマイクロチャネル化は、本明細書の上記の実施例10に記載された条件でViaDerm装置の使用により実施した。次に、操作をコントロールするためにTEWLを再度測定した。処置した皮膚は、種々のインスリンパッチでカバーした。全てのラットは、パッチ適用2時間前に0.1IUインスリンのSC注射を受けた。パッチ適用なしの0.1IUのSC注射は、比較対照として寄与した。血液は、ラットの尾から採血され、血中グルコース濃度は、適用後、予め決められた時間で血糖値試験ストリップを用いて(Ascensia Elite、Bayer)測定した。
【0149】
結果
糖尿病ラットのマイクロチャネル化皮膚に対するインスリン−Vigilon(登録商標)パッチ適用後の血中グルコース濃度を図9に示す。0.1IUインスリンの皮下投与により、グルコース濃度は直ちに低下した(図9)。SC効果は短時間続き、一定の血中グルコース濃度を維持することはなかった。しかし、SC注射の2時間後に、皮膚にインスリン−Vigilon(登録商標)パッチを適用すると、制御された、一定で、持続した血中グルコースプロファイルが9時間示された。1.5IUパッチと2.5IUパッチとの間に有意差は見られなかった。
【0150】
本知見は、インスリン−Vigilon(登録商標)パッチが持続した血中グルコースプロファイルによって反映されるように、インスリン送達の延長を提示することを示している。その結果、インスリンの生物学的効果は、SC注射後得られるものよりも長時間であった。
【0151】
(実施例12)
hGH−又はインスリン−カラゲナン薄膜ベースパッチの調製
hGH−又はインスリン−カラゲナン薄膜ベースパッチの調製には、以下の材料が用いられた。カラゲナンI型及びII型(Sigma、米国ミズーリ州)、ヒト成長ホルモン(hGH)Genotropin(登録商標)(5.3mg/16IU、Pharmacia and Upjohn、スウェーデン国ストックホルム)、ヒト組換えインスリンのHumulin(登録商標)R(Regular−100IU/ml、Lilly France S.A.、フランス国Fegershein)、及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS;イスラエル国Kibbutz Beit Haemak)。
【0152】
カラゲナン(2重量体積%、I型及びII型)を45℃でddH2Oに溶解させた。該溶液を約37℃まで冷却してから、濃縮貯蔵溶液から所望量のhGH又はインスリンを加え、該溶液を静かに混合した。薄膜が形成するまで該溶液を風乾した。この薄膜を1.4×1.4cmの寸法でパッチに切断した。これらのパッチを使用まで4℃で保存した。
【0153】
ヒトGH−カラゲナン薄膜は、1mgのカラゲナン当たり、9μgのhGHを最初の装填することにより調製した。典型的な薄膜は重量が約10mgであった。すなわち、hGHは各パッチにつき、約90μgの重量であった。インスリン−カラゲナン薄膜はフィルム1枚当たり、1IU及び5IUの用量で調製した。
【0154】
(実施例13)
カラゲナン薄膜ベースパッチからのhGH−又はインスリンのin vitro放出
カラゲナン薄膜ベースパッチからのhGH−又はインスリンの放出動態を試験するために、カラゲナン薄膜をPBS溶液に入れ、室温でインキュベーションした。種々の時点で、緩衝液を新鮮な緩衝液と取り替えた。緩衝液に放出されたhGHの量をゲルろ過HPLCによって測定し、一方、緩衝液に放出されたインスリンの量を逆相HPLCによって分析した。
【0155】
結果
I型及びII型カラゲナン薄膜からのhGH放出を図10に示す。I型カラゲナン薄膜を使用した場合、20分後、hGHの最初の量の約17%が放出された。hGHは8時間にわたって持続した様式で放出された。8時間後の合計回収量は、最初の用量の80%であった。該薄膜は8時間後に溶解し始めたので、さらなる放出は測定されなかった。
【0156】
II型カラゲナン薄膜を使用した場合、持続した放出プロファイルが、20時間見られた。20分後、該薄膜に適用されたhGHの最初の量の約12%が放出され、8時間後には、85%が放出され、20時間後には最初の量の91%が放出された。
【0157】
II型カラゲナン薄膜からのインスリン放出を図11に示す。インスリンは8時間にわたって持続した様式で該カラゲナン薄膜から放出された。8時間後の合計放出量は、該薄膜に適用された最初の量の約70%であった。
【0158】
このように、該カラゲナン薄膜からのhGH及びインスリンのin vitro放出は持続したプロファイルを示した。
【0159】
(実施例14)
カラゲナンベースパッチからhGH及びインスリンのin vitro皮膚透過性試験
ブタ皮膚を介するインスリンの透過性は、Franz分散細胞系(社内製)によりin vitroで測定した。分散領域は2cm2であった。皮膚切断された(300〜500μm、Electric Dermatom、Padgett Instruments社、米国ミシガン州カンザス)ブタ皮膚を、屠殺白ブタ(Landres and Large Whiteの育種、イスラエル国Kibbutz Lahav地域で飼育)から切除した。経皮水分損失測定(TEWL、Dermalab Cortex Technology、デンマーク国Hadsund)を実施し、15g/m2/時間未満のTEWL濃度を有する皮膚片だけを、分散細胞に乗せた。皮膚マイクロチャネル化は、ViaDerm(商標)装置を用いて実施した。微小電極の密度は、200個/cm2であった。ViaDermの適用後、TEWLは、操作をコントロールするために再度測定した。皮膚片を、PBSで3回洗浄し、インスリン−カラゲナン薄膜を角質層側に置いて接着剤でカバーした。次に皮膚プラス薄膜を、角質層を上に向けて受容体細胞上に置き、ドナーチャンバは、その場でクランプで留めた。受容体細胞は、0.1%アジ化ナトリウム(Merk、ドイツ国ダルムシュタット)、1%ウシ血清アルブミン(Biological Industries、イスラエル国Kibbutz Beit Haemak)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(50ml PBS当たり1個の錠剤、Complete Mini、Roch)を含んだリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で満たした。受け器溶液からのサンプルを、12時間まで予め決められた時間でチューブに採取した。サンプルは、分析されるまで4℃に維持した。インスリン分析は、ELIZAキット(DSL−10−1600、Diagnostic Systems Laboratories社、米国テキサス州ウェブスター)により実施した。
【0160】
結果
ViaDerm処置皮膚を介したカラゲナン薄膜ベースパッチ中のインスリン(1IU及び4IU)の累積透過性を図12に示す。カラゲナン薄膜中のインスリン投与後、累積インスリン量は、時間の関数としての増加し、全透過量は、1IUパッチよりも4IUパッチの方が多かった(4IUパッチ及び1IUパッチに関して、それぞれ12時間後9.3mU/cm2及び11時間後1.6mU/cm2、図12)。
【0161】
カラゲナンパッチ、カラゲナンタイプ及び/又はカラゲナン量における蛋白質の最初の装填量は、望ましいin vivo延長送達を達成するために調整できる。
【0162】
本発明は、具体的に示され、本明細書の上記に説明されたものに限定されないことは当業者によって認識されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、添付の請求項によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】ViaDermにより皮膚マイクロチャネルを生じさせたブタ皮膚を介した、hGHコラーゲン薄膜を含有するパッチ(▲)又はhGH印刷パッチ(◇)からのヒト成長ホルモン(hGH;70〜90μg)の透過性を示す図であり、透過性はin vitroアッセイにおいて、累積hGH量により検出した。
【図2】in vitroアッセイにおいてViaDermにより皮膚マイクロチャネルを生じさせたブタ皮膚を介した、hGHコラーゲン薄膜を含有するパッチ(▲)又はhGH印刷パッチ(◆)からのhGH(70〜90μg)の透過性を示す図であり、透過性はhGH経皮流量により検出した。
【図3】ViaDerm処理したモルモット皮膚上に150μgのhGHを含有する印刷パッチ(◆)又は200μgのhGHコラーゲン薄膜を含有するパッチ(□)を経皮適用した後のhGH血中濃度を示す図である。
【図4】ViaDerm処理したモルモット皮膚(□)又はViaDerm処理したラット皮膚(◆)上に200μgのhGH−コラーゲン薄膜を含有するパッチを経皮適用した後の血中hGH濃度を示す図である。
【図5】インスリン(□)の皮下投与及びViaDerm処理した糖尿病ラット皮膚(■)上に0.4IUインスリン−コラーゲン薄膜を含有するパッチの経皮適用後の血中グルコース濃度を示す図である。
【図6】ViaDerm処理した糖尿病ラット皮膚上に1.5IUインスリン−コラーゲンパッチを適用した後の血中グルコース濃度を示す図である。コラーゲンA−リスプロ(Lispro)(□);コラーゲンA−NPH(◇);コラーゲンA−ウルトラレンテ(Ultra Lente)(▲);及びコラーゲンB−リスプロ(*)。
【図7】ViaDermにより皮膚マイクロチャネルを生じさせたブタ皮膚を介したインスリン−Vigilon(登録商標)ヒドロゲルパッチからヒトインスリンの透過性を示す図であり、透過性はin vitroアッセイにおいて累積インスリン量により検出した。Vigilon(登録商標)における0.25IUインスリン(◆);Vigilon(登録商標)における0.5IUインスリン(□);Vigilon(登録商標)における2.5IUインスリン(▲);及びVigilon(登録商標)における5IUインスリン(○)。
【図8】ViaDermにより皮膚マイクロチャネルを生じさせたブタ皮膚を介したインスリン−Vigilon(登録商標)ヒドロゲルパッチからヒトインスリンの経皮流量を示す図であり、透過性はin vitroアッセイにおいてhGH経皮流量により検出した。Vigilon(登録商標)における0.25IUインスリン(◆);Vigilon(登録商標)における0.5IUインスリン(□);Vigilon(登録商標)における2.5IUインスリン(▲);及びVigilon(登録商標)における5IUインスリン(○)。
【図9】ViaDerm処理した糖尿病ラット皮膚にインスリン−Vigilon(登録商標)ヒドロゲルパッチを適用した後の血中グルコース濃度を示す図である。糖尿病ラットに、0.1IUインスリンを皮下注射し、2時間後、インスリン−Vigilon(登録商標)ヒドロゲルパッチを貼り付けた。インスリンの皮下注射(●);インスリン及び中1.5IUのVigilon(登録商標)中インスリンの皮下注射(▲);インスリン及び中2.5IUのVigilon(登録商標)中インスリンの皮下注射(◇)。
【図10】インスリン−カラゲナン薄膜を含有するパッチから放出されたhGH量を示す図である。放出されたhGH量は、薄膜形成前に(最初の)カラゲナン溶液に添加されたhGHの最初の量の%として算出された。カラゲナンタイプI(◆);カラゲナンタイプII(■)。
【図11】インスリン−カラゲナンII型薄膜を含有するパッチから放出されたインスリン量を示す図である。放出されたインスリン量は、薄膜形成前にカラゲナン溶液に添加されたインスリン(5IU)の最初の量の%として算出した。
【図12】ViaDermにより皮膚マイクロチャネルを生じさせたブタ皮膚を介したインスリン−カラゲナン薄膜を含有するパッチ(▲)からのインスリンの透過性を示す図であり、透過性はin vitroアッセイにおいて累積インスリン量により検出した。インスリン1IU(◆);インスリン5IU(■)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量親水性薬物、特にペプチド薬物、ポリペプチド薬物又は蛋白質薬物の持続性送達用の経皮システム、及びそれの使用法に関する。このシステムは、ペプチド薬物、ポリペプチド薬物又は蛋白質薬物を含有するポリマーマトリックスを含む少なくとも1層の貯留層を含む経皮用パッチと共に、対象の皮膚にマイクロチャネルを発生させる装置を含む。
【背景技術】
【0002】
皮膚を介した薬物の送達は、多くの利点を提供する。本来、このような送達手段は、薬物投与の快適で都合のよい非侵襲的な方法である。経口投与において遭遇する可変的な吸収率及び代謝率を回避し、他の固有の不都合さ、例えば胃腸刺激作用及び胃腸酵素を介したある種の薬物の分解が排除される。経皮薬物送達は、任意の特定の薬物の血中濃度に関して高度なコントロールを理論的に可能にする。実際には、これらの利益を達成するために解決すべき多くの問題が残っている。
【0003】
皮膚は、構造的に複雑で比較的厚い膜である。無傷の皮膚中にまたそれを介してその環境から移動する分子は、最初に角質層を透過しなければならない。次に、それら分子は、生存表皮、乳頭真皮、及び毛細管壁を透過して、血流又はリンパチャネル中まで行かなければならない。そのように吸収されるために、分子は、各タイプの組織において種々の耐透過性を克服しなければならない。したがって、皮膚膜を横断する輸送は複雑な現象である。しかしながら、経皮投与薬物に対して一次バリヤーを呈するのは角質層の細胞である。角質層は、身体の大部分にわたる、ほぼ10〜30ミクロンの厚さの高密度で高度に角質化された細胞の薄い層である。これら細胞内の高度な角質化及びそれらの高密度の充填は、薬物透過に対して実質的に不透過性バリヤーとなると考えられる。多くの薬物において、皮膚透過率は極めて低く、特にポリペプチド及び蛋白質などの高分子量薬物について問題がある。したがって、皮膚の透過性を増大させる手段は、無傷の皮膚中にまたそれを介して輸送を達成することが望ましい。
【0004】
薬物の皮膚透過率を増すために、種々のアプローチが採用され、その各々は、物理的透過性エンハンサー又は化学的透過性エンハンサーのいずれかの使用を含む。皮膚透過性の物理的増強としては、例えば、イオン導入療法又は電気穿孔法などの電気泳動技法が挙げられる。物理的透過性エンハンサーとして超音波(又は「音波泳動」)の使用もまた研究されている。化学的エンハンサーは、角質層の透過性を増すために、薬物(又は幾つかの場合において、皮膚は化学的エンハンサーにより前処置できる)と共に投与される化合物であり、それによって皮膚を介する薬物の増強された透過性を提供する。しかしながら、このような化学的エンハンサーを用いる場合の主要な欠点としては、皮膚損傷、刺激があり、過敏性に遭遇することが多い。
【0005】
参照として本明細書に組み込まれているAvrahamiに対する米国特許第6,148,232号は、対象の角質層をアブレーションする装置を記載している。この装置は、対象の皮膚上の個々の箇所に適用される複数の電極を含む。電源により、2つ以上の電極間に電気的エネルギーが加えられて、主として個々の電極下の角質層(SC)の異なる領域のアブレーションを引き起こし、マイクロチャネルを発生させる。角質層に対する限定的アブレーションに関する種々の技法は、電極の間隔及び隣接電極間で皮膚の電気抵抗をモニターすることなどが記載されている。Avrahamiに対する米国特許第6,597,946号;米国特許第6,611,706号;米国特許第6,708,060号;及び米国特許第6,711,435号は全て、本出願の出願人に譲渡されており、本明細書に完全に記載されているように参照として組み込まれており、皮膚を介して物質の経皮通過を促進するための、角質層をアブレーションし、マイクロチャネルを発生させる別の装置を開示している。この装置は、マイクロチャネル発生時に角質層の下にある皮膚に対する感覚を減少し、損傷を最少にすることを目的としている。
【0006】
制御放出を与えない様式での治療剤の投与は、毒性又は望ましくない副作用を生じ得る濃度に到達するときと治療効果に必要とされる濃度以下に低下するときとで、その濃度の実質的な変動をもたらし得ることが長い間認識されてきた。制御放出用の装置及び/又は方法の使用の第一の目標は、治療薬剤の全身濃度に関してより大きなコントロールを生じさせることである。
【0007】
種々の方法が、治療薬剤の制御放出を達成する目的で開発されている。制御分散による放出は、これら方法のうちの1つである。種々の材料が、分散制御緩徐放出装置を製作するために用いられている。これらの材料としては、ポリジメチルシロキサン、エチレンビニルアセテートコポリマー、及びヒドロキシルアルキルメタクリレートなどの非分解性ポリマー並びに分解性ポリマー、それらの中で乳酸/グリコール酸コポリマーが挙げられる。エチレンビニルアセテートコポリマーから製作された細孔膜が、蛋白質の放出用に用いられており、高い放出能力を与える。
【0008】
制御放出のためのさらなる方法は、治療薬剤が固定された支持体からの化学開裂、及び/又は前記薬剤が固定されたポリマーの生分解を必要とする化学的制御された持続放出を含む。このカテゴリーとしてはまた、制御された非共有解離が挙げられ、これは非共有結合により支持体に一時的に結合している薬剤の解離から生じる放出に関連する。この方法は、好適な支持体に対して蛋白質の安定ではあるが永続的ではない結合をもたらす、複数の非共有結合、イオン結合、疎水性結合及び/又は水素結合を形成できる高分子である蛋白質又はペプチドの制御放出に特によく適している。
【0009】
