説明

ポリペプチド

本発明は、病原性生物体によって発現される抗原ポリペプチドに関し、当該抗原ポリペプチドは、図1の核酸配列でコードされる抗原ポリペプチド、抗原ポリペプチドを含むワクチン及び抗原ポリペプチドを対象とする治療用抗体を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原性生物体によって発現される抗原ポリペプチド、当該抗原ポリペプチドを含むワクチン及び当該抗原ポリペプチドを対象とする治療抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物体は、世界中の何百万もの人々を冒す多くの致命的な疾患又は消耗性疾患を引き起こす。微生物体を制御する現在の方法は、抗菌剤(抗生物質)及び殺菌剤の使用を含む。これらの薬剤への曝露が抗菌剤(複数可)の効果を無効にする可能性のある耐性菌の発生をもたらす顕著な選択圧をかけるため、このことは問題となることが示されてきた。例えば、微生物体はトリクロサン(家庭環境及び産業環境において用いられる多くの殺菌剤に付加される作用物質)に対して耐性となることが発見されてきた。
【0003】
まず間違いなくより重大な問題は、多くの顕著な病原性生物体の抗生物質耐性株の進化である。
【0004】
抗生物質に対する耐性を発現した病原性生物体(pathogenic organism)の例は、Staphylococcus aureusである。S.aureusは、標準的で健常な人々の約20〜40%において、細菌の標準的な生育地が鼻の上皮内壁である細菌であり、通常悪影響を及ぼすことなく人々の皮膚においても一般に見られる。しかし、特定の環境下で、特に皮膚が損傷を受ける場合、この微生物は、感染を引き起こす可能性がある。これは、患者が外科的処置を受け、且つ/又は免疫抑制性薬物を服用し得る病院において特に問題である。これらの患者は、受けている処置によって、S.aureusへの感染に対してさらにいっそう弱まっている。S.aureusの耐性株が近年現れてきている。メチシリン耐性株は、流行しており、これらの耐性株の多くはまた、いくつかの他の抗生物質に対しても耐性である。現在、S.aureusに効果的なワクチン接種手段は存在していない。米国において、S.aureus感染は、毎年200万の院内感染のうち13%の原因となっている。これは、260,000の人々がS.aureus感染を示し、このうち60,000〜80,000人が死亡していることを示している。
【0005】
したがって、S.aureusは、敗血症、心内膜炎、関節炎及び毒素ショック等の広範囲な生命を脅かす疾患を引き起こす可能性のある主要なヒト病原性生物体である。この能力は、生物体の多様性及び病原性に関与する成分の保有量(arsenal)によって決まる。病原性は、多因子性であり、どの成分も特定の感染の原因であることを示してこなかった(Projan,S.J.& Novick,R.P.(1997)in The Staphylococci in Human Disease(Crossley,K.B.& Archer,G.L.,eds.)pp.55-81を参照のこと)。
【0006】
感染の発症時、そして感染が進行するにつれて、上記生物体のニーズ(needs)及び環境は変化し、これは、S.aureusが産生する病原性決定因子における対応する変更によって反映される。感染開始時、上記病原性生物体が宿主組織に接着することが重要であり、このようにして豊富なレパートリーの細胞表面関連接着タンパク質が作製される。これらの細胞表面関連接着タンパク質としては、コラーゲン結合タンパク質、フィブリノーゲン結合タンパク質及びフィブロネクチン結合タンパク質が挙げられる。上記病原性生物体はまた、食作用を低下させる因子、又は抗体を循環させることによって認識される上記細胞の能力を妨害する因子の産生によって宿主の防御を回避する能力を有する。
【0007】
しばしば、感染の病巣は、膿瘍として発達し、生物体の数が増加する。S.aureusは、クオラムセンシング(quorum sensing:菌体数感知)ペプチドの産生によってそれ自体の細胞密度をモニタリングする能力を有する。おそらく上記細胞の飢餓(starvation)の開始によってもたらされる生理学的変化に関連する上記ペプチドの蓄積は、病原性決定因子の産生における、接着分子から、侵襲(invasion)及び組織穿通(penetration)に関連する成分への転換を誘発する。これらとしては、広範な溶血素、プロテアーゼ及び他の分解酵素が挙げられる。
【0008】
任意の感染のプロセスの間、S.aureusによって作製される病原性決定因子は、環境的刺激及び生理学的刺激に応じて産生される。これらの刺激は、身体内のニッチ(niche:隙間)に依存し、感染進行につれて変化するであろう。in vivoでの条件についてはほとんど知られておらず、いくつかの成分はこの環境下で単独で産生されるようである。したがって、これらは潜在的なワクチン成分であり、これは従来の技術によって発見することができなかった。
【0009】
多くのワクチンは、個体に注射される不活性化病原性生物体又は弱毒化病原性生物体によって産生される。免疫された個体は、体液性(抗体)応答及び細胞性(細胞溶解性T細胞、CTL)応答の両方を引き起こすことによって応答する。例えば、肝炎のワクチンは、ウイルスを熱不活性化すること及びホルムアルデヒド等の架橋剤でこれを処理することによって作製される。ワクチンとして有用な弱毒化病原性生物体の例は、生きた病原性生物体を弱毒化することによって産生されるポリオワクチンによって示される。
【0010】
しかし、特定の疾患に対するワクチン中の弱毒化生物体の利用は、弱毒化の条件及び性質の病理学に関する知識の欠如のために問題となる。特定のウイルス剤について、これは、特にレトロウイルスにおけるウイルスが、変異性のある(error prone)複製サイクル(これは、当該ウイルスを含む遺伝子中に生存に適した変異を生じる)を有するので、特に問題である。これは、従来ワクチンとして用いられてきた抗原性決定因子の変更物を生じ得る。
【0011】
いわゆるサブユニットワクチンの開発(免疫原が特定の病原性生物体によって発現されるタンパク質又は複合体のフラグメント又はサブユニットであるワクチン)は、重要な医薬研究の焦点となってきた。サブユニットワクチンの開発に有用な候補分子を同定する必要性は、少なからず明らかである。なぜなら、病原性生物体の制御に対する従来の化学療法アプローチが、つい最近、抗生物質耐性の発現によって窮境に立たされてきたからである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、病原性生物体による感染の間に発現される抗原ポリペプチド、及びワクチン接種におけるこれらの利用に関する。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、単離された核酸配列によってコードされる、薬物として使用する、抗原ポリペプチド又はその一部が提供され、当該核酸配列は、
