説明

ポリマーおよびその潤滑組成物

本発明は、潤滑粘度の油ならびにオレフィンブロックおよびビニル芳香族ブロックの水素化コポリマーを含む潤滑組成物であって、このコポリマーは、場合により官能化されている潤滑組成物を提供する。本発明は、水素化コポリマーを調製する方法;およびこの潤滑組成物の使用をさらに提供する。一実施形態では、本発明は、潤滑粘度の油、本明細書に開示されている水素化コポリマーおよび、分散剤、酸化防止剤、磨耗防止剤、摩擦調整剤またはその混合物を含む少なくとも1つの添加剤を含む潤滑組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑粘度の油ならびにオレフィンブロックおよびビニル芳香族ブロックの水素化コポリマーを含む潤滑組成物であって、このコポリマーが、場合により官能化されている潤滑組成物に関する。本発明は、水素化コポリマーを調製する方法、およびこの潤滑組成物の使用をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
潤滑粘度の油中の粘度調整剤(もしくは粘度指数向上剤)または分散剤粘度調整剤としてのポリマーの使用はよく知られている。典型的には、ポリマー骨格には、ポリメタクリレート、ポリオレフィンまたは水素化スチレン−ブタジエンおよびその官能性誘導体が含まれる。分散剤粘度調整剤については、この骨格は、グラフト化窒素化合物で官能化されてもよい。
【0003】
既知の粘度調整剤および分散剤粘度調整剤の多くは、このポリマーが劣化した場合、限定された清浄性および限定された低温特性を有する。これは、特にオレフィンコポリマーに対して、エンジンピストン堆積物として観察されることが多い。さらに、いくつかの粘度調整剤および分散剤粘度調整剤は、限定された低温性能を有する。
【0004】
特に、エンジン潤滑剤では、限定された清浄性は、リングスティックまたはバルブもしくは管上に堆積物の蓄積をもたらし得る。バルブ中での堆積物の蓄積は、ミスティング、空気吸い込みくずおよびバルブ軸密閉漏れを生じ、その他のエンジン動作の問題を引き起こし得る。
【0005】
ポリイソブチレン(一般に、スクシンイミド分散剤から)などの長鎖アルキル基を有する添加剤は、燃料経済性およびコールドクランクに有害な影響を有することもさらに知られている。したがって、燃料経済性への有害な影響を有する添加剤の量を、エンジン油から減少させることは他の利点であることになる。
【0006】
船舶用ディーゼル用途に対するエンジン潤滑剤では、ブライトストックの供給が限られていることにより、粘度調整用の増産品を供給することが可能な代替物が求められている。したがって、ブライトストックを置き換えることが可能な粘度調整剤を特定することは、さらなる利益であることになる。
【0007】
特許文献1には、エチレン性不飽和カルボン酸またはその官能性誘導体でグラフト化された、油可溶性の実質的に水素化された、ビニル置換芳香族−脂肪族共役ジエンブロックコポリマーの反応によって調製された、潤滑油組成物のための分散剤粘度改良剤が開示されている。この分散剤粘度改良剤は、典型的には、30000〜300000の数平均分子量;および50000〜500000の重量平均分子量を有する。
【0008】
特許文献2には、溶媒を含まない反応物およびその分散剤誘導体から調製されたグラフトコポリマーが開示されている。このグラフトコポリマーは、ビニル置換芳香族モノマーおよび共役ジエンから作製された水素化ランダムまたは正規ブロックコポリマーを含む。この正規およびランダムブロックコポリマーは、10000〜500000の数平均分子量を有する。
【0009】
特許文献3には、様々なアミンとさらに反応されている、オレフィンポリマー、ジエンポリマー、ビニルポリマーおよびビニリデンポリマーから選択されるポリマー骨格をグラフト化することが開示されている。
【特許文献1】米国特許第5,512,192号明細書
【特許文献2】米国特許第5,429,758号明細書
【特許文献3】米国特許出願第2005/0153849号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、許容される低温性能および/または清浄度の少なくとも1つを提供することができる、粘度調整剤および/または分散剤粘度調整剤として使用することが可能なコポリマーを提供する。この潤滑剤組成物がエンジン油に適する場合、本発明は、清浄度、ならびに、すすおよびスラッジの取扱い性を維持しながら、許容される燃料経済性の少なくとも1つをさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、「ブロックA/(ブロックA+B)のモル比」という語句は、(ブロックA+ブロックB)中の繰返し単位の合計で除されたブロックAの繰返し単位(またはモノマー単位)のモル比を意味する。
【0012】
一実施形態では、本発明は、潤滑粘度の油、ならびに少なくとも1種のオレフィンポリマーブロック(ブロックA)および少なくとも1種のビニル芳香族ポリマーブロック(ブロックB)を、0.5〜0.9のブロックA/(ブロックA+B)のモル比で含む水素化コポリマーであって、
ブロックAは、5モル%〜95モル%の分岐アルキル基を有する繰返し単位を含み、但し、このコポリマーがテーパードコポリマー(tapered copolymer)を含む場合、ブロックAは、38.5モル%超〜95モル%の分岐アルキル基を有する繰返し単位を含むことを条件とし、ブロックAのこの分岐アルキル基は、場合によりさらに置換されており;
場合により、以下の:
(i)ブロックAまたはブロックBが懸垂カルボニル含有基でさらに官能化され、前記懸垂カルボニル含有基は場合によりさらに置換されて、エステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を提供する、および/または
(ii)ブロックAが、このオレフィンブロックポリマー上に直接結合したアミン官能基でさらに官能化される
経路の少なくとも1つによってさらに官能化される水素化コポリマーを含む潤滑組成物を提供する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、潤滑粘度の油、ならびに少なくとも1種のオレフィンポリマーブロック(ブロックA)および少なくとも1種のビニル芳香族ポリマーブロック(ブロックB)を、0.5〜0.9のブロックA/(ブロックA+B)のモル比で含む、テーパードコポリマー以外の水素化コポリマーであって、
ブロックAは、5モル%〜95モル%の分岐アルキル基を有する繰返し単位を含み、このブロックAの分岐アルキル基は、場合によりさらに置換されており;
場合により、以下の:
(i)ブロックAまたはブロックBが懸垂カルボニル含有基でさらに官能化され、前記懸垂カルボニル含有基は場合によりさらに置換されて、エステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を提供する、および/または
(ii)ブロックAが、このオレフィンブロックポリマー上に直接結合したアミン官能基でさらに官能化される
経路の少なくとも1つによってさらに官能化される水素化コポリマーを含む潤滑組成物を提供する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、潤滑粘度の油、ならびに少なくとも1種のオレフィンポリマーブロック(ブロックA)および少なくとも1種のビニル芳香族ポリマーブロック(ブロックB)を、0.5〜0.9のブロックA/(ブロックA+B)のモル比で含む水素化テーパードコポリマーであって、
ブロックAは、38.5モル%超〜95モル%の分岐アルキル基を有する繰返し単位を含み、このブロックAの分岐アルキル基は場合によりさらに置換されており、
この水素化コポリマーは、場合により、以下の:
(i)ブロックAまたはブロックBが懸垂カルボニル含有基でさらに官能化され、前記懸垂カルボニル含有基は場合によりさらに置換されて、エステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を提供する、および/または
(ii)ブロックAが、このオレフィンブロックポリマー上に直接結合したアミン官能基でさらに官能化される
経路の少なくとも1つによってさらに官能化される水素化テーパードコポリマーを含む潤滑組成物を提供する。
【0015】
一実施形態では、本発明は、潤滑粘度の油、ならびに次式で表されるブロックAおよびブロックB
【0016】
【化1】

[式中、
aおよびbは、その対応するモノマー繰返し単位に関する係数であり、
a/(a+b)の比は、0.5〜0.9、または0.55〜0.8、または0.6〜0.75であり;
は、H、アルキル、またはアルキル−Zであり、但し、R基の5モル%〜95モル%は、アルキルまたはアルキル−Z基であり(一実施形態では、RはHではない);
は、場合により、懸垂カルボニル含有基でさらに官能化されたアレーン基またはアルキル置換アレーン基であり;
Eは、アルキレン基またはアルケニレン基であり(典型的には、EはC基である);
X、YおよびZは、独立に、Hまたは懸垂カルボニル含有基であり、但し、X、YおよびZの少なくとも1つは懸垂カルボニル含有基であり;
m、n、およびoは、上記の部分に関する繰返し単位の数であり、但し、各繰返し単位は、適当な数平均分子量を有するポリマーを提供するのに十分な量で存在し、このポリマーは重合末端基を末端とし、但し、このコポリマーがテーパードコポリマーブロックを含む場合、Aは、38.5モル%超〜95モル%の分岐の、場合により置換されているアルキル基を有する繰返し単位を含むことを条件とする]
を含む水素化コポリマーを含む潤滑組成物を提供する。
【0017】
一実施形態では本発明は、潤滑粘度の油、ならびに次式で表される
【0018】
【化2】