米国特許第5,418,222号は、活性成分、特にPDGFの制御放出における使用のために単層及び複層コラーゲン薄膜類に関する。米国特許第5,512,301号は、吸収性ゼラチンスポンジ、コラーゲン、及び活性成分を含むコラーゲン含有スポンジに関する。米国特許第5,418,222号に開示されたコラーゲン薄膜類及び米国特許第5,512,301号に開示されたコラーゲンスポンジは、長時間にわたり治療薬剤の安定的、連続的及び持続性放出を提供する。
【0010】
米国特許第5,681,568号は、ミクロキャピラリーポアを有する細孔下層を含む装置を開示しており、前記ポアは、被覆されているが、生物学的に活性な高分子薬剤が結合しているマイクロスキンによって完全に満たされてはいない。細孔下層は、ポリマーを含み、マイクロスキンは、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、及びグリコサミノグリカンから選択される物質を含む。このような装置は、高分子、特に成長因子の治療標的に対する送達を最適化するために有用であると考えられている。
【0011】
米国特許第6,596,293号は、薬物送達材料及び架橋剤による生物学的ポリマーの架橋を含む装置を調製する方法、並びに生物活性薬剤との架橋バイオポリマーを充填する方法を開示する。
【0012】
米国特許第6,275,728号は、ヒドラタブル(hydratable)の親水性ポリマーを含む電気輸送薬物送達装置用の薄膜薬物貯留を提供し、前記薄膜は、含水液体と接触させて置かれた場合にヒドロゲルを形成できる。
【0013】
本出願の出願人に譲渡されている国際特許出願WO2004/039428は、乾燥医薬組成物の経皮送達用のシステムを開示している。このシステムには、対象の皮膚上の領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させる、対象の皮膚を介して薬物の経皮送達を促進させる装置、及び治療有効量の乾燥医薬組成物を含むパッチを含む。WO2004/039428は、初めて親水性高分子量蛋白質の経皮送達の効率的方法を提供している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
親水性高分子量薬物の経皮送達用装置及び方法の未知の必要性がまだ残されており、これによってこのような薬剤の持続性送達及び制御送達を達成する。これらの装置及び方法の利点は、ポリペプチド及び蛋白質並びに他の生物活性水溶性薬物に特に著しいと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、皮膚をアブレーションし、活性薬剤を前処理した皮膚に適用するシステムと方法を提供し、このシステムと方法は活性薬剤の体循環への徐放及び持続性送達を達成するようにデザインされている。
【0016】
本発明はさらに、活性薬剤を経皮的に送達するシステムと方法を提供し、このシステムは、活性薬剤が非共役的に結合し、それから放出されうる少なくとも1層の薬物貯留層を含むパッチを含んでいる。
【0017】
ポリマーマトリックスは、ポリペプチド又は蛋白質の組織又は血液循環中への送達用の支持体又はインプラントとしてよく知られていることを認識すべきである。しかしながら、背景技術において、ポリマーマトリックスと親水性高分子量ポリペプチド又は蛋白質との組合せが、経皮送達用のパッチに使用できることはどこにも開示も示唆もされていない。マイクロチャネルを発生させる装置によって前処理された皮膚の領域に置かれた場合、活性薬剤として高分子量ポリペチドを含むポリマー薬物貯留層を含むパッチの使用は、長時間にわたり、高分子量ポリペプチドの治療有効血清中濃度を達成することができることが、初めて本明細書に開示される。本発明によれば、本発明の装置は、対象の角質層で親水性マイクロチャネルを発生させ、それを介してパッチのポリマー薬物貯留層に浸出液が拡散する。この浸出液は、ポリマー薬物貯留層から活性薬剤を緩徐に放出し、したがってマイクロチャネルを介して長時間にわたり体循環に活性薬剤を送達する。その結果、活性薬剤の緩徐且つ持続的送達が達成される。
【0018】
本発明の原理は、ヒト成長ホルモン(hGH)、22kDa蛋白質、及びヒトインスリンを用いて本明細書の下記に例示される。本発明に開示されたシステムと方法は、限定はしないが、種々の成長因子及びホルモンなど、多種多様の蛋白質、ポリペプチド、ペプチド、及び水溶性生物活性分子に適用できることが明白に意図されている。
【0019】
一態様によれば、本発明は、対象の皮膚上の領域において少なくとも1つのマイクロチャネルを発生できる装置、及び少なくとも1層の薬物貯留層を含むパッチを含む、対象の皮膚を介した活性薬剤の経皮送達を促進するシステムであって、前記少なくとも1層の薬物貯留層はポリマーマトリックス及び活性薬剤として少なくとも1種の治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含む医薬組成物を含むシステムを提供する。
【0020】
幾つかの実施形態によれば、本発明のシステムは、対象の皮膚を介した活性薬剤の経皮送達を促進する装置を含み、該装置は、
a.複数の電極を含む電極カートリッジ、及び
b.前記電極が皮膚の近くにあるときに、2個以上の電極間に電気的エネルギーを加え、前記電極の下の領域の角質層のアブレーションを可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させるようになされているコントロールユニットを含む主要ユニット
を含む。
【0021】
本発明の他の実施形態によれば、該装置のコントロールユニットは、電流又はスパークの発生、したがって1つ又は複数形成されるマイクロチャネルの幅、深さ及び形状をコントロールするための、電極に送られる電気的エネルギーの大きさ、周波数、及び/又は持続時間をコントロールする回路を含む。
【0022】
さらなる実施態様によれば、複数の電極を含む電極カートリッジは、均一の形状及び寸法を有する複数のマイクロチャネルを発生させるようになされている。電極カートリッジは取り外しできることが好ましい。電極カートリッジは、1回の使用後に廃棄されることがより好ましく、したがって、主要ユニットへの取り付け、及びその後の主要ユニットからの取り外しが容易になるようデザインされている。
【0023】
本発明の幾つかの実施態様によれば、ポリマーマトリックスは、親水性バイオポリマー、親水性合成ポリマー、それらの誘導体及び組合せからなる群から選択される親水性ポリマーマトリックスである。本発明により使用できるバイオポリマーとしては、限定はしないが、セルロース、キチン、キトサン、アルギネート、コラーゲン、ゼラチン、ペクチン、例えば、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸及びヘパラン硫酸などのグリコサミノグリカン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、カラゲナン、及びラミニンが挙げられる。幾つかの代表的実施形態によれば、薬物貯留層は、コラーゲン、アテロコラーゲン、又はカラゲナンを含む。
【0024】
本発明により使用できる親水性合成ポリマーとしては、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)ポリマーなどの生分解性及び非分解性ポリマー、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリウレタンが挙げられる。幾つかの代表的な実施形態によれば、薬物貯留層は、Vigilon(登録商標)、すなわち96%の水及び4%のポリエチレンオキシドからなるヒドロゲルを含む。
【0025】
さらなる実施形態によれば、治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質は、成長因子、ホルモン、サイトカイン、水溶性薬物、抗原、抗体、それらの断片並びに類縁体からなる群から選択される。本発明により経皮的に送達される治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質は、親水性であることが好ましい。
【0026】
幾つかの実施形態によれば、治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質としては、限定はしないが、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、上皮小体ホルモン、成長ホルモン、骨形成蛋白質、エリスロポエチン、ヘモポイエチン成長因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、凝固因子、抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、プラスミノーゲン活性化因子、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、プロレラキシン、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、ホルモン受容体、成長因子受容体、インテグリン、蛋白質A、蛋白質D、リウマチ因子、神経栄養因子、CD蛋白質、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン(IL)、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜蛋白質、崩壊促進因子、ウィルス抗原、輸送蛋白質、ホーミング受容体、アドレッシン、調節蛋白質、それらの類縁体、誘導体及び断片が挙げられる。
【0027】
幾つかの代表的な実施形態によれば、治療剤は、ヒト成長ホルモン(hGH)又はヒトインスリンである。本発明の原理によれば、薬物貯留層を含むパッチは、2種以上の治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質を含むことができることを認識すべきである。マイクロチャネル発生の結果、浸出液は、マイクロチャネルを介して薬物貯留層に拡散し、したがってポリマーマトリックスから活性薬剤を放出し、マイクロチャネルを介して体循環に活性薬剤を送達することも理解されるであろう。
【0028】
他の実施形態によれば、薬物貯留層は、乾燥形態、半乾燥形態、ヒドロゲル、液体形態、及び活性薬剤を保持する安定性及び/又は能力などのポリマーの性質が維持される当業界に知られた任意の他の形態から選択される形態で製剤化できる。幾つかの代表的な実施形態によれば、薬物貯留層は、薄膜又はヒドロゲルの形態で製剤化される。
【0029】
さらなる実施形態によれば、治療用又は免疫原性薬剤を含む本発明の医薬組成物は、薄膜形成、ヒドロゲル形成、又はポリマーの任意の他の形態前にバイオポリマー又は親水性合成ポリマーの溶液と混合することができる。或いは又はさらに、治療用又は免疫原性薬剤を含む医薬組成物は、薄膜形成、ヒドロゲル形成、又はポリマーの任意の他の形態に続いて添加できる。幾つかの代表的な実施形態によれば、hGH溶液又はヒトインスリン溶液は、コラーゲン又はカラゲナン薄膜形成前にコラーゲン溶液と混合される。
【0030】
幾つかの実施形態によれば、本発明のパッチは、以下の層、すなわち、バッキング層、接着剤、及び律速層の少なくとも1層をさらに含む。
【0031】
他の実施形態によれば、医薬組成物は、プロテアーゼ阻害剤、安定化剤、抗酸化剤、緩衝剤、及び保存剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む。
【0032】
もう1つの態様によれば、本発明は、少なくとも1層の薬物貯留層、ポリマーマトリックスを含む薬物貯留層及び本発明の原理による治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質を活性薬剤として含む医薬組成物を含む活性薬剤の経皮送達用パッチを提供する。
【0033】
本発明によるパッチは、その使用前にその薬物種の安定で、場合によっては微生物学的に制御された、無菌又は滅菌貯蔵に適合するようになされていれば、任意の好適な幾何学的配置であってよいことを認識すべきである。さらなる実施形態によれば、パッチは、以下の層、すなわち、バッキング層、接着剤、及び律速層の少なくとも1層をさらに含む。
【0034】
もう1つの態様によれば、本発明は、治療用又は免疫原性薬剤の持続性経皮送達の方法であって、
(a)対象の皮膚上の領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させるステップ、
(b)前記少なくとも1つのマイクロチャネルが存在する皮膚の領域にパッチを固定させるステップであって、前記パッチは少なくとも1層の薬物貯留層を含み、前記薬物貯留層はポリマーマトリックス及び治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含むステップ、及び
(c)前記治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質の治療血中濃度を、少なくとも6時間達成させるステップ
を含む方法を提供する。
【0035】
幾つかの実施形態によれば、対象の皮膚のマイクロチャネルの発生は、皮膚のアブレーション、好ましくは本明細書上記の技法及び装置により実施される。複数のマイクロチャネルを生じることが好ましい。
【0036】
他の実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、バイオポリマー、親水性合成ポリマー、それらの誘導体及び組合せから選択できる。幾つかの代表的実施形態によれば、バイオポリマーは、コラーゲン、アテロコラーゲン又はカラゲナンである。
【0037】
さらなる実施形態によれば、治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質は、成長因子、ホルモン、サイトカイン、水溶性薬物、抗原、抗体、それらの断片並びに類縁体からなる群から選択される。幾つかの代表的実施形態によれば、治療的蛋白質は、ヒト成長ホルモン又はヒトインスリンである。
【0038】
さらなる実施形態によれば、治療用又は免疫原性活性薬剤の治療血中濃度は、少なくとも8時間維持される。治療血中濃度は、少なくとも10時間維持されることが好ましい。本明細書の下記の実施例に開示されるように、皮膚マイクロチャネルを発生させたラット又はモルモットの皮膚の領域に、200μgの用量でコラーゲン薄膜及びhGHを含むパッチを貼り付けると、約10時間10〜50ng/mlのhGH血中濃度が達成された。モルモットにおいてポリマーマトリックスは含まないが、hGHの乾燥組成物を含む印刷されたパッチと共に本発明の装置を用いて同一用量のhGHを経皮的に投与すると、同様のhGH血中濃度は、約5時間だけ維持されたことが理解されるであろう。このように、本発明のシステムは、活性薬剤の持続的且つ長時間送達を提供する。
【0039】
本発明は、以下の図面及びそれらの好ましい実施形態の詳細な説明からより十分に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、マイクロチャネルを発生させた処理済の皮膚を介して親水性活性薬剤、特に親水性高分子量ポリペプチド又は蛋白質を送達するシステムと方法を提供する。
【0041】
マイクロチャネルを発生させる装置によって前処理された皮膚の領域上に置かれた場合、親水性ポリマー又は蛋白質及び活性薬剤を含むポリマー薬物貯留層を含むパッチの使用は、親水性ポリマーマトリックスは含まないが、同一の活性薬剤を含む乾燥又は凍結乾燥組成物を含む医療用パッチと比較して、活性薬剤の経皮送達を延長し、改善することを本明細書に開示している。さらに、本発明の原理によるパッチは、送達が皮下注射された場合の同一活性薬剤の同一用量の送達と比較した場合、活性薬剤の送達を延長する。したがって、本発明は、親水性高分子量蛋白質の持続的且つ緩徐な送達に関する高効率的システムと方法を提供する。
【0042】
親水性ポリマー及び治療有効量を含むパッチは、経皮送達を通して活性薬剤の安定性と活性を維持し、したがって、有意に長時間にわたって治療血中濃度を維持し、皮下注射によって得られたものと比較して治療効果の延長を達成することも開示されている。
【0043】
本明細書及び請求項の文脈に用いられる用語の「マイクロチャネル」とは、角質層の全て又は重要な部分を介して皮膚表面から一般に伸び、表皮又は真皮に到達できる親水性経路を称し、それを介して分子が拡散できる。ミクロチャネルが角質層に生じた後、装置は皮膚から取り外され、その後、活性薬剤は皮膚上に置かれたパッチから体循環中に送達されることを認識すべきである。
【0044】
本発明は、以下の米国特許第6,148,232号;米国特許第5,983,135号;米国特許第6,597,946号;米国特許第6,611,706号;米国特許第6,708,060号;及びWO第2004/039428号の1つ又は複数に開示されており、それらの内容は、本明細書に記載されているように参照として組み込まれているViaDerm又はMicroDermと称される装置を含み、電流又はスパーク発生により、好ましくは高周波(RF)で角質層のアブレーションを誘導することによってマイクロチャネルを発生させる装置と技法が組み込まれている。しかしながら、本発明の幾つかの好ましい実施形態は、Viadermによる皮膚をアブレーションすることによって得られた経皮送達に関するが、対象の皮膚にチャネルを発生させるために当業界に知られた実質的に任意の方法が使用できる(例えば、米国特許第5,885,211号;米国特許第6,022,316号;米国特許第6,142,939号及び米国特許第6,173,202号を参照)。
【0045】