i)図1に示される核酸配列、
ii)(i)において、病原性生物体によって発現されるポリペプチドをコードする核酸配列、
iii)(i)又は(ii)において同定される配列をハイブリダイズする核酸配列、及び
iv)(i)、(ii)又は(ii)に記載の核酸配列に対する遺伝コードの結果として縮重する核酸配列
から成る群より選択される。
【0014】
本発明の好ましい態様において、上記薬物はワクチンである。
【0015】
本発明の好ましい態様において、本発明の第1の態様の抗原ポリペプチドをコードする核酸配列が、
i)図2に示される核酸配列、
ii)病原性生物体によって発現されるポリペプチドをコードする(i)の核酸配列、
iii)(i)又は(ii)において同定される配列をハイブリダイズする核酸配列、及び
iv)(i)、(ii)又は(ii)に記載の核酸配列に対する遺伝コードの結果として縮重する核酸配列
から成る群より選択される。
【0016】
本発明の第1の態様の抗原ポリペプチドをコードする核酸配列は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で、図1又は図2で示される核酸配列、又はその相補鎖にアニーリングし得る。
【0017】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション/洗浄条件は、当該技術分野において既知である。例えば、60℃にて0.1×SSC、0.1%のSDS中で洗浄後、安定である核酸を、ハイブリダイズする。核酸の配列が既知である場合、最適なハイブリダイゼーション条件を算出し得ることが当該技術分野において既知である。例えば、ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションに供される核酸のGC含有量によって決定し得る。Sambrook他(1989)Molecular Cloning;A Laboratory Approachを参照のこと。特定の相同性のある核酸分子間でハイブリダイゼーションを達成するのに必要とされるストリンジェントな条件を算出するための一般式は、以下:
Tm=81.5℃+16.6Log[Na]+0.41[G+C(%)]−0.63(ホルムアミド(%))
である。
【0018】
本発明の第1の態様の抗原ポリペプチドをコードする核酸は、図1又は図2で設計される配列、又は核酸残基レベルで図1又は図2に記載の核酸配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、例えば98%、又は99%相同性(identical)のある配列を含み得る。
【0019】
当該技術分野で既知の「相同性(identity)」とは、配列比較によって決定した場合の、2つ以上のポリペプチド配列又は2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野では、場合によっては、このような配列のストリング(string)間の適合(match)によって決定した場合、相同性はまた、ポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を意味することもある。相同性は簡単に算出することができる(Computational Molecular Biology, Lesk, A.M. ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Date, Part I, Griffin, A.M., AND Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991)。2つのポリヌクレオチド配列又は2つのポリペプチド配列間の相同性の多くの測定方法が存在する一方で、相同性という用語は当業者にとって既知である(Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991; and Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073(1988))。配列間の相同性を決定するために一般的に採用される方法は、Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073(1988)に記載されているものを含むが、これに限定されない。相同性を決定する好ましい方法は試験される配列間の最も大きい適合を与えるように設計される。相同性を決定する方法は、コンピュータープログラムで体系化される。2つの配列間の相同性を決定する好ましいコンピュータープログラム方法は、GCGプログラムパッケージを含むが、これに限定されない(Devereux, J.他, Nucleid Acids Research 12(1): 387(1984)), BLASTP, BLASTN, and FASTA (Atschul, S.F.他, J. Molec. Biol. 215: 403(1990))。
【0020】
本発明の第1の態様の抗原ポリペプチドをコードする核酸は、少なくとも30塩基長、例えば、40、50、60、70、80又は90塩基長である第1の態様による配列フラグメントを含み得る。
【0021】
本発明の第1の態様の抗原ポリペプチドをコードする核酸配列は、ゲノムDNA、cDNA又はRNA(例えば、mRNA)であり得る。
【0022】
本発明の第1の態様の抗原ポリペプチドは、細胞膜タンパク質(例えば、膜内在性タンパク質)であり得る。
【0023】
本発明の第1の態様の抗原ポリペプチドは、パーミアーゼ活性を有し得る。本明細書中で用いられる場合、「パーミアーゼ」は、細胞の内外における特定分子の輸送のためのチャンネルとして機能する細胞膜タンパク質に関する。
【0024】
好ましくは、本発明の第1の態様の抗原ポリペプチドは、細胞の内外における1つ又は複数のアミノ酸の輸送に関与する、例えば、ポリペプチドはフェニルアラニンパーミアーゼ活性を有し得る。
【0025】
好ましくは、本発明の第1の態様の抗原ポリペプチドは、病原性生物体(例えば、バクテリア、ウイルス又はイースト菌)によって発現される。好ましくは、病原性生物体はバクテリアである。
【0026】
バクテリアは、
Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Enterococcus faecalis、Mycobacterium tuberculsis、Streptococcus group B、Streptoccocus pneumoniae、Helicobacter pylori、Neisseria gonorrhea、Streptococcus group A、Borrelia burgdorferi、Coccidiodes immitis、Histoplasma sapsulatum、Neisseria meningitidis type B、Shigella flexneri、Escherichia coli、Haemophilus influenzae
から成る群から選択され得る。
【0027】
好ましくは、バクテリアはStaphylococcus spp.属である。さらに好ましくは、バクテリアはStaphylococcus aureusである。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の第1の態様の抗原ポリペプチドは、本明細書中で定義される場合、生物体の感染病原性に関与する。
【0029】
本発明のさらに好ましい態様において、抗原ポリペプチドは図1又は図3に示されるアミノ酸配列の全て又は一部を含む。
【0030】
本明細書中で用いられる場合、「一部」は、少なくとも10、15、20又は30アミノ酸長であり得るポリペプチドフラグメントを含み得る。
【0031】
本発明の第1の態様の抗原ポリペプチドは、非タンパク質抗原(例えば、多糖類抗原)を含み得る。
【0032】
本明細書中で用いられる場合、「ポリペプチド」とは、一般的用語では、共にペプチド結合によって結合する複数のアミノ酸残基を意味する。ポリペプチドは、ペプチド、タンパク質、オリゴペプチド、又はオリゴマーと交換可能に用いられて、これらと同じ意味になる。用語「ポリペプチド」はまた、ポリペプチドのフラグメント、類似体及び誘導体を含むように意図される。ここで、フラグメント、類似体又は誘導体は本質的に比較タンパク質と同じ生物活性又は生物学的機能を保つ。
【0033】
本発明の第2の態様において、本発明の第1の態様によるポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターが提供される。
【0034】
本発明の第2の態様のベクターは、プラスミド、コスミド又はファージであり得る。ベクターは細胞特異的発現を介在する転写制御配列(プロモーター配列)(例えば、細胞特異的プロモーター配列、誘導プロモーター配列又は構成的プロモーター配列)を含み得る。ベクターは原核生物の遺伝子発現又は真核生物の遺伝子発現に適合する発現ベクターであり得る。例えば、当該ベクターは真核生物の細胞又は原核生物の宿主細胞の何れかでのベクターの維持を容易にする1つ又は複数の選択可能なマーカー及び/又は自己複製配列を含み得る(Sambrook他(1989)分子クローニング(Molecular Cloning):A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, Cold Spring Harbour, NY及びその中の参考文献、 Marston, F(1987)DNAクローニング技術(DNA Cloning Technique):A Practical Approach Vol III IRL Press, Oxford UK、DNAクローニング(DNA Cloning):F M Ausubel他, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.(1994))。自律的(autonomously:自己的)に維持されるベクターはエピソームベクターと呼ばれている。
【0035】
プロモーターは、当該技術分野で認識されている用語であり、遺伝子の転写開始部位に対して5’方向にしばしば見出されるシス作用性(cis acting)核酸配列であるエンハンサーエレメントを含み得る(エンハンサーはまた、遺伝子配列に対して3’方向に見出され得るか又はイントロン配列にさえ位置することができ、よって位置に依存しない)。エンハンサー活性は、エンハンサーエレメントに特異的に結合することが示されているトランス作用性転写因子(ポリペプチド)に対する応答性がある。転写因子の結合/活性(David S Latchman著、Eukaryotic Transcription Factors, Academic Press Ltd, San Diegoを参照のこと)は、中間代謝産物(例えば、グルコース、脂質)、環境エフェクター(例えば、光、熱)を含む多くの環境信号に対する応答性がある。
【0036】
プロモーターエレメントはまた、いわゆるTATAボックスと、転写開始部位を選択するように機能するRNAポリメラーゼ開始選択(RIS)配列とを含む。これらの配列はまた、とりわけRNAポリメラーゼによる転写開始選択を促進させるように機能するポリペプチドと結合する。
【0037】
本発明の第2の態様のベクターは、転写終結配列又はポリアデニル化配列を含み得る。これはまた、内部リボソーム侵入部位(IRES)も含み得る。ベクターは2シストロン性又は多シストロン性の発現カセットに配列する核酸配列を含み得る。
【0038】
本発明の第3の態様によれば、
(i)本発明の第2の態様によるベクターで形質転換/トランスフェクトされる細胞を準備すること、
(ii)上記ポリペプチドの製造に適した条件で上記細胞を生育すること、及び
(iii)上記細胞又はその生育環境から上記ポリペプチドを精製すること、
を包含する、本発明の先行するいずれかの態様による組み換え抗原ポリペプチドの製造方法が提供される。
【0039】
第3の態様の方法の好ましい態様において、ベクターが分泌シグナルをコードし、よって、上記組み換え抗原ポリペプチドに分泌シグナルが提供され、当該ポリペプチドの精製を容易にする。
【0040】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第2の態様によるベクターで形質転換又はトランスフェクトされる細胞又は細胞株が提供される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、上記細胞は原核生物の細胞(例えば、イースト菌又はE.coli等のバクテリア)である。或いは、当該細胞は真核生物の細胞(例えば、真菌類、昆虫類、両生類、哺乳類の、例えばCOS細胞、CHO細胞、Bowesメラノーマ細胞及び他の好適なヒト細胞、又は植物細胞)である。