[式中、
aおよびbは、その対応するモノマー繰返し単位に関する係数であり、
a/(a+b)の比は、0.5〜0.9、または0.55〜0.8、または0.6〜0.75であり;
は、H、t−アルキル、sec−アルキル、CH−、R’N−、またはアリールであり;
は、H、アルキル、またはアルキル−Zであり、但し、ブロック(A)においてR基の5モル%〜95モル%は、アルキルまたは−アルキル−Z基であり;
は、場合により、懸垂カルボニル含有基でさらに官能化されたアレーン基またはアルキル置換アレーン基であり;
は、Hまたはアルキルなどの重合末端基であり;
Eは、アルキレン基またはアルケニレン基であり(典型的には、EはC基である);
X、YおよびZは、独立に、Hまたはカルボニル含有基であり、但し、X、YおよびZの少なくとも1つは懸垂カルボニル含有基であり;
R’はヒドロカルビル基であり、
m、n、およびoは、上記の部分についての繰返し単位の数であり、但し、各繰返し単位は、適当な数平均分子量を有する水素化コポリマーを提供するのに十分な量で存在し、但し、このコポリマーがテーパードコポリマーを含む場合、ブロックAは、38.5モル%超〜95モル%の分岐の、場合により置換されているアルキル基を有する繰返し単位を含むことを条件とする]
上記の通りのブロックAおよびBを含む水素化コポリマーを含む潤滑組成物を提供する。
【0019】
一実施形態では、本発明は、(I)潤滑粘度の油、ならびに(II)
(a)(i)ビニル芳香族ポリマーブロックと(ii)オレフィンポリマーブロックとを重合させるステップであって、このオレフィンポリマーブロックは、1,2−付加によって反応して、このオレフィンポリマーブロック中に5モル%〜95モル%の分岐の、場合により置換されているアルキル基を生じさせるステップと、続いてステップ(b)から(d):
(b)場合により、ステップ(a)の生成物を水素化するステップと;
(c)場合により、
(c1)フリーラジカルグラフト化条件下で(ポリマー科学の当業者には周知の方法、例えば、液相法および/または溶融法、即ち、押出しグラフト化で)、カルボニル含有化合物をステップ(b)からのポリマーと反応させて、懸垂カルボニル含有基を有するポリマーを形成するか、あるいは
(c2)熱グラフト化条件下で、カルボニル含有化合物をステップ(a)からのポリマーと反応させて、懸垂カルボニル含有基を有するポリマー形成し、続いて場合により(c2)のポリマーを水素化するステップと;
(d)場合により、ステップ(c1)および/または(c2)のカルボニル含有ポリマーを、少なくとも1種のアルコールおよび/またはアミン(典型的には、エステル、アミドまたはイミドを形成する)と反応させて、官能化ポリマーを形成するステップであって、但し、このコポリマーがテーパードコポリマーを含む場合、ブロックAは、38.5モル%超〜95モル%の分岐の、場合により置換されているアルキル基を有する繰返し単位を含むことを条件とするステップと
の1つまたは複数;
(e)場合により、懸垂カルボニル含有基を有するコポリマーを、少なくとも1種のアルコールおよび/またはアミンと反応させて、官能化ポリマーを形成するステップであって、但し、このコポリマーがテーパードコポリマーを含む場合、ブロックAは、38.5モル%超〜95モル%の分岐の、場合により置換されているアルキル基を有する繰返し単位を含むことを条件とするステップと
を含む方法で得られる/得られた水素化コポリマーを含む潤滑組成物を提供する。
【0020】
一実施形態では、本発明は、潤滑粘度の油、本明細書に開示されている水素化コポリマーおよび、分散剤、酸化防止剤、磨耗防止剤、摩擦調整剤またはその混合物を含む少なくとも1つの添加剤を含む潤滑組成物を提供する。
【0021】
一実施形態では、この潤滑組成物は、潤滑粘度の油、本明細書に開示されている水素化コポリマーおよび分散剤、またはその混合物を含む。
【0022】
一実施形態では、この潤滑組成物は、潤滑粘度の油、本明細書に開示されている水素化コポリマーおよび酸化防止剤、またはその混合物を含む。
【0023】
一実施形態では、この潤滑組成物は、潤滑粘度の油、本明細書に開示されている水素化コポリマーおよび磨耗防止剤、またはその混合物を含む。
【0024】
一実施形態では、この潤滑組成物は、潤滑粘度の油、本明細書に開示されている水素化コポリマーおよび摩擦調整剤、またはその混合物を含む。
【0025】
一実施形態では、本明細書に記載の内燃機関用の潤滑剤組成物は、低減された量の、硫黄、リンおよび硫酸塩灰分の少なくとも1つを有する。
【0026】
一実施形態では、本発明は、2−ストロークまたは4−ストローク内燃機関用エンジン油、ギヤ油、自動変速機油、油圧作動油、タービン油、金属加工油(metal working fluid)、または循環油における潤滑組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
水素化コポリマー
本発明は、上記に開示されている通りの、水素化コポリマーおよび潤滑組成物を提供する。
【0028】
本明細書では、「分岐アルキル基」という語句には、場合によりさらに置換された分岐アルキル基が含まれる。別に記載されるように、ポリマー鎖上のアルキル分岐は、それ自体がさらに分岐されてもされなくてもよい。
【0029】
様々な実施形態では、この水素化コポリマーは、典型的には、利用可能な二重結合(通常、芳香族不飽和は含まない)の50%〜100%、または90%〜100%または95%〜100%で水素化される。
【0030】
一実施形態では、ブロックAは、ジエンまたはその混合物から誘導してもよい。Aで表されるブロックを生成するのに使用される適したジエンには、1,4−ブタジエンまたはイソプレンが含まれる。一実施形態では、このジエンは1,4−ブタジエンである。一実施形態では、ブロックAは、イソプレンを実質的に含まない、または含まない。
【0031】
本明細書では、「イソプレンを実質的に含まない」という用語は、このポリマーがイソプレンを不純物以下の濃度、典型的には、ポリマーの1モル%未満、またはポリマーの0.05モル%以下、またはポリマーの0.01モル%以下、またはポリマーの0モル%で含むことを意味する。
【0032】
このジエンは、典型的には、1,2−付加か、あるいは1,4−付加によって重合する。本発明では、1,2−付加の程度は重要な特徴であり、分岐アルキル基の繰返し単位の相対量によって定義される(本明細書ではRとしても定義される)。任意の最初に形成された懸垂不飽和またはビニル基は、水素化した後、アルキルの分岐(「分岐アルキル基」)になる。
【0033】
様々な実施形態では、ブロックA(テーパードコポリマー中でない場合)は、20モル%〜80モル%、または25モル%〜75モル%、または30モル%〜70モル%、または40モル%〜65モル%の分岐アルキル基の繰返し単位を含む。
【0034】
テーパードコポリマーは、分岐アルキル基(またはビニル基)の繰返し単位を含むブロックA40モル%〜80モル%、または50モル%〜75モル%を含み得る。
【0035】
一実施形態では、本発明のポリマーは、アニオン重合技術によって調製することができる。当業者であれば理解するように、アルカリ金属および/または有機金属化合物を含むアニオン重合開始剤は、様々な金属およびその対イオンおよび/または溶媒の間の相互作用に敏感であると考えられる。より多量の1,2−付加で重合されたジエンをより増加する量で有するポリマーを調製するために、極性溶媒(例えばテトラヒドロフラン)を使用することが典型的である。さらに、より低い原子質量を有する開始剤を使用することが適している(例えば、セシウムの代わりにリチウムを使用する)。様々な実施形態では、開始剤としてブチルリチウムまたはブチルナトリウムを使用してもよい。典型的なアニオン重合温度、例えば、0℃未満、または−20℃以下を使用してもよい。より多量のジエン1,2−付加立体特異性を有するポリマーを調製するのに適した方法のより詳細な説明は、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Thechnology、第3版、4巻、316〜317頁に、またはAnionic Polymerisation, Principles and Practical Applications、Henry L. HsiehおよびRoderic P. Quirk編、209頁および217頁、1996年、Marcel Dekker中に載っている。
【0036】
様々な実施形態では、このオレフィンポリマーブロックはまた、米国特許第5753778号(ポリマーを選択的に水素化するためのアルキルリチウム開始剤を用いた方法がカラム3、1〜33行に開示されている);同第5910566号(共役ジエンを水素化するのに適した方法、溶媒および触媒がカラム3、13〜43行に開示されている);同第5994477号(ポリマーを選択的に水素化する方法がカラム3、24行〜カラム4、32行に開示されている);同第6020439号(カラム3、30〜52行には適した触媒が開示されている);および同第6040390号(適した触媒がカラム9、2〜17行に開示されている)に記載の処理または方法を使用することによって、多量の1,2−付加(即ち、5モル%〜95モル%の分岐基)を伴って形成することができる。典型的には、これらの特許の実施例で開示されている1,2−付加の量は、ブタジエン単位の30〜42%の範囲である。
【0037】
適したビニル芳香族モノマーには、スチレンまたはアルキルスチレン(例えば、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−エチルスチレン、およびp−低級アルコキシスチレン)が含まれる。一実施形態では、ビニル芳香族モノマーはスチレンである。
【0038】
このビニル芳香族モノマー(例えば、置換スチレン)は、アシル基またはハロ−、アルコキシ−、カルボキシ、ヒドロキシ−、スルホニル−、ニトロ−、ニトロソ−、およびヒドロカルビル−置換基(ここで、このヒドロカルビル基は、典型的には、1〜12個の炭素原子を有する)を含む基で官能化することが多い。
【0039】
このアシル基は、熱グラフト化条件下で、場合によりルイス酸の存在下、ビニル芳香族ブロック中に取り込まれてもよい。適したルイス酸触媒は、当技術分野で既知であり、BFおよびその錯体、AlCl、TiCl、またはSnClが含まれる。BFの錯体には、三フッ化ホウ素エーテレート、三フッ化ホウ素−フェノールおよび三フッ化ホウ素−リン酸が含まれる。
【0040】
熱グラフト化条件は、当技術分野で既知であり、0℃〜150℃、または10℃〜120℃の反応温度が含まれる。
【0041】
この懸垂カルボニル含有基は、アルキル酸ハライド(典型的には、クロライド)、アルキル無水物またはアルキル置換モノカルボン酸またはその誘導体から誘導することができる。様々な実施形態では、このアルキル基は、6〜100、または8〜80または8〜50個の炭素原子を含む。適したアルキル基の例には、ポリイソブチレン、直鎖もしくは分枝のドデシル、テトラデシルまたはヘキサデシルが含まれる。
【0042】
この水素化コポリマーの重量平均分子量は、典型的には、1000〜1000000、または5000から500000、または10000〜250000、または50000〜175000の範囲である。
【0043】
様々な実施形態では、この水素化ポリマーの多分散度は、典型的には、1〜1.6未満、または1〜1.55、または1〜1.4、または1.01〜1.2の範囲である。
【0044】
一実施形態では、本発明のポリマーは、5〜70モル%、または10モル%〜60モル%、または20モル%〜60モル%のアルケニルアレーンモノマー、例えばスチレンから誘導される骨格を含む。
【0045】
一実施形態では、本発明のポリマーは、30〜95モル%、または40モル%〜90モル%、または40モル%〜80モル%のオレフィンモノマー、例えばブタジエンから誘導される骨格を含む。
【0046】
一実施形態では、本発明のポリマーは、ブロックコポリマーであり、規則性、ランダム、テーパードまたは交互構造が含まれる。このブロックコポリマーは、ジ−ブロックABコポリマーであるか、あるいはトリ−ブロックABAコポリマーであってもよい。このポリマーはジ−ブロックABコポリマーであることが多い。一実施形態では、このポリマーは、テーパードコポリマー以外である。
【0047】
一実施形態では、この懸垂カルボニル含有基は、上で定義された式ブロック(A)およびブロック(B)によって開示されたXまたはY上に存在する。
【0048】
XおよびY基は、フリーラジカル条件下でポリマー骨格上にグラフト化されてもよい。このフリーラジカル条件は既知であり、20℃〜200℃、または60℃〜160℃の反応温度が含まれる。
【0049】
あるいは、本発明は、上で定義された式ブロック(A)およびブロック(B)によって開示することもできる。
【0050】
アルキルまたは−アルキル−Z基を含むR基は、水素化する前のビニル基として定義してもよい。1,2−付加は、ビニル基または分岐基を生じさせる。非置換R上に存在する炭素数は、1〜8、または1〜4、または約2であり得る。Rがさらに(例えば、懸垂カルボニル含有基で)置換される場合、R上の炭素原子数は、懸垂カルボニル含有基中に存在する炭素原子数だけ増加する。
【0051】
−アルキル−ZのZ基および/またはY基は、エン反応条件下でビニルまたは分岐基あるいは骨格上にグラフト化することができる。
【0052】
このエン反応条件は、既知であり、60℃〜220℃、または100℃〜200℃の反応温度が含まれる。
【0053】
は、ビニル芳香族モノマー、またはその混合物から誘導してもよい。一実施形態ではRは、置換スチレンであってもよい。
【0054】
様々な実施形態では、この水素化コポリマーは、逐次ブロック、ランダムブロックまたは規則性ブロックコポリマーであってもよい。一実施形態ではこの水素化コポリマーは、逐次ブロックコポリマーである。
【0055】
本明細書では、「逐次ブロックコポリマー」という用語は、このコポリマーは、分離しているブロック(AおよびB)からなり、それぞれが単一のモノマーから構成されていることを意味する。逐次ブロックコポリマーの例には、A−BまたはB−A−B構造を有するものが含まれる。
【0056】
様々な実施形態では、この水素化コポリマーは、線状、分岐またはスターコポリマーであってもよい。
【0057】
一実施形態では、この水素化コポリマーは線状コポリマーである。
【0058】
一実施形態では、この水素化コポリマーはスターコポリマーである。
【0059】
様々な実施形態では、この水素化コポリマーは、ジブロック逐次ブロックコポリマーであるか、あるいはジブロック正規ジブロックスターコポリマーである。
【0060】
一実施形態では、この水素化コポリマーは、トリブロックまたはより高次のブロックコポリマーではない。
【0061】
一実施形態では、このポリマーは、スチレンおよび1,3−ブタジエンの骨格を含む。市販されている、1,2−付加によって反応されたブタジエンを5モル%〜95モル%有する、スチレンおよびブタジエンのコポリマー(即ち、上記式からX、YおよびZ基が水素と定義された非官能化コポリマー)には、Lubrizol(登録商標)7408Aが含まれる。
【0062】
懸垂カルボニル含有基
この懸垂カルボニル含有基は、カルボン酸またはアミド−またはイミド含有基などのその誘導体で表すことができる。カルボン酸またはその誘導体には、無水物、ハロゲン化アシル、またはその低級アルキルエステル、アミド、ケトン、アルデヒドおよびイミドが含まれる。このような物質の混合物も使用してもよい。これらには、モノ−カルボン酸(例えば、アクリル酸およびメタクリル酸)およびそのエステル、例えば、低級アルキルエステル、ならびにジカルボン酸、無水物およびそのエステル、例えば、その低級アルキルエステルが含まれる。ジカルボン酸、無水物およびエステルの例には、マレイン酸または無水物、フマル酸、または低級アルキルなどのエステル、即ち、アルキルエステル基上に7個以下の炭素原子を含むものが含まれる。
【0063】
一実施形態では、このジカルボン酸、無水物およびエステルは、式
【0064】
【化3】