マイクロチャネルの性質は水性であるので、したがって、本発明のシステムは、角質層のアブレーションによって生じる新たな皮膚環境を介した親水性高分子の送達に大いに好適である。
【0046】
用語の「活性薬剤」及び「治療用又は免疫原性薬剤」は、生物(ヒト又は動物)に投与される場合に、全身作用による所望の治療効果を誘導する化合物を称して本明細書中互換的に用いられる。
【0047】
本発明によれば、本発明のシステムは、ペプチド、ポリペプチド、及び蛋白質の経皮送達に好適である。
【0048】
「ペプチド」とは、モノマーがアミド結合を介して一緒に結合しているアミノ酸であるポリマーを称す。「ペプチド」は、一般に蛋白質よりも小さく、典型的には全部で30〜50のアミノ酸以下である。
【0049】
「ポリペプチド」とは、アミノ酸、一般に50個以上のアミノ酸の単一ポリマーを称す。
【0050】
本明細書に用いられる「蛋白質」とは、アミノ酸、典型的に50個以上のアミノ酸のポリマーを称す。本発明において活性薬剤として用いることができるペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質は、天然のペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質、修飾された天然のペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質、或いは天然のペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質と同一であっても、又はそうでなくてもよい化学的に合成されたペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質であり得る。ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質の誘導体、類縁体及び断片は、それらが治療用又は免疫原性効果を保持している限り本発明に包含される。
【0051】
一態様によれば、本発明は、対象の皮膚上の領域において少なくとも1つのマイクロチャネルを発生できる装置、及び少なくとも1層の薬物貯留層を含むパッチを含む、対象の皮膚を介した活性薬剤の経皮送達を促進するシステムであって、前記薬物貯留層はポリマーマトリックス及び活性薬剤として治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含む医薬組成物を含むシステムを提供する。
【0052】
本発明の原理と関連する使用に好適な活性薬剤としては、限定はしないが、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1及びインスリン様成長因子−2、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、上皮小体ホルモン、成長ホルモン、骨形成蛋白質、エリスロポエチン、ヘモポイエチン成長因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、因子VIIIC、因子IX、組織因子、及びフォンウィルブランド因子などの凝固因子、蛋白質Cなどの抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、ウロキナーゼ又は組織タイププラスミノーゲン活性化因子などのプラスミノーゲン活性化因子、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、ミュラー抑制剤、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、プロレラキシン、Dナーゼ、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、ホルモン又は成長因子の受容体、インテグリン、蛋白質A又は蛋白質D、リウマチ因子、骨由来神経栄養因子(BDNF)、神経栄養3、4、5及び6(NT−3、NT−4、NT−5、又はNT−6)などの神経栄養因子、CD−3、CD−4、CD−8、及びCD−19などのCD蛋白質、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン−アルファ、−ベータ、及び−ガンマなどのインターフェロン、コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−−CSF、及びG−CSF、インターロイキン(IL)、例えば、IL−1からIL−10まで、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜蛋白質、崩壊促進因子、例えば、AIDS外膜の一部などのウィルス抗原、輸送蛋白質、ホーミング受容体、アドレッシン、調節蛋白質、抗体、上記に掲げた任意のポリペプチドの類縁体、及び断片など、治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、及び水溶性薬物が挙げられる。
【0053】
本明細書に用いられる用語の「類縁体」とは、天然ペプチド、ポリペプチド、蛋白質のアミノ酸置換、付加、削除、又は化学修飾により改変された配列を含むペプチド、ポリペプチド又は蛋白質を称す。「アミノ酸置換」を用いることにより、機能的に等しいアミノ酸残基を、沈黙変化をもたらす配列内の残基に置換されることを意味する。例えば、配列内の1つ又は複数のアミノ酸残基を、沈黙変化をもたらす官能基等価体として働く同様の極性の別のアミノ酸により置換できる。配列内のアミノ酸置換基は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択できる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンが挙げられる。極性の中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが挙げられる。陽電荷(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン及びヒスチジンが挙げられる。陰電荷(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。このような置換は、保存的置換として知られている。さらに、非保存的置換は、ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質の生物学的活性に寄与しないアミノ酸において実施し得る。
【0054】
本発明によれば、パッチは、活性薬剤が埋め込まれるか、又は非共有結合される少なくとも1層の薬物貯留層を含む。種々のポリマーは、薬物貯留層を形成するために使用でき、バイオポリマー及び親水性合成ポリマーを挙げることができる。
【0055】
本発明により用いることができるバイオポリマーとしては、限定はしないが、多糖類、特に例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、キチン及び/又はキトサン、アルギネート;コラーゲン;デラチン;ペクチン;グリコサミノグリカン(GAG);プロテオグリカン;フィブロネクチン;カラゲナン;及びラミニンが挙げられる(例えば、米国特許第5,418,222号;米国特許第5,510,418号;米国特許第5,512,301号;米国特許第5,681,568号;米国特許第6,596,293号;米国特許第6,565,879号及びそれらの中の引用文献及びCurr.Pharm.Biotechnol.、2003年、4(5):283〜302頁;Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.、2001年、18(5):459〜501頁;Eur.J.Pharm.Sci.2001年、14(3):201〜7頁;Adv.Drug Deliv.Rev.、2001年、51(1〜3):81〜96頁;及びInt.J.Pharm.2001年、221(1〜2):1〜22頁を参照)。
【0056】
本明細書の下記に開示された代表的な実施形態によれば、薬物貯留層は、溶解性コラーゲンの溶液から製造することができる。溶解性コラーゲンは、400,000未満の平均分子量を有し、好ましくは約300,000の分子量を有するコラーゲンである。溶解性コラーゲンの好ましい特性の1つは、最少量架橋、すなわち0.5%以下を有することである。特に好適な溶解性コラーゲンは、Vitrogen(登録商標)(Cohesion Technologies社、カリフォルニア州パロアルト所在)である。コラーゲンの他の形体、すなわちコラーゲンのアテロペプチド形体はまた、本発明に使用できることが理解されるであろう。アテロペプチドコラーゲンは、免疫原性を伴うことが多い精製コラーゲンの一端に配置されているペプチドであるテロペプチドがないコラーゲンである。コラーゲンのテロペプチド形体の溶液は、有機酸を用いる加水分解によりコラーゲンのアテロペプチド形に変換できる。
【0057】
一般に、バイオポリマーは、活性薬剤と結合できる荷電されているか、又は高度極性基を有する。該バイオポリマーは、選択された活性薬剤に対してその結合親和性を変えるために化学的に修飾して活性薬剤への結合親和性を改善できる。しかしながら、本発明の原理によれば、ポリマーマトリックスは、必ずしも活性薬剤と結合しない。活性薬剤は、ポリマーマトリックスに対して埋め込まれるか、又は非共有結合されて薬物貯留層を形成できる。
【0058】
本発明により使用できる親水性合成ポリマーとしては、限定はしないが、ポリグリコール酸(PGA)ポリマー、ポリ乳酸(PLA)ポリマー、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、例えば、ジイソシアネート/ポリグリコール及びグリコールがポリエチレングリコールであるグリコール結合に基づくポリウレタン、並びに当業界に知られている他の親水性合成ポリマーなど、生分解性及び非分解性ポリマーが挙げられる。薬物貯留層を形成するために、バイオポリマーが親水性合成ポリマーと共役している化学結合体は、本発明に包含されていることも当業者にとって認識されるべきである。例えば、米国特許第5,510,418号は、親水性合成ポリマーに化学的に共役された化学的誘導GAG類を含む生体適合性結合体を開示している。したがって、親水性合成ポリマーに共役結合されたGAGを含む結合体は、コラーゲンなどの別のバイオポリマーにさらに結合して三成分の結合体を形成できる。本発明のポリマー物質は、架橋が可能であるが、架橋する必要はない。
【0059】
典型的に、薬物貯留層の数は、所望の放出特性により決定される。一般に、層の数が増すと活性薬剤の安定性並びに持続性が増すことになる。異なる層内の活性薬剤の濃度は異なっていてよく、また、異なる層の厚さは、同じである必要はない。さらに、薬物貯留層は、所望の治療用又は免疫原性効果を達成するために、1種又は複数種の活性薬剤を含むことができる。
【0060】
本発明の原理は、薬物貯留層の乾燥製剤、すなわち、コラーゲン及び活性薬剤を含有する薄膜により本明細書の下記に例示される。本明細書に十分に記載され、参照として組み込まれている米国特許第5,418,222号は、薬剤の制御放出に有用である単一及び複数のコラーゲン薄膜を開示している。しかしながら、薬物貯留層は、半乾燥形態、液体形態又はヒドロゲル形態で製剤化できることも認識すべきである。ヒドロゲルは、水を吸収するが、水に溶解しない高分子ネットワークである。すなわち、ヒドロゲルは、水吸収を提供する親水性官能基を含有するが、ヒドロゲルは、水性不溶性を引き起こす架橋ポリマーからなる。一般に、ヒドロゲルは、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、デキストラン、セルロース、アルギネート、キチン、キトサン、寒天、アガロース、カラゲナン、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(ポリ(HEMA))、それらのコポリマー又は混合物などの親水性、好ましくは架橋ポリマーからなる。さらに、活性薬剤の安定性及び保持のポリマー特徴を維持する任意の他の製剤もまた考え得る。
【0061】
典型的に、身体皮膚と密接な接触を呈するために薄く、可撓性で整合している薄膜内に製剤化されたものなどの薬物貯留層を水和でき、また、薬剤の治療有効な経皮流量を達成するのに十分な率で貯留層から活性薬剤を放出できる。本発明の装置は、浸出液が放出される親水性マイクロチャネルを生じるので、これらの浸出液は、薬物貯留層内に含まれた薬物を放出する。
【0062】
本発明によれば、パッチは、通常細孔膜である1層又は複数層の律速層を含むことができる。この律速層は、バイオポリマー及び/又は合成ポリマーを含む。この律速層は、活性薬剤を欠いている。律速層を形成するために有用な代表的な材料としては、限定はしないが、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン−エタクリレートコポリマー、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、エチレン−ビニルメチルアセテートコポリマー、エチレン−ビニルエチルアセテートコポリマー、エチレン−ビニルプロピルアセテートコポリマー、ポリイソプレン、ポリアクリロニトリル、エチレン−プロピレンコポリマー、セルロースアセテート及びセルロースナイトレート、ポリテトラフルオロエチレン(「Teflon(登録商標)」)、ポリカーボネート、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリスルホンなどが挙げられる。
【0063】
種々の層は、当業界に知られた任意の方法により互いに接触する。1つのこのような方法は、互いに隣接して各層を配置し、一緒にこの層を押し付けるために層の外側に圧をかけることである。別の方法は、各層を配置する前に水などの溶媒により各層の表面をコーティングして接触させることである。この方法において、各表面の薄い部分は、可溶性になることにより接触の際に接着性を生じる。別の方法は、1つ又は複数の接触面に知られた接着剤を使用することである。該接着剤は、薬物貯留層からの活性薬剤送達を妨害しないものが好ましい。
【0064】
本発明によれば、パッチは、活性薬剤を投与するために用いられ、その場合、活性薬剤は、1層又は複数層の薬物貯留層に存在する。薬物貯留層は、それ自体接着性があるか、又は薬物貯留層に接着した接着層をさらに含むことができる。パッチは、さらにバッキング層を含むことができる。
【0065】
典型的に、バッキング層は、経皮システムの主要な構造的要素として機能し、可撓性を提供し、好ましくは閉塞性を提供する。バッキング層に用いられる材料は、不活性であり、薬物貯留層内に含まれている活性薬剤又は医薬組成物のいずれの成分をも吸収してはならない。バッキング層は、パッチの上面を通る透過による活性薬剤の損失を防ぐための保護カバーとして役立つ可撓性のエラストマー材料を含むことが好ましく、パッチによって覆われた体表面の領域が使用中に水和されるように該システムにある程度の閉塞性を与えることが好ましい。バッキング層に用いられる材料は、装置が皮膚の形状に従うことができ、皮膚及び装置の可撓性又は弾性における相違のため、皮膚から装置が離れる可能性が殆どないか、又は離れないように、機械的歪みに正常に供されるジョイント又は他のたわみ点などにおいて皮膚の領域に快適に装着されるべきである。バッキング層に有用な材料の例は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエーテルアミドなどである。
【0066】
使用前の貯蔵中、パッチはアブレーションライナーを含むことができる。使用直前に、この層は、パッチが皮膚に貼り付けできるように取り外される。アブレーションライナーは、薬物又は活性薬剤の不透過性材料から作製すべきであり、適用前のパッチを保護するのみに役立つ使い捨て要素である。
【0067】
本発明の原理によれば、医薬組成物は製薬的に許容できる担体を含む。
【0068】
用語の「製薬的に許容できる」とは、連邦政府又は州政府の規制当局により認可されたもの、或いは動物、特にヒトへの使用のため米国薬局方又は他の一般的に認識された薬局方に掲げられたものを意味する。用語の「担体」とは、治療剤と共に投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は媒体を称す。担体は、組成物に好適な整合性又は形態を付与するように医薬組成物に添加される場合、多かれ少なかれ不活性物質である。
【0069】
本明細書に用いられる「製薬的に許容できる担体」は、水性又は非水性溶液、懸濁液、又は乳液であってもよい。水性担体の例としては、水、生理食塩水及び緩衝媒体、アルコール性/水性溶液、乳液又は懸濁液が挙げられる。
【0070】
医薬組成物の所望の特性を最適化するために、種々の添加物を医薬組成物に場合によっては含んでもよい。したがって、活性薬剤の安定性を改善するために、好適な安定化剤を加えることができる。好適な安定化剤としては、限定はしないが、大部分の糖類、好ましくはマンニトール、乳糖、ショ糖、トレハロース、及びグルコースが挙げられる。水分吸収を改善するために、その上さらに吸湿性添加物を加えてもよい。使用される特定の活性薬剤と適合できるpHを生じさせるために、好適な緩衝液を使用できる。好適な緩衝液としては、酢酸、リン酸又はクエン酸緩衝液など、大部分が一般に知られて利用されている生物学的緩衝液が挙げられる。適合できるpHは、活性薬剤の安定性を維持し、その治療効果を最適にし、又はその分解に対して保護するものである。好適なpHは、一般に約3から約8まで、好ましくは約5から約8までであり、好適なpHは、約7.0から約7.5までのほぼ中性のpHが最も好ましい。さらにその上、プロテアーゼ阻害剤、抗酸化剤、及び保存剤を、単独又は組み合わせて添加できる。