【0042】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第1の態様による少なくとも1つの抗原ポリペプチド又はその一部を含むワクチンが提供される。好ましくは、当該ワクチンがさらに担体及び/又はアジュバントを含む。
【0043】
本明細書中で用いられる場合、「その一部」とは、抗原ポリペプチドのフラグメント又はサブユニットを含んでいてもよく、ここでフラグメント又はサブユニットは受容体における抗原反応を誘導するのに十分なものである。
【0044】
第5の態様によるワクチンは、ワクチンの免疫原性部分が本発明の第1の態様による抗原ポリペプチドのフラグメント又はサブユニットであるサブユニットワクチンであり得る。
【0045】
用語「アジュバント」及び「担体」は、以下のように解釈される。いくつかのポリペプチド抗原又はペプチド抗原は、B細胞エピトープを含むがT細胞エピトープは含まない。免疫応答は、ポリペプチド/ペプチド中にT細胞エピトープを包含することによって、又は複数のT細胞エピトープを含む免疫原性担体タンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン又は破傷風トキソイド)へのポリペプチド/ペプチドの結合体化によって非常に増大され得る。上記結合体は、抗原提示細胞によって取り込まれ、プロセス化され、ヒト白血球抗原(HLA)クラスII分子によって提示される。これは、担体由来のエピトープに対するT細胞の特異性によって、元の抗原性ポリペプチド/ペプチドに特異的なB細胞に対してT細胞補助が与えられることを可能にする。これは、抗体の産生、分泌及びアイソタイプスイッチの増加を引き起こし得る。
【0046】
アジュバントは、免疫細胞の活性を調節することによって抗原に対する特異的な免疫応答を増大する物質又は手段である。アジュバントの例としては、単なる例として、共刺激分子に対するアゴニスト性(agonsitic)抗体、フロイントアジュバント、ムラミルジペプチド、リポソームが挙げられる。したがって、アジュバントは、免疫調節剤である。担体は、第2の分子に結合する場合、第2の分子に対する免疫応答を増大する免疫原性分子である。
【0047】
本発明のなおさらなる態様において、動物に、病原性生物体に対する免疫性を与える方法が提供され、この方法は、本発明の第1の態様による少なくとも1つのポリペプチド又はその一部を当該動物に投与することを含む。好ましくは、ポリペプチドは本発明の第5の態様によるワクチンの形態であり得る。
【0048】
本発明の好ましい方法において、上記動物はヒトである。
【0049】
好ましくは、本発明の第1の態様の抗原ポリペプチド又は本発明の第5の態様のワクチンは、静脈内、筋肉内、皮下のいずれかに直接注射することで投与され得る。さらにまた、ワクチン又は抗原ポリペプチドは経口で取り込んでもよい。ポリペプチド又はワクチンは、筋肉内及び皮下で投与される注射可能物質を調製するために利用される、医薬的に許容可能な担体(例えば、様々な水溶性媒体及び様々な脂質媒体)(無菌食塩水等)で投与され得る。従来の懸濁剤及び分散剤を採用することができる。移植等の他の投与手段(例えば、少量の持続して放出する生物学的観察の可能なペレット)は、当業者にとって明らかであるだろう。
【0050】
好ましくは、上記ワクチンは、細菌種Staphylococcus aureusに対するものである。
【0051】
ワクチン又は抗原性ポリペプチドは、ヒト以外の動物(限定するためではなく例示として、家庭用ペット(例えば、ネコ及びイヌ等の家庭動物)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ)及びウマ)において予防する状況又は緩和する状況において有効であることもまた、明らかであるだろう。
【0052】
本発明のさらなる態様によれば、本発明による少なくとも1つの抗原ポリペプチド若しくはその一部に結合する抗体、又は少なくとも有効な結合部分が提供される。
【0053】
本発明の好ましい態様において、上記抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体である。
【0054】
本発明のさらに好ましい態様において、上記抗体は、ヒト抗体の不変領域又は定常領域と共に当該抗体の可変領域を含む、組み換え方法によって産生されたキメラ抗体である。
【0055】
本発明のさらに好ましい態様において、上記抗体は、当該抗体の相補性決定領域を、ヒト抗体の定常(C)領域、及び可変(V)領域由来のフレームワーク領域の両方と結合させる組み換え方法によってヒト化される。
【0056】
好ましくは、上記抗体には、従来の標識又はタグ(例えば、放射活性並びに/或いは蛍光並びに/或いはエピトープの標識又はタグ)を含むマーカーが提供される。
【0057】
好ましくは、上記ポリペプチドに対する上記ヒト化モノクローナル抗体は、原核生物細胞又は真核生物細胞のトランスフェクション又は形質転換に好適に適合する発現ベクターにおいて融合ポリペプチドとして産生される。
【0058】
抗体(免疫グロブリンとしても知られる)は、異質分子(抗原)に対する特異性を有するタンパク質分子である。免疫グロブリン(Ig)は、二対のポリペプチド鎖、つまり一対の軽(L)(低分子量)鎖(κ又はλ)、及び一対の重(H)鎖(γ、α、μ、δ及びε)(4つ全てが、ジスルフィド結合によって互いに連結している)から成る、構造的に関連したタンパク質のクラスである。H鎖及びL鎖は両方とも、抗原の結合に寄与し、且つIg分子によって大きく変化する領域を有する。さらに、H鎖及びL鎖は、非可変である領域又は定常である領域を含む。
【0059】
L鎖は、2つのドメインから成る。カルボキシ末端のドメインは、所与の型のL鎖間で本質的に同一であり、「定常」(C)領域と呼ばれる。アミノ末端のドメインは、L鎖毎に変化し、上記抗体の結合部位に寄与する。この可変性によって、アミノ末端のドメインは「可変」(V)領域と呼ばれる。
【0060】
Ig分子のH鎖は、幾つかのクラス(α、μ、σ、α及びγ)がある(これらの中に、幾つかのサブクラスが存在する)。2つの同一のH鎖及びL鎖の1つ又は複数のユニットから成るアセンブルされたIg分子は、保有するH鎖からその名前が由来する。したがって、以下の5つのIgアイソタイプが存在する:IgA、IgM、IgD、IgE及びIgG(H鎖の違いに基づく4つのサブクラス(すなわち、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)を有する)。抗体構造及びそれらの様々な機能に関するさらなる詳細は、抗体利用(Using Antibodies):A laboratory manual,Cold Spring Harbour Laboratory Pressにおいて見出され得る。