の基で表し得る。
【0065】
Rは、水素またはアルキル、アルカリールもしくはアリールなどの、最大8個までの炭素原子のヒドロカルビルである。各R’は、独立に、水素またはヒドロカルビル、例えば、最大7個までの炭素原子の低級アルキル(例えば、メチル、エチル、ブチルもしくはヘプチル)である。R’’は、独立に、下記に説明する芳香族アミンまたはポリアミンが代表的な、芳香族(単環式または縮合多環式)炭化水素であってもよい。このジカルボン酸、無水物またはそのアルキルエステルは、典型的には、最大25個までの総炭素原子、または最大15個までの炭素原子を含む。例には、マレイン酸もしくは無水物、またはそのスクシンイミド誘導体;ベンジルマレイン酸無水物;クロロマレイン酸無水物;マレイン酸ヘプチル;イタコン酸もしくは無水物;シトラコン酸もしくは無水物;フマル酸エチル;フマル酸;メサコン酸;マレイン酸エチルイソプロピル;フマル酸イソプロピル;マレイン酸ヘキシルメチル;およびフェニルマレイン酸無水物が含まれる。無水マレイン酸、マレイン酸およびフマル酸ならびにその低級アルキルエステルが、使用されることが多い。
【0066】
アルコール官能化ポリマー
一実施形態では、本発明のポリマーは、典型的には、カルボニル含有官能基とアルコールとの反応からのエステル基をさらに含む。適したアルコールは、1〜40または6〜30個の炭素原子を含み得る。
【0067】
適したアルコールの例には、MonsantoのOxo Alcohol(登録商標)7911、Oxo Alcohol(登録商標)7900およびOxo Alcohol(登録商標)1100;ICIのAlphanol(登録商標)79;Condea(現在はSasol)のNafol(登録商標)1620、Alfol(登録商標)610およびAlfol(登録商標)810;Ethyl CorporationのEpal(登録商標)610およびEpal(登録商標)810;Shell AGのLinevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911およびDobanol(登録商標)25L;Condea Augusta、MilanのLial(登録商標)125;Henkel KGaA(現在はCognis)のDehydad(登録商標)およびLorol(登録商標)ならびにUgine KuhlmannのLinopol(登録商標)7−11およびAcropol(登録商標)91が含まれる。
【0068】
窒素官能化ポリマー
一実施形態では、本発明のポリマーは、窒素含有基をさらに含む。一実施形態では、このポリマーは、窒素含有基と反応し/グラフト化されて、アミン、アミドまたはイミド基を含む官能化ポリマーを形成する。典型的には、窒素含有基は、懸垂カルボニル含有基と反応する。適したアミンには、脂肪族、芳香族または非芳香族アミンが含まれる。
【0069】
このアミン官能基は、(i)懸垂カルボニル含有基、例えばカルボン酸に結合して、イミドまたはアミド官能基を形成してもよく、または(ii)このアミンは、オレフィンブロックポリマー(ブロックA)上に直接結合してもよい。
【0070】
様々な実施形態では、このアミン官能基は、窒素含有モノマー、ならびに/または一級および/もしくは二級窒素を有するアミンから誘導してもよい。
【0071】
適した窒素含有モノマーの例には、(メタ)アクリルアミドまたは窒素を含む(メタ)アクリレートモノマー(ここで、「(メタ)アクリレート」または「(メタ)アクリルアミド」は、アクリル酸またはメタクリル酸の物質の両方を表す)が含まれる。典型的には、この窒素含有化合物は、(メタ)アクリルアミドまたは窒素を含む(メタ)アクリレートモノマーを含み、式
【0072】
【化4】

[式中、
Qは、水素またはメチルであり、一実施形態では、Qはメチルであり;
Zは、N−H基またはO(酸素)であり;
各R’’’は、独立に、水素または1〜2個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、一実施形態では、各R’’’は水素であり;
各Rivは、独立に、水素または1〜8もしくは1〜4個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;
gは、1〜6の整数であり、一実施形態では、gは1〜3である]
によって表すことができる。
【0073】
適した窒素含有モノマーの例には、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルカルボンアミド(例えば、N−ビニル−ホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−n−プロピオンアミド、N−ビニル−i−プロピオンアミド、N−ビニルヒドロキシアセトアミド、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルカプロラクタム)、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノブチルアクリルアミド、ジメチルアミンプロピルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミドまたはその混合物が含まれる。
【0074】
一実施形態では、このアミンは芳香族である。芳香族アミンには、一般構造NH−ArまたはT−NH−Ar[式中、Tは、アルキルまたは芳香族であってもよく、Arは、窒素含有芳香族基を含む芳香族基であり、Ar基は、任意の以下の構造
【0075】
【化5】