【0071】
活性薬剤を含む医薬組成物は、薄膜形成、ヒドロゲル形成、又は薬物貯留層の任意の他の製剤化時にバイオポリマー又は親水性合成ポリマーの溶液中に組み込まれてもよいか、或いは活性薬剤を含む医薬組成物は、薄膜、ヒドロゲル形成又はポリマーマトリックスの他の製剤化に続いて添加されてもよい。代表的な実施形態において現在、hGH又はヒトインスリン溶液の各々は、コラーゲン薄膜形成時にコラーゲン溶液に添加された。一般に、薬物溶液又は薬物/ポリマー溶液は、薄膜又はヒドロゲル形成後に乾燥することが可能である。乾燥時間は、乾燥温度によって変わる。好適な温度は、約15℃から37℃までである。
【0072】
所望の血清中濃度を提供するために必要な治療用又は免疫原性薬剤量は、本明細書の下記の方法及び当業界に知られた方法により決定できる。したがって、1パッチ当たりの医薬組成物中の治療用又は免疫原性薬剤量は、所望の治療効果を達成するために変わり得る。
【0073】
活性薬剤の経皮送達を増強させる装置及び方法
本発明のシステムは、活性薬剤の経皮送達を増強させる装置を含む。本発明の原理によれば、該装置は、それを介して活性薬剤が効率的に送達される新たな皮膚環境を発生させるために用いられる。
【0074】
本明細書に用いられている用語の「新たな皮膚環境」は、本発明の装置を用いて、角質層のアブレーション及び少なくとも1つのマイクロチャネルの形成により発生した皮膚の領域を意味する。
【0075】
本明細書に完全に記載されているかのように、参照として組み込まれているAvrahamの米国特許第6,148,232号は、対象の皮膚のそれぞれの点に電極を適用し、2つ以上の電極間に電気的エネルギーを加えて、抵抗加熱、及びそれぞれの点の主に中間領域に、角質層の引き続くアブレーションを生じさせる装置を開示している。電極の間隔空け、隣接電極間の皮膚電気抵抗のモニタリングなど、角質層に対するアブレーションを制限するための種々の方法が記載されている。米国特許第6,148,232号に開示されたタイプの経皮薬物送達及び検体抽出のための装置、及び本明細書に完全に記載されているかのように、参照として組み込まれている米国特許第5,983,135号、第6,597,946号、第6,611,706号、第6,708,060号に開示されているものなど、前記発明に対する種々の変更は本発明に包含される。
【0076】
幾つかの実施形態によれば、治療用又は免疫原性薬剤の経皮送達を増強させる装置は、複数の電極を含む任意に取り外し可能な電極カートリッジ、及び主要ユニットを含み、前記電極カートリッジを装填した主要ユニットもまた、本明細書においてViaDermと呼ぶ。
【0077】
制御ユニットは、電極カートリッジが皮膚の近傍にある場合、典型的には、電流又は1つ又は複数のスパークを発生させることにより電極に電気的エネルギーを加えるようになされている。電極アレイ内の各電極における電気的エネルギーは、電極下の領域における角質層のアブレーションを引き起こし、それによって、少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させる。電気的エネルギーは高周波(RF)であることが好ましい。
【0078】
電流又はスパークの発生を制御し、その結果、生じるマイクロチャネルの大きさ及び形状を制御するために、制御ユニットは、電極に送達される電気的エネルギーの大きさ、回数、及び/又は持続時間を制御することのできる回路を含む。典型的には、電極カートリッジは1回使用後に廃棄され、そのため、主要ユニットへの取り付け及び該ユニットからの引き続いての取り外しが容易であるようにデザインされる。
【0079】
カートリッジ及びその結合電極の汚染の機会を最少化するために、カートリッジの取り付け及び取り外しは、使用者の身体がカートリッジに触れずに行われる。カートリッジは、滅菌カートリッジホルダー内に密封され、使用直前に開き、それからカートリッジを主要ユニットに固定する仕組みを係合させるために、主要ユニットをカートリッジの上面に接触させることが好ましい。使用者がカートリッジに触れる必要のないカートリッジのアンロッキング及び取り出しの簡便な手段もまた提供される。
【0080】
場合によっては、パッチを、皮膚の治療領域の上に正確に置くことができるように、電極カートリッジは、マイクロチャネルができた皮膚の領域をマークする手段をさらに含む。マイクロチャネルの発生は(Avrahamiらの上記で引用した米国特許及び本特許出願の譲受人に譲渡された特許出願に記載された方法に従って実施した場合)、典型的に発生する多数のマイクロチャネルであっても、新たな皮膚環境に対して感知できる刺激には関係ないため、一般に、肉眼で見えるマークを残さない。
【0081】
本発明の幾つかの実施形態による他の適用では、マイクロチャネルは、パッチの適用と別に、又は同時に発生させ得る。他の適用の中でも、該システムは接着性の切り抜きテンプレートを含み、前記切り抜きテンプレートは、皮膚上に配置され、該テンプレートを通して露出した皮膚の領域を治療するために、該テンプレートを通してカートリッジが配置される。本発明の実施形態によって、パッチに含有される活性薬剤はテンプレートに取り付けられ、それが皮膚の治療領域にわたって配置される。これらの適用において、保護バッキング層を除去後、パッチのテンプレート部分を皮膚に配置し、接着剤で固定する。次いで、電極カートリッジをハンドルに取り付け、該カートリッジをテンプレート内側の皮膚の領域に対して配置するために、使用者は該ハンドルを握り、電極に電流を流して皮膚を処置する。その後、カートリッジは廃棄される。次いで、皮膚の治療領域にわたってパッチを同時に引き上げて配置するように、カバーから出ているタブを引っ張ることによって保護カバーをパッチから取り除く。テンプレートとパッチを単一のユニットに組み込むことで、使用者がパッチを正確に皮膚の治療領域に配置することを助ける点が注目される。この様式で本発明のシステムを利用することが、非感染適用のため有利となる。
【0082】
さらに他の適用では、本特許発明の出願人に譲渡され、本明細書に記載されたかのように、参照として組み込まれている米国特許第6,611,706号に開示された実用的装置を提供するために、組み込み型の電極/薬剤添加パッドカートリッジが使用される。これらの適用において、該カートリッジは、電極アレイ、制御ユニット及び薬剤添加パッドを含む。したがって、典型的には、テンプレートは必要ない。使用者が電極を皮膚に配置すると、電極内の電流又はスパーク形成の開始及び引き続いてのマイクロチャネルの形成にとっては、この接触で十分である。電極が皮膚に配置されると、薬剤添加パッドの底部と結合している接着剤ストリップが皮膚に接触して粘着する。ハンドルに固定された電極領域を皮膚から取り外すと、上部カバーが薬剤添加パッドから除去され、パッドが同時に皮膚の治療領域に折り重なるように、薬剤添加マトリックス上の上部カバーがカートリッジの電極領域に結合する。このタイプの適用により、使用者が電極カートリッジ又は薬剤添加パッドのいずれの部分にも触れる必要性がなくなり、したがって、使用者が該装置を汚染させる可能性が実質的に減少するか又はなくなる。
【0083】
幾つかの実施形態によれば、細胞を加熱することによって角質層をアブレーションさせるために、皮膚に電流を印加する。他の実施形態によれば、フィードバックの一形態として、スパークの発生、スパーク発生の停止、又は特定の電流レベルを使用でき、これは、所望の深さに達すると電流の印加が中止されるべきであることを示している。これらの適用では、電極は所望の深さまで角質層及び表皮のアブレーションを促進するが、その深さを超えては促進しない導電性のカートリッジ内に形状化され及び/又は支持されていることが好ましい。或いは、スパークの発生無しで角質層をアブレーションするように電流を設定できる。
【0084】
本発明の一般的に好ましい実施形態は、典型的には、本発明の出願人に譲渡され、本明細書に記載されたかのように、参照として組み込まれている「経皮薬物送達及び検体抽出のための単極及び二極電流印加(Monopolar and bipolar current application for transdermal drug delivery and analyte extraction)」という標題の米国特許第6,611,706号に記載された方法及び装置を組み込んでいる。例えば、米国特許第6,611,706号は、皮膚に接触させて、又はそれから約500ミクロンまでの距離にアブレーション電極を維持することを記載している。したがって、本明細書及び請求項を通して用いられている用語の皮膚の「近傍に」は、電極から皮膚表面までの0ミクロンから約500ミクロンの距離を含む。該適用はさらに、約10kHzと4000kHとの間、好ましくは約10kHと500kHとの間の周波数を有する電場を印加することによる角質層のスパーク誘導アブレーションを記載している。
【0085】
或いは又はそれに加えて、本発明の好ましい実施形態は、本明細書に記載されたかのように、参照として組み込まれている「経皮薬物送達及び検体抽出のための手持型装置及び方法(Handheld apparatus and method for transdermal drug delivery and analyte extraction)」という標題の米国特許第6,708,060号に記載された方法及び装置を組み込んでいる。
【0086】
本発明の幾つかの実施形態によれば、該カートリッジは、カートリッジの下の皮膚の領域に高マイクロチャネル密度を発生させるために一緒に作用する電極のアレイ、好ましくは、間隔の密な電極を支持している。しかし典型的には、角質層に発生したマイクロチャネルの全体面積は、電極アレイに覆われた全体面積に比べて狭い。
【0087】
本発明の他の実施形態によれば、電極アレイから皮膚へと通る電流にとっての帰路として、カートリッジの皮膚接触面を用いることにより、同心性電極セットが形成される。該カートリッジは、比較的広い皮膚との接触面面積を有し、その結果、カートリッジの近くの皮膚に比較的低い電流密度が生じ、したがって、接触面における皮膚に有意な加熱又は実質的な損傷を生じさせないことが好ましい。
【0088】
それと対照的に、電極アレイにおける各電極の近位では、高エネルギー印加電場が典型的に極めて急速な加熱及び角質層のアブレーションを誘導する。
【0089】
本発明はまた、本発明の原理に従った経皮送達システムを用いて、活性薬剤を持続送達する方法を提供する。典型的には、新たな皮膚環境を形成する方法は、皮膚の上に、少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させるための装置を配置するステップを含む。マイクロチャネルを発生させる前に、処置部位を滅菌アルコールパッドでふき取ることが好ましい。前記部位は処置前に乾燥させておくことがより好ましい。
【0090】
本発明のある例示的な実施形態によれば、マイクロチャネルを発生させるために用いられるタイプの装置は、米国特許第6,148,232号及び米国特許第6,708,060号に開示されている。電極アレイを含有する装置は、処置部位に置かれ、このアレイはRFエネルギーによりエネルギーが与えられ、処置が開始する。原理的に、アブレーション及びマイクロチャネルの発生は、数秒以内で完了する。マイクロチャネルを、制限された深さ、好ましくは角質層及び表皮の限定された深さで発生させた後、この装置は取り外される。本発明の原理によるパッチは、新たな皮膚環境に付着される。
【0091】
本発明は、治療用又は免疫原性薬剤の持続性経皮送達の方法を提供し、この方法は、
(i)対象の皮膚上の領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させるステップ、
(ii)前記少なくとも1つのマイクロチャネルが存在する皮膚の領域にパッチを固定させるステップであって、前記パッチは少なくとも1層の薬物貯留層を含み、前記薬物貯留層はポリマーマトリックス及び治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含むステップ、及び
(iii)前記ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質の治療的血中濃度を、少なくとも6時間達成させるステップ
を含む。
【0092】
本明細書に定義される「治療有効血中濃度」とは、治療効果が生じる治療用又は免疫原性活性薬剤の濃度を意味する。
【0093】
用語の「治療的」とは、病的状態又は疾患に対して、対象の臨床病態の改善及び/又は全体又は部分的保護が含まれることを意味する。本発明は、有効成分として免疫原性薬剤を含むので、本明細書を通して用いられる用語の治療的なこととしては、例えば、細胞の免疫応答及び/又は体液免疫応答などの免疫応答の誘導が挙げられる。
【0094】
例示的な一実施形態によれば、活性薬剤はhGHである。本明細書の下記に開示されるように、ラット及びモルモットにおいて10ng/mlから50ng/mlまでの範囲でhGHの血中濃度は、200μgのhGHをコラーゲン薄膜で投与した場合、約2〜4時間以内に、約10時間得られた。対照的に、200μgのhGHをコラーゲン薄膜のない印刷パッチでモルモットに投与した場合、同様のhGHの血中濃度が、1時間以内に、5時間のみ得られた(本明細書中下記の実施例4を参照)。このように、本発明の原理による経皮送達方法は、hGHの持続的送達を提供する。
【0095】
他の例示的実施形態において、活性薬剤はヒトインスリンである。本発明によれば、本発明のシステムにより糖尿病ラットに経皮的に投与されたヒトインスリン(0.4IU)は、パッチ適用2.5時間後、血中グルコース濃度を正常化し、このような正常な濃度は、約9時間維持された(実施例7を参照)。対照的に、同じ用量でインスリンの皮下投与は、注射1時間後に糖尿病ラットにおいて血中グルコース濃度が減少し、正常な血中グルコース濃度は5時間維持した。このように、本発明による経皮送達は、治療効果が最高に達するインスリンの持続的送達を提供する。
【0096】
このように本発明は、ポリマー、好ましくはバイオポリマー又は親水性ポリマー又はそれらの組合せ内に含浸又は埋め込まれた、例えば、hGH又はヒトインスリンなどの治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質を含むパッチを包む。本発明の装置と共にこのようなパッチを使用すると、治療血中濃度が少なくとも6時間、好ましくは少なくとも8時間、より好ましくは少なくとも10時間達成される結果となる。
【0097】
さらに、治療用ペプチド、ポリペプチド又は蛋白質の治療血中濃度は、対象の臨床状態によって判断される。例えば、インスリンの治療血中濃度は、糖尿病対象の血中グルコース濃度によって判断される。また、hGHの治療血中濃度は、小児における成長速度又は成人におけるIGF−1の血中濃度によって判断される。したがって、対象の臨床状態に基づいて、臨床医は、当業界に知られた活性薬剤の治療的濃度を判断すると考えられる。同様に、治療期間又は治療薬剤に対する曝露期間は、治療を受ける疾患、並びに性別、年齢、及び患者の全身状態など二次的因子を考慮して臨床医により判断される。
【0098】
ここに本発明を一般的に説明したが、例示として提供され、本発明を限定する意図がない、以下の実施例を参照にするとさらに容易に同じことが理解されるであろう。
【実施例】
【0099】
(実施例1)
hGH−コラーゲン薄膜ベースパッチの調製
本実施例に用いられるコラーゲンは、Vitrogen(登録商標)100(3mg/ml、Cohesion Technologies社、米国カリフォルニア州パロアルト)であった。ヒト成長ホルモンは、Genotropin(登録商標)(5.3mg/16IU、Pharmacia and Upjohn、スウェーデン国ストックホルム)であった。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、Biological Industries(イスラエル国、Kibbutz Beit Haemak)から入手した。
【0100】
コラーゲンパッチの幾つかは、以下のものから構成されていた:接着剤(National−Starch Duro−Tak 387−251;オランダ国Zutphen)でコーティングされ、有孔SIL−Kシリコンストリップ25ミル(Dgania Silicone、イスラエル国Dgania)で覆われ、1.4cm2の開口側のバッキングライナーBLF2080 3ミル(Dow film)、及びアブレーションライナーRexam 78CD(Rexam社、米国イリノイ州ベッドフォードパーク)。
【0101】
コラーゲン(Vitrogen(登録商標))溶液を、コラーゲン:PBS×10:NaOHをそれぞれ8:1:1の体積比でPBS×10及びNaOH 0.1Mと静かに混合した。所望の量のhGHを、14mg/mlの保存溶液から加えた。最終体積が300〜400μlのコラーゲン−hGH溶液を、パッチテンプレートに注ぎ、ゲル化が生じるまで37℃で30分間置いた。次に、パッチを風乾し、パラフィンでカバーし、ラミネートバッグ、シリカゲル及びアルゴンと共に包装した。パッチは、使用されるまで4℃に維持した。
【0102】
(実施例2)
コラーゲン薄膜ベースパッチパッチからhGHの回収