【0061】
キメラ抗体は、マウス抗体又はラット抗体のV領域の全てがヒト抗体C領域と結合される組み換え抗体である。ヒト化抗体は、齧歯類抗体V領域由来の相補性決定領域とヒト抗体V領域由来のフレームワーク領域とを融合する組み換えハイブリッド抗体である。ヒト抗体由来のC領域もまた用いられる。相補性(complimentarity)決定領域(CDR)は、抗体の重鎖及び軽鎖の両方のN末端ドメイン内にある領域であり、ここにV領域のバリエーションの大部分が制限される。これらの領域は、抗体分子の表面でループを形成する。これらのループは、抗体と抗原との間の結合表面を提供する。
【0062】
非ヒト動物由来の抗体は、異質抗体に対する免疫応答及び循環からの抗体の除去を誘発する。キメラ抗体及びヒト化抗体は両方とも、ヒト被験体へ注射した場合、抗原性を低減させる。なぜなら、組み換えハイブリッド抗体内で齧歯類(すなわち、異質)抗体の量が減少するとともに、ヒト抗体領域は免疫応答を誘発(illicit)しないからである。このことは、より弱い免疫応答及び抗体のクリアランスの減少を生じる。このことは、ヒト疾患の処置において治療用抗体を用いる場合、明らかに望ましい。ヒト化抗体は、より少ない「異質」抗体の領域を有するよう設計され、したがって、キメラ抗体よりも免疫原性が低いと考えられる。
【0063】
本発明のさらに好ましい実施形態において、上記抗体はオプソニン抗体である。
【0064】
オプソニンは、上記異物の食作用を容易にする作用物質である。食作用は、マクロファージ、多型白血球によって介在され、微生物、損傷細胞又は死滅細胞、細胞残屑、不溶性粒子及び活性化した凝固因子の摂取並びに消化を伴う。したがって、オプソニン抗体は同じ機能を提供する抗体である。オプソニンの例は、抗体のFc部分又はC3補体である。
【0065】
本発明の別の態様において、本発明によるヒト化抗体又はキメラ抗体をコードする核酸配列を含むベクターが提供される。
【0066】
本発明のなおさらなる態様において、本発明によるヒト化抗体若しくはキメラ抗体をコードするベクターを含む細胞又は細胞株が提供される。細胞又は細胞株は、本発明によるヒト化抗体若しくはキメラ抗体をコードするベクターで形質転換又はトランスフェクトされ得る。
【0067】
本発明のなおさらなる態様において、上記に記載されているようにモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株が提供される。
【0068】
本発明のさらなる態様において、本発明によるハイブリドーマ細胞株を用いて本発明によるモノクローナル抗体を産生する方法が提供される。
【0069】
本発明のなおさらなる態様において、
(i)本発明によるヒト化抗体又はキメラ抗体をコードする核酸分子を含むベクターで形質転換又はトランスフェクトされる細胞を準備すること、
(ii)上記抗体の産生に適した条件で上記細胞を生育させること、及び
上記細胞又はその生育環境から上記抗体を精製すること、
を包含する、本発明によるヒト化抗体又はキメラ抗体の産生方法が提供される。
【0070】
本発明のさらなる態様において、
(i)免疫応答性哺乳動物に、図1又は図3で表されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチド又はそのフラグメントを含むイムノゲンの免疫性を与える工程、
(ii)免疫された免疫応答性哺乳動物のリンパ球を骨髄腫細胞と融合する工程であって、それによってハイブリドーマ細胞を形成する、工程、
(iii)(i)のアミノ酸配列に対する結合活性について、工程(ii)のハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体をスクリーニングする工程、
(iv)上記ハイブリドーマ細胞を培養する工程であって、それによって上記モノクローナル抗体を増殖及び/又は分泌させる、工程、及び
(v)培養上清からモノクローナル抗体を回収する工程
を包含する、本発明におけるハイブリドーマ細胞株の調製方法が提供される。
【0071】
免疫応答性哺乳動物は、マウス、ラット又はラビットであり得る。
【0072】
ハイブリドーマ細胞を用いたモノクローナル抗体の産生は、当該技術分野において既知である。モノクローナル抗体を産生するのに用いられる方法は、Kohler及びMilstein in Nature 256, 495-497(1975)並びにまた、Donillard及びHoffman, "Basic Facts about Hybridomas", Compendium of Immunology VII, Schwartz編, 1981に開示され、これらは参照されて援用される。
【0073】
本発明のさらなる態様において、Staphylococcus aureus関連疾患の処置又は予防用の薬物の製造における本発明の第1の態様による抗原ポリペプチドの使用が提供される。
【0074】
本発明のさらなる態様において、Staphylococcus aureus関連疾患の処置用の薬物の製造における本発明による抗体の使用が提供される。
【0075】
本発明のさらなる態様において、患者を処置する方法であって、本発明の第1の態様による抗原ポリペプチド或いは本発明の第5の態様によるワクチン或いは本発明による抗体を患者に投与することを含む、患者を処置する方法が提供される。好ましくは、本発明は、Staphylococcus aureus関連疾患の治療を目的とする。
【0076】
Staphylococcus aureus関連疾患が、例えば、敗血症、結核、バクテリア関連食中毒、血液感染、腹膜炎、心内膜炎、骨髄炎、セプシス、皮膚疾患、髄膜炎、肺炎、胃潰瘍、淋病、連鎖球菌性咽喉炎、連鎖球菌関連毒素ショック、壊死性筋膜炎、膿痂疹、ヒストプラスマ症、ライム病、胃腸炎、赤痢、細菌性赤痢を含む。
【0077】
本発明の実施形態は、以下の材料、方法、及び添付の図面を参照して、例示としてのみ記載される。
【実施例】
【0078】
Tn917ライブラリスクリーン
S.aureus Tn917ライブラリのスクリーンは、炭素飢餓同定株ST1を生存する能力の変化でトランスポゾンする。トランスポゾン挿入がkatA遺伝子の大きな欠失、コードするカタラーゼ、及び分岐して転写されたpheP遺伝子中のより小さい欠失を産出していることをシーケンシングによって、見つけ出した。このpheP遺伝子は、推定アミノ酸パーミアーゼをコードする(図4A、図4B)。
【0079】
PheP遺伝子の分析