および複数の非縮合または連結された芳香環を含む]で表すことができるものが含まれる。これらのおよび関連の構造では、R、Rvi、およびRviiは、独立に、本明細書に開示されている他の基の中でも、−H、−C1〜18アルキル基、ニトロ基、−NH−Ar、−N=N−Ar、−NH−CO−Ar、−OOC−Ar、−OOC−Ar,−OOC−C1〜18アルキル、−COO−C1〜18アルキル、−OH、−O−(CHCH−O)1〜18アルキル基、および−O−(CHCHO)Ar(式中、nは0〜10である)とすることができる。
【0076】
芳香族アミンには、芳香環構造の炭素原子がアミノ窒素に直接結合しているアミンが含まれる。このアミンは、モノアミンまたはポリアミンであってもよい。この芳香環は、典型的には、単核芳香環(即ち、ベンゼンから誘導されるもの)であろうが、縮合芳香環、特に、ナフタレンから誘導されるものを含むことができる。芳香族アミンの例には、アニリン、N−メチルアニリンおよびN−ブチルアニリンなどのN−アルキルアニリン、ジ−(p−メチルフェニル)アミン、4−アミノジフェニルアミン、N,N−ジメチルフェニレンジアミン、ナフチルアミン、4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン(ディスパース・オレンジ3)、スルファメタジン、4−フェノキシアニリン、3−ニトロアニリン、4−アミノアセトアニリド(N−(4−アミノフェニル)アセトアミド))、4−アミノ−2−ヒドロキシ−安息香酸フェニルエステル(フェニルアミノサリチレート)、N−(4−アミノ−フェニル)−ベンズアミド、2,5−ジメトキシベンジルアミンなどの様々なベンジルアミン、4−フェニルアゾアニリン、およびその置換型が含まれる。その他の実施例には、p−エトキシアニリン、p−ドデシルアニリン、シクロヘキシル置換ナフチルアミン、およびチエニル置換アニリンが含まれる。その他の適した芳香族アミンの例には、アミノ置換芳香族化合物、およびアミン窒素が芳香環の一部であるアミン、例えば、3−アミノキノリン、5−アミノキノリン、および8−アミノキノリンが含まれる。また含まれるものには、芳香環に直接結合している1つの二級アミノ基およびイミダゾール環に結合している一級アミノ基を含む、2−アミノベンズイミダゾールなどの芳香族アミンがある。その他のアミンには、N−(4−アニリノフェニル)−3−アミノブタンアミドまたは3−アミノプロピルイミダゾールが含まれる。さらにその他のアミンには、2,5−ジメトキシベンジルアミンが含まれる。
【0077】
追加の芳香族アミンおよび関連化合物が、米国特許第6107257号および同第6107258号に開示されている;これらのいくつかには、アミノカルバゾール、ベンゾイミダゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノ−インダゾリノン、アミノペリミジン、メルカプトトリアゾール、アミノフェノチアジン、アミノピリジン、アミノピラジン、アミノピリミジン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、アミノチアジアゾール、アミノチオチアジアゾール、およびアミノベンゾトリアゾールが含まれる。その他の適したアミンには、3−アミノ−N−(4−アニリノフェニル)−N−イソプロピルブタンアミド、およびN−(4−アニリノフェニル)−3−{(3−アミノプロピル)−(ココアルキル)アミノ}ブタンアミドが含まれる。使用することができるその他の芳香族アミンには、例えばアミド構造によって連結された複数の芳香環を含む様々な芳香族アミン染料中間体が含まれる。例には、一般構造の物質
【0078】
【化6】