コラーゲン薄膜中のヒトGH含量は、PBS溶液に対するhGHの抽出及びゲルろ過HPLC(Phenomenex SEC、250x4.6mm、Phenomenex)を用いる定量的分析により決定された。コラーゲン薄膜からhGHの回収は、表1に要約されている。
【0103】
【表1】
300ミリグラムのhGHを、各パッチ上に装填した。回収結果は、3つの実験の平均値±SDである。表1に示されるように、最初の量の90%以上が、5分以内で薄膜から抽出された。接着剤群内の変化はより高かったが、コラーゲンを接着剤に直接注ぐ場合、又はバッキングライナーに注ぐ場合において抽出量に有意差はなかった。
【0104】
放出動態を試験するために、コラーゲン薄膜をPBS(2ml)に懸濁し、室温でインキュベーションした。種々の時点で、緩衝液を新鮮な緩衝液と交換し、hGH量をゲルろ過HPLCにより分析した。
【0105】
Vitrogen(登録商標)タイプのコラーゲンは、1時間以内でhGHの大部分を放出された。ViaDerm処置の皮膚を介してコラーゲン−hGHからhGHの放出を次の実験で調べた。
【0106】
(実施例3)
皮膚を介するhGHのin vitro透過性試験
ブタ皮膚を介するhGHの透過性は、Franz分散細胞系(社内製)によりin vitroで測定した。分散領域は2cm3であった。皮膚切断された(300〜500μm、Electric Dermatom、Padgett Instruments社、米国ミシガン州カンザス)ブタ皮膚を、屠殺白ブタ(Landres and Large Whiteの育種、イスラエル国Kibbutz Lahav地域で飼育)から切除された。経皮水分損失測定(TEWL、Dermalab Cortex Technology、デンマーク国Hadsund)を実施し、15g/m2/時間未満のTEWL濃度を有するものだけを、分散細胞に乗せた。
【0107】
必要な量のhGHで印刷パッチを調製するために、各液滴の体積を、溶液中のhGHの濃度に従って算出し、それに応じて1液滴当たりの印刷を必要とするシリンジプランジャーの置き換えを調整し、0.035〜0.105mmの範囲は0.09〜0.18μlに相当する。この置き換え範囲は、印刷をコントロールする基本プログラムに送り込まれた。次にバッキング薄膜層(DOW BLF2080(商標)、The Dow Chemical社、米国ミシガン州)を、平らな金属ブロック上に明るい側を上にして平らに置いた。hGH溶液を含有するシリンジを、XYZ投与機に乗せてから、バッキングライナー上に測定したhGH液滴を乗せた。数分以内に液滴は連続的に乾燥し始めたことに注意すべきである。印刷液滴の144ドットアレイが形成されたら、新たなアレイの印刷を新しい位置で開始した。この方法によれば、5.5×1.6インチのバッキングライナー上に6アレイまで形成することが可能であった。印刷された144ドットアレイの2×2cm2の切片を、密閉バイアル中4℃で維持した。
【0108】
皮膚マイクロチャネル化は、ViaDerm(商標)装置を用いて実施した(内容が、本明細書に完全に記載されているかのように、参照として組み込まれている米国特許第6,148,232号、WO2004/039428及びそれらの中の引用文献、Sintovら、J.Cont.Release 89、311〜320頁、2003年)。全ての試験に用いられた微小電極アレイの密度は、100/cm2であった。この装置を、各位置に2回適用し、それよってマイクロチャネルの密度は、200/cm2であった。皮膚は、330Vの印加電圧、100kHzの周波数、2回のバースト、700マイクロ秒のバースト長、及び電流制限のない条件で処理した。ViaDermの適用後、TEWLは、操作をコントロールするために再度測定した。
【0109】
皮膚片は、PBSで3回洗浄し、hGHが刷り込まれたパッチ又はhGHコラーゲン薄膜は、角質層側に置いた。次いで皮膚とパッチ又は薄膜を、角質層を上に向けて受容体細胞上に置き、ドナーチャンバは、その場にクランプで留めた。受容体細胞は、0.1%アジ化ナトリウム、(Merk、ドイツ国ダルムシュタット)、1%ウシ血清アルブミン(Biological Industries、イスラエル国Kibbutz Beit Haemak)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(50ml PBS当たり1個の錠剤、Complete Mini、Roch)を含んだリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で満たされた。受け器溶液からのサンプルを、20時間まで予め決められた時間でチューブに採取した。サンプルは、分析されるまで4℃に維持した。hGH分析は、ELIZAキット(DSL−10−1900、Diagnostic Systems Laboratories社、米国テキサス州ウェブスター)により実施した。
【0110】
結果
ViaDerm処理皮膚を介した印刷パッチ又はコラーゲン薄膜からhGHの累積透過性を図1に示す。図1に示されるように、hGH−コラーゲン薄膜ベースのパッチを用いるhGHの投与は、薄膜又は印刷パッチ投与1時間後のhGH印刷パッチにより得られたものと比較して、より低いhGH透過性を生じた。これらの結果、遅延送達は、hGH−コラーゲン薄膜ベースパッチを用いると達成されることを示している。しかしながら、hGH−コラーゲン薄膜ベースのパッチを用いたhGHのより後の時間での投与は、時間の関数として累積hGH量の増加をもたらし、hGH投与20時間後の全透過性は、hGH印刷パッチよりもhGH−コラーゲン薄膜パッチの方が2倍高かった(図1)。hGH経皮流量値(1時間につき1cm2当たりの透過量)を図2に示す。hGH適用1時間後、印刷パッチからのhGHの流量は、コラーゲン薄膜により得られたものよりも6倍大きかった。しかしながら、3時間から20時間までの時点で、コラーゲン薄膜からのhGHの流量は、印刷パッチから見られたものよりも高かった。このin vitro結果は、hGHの持続的送達は、コラーゲン薄膜により達成できることを示唆している。
【0111】
(実施例4)
in vivoでのhGH経皮送達
オスのモルモット(500〜800グラム、Dunkin Hartley、Harlan laboratories社、イスラエル国)及びオスのラット(350〜400、Sprague Dawley、Harlan laboratories社、イスラエル国)に、10%ケタミン/2%キシラジン溶液の70:30の比率、1ml/kgのIP注射により予め投薬した。麻酔は、イソフルオラン又はハロタンガスのいずれかで維持した。腹部皮膚の毛を注意深く剃り、イソプロピルアルコールで清浄した。30分後、経皮水分損失測定(TEWL、Dermalab Cortex Technology、デンマーク国Hadsund)を実施して皮膚の統合性をチェックした。皮膚のマイクロチャネル化は、上記実施例3に記載された条件でViaDerm装置の使用により実施した。次にTEWLを、操作をコントロールするために再度測定した。処置された皮膚は、hGH印刷パッチ又はhGH−コラーゲン薄膜ベースパッチのいずかでカバーし、血液サンプルは、0.2、4、6、9、12及び15時間適用後に、モルモットでは予め挿入された頚動脈カニューレから、或いはラットの尾から採血した。
【0112】
結果
ViaDerm処理のモルモット皮膚を介するhGHの送達を図3に示す。コラーゲン中のhGH埋め込みは、印刷パッチと比較して持続的送達をもたらした。このin vivo知見は、in vitro結果と相関する。最大の送達は、コラーゲン薄膜では6時間後に、印刷パッチでは2時間後に得られた(図3)。さらに、hGHは、印刷パッチの投与9時間後には検出されなかったが、一方、コラーゲンベースパッチの同じ時間の投与後には有意な濃度が検出された(図3)。
【0113】
ViaDerm処理のモルモット皮膚又はラット皮膚を介するhGHの送達を図4に示す。図4に示されるように、hGHの送達延長は、ラットにも見られた。ラットにおける曲線プロファイルは、モルモットのものと同様であった。
【0114】
送達延長は、hGHの高用量(300μg)を投与した場合でも達成された(表2を参照)。
【0115】
【表2】
【0116】
表2に示されるように、同様のhGH血清中濃度は、ViaDerm及びパッチ適用6時間後に見られた(コラーゲン薄膜ベースパッチ及び印刷パッチに対し、それぞれ33.1±10.9及び42.6±9.7ng/ml、表2)。しかしながら、はるかにより高いhGH血清中濃度は、より遅い時点でコラーゲン群に見られた(コラーゲン薄膜ベースパッチ及び印刷パッチに対し、それぞれ17.7±6.8対4.9±5.1ng/ml、表2)。このように、in vivo結果は、放出延長プロファイルは、生体適合性コラーゲン薄膜の使用により達成できることを示している。
【0117】
(実施例5)
インスリン−コラーゲン薄膜ベースパッチの調製
インスリン−コラーゲン薄膜ベースパッチの調製のために、用いられるコラーゲンは、Vitrogen(登録商標)100(3mg/ml、Cohesion Technologies社、米国カリフォルニア州パロアルト)又はアテロコラーゲン(6.5%、Koken社、日本国東京)のいずれかであった。ヒト組換えインスリンHumolog(登録商標)(Lispro−100IU/ml)、Humulin N(登録商標)(NPH−100IU/ml)、及びHumulin U(登録商標)(Ultra Lente(UL)−100IU/ml)は、Lilly(Lilly France S.A.、フランス国Fegershein)から購入した。
【0118】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、Biological Industries(イスラエル国Kibbutz Beit Haemak)から入手した。
【0119】
コラーゲンパッチのテンプレートは、寸法が2.25cm2のバッキングライナー(BLF2080 3ミル、Dow film)から構成されていた。
【0120】
Vitrogen(登録商標)(コラーゲンA)溶液を、コラーゲン:PBS×10:NaOHをそれぞれ8:1:1の体積比でPBS×10及びNaOH 0.1Mと静かに混合した。所望の量のインスリンを、100IU/mlの保存溶液から加えた。最終体積が300〜320μlのコラーゲン−インスリン溶液を、パッチテンプレートに注ぎ、ゲル化が生じるまで37℃で60分間置いた。次に、パッチを風乾し、ラミネートバッグ、シリカゲル及びアルゴンで包装した。パッチは、使用されるまで4℃に維持した。
【0121】
アテロコラーゲン(コラーゲンB)を、4℃でインスリン含有PBSにより所望の濃度に希釈した。インスリンの量は、パッチ中の最終選択量に従って算出された。インスリンは、100IU/mlの保存溶液から希釈した。
【0122】
最終体積が300μlのアテロコラーゲン−インスリン溶液を、パッチテンプレートに注ぎ、風乾した。パッチを上記のとおり詰めて維持した。
【0123】
(実施例6)
経皮適用前後のインスリン−コラーゲンパッチ中のインスリン含量
ViaDerm Engineering Prototypeを使用した。全ての試験に用いられた微小電極アレイの直径は、80μmであり、密度は、75/cm2であった。ラットの皮膚は、330Vの印加電圧、100kHzの周波数、2回のバースト、700マイクロ秒のバースト長、及び電流制限のない条件で処理した。
【0124】
全てのコラーゲンパッチ中のインスリン含量は、PBS又はHCl 0.1N溶液(それぞれインスリン−lispro又はインスリン−NPH/ULに対して)に対するインスリンの抽出により決定され、逆相HPLC分析により定量化した。
【0125】
結果
経皮適用前後のコラーゲンパッチ中のインスリン含量分析の要約を表3に示す。
【0126】
【表3】
【0127】
表3に示されるように、高用量のパッチ(1.8IUのインスリンを投入)は、平均して1.5IUのインスリンを含有し、適用された最初の量の83%を構成する。低用量(LD)のパッチ(0.6IUのインスリンを投入)は、0.4IUのインスリンを含有し、適用された最初の量の67%を構成する。抽出されなかった最初のインスリン投入量の20〜30%は、コラーゲン又はアテロコラーゲンに結合していると考えられた。
【0128】
種々のコラーゲンパッチ内のインスリン含量の差異が、比較的小さかった(0〜7%の標準偏差;表3)ことに注意すべきである。インスリン経皮適用後のパッチ内に残ったインスリン残量は、コラーゲンパッチ内のインスリン量及び皮膚に置かれたパッチの適用時間と相関した。0.4IUのパッチを、皮膚に12.5時間置いたところ、インスリン残量がないことが判明した(表3)。1.5IUパッチは、LDパッチよりもほぼ4倍以上のインスリンを含有し、より短い時間(8〜10時間)皮膚に置かれた。これらパッチ内のインスリン残量は、アテロコラーゲンパッチ及びVitrogen(登録商標)パッチについて、それぞれインスリン投入量の約20%及び40%であることが判明した(表3)。
【0129】
これらの結果により、インスリンは、最大効力(インスリン投入の100%)でLDインスリン−コラーゲンから経皮的に送達できることを示している。このような送達は、インスリンがインスリン−コラーゲンパッチから送達される場合、幾らかより低くなり、インスリン含量はより高くなる(1.5IUインスリン)。しかしながら、パッチ適用時間を延長すると、より高い効力が得られると思われる。
【0130】
(実施例7)
糖尿病ラットにおけるコラーゲン薄膜に埋め込まれたインスリンの生物活性
オスのラット(300〜325、Sprague Dawley、Harlan laboratories社、イスラエル国)は、パッチ適用前に飼料を与えず、48時間水を自由に摂取させた。糖尿病を誘発するために、パッチ適用24時間前にラットにストレプトゾトシン(クエン酸緩衝液中55mg/kg、0.1M、pH4.5;Sigma、米国ミズーリ州セントルイス)をIP注射した。
【0131】
Keto−Diastix−Glucose及びKetones尿検査スティック、Glucometer(登録商標)、及び血糖値試験ストリップを用いた(Ascensia Elite、Bayer)。
【0132】
注射24時間後、グルコース濃度が300mg/dl超であり、陽性の尿中グルコース及び陰性の尿中ケトンが観察された場合に、ラットは、糖尿病として定義された。糖尿病ラットに、70:30の比の10%ケタミン/2%キシラジン溶液1ml/kgをIP注射した。麻酔は、イソフルオラン又はハロタンガスのいずれかで維持した。腹部皮膚の毛を注意深く剃り、イソプロピルアルコールで清浄した。30分後、経皮水分損失測定(TEWL、Dermalab Cortex Technology、デンマーク国Hadsund)を実施して皮膚の統合性をチェックした。皮膚のマイクロチャネル化は、実施例6に記載された条件でViaDerm装置の使用により実施した。次にTEWLを、操作をコントロールするために再度測定した。処置された皮膚は、種々のインスリン−コラーゲンパッチでカバーした。0.4IUの皮下(SC)注射を陽性対照とした。血液サンプルは、ラットの尾のチップから得、血中グルコース濃度を、適用後予め決められた時点で判定した。
【0133】
結果
糖尿病ラットのマイクロチャネル化皮膚に対するインスリン−コラーゲンパッチの適用後の血中グルコース濃度は、図5及び図6に示している。図5に示されるように、ラットに対して0.4IUインスリンの皮下(SC)投与は、血中グルコース濃度が急速に減少、すなわち、SC投与1時間後、グルコース濃度が200mg/dL以下であった。SC効果は約4時間続き、その後、グルコース濃度は200mg/dL超に上昇した(図5)。ラットの正常なグルコース濃度は、100〜200mg/dlの範囲であることに注意すべきである。対照的に、インスリン−コラーゲンパッチが適用された場合、インスリンのSC投与と比較して血中グルコース濃度の減少遅延が見られた。この血中グルコース濃度の減少遅延は、コラーゲンパッチの再水和化及び発生したマイクロチャネルを介するインスリンの分散のためである。さらに、コラーゲンパッチ中の0.4IUインスリンの経皮適用は、血中グルコース濃度が持続的減少(200mg/dL未満)が反映されるインスリンの持続的放出を生じ、このような低血中グルコース濃度は約8時間継続した(図5)。
【0134】
ラットに対するインスリン−コラーゲンパッチ中の1.5IUインスリンの投与は、最初のグルコース濃度の90%超の減少となり(図6)、低血糖ショックを生じた。その結果、この実験は、10時間より長くは続かなかった(図6)。したがって、ラットにおける試験用インスリンパッチの最適用量は、1.5IU未満にするべきである。
【0135】
図6は、糖尿病ラットの血中グルコース濃度に対する、ViaDerm処置の皮膚に置かれた種々のインスリン−コラーゲンパッチの効果を示している。図6に示されるように、コラーゲンA−lisproパッチ適用2.5時間後、グルコース濃度は、約400mg/dlから約200mg/dlに減少した。同じ減少は、コラーゲンA−NPH又はコラーゲンA−Ultra Lente(UL)パッチ適用1時間後に達成された。コラーゲンA−NPH又はコラーゲンA−Ultra LenteパッチとコラーゲンA−lisproパッチとの間のこの差異は、恐らくインスリンがNPH又はULインスリン複合体製剤から離れるのに必要な時間が異なるためである。コラーゲンB−lisproの適用は、コラーゲンA−NPH又はコラーゲンA−ULパッチと同様の血糖値プロファイルを生じた。これらの結果により、インスリンの遅延効果は、種々の複合化インスリンの使用により得ることができることを示している。
【0136】