PheP配列の分析は、PheP配列が膜貫通ドメインを示す12個の疎水性非接触領域を有することを明らかにした。タンパク質は輸送タンパク質のアミノ酸−ポリアミン−オルガノケーション(organocation)(APC)スーパーファミリの成員(member)と重要な相同性を有する(Jack他. Microbiology. 146:1797-814(2000)及びSaier, M.H. Microbiology. 146:1775-1795(2000))。S.aureus PhePは、E.coli LysP(44.6%)(これは、リジンパーミアーゼとして機能する)及びB.subtilis RocE(34.9%)(これは、アルギニンパーミアーゼ及びオルニチンパーミアーゼとして機能する)と最も大きい配列相同性を示す。
【0080】
ST1(pheP katA)の病原性をマウス膿瘍の感染モデルにおいて試験したとき、同系統の親株(8325−4)と比較して有意な回復の減少が見られた(0.15%)(P<0.003)。ST1(pheP katA)の回復レベルは、病原性調節変異体(sarA)のものと同程度であった(0.04%)(P<9,993)(図5)。対して、以前に記載したように(Horsburgh他. Infect. Immun. 69:3744-3754(2001))、ST16(katA)の回復は、8325−4のものと有意に異ならなかった(野生種−ST1(pheP katA)の病原性がpheP遺伝子の不活性化によって低減したことを示唆する)。
【0081】
対立遺伝子の置換変異体である、MJH600(pheP)(図4C)は、phePの不活性化がST1の病原性の低減に関与する要因であるかどうかを決定するために構築(constructed)された。対立遺伝子の置換は、以下
CCAGAATTCTGCCAATGATTAACTCTAATCGと共に
ATGATGGTACCAGTAGCTACAAATAGACCAGTCC及び、
AGAGGATCCGCATGTCGCAATCGTATTTGTGACCと共に
GGACTGGTCTATTTCTAGCTACTGGTACCATCAT
のプライマーを用いて上流フラグメント及び下流フラグメントでpheP遺伝子を増幅することによって、達成される。pDG1513由来のテトラサイクリン耐性遺伝子(tet)(Guerot-Fleury他. Gene 167:335-336(1995))は、CCGGTACCTTAGAAATCCCTTTGAGAATGTTTと共にCCGGTACCCGGATTTTATGACCGATGATGAAGのプライマーを用いて増幅された。精製後、3つの分離されたPCR産物は、それぞれ、BamHI/KpnI、EcoRI/KpnI及びKpnIで消化(digest)されて、同時にBamHI/EcoRIにより消化されたpAZ106と連結反応する(Kemp他, J Bacteriol. 173:4646-4652(1991), Sambrook他)。1つのテトラサイクリン耐性クローン(Pmal32)を用いて、エレクトロコンピテントS.aureus RN4220を形質転換し(Schenk, S. 及びR.A. Ladagga. Lett. 94:133-138(1992))、φ11を用いたS.aureusの形質導入を介する異型交配によって解決された。
【0082】
PheP変異体の研究
マウス膿瘍モデルで試験した場合、MJH600(pheP)は、8325−4(野生種)に比べて、病原性が低減した(P<0.003)(図5)。これは、低減した病原性がphePの変異に関連することを実証し、不活性化したパーミアーゼ遺伝子がST1の病原性の低減に関与する決定因子であることを裏付けた。ST1(katA pheP)の病原性は、MJH600(pheP)のものと比べて、顕著に低減した(P<0.02)。これにより、katAがpheP変異体での生存の一因となり得ることが示された。MJH600(pheP)は、8325−4(野生種)と同様のエキソプロテインプロファイルを示し、既知の細胞外における病原性要因の発現に対する主要な変異の効果を除外した(データは図示せず)。MJH600(pheP)の病原性の低減は、Drosophila melonogasterの感染モデルで同様に観察された(A. Needham及びS. J. Foster、非公開データ)。
【0083】
変異体の相補性の研究
ST16(katA)は、グルコース飢餓を生存する能力が低減した(Horsburgh他. Infect. Immun. 69: 3744-3754(2001)及びWatson他, J. Bacteriol. 180: 1750-1758(1998))。ST1(katA pheP)は、ST16(katA)と比較して、グルコース制限CDMで長期にわたる好気的インキュベーション中の生存が低減したことから、MJH600(pheP)の飢餓生存率を試験した。MJH600(pheP)は、5日後に生存率が8325−4(野生種)の10分の1になったように親株より早く生存率が低くなった(図6)。生存は、相補的ベクターpMK4上のpheP遺伝子の全長コピーを含む、pMAL43Rの存在によって回復した(Sullivan他, Gene 29: 21-26(1984))(図6)。プラスミドpMAL43Rは、プライマーCACAGAATTCGAATGGTAACATGGTAATAATと共にGAGAGGATCCTAGATGGGAGACTAAATATGGを用いて、phePをPCRで増幅することによって、構成される。その産物は、BamHI/EcoRIで消化され、pMK4と連結反応して、S.aureusRN4220で直接クローン化される。
【0084】
MJH600(pheP)は、全ての試験条件下で、栄養培地及び化学的に定義された培地(CDM)によって存在している株(8325−4)と同様に生育した(データは図示せず)。対して、強い生育欠陥が、微好気的条件(5%CO、87%N、8%O)(図7A)及び嫌気的条件(データは図示せず)で、MJH600(pheP)のブタ血清寒天(Wiltshire他, Infect. Immun. 69: 5198-5202(2001))で観察された。ブタ血清寒天での好気成育においては、通常の生育が見られた。CDM由来成分のミクロモルの濃度の付加によって、フェニルアラニンがMJH600(pheP)の通常の生育を十分に回復させることが同定され(図7B)、パーミアーゼ変異体は、フェニルアラニンの取り込みにおいて欠陥を有する可能性が高いことを示した。生育欠陥はまた、Pmal43Rを用いた相補性によって回復し、pheP変異のみが、観察される表現型に関与したことを示した(図7C)。
【0085】
結論