[式中、RviiiおよびRixは、独立に、メチル、メトキシ、またはエトキシなどのアルキルまたはアルコキシ基である]およびその異性体変形が含まれる。ある場合には、RviiiおよびRixは、共に−OCHであり、この物質は、ファスト・ブルーRR[CAS#6268−05−9]として知られている。
【0079】
別の場合では、Rixは−OCHであり、Rviiiは−CHであり、この物質はファスト・バイオレットB[99−21−8]として知られている。RviiiおよびRixが共にエトキシの場合、この物質は、ファスト・ブルーBB[120−00−3]である。米国特許第5744429号には、他の芳香族アミン化合物、特にアミノアルキルフェノチアジンが開示されている。米国特許出願第2003/0030033A1号に開示されているものなどの、N−芳香族置換酸アミド化合物も、本発明の目的に使用してもよい。適した芳香族アミンには、アミン窒素が、芳香族カルボン酸化合物上の置換基であり、即ち、この窒素は芳香環内でsp混成軌道化されないものが含まれる。
【0080】
この芳香族アミンは、典型的には、懸垂カルボニル含有基と縮合することが可能なN−H基を有する。特定の芳香族アミンが、酸化防止剤として一般に使用される。このことに関して、特に重要なものは、ノニルジフェニルアミンおよびジノニルジフェニルアミンなどのアルキル化ジフェニルアミンである。これらの物質がこのポリマー鎖のカルボキシル官能基と縮合する限り、これらも本発明中で使用するのに適している。しかし、アミン窒素に結合している2つの芳香族基は、立体障害および反応性の低下を引き起こすものと考えられる。したがって、適したアミンには、一級窒素原子(−NH)、またはヒドロカルビル置換基の1つは比較的短鎖のアルキル基、例えばメチルである二級窒素原子を有するものが含まれる。このような芳香族アミンの中で、4−フェニルアゾアニリン、4−アミノジフェニルアミン、2−アミノベンズイミダゾール、およびN,N−ジメチルフェニレンジアミンが挙げられる。上記およびその他の芳香族アミンのいくつかは、ポリマーに、分散性およびその他の特性に加えて酸化防止性も付与する。
【0081】
本発明の一実施形態では、この反応生成物のアミン成分は、このポリマーのカルボキシル官能基と縮合することが可能な少なくとも2つのN−H基を有するアミンをさらに含む。この物質は、カルボン酸官能基を含む2つのポリマーを一緒に連結するのに使用することができるので、以下「連結アミン」と称される。より高分子量の物質は、改良された性能を提供し、これはこの物質の分子量を増加する1つの方法であることが分かっている。この連結アミンは脂肪族アミンか、あるいは芳香族アミンとすることができる;これが芳香族アミンの場合、これは典型的には、ポリマー鎖の過剰な架橋を回避するために、ただ1つの縮合可能なまたは反応性NH基を有する上記の芳香族アミンに追加される別な要素であると考えられる。このような連結アミンの例には、エチレンジアミン、フェニレンジアミン、および2,4−ジアミノトルエンが含まれる;その他には、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびその他のω−ポリメチレンレンジアミンが含まれる。このような連結アミン上の反応性官能基の量は、必要に応じて、ヒドロカルビル置換無水コハク酸などの、化学量論量未満のブロック物質との反応によって減少させることができる。
【0082】
一実施形態では、このアミンは、ポリマー骨格と直接反応することが可能な窒素含有化合物を含む。適したアミンの例には、N−p−ジフェニルアミン、4−アニリノフェニルメタクリルアミド、4−アニリノフェニルマレイミド、4−アニリノフェニルイタコンアミド、4−ヒドロキシジフェニルアミンのアクリレートおよびメタクリレートエステル、p−アミノジフェニルアミンまたはp−アルキルアミノジフェニルアミンとグリシジルメタクリレートとの反応生成物、p−アミノジフェニルアミンとイソブチルアルデヒドとの反応生成物、p−ヒドロキシジフェニルアミンの誘導体;フェノチアジンの誘導体、ジフェニルアミンのビニル性誘導体、またはその混合物が含まれる。
【0083】
この窒素含有化合物を、(i)溶媒を用いて溶液中か、あるいは(ii)溶媒の有無で反応性押出し条件下、ポリマー骨格上にアミンをグラフト化することによって、ポリマー骨格上に直接反応させてもよい。このアミン官能性モノマーは、多数の方法でポリマー骨格上にグラフトすることができる。一実施形態では、このグラフト化を、「エン」反応を介して熱的な方法によって実施する。一実施形態では、このグラフト化を、フリーデル−クラフツアシル化反応によって実施する。他の実施形態では、このグラフト化を、フリーラジカル開始剤を介して溶液または固体の形態で実施する。溶液グラフト化は、グラフトポリマーを製造するための周知の方法である。このような方法では、反応物をニートであるいは適当な溶媒中の溶液として添加する。次いで、この所望のポリマー生成物を、適当な精製ステップによって反応溶媒および/または不純物から分離しなければならないこともある。
【0084】
一実施形態では、この窒素含有化合物を、ベンゼン、t−ブチルベンゼン、トルエン、キシレン、またはヘキサンのような溶媒中で、ポリマーのフリーラジカル触媒グラフト化によってポリマー骨格上に直接反応させてもよい。この反応を、100℃〜250℃または120℃〜230℃、または160℃〜200℃の範囲、例えば、160℃超の高温で、前記ポリマーを最初の総油溶液に対して例えば、1〜50、または5から40重量%を含む鉱物潤滑油溶液などの溶媒中で、好ましくは不活性環境下で実施してもよい。
【0085】
この官能化ポリマーの分子量は、このポリマーに対して上で示した範囲よりそれ相応にいくぶんか高い。しかし、官能化ポリマーに対する重量平均および数重量分子量は、このアミンまたはアルコールの量および分子量に基づいて容易に推定することができる。
【0086】
潤滑粘度の油
この組成物は潤滑粘度の油を含む。このような油には、天然および合成の油、水素化分解、水素化、およびハイドロフィニッシングから誘導される油、非精製、精製および再精製油ならびにその混合物が含まれる。
【0087】
非精製油は、通常、さらなる精製処理なしで(または殆どなしで)天然または合成源から直接得られたものである。
【0088】
精製油は、1つまたは複数の特性を改良するために、1つまたは複数の精製ステップでさらに処理されていること以外は非精製油と類似している。精製技術は、当技術分野で既知であり、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、ろ過、パーコレーション等が含まれる。
【0089】
再精製油はまた、再生油または再処理油として知られており、精製油を得るのに使用されるものに類似した方法よって得られ、使用済み添加剤および油分解生成物の除去をするための技術によってさらに処理されることが多い。
【0090】
本発明の潤滑剤を作製するのに有用な天然油には、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)、液体石油およびパラフィン、ナフテンまたはパラフィン−ナフテン混合タイプの溶媒処理もしくは酸処理された鉱物潤滑油および石炭もしくは頁岩由来の油などの鉱物潤滑油、またはその混合物が含まれる。
【0091】
合成潤滑油は有用であり、重合および共重合されたオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびその混合物;アルキル−ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにその誘導体、類似体および同族体またはその混合物などの炭化水素油が含まれる。
【0092】
その他の合成潤滑油には、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、およびポリマーのテトラヒドロフランが含まれる。合成油は、フィッシャー−トロプシュ反応によって製造されてもよく、典型的には、水素化異性化フィッシャー−トロプシュ炭化水素またはワックスであってもよい。一実施形態では、フィッシャー−トロプシュガスの液化合成手順およびその他のガスの液化油によって油を調製する。
【0093】
潤滑粘度の油はまた、米国石油協会(American Petroleum Institute(API))基油互換性指針(Base Oil Interchangeability Guidlines)に規定されたように定義することができる。5つの基油グループは以下の通りである:グループI(硫黄含量>0.03重量%、および/または<90重量%飽和物、粘度指数80〜120);グループII(硫黄含量≦0.03重量%、および≧90重量%飽和物、粘度指数80〜120);グループIII(硫黄含量≦0.03重量%、および≧90重量%飽和物、粘度指数≧120);グループIV(すべてのポリアルファオレフィン(PAO));およびグループV(グループI、II、III、またはIVに含まれない他のあらゆるもの)。この潤滑粘度の油は、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV、グループVの油またはその混合物を含む。この潤滑粘度の油は、APIグループI、グループII、グループIII、グループIVの油またはその混合物であることが多い。あるいは、潤滑粘度の油は、APIグループI、グループII、グループIIIの油またはその混合物であることが多い。
【0094】
この潤滑剤組成物は、濃縮物の形態および/または完全に配合された潤滑剤の形態をしていてもよい。本発明のポリマーが濃縮物の形態をしている場合(濃縮物は、追加の油と混合して、全部または一部として仕上がった潤滑剤を形成してもよい)、潤滑粘度の油および/または希釈油に対するポリマーの比には、1:99〜99:1の重量または80:20〜10:90の重量の範囲が含まれる。
【0095】
その他の性能用添加剤
この組成物は、場合によりその他の性能用添加剤を含む。その他の性能用添加剤は、金属不活性化剤、従来の清浄剤(当技術分野で既知の方法で調製された清浄剤)、分散剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、磨耗防止剤、腐食抑制剤、分散剤粘度調整剤、極圧剤、耐スカッフィング剤、酸化防止剤、発泡防止剤、解乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤およびその混合物の少なくとも1つを含む。典型的には、完全に配合された潤滑油は、1つまたは複数のこれらの性能用添加剤を含む。
【0096】
分散剤
分散剤は、無灰型分散剤として知られていることが多い。なぜなら、潤滑油組成物に混合する前は、これらは灰分を形成する金属を含まず、潤滑剤およびポリマー分散剤に添加した場合、通常、灰分を形成する金属を少しももたらさないからである。無灰型分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合している極性基を特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例には、350〜5000、または500〜3000の範囲のポリイソブチレン置換基の数平均分子量を有するポリイソブチレンスクシンイミドが含まれる。スクシンイミド分散剤およびその調製は、例えば、米国特許第4234435号に開示されている。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン、典型的にはポリ(エチレンアミン)から形成されるイミドである。
【0097】
一実施形態では、本発明は、350〜5000、または500〜3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンスクシンイミドから誘導される少なくとも1つの分散剤をさらに含む。このポリイソブチレンスクシンイミドは、単独でまたは他の分散剤と組み合わせて使用してもよい。
【0098】
一実施形態では、本発明は、ポリイソブチレン、アミンおよび酸化亜鉛から誘導されて、亜鉛とのポリイソブチレンスクシンイミド錯体を形成する、少なくとも1種の分散剤をさらに含む。亜鉛とのポリイソブチレンスクシンイミド錯体は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0099】
別のクラスの無灰分散剤には、マンニッヒ塩基がある。マンニッヒ分散剤は、アルキルフェノールとアルデヒド(特に、ホルムアルデヒド)とアミン(特に、ポリアルキレンポリアミン)の反応生成物である。このアルキル基は、典型的には、少なくとも30個の炭素原子を含む。
【0100】
この分散剤はまた、任意の様々の作用物質との反応による従来の方法によって後処理してもよい。これらの中で、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換コハク酸無水物、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、リン化合物および/または金属化合物が挙げられる。
【0101】
この分散剤は、潤滑組成物の0重量%〜20重量%、または0.1重量%〜15重量%、または0.1重量%〜10重量%、または1重量%〜6重量%、または7重量%〜12重量%で存在してもよい。
【0102】
清浄剤
この潤滑剤組成物は、場合により、その他の既知の中性または過塩基性の清浄剤をさらに含む。適した清浄剤基材には、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ−および/またはジ−チオリン酸、アルキルフェノール、硫黄カップリングされたアルキルフェノール化合物、またはサリゲニンが含まれる。様々な過塩基性清浄剤およびその調製方法は、WO2004/096957およびその中で引用されている参考文献を含む多数の特許文献により詳細に記載されている。
【0103】
この清浄剤は、0重量%〜10重量%、または0.1重量%〜8重量%、または1重量%〜4重量%、または4超〜8重量%で存在してもよい。
【0104】
酸化防止剤
酸化防止剤化合物は、既知であり、例えば、硫化オレフィン、ジフェニルアミン、ヒンダードフェノール、モリブデン化合物(例えば、ジチオカルバミン酸モリブデン)、およびその混合物が含まれる。酸化防止剤化合物は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。この酸化防止剤は、潤滑組成物の0重量%〜20重量%、または0.1重量%〜10重量%、または1重量%〜5重量%の範囲で存在してもよい。
【0105】
このヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基としてsec−ブチルおよび/またはtert−ブチル基を含むことが多い。このフェノール基は、ヒドロカルビル基および/または第2芳香族基に連結する橋架け基でさらに置換されていることが多い。適したヒンダードフェノール酸化防止剤の例には、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールまたは4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、または4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールが含まれる。一実施形態では、このヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり、例えば、Ciba製Irganox(商標)L−135を含めてもよい。適したエステル含有ヒンダードフェノール酸化防止剤の化学のより詳細な説明が米国特許第6559105号に載っている。
【0106】
酸化防止剤として使用することができるジチオカルバミン酸モリブデンの適した例には、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.製Molyvan 822(商標)およびMolyvan(商標)A、ならびにAsahi Denka Kogyo K.K製Adeka Sakura−Lube(商標)S−100、S−165およびS−600などの商品名で販売されている市販の材料、ならびにその混合物が含まれる。
【0107】
粘度調整剤
本発明のポリマーは、粘度調整剤としての機能を果たすことができるが、他のタイプの追加の粘度調整剤が存在してもよい。このような粘度調整剤は、周知の物質であり、水素化スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンコポリマー、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化ラジカルイソプレンポリマー、ポリ(メタ)アクリレート(ポリアルキルメタクリレートのことが多い)、ポリアルキルスチレン、ポリオレフィンおよび無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル、またはその混合物が含まれる。このような追加の粘度調整剤は、潤滑組成物の0重量%〜15重量%、または0.1重量%〜10重量%または1重量%〜5重量%を含む範囲で存在してもよい。
【0108】
磨耗防止剤
この潤滑剤組成物は、場合により、少なくとも1種のその他の磨耗防止剤をさらに含む。この磨耗防止剤は、潤滑組成物の0重量%〜15重量%、または0.1重量%〜10重量%または1重量%〜8重量%を含む範囲で存在してもよい。適した磨耗防止剤の例には、ホスフェートエステル、硫化オレフィン、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート(例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛)である硫黄含有無灰耐摩耗添加剤、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン−カップリングしたチオカルバメート、およびビス(S−アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドが含まれる。
【0109】
ジチオカルバメート含有化合物は、ジチオカルバミン酸または塩と不飽和化合物とを反応させることによって調製してもよい。ジチオジカルバメートを含む化合物は、アミン、二硫化炭素および不飽和化合物を同時に反応させることによって調製してもよい。通常、この反応は25℃〜125℃の温度で起こる。米国特許第4758362号および同第4997969号には、ジチオカルバメート化合物およびそれを生成する方法が記載されている。
【0110】
硫化されて硫化オレフィンを形成することが可能な適したオレフィンの例には、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、ヘキサン、ヘプテン、オクタン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、ウンデシル、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、オクタデセネン、ノナデセン、エイコセンまたはその混合物が含まれる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、オクタデセネン、ノナデセン、エイコセンまたはその混合物、およびその二量体、三量体および四量体が特に有用なオレフィンである。あるいは、このオレフィンは、1,3−ブタジエンなどのジエンとブチルアクリレートなどの不飽和エステルのディールス−アルダー付加物であってもよい。
【0111】
他のクラスの硫化オレフィンには、脂肪酸およびそのエステルが含まれる。この脂肪酸は、植物油または動物油から得られることが多く;典型的には、4〜22個の炭素原子を含む。適した脂肪酸およびそのエステルの例には、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸またはその混合物が含まれる。この脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナッツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油またはその混合物から得ることが多い。一実施形態では、脂肪酸および/またはエスエルはオレフィンと混合される。
【0112】
代替の実施形態では、この無灰磨耗防止剤は、ポリオールと脂肪族カルボン酸(酸は12〜24個の炭素原子を含むことが多い)のモノエステルであってもよい。ポリオールと脂肪族カルボン酸のモノエステルは、この摩擦調整剤混合物中に、前記混合物の5〜95、または他の実施形態では、10〜90、もしくは20〜85、もしくは20〜80重量%を含んで存在してもよいヒマワリ油等との混合物の形態をしていることが多い。このエステルを形成する脂肪族カルボン酸(特に、モノカルボン酸)は、典型的には、12〜24個または14〜20個の炭素原子を含む酸である。カルボン酸の例には、ドデカン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、およびオレイン酸が含まれる。
【0113】
ポリオールには、ジオール、トリオール、およびより多数のアルコール性OH基を有するアルコールが含まれる。多価アルコールには、ジ−、トリ−およびテトラエチレングリコールを含むエチレングリコール;ジ−、トリ−およびテトラプロピレングリコールを含むプロピレングリコール;グリセロール;ブタンジオール;ヘキサンジオール;ソルビトール;アラビトール;マンニトール;スクロース;フルクトース;グルコース;シクロヘキサンジオール;エリスリトール;およびジ−およびトリペンタエリスリトールを含むペンタエリスリトールが含まれる。このポリオールは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールであることが多い。
【0114】
「グリセロールモノオレエート」として知られている市販されているモノエステルは、60±5重量%の化学種グリセロールモノオレエートの他に、35±5重量%のグリセロールジオレエート、および5重量%未満のトリオレエートおよびオレイン酸を含むものと考えられる。上記のモノエステルの量は、任意のこのような混合物中に存在するポリオールモノエステルの実際の補正した量に基づいて計算する。
【0115】
耐スカッフィング剤
この潤滑剤組成物は、耐スカッフィング剤を含んでもよい。耐スカッフィング剤化合物は、凝着磨耗を減少させるものと考えられ、硫黄含有化合物であることが多い。典型的には、この硫黄含有化合物には、ジベンジルジスルフィド、ビス(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、ジ−tert−ブチルポリスルフィドなどの有機スルフィドおよびポリスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、硫化ディールス−アルダー付加物、アルキルスルフェニルN’N−ジアルキルジチオカルバメート、ポリアミンと多塩基酸エステルとの反応生成物、2,3−ジブロモプロポキシイソ酪酸のクロロブチルエステル、ジアルキルジチオカルバミン酸のアセトキシメチルエステルおよびキサントゲン酸のアシルオキシアルキルエーテルならびにその混合物が含まれる。
【0116】
極圧剤
油中に可溶性である極圧(EP)剤には、硫黄−およびクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤およびリンEP剤が含まれる。このようなEP剤の例には、塩素化ワックス;有機スルフィドおよびポリスルフィド、例えば、ジベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、および硫化ディールス−アルダー付加物;硫化リンとテレビンまたはオレイン酸メチルの反応生成物などのリン硫化炭化水素;二炭化水素および三炭化水素ホスファイトなどのリンエステル、例えば、ジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイト;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイトおよびポリプロピレン置換フェノールホスファイト;亜鉛ジオクチルジチオカルバメートおよびバリウムヘプチルフェノール二酸などの金属チオカルバメート;ホスホロジチオン酸の亜鉛塩;例えば、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩を含む、アルキルおよびジアルキルリン酸のアミン塩;およびその混合物が含まれる。
【0117】
その他の添加剤
その他の性能用添加剤、例えば、腐食抑制剤には、米国特許出願第05/038319号(McAteeおよびBoyerを発明者として2004年10月25日に出願された)のパラグラフ5〜8に記載のもの、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸または無水物およびオレイン酸などの脂肪酸と、ポリアミンの縮合生成物が含まれる。一実施形態では、腐食抑制剤には、Synalox(登録商標)腐食抑制剤が含まれる。Synalox腐食抑制剤は、典型的には、プロピレンオキシドのホモポリマーまたはコポリマーである。Synalox(登録商標)腐食抑制剤は、Dow Chemical Companyによって出版された、書式番号118−01453−0702 AMSの製品パンフレットにより詳細に説明されている。この製品パンフレットは、「SYNALOX Lubricants, High−Performance Polyglycols for Demanding Applications」という題である。
【0118】
ベンゾトリアゾールの誘導体、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4−トリアゾール、ベンズイミダゾール、2−アルキルジチオベンズイミダゾール、または2−アルキルジチオベンゾチアゾールを含む金属不活性化剤;エチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートおよび場合による酢酸ビニルのコポリマーを含む発泡防止剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドを含む流動点降下剤;ならびに、アミン、エステル、エポキシド、脂肪イミダゾリン、カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンの縮合生成物、およびアルキルリン酸のアミン塩などの脂肪酸誘導体を含む摩擦調整剤も、この潤滑剤組成物中に使用してもよい。摩擦調整剤は、潤滑組成物の0重量%〜10重量%または0.1重量%〜8重量%または1重量%〜5重量%の範囲で存在してもよい。
【0119】
工業用途
本発明のポリマーは、任意の潤滑剤組成物に適している。このポリマーは、粘度調整剤および/または分散剤粘度調整剤(DVMと称されることが多い)として使用してもよい。
【0120】
一実施形態では、本発明のポリマーは、許容される粘度調節性能、許容される分散性、および許容されるすすおよびスラッジ取扱い性の少なくとも1つを提供する。本発明のポリマーがエンジン油潤滑剤組成物中で使用される場合、このポリマーは、典型的には、許容される燃料経済性または許容されるすすおよびスラッジ取扱い性をさらに提供する。
【0121】
一実施形態では、燃料経済性のために、このポリマーは芳香族アミンを含む。
【0122】
一実施形態では、許容されるすすおよびスラッジ取扱い性のために、このポリマーは非芳香族アミンを含む。
【0123】
潤滑剤の例には、2−ストロークまたは4−ストローク内燃機関用エンジン油、ギヤ油、自動変速機油、油圧作動油、タービン油、金属加工油または循環油が含まれる。
【0124】
一実施形態では、この内燃機関は、ディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジンまたはガソリン/アルコール混合燃料エンジンであってもよい。一実施形態では、この内燃機関は、ディーゼル燃料エンジンであり、他の実施形態では、ガソリン燃料エンジンである。
【0125】
この内燃機関は、2−ストロークまたは4−ストロークエンジンであってもよい。適した内燃機関には、船舶用ディーゼルエンジン、航空機ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、および自動車およびトラックエンジンが含まれる。
【0126】
内燃機関用のこの潤滑剤組成物は、硫黄、リンまたは硫酸塩灰分(ASTMD−874)含量を問わず任意のエンジン潤滑剤に適し得る。このエンジン油潤滑剤の硫黄含量は、1重量%以下、または0.8重量%以下、または0.5重量%以下、または0.3重量%以下であり得る。このリン含量は、0.2重量%以下、または0.1重量%以下、または0.085重量%以下、またはさらに0.06重量%以下、0.055重量%以下、または0.05重量%以下であり得る。この総硫酸塩灰分含量は、2重量%以下、または1.5重量%以下、または1.1重量%以下、または1重量%以下、または0.8重量%以下、または0.5重量%以下であり得る。
【0127】
一実施形態では、この潤滑組成物は、エンジン油であり、(i)0.5重量%以下の硫黄含量、(ii)0.1重量%以下のリン含量、および(iii)1.5重量%以下の硫酸塩灰分含量を有する。
【0128】
一実施形態では、この潤滑組成物は、2−ストロークまたは4−ストローク船舶用ディーゼル内燃機関に適している。一実施形態では、この船舶用ディーゼル燃焼エンジンは2−ストロークエンジンである。本発明のポリマーは、0.01〜20重量%、または0.05〜10重量%、または0.1〜5重量%で船舶用ディーゼル潤滑組成物に添加し得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、適した潤滑組成物は、表1aおよび1bに示す範囲の活性体ベースで存在する添加剤を含む。
【0130】
【表1A】