本知見により、種々のインスリン−コラーゲンパッチは、遅延及び延長血糖値プロファイルにより反映されるインスリンの遅延及び延長送達が提示されることを示している。その結果、インスリンの生物学的効果はSC注射後に得られた効果より長時間であった。
【0137】
(実施例8)
インスリン−Vigilon(登録商標)ベースパッチの調製
Vigilon(登録商標)(C.R.BARD、米国ジョージア州コビントン)を、インスリンパッチの調製のために用いた。ヒト組換えインスリンHumulin(登録商標)R(Regular−100IU/ml)は、Lilly(Lilly France S.A.、フランス国Fegershein)から購入した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、Biological Industries(イスラエル国Kibbutz Beit Haemak)から入手した。
【0138】
四角形のVigilon(登録商標)ヒドロゲルシートを、2.25cm2の寸法で切断し、経皮適用前にインスリン溶液により予め水和した。四角形のVigilon(登録商標)をインスリン溶液と共に1時間インキュベーションすると、0.2mlのインスリン溶液の吸収を生じた。それによって、四角形のVigilon(登録商標)を、0.2ml中に所望の最終装填用量を含んだインスリン溶液と共にインキュベーションした。各パッチに対するインキュベーション溶液の体積は2mlであった。100IU/mlの保存液を、PBSで所望の濃度に希釈した。このように、例えば、2.5IU装填パッチを調製するために、Vigilon(登録商標)テンプレートを12.5IU/mlの濃度でインスリン溶液と共に1時間インキュベーションした。
【0139】
(実施例9)
インスリン−Vigilon(登録商標)パッチ中のインスリン含量
全てのVigilon(登録商標)パッチ中のインスリン含量を、PBS溶液によるインスリンの抽出及び逆相HPLC(LUNA 5um C18、150×4mm、Phenomenex)による定量分析により決定した。
【0140】
Vigilon(登録商標)パッチ中のインスリン含量分析の要約を表4に示す。
【0141】
【表4】
【0142】
表4に示されるように、高用量パッチ(2.5IU及び5IUの投入)から抽出されたインスリン量は、1.9IU及び4.1IUであり、これらはそれぞれ、パッチに適用された最初の用量の75%及び81%である。低用量パッチ(0.25IU及び0.5IUの投入)から抽出されたインスリン量は、0.15IU及び0.31IUであり、これらはそれぞれ、パッチに適用された最初の用量の59%及び61%である。抽出されなかった最初のインスリン投入量の20〜40%は、ヒドロゲルに結合したままであると考えられた。低用量のインスリン(0.25〜0.5IU/Vigilon(登録商標)パッチ)を用いた場合、インスリンの非抽出量がより多かったのは、恐らく、このような用量ではインスリンのヒドロゲルに対する結合が、より大きいからと思われる。
【0143】
(実施例10)
インスリン−Vigilon(登録商標)パッチ中のインスリンのin vitro皮膚透過性試験
ブタ皮膚を介するVigilon(登録商標)パッチにおけるインスリンの透過性は、Franz分散細胞系(社内製)によりin vitroで測定した。分散領域は2cm2であった。皮膚切断された(300〜500μm、Electric Dermatom、Padgett Instruments社、米国ミシガン州カンザス)ブタ皮膚を、屠殺白ブタ(Landres and Large Whiteの育種、イスラエル国Kibbutz Lahav地域で飼育)から切除した。経皮水分損失測定(TEWL、Dermalab Cortex Technology、デンマーク国Hadsund)を実施し、15g/m2/時間未満のTEWL濃度を有する皮膚片だけを、分散細胞に乗せた。
【0144】
皮膚マイクロチャネル化は、ViaDerm(商標)装置を用いて以下のとおり実施した。全ての試験に用いた微小電極アレイの直径は、80μmであり、密度は、75/cm2であった。この装置を、各位置に2回適用し、それよってマイクロチャネルの密度は、150個/cm2であった。ラットの皮膚は、330Vの印加電圧、100kHzの周波数、2回のバースト、700マイクロ秒のバースト長、及び電流制限のない条件で処理した。
【0145】
ViaDermの適用後、操作をコントロールするためにTEWLを再度測定した。皮膚片は、角質層を上に向けて受容体細胞上に置き、ドナーチャンバは、その場でクランプで留めた。皮膚は、PBSで3回洗浄し、受容体細胞中のPBSを、0.1%アジ化ナトリウム(Merk、ドイツ国ダルムシュタット)、1%ウシ血清アルブミン(Biological Industries、イスラエル国Kibbutz Beit Haemak)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(50ml PBS当たり1個の錠剤、Complete Mini、Roch)を含んだPBSで置換してから、インスリン−Vigilon(登録商標)パッチを角質層側に置いた。受け器溶液からのサンプルを、12時間まで予め決められた時間でチューブに採取した。サンプルは、分析されるまで−20℃に維持した。インスリン分析は、ELIZAキット(DSL−10−1600、Diagnostic Systems Laboratories社、米国テキサス州ウェブスター)により実施した。
【0146】
結果
ViaDerm処置皮膚を介してVigilon(登録商標)パッチ中のインスリンの累積透過性を図7に示す。インスリン投与後、その累積量は、時間の関数としての増加し、全透過量は、用量依存的であった(Vigilon(登録商標)中のインスリン0.25、0.5、2.5及び5IUに関して、それぞれ12時間後1.5、2.8、7.8、及び16.0mU/cm2、図7を参照)。インスリン経皮流量値(1時間につき1cm2当たりの透過量)を図8に示す。この流量値も用量依存性を示した。したがって、例えば、6時間後、この値は、Vigilon(登録商標)中のインスリン0.25、0.5、2.5、及び5IUに関して、それぞれ0.1、0.2、0.5、及び1.0mU×cm2−1×hr−1であった(図8を参照)。
【0147】
このin vitro結果により、インスリンの経皮送達は、ヒドロゲルへのその組み込み及びマイクロチャネル化法の使用により達成できることを示している。in vitro透過性試験は、持続的且つ制御されたin vivoのインスリン送達は、インスリン−Vigilon(登録商標)パッチを用いて達成し得ることを示唆している。
【0148】
(実施例11)
糖尿病ラットにおけるVigilon(登録商標)に埋め込まれたインスリンの生物活性
オスのラット(300〜325、Sprague Dawley、Harlan laboratories社、イスラエル国)は、パッチ適用前に飼料を与えず、48時間水を自由に摂取させた。糖尿病を誘発するために、パッチ適用24時間前にラットにストレプトゾトシン(クエン酸緩衝液中55mg/kg、0.1M、pH4.5;Sigma、米国ミズーリ州セントルイス)をIP注射した。注射24時間後にグルコース濃度が300mg/dl超であり、陽性の尿中グルコース及び陰性の尿中ケトンが観察された場合に、ラットは糖尿病として定義された。糖尿病ラットに、70:30の比の10%ケタミン/2%キシラジン溶液を1ml/kgIP注射した。麻酔は、イソフルオラン又はハロタンガスのいずれかで維持した。腹部皮膚の毛を注意深く剃り、イソプロピルアルコールで清浄した。30分後、経皮水分損失測定(TEWL、Dermalab Cortex Technology、デンマーク国Hadsund)を実施して、皮膚の統合性をチェックした。皮膚のマイクロチャネル化は、本明細書の上記の実施例10に記載された条件でViaDerm装置の使用により実施した。次に、操作をコントロールするためにTEWLを再度測定した。処置した皮膚は、種々のインスリンパッチでカバーした。全てのラットは、パッチ適用2時間前に0.1IUインスリンのSC注射を受けた。パッチ適用なしの0.1IUのSC注射は、比較対照として寄与した。血液は、ラットの尾から採血され、血中グルコース濃度は、適用後、予め決められた時間で血糖値試験ストリップを用いて(Ascensia Elite、Bayer)測定した。
【0149】
結果
糖尿病ラットのマイクロチャネル化皮膚に対するインスリン−Vigilon(登録商標)パッチ適用後の血中グルコース濃度を図9に示す。0.1IUインスリンの皮下投与により、グルコース濃度は直ちに低下した(図9)。SC効果は短時間続き、一定の血中グルコース濃度を維持することはなかった。しかし、SC注射の2時間後に、皮膚にインスリン−Vigilon(登録商標)パッチを適用すると、制御された、一定で、持続した血中グルコースプロファイルが9時間示された。1.5IUパッチと2.5IUパッチとの間に有意差は見られなかった。
【0150】
本知見は、インスリン−Vigilon(登録商標)パッチが持続した血中グルコースプロファイルによって反映されるように、インスリン送達の延長を提示することを示している。その結果、インスリンの生物学的効果は、SC注射後得られるものよりも長時間であった。
【0151】
(実施例12)
hGH−又はインスリン−カラゲナン薄膜ベースパッチの調製
hGH−又はインスリン−カラゲナン薄膜ベースパッチの調製には、以下の材料が用いられた。カラゲナンI型及びII型(Sigma、米国ミズーリ州)、ヒト成長ホルモン(hGH)Genotropin(登録商標)(5.3mg/16IU、Pharmacia and Upjohn、スウェーデン国ストックホルム)、ヒト組換えインスリンのHumulin(登録商標)R(Regular−100IU/ml、Lilly France S.A.、フランス国Fegershein)、及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS;イスラエル国Kibbutz Beit Haemak)。
【0152】
カラゲナン(2重量体積%、I型及びII型)を45℃でddH2Oに溶解させた。該溶液を約37℃まで冷却してから、濃縮貯蔵溶液から所望量のhGH又はインスリンを加え、該溶液を静かに混合した。薄膜が形成するまで該溶液を風乾した。この薄膜を1.4×1.4cmの寸法でパッチに切断した。これらのパッチを使用まで4℃で保存した。
【0153】
ヒトGH−カラゲナン薄膜は、1mgのカラゲナン当たり、9μgのhGHを最初の装填することにより調製した。典型的な薄膜は重量が約10mgであった。すなわち、hGHは各パッチにつき、約90μgの重量であった。インスリン−カラゲナン薄膜はフィルム1枚当たり、1IU及び5IUの用量で調製した。
【0154】
(実施例13)
カラゲナン薄膜ベースパッチからのhGH−又はインスリンのin vitro放出
カラゲナン薄膜ベースパッチからのhGH−又はインスリンの放出動態を試験するために、カラゲナン薄膜をPBS溶液に入れ、室温でインキュベーションした。種々の時点で、緩衝液を新鮮な緩衝液と取り替えた。緩衝液に放出されたhGHの量をゲルろ過HPLCによって測定し、一方、緩衝液に放出されたインスリンの量を逆相HPLCによって分析した。
【0155】
結果
I型及びII型カラゲナン薄膜からのhGH放出を図10に示す。I型カラゲナン薄膜を使用した場合、20分後、hGHの最初の量の約17%が放出された。hGHは8時間にわたって持続した様式で放出された。8時間後の合計回収量は、最初の用量の80%であった。該薄膜は8時間後に溶解し始めたので、さらなる放出は測定されなかった。
【0156】
II型カラゲナン薄膜を使用した場合、持続した放出プロファイルが、20時間見られた。20分後、該薄膜に適用されたhGHの最初の量の約12%が放出され、8時間後には、85%が放出され、20時間後には最初の量の91%が放出された。
【0157】
II型カラゲナン薄膜からのインスリン放出を図11に示す。インスリンは8時間にわたって持続した様式で該カラゲナン薄膜から放出された。8時間後の合計放出量は、該薄膜に適用された最初の量の約70%であった。
【0158】
このように、該カラゲナン薄膜からのhGH及びインスリンのin vitro放出は持続したプロファイルを示した。
【0159】
(実施例14)
カラゲナンベースパッチからhGH及びインスリンのin vitro皮膚透過性試験
ブタ皮膚を介するインスリンの透過性は、Franz分散細胞系(社内製)によりin vitroで測定した。分散領域は2cm2であった。皮膚切断された(300〜500μm、Electric Dermatom、Padgett Instruments社、米国ミシガン州カンザス)ブタ皮膚を、屠殺白ブタ(Landres and Large Whiteの育種、イスラエル国Kibbutz Lahav地域で飼育)から切除した。経皮水分損失測定(TEWL、Dermalab Cortex Technology、デンマーク国Hadsund)を実施し、15g/m2/時間未満のTEWL濃度を有する皮膚片だけを、分散細胞に乗せた。皮膚マイクロチャネル化は、ViaDerm(商標)装置を用いて実施した。微小電極の密度は、200個/cm2であった。ViaDermの適用後、TEWLは、操作をコントロールするために再度測定した。皮膚片を、PBSで3回洗浄し、インスリン−カラゲナン薄膜を角質層側に置いて接着剤でカバーした。次に皮膚プラス薄膜を、角質層を上に向けて受容体細胞上に置き、ドナーチャンバは、その場でクランプで留めた。受容体細胞は、0.1%アジ化ナトリウム(Merk、ドイツ国ダルムシュタット)、1%ウシ血清アルブミン(Biological Industries、イスラエル国Kibbutz Beit Haemak)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(50ml PBS当たり1個の錠剤、Complete Mini、Roch)を含んだリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で満たした。受け器溶液からのサンプルを、12時間まで予め決められた時間でチューブに採取した。サンプルは、分析されるまで4℃に維持した。インスリン分析は、ELIZAキット(DSL−10−1600、Diagnostic Systems Laboratories社、米国テキサス州ウェブスター)により実施した。
【0160】
結果
ViaDerm処置皮膚を介したカラゲナン薄膜ベースパッチ中のインスリン(1IU及び4IU)の累積透過性を図12に示す。カラゲナン薄膜中のインスリン投与後、累積インスリン量は、時間の関数としての増加し、全透過量は、1IUパッチよりも4IUパッチの方が多かった(4IUパッチ及び1IUパッチに関して、それぞれ12時間後9.3mU/cm2及び11時間後1.6mU/cm2、図12)。
【0161】
カラゲナンパッチ、カラゲナンタイプ及び/又はカラゲナン量における蛋白質の最初の装填量は、望ましいin vivo延長送達を達成するために調整できる。
【0162】
本発明は、具体的に示され、本明細書の上記に説明されたものに限定されないことは当業者によって認識されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、添付の請求項によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】ViaDermにより皮膚マイクロチャネルを生じさせたブタ皮膚を介した、hGHコラーゲン薄膜を含有するパッチ(▲)又はhGH印刷パッチ(◇)からのヒト成長ホルモン(hGH;70〜90μg)の透過性を示す図であり、透過性はin vitroアッセイにおいて、累積hGH量により検出した。
【図2】in vitroアッセイにおいてViaDermにより皮膚マイクロチャネルを生じさせたブタ皮膚を介した、hGHコラーゲン薄膜を含有するパッチ(▲)又はhGH印刷パッチ(◆)からのhGH(70〜90μg)の透過性を示す図であり、透過性はhGH経皮流量により検出した。
【図3】ViaDerm処理したモルモット皮膚上に150μgのhGHを含有する印刷パッチ(◆)又は200μgのhGHコラーゲン薄膜を含有するパッチ(□)を経皮適用した後のhGH血中濃度を示す図である。
【図4】ViaDerm処理したモルモット皮膚(□)又はViaDerm処理したラット皮膚(◆)上に200μgのhGH−コラーゲン薄膜を含有するパッチを経皮適用した後の血中hGH濃度を示す図である。
【図5】インスリン(□)の皮下投与及びViaDerm処理した糖尿病ラット皮膚(■)上に0.4IUインスリン−コラーゲン薄膜を含有するパッチの経皮適用後の血中グルコース濃度を示す図である。
【図6】ViaDerm処理した糖尿病ラット皮膚上に1.5IUインスリン−コラーゲンパッチを適用した後の血中グルコース濃度を示す図である。コラーゲンA−リスプロ(Lispro)(□);コラーゲンA−NPH(◇);コラーゲンA−ウルトラレンテ(Ultra Lente)(▲);及びコラーゲンB−リスプロ(*)。
【図7】ViaDermにより皮膚マイクロチャネルを生じさせたブタ皮膚を介したインスリン−Vigilon(登録商標)ヒドロゲルパッチからヒトインスリンの透過性を示す図であり、透過性はin vitroアッセイにおいて累積インスリン量により検出した。Vigilon(登録商標)における0.25IUインスリン(◆);Vigilon(登録商標)における0.5IUインスリン(□);Vigilon(登録商標)における2.5IUインスリン(▲);及びVigilon(登録商標)における5IUインスリン(○)。