感染の間、宿主由来のアミノ酸を除去するS.aureusの能力は、in vivoでの生育に重要な適合であると考えられる。S.aureus(8325−4)は、フェニルアラニンに栄養要求性ではない(Taylor, D.及びK.T. Holland. J. Appl. Bacteriol. 66: 319-329(1989))。しかし、生合成は、膿瘍等の環境下では、細胞の生育要求性を満たすのに十分であるはずがなく、よって感染中のフェニルアラニンの取り込み要求性が引き起こされる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】Staphylococcus aureus PhePの推定の細胞質外ループをコードするDNA配列(a、b及びc)及びそれに対応するアミノ酸配列を示す図である。
【図2】Staphylococcus aureus PhePのDNA配列を示す図である。
【図3】図2に示されるDNA配列に対応するアミノ酸配列を示す図である。
【図4】pheP−katA遺伝子座の配置図であり、pheP及びkatA転写方向は大きい矢印で示され、推定の転写終了の構造は丸及び棒で示される。(A)8325−4(野生種)。(B)変異ST1、Tn917の挿入がpheP遺伝子の1,542bpのコード領域の対応する380bpの欠失、及びkatA遺伝子の1,419bpのコード領域の1,329bpの欠失と共に見られる。(C)MJH600(pheP)、対立遺伝子の置換が見られる。
【図5】マウス皮膚膿瘍の感染モデルにおけるS.aureus株の病原性を示す図である。各株の約10cfuを生後6週〜8週齢のBALB/Cマウスに皮下接種した。8325−4(野生種)(n=10)、ST1(pheP katA)(n=10)、MJH600(pheP)(n=10)及びPC1839(sarA)(n=10)。感染から7日後、マウスを安楽死させ、損傷を除去、ホモジナイズし、BH1寒天プレート上で希釈及び生育後、生存能力のあるバクテリアを計測した(3、7)。顕著な回復の低減がST1(pheP katA)(0.15%)(P<0.003)、MJH600(pheP)(1.9%)(P<0.003)及びPC1839(sarA)(0.04%)(P<0.003)において観察された。点線は、回復の限界を示す。棒は、回復の平均値を示す。統計的有意性は、5%の信頼限界でStudent−t検定を用いて、株の回復を評価した。
【図6】グルコース制限CDM(22)における長期にわたる好気的インキュベーション後の8325−4(野生種)(黒四角)、ST1(●)、ST16(katA)(○)及びMJH600(pheP)(△)MJH621(pheP Pmal43R)(□)の飢餓生存能力を示す図である。試料は、指示された回数無菌で除去されて、BHI寒天上での14時間のインキュベーション後の希釈及びコロニー計測によって生存率が評価された。実験は三回繰り返し、非常に類似した結果を得た。代表実験の結果が示された。
【図7】MJH600(pheP)の生育表現型及び相補性を示す図である。株は、ブタ血清寒天上の微好気的環境で(A)何も加えず、又は(B)フェニルアラニンを付加して(1mMの最終濃度)、一晩中インキュベートした。MJH620(8325−4 pMAL43R)及びMJH621(pheP Pmal43R)のブタ血清寒天(C)上の生育。相補性の研究のため、pMAL43及びPmal43Rが8325−4(野生種)及びMJH600(pheP)において、エレクトロポレーションした。pheP遺伝子が、E.coliにおける遺伝子の毒性によってS.aureusにおいて直接、クローン化される。pheP遺伝子は、E.coliの輸送変異体の相補性を防ぐ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された核酸配列によってコードされる、薬物として使用する、抗原ポリペプチド又はその一部であって、該核酸配列が、
i)図1に示される核酸配列、
ii)病原性生物体によって発現されるポリペプチドをコードする(i)の核酸配列、
iii)(i)又は(ii)において同定される配列をハイブリダイズする核酸配列、及び
iv)(i)、(ii)又は(ii)に記載の核酸配列に対する遺伝コードの結果として縮重する核酸配列、
から成る群より選択される、該抗原ポリペプチド又はその一部。
【請求項2】
前記薬物がワクチンである、請求項1に記載の抗原ポリペプチド。
【請求項3】
前記核酸配列が、
i)図2に示される核酸配列、
ii)(i)において、病原性生物体によって発現されるポリペプチドをコードする核酸配列、
iii)前記(i)又は前記(ii)において同定される配列をハイブリダイズする核酸配列、及び
iv)(i)、(ii)又は(ii)に記載の核酸配列に対する遺伝コードの結果として縮重する核酸配列、
から成る群より選択される、請求項1に記載の抗原ポリペプチド。
【請求項4】
前記核酸配列がストリンジェントなハイブリダイゼーション条件で、図1又は図2において示される核酸配列、又はその相補鎖にアニーリングする、請求項1に記載の抗原ポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドがパーミアーゼとして活性を有する、請求項1に記載の抗原ポリペプチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドがフェニルアラニンパーミアーゼ活性を有する、請求項5に記載の抗原ポリペプチド。
【請求項7】
前記ポリペプチドが病原性生物体によって発現される、請求項1に記載の抗原ポリペプチド。
【請求項8】
前記病原性生物体がバクテリアである、請求項7に記載の抗原ポリペプチド。
【請求項9】
前記バクテリアが、
Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Enterococcus faecalis、Mycobacterium tuberculsis、Streptococcus group B、Streptoccocus pneumoniae、Helicobacter pylori、Neisseria gonorrhea、Streptococcus group A、Borrelia burgdorferi、Coccidiodes immitis、Histoplasma sapsulatum、Neisseria meningitidis type B、Shigella flexneri、Escherichia coli、Haemophilus influenzae、
から成る群から選択される、請求項8に記載の抗原ポリペプチド。
【請求項10】
前記バクテリアが、Staphylococcus spp.属である、請求項8に記載の抗原ポリペプチド。
【請求項11】