【0131】
【表1B】

以下の実施例は本発明の例示を提供する。これらの実施例は、非網羅的であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0132】
以下の本明細書において、スチレン−ブタジエンコポリマーは、ブタジエンブロック上に40から65モル%の間のビニル基含量を有する(水素化前で)。
無水マレイン酸で官能化されたスチレン−ブタジエンコポリマー
無水マレイン酸で官能化されたスチレン−ブタジエンコポリマーを、下記の方法で調製する。水素化スチレン−ブタジエン樹脂(「SBR」)を、470cm/分(または1 SCFH窒素)の窒素フローのための窒素注入口、オーバーヘッドスターラーおよびスターラーガイド、滴下漏斗、二重壁水凝縮器および浸漬温度プローブを備えた、五口ふた(ガスケット付)を有するフランジフラスコ中の熱(120℃)t−ブチルベンゼン(10mL/gSBR)に添加し、溶解するまで窒素下で撹拌する(50rpm)。次いで、無水マレイン酸を添加し(表2に示す取込みを提供するのに適した量で;典型的には、1gがポリマー上への0.4gのグラフト化をもたらすであろう)、撹拌し(400rpm)、混合物を130℃に加熱する。添加漏斗にt−ブチルベンゼン(2.5mL/gSBR)中のジ(t−ブチル)ペルオキシドを充填し(1:3のモル比の無水マレイン酸に対する開始剤)、この熱溶液に60分にわたり滴下で添加する。この反応をさらに3時間撹拌し、7〜95kPa(130℃で0.07〜0.95バールまたは2〜28”Hg)の真空下、2時間にわたり最初の溶媒のほぼ65〜70%を徐々に除去し、室温まで冷却する。反応混合物をトルエン(1.25mL/gSBR)で処理し、ブタノール−CO浴中で(〜30分)冷却する。このトルエン溶液を、冷(−40℃)メタノール:イソプロパノール(1:1、2.5mL/gSBR)に定常的に撹拌しながら徐々に添加し、得られた白色沈殿を真空下でろ過し、フィルター上で真空下、2時間乾燥させる。試料をさらなる重量の減少が認められなくなるまで真空下、50℃で乾燥させる。表2に示すデータと組み合わせて上記の方法を用いることによって、具体例を調製する。初期の実験室調製物において、高い開始剤供給量(例えば、1:2のMAA:開始剤比での、3重量%〜5重量%の無水マレイン酸(MAA)の目標グラフトで)が関与する反応から得られたわずかに架橋されたポリマーは、油中への溶解がより遅く、典型的には、長期の混合および/または加熱が必要であることに留意されたい。
【0133】
【表2】

ここで、tBuO2はtert−ブチルペルオキシドであり、tBuPhはtert−ブチルベンゼンであり、PhClはクロロベンゼンであり、SBRはスチレン−ブタジエンコポリマーであり、BPOはベンゾイルペルオキシドであり、MAAは無水マレイン酸である。
【0134】
(調製例11〜20)
アミン官能化コポリマー
無水マレイン酸で官能化されたスチレン−ブタジエンコポリマー(無水マレイン酸の溶液グラフト化から調製された)を、アミンとさらに反応させることができる。アミン官能化ポリマーを調製する方法を下記に説明する。水素化SBR−g−MAAを、窒素注入口(470cm/分、1 SCFH窒素、非水面下)、オーバーヘッドスターラー、スターラーガイドおよび浸漬温度プローブを備えた、フランジフラスコ/五口のふたおよびガスケット中の、150℃に加熱された基油(例えば、Nexbase(商標)3050)(89重量%)に加える。このポリマー−油溶液を最低で2.5時間加熱する。4−アミノジフェニルアミン(ADPA、1:1、C=O:N)および両性界面活性剤(1重量%)を、トルエン中のスラリーとして5分の期間にわたり添加し、最低18時間撹拌する。この容器に浸漬添加チューブを取付け、次いで、トルエン中のDMAPA(ジメチルアミノプロピルアミン)(1:0.15、C=O:N)を添加した後、2時間撹拌する。この容器に減圧蒸留を装備し、揮発性成分を160℃および95kPa(0.95バールまたは28”Hg)で蒸留する。生成した粘性の油/ゲルを100℃に冷却し、熱いうちに移す。上記の方法および表3に記載されている情報を用いることによって具体例を調製する。ある場合、予想よりより高い残留酸/無水物を有するポリマーは、より低い油溶解度を有した。
【0135】
【表3】