【図8】ViaDermにより皮膚マイクロチャネルを生じさせたブタ皮膚を介したインスリン−Vigilon(登録商標)ヒドロゲルパッチからヒトインスリンの経皮流量を示す図であり、透過性はin vitroアッセイにおいてhGH経皮流量により検出した。Vigilon(登録商標)における0.25IUインスリン(◆);Vigilon(登録商標)における0.5IUインスリン(□);Vigilon(登録商標)における2.5IUインスリン(▲);及びVigilon(登録商標)における5IUインスリン(○)。
【図9】ViaDerm処理した糖尿病ラット皮膚にインスリン−Vigilon(登録商標)ヒドロゲルパッチを適用した後の血中グルコース濃度を示す図である。糖尿病ラットに、0.1IUインスリンを皮下注射し、2時間後、インスリン−Vigilon(登録商標)ヒドロゲルパッチを貼り付けた。インスリンの皮下注射(●);インスリン及び中1.5IUのVigilon(登録商標)中インスリンの皮下注射(▲);インスリン及び中2.5IUのVigilon(登録商標)中インスリンの皮下注射(◇)。
【図10】インスリン−カラゲナン薄膜を含有するパッチから放出されたhGH量を示す図である。放出されたhGH量は、薄膜形成前に(最初の)カラゲナン溶液に添加されたhGHの最初の量の%として算出された。カラゲナンタイプI(◆);カラゲナンタイプII(■)。
【図11】インスリン−カラゲナンII型薄膜を含有するパッチから放出されたインスリン量を示す図である。放出されたインスリン量は、薄膜形成前にカラゲナン溶液に添加されたインスリン(5IU)の最初の量の%として算出した。
【図12】ViaDermにより皮膚マイクロチャネルを生じさせたブタ皮膚を介したインスリン−カラゲナン薄膜を含有するパッチ(▲)からのインスリンの透過性を示す図であり、透過性はin vitroアッセイにおいて累積インスリン量により検出した。インスリン1IU(◆);インスリン5IU(■)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の皮膚上の領域において少なくとも1つのマイクロチャネルを発生できる装置、及び少なくとも1層の薬物貯留層を含むパッチを含む、対象の皮膚を介した活性薬剤の経皮送達を促進するシステムであって、前記少なくとも1層の薬物貯留層はポリマーマトリックス及び活性薬剤として少なくとも1種の治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含む医薬組成物を含むシステム。
【請求項2】
前記装置が、
a.複数の電極を含む電極カートリッジ、及び
b.前記電極が皮膚の近くにあるときに、前記電極に電気的エネルギーを加え、前記電極の下の領域の角質層のアブレーションを可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させるようになされているコントロールユニットを含む主要ユニット
を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電極カートリッジが、均一の形状及び寸法の複数のマイクロチャネルを発生させるようになされている請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電気的エネルギーが、高周波である請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックスが、親水性バイオポリマー、親水性合成ポリマー、それらの誘導体及び組合せからなる群から選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記バイオポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラゲナン、キチン、キトサン、アルギネート、コラーゲン、ゼラチン、ペクチン、グリコサミノグリカン(GAG)、プロテオグリカン、フィブロネクチン、及びラミニンからなる群から選択される請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記バイオポリマーが、コラーゲン及びカラゲナンからなる群から選択される請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記親水性合成ポリマーが、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリウレタンからなる群から選択される請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記親水性合成ポリマーが、ポリエチレンオキシドである請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記薬物貯留層が、乾燥形態、半乾燥形態、ヒドロゲル、及び溶液から選択される形態で製剤化される請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記活性薬剤が、成長因子、ホルモン、サイトカイン、水溶性薬物、抗原、抗体、それらの断片並びに類縁体から選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記活性薬剤が、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、上皮小体ホルモン、成長ホルモン、骨形成蛋白質、エリスロポエチン、ヘモポイエチン成長因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、凝固因子、抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、プラスミノーゲン活性化因子、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、プロレラキシン、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、ホルモン受容体、成長因子受容体、インテグリン、蛋白質A、蛋白質D、リウマチ因子、神経栄養因子、CD蛋白質、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン(IL)、スーパーオキシドジスムターゼ、表面膜蛋白質、T細胞受容体、崩壊促進因子、ウィルス抗原、輸送蛋白質、ホーミング受容体、アドレッシン、調節蛋白質、それらの類縁体、誘導体及び断片からなる群から選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記活性薬剤が、成長ホルモン又はインスリンである請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記薬物貯留層が、コラーゲン及びヒト成長ホルモン(hGH)を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記薬物貯留層が、コラーゲン及びヒトインスリンを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記薬物貯留層が、ポリエチレンオキシド及びヒト成長ホルモンを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記薬物貯留層が、ポリエチレンオキシド及びヒトインスリンを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記薬物貯留層が、カラゲナン及びヒト成長ホルモンを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記薬物貯留層が、カラゲナン及びヒトインスリンを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記パッチが、以下の層、すなわち、バッキング層、接着剤、及び律速層の少なくとも1層をさらに含む請求項1から19までのいずれかに記載のシステム。
【請求項21】
前記医薬組成物が、プロテアーゼ阻害剤、安定化剤、抗酸化剤、緩衝剤、及び保存剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む請求項1から20までのいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
少なくとも1層の薬物貯留層を含む活性薬剤の経皮送達用になされているパッチであって、前記少なくとも1層の薬物貯留層はポリマーマトリックス及び活性薬剤として少なくとも1種の治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含む医薬組成物を含むパッチ。
【請求項23】
前記親水性ポリマーマトリックスが、バイオポリマー、親水性合成ポリマー、それらの誘導体及び組合せからなる群から選択される請求項22に記載のパッチ。
【請求項24】
前記バイオポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラゲナン、キチン、キトサン、アルギネート、コラーゲン、ゼラチン、ペクチン、グリコサミノグリカン(GAG)、プロテオグリカン、フィブロネクチン、及びラミニンからなる群から選択される請求項23に記載のパッチ。
【請求項25】
前記バイオポリマーが、コラーゲン及びカラゲナンからなる群から選択される請求項24に記載のパッチ。
【請求項26】
前記親水性合成ポリマーが、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリウレタンからなる群から選択される請求項23に記載のパッチ。
【請求項27】
前記親水性合成ポリマーが、ポリエチレンオキシドである請求項26に記載のパッチ。
【請求項28】
前記薬物貯留層が、乾燥形態、半乾燥形態、ヒドロゲル、及び溶液から選択される形態で製剤化される請求項22に記載のパッチ。
【請求項29】
前記活性薬剤が、成長因子、ホルモン、サイトカイン、水溶性薬物、抗原、抗体、それらの断片並びに類縁体から選択される請求項22に記載のパッチ。
【請求項30】
前記活性薬剤が、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、上皮小体ホルモン、成長ホルモン、骨形成蛋白質、エリスロポエチン、ホモポイエチン成長因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、凝固因子、抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、プラスミノーゲン活性化因子、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、プロレラキシン、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、ホルモン受容体、成長因子受容体、インテグリン、蛋白質A、蛋白質D、リウマチ因子、神経栄養因子、CD蛋白質、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン(IL)、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜蛋白質、崩壊促進因子、ウィルス抗原、輸送蛋白質、ホーミング受容体、アドレッシン、調節蛋白質、それらの類縁体、誘導体及び断片からなる群から選択される請求項22に記載のパッチ。
【請求項31】
前記活性薬剤が、成長ホルモン又はインスリンである請求項30に記載のパッチ。
【請求項32】
前記パッチが、以下の層、すなわち、バッキング層、接着剤、及び律速層の少なくとも1層をさらに含む請求項22から31までのいずれかに記載のパッチ。
【請求項33】
前記医薬組成物が、プロテアーゼ阻害剤、安定化剤、抗酸化剤、緩衝剤、及び保存剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む請求項22から32までのいずれかに記載のパッチ。
【請求項34】
治療用又は免疫原性薬剤の持続性経皮送達の方法であって、
a.対象の皮膚上の領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させるステップ、
b.前記少なくとも1つのマイクロチャネルが存在する皮膚の領域にパッチを固定させるステップであって、前記パッチは少なくとも1層の薬物貯留層を含み、前記薬物貯留層はポリマーマトリックス及び治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含む医薬組成物を含むステップ、及び
c.前記ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質の治療血中濃度を、少なくとも6時間達成させるステップ
を含む方法。
【請求項35】
前記ポリマーマトリックスが、親水性バイオポリマー、親水性合成ポリマー、それらの誘導体及び組合せからなる群から選択される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記バイオポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラゲナン、キチン、キトサン、アルギネート、コラーゲン、ゼラチン、ペクチン、グリコサミノグリカン(GAG)、プロテオグリカン、フィブロネクチン、及びラミニンからなる群から選択される請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記バイオポリマーが、コラーゲン及びカラゲナンからなる群から選択される請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記親水性合成ポリマーが、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリウレタンからなる群から選択される請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記親水性合成ポリマーが、ポリエチレンオキシドである請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記薬物貯留層が、乾燥形態、半乾燥形態、ヒドロゲル、及び溶液から選択される形態で製剤化される請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記活性薬剤が、成長因子、ホルモン、サイトカイン、水溶性薬物、抗原、抗体、それらの断片並びに類縁体から選択される請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記治療用又は免疫原性活性薬剤が、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、上皮小体ホルモン、成長ホルモン、骨形成蛋白質、エリスロポエチン、ホモポイエチン成長因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、凝固因子、抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、プラスミノーゲン活性化因子、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、プロレラキシン、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、ホルモン受容体、成長因子受容体、インテグリン、蛋白質A、蛋白質D、リウマチ因子、神経栄養因子、CD蛋白質、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン(IL)、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜蛋白質、崩壊促進因子、ウィルス抗原、輸送蛋白質、ホーミング受容体、アドレッシン、調節蛋白質、それらの類縁体、誘導体及び断片からなる群から選択される請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記治療剤が、成長ホルモン又はインスリンである請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記薬物貯留層が、コラーゲン及びヒト成長ホルモンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項45】
前記薬物貯留層が、コラーゲン及びヒトインスリンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項46】
前記薬物貯留層が、ポリエチレンオキシド及びヒト成長ホルモンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記薬物貯留層が、ポリエチレンオキシド及びヒトインスリンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項48】
前記薬物貯留層が、カラゲナン及びヒト成長ホルモンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項49】
前記薬物貯留層が、カラゲナン及びヒトインスリンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項50】