前記バクテリアが、Staphylococcus aureusである、請求項8に記載の抗原ポリペプチド。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、病原性生物体の感染病原性に関連する、請求項1に記載の抗原ポリペプチド。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、図1又は図3において示されるアミノ酸配列の全て又は一部を含む、請求項1に記載の抗原ポリペプチド。
【請求項14】
請求項1に記載の抗原ポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクター。
【請求項15】
(i)請求項14に記載のベクターで形質転換/トランスフェクトされる細胞を準備すること、
(ii)前記ポリペプチドの製造に適した条件で前記細胞を生育すること、及び
(iii)前記細胞からの前記ポリペプチドを精製すること、又はその生育環境
を包含する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組み換え抗原ポリペプチドの製造方法。
【請求項16】
前記ベクターが前記ポリペプチドの精製を容易にする分泌シグナルをコードする、請求項15に記載の組み換え抗原ポリペプチドの製造方法。
【請求項17】
請求項14に記載のベクターで形質転換又はトランスフェクトされる細胞又は細胞株。
【請求項18】
請求項1に記載の少なくとも1つの抗原ポリペプチド又はその一部を含むワクチン。
【請求項19】
前記ワクチンが担体及び/又はアジュバントを含む、請求項18に記載のワクチン。
【請求項20】
前記ワクチンがサブユニットワクチンであり、ここで該ワクチンの免疫原性部分が請求項1に記載の抗原ポリペプチドのフラグメント又はサブユニットである、請求項18に記載のワクチン。
【請求項21】
動物に病原菌に対する免疫性を与える方法であって、請求項1に記載の少なくとも1つのポリペプチド又はその一部を該動物に投与することを包含する、動物に病原菌に対する免疫性を与える方法。
【請求項22】
前記ポリペプチドがワクチン形態である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記動物がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の少なくとも1つの抗原ポリペプチド又はその一部と結合する、抗体、又は少なくとも効果的に結合するそれらの一部分。
【請求項25】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項24に記載の抗体。
【請求項26】
前記抗体がキメラ抗体である、請求項24に記載の抗体。
【請求項27】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項24に記載の抗体。
【請求項28】
前記抗体がオプソニン抗体である、請求項24に記載の抗体。
【請求項29】
請求項26〜28のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸配列を含むベクター。
【請求項30】
請求項29に記載のベクターで形質転換又はトランスフェクトされる細胞又は細胞株。
【請求項31】
請求項25に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株。
【請求項32】
請求項26又は27に記載のヒト化抗体又はキメラ抗体の製造方法であって、
(i)請求項27〜29のいずれか一項に記載のベクターで形質転換又はトランスフェクトされる細胞を準備すること、
(ii)前記抗体の製造に適した条件で前記細胞を生育させること、及び
(iii)前記細胞又はその生育環境から前記抗体を精製すること、
を包含する、ヒト化抗体又はキメラ抗体の製造方法。
【請求項33】
請求項31に記載のハイブリドーマ細胞株の調製方法であって、
(i)免疫応答性哺乳動物に、図1又は図3で表されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチド又はそのフラグメントを含むイムノゲンの免疫性を与える工程、
(ii)免疫された前記免疫応答性哺乳動物のリンパ球を骨髄腫細胞と融合する工程であって、それによってハイブリドーマ細胞を形成する、工程、
(iii)(i)の前記アミノ酸配列に対する結合活性について、工程(ii)のハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体をスクリーニングする工程、
(iv)前記ハイブリドーマ細胞を培養する工程であって、それによって前記モノクローナル抗体を増殖及び/又は分泌させる、工程、及び
(v)前記培養上清からモノクローナル抗体を回収する工程
を包含する、請求項31に記載のハイブリドーマ細胞株の調製方法。
【請求項34】
Staphylococcus aureus関連疾患の処置又は予防用の薬物の製造における、請求項1に記載の抗原ポリペプチドの、使用。
【請求項35】
Staphylococcus aureus関連疾患の処置用の薬物の製造における、請求項24に記載の抗体の、使用。
【請求項36】
前記Staphylococcus aureus関連疾患が、敗血症、結核、バクテリア関連食中毒、血液感染、腹膜炎、心内膜炎、骨髄炎、セプシス、皮膚疾患、髄膜炎、肺炎、胃潰瘍、淋病、連鎖球菌性咽喉炎、連鎖球菌関連毒素ショック、壊死性筋膜炎、膿痂疹、ヒストプラスマ症、ライム病、胃腸炎、赤痢及び細菌性赤痢等を含む、請求項34又は35に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−501318(P2008−501318A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510095(P2007−510095)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001384
【国際公開番号】WO2005/105845
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(507148917)アブシンス・バイオロジクス・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Absynth Biologics Ltd
【住所又は居所原語表記】40 Leavygreave Road, Sheffield S3 7RD, United Kingdom
【Fターム(参考)】