ここで、ADPAは4−アミノジフェニルアミンであり;DO3はディスパース・オレンジ−3である。
【0136】
レオロジー試験
上記で調製した一連の試料を排油レオロジー試験で評価する。この試料をTA Instruments AR500(商標)レオメータで振動モードによる振動レオロジー試験を用いて分析する。この試験配置は、40mmの平らな上面プレートであり、試料をレオメータの平らな温度可変ペルティエプレート上に直接置く。この試料を0.080Paのせん断応力で30秒間予備せん断変形させて、すべての試料が類似のベースラインせん断履歴を有するのを保証する。振動試験を開始する前に、試料を5分間平衡にさせる。この試料を各温度ステップの間にさらに1分間平衡化する。試料の評価を、0.06の一定のひずみにおいて、40℃〜150℃の温度範囲をカバーして総計30点において測定値を取る温度掃引試験で実施する。G’は、弾性率または貯蔵弾性率であり、The Rheology Handbook、Thomas G. Mezger(Ulrich Zoll編)、Vincentz出版、2002年、ISBN 3−87870−745−2、117頁でより詳細に定義されている。一般に、より低いG’値を有する試料に対して、より良好な結果が得られた。得られたデータを表4に示す。
【0137】
【表4】

ここで、
G’(Max)は、温度掃引レオロジー実験中に、この試料が示した最大G’値の測定値を指し;
ΔG’は、温度掃引レオロジー中に得られた、G’Max値から、最大になる前の最小G’値を減算した、G’最大値の高さの測定値を指し;
G’比は、構造物蓄積の減少の正規化された測度を提供するために、等価の参照油のG’Maxに対する候補化学種のG’Maxの比を指し;
ΔG’比は、候補および等価の参照油の間のΔG’の変化を指す。
【0138】
代表的なすすで汚染された排油の値を、ベースラインとして含めた。各試料のG’比(すすで汚染された排油とDVMを含むすすで汚染された油のG’(Max)の比)の計算をする前に、このすすで汚染された排油を分析する。
【0139】
レオロジースクリーニング試験に対して得られた結果は、本発明のポリマーが無処理の排油に比較してすす構造物の蓄積を減少させることを示している。
【0140】
潤滑組成物
この潤滑組成物は、粘度調整剤(本発明または参照比較例(オレフィンコポリマー)によって定義された)および添加剤パッケージを含む。清浄剤、分散剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、酸化防止剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、腐食抑制剤、および親和剤を含む添加剤パッケージは、表5の潤滑剤配合物に添加される。
【0141】
【表5】

ここで、上付き文字THは、リンおよび硫黄含量に関する理論値を表し;CE1、CE2およびCE3は、それぞれ比較例1〜3である。KV100は100℃における動粘度であり;HTHSは、CEC−L−36−A−90によって測定された高温高せん断測定値であり;CCSは、コールドクランクシミュレータ粘度(センチポイズ単位)である。
【0142】
試験1:CEC−L−51−A−98
比較例1および実施例1の両方の潤滑剤配合物を、OM602Aエンジン試験で試験する。この試験手順は、ACEA(European Automobil Manufactures Association)オイルシーケンスのために提示されたCEC−L−51−A−98である。得られた結果を表6に示す。
【0143】
【表6】

ここで、MB229.31およびMB229.51は、Mercedes Benz仕様である。
【0144】
OM602Aエンジン試験の結果は、本発明のポリマーを潤滑組成物に含めると、平均カム摩耗の結果がより低く、すす、スラッジおよび堆積物制御が改良された組成物がもたらされることを示している。
【0145】
試験2:Volkswagon TDiエンジン試験
比較例2および実施例2を共に、Volkswagen(商標)TDiエンジンで評価する。この試験手順は、ACEAオイルシーケンスで提示されたPV1452およびCECL−78−T−99法に従う。典型的には、潤滑組成物中でポリマー量を増加させると、ピストン清浄度の低下を生じることが知られている。この試験で得られた結果を表7に示す。
【0146】
【表7】

この結果は、本発明のポリマーは、ピストン清浄度に有害な影響を有さないで、より高い重量%で潤滑組成物中に添加してもよいことを実証している。
【0147】
試験3:Peugeot DV4エンジン試験
比較例3および実施例3を、手順CEC−L−093およびACEAオイルシーケンスによりPeugeot DV4中で稼動させる。得られた結果を表8に示す。
【0148】
【表8】

この結果は、潤滑組成物中の本発明のポリマーは、許容されるすすの抑制を有し、比較例より低い、すすが関連する粘度増加をもたらすことを示している。
【0149】
試験4:パネルコーカー
一連の潤滑組成物(実施例4および5;および比較例4から8)を、ポリマーおよびその他の性能用添加剤を潤滑粘度の油中にブレンドすることによって調製する。実施例と比較例の間の違いは、(i)粘度調整剤ポリマーおよび(ii)硫黄、リンおよび硫酸塩灰分含量である。比較例4および7(CE4およびCE7)は、オレフィンコポリマー粘度調整剤を有し;比較例5および8(CE5およびCE8)は、従来のスチレン−イソプレンポリマーを有し;実施例4および5(EX4およびEX5)は、本発明で定義されたスチレン−ブタジエンポリマーを有する。この「低SAPSエンジン油」は、0.1重量%以下のリン含量、0.5重量%以下の硫黄含量および1.5重量%以下の硫酸塩灰分含量を有する。「高SAPSエンジン油」とは、硫黄、リンおよび硫酸塩灰分含量を、それぞれ、0.1重量%超、0.5重量%超および1.5重量%超で有する。
【0150】
潤滑組成物を、95℃の油だめ温度および45秒/45秒スプラッシュ/ベークサイクルで、325℃に加熱したパネルコーカーで試験をする。この流量は、1000rpmのスピンドル速度で350ml/分であり、試験を4時間継続する。得られた結果を表9に示す。
【0151】
【表9】

得られた結果は、潤滑組成物中の異なる濃度の本発明のポリマーは、比較例に比べて高温堆積物制御の改良を示している。
【0152】
試験5:ASTM D5293
実施例6および比較例8は、5W−30潤滑組成物であり、試験方法D5293を用いて評価する。両方の例は、8.1重量%の性能パッケージ(分散剤、酸化防止剤、清浄剤および磨耗防止剤を含む)および0.2重量%の流動点降下剤を含む。この試験は、低温粘度測定を決定する。典型的には、−30℃におけるCCSに関してより低い値を有する試料に対してより良好な結果が得られる。得られた結果を表10に示す。
【0153】
【表10】

得られたデータは、潤滑組成物中の本発明のポリマーは、比較例より良好な低温粘度特性を有することを示している。したがって、潤滑組成物中の本発明のポリマーは、許容される燃料経済性を有する。
【0154】
潤滑組成物EX7、CE9およびCE10
潤滑組成物EX7、CE9およびCE10はすべて、ポリマー骨格を無水マレイン酸で官能化することから誘導され、(a)4−ADPA(EX7)か、あるいは(b)DO−3と3−ニトロアニリンの混合物(CE9およびCE10)とさらに反応させた分散剤粘度調整剤を含む。潤滑組成物、EX7、CE9およびCE10は、分散剤3重量%、清浄剤1.4重量%、磨耗防止剤0.5重量%、酸化防止剤1.4重量%を有する添加剤パッケージをさらに含む。
【0155】
試験6:Volkswagon PV1452試験
潤滑組成物、EX7、CE9およびCE10を、ACEAオイルシーケンスで提示された手順、PV1452およびCEC L−78−T−99に従ってVolkswagen(商標)TDiエンジンで評価する。得られた結果を表11に示す。
【0156】
【表11】

得られたデータは、潤滑組成物中の本発明のポリマーは、比較例に比べて許容されるリングスティック、ガスブローイングおよび油消費量を有することを示している。
【0157】
さらに、油CE9およびEX7をガラス熱チューブ試験で評価する。この試験は、5mlの油試料を10ml/分の気流と共に300℃で細いガラスチューブ中を通して20時間再循環させるものである。このチューブを、0〜100単位尺度に基づいて(0は黒色のチューブであり、100は清浄なチューブである)評価する。典型的には、より高い評点を有する試料に対しより良好な結果が得られる。その使用済み油も、粘度(ASTM D445)および全酸価TAN(ASTM D664)の試験をする。出発油および試験終点油の間の差違百分率(%)を粘度データについて計算する。出発油のTANおよび試験終点油のTANの間の絶対差違も計算する。得られた結果は次の通りである:
【0158】
【表12】

ここで、KV40は40℃における動粘度である。
【0159】
このデータは、潤滑油組成物中の本発明のポリマーは、比較例に比べて許容される堆積物の制御、粘度の制御およびTANの制御を提供することを示す。
【0160】
潤滑組成物8(EX8)および比較例10(CE10)は、粘度調整剤(表13に記載の)および添加剤パッケージを含む。この添加剤パッケージは、清浄剤、分散剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、酸化防止剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、腐食抑制剤、および親和剤を含む。この組成物を表13に示し、特徴づけをする。
【0161】
【表13】

ここで、RBOは参照基油5510/1である。
【0162】
直接噴射ペトロール(即ち、ガソリン)エンジンの吸気バルブおよび管中の堆積の傾向を評価するために、CE10およびEX8をVolkswagon PV1481法を用いて試験する。このPV1481法の結果を参照基油(5510/1)に対して比較する。典型的には、参照基油より少ない堆積物の蓄積を有する潤滑組成物に対して良好な結果が得られる。得られた結果は次の通りである:
【0163】
【表14】

注:この試験は、同じ参照基油を用いて異なる試験所で実施された。
【0164】
EX8に対して得られた結果は、本発明のポリマーは、ペトロール直接噴射エンジンの8個のバルブ中の総量堆積物を参照基油に比較して減少させることを示している。対照的に、CE10の結果は、オレフィンコポリマーは形成される堆積物量を増加させることを示している。したがって、本発明のポリマーは、CE10より改良された吸気バルブおよび管中の堆積物の制御を示す。
【0165】
(調製例21)
押出しからのアミン官能化コポリマー
窒素吸入口(250cm/分)、水冷凝縮器付きディーン・スタークトラップ、パッキン押さえ付きオーバーヘッドスターラーおよび熱源/熱電対を取付けた、5リットルフランジフラスコに、グループIII鉱油(2000g)を充填する。SBR−g−MAA(160g、2.19重量%グラフトMAA、35.7モル無水物)をこの油に130℃で1時間にわたり添加し、3時間撹拌する。N−フェニル−p−フェニレンジアミン(6.58g、35.7モル)を添加し、反応混合物を150℃に16時間加熱する。反応混合物を130℃に冷却し、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン(0.367g、3.57モル)を水面下で添加し、この反応を2時間撹拌する。この反応の進行は、イミド(1708cm−1)の赤外出現によって容易に監視することができ、無水物(1781cm−1)ピークの消失は、IRおよび全酸価(滴定により非常に低い残留酸価)によって完了したとみなされる。
【0166】
次いで、調製例21の生成物を、取扱性を促進するために、1重量%および2重量%の界面活性剤を混合する。この界面活性剤には、Surfonics(登録商標)L24−5(Hunstman Chemical Corporationから市販されている)、Chemsperse(登録商標)14(ポリグリセリル−4−オレエート界面活性剤、Chemron Corporationから市販されている)、およびAmidex(登録商標)CE(Chemron Corporationから市販されている)が含まれる。調製例21の生成物および各界面活性剤について得られた動粘度のデータは次の通りである。
【0167】
【表15】