前記パッチが、以下の層、すなわち、バッキング層、接着剤、及び律速層の少なくとも1層をさらに含む請求項34から49までのいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記医薬組成物が、プロテアーゼ阻害剤、安定化剤、抗酸化剤、緩衝剤、及び保存剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む請求項34から50までのいずれかに記載の方法。
【請求項1】
対象の皮膚上の領域において少なくとも1つのマイクロチャネルを発生できる装置、及び少なくとも1層の薬物貯留層を含むパッチを含む、対象の皮膚を介した活性薬剤の経皮送達を促進するシステムであって、前記少なくとも1層の薬物貯留層はポリマーマトリックス及び活性薬剤として少なくとも1種の治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含む医薬組成物を含むシステム。
【請求項2】
前記装置が、
a.複数の電極を含む電極カートリッジ、及び
b.前記電極が皮膚の近くにあるときに、前記電極に電気的エネルギーを加え、前記電極の下の領域の角質層のアブレーションを可能にし、それによって少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させるようになされているコントロールユニットを含む主要ユニット
を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電極カートリッジが、均一の形状及び寸法の複数のマイクロチャネルを発生させるようになされている請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電気的エネルギーが、高周波である請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックスが、親水性バイオポリマー、親水性合成ポリマー、それらの誘導体及び組合せからなる群から選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記バイオポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラゲナン、キチン、キトサン、アルギネート、コラーゲン、ゼラチン、ペクチン、グリコサミノグリカン(GAG)、プロテオグリカン、フィブロネクチン、及びラミニンからなる群から選択される請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記バイオポリマーが、コラーゲン及びカラゲナンからなる群から選択される請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記親水性合成ポリマーが、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリウレタンからなる群から選択される請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記親水性合成ポリマーが、ポリエチレンオキシドである請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記薬物貯留層が、乾燥形態、半乾燥形態、ヒドロゲル、及び溶液から選択される形態で製剤化される請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記活性薬剤が、成長因子、ホルモン、サイトカイン、水溶性薬物、抗原、抗体、それらの断片並びに類縁体から選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記活性薬剤が、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、上皮小体ホルモン、成長ホルモン、骨形成蛋白質、エリスロポエチン、ヘモポイエチン成長因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、凝固因子、抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、プラスミノーゲン活性化因子、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、プロレラキシン、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、ホルモン受容体、成長因子受容体、インテグリン、蛋白質A、蛋白質D、リウマチ因子、神経栄養因子、CD蛋白質、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン(IL)、スーパーオキシドジスムターゼ、表面膜蛋白質、T細胞受容体、崩壊促進因子、ウィルス抗原、輸送蛋白質、ホーミング受容体、アドレッシン、調節蛋白質、それらの類縁体、誘導体及び断片からなる群から選択される請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記活性薬剤が、成長ホルモン又はインスリンである請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記薬物貯留層が、コラーゲン及びヒト成長ホルモン(hGH)を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記薬物貯留層が、コラーゲン及びヒトインスリンを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記薬物貯留層が、ポリエチレンオキシド及びヒト成長ホルモンを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記薬物貯留層が、ポリエチレンオキシド及びヒトインスリンを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記薬物貯留層が、カラゲナン及びヒト成長ホルモンを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記薬物貯留層が、カラゲナン及びヒトインスリンを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記パッチが、以下の層、すなわち、バッキング層、接着剤、及び律速層の少なくとも1層をさらに含む請求項1から19までのいずれかに記載のシステム。
【請求項21】
前記医薬組成物が、プロテアーゼ阻害剤、安定化剤、抗酸化剤、緩衝剤、及び保存剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む請求項1から20までのいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
少なくとも1層の薬物貯留層を含む活性薬剤の経皮送達用になされているパッチであって、前記少なくとも1層の薬物貯留層はポリマーマトリックス及び活性薬剤として少なくとも1種の治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含む医薬組成物を含むパッチ。
【請求項23】
前記親水性ポリマーマトリックスが、バイオポリマー、親水性合成ポリマー、それらの誘導体及び組合せからなる群から選択される請求項22に記載のパッチ。
【請求項24】
前記バイオポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラゲナン、キチン、キトサン、アルギネート、コラーゲン、ゼラチン、ペクチン、グリコサミノグリカン(GAG)、プロテオグリカン、フィブロネクチン、及びラミニンからなる群から選択される請求項23に記載のパッチ。
【請求項25】
前記バイオポリマーが、コラーゲン及びカラゲナンからなる群から選択される請求項24に記載のパッチ。
【請求項26】
前記親水性合成ポリマーが、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリウレタンからなる群から選択される請求項23に記載のパッチ。
【請求項27】
前記親水性合成ポリマーが、ポリエチレンオキシドである請求項26に記載のパッチ。
【請求項28】
前記薬物貯留層が、乾燥形態、半乾燥形態、ヒドロゲル、及び溶液から選択される形態で製剤化される請求項22に記載のパッチ。
【請求項29】
前記活性薬剤が、成長因子、ホルモン、サイトカイン、水溶性薬物、抗原、抗体、それらの断片並びに類縁体から選択される請求項22に記載のパッチ。
【請求項30】
前記活性薬剤が、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、上皮小体ホルモン、成長ホルモン、骨形成蛋白質、エリスロポエチン、ホモポイエチン成長因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、凝固因子、抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、プラスミノーゲン活性化因子、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、プロレラキシン、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、ホルモン受容体、成長因子受容体、インテグリン、蛋白質A、蛋白質D、リウマチ因子、神経栄養因子、CD蛋白質、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン(IL)、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜蛋白質、崩壊促進因子、ウィルス抗原、輸送蛋白質、ホーミング受容体、アドレッシン、調節蛋白質、それらの類縁体、誘導体及び断片からなる群から選択される請求項22に記載のパッチ。
【請求項31】
前記活性薬剤が、成長ホルモン又はインスリンである請求項30に記載のパッチ。
【請求項32】
前記パッチが、以下の層、すなわち、バッキング層、接着剤、及び律速層の少なくとも1層をさらに含む請求項22から31までのいずれかに記載のパッチ。
【請求項33】
前記医薬組成物が、プロテアーゼ阻害剤、安定化剤、抗酸化剤、緩衝剤、及び保存剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む請求項22から32までのいずれかに記載のパッチ。
【請求項34】
治療用又は免疫原性薬剤の持続性経皮送達の方法であって、
a.対象の皮膚上の領域に少なくとも1つのマイクロチャネルを発生させるステップ、
b.前記少なくとも1つのマイクロチャネルが存在する皮膚の領域にパッチを固定させるステップであって、前記パッチは少なくとも1層の薬物貯留層を含み、前記薬物貯留層はポリマーマトリックス及び治療用又は免疫原性ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質を含む医薬組成物を含むステップ、及び
c.前記ペプチド、ポリペプチド、又は蛋白質の治療血中濃度を、少なくとも6時間達成させるステップ
を含む方法。
【請求項35】
前記ポリマーマトリックスが、親水性バイオポリマー、親水性合成ポリマー、それらの誘導体及び組合せからなる群から選択される請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記バイオポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラゲナン、キチン、キトサン、アルギネート、コラーゲン、ゼラチン、ペクチン、グリコサミノグリカン(GAG)、プロテオグリカン、フィブロネクチン、及びラミニンからなる群から選択される請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記バイオポリマーが、コラーゲン及びカラゲナンからなる群から選択される請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記親水性合成ポリマーが、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリウレタンからなる群から選択される請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記親水性合成ポリマーが、ポリエチレンオキシドである請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記薬物貯留層が、乾燥形態、半乾燥形態、ヒドロゲル、及び溶液から選択される形態で製剤化される請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記活性薬剤が、成長因子、ホルモン、サイトカイン、水溶性薬物、抗原、抗体、それらの断片並びに類縁体から選択される請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記治療用又は免疫原性活性薬剤が、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、形質転換成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、上皮小体ホルモン、成長ホルモン、骨形成蛋白質、エリスロポエチン、ホモポイエチン成長因子、黄体形成ホルモン、グルカゴン、凝固因子、抗凝固因子、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、プラスミノーゲン活性化因子、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、レラキシンA鎖、レラキシンB鎖、プロレラキシン、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、ホルモン受容体、成長因子受容体、インテグリン、蛋白質A、蛋白質D、リウマチ因子、神経栄養因子、CD蛋白質、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン(IL)、スーパーオキシドジスムターゼ、T細胞受容体、表面膜蛋白質、崩壊促進因子、ウィルス抗原、輸送蛋白質、ホーミング受容体、アドレッシン、調節蛋白質、それらの類縁体、誘導体及び断片からなる群から選択される請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記治療剤が、成長ホルモン又はインスリンである請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記薬物貯留層が、コラーゲン及びヒト成長ホルモンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項45】
前記薬物貯留層が、コラーゲン及びヒトインスリンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項46】
前記薬物貯留層が、ポリエチレンオキシド及びヒト成長ホルモンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記薬物貯留層が、ポリエチレンオキシド及びヒトインスリンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項48】
前記薬物貯留層が、カラゲナン及びヒト成長ホルモンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項49】
前記薬物貯留層が、カラゲナン及びヒトインスリンを含む請求項34に記載の方法。
【請求項50】
前記パッチが、以下の層、すなわち、バッキング層、接着剤、及び律速層の少なくとも1層をさらに含む請求項34から49までのいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記医薬組成物が、プロテアーゼ阻害剤、安定化剤、抗酸化剤、緩衝剤、及び保存剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む請求項34から50までのいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−513939(P2007−513939A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543717(P2006−543717)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/IL2004/001119
【国際公開番号】WO2005/056075
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(505474669)トランスファーマ メディカル リミテッド (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/IL2004/001119
【国際公開番号】WO2005/056075
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(505474669)トランスファーマ メディカル リミテッド (11)
【Fターム(参考)】
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