脚注:
実施例21a、21b、および21cは、使用した界面活性剤が表から特定される以外は、本質的には同じである。
【0168】
調製例21のポリマー、例えば、実施例21aを、次いで、追加の1.4重量%のSurfonics(登録商標)L24−5でさらに処理し、上記のレオロジー試験で定義されたレオロジー特性について評価する。調製例21の生成物は、0.054のG’比(処理比率が0.5重量%の場合)、および0.006のG’比(処理比率が1重量%の場合)を有する。
【0169】
本明細書では、「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、その通常の意味で使用され、これは当業者には知られている。特に、これは、その分子の残りに直接結合している炭素原子を有し、主として炭化水素特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には:
(i)炭化水素置換基、即ち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、および芳香族−、脂肪族−、および脂環式置換芳香族置換基、ならびにその環がその分子の他の部分を介して完成される(例えば、2つ置換基が一緒になって環を形成する)環式置換基;
(ii)置換炭化水素置換基、即ち、本発明に関連して、置換基の主として炭化水素の性質を変えない非炭化水素基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)を含む置換基;
(iii)ヘテロ置換基、即ち、本発明に関連して、主として炭化水素特性を有しつつ、さもなければ炭素原子からなる環または鎖中に炭素以外を含む置換基を含む。ヘテロ原子には、硫黄、酸素、窒素が含まれ、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルとしての置換基が包含される。一般に、ヒドロカルビル基には10個の炭素原子毎に2つ以下、好ましくは、1つ以下の非炭化水素置換基が存在する;典型的には、ヒドロカルビル基中には非炭化水素置換基が存在しない。
【0170】
上記の物質の中には、最終配合物中で相互作用して、最終配合物の成分が最初に添加したものと異なることもあることが知られている。その使用目的に本発明の潤滑剤組成物を使用して形成された生成物を含む、その結果形成された生成物は、簡単な説明にはなりにくい可能性がある。しかしながら、すべてのこのような修正および反応生成物は、本発明の範囲に包含される;本発明は、上記の成分を混合することによって調製された潤滑剤組成物を包含する。
【0171】
上記に言及されたそれぞれの文献は、を参照により本明細書に援用する。実施例におけるまたは別段に明記された以外は、物質量、反応条件、分子量、炭素原子数等を明示する本発明の説明中のすべての数量は、「約」という用語で修飾されていると解される。別段の指示がなければ、本明細書に言及された各化学品または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および商業等級中に存在すると通常解されるその他のこのような物質を含んでもよい商業等級材料であると解される。しかし、各化学成分の量は、別段の指示がなければ、商業用材料中に通常存在し得る、どんな溶媒または希釈油も除いて示される。本明細書で示す、上限量および下限量、範囲、および比の限界は、独立に、組み合わせてもよいものと解される。同様に、本発明の各要素に対する範囲および量を、任意の他の要素に対する範囲または量と一緒に使用してもよい。
【0172】
本発明をその好ましい実施形態に関して説明してきたが、本明細書を読むと様々なその修正が当業者には明らかになるものと解される。したがって、本明細書に開示されている本発明は、頭記の特許請求の範囲内に含まれるこのような修正を包含するものと解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑粘度の油、ならびに少なくとも1種のオレフィンポリマーブロック(ブロックA)および少なくとも1種のビニル芳香族ポリマーブロック(ブロックB)を、0.5〜0.9のブロックA/(ブロックA+B)のモル比で含む水素化コポリマーであって、
ブロックAは、5モル%〜95モル%の分岐アルキル基を有する繰返し単位を含み、但し、該コポリマーがテーパードコポリマーを含む場合、ブロックAは、38.5モル%超〜95モル%の分岐アルキル基を有する繰返し単位を含むことを条件とし、該ブロックAの分岐アルキル基は、場合によりさらに置換されており;そして
場合により、以下:
(i)ブロックAまたはブロックBが懸垂カルボニル含有基でさらに官能化され、該懸垂カルボニル含有基は場合によりさらに置換されて、エステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を提供する、および
(ii)ブロックAが、該オレフィンブロックポリマー上に直接結合したアミン官能基でさらに官能化される、
の経路の少なくとも1つによってさらに官能化される水素化コポリマーを含む潤滑組成物。
【請求項2】
ブロックAが、テーパードコポリマーでない場合、20モル%〜80モル%、または30モル%〜70モル%の分岐アルキル基の繰返し単位を含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
ブロックAがテーパードコポリマーを含む場合、該テーパードコポリマーが、分岐アルキル基の繰返し単位を含むブロックAを40モル%〜80モル%、または50モル%〜75モル%含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
前記オレフィンポリマーブロックが1,3−ブタジエン繰返し単位を含むか、または前記ビニル芳香族ポリマーブロックがアルキレンアレーン繰返し単位を含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記水素化コポリマーが、スチレンおよびブタジエン繰返し単位の骨格を含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
前記水素化コポリマーがジブロックコポリマーである、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
前記水素化コポリマーが、1000〜1000000、または10000〜250000の数平均分子量を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
前記水素化ポリマーが、1〜1.6未満、または1.01〜1.4の多分散度を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
前記水素化コポリマーがジブロックコポリマーである、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
前記水素化コポリマーが逐次ブロックコポリマーである、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
ブロックAおよび/またはブロックBが、独立に、懸垂カルボニル含有基をさらに含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
ブロックAが懸垂カルボニル含有基を含む、請求項11に記載の潤滑組成物。
【請求項13】
前記懸垂カルボニル含有基がさらに置換されて、エステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を提供する、請求項11に記載の潤滑組成物。
【請求項14】
前記懸垂カルボニル含有基が、カルボン酸またはその誘導体を含む(その無水物、ハライド、またはアルキルエステル基上に7個以下の炭素原子を含むアルキルエステルを含む)を含む、請求項11に記載の潤滑組成物。
【請求項15】
前記カルボン酸がジカルボン酸である、請求項14に記載の潤滑組成物。
【請求項16】
水素化ポリマーが、窒素含有官能基をさらに含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項17】
前記窒素含有官能基が、少なくとも1種の脂肪族、芳香族または非芳香族アミンから誘導される、請求項16に記載の潤滑組成物。
【請求項18】
前記窒素含有官能基が、(i)懸垂カルボニル含有基に結合して、アミン、イミドまたはアミド官能基を形成するか、または(ii)アミンが、前記オレフィンブロックポリマー上に直接結合している、請求項16に記載の潤滑組成物。
【請求項19】
前記窒素含有官能基がカルボン酸に結合し、アミンが、窒素含有モノマーまたは一級もしくは二級窒素基を有するアミンを含む、請求項18に記載の潤滑組成物。
【請求項20】
前記窒素含有官能基が、ファスト・バイオレットB、ファスト・ブルーBB、アニリン、N−アルキルアニリン、ジ−(パラ−メチルフェニル)アミン、4−アミノジフェニルアミン、N,N−ジメチルフェニレンジアミン、ナフチルアミン、4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン、スルファメタジン、4−フェノキシアニリン、3−ニトロアニリン、4−アミノアセトアニリド(N−(4−アミノフェニル)アセトアミド))、4−アミノ−2−ヒドロキシ−安息香酸フェニルエステル(フェニルアミノサリチレート)、N−(4−アミノフェニル)−ベンズアミド、ベンジルアミン、4−フェニルアゾアニリン、パラ−エトキシアニリン、パラ−ドデシルアニリン、シクロヘキシル置換ナフチルアミン、およびチエニル置換アニリンから選択される少なくとも1種の芳香族アミンを含む、請求項19に記載の潤滑組成物。
【請求項21】
ブロックAが、前記オレフィンブロックポリマー上に直接結合したアミン官能基を含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項22】
前記アミンが、N−p−ジフェニルアミン;4−アニリノフェニルメタクリルアミド;4−アニリノフェニルマレイミド;4−アニリノフェニルイタコンアミド;4−ヒドロキシジフェニルアミンのアクリレートおよびメタクリレートエステル;p−アミノジフェニルアミンまたはp−アルキルアミノジフェニルアミンとグリシジルメタクリレートとの反応生成物;p−アミノジフェニルアミンとイソブチルアルデヒドとの反応生成物;p−ヒドロキシジフェニルアミンの誘導体;フェノチアジンの誘導体;ジフェニルアミンのビニル性誘導体;またはこれらの混合物の少なくとも1種を含む、請求項21に記載の潤滑組成物。
【請求項23】
分散剤、酸化防止剤、磨耗防止剤、摩擦調整剤またはこれらの混合物を含む少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項24】
エンジン油であり、(i)0.8重量%以下の硫黄含量、(ii)0.2重量%以下のリン含量、または(iii)2重量%以下の硫酸塩灰分含量の少なくとも1つを有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項25】
エンジン油であり、(i)0.5重量%以下の硫黄含量、(ii)0.1重量%以下のリン含量、および(iii)1.5重量%以下の硫酸塩灰分含量を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項26】
2−ストロークまたは4−ストローク内燃機関用エンジン油、ギヤ油、自動変速機油、油圧作動油、タービン油、金属加工油、または循環油としての、請求項1に記載の潤滑組成物の使用。
【請求項27】
2−ストロークまたは4−ストローク船舶用ディーゼル内燃機関用エンジン油としての、請求項1に記載の潤滑組成物の使用。

【公表番号】特表2009−531531(P2009−531531A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503192(P2009−503192)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/064900
【国際公開番号】WO2007/121039
